過失相殺をわかりやすく解説!計算方法や交通事故判例の具体例も紹介
過失相殺(かしつそうさい)とは、交通事故の過失割合に応じて損害賠償金が減額されることです。
自身に過失がある場合は、受け取れる損害賠償金に過失相殺が適用されるだけでなく、加害者に対して損害賠償金を支払わなければならないこともあります。
この記事では、過失相殺とは何かや具体例を交えた過失相殺の計算方法、過失相殺が争われた裁判例、過失相殺による減額をカバーしたり減らしたりする方法などを解説します。
目次
過失相殺についての基礎知識
過失相殺とは?
過失相殺とは、被害者側の過失分、損害賠償金が減額されることです。
交通事故における過失をわかりやすく言うと、事故発生の原因となった当事者の不注意のことです。
交通事故は加害者側のみに過失がある(加害者側の過失が100%の)場合ばかりではなく、被害者側にも一定の過失が認められる場合もあります。
被害者側にも過失がある場合、損害賠償金の全額を加害者が支払うのは公平ではありません。
そこで、損害を公平に分担するという考え方の下、被害者が受け取る損害賠償金を被害者の過失分だけ減額するというのが過失相殺なのです。
過失相殺については、民法第722条で定められており、条文は以下のとおりです。
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
民法第722条2項
交通事故において被害者・加害者それぞれにどれくらい過失があるのかは、「過失割合」という形で表されます。そして過失相殺は、「被害者の過失割合が20%なら損害賠償金は2割減額」という形で適用されます。
- 過失割合:交通事故が起きた責任割合が、加害者側と被害者側のそれぞれにどれくらいあるのか示したもの。「加害者:被害者=80:20」などの形で表される。
- 過失相殺:自身についた過失割合分、受け取れる賠償金が減額されること。
交通事故で過失相殺されないのはどのようなとき?
被害者側に過失がない場合、つまり過失割合が「被害者:加害者=10:0」の場合は、基本的に過失相殺は適用されません。
交通事故では、停車中に後方からぶつけられる追突事故の場合、被害者側の過失がないと判断されて、過失相殺されないときが多いでしょう。
交通事故で過失割合10対0になるケースや、9対1や8対2から10対0にする方法は『交通事故で過失割合が10対0になる場合とは?過失割合を減らす方法も解説』にてご確認ください。
なお、被害者側の過失がなく、過失相殺されないと思われがちですが、被害者側にも過失割合がついて過失相殺される可能性がある場合としては、以下のようなものがあります。
- 被害車両に同乗していた場合
- ペットが交通事故に遭った場合
- 非接触事故の場合
それぞれについて、詳しく解説します。
被害車両に同乗していた場合
家族や友人・知人の車に乗せてもらっており、同乗者の立場で交通事故に遭った場合、過失割合は運転者につくのが基本です。
ただし、以下の場合には同乗者にも事故当事者の一人として過失割合がつく可能性があります。
- 運転者が飲酒した状態や無免許の状態であることを知りながら同乗した場合
- 安全運転を妨げるような行為をした場合
- 危険運転をあおった場合
同乗者に賠償責任が生じるケースは『事故で同乗者が怪我|慰謝料請求相手と相場は?友達の車に乗っていて事故にあったら?』の中でも詳しく解説しています。
ペットが交通事故に遭った場合
ペットが交通事故に遭った場合、ペット自身に過失割合はつきませんが、ペットの保護監督責任を持つ飼い主に過失割合がつき過失相殺が適用されることはあります。
なお、ペットの被害で飼い主が精神的苦痛を受けても物損事故として扱われるため、原則として慰謝料を請求することはできません。
例外的に慰謝料が認められた事例もありますが、基本的には裁判が必要になるでしょう。
物損事故・物損被害における慰謝料請求については、『物損事故で慰謝料がもらえた事例|原則もらえない理由と獲得を目指す方法』で解説しているのでご確認ください。
非接触事故の場合
前方にいた車や人との接触を避けようとして転倒したような非接触事故の場合でも、以下のような事実が認められれば被害者側に過失割合がつきます。
- もっと早く、安全に接触を避けることが可能だった
- 速度違反をしていた
非接触事故の過失割合については、以下の関連記事も参考にしてみてください。
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過失相殺と損益相殺の違いとは?
過失相殺と混同しがちな制度として「損益相殺」があります。
損益相殺は、損害賠償金が減額されるという点は過失相殺と共通していますが、損害の填補として既に受け取った金銭を減額するという減額の内容が異なります。
過失相殺で減額されるのは、損害の公平な分担が理由ですが、損益相殺で減額されるのは実際の損害額以上の金額を受け取らないようにする二重取りの禁止が理由です。
そのため、被害者側に過失がなく、過失相殺による減額がないケースでも、損益相殺による減額があるケースもあるので注意が必要です。
損益相殺の具体例としては、損害賠償金を受け取る前に、以下のような保険給付を受け取っていた場合が考えられます。
- 自賠責保険金
- 政府保障事業のてん補金
- 自分が加入している自動車保険から受け取った人身傷害保険金
- 治療費の健康保険負担分
- 労災保険給付 など
過失相殺の計算~賠償金支払いの流れを具体例で解説
損害賠償金に過失相殺を適用する計算式は、次の通りです。
過失相殺後の損害賠償金
=過失相殺前の損害賠償金 × (100% - 自身の過失割合)
過失相殺は、被害者の損害賠償金だけでなく加害者の損害賠償金にも適用されます。
過失相殺の適用から損害賠償金の支払いまでの流れは、次のとおりです。
- 被害者の賠償金を被害者の過失割合分、過失相殺する
- 加害者の賠償金を加害者の過失割合分、過失相殺する
- 被害者・加害者双方の損害賠償額を差し引きした金額が支払われる
ここは、以下の例に沿って過失相殺から支払いまでの流れを詳しく解説します。
具体例の条件
- 過失割合 加害者:被害者=90:10
- 被害者の賠償金 500万円
- 加害者の賠償金 100万円
(1)被害者の賠償金を自身の過失割合分、過失相殺する
今回の具体例では、被害者が加害者に請求する賠償金は500万円です。被害者側についた過失割合は1割なので、過失相殺した結果は次のようになります。
500万円 × (100%-10%)=450万円
(2)加害者の賠償金を加害者の過失割合分、過失相殺する
続いて、今回の具体例では加害者も被害者に対して賠償請求しているので、その金額にも過失相殺を適用します。
加害者が請求する賠償金(100万円)から加害者の過失割合分(9割)を減額するため、計算式は以下のとおりです。
100万円 ×(100%-90%)=10万円
(3)被害者・加害者双方の金額を差し引きする
ここまでの計算で、被害者の受け取れる賠償金は450万円、被害者が加害者に支払う金額は10万円だとわかりました。
加害者が被害者に450万円、被害者が加害者に10万円支払うと、被害者の実質的な受取額は440万円となります。
加害者側への支払い額が生じた場合は、実質的な受取額は単純に過失相殺した金額よりも低くなるのです。
被害者 (過失1割) | |
---|---|
加害者に請求する金額 | 450万円 |
加害者に支払う金額 | 10万円 |
実質的に受け取れる金額 | 440万円 |
なお、実際には加害者側が450万円、被害者側が10万円を相手に支払うのではなく、あらかじめ両者の金額が相殺されることが多いです。
つまりこの場合なら、初めから両者の過失相殺後の賠償金額を相殺し、440万円が加害者から被害者へ支払われるのです。
交通事故で過失相殺が争われた裁判例
交通事故被害者の方の中には、加害者やその保険会社に過失相殺による減額を主張され、納得いかないという方もおられるかと思います。
過失相殺は損害の公平な分担が目的なので、たとえ被害者側に過失や落ち度となりそうな事情があったとしても、事故状況や加害者の過失内容・程度によっては、損害の公平な分担という観点から過失相殺すべきでないケースもあります。
実際に、交通事故で過失相殺が争われ、過失相殺すべきではないと判断された裁判例を3つ紹介します。
自動車と自転車との衝突事故で過失相殺を認めなかった裁判例
信号のない交差点で右折した自動車が左方から直進してきた自転車の右後方に衝突した交通事故の事例です(名古屋地裁平成29年8月22日判決 平成25年(ワ)第5106号 損害賠償請求事件)。
被告となった自動車の運転手は、自動車が優先道路から右折した際に発生した事故であるから、原告の自転車運転手に40%の過失が認められるとして過失相殺を主張しました。
しかし、裁判所は、被告は右折する際、左右に注意する安全配慮義務を負っていたのに、これを怠り、右方から進行してくる車両に驚き、漫然と左にハンドルを切ったため、自車を左前方にいた原告自転車に接触させた過失が認められる一方、本件事故は交差点内ではなく、原告自転車が交差点を渡り切った辺りで起きていることや原告は右後方から被告自動車に衝突された点などを踏まえると、原告には過失相殺されるほどの落ち度は認められないと判断しました。
自動車と歩行者との死亡事故で過失相殺を認めなかった裁判例
直進自動車が、進路左前方を歩行中の歩行者に衝突した死亡事故の事例です(京都地裁平成21年8月10日判決 平成21年(ワ)第95号 損害賠償請求事件)。
被告となった自動車の運転手は、歩行者が路側帯がある道路にもかかわらず、車道を歩行していたことなどから、原告側に25%の過失が認められるとして過失相殺を主張しました。
しかし、裁判所は、被告には、脇見をした著しい前方不注意という過失がある一方、歩行者は路側帯の中ではなく、車道の中に約0.5m入った所を歩行していたものの、事故現場付近の状況や事故態様、被告の過失の内容・程度、歩行者の年齢(当時81歳)などを考慮すれば、歩行者にかかる事実を過失相殺における被害者の過失と認めるのは相当でないと判断しました。
自動車と電動自転車との死亡事故で過失相殺を認めなかった裁判例
センターラインのない市道で、自動車が電動自転車と正面衝突した死亡事故の事例です(東京地裁八王子支部平成16年8月27日判決 平成15年(ワ)第1555号 交通事故による損害賠償請求事件)。
被告となった自動車の運転手は、自転車運転手は、道路交通法上、道路左側を通行すべきであったのに右側を通行していたなどの過失があり、大幅な過失相殺が認められるべきと主張しました。
しかし、裁判所は、自転車運転手に道路交通法違反の過失があるとした上で、被告は、原告車が被告車進行方向の左側端を走行することで被告車と接触する可能性があることを十分予測でき、かつその危険を回避可能であったにもかかわらず危険回避義務を怠った結果、本件事故を発生させたといえるので、上記自転車運転手の過失を損害賠償額の算定において斟酌することは相当ではないと判断しました。
過失相殺に関する疑問にお答え
続いて、過失相殺についてよくある以下の疑問にお答えします。
- 過失相殺により加害者への支払額のほうが大きくなることはある?
- 被害者が子どもでも過失相殺はなされる?
- 自分の自動車保険を使うときも過失相殺される?
Q.過失相殺により加害者への支払額のほうが大きくなることはある?
被害者の過失相殺が小さくても、加害者の被った損害の方が高額な場合、被害者の方が多く損害賠償金を支払うことになります。
たとえば過失割合が加害者:被害者=80%:20%の場合で、加害者の損害賠償金が1000万円、被害者の損害賠償金が100万円だったとしましょう。
加害者から被害者に請求できる金額は200万円、被害者から加害者に請求できる金額は80万円となります。双方の金額を差引きすると、被害者の方が120万円多く支払うことになるのです。
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 80% | 20% |
損害額 | 1000万円 | 100万円 |
過失相殺後の金額 | 1000万円×20% =200万円 | 100万円×80% =80万円 |
受け取る金額 | 200万円ー80万円 =120万円 | 0円 |
加害者が高級車を運転していたというようなケースでは、被害者よりも加害者の請求額が上回る可能性があるでしょう。
Q.被害者が子どもでも過失相殺はなされる?
被害者が子どもである場合は、子どもに「事理弁識能力」が備わっていると判断されると、子どもにも過失割合が認められ、過失相殺の対象となるのです。
「事理弁識能力」とは、危機を察知して回避する能力をいい、裁判では、5、6歳以上の子どもであれば認められる傾向にあります。
「事理弁識能力」がまだ備わっていない子供については、過失と認められる行為があっても過失相殺の対象とはなりません。
しかし、子供と身分上・生活上一体をなしている保護者に過失が認められる場合には、その過失を考慮して過失相殺することが可能です。
具体的には、親が目を離した隙に子供が道路に飛び出してしまったといったケースでは、保護者である親の過失を考慮して過失相殺がおこなわれるでしょう。
この他に、被害者が13歳未満の子供だった場合、判断能力が未熟であることを考慮して大人よりも過失割合が減らされることもあります。
子供に過失割合がつくような交通事故については、『こどもの飛び出し事故対策と過失割合は?示談で不利にならない方法』で詳しく解説しています。
Q.自分の自動車保険を使うときも過失相殺される?
過失相殺は、自分の自動車保険から受け取る保険金に対しては適用されません。
たとえば人身傷害補償特約では、設定金額を上限とした実損害額が、過失相殺なしに支払われます。
車両保険や搭乗者傷害保険などにも、過失相殺は適用されません。
ただし、被害者側の過失が大きすぎる場合にはそもそも保険を利用できないことがあります。詳しくはご加入の保険の約款をご確認ください。
過失相殺による減額をカバーする方法
過失割合による減額は、カバーすることも可能です。過失相殺されたままだと慰謝料を十分受け取れなかったり、治療費や車の修理費の一部が自己負担になってしまったりします。
過失相殺をカバーする方法を確認していきましょう。
(1)人身傷害保険を利用する
人身傷害保険を利用すると、過失相殺による減額をカバーできます。
人身傷害保険は被害者が加入する自動車保険のひとつで、被保険者やその家族が交通事故で死傷した場合、設定金額を上限に実損害額を受け取れるものです。
人身傷害保険の保険金に対しては、過失相殺による減額はなされません。
そのため、人身傷害保険を利用すれば過失相殺による減額分をカバーできるのです。
人身傷害保険の利用によって保険の等級が下がることがない点もポイントです。
人身傷害保険について詳しくは、『人身傷害保険ってどんな保険なの?慰謝料も受け取れる保険について解説』の記事もご覧ください。
(2)被害者請求で自賠責保険からお金を受け取る
被害者側の過失割合が大きい場合は、「被害者請求」という方法により加害者側の自賠責保険会社に賠償請求すると、過失相殺による減額幅が抑えられることがあります。
被害者請求とは
交通事故の損害賠償金には「加害者側の任意保険の支払い分」と「加害者側の自賠責保険の支払い分」があり、多くの場合はすべてまとめて加害者側の任意保険会社から支払われます。
しかし、自賠責保険の支払い分を加害者側の自賠責保険会社に直接請求することも可能です。これを、被害者請求といいます。
被害者保護の考え方から、自賠責保険では過失相殺による減額が制限されているからです。
被害者請求した場合、加害者側の自賠責保険の支払い分については、以下のようにして過失相殺による減額がなされます。
傷害分とは治療関係費・入通院慰謝料・休業損害のこと。
被害者の 過失割合 | 過失相殺 |
---|---|
7割未満 | 過失相殺なし |
7割以上10割未満 | 2割減額 |
後遺障害分とは後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益のこと。死亡分とは死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬祭関係費のこと。
被害者の 過失割合 | 過失相殺 |
---|---|
7割未満 | 過失相殺なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 |
9割以上10割未満 | 5割減額 |
たとえば、被害者の過失割合が6割の場合、以下の2パターンのうち(2)の方がかえって受取額が大きくなる場合があるのです。
- 加害者側の任意保険会社に、任意保険の支払い分も自賠責保険の支払い分も両方請求し、その合計額が6割減額される
- 被害者請求で自賠責保険の支払い分のみを請求し、過失相殺が適用されない
具体例
被害者の過失割合が6割、被った損害賠償金が130万円(自賠責分が120万円、任意保険分が10万円)の場合
- 加害者側の任意保険会社に130万円一括で請求した場合
130万円に6割の過失相殺が適用されるので、実際の受取額は52万円 - 加害者側の自賠責保険に120万円を被害者請求した場合
自賠責保険では過失割合7割未満だと過失相殺されないので、120万円受け取れる
実際に試算してみて被害者請求をした方が金額が大きくなる場合は、被害者請求をした方が良いでしょう。
被害者請求についてさらに詳しくは、関連記事『交通事故の被害者請求とは?自賠責へ請求すべき?やり方やメリットもわかる』も参考にしてみてください。
試算は弁護士にも依頼できるので、お気軽にご相談ください。
過失相殺はいつどのように決まる?
過失相殺は示談交渉で決まる|加害者側の主張は正しくないことも多い
過失割合がどれくらいで、その結果として過失相殺でどれくらい損害賠償金が減額されるのかは、基本的に示談交渉の際に決まります。
過失割合は相手方任意保険会社が算定して提示してくることが多いですが、あえて被害者側の過失割合を多く見積もっている場合もあります。そのような場合に安易に提示額で示談してしまうと、過失相殺で必要以上に損害賠償金が減額されることになるので、注意してください。
当事者双方の主張が食い違い、当事者間で過失割合が決定できない場合には、以下のような方法で解決することとなるでしょう。
- 交通事故紛争処理センターなどのADR機関から仲介してもらう
- 裁判所における調停手続で話し合いを行う
- 裁判所に訴訟を提起して判決をもらう
正しい過失割合を知る方法は?
過失割合は、以下の方法で算定します。
- 書籍「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 別冊判例タイムズ38号」に載っている事故類型から当該事故に近いものを探し、基本の過失割合を確認する
- 信号無視や飛び出し、スピード違反など、事故の個別的な事情(修正要素)に応じて過失割合を加算・減算させて、最終的な過失割合を算定する
ただし、どのような修正要素が適用され、それにより過失割合がどれくらい増減するのかはケースバイケースであり、被害者自身での判断は難しいと言わざるを得ません。
厳密な過失割合の算定は、過去の判例や事例、専門知識に精通した弁護士に相談することがおすすめです。
アトム法律事務所の無料相談では、過失割合の算定にも対応できることがあります。無料相談のみのご利用も可能なので、お気軽にご相談ください。
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過失相殺による減額を減らすためのポイント
過失相殺による減額を減らすためには、被害者側の過失割合が少なくなるよう交渉しなければなりません。
直接的に過失相殺による減額を減らす方法とは少し異なりますが、「片側賠償」を目指して交渉することも、過失相殺後の受取額を増やすことにつながります。
この2点について見ていきましょう。
過失相殺を減らすための交渉のコツ
加害者側と過失割合の交渉をする際は、正しい事故状況を証明できるものを用意しておくべきです。
過失割合算定の基礎となる事故状況をめぐっては、加害者側と認識がずれていたり、加害者側が自分に不利な事故状況を認めなかったりすることがあります。
正しい事故状況が認められなければ正しい過失割合にはならないため、以下のような証拠を集めましょう。
- 事故車のドライブレコーダー
- 目撃者の証言
- 事故現場付近の監視カメラの映像
- 実況見分調書
監視カメラ映像は所有者にお願いしても見せてもらえない可能性がありますが、弁護士を挟むと見せてもらえることもあります。映像が入手できずお困りの場合は弁護士に相談してみてください。
実況見分調書は、人身事故において警察が作成する、事故の状況を調査した結果を記載した書面です。
公的機関により作成されており中立性が担保されていることから、重要な証拠となるでしょう。
実況見分調書に記載されている内容や、入手方法を知りたい方は『実況見分の流れや注意点!聞かれる内容や過失割合への影響、現場検証との違い』の記事をご覧ください。
「片側賠償」を目指して交渉するのも1つの手
交通事故では、「加害者90:被害者0」や「加害者80:被害者0」のような過失割合になることがあります。この場合は「片側賠償」となり、過失相殺は以下のようになります。
過失割合が90:0の場合
- 被害者が被った損害賠償金が500万円だとすると、過失相殺によって実際に受け取れる金額は450万円になる(500万円の10%減額)
- 加害者が被った損害賠償金が100万円だとしても、過失割合に応じて支払う金銭は生じない
被害者の損害賠償金に対して過失相殺が適用されるものの、加害者への支払額がなくなる分、差し引きしたときの受取額は多くなるのです。
例えば「被害者側は自身の過失割合は0割だと主張する一方、加害者側は被害者の過失割合は1割だと言って譲らない」というケースでは、こうした「片側賠償」を提案するのも1つの手でしょう。
どのような場合に片側賠償になるのか、片側賠償の過失相殺はどのように適用されるのかは、『交通事故の過失割合9対0とは?片側賠償のメリットや過失相殺の計算例を紹介』でさらに詳しく解説しています。
過失相殺に納得できないなら弁護士に相談しよう
過失相殺は受け取れる損害賠償金額に大きく影響する重要なものです。だからこそ、加害者側の任意保険会社も過失相殺についてはシビアに交渉してくるでしょう。
もしも過失相殺に関して少しでも疑問や不安があるのなら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
ここからは、その理由について紹介します。
なお、アトム法律事務所では電話・LINEにて無料相談を実施中です。
適切な過失割合の算定に関するお悩みも多く寄せられております。お気軽にご利用ください。
弁護士なら法的知識に基づいた正しい過失割合を主張できる
弁護士に相談すると、法的根拠に基づいた過失割合を主張できるようになります。
過失割合は事故状況をもとに、過去の判例なども参考にしながら柔軟に算定するものなので、確固たる答えがあるわけではありません。
その中で実際の事故状況に沿った適切な過失割合を算定するためには、専門知識が必要です。
被害者ご自身が専門書や過去の判例などを調べて過失割合を算定しても、加害者側の任意保険会社は根拠に欠けるとして受け入れないでしょう。
よって、専門家である弁護士によって算定された過失割合を知ることは非常に重要なのです。
示談交渉まで依頼すればさらに効果的
より確実に過失相殺を適切なものにするためには、示談交渉まで弁護士に任せることがおすすめです。
いくら弁護士が算定した過失割合であっても、実際に交渉に当たるのが被害者ご自身である場合、加害者側の任意保険会社はなかなか聞き入れようとしません。
示談交渉では、主張に根拠があるかだけでなく、「誰が交渉しているのか」によって結果が変わることもあるのです。
実際、「弁護士が出てきたら被害者側の主張を受け入れる」という方針を取る保険会社もいます。
示談交渉を有利に進め、適切な過失割合とするためには、弁護士を立てることがおすすめです。
弁護士費用が心配な方へ
通常、弁護士に示談交渉を依頼するためには費用がかかります。
しかし「弁護士費用特約」を使えば、保険会社が一定の弁護士費用を支払ってくれるので、自己負担が0円で済むことも多いです。
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相談だけでも過失相殺や示談交渉のポイントなどを聞けるので、ひとまず一度、使える弁護士費用特約の有無を確認し、弁護士事務所に問い合わせてみると良いでしょう。
弁護士なら過失割合の交渉以外のメリットも多い
交通事故に関して弁護士に相談・依頼するメリットは、適切な過失割合とすることによる賠償金減額の軽減以外にもさまざまあります。
弁護士に依頼・相談するメリットは、たとえば以下の通りです。
- 示談交渉がスムーズに成立することにより、早く損害賠償金を受け取れる
- 弁護士基準で計算した金額での示談交渉により、受け取れる損害賠償金の増額が見込める
- 被害者が自分で保険会社とやり取りする必要がなくなるので、精神的負担を減らし、治療やリハビリ、日常生活への復帰に専念できる
- 賠償金減額につながる行動を指摘し防いでくれる
- 賠償金を増額すべき事情がある場合、増額幅が最大になるよう交渉してもらえる
- 適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まる
弁護士に相談・依頼するメリットは『交通事故を弁護士に依頼するメリットと必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』で詳しく解説しています。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了