交通事故の現場検証とは?実況見分との違いや流れ、立ち会い時の注意点

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交通事故が起きて人がケガをすると、事故の状況を当事者の話などから確認する「実況見分」という警察の任意調査がなされます。

しかし、ひき逃げや当事者同士の話が食い違っているような場合など、事件性の高い重大事故では、「現場検証」と呼ばれる強制力のある捜査を行うことがあります。

もっとも、当事者からすれば実況見分も現場検証も、していることはほぼ同じです。

この記事では、交通事故の現場検証についてやさしく・丁寧に解説します。よく混同される「実況見分」との違い、現場検証が行われるタイミングや流れ、かかる時間、立ち会うときの注意点、そして後日に行われるケースまで、知っておきたいポイントをご紹介します。

事故後に不安なく対応するための基礎知識として、ぜひご活用ください。

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現場検証と実況見分の違い

現場検証とは?重大な事故で行われる「強制捜査」

検証(現場検証)とは

現場を対象として,五官(眼・耳・鼻・舌・皮膚の五つの感覚器官)の作用により、その存在・形状・性質及び状態を認識することを目的として、強制的に行う処分のこと

要するに「現場検証」とは、交通事故の事故現場や状況を調べる目的で捜査を行う手続きです(刑事訴訟法218条、220条)。

現場検証の対象となりやすい事故の例として、以下のようなケースがあります。

  • ひき逃げ
  • 飲酒運転
  • 無免許運転
  • 死亡事故
  • 危険運転致死傷罪が疑われる事故
  • 当事者同士の主張が食い違っている事故

また、現場検証で明らかにするものとしては以下のようなものがあります。

  • 事故当時の車の速度
  • 事故当事者の位置関係
  • 当事者の視界状況
  • 事故相手を発見できた距離、地点
  • 飲酒運転の車の飲酒後の走行ルート
  • ひき逃げの車の逃走ルート

この現場検証の大きな特徴は、「強制捜査」にあたる点です。つまり、警察が裁判所から「検証許可状」と呼ばれる令状を取得し、当事者の同意がなくても調査が実施されます。

また、事故関係者の立ち合いや説明が求められることが多いです。

実況見分とは?一般的な交通事故で行われる「任意捜査」

一方で、「実況見分」は、多くの交通事故で行われる警察の基本的な捜査手続きです。

こちらは令状が不要な「任意捜査」で、手続きには当事者の同意が必要となります。

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現場検証と実況見分の違いまとめ

現場検証は強制捜査、実況見分は任意捜査という刑事訴訟法上の手続きは異なりますが、実際に現場で行われることや作成される書類の証拠能力は同じです。

実際に被害者の方が警察に協力を要請されることがあっても、それが現場検証なのか実況見分なのかは、基本的に気にしなくてよいでしょう。

交通事故の現場検証はいつ・どんな流れで行われるのか

交通事故の現場検証が行われるタイミング

現場検証が行われる際は、事前に被害者にも電話があり、立ち合いの依頼や日程調整が行われます。

交通事故の現場検証(実況見分)は、以下のようなタイミングで行われます。

  • 事故の発生直後(警察到着時)
  • 事故から数日後
  • 状況により2回目の現場検証が行われることもある

事故発生場所が公道であったり、任意で現場の調査ができる場合は、現場検証ではなく実況見分として行われることが多いです。

事故発生直後は事故現場の保存が不十分なケースも多く、天候や交通状況によっては後日あらためて現場検証が計画されることもあります。

交通事故の現場検証には立ち会った方がいい?

現場検証(実況見分)では、事故の関係者がそのときのスピード、車や人の位置、見え方などを説明し、それをもとに警察官が図面や写真を使って現場の状況を記録していきます。

できあがった記録は「検証調書(実況見分調書)」としてまとめられ、事実関係の確認の材料として非常に重要な役割を果たします。

ご自身の認識をしっかり記録として残し、検証してもらうためにも、現場検証には立ち会うべきです。

交通事故の現場検証にかかる時間の目安

検証にかかる時間は、検証内容や状況によって異なりますが、一般的には30分〜2時間程度で済むことが多いです。

ただし、ドライブレコーダーが無かったり、検証内容が複雑な場合は、半日ほど拘束されることもあります。

当日は、その後の予定を入れず、時間に十分な余裕を持って臨むことが重要です。

交通事故の現場検証の流れ

現場検証(実況見分)の一般的な流れは以下の通りです。ここでは、事故直後の現場検証を想定しています。

  1. 交通事故の受理
  2. 警察官の現場到着
  3. 一般の車両の交通整理
  4. 警察官による事故現場の撮影、ブレーキ痕、車両の位置などの確認
  5. 目撃者や当事者の供述聴取
  6. 計測・記録、現場のスケッチや図面の作成
  7. 必要があれば再現走行や検証

交通事故で現場検証に立ち会うときの注意点

現場検証に立ち会うよう警察から求められたり、現地で納得のいかないことが起きた場合、以下の点に注意して臨みましょう。

  • 嘘の説明やあいまいな供述は避け、記憶に沿って正確に答える
  • わからないことは素直に「覚えていない」と伝えても問題なし
  • 警察が作成する報告書に納得いかない場合は、その旨伝える
  • 損保会社や弁護士など、専門家に相談してから立ち会うことも可能

相手方の主張や、警察官から「相手はこう言っていますが、これで間違いないですね?」と問われた際に、自身の記憶と異なるのであれば、遠慮せずに「いいえ、私の記憶ではこうです」と明確に訂正を求めましょう。

警察の現場検証結果は、事故相手の刑事処分や損害賠償請求に影響するため、慎重な対応が大切です。

交通事故で現場検証が実施されないこともある?

すべての事故で必ず現場検証が行われるわけではありません。

例えば、人がケガをしていない物損事故(物件事故)の場合、原則として詳細な現場検証・実況見分は行われません 。警察は「物件事故報告書」という簡易的な書類を作成するに留まります。

また人身事故であっても、事故状況が明白であったり、捜査方針や証拠の有無などによって省略されることがあります。

なお、現場検証がない場合でも、損害保険会社が独自に現場調査を行うことがあります。

交通事故の現場検証後にやるべきこと

交通事故の現場検証が終わっても、事故に関する対応はまだ続きます。

現場検証で得られた情報は、被害者にとっても損害賠償の交渉に大きく影響するため、検証後の対応が重要です。

ここでは、現場検証が終了した後にやっておくべき基本的な3つの対応をわかりやすくご紹介します。

  1. 検証内容を確認する
  2. 早めに弁護士に相談して今後の対応を確認する
  3. 保険会社への損害賠償請求の準備をする

(1)検証内容を確認する

現場検証が終わると、警察によって「検証調書」「実況見分調書」「現場見取図」などの書類が作成されます。

これらには事故当時の状況や関係者の供述、車両の損傷状況などが記録されており、後の処分や損害賠償の判断材料となる重要な証拠です。

これらの書類は、事故加害者の刑事処分が決定したあとで閲覧することができます。

検察庁への問い合わせをすることが必要になりますが、必要な手続きや書類は刑事処分の結果によって変わってきます。

手続きや書類が煩雑な部分もあるため、閲覧手続きは弁護士に依頼して任せてしまうのが一番スムーズです。

(2)早めに弁護士に相談して今後の対応を確認する

事故の過失割合、損害賠償額などで争いがある場合は、なるべく早めに交通事故に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士は現場検証の資料をもとに、今後の対応方針や保険会社との示談交渉を担ってくれます。

また、弁護士がつくことで、治療期間の延長に応じてもらいやすくなったり、示談金額の増額も見込める場合があります。

(3)保険会社への損害賠償請求の準備をする

実際に損害賠償請求をしたり、金額の交渉をする場面では、現場検証の資料が役立ちます。

例えば、事故相手側が「こちらの信号は青だった」と言ってきたとしても、現場検証の結果、相手側の信号は赤だったと調書に書かれていたり、信号は赤だったと話している供述調書が手元にあれば、簡単に主張を覆せます。

現場検証の資料をもとに、適切な損害賠償が受けられるように準備をしましょう。

現場検証が再度行われることも?後日・2回目のケース

後日になってから現場検証が行われるケース

交通事故の現場検証は、事故直後に行われるのが一般的ですが、後日に現場検証が行われることもあります。

例えば、事故の当事者が重傷を負って救急車で搬送されていたり、または強い精神的ショックで話ができないといった理由により、事故直後に立ち会いができない場合、現場検証は後日あらためて行われます。

この場合、警察はまず現場に残っていたもう一方の当事者や目撃者から話を聞いて捜査を進めている可能性があります。

そのため、後日、警察が入院先や自宅に訪れて事情聴取を行う場合には、事故相手の主張に引きずられないよう、自分の記憶をもとに冷静に説明することが必要です。

説明の内容が変化してしまうと、「供述内容が変遷しており、信用できない」と認定されてしまうこともあります。

2回目(再度)の現場検証が行われるケース

基本的に、現場検証や実況見分は1回で終了しますが、特別な理由があるときには、再度の現場検証が行われることもあります。

  • 新たな決定的証拠(防犯カメラ映像、ドライブレコーダーなど)が見つかった
  • 最初の説明と映像などの証拠が食い違っている 
  • 事故直後に十分な検証ができなかった

このような場合には、警察の判断で必要とされ、2回目の検証が実施されることがあります。

ただし、単に「調書に納得できない」「もう一度話したい」といった理由だけでは、再検証は基本的に認められません。

交通事故の現場検証|対応が不安なら弁護士にご相談を

交通事故の現場検証は、事故の原因や責任を正確に明らかにするための大切な手続きです。

もし現場検証やその後の処理に不安を感じたときは、一人で抱え込まず、弁護士など法律の専門家に相談することをおすすめします。

弁護士に相談・依頼することで現場検証に同行させたり、現場検証の結果できた資料を取り寄せさせたり、それを使って保険会社との交渉を有利に進めさせることができます。

まずはお気軽に、弁護士にご相談ください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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