交通事故の過失割合9対0とは?片側賠償のメリットや過失相殺の計算例を紹介
過失割合は、10対0、9対1、8対2のように、加害者側と被害者側の割合を足して10になるのが基本です。しかし、中には9対0のように、足しても10にならないことがあります。
これは「片側賠償」と呼ばれるもので、過失割合10対0(加害者が10)を主張しているが、示談交渉がうまくいかず9対1になりそうだという被害者の方に、ぜひ知っておいていただきたいお話です。
そこでこの記事では、次のことを解説していきます。
- 過失割合9対0のような片側賠償の仕組み
- 過失割合9対0のような片側賠償のメリット・デメリット
過失割合9対0について知っておくことで、受け取れる損害賠償金を増額させられたり、示談交渉を早く終わらせたりできることもありますので、ぜひご確認ください。
目次
まずは過失割合の基本知識をおさえよう
過失割合9対0について見ていくにあたり、まずは過失割合とは何か、過失割合が損害賠償金にどのような影響を及ぼすのかについて解説していきます。
過失割合について理解しておけば、過失割合9対0についての解説がわかりやすくなるので、まだ知らない方はぜひご確認ください。
過失割合について基本的なことは知っているという方は、次の章「過失割合が9対0とはどういうこと?」に進んでください。
過失割合とは、当事者双方の責任を示すもの
過失割合とは、交通事故が起きた責任が、当事者双方にそれぞれどれくらいあるかを割合で示したものです。
過失割合は、事故発生時の状況を基準にして決められます。事故発生時の状況は、ドライブレコーダーや防犯カメラに映った映像、事故当事者・目撃者の証言、警察が作成した実況見分調書などから確認します。
過失割合を決める具体的な流れは次の通りです。
- 事故類型に応じた「基本の過失割合」を決める。
- 「基本の過失割合」に、「修正要素」を反映する。
基本の過失割合は、「交差点の出会い頭での直進車同士の事故」、「横断歩道での歩行者と自転車の衝突事故」、「自動車同士の追突事故」など、事故の類型ごとにおおよそ決まっています。
修正要素とは、飛び出しはあったか、速度違反はあったかなどの細かい事情のことを指します。細かい事情(修正要素)を加味して基本の過失割合を修正し、最終的な過失割合を決めるのです。
過失割合に関する詳細な説明や事例は、『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』をご覧ください。
過失割合は損害賠償金の金額に影響する
被害者にも過失割合がついた場合、受け取れる損害賠償金はその割合分、減額されてしまいます。
たとえば過失割合が8対2(加害者が8)だった場合、被害者が加害者から受け取れる損害賠償金は2割減額され、8割となります。このことを、「過失相殺」といいます。
慰謝料や損害賠償額が高額であると、過失割合の影響は大きくなります。
過失相殺の計算例や、過失相殺による減額分をカバーしたりおさえたりする方法については、関連記事『過失相殺をわかりやすく解説!計算方法や交通事故判例の具体例も紹介』をご覧ください。
加害者からの請求額にも過失割合が影響する
交通事故では被害者も加害者から賠償請求されることがありますが、その場合は請求された金額のうち、過失割合分を支払わなければなりません。
過失割合が8対2(加害者が8)だった場合、被害者は相手方から請求された金額のうち2割を支払わなければならないのです。
過失割合のポイント
被害者にも過失割合がついた場合
- 損害賠償金が、被害者の過失割合分減額される
- 加害者に請求された金額のうち、被害者の過失割合分を支払わなければならない
上記を踏まえたうえで、過失割合9対0について確認していきましょう。
過失割合が9対0とはどういうこと?
過失割合9対0は、「片側賠償」と呼ばれます。一体どういうことなのか、どのような場合に片側賠償になるのか、詳しく見ていきましょう。
過失割合9対0とは「片側賠償」のこと
交通事故の過失割合9対0とは、「被害者にも過失が1割あるが、加害者が被害者に対する損害賠償請求権を放棄したため、被害者が支払う損害賠償金は0割で良い」状態を言います。
過失割合9対1と9対0の違いは、以下のとおりです。
- 9対1:被害者側に1割の過失があるため、被害者が受け取れる損害賠償金は9割だけとなる。なおかつ、被害者は加害者から請求された損害賠償金の1割を支払う。
- 9対0:被害者側に1割の過失があるため、被害者が受け取れる損害賠償金は9割だけとなる。しかし、被害者は加害者から請求された損害賠償金を支払わなくて良い。
このように、事故の当事者双方に過失があるものの、一方のみが損害賠償を行うことを、「片側賠償」または「片賠(かたばい・へんばい)」といいます。
片側賠償には9対0の他に、8対0や7対0などもあります。
初めて9対0のような過失割合を見た時には、「本当に大丈夫なの?」「そんな過失割合でもいいの?」と疑問に思うかもしれません。しかし実際に示談交渉の結果、片側賠償になるケースはありますし、片側賠償にすることでメリットが生じる場合もあります。
片側賠償のメリットは後ほど解説するので、まずはどのような場合に片側賠償になるのか、確認していきましょう。
過失割合9対0になる仕組み|どんな時に片側賠償になる?
過失割合9対0のような片側賠償になるのは、被害者側と加害者側の間でどうしても過失割合の合意が取れないときです。
例えば加害者側が過失割合9対1(加害者側が9)を主張していて、被害者側が過失割合10対0(加害者が10)を主張していたとします。
この場合、通常は話し合いのうえ9対1、10対0どちらかになることが多いのですが、双方が一切譲歩しない場合には、折衷案として過失割合9対0になることがあるのです。
具体的には、次のような経緯で過失割合9対0になる場合があるでしょう。
(1)示談交渉で過失割合について話し合う。
- 加害者側の主張
過失割合9対1にして、加害者が支払う損害賠償金を9割だけにし、被害者が支払う損害賠償金を1割にしたい。 - 被害者側の主張
過失割合10対0にして、加害者が支払う損害賠償金を10割にし、被害者が支払う損害賠償金を0割(なし)にしたい。
(2)加害者側も被害者側も譲歩せず交渉がまとまらないので、折衷案として過失割合9対0にする。その結果、次のようになる。
- 加害者は、被害者に支払う損害賠償金が9割だけで良い代わりに、被害者から損害賠償金を支払ってもらえない。
- 被害者は、加害者から損害賠償金を9割しか支払ってもらえない代わりに、加害者に損害賠償金を支払わなくて良い。
このように、過失割合を9対0にすれば、当事者双方の希望がある程度満たされます。
双方が自分の主張を100%通そうとしてこのまま交渉が長引き裁判になったり、交渉の末に相手方の主張する過失割合になったりするよりは良いと判断すれば、過失割合9対0で合意することになるでしょう。
補足|「過失割合9対0=被害者の過失0」ではない!
通常、過失割合10対0(加害者側が10)は被害者の過失0、つまり被害者に過失はないということを示します。
しかし、片側賠償によって過失割合9対0になった場合、それは被害者の過失が0ということではありません。
片側賠償において「被害者側の過失割合0」が意味するのは、「本当は被害者にも過失割合があるけれど、加害者が被害者に対する損害賠償請求を放棄したため、被害者が支払う損害賠償金は0割で良い」ということです。
したがって、過失割合9対0における被害者の過失割合0とは、「被害者にも過失が1割あるが、加害者に支払う損害賠償金は0割で良い」という意味です。その点をよく理解しておきましょう。
過失割合9対0など片側賠償のメリット・デメリット
被害者側と加害者側の主張の折衷案として過失割合を9対0のような片側賠償にした場合、具体的にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
被害者側から見たメリットを4つ、デメリットを1つご紹介します。
メリット(1)加害者に支払う賠償額が0になる
先述の通り、過失割合が9対0になれば加害者側から賠償請求されていたとしても、実際に支払う金額はその0割、つまり0円で済みます。
もし過失割合が9対1になってしまったら、過失相殺により加害者から支払われる金額が9割だけになるうえ、加害者から請求されている金額の1割を支払わなければなりません。
実質的な獲得金額は「加害者に請求した金額の9割-加害者から請求された金額の1割」になってしまいます。
結局は、加害者に請求した金額の9割以下しか得られないのです。
しかし、過失割合が9対0になれば実質的な獲得金額は「加害者への請求額の9割」になります。加害者への支払い額がなくなる分、得られる金額が増えるのです。
ポイント
- 片側賠償でない場合
実際に被害者が受け取れる損害賠償金は、「過失相殺後の金額-加害者に対して支払う金額」 - 片側賠償の場合
実際に被害者が受け取れる損害賠償金は「過失相殺後の金額」
メリット(2)対人・対物賠償保険の利用により保険料が上がらず済む
過失割合が9対0になり、加害者への支払い額がなくなると、自身の対人・対物賠償保険を使う必要がなくなります。
その結果、保険の等級が下がり翌年からの保険料が上がることを防げます。
対人・対物賠償保険とは、交通事故で相手方に支払う賠償金を保険金でまかなうためのものです。
もし対人・対物賠償保険を使えば、加害者への支払い負担を減らせる一方で、保険の等級が下がるため翌年からの保険料が上がってしまいます。
しかし、片側賠償なら加害者に対して支払う損害賠償金はないため、そもそも対人・対物賠償保険を使う必要がないのです。
「加害者側への支払額をなくす」ことに加え「保険料の上昇を防ぐ」こともでき、金銭的メリットが大きくなります。
メリット(3)加害者側と折り合いをつけられる
過失割合で加害者側と争った場合、交渉が長引いた末に加害者が主張する過失割合に決まってしまう可能性もあります。
しかし、過失割合について交渉が長引きそうなときに過失割合9対0を提案すると、お互いの主張をある程度反映した案として、加害者側と折り合いをつけられる可能性があります。
その結果、ある程度被害者側の主張も通し、なおかつ早めに、過失割合に関する交渉を終わらせられるのです。
メリット(4)任意保険会社に示談交渉してもらえる
片側賠償だと被害者側の過失割合は0ですが、過失割合10対0の場合とは違い自身の任意保険による「示談代行サービス」を使えます。
これにより、被害者は自分自身で時間や労力をかけて示談交渉にあたる必要がなくなります。
示談代行サービス
自身の任意保険の担当者に示談交渉を代行してもらえるサービス。
過失割合が10対0で被害者側に過失がない場合は利用できない。
過失割合9対0などの片側賠償では、被害者側の過失割合は10対0の場合と同様に0です。
しかし、先述の通り、片側賠償における「加害者の過失割合0」とは「被害者側に過失がない」ということではありません。
よって、片側賠償で被害者側の過失割合が0になっている場合でも、示談代行サービスは利用可能です。
示談代行サービスが使えても弁護士を立てた方が良いこともある
過失割合の交渉だけでなく、慰謝料や損害賠償金の増額交渉もしたい場合は、たとえ示談代行サービスが使えたとしても弁護士を立てることをおすすめします。
その理由は以下の通りです。
- 示談代行サービスよりも幅広いサポートを受けられる
- 示談代行サービスで保険担当者に示談を任せるより、高額な賠償金を獲得できる可能性がある
弁護士を立てるにあたっては弁護士費用が心配されがちです。しかし、弁護士費用特約があれば、保険会社が弁護士費用を支払ってくれるので、被害者は自己負担ゼロで弁護士を立てられます。
また、法律相談料や着手金が無料の法律事務所もあります。
詳しくは、以下の関連記事をご確認ください。
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デメリット|受け取れる損害賠償金が減額される
加害者側から受け取れる損害賠償金の金額は、被害者が負った損害のうち、加害者側の過失割合分のみです。
つまり、加害者側の過失割合が10割なら損害をすべて賠償してもらえますが、加害者側の過失割合が9割なら損害の9割だけしか賠償されないのです。
過失割合9対0の場合は、加害者側の過失割合が9割なので、損害賠償金は被害者が負った損害の9割だけとなります。
過失割合が10対0の場合に比べると、被害者が受け取れる金額が減ってしまうのが、過失割合が9対0となるデメリットと言えるでしょう。
しかし、仮に過失割合9対1(加害者が9)となっていたら、被害者は受け取れる損害賠償金の金額が9割になるうえ、加害者に請求された金額の1割を支払わなければなりません。
そのことを考えると、加害者に支払う金額がなくなるだけでも被害者にとっては良いとも言えます。
過失割合9対0で過失相殺を計算してみよう
ここまで、過失割合9対0のメリット・デメリットをご説明してきましたが、実際に損害賠償金がどのように変わるかはイメージしづらいかもしれません。
そこで、ここからは実際に過失割合9対0で過失相殺した結果、損害賠償金がどうなるか計算してみましょう。
例として、以下のモデルケースで計算していくこととします。
モデルケース
- 損害賠償金の金額
- 被害者が加害者に請求する損害賠償金:300万円
- 加害者が被害者に請求する損害賠償金:50万円
- 過失割合
- 被害者側の主張:過失割合10対0(加害者側が10)
- 加害者側の主張:過失割合9対1(加害者側が9)
- 示談交渉の結果:過失割合9対0(加害者側が9)
過失割合9対0のメリット・デメリットがよりわかりやすいよう、過失割合10対0や過失割合9対0で過失相殺を行った結果と比べてみましょう。
過失割合9対0の場合の損害賠償金の金額
過失割合9対0の場合、過失相殺の結果、被害者が受け取れる損害賠償金は以下のとおりになります。
- 被害者が加害者から支払ってもらえる金額
300万円×9割=270万円 - 被害者が加害者に支払う金額
50万円×0割=0円 - 過失相殺の結果
被害者は加害者側から、270万円-0円=270万円受け取れる。
先述のとおり、加害者側から受け取れる損害賠償金の金額は少なくなるものの、被害者が加害者に支払う損害賠償金は0円ですみます。
過失割合10対0の場合と比較
もし被害者側の主張を通すことができ、過失割合10対0となっていたら、被害者が受け取れる損害賠償金は以下のようになっていました。
- 被害者が加害者から支払ってもらえる金額
300万円×10割=300万円 - 被害者が加害者に支払う金額
50万円×0割=0円 - 過失相殺の結果
被害者は加害者側から、300万円-0円=300万円受け取れる。
もし被害者側の主張が通っていたら、過失割合9対0のときよりももらえる賠償額が多かったことがわかります。これが、過失割合9対0のデメリットです。
ただし、主張を続けて過失割合10対0と認められるかどうかはわかりません。裁判になって解決まで時間がかかったり、加害者側の主張する過失割合とされたりする可能性もあることを、念頭に置いておきましょう。
過失割合10対0の事故類型や、過失割合10対0を主張する際の注意点などについては関連記事『交通事故で過失割合が10対0になる場合とは?』で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
過失割合9対1の場合と比較
一方、お互い譲歩せず示談交渉を続けた結果、加害者側の主張する「過失割合9対1」になってしまった場合はどうなるのでしょう。
この場合、過失相殺をし、双方が受け取れる損害賠償金を差し引きする「相殺払い」をした結果、被害者が受け取れる金額は以下のとおりになります。
- 被害者が加害者から支払ってもらえる金額
300万円×9割=270万円 - 被害者が加害者に支払う金額
50万円×1割=5万円 - 過失相殺・相殺払いの結果
被害者は加害者側から270万円-5万円=265万円受け取れる。
この場合は、被害者にも過失割合がつくため、被害者も加害者に対して損害賠償金を支払わなければなりません。そのため、被害者が受け取れる金額は、過失割合9対0の場合の方が多くなっています。
もし過失割合9対1になりそうなところを9対0にできたら、受け取れる損害賠償金が増えます。
これが、過失割合9対0のメリットの側面です。
過失割合9対1の事故類型や、過失割合9対1だからこそ注意したいポイントについては関連記事『交通事故で過失割合9対1になるケースと示談金相場への影響』で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
過失割合9対0など片側賠償を目指すと良いケース
過失割合の交渉に行き詰まったら、被害者・加害者双方にメリットがある片側賠償を主張してみるのも1つの手です。
特に片側賠償の主張が停滞した交渉の打開策となりうるケースを2つ紹介します。
加害者側が9対1や8対2を主張してくる
「自分では過失0だと思っているが、加害者側は被害者にも1割~2割程度の過失があると主張してくる」というような場合は、過失割合9対0を目指すのも1つの手です。
加害者側が被害者にも過失があると主張してくる理由の1つに、「過失相殺により被害者に支払う賠償金額を減らしたい」というものがあります。
過失割合9対0ならそうした加害者側の目的通り、過失相殺が適用されます。頑なに10対0を主張し続けるよりも加害者側に受け入れてもらいやすくなるでしょう。
被害者側からすれば過失相殺が適用されるのは痛いところです。しかし、加害者への支払い額が無くなる分、過失割合9対1になるよりは実質的な獲得金額が多くなります。
また、早く示談が成立することで早く示談金を受け取ることもできるので、こうしたメリットと照らし合わせて過失割合9対0も検討することがおすすめです。
加害者側に請求されている賠償金が高額
加害者側から請求されている賠償金が高額で、なおかつ過失割合10対0が難しい場合も、9対0など片側賠償を検討すると良いでしょう。
たとえば加害者側の車が高級車であり、修理費として800万円請求されていた場合、過失割合9対1でも80万円を支払わなければなりません。
場合によっては加害者から支払ってもらう賠償金額を超えてしまい、被害者なのに自身が受け取る示談金額と差し引きした結果0またはマイナスになってしまうこともあるでしょう。
しかし、片側賠償になれば加害者への支払い額が無くなるのです。
ただし、加害者からの請求額が大きい場合、加害者側からすれば片側賠償に合意するメリットは少なくなります。
かえって示談交渉が長引き示談金獲得の時期が遅れるようであれば、それでもなお片側賠償にこだわるべきか、被害者側の過失を受け入れて早く示談を成立させるべきか、改めてメリット・デメリットを考え直す必要があるでしょう。
過失割合9対0など片側賠償を目指すポイント
加害者側が納得しないなら一度弁護士に相談
過失割合9対0は被害者側・加害者側それぞれのメリットをある程度確保した折衷案です。
しかし、加害者から被害者への請求額が大きい場合や、加害者側が「もう少し交渉すれば被害者を説得できる」と考えている場合は、折衷案であっても受け入れられないことは十分にありえます。
この場合、加害者側の「片側賠償にはしない」という意思は強いと思われるため、一度弁護士に相談し、アドバイスを受けた方が良いでしょう。
アトム法律事務所では、無料で電話・LINE相談を受け付けています。無料相談のみのご利用も可能なので、お気軽にご利用ください。
弁護士を立てれば10対0にまで持ち込める可能性もある
加害者側の任意保険会社との交渉が難航し、折衷案として過失割合9対0で話がまとまりそうという場合でも、弁護士が介入することによって過失割合10対0にできる可能性があります。
片側賠償になれば、加害者側の主張する過失割合に決まるよりも、受け取れる損害賠償金への影響が小さく済みます。しかし、被害者側の主張する過失割合で示談が成立するのであれば、それに越したことはありません。
弁護士から見れば「これなら過失割合9対0ではなく10対0にできる」という場合もあります。示談が成立してしまう前に、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士費用が心配な場合は?
最後に、「弁護士に相談したくても弁護士費用が高額になるのが心配」といった方に向けて、弁護士費用の負担を軽くする方法をご紹介します。
弁護士費用特約があれば自己負担0円で弁護士を立てられる
弁護士に相談したいけれど弁護士費用が心配な方は、弁護士費用特約をご利用ください。
弁護士費用特約とは、加入している任意保険会社に弁護士費用を負担してもらえる制度のことです。
弁護士費用特約を利用すれば、報酬金や着手金などの弁護士費用を合計300万円まで、相談料を10万円まで、保険会社に負担してもらえます。
最終的な損害賠償金が数千万円にのぼらない限り、弁護士費用は300万円以内でおさまることが多いので、弁護士費用特約を使えば、被害者自身は弁護士費用を全く負担しなくていいのです。
なお、自身の保険に弁護士費用特約が含まれていないときには、家族の弁護士費用特約を使える場合があります。
関連記事
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- 家族の弁護士特約が使える方:弁護士特約は家族も使える!補償範囲や確認方法、重複加入の必要性も解説
弁護士に依頼する費用対効果は?
示談交渉を弁護士に依頼すると、獲得示談金について以下のメリットが期待できます。
- 片側賠償もしくは過失割合10対0に持ち込むことで実質的な獲得示談金が増える
- 示談金そのものも増額させられる
弁護士を立てることで片側賠償や過失割合10対0が実現しやすくなることは、すでに解説したとおりです。
加えて、弁護士を立てると示談金そのものも、加害者側が提示するものより増額させられる可能性があります。
加害者側の提示額は初めから低めに算定されていることが多いですが、それを被害者自身での交渉で増額させようと思っても限界があります。
示談交渉の経験・スキルや示談金に関する知識は加害者側の任意保険会社のほうが圧倒的に豊富ですし、「弁護士が出てこない限り大幅増額には応じない」という方針を取る保険会社もあるからです。
自賠責基準や任意保険基準は加害者側の提示額の相場、弁護士基準は弁護士が主張できる、過去の判例に基づく相場
こうしたことを踏まえると、弁護士費用特約が使えず費用をかけて弁護士を立てることになったとしても、それにより得られる金銭的メリットは十分にあることが多いです。
さらに、弁護士を立てると各種手続きや加害者側とのやり取りも任せられるため、精神的・時間的・体力的メリットも受けられます。
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現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
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士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了