自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説

交通事故の被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者側の自賠責保険に対して、自分から損害賠償請求することをいいます。
被害者請求をすると、「自賠責保険から支払われる賠償金」を示談前に受け取れる、後遺障害等級の認定率を上げられるというメリットがあります。
その一方で、最低限の補償額である、手間がかかるなどのデメリットには要注意です。
この記事では、被害者請求のやり方や、被害者請求でもらえる金額などを解説しています。「被害者請求をした方がいいケースかどうか」も説明しているので、参考にしてください。
目次

交通事故における自賠責保険への被害者請求とは?
まずは、「交通事故で自賠責保険に被害者請求する」とはどういうことなのか、解説します。
また、同じく自賠責保険に賠償請求する方法として「加害者請求」と呼ばれるものもあるので、違いも合わせてみていきましょう。
被害者請求の仕組み|そもそも自賠責保険とは?
被害者請求とは、損害賠償金のうち加害者側の自賠責保険から支払われる分を、被害者自身で、自賠責保険会社に直接請求する方法をいいます。
自賠責保険とは、交通事故の被害者に対して最低限の補償をする保険です。
交通事故の損害賠償金は、基本的に一定額までは加害者側の自賠責保険から、それを超える部分は加害者側の任意保険会社から支払われます。
(※加害者が任意保険未加入なら、任意保険分の金額は加害者本人から支払われる)
このうち加害者側の自賠責保険から支払われる分を、自賠責保険会社に直接請求するのが「被害者請求」です。

自賠責保険への被害者請求の特徴をまとめると、以下の通りです。
被害者請求の特徴
- 示談成立前でも自賠責保険分の賠償金を請求できる
- 支払われる金額は最低限で、上限がある
※足りない分は、別途加害者側の任意保険会社や加害者本人に請求
なお、被害者請求は自動車損害賠償保障法16条で定められている権利のため、「16条請求」と呼ばれることもあります。
第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
自動車損害賠償保障法第16条第1項
被害者請求と加害者請求の違い
加害者側の自賠責保険会社から賠償金を受け取る方法として、「加害者請求」というものもあります。
加害者請求とは、加害者側の任意保険会社や加害者本人が自賠責保険分の賠償金を一旦肩代わりし、のちほど自賠責保険にその分の請求をすることです。
加害者請求の流れ
- 加害者側の任意保険会社または加害者本人が、自賠責保険分の金額も含めて損害賠償金を被害者に支払う
- あとから、加害者側の任意保険会社または加害者本人が、自賠責保険分の賠償金を自賠責保険会社に請求する
加害者請求では、被害者は加害者側の任意保険会社や加害者本人から、間接的に自賠責保険分の賠償金を受け取ります。
この点が、直接自賠責保険会社に賠償請求する被害者請求との違いです。
特に加害者が任意保険に加入している場合は、加害者請求が採用されることが多いです。全ての賠償金をまとめて任意保険会社に請求すればよく、被害者からすれば手間が省けるからです。
ただし、被害者請求をした方が良いケースもあります。
どういった場合に被害者請求すべきなのかは、次に解説します。
交通事故で自賠責保険に被害者請求した方がいいケース
被害者請求は「事故被害者全員がやること」というわけではありません。ただし、次の4つのケースにおいては被害者請求を検討すべきといえます。
被害者請求をした方がいいケース
- 加害者側との示談前に一定の金額を受け取りたい
- 被害者側の過失割合が大きい
- 加害者が任意保険に未加入
- 後遺症について後遺障害等級認定を目指す
4つのケースについて、なぜ被害者請求が必要なのかを解説します。
(1)加害者側との示談前に一定の金額を受け取りたい
示談成立前にまとまった金額を受け取りたい場合は、被害者請求を検討するとよいでしょう。
損害賠償金は、基本的に加害者側との示談成立後に受け取れます。
しかし、被害者請求は示談成立前でも可能です。つまり、被害者請求をすれば自賠責保険分の金額のみ、示談成立前に受け取れるのです。
とくに、以下のようなケースでは、被害者請求をするメリットが大きいと言えます。
- 医療費を被害者自身が立て替えているなど、交通事故による出費が膨らんでいるケース
- 示談交渉が長期化していて、なかなか損害賠償金を受け取れないケース
示談金が支払われないため金銭的な余裕がなくなると、自身に不利な条件で示談してしまう恐れがあります。
このようなリスクを防ぐために、被害者請求を行い、示談成立前に損害賠償金の一部を入手するべきといえるでしょう。
被害者請求以外の対処法も検討
示談成立前にまとまったお金が必要な場合、被害者請求以外にも「健康保険を使って医療費の立て替え負担を減らす」「自身の保険から保険金を受け取る」という方法で対応できることがあります。
まず医療費を被害者自身で立て替える場合は、健康保険の利用が可能です。
通常の保険診療と同様、医療費の負担が1割〜3割で済むため、立て替え負担が大幅に軽減されます。
健康保険の利用方法について詳しく知りたい方は『交通事故で健康保険は使える!切り替え手続きやメリットも解説』の記事をご覧ください。
また、被害者自身が加入している保険から補償を受けることで、示談成立前に損害賠償金の一部を受け取るという方法も考えられます。
詳しく知りたい方は『交通事故で使える保険の種類と請求の流れ|被害者自身の保険も使える?』の記事をご覧ください。
(2)被害者側の過失割合が大きい
過失割合とは、交通事故における責任の程度を表したものです。被害者側に過失割合が付くと、「過失相殺」によってその割合分、損害賠償金が減額されます。
しかし、自賠責保険の支払で適用される過失相殺の減額幅には制限があるため、被害者請求を行うと本来は過失相殺で減額される部分についても請求することが可能です。
例えば、被害者側に50%の過失が付いたとしても、自賠責保険からは減額されることなく、100%の損害賠償金を受け取れます。
被害者請求における過失相殺
被害者の過失割合 | 減額割合 (傷害分) | 減額割合 (後遺障害・死亡分) |
---|---|---|
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 2割減額 | 3割減額 |
9割以上10割未満 | 2割減額 | 5割減額 |
そのため、被害者側の過失が大きいときは、あえて被害者請求をおこない、加害者側の自賠責保険のみから損害賠償金を受け取った方がよい可能性があります。
(3)加害者が任意保険に未加入
加害者が任意保険に加入していない場合、示談成立後に加害者本人から損害賠償金の支払いを受けることとなるでしょう。
しかし、加害者に資力がない場合、損害賠償金が支払われなかったり、分割払いになったりする可能性があります。
このような場合でも被害者請求を行えば、ひとまず自賠責保険の支払い分を一括で受け取れるので安心です。
被害者請求以外にも対処法がある
被害者請求以外にも、運行供用者といった加害者以外に対して損害賠償金の請求が可能かどうかも検討すると良いでしょう。
運行供用者への請求に関しては『運行供用者責任とは?わかりやすく具体例つきで解説』の記事で詳しく説明しています。
また、被害者請求以外の対処法についてより詳しく知りたい方は『任意保険未加入で自賠責保険のみの事故はどう請求する?加害者の末路は?』の記事をご覧ください。
(4)後遺症について後遺障害等級認定を目指す
後遺症に関する賠償金(後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益など)を受け取るためには、後遺障害等級認定を受けることが必要です。
後遺障害等級認定において適切な等級認定を目指すなら、被害者請求を行いましょう。
被害者請求で後遺障害認定を受ける場合、必要書類は被害者自身で全て集めなければなりません。
手間はかかりますが、以下の点はメリットです。
- 審査対策がしやすい
- 認定結果が出るのとほぼ同時期に自賠責保険分の後遺障害慰謝料・逸失利益がもらえる

後遺障害認定は、「事前認定」という方法で受けることも可能です。
ただし、事前認定では提出書類のほとんどを加害者側の任意保険会社に用意してもらうため、審査対策がなかなかできません。
後遺症の存在・程度の証明が不十分で、適切な等級認定がなされない恐れがあります。
詳しく知りたい人へ
後遺障害等級認定の申請は弁護士に相談・依頼を
被害者請求により後遺障害等級認定の申請を行うにしても、過去の認定事例や専門知識に精通していなければ、どのように書類を用意すべきか判断が難しいといえます。
この点、専門家である弁護士であれば、これまでの実務経験を踏まえてどのような書類が必要か判断でき、適切な後遺障害等級に認定される可能性が高まります。
既に後遺障害等級認定の申請をされた方でも、異議申し立てをすれば再審査が受けられるので、弁護士への相談もご検討ください。
被害者請求すべきか分からないときは弁護士に相談!
被害者請求には、賠償金の一部を早く受け取れる、過失相殺による減額が軽減されるなどのメリットがあります。
しかし、一方で「自賠責保険分の金額では足りない分を、改めて加害者側の任意保険会社や加害者本人に請求せねばならず、手間がかかる」というデメリットもあります。
ご自身にとって被害者請求は有効なのか、気になる方は弁護士に相談して見解を聞くことが一番です。
弁護士なら、相手方への損害賠償請求に関する現状やお悩みについて伝えることで、被害者請求を行うべきか、被害者請求以外に適切な方法があるのかという点について、回答が可能です。
アトム法律事務所では24時間体制で法律相談の予約を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

被害者請求で受け取れる費目や金額の限度
先述の通り、自賠責保険から支払われる金額は最低限で、上限があります。
この点について確認していきましょう。
被害者請求できる費目の内訳|人身損害のみ対象
被害者請求で自賠責保険に請求できるものは、人身損害に関する損害賠償金です。物損に関する損害賠償金は受け取れません。

被害者請求で請求できる主な損害賠償費目は以下の通りです。
事故でケガを負った場合
入通院慰謝料 | 事故によるケガで入通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する補償 |
休業損害 | 事故によるケガが原因で、休業したことによる減額分の補償 |
治療関係費 | 治療費、通院交通費、入院費、看護料、雑費、診断書代など |
文書料 | 交通事故証明書や印鑑証明書など被害者請求に必要な文書料 |
事故で後遺障害を負った場合
後遺障害慰謝料 | 後遺障害の残存により、今後強いられる精神的苦痛に対する補償 |
後遺障害逸失利益 | 後遺障害が残らなければ将来得られたはずの収入に対する補償 |
事故で死亡した場合
死亡慰謝料 | 命を奪われた被害者本人や遺族の精神的苦痛に対する補償 |
死亡逸失利益 | 被害者が生きていれば得られたはずの経済的利益の喪失に対する補償 |
葬儀費 | 葬儀などにかかる費用の補償 |
上記の費目のうち、慰謝料や休業損害などは、「自賠責基準」という基準で計算された金額が支払われます。自賠責保険会社から支払われる賠償金額は法で定められているので増額交渉はできません。
治療費や文書料、葬儀費などは、一定の範囲内で実費が認められるでしょう。
自賠責基準の各費目の計算方法
- 入通院慰謝料
4,300円×(治療期間または実治療日数×2のうち少ない方) - 後遺障害慰謝料
認定された後遺障害等級に応じて32万円~1,650万円 - 死亡慰謝料
本人分400万円+遺族の人数や扶養家族の有無に応じた金額 - 休業損害
6,100円×休業日数
※2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合
自賠責基準における慰謝料の計算方法は『自賠責保険の慰謝料計算や限度額を解説|任意保険からも両方もらえる?』にて解説しています。
休業損害は、収入減の立証がある場合にかぎって日額19,000円を限度とした請求が認められる可能性もあるので、関連記事『交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方、いつもらえるかを解説』を参考に、提出資料を検討しましょう。
被害者請求で受け取れる金額には限度がある
自賠責保険はあくまで被害者の損害を最低限補償するための保険です。
よって、被害者請求で自賠責保険からもらえる金額には限度額が存在します。
具体的には、ケガの治療にかかった傷害分は120万円、後遺障害部分は等級に応じて75万円から4,000万円、死亡分は3,000万円が限度です。
- 傷害分:120万円
- 後遺障害分:75万円~4,000万円
- 死亡分:3,000万円
後遺障害分の限度額は後遺障害等級に応じて決められており、具体的な金額は以下の通りです。
後遺障害等級ごとの限度額
等級 | 限度額 |
---|---|
1級(要介護) | 4,000万円 |
2級(要介護) | 3,000万円 |
1級 | 3,000万円 |
2級 | 2,590万円 |
3級 | 2,219万円 |
4級 | 1,889万円 |
5級 | 1,574万円 |
6級 | 1,296万円 |
7級 | 1,051万円 |
8級 | 819万円 |
9級 | 616万円 |
10級 | 461万円 |
11級 | 331万円 |
12級 | 224万円 |
13級 | 139万円 |
14級 | 75万円 |
被害者請求で得られる自賠責保険の金額を超える分は、加害者側の任意保険会社または加害者本人に対して請求する必要があります。
限度額を超えた分の請求方法に関して詳しく知りたい方は『交通事故慰謝料が120万を超えたらどうなる?自賠責保険の限度額や請求方法を解説』の記事をご覧ください。
交通事故の被害者請求のやり方
交通事故で自賠責保険に被害者請求するには、必要書類を加害者側の自賠責保険会社に提出する必要があります。
具体的なやり方の流れや必要書類などをみていきましょう。
自賠責保険に被害者請求する流れ
被害者請求の流れは、以下のとおりです。
加害者側の自賠責保険会社から被害者請求の書式を取り寄せる
自賠責保険会社へ書類を提出する
書類が審査機関へ渡り、損害内容の調査が実施される
審査機関から自賠責保険会社に調査結果が報告される
調査結果にもとづいて自賠責保険から損害賠償金が支払われる
それぞれのフェーズに分けて解説します。
(1)加害者側の自賠責保険会社から被害者請求の書式を取り寄せる
被害者請求に必要な書類の多くは、加害者側の自賠責保険会社から取り寄せられます。
加害者が加入する自賠責保険会社がわからない場合は、交通事故証明書を確認してみましょう。交通事故証明書には、警察が確認した事故当事者の車検証と自賠責保険証の内容が記載されているためです。
交通事故証明書の入手方法については『交通事故証明書とは?後日取得の期限やもらい方、コピーの可否を解説』の記事をご確認ください。
なお、まれに交通事故証明書で加害者側の自賠責保険を特定できないことがあります。その場合は弁護士照会などの手段をとる必要があるので、弁護士までお問い合わせください。
(2)自賠責保険会社に書類を提出する
必要書類が揃ったら、加害者側の自賠責保険会社に提出しましょう。
具体的な必要書類はのちほど一覧で紹介しますが、加害者側に作成してもらうもの、医療機関に作成してもらうもの、自身で作成するものなどがあります。
書類を揃えるまでに時間がかかることもあるので、余裕を持って準備をしましょう。
(3)書類が審査期間に渡り、損害内容の調査が実施される
提出書類をもとに、事故状況の確認や、自賠責保険の補償対象となる事故かのチェックなどが行われます。
なお、この調査をするのは「損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所」です。
加害者側の自賠責保険会社とは別の機関で、調査は公平に行われます。
(4)審査期間から自賠責保険会社に調査結果が報告される
調査結果が自賠責保険会社に通知されると、結果をもとに、支払額が算定されます。
(5)調査結果にもとづいて自賠責保険から損害賠償金が支払われる
被害者請求で支払われる損害賠償金は、口座に振り込まれます。口座は被害者請求の申請手続き時に指定できます。
被害者請求で賠償金を受け取るまでの期間
被害者請求の手続きをしてから損害賠償金が支払われるまでの期間は、1か月以内であることがほとんどです。
被害者請求の手続きをすると、自賠責損害調査事務所が調査を行い、損害額が算定され、損害賠償金が支払われます。
自賠責損害調査事務所における損害調査所要日数(2022年度)
期間 | 割合 |
---|---|
30日以内 | 96.7% |
31日~60日 | 1.9% |
61日~90日 | 0.8% |
91日以上 | 0.6% |
参考:損害保険料率算出機構「2023年度(2022年度統計) 自動車保険の概況」
ただし、上記は被害者請求全体の統計です。後遺障害等級認定を兼ねるケースや死亡事故のケースでは、調査に1か月以上かかる割合が高くなります。
もっと早く損害賠償請求したい場合の方法
加害者側の自賠責保険への請求方法には、被害者請求の他に「仮渡金請求」もあります。
仮渡金請求では「損害の程度に応じて設定されている一定金額」が早期に支払われます。
事故でケガをした場合はケガの程度に応じて5万円~40万円、死亡した場合は290万円です。
ただし、仮渡金は損害賠償金の前払いのような形をとるので、仮渡金として受け取った金額は、あとから支払われる損害賠償金から控除されます。
なお、仮渡金請求を行った場合、被害者請求(本請求)を行えないといった制限はありません。
早くまとまったお金が必要なときは、まず仮渡金請求で当座の資金を確保し、追って被害者請求(本請求)の支払いを受けるといったことも可能です。
仮渡金制度については、『内払い金・仮渡金を解説|交通事故の慰謝料を示談前に受け取る方法』で詳しく解説しています。
被害者請求の必要書類とその取得方法
被害者請求の必要書類と取得方法は以下のとおりです。
被害者請求の必要書類・取得方法
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書 | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者自身で作成 |
交通事故証明書 | 自動車安全運転センターから取得 |
人身事故証明書入手不能理由書 (警察で物損事故扱いの場合) | 加害者側に作成を依頼 |
事故発生状況報告書 | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者自身で作成 |
医師の診断書・診療報酬明細書 (死亡の場合は死体検案書) | 受診した医療機関すべてから取得 |
施術証明書・施術費明細書 (整骨院や接骨院に通った場合) | 施術を受けた整骨院や接骨院から取得 |
通院交通費明細書 (タクシー利用の場合は領収書) | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者自身で作成 |
付添看護自認書 (病院で要付添とされた場合) | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者自身で作成 |
事業主の休業損害証明書 (給与所得者は源泉徴収票添付) (自営業者は以下の書類を添付) ・納税証明書 ・課税証明書 ・確定申告書 | 勤務先の会社に書式を渡して作成を依頼 |
後遺障害診断書 (後遺障害認定を申請する場合) | 医師に通常の診断書とは異なった書式を渡して作成を依頼 |
レントゲン写真等 | 撮影したすべての病院から取得 |
戸籍謄本 (被害者死亡の場合) | 本籍のある市区町村役場で取得 |
印鑑証明書 (未成年者の場合は以下の書類※) ・住民票 ・戸籍抄本 | 登録した市区町村役場で取得 |
委任状及び委任者の印鑑証明書 (代理人に請求を依頼する場合) | 登録した市区町村役場で取得 |
※未成年者は原則として親権者または後見人による請求となる。事故発生時は未成年でも請求時に成人している場合は被害者本人が請求する。
先述の通り、必要書類の中には加害者側の自賠責保険会社から取り寄せられるものもあります。
しかし、中には別途取り寄せなければならないものもあるので、漏れのないようしっかり確認しましょう。
各書類の取得方法や書き方は、自賠責保険への請求について解説した記事『自賠責保険とは?請求の流れと必要書類の書き方』でも紹介しているので、準備の際に参考にしてみてください。
交通事故の被害者請求のデメリットと注意点
交通事故の被害者請求には、以下のデメリットがあります。
- 被害者請求には時間と手間がかかる
- 被害者請求を拒否されるケースがある
- 被害者請求には請求期限がある
それぞれについてみてきましょう。
(1)被害者請求には時間と手間がかかる
被害者請求のデメリットとして、必要書類が非常に多く、時間と手間がかかることがあげられます。
必要書類には、自身で記入するものだけではなく、自動車安全運転センターから取得するもの、医療機関や職場に作成を依頼するものなどがあります。
必要書類の取得や作成の際に生じる費用については、被害者自身で一旦負担しなければなりません。
治療や日常生活への復帰と並行して書類を収集することになるので、ある程度の負担はかかるでしょう。
被害者請求の手続きを弁護士に任せることで負担は軽減できます。後述の「弁護士費用特約」を使えば、被害者自身の費用負担なく弁護士に依頼できるので、一度検討してみてください。

(2)被害者請求を拒否されるケースがある
自賠責保険に被害者請求をしても、無条件に認められるわけではありません。以下のようなケースでは、請求を拒否される可能性が高いです。
被害者請求を拒否されるケース
- 加害者の過失割合が0のケース
- 交通事故と損害との因果関係が証明できないケース
- 加害者がわざと交通事故を起こしたケース
- 後遺障害等級に認定されなかったケース(※後遺障害部分の費目のみ拒否)
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
加害者の過失割合が0のケース
加害者の過失割合が0の場合は、そもそも加害者に損害賠償金を支払う責任がありません。
自賠責保険は、加害者が支払うべき損害賠償金を肩代わりする保険です。加害者に損害賠償金を支払う責任がないなら、自賠責保険が肩代わりすべきお金もないので、被害者請求をしても損害賠償金は受けとれません。
交通事故と損害との因果関係が証明できないケース
自賠責保険から補償を受けられる損害は、事故と相当因果関係のあるものに限られます。
車両の損傷が判然としないほどの軽微な事故など、事故とケガとの因果関係が証明できないケースでは、請求が拒否される可能性があるでしょう。
なお、被害者請求をする場合、ケガなどの損害と交通事故との因果関係は、被害者が証明しなければなりません。
交通事故と因果関係について、関連記事『交通事故で後から痛みが…対処法と因果関係の立証方法は?判例も紹介』ではくわしく解説しています。なぜ因果関係が重要か、どういった判例があるのかを知りたい方はあわせてお読みください。
加害者がわざと交通事故を起こしたケース
自動車損害賠償保障法14条では、「保険契約者又は被保険者の悪意によつて生じた損害についてのみ、てん補の責めを免れる」と定められています。
この条文は、「事故を起こしたのがわざとではないなら自賠責保険が加害者の支払いを肩代わりするが、わざとなら肩代わりはしない」といった意味合いです。
そのため、加害者がわざと交通事故を起こした場合は、被害者請求をしても拒否されてしまいます。
後遺障害等級が認定されなかったケース
交通事故による後遺症が残った場合、被害者請求をすると、まずその後遺症が「後遺障害等級」に認定されるか審査されます。
審査の結果、後遺障害等級が認定されれば、認定された等級をもとに後遺障害に対する費目の金額が支払われます。
しかし、後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害に対する費目は支払われません。
後遺障害等級は必ずしも認定されるものではないので、被害者請求時には審査対策を施した書類を提出する必要があるでしょう。
(3)被害者請求には請求期限がある
自賠責保険に対する被害者請求には、3年という請求期限(時効)が存在します。
第十六条第一項及び第十七条第一項の規定による請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び保有者を知つた時から三年を経過したときは、時効によつて消滅する。
自動車損害賠償保障法第19条
請求期限を数え始める起点は、請求区分によって異なり、具体的には以下のとおりです。
被害者請求の請求期限
請求区分 | 請求期限 |
---|---|
傷害 | 事故発生日の翌日から3年 |
後遺障害 | 症状固定日の翌日から3年 |
死亡 | 死亡した日の翌日から3年 |
※ひき逃げなどで加害者を知ったのが上記基準日より後の場合、その日から3年
なお、被害者請求は、対象となる損害が発生してから自賠責保険への請求期限までなら、いつでも可能です。
請求期限及び限度額に達するまでなら回数に制限もありません。
なお、民法改正により、加害者に対する人身分の損害賠償請求権の時効は5年に延長されました。
しかし、被害者請求の時効は延長されてないので注意が必要です。
もし、請求期限(時効)が迫っている場合には、時効の進行を止める方法(時効の更新や完成の猶予)もあるので、弁護士にご相談ください。
被害者請求で弁護士に相談・依頼するメリット
被害者請求をしようと思った場合は、まず弁護士に相談・依頼することがおすすめです。
弁護士に相談・依頼するメリットや、弁護士費用の負担を軽減する方法を解説します。
被害者請求を弁護士に頼むメリット3つ
被害者請求を弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが生じます。
- 煩雑な手続きを一任できる
- 後遺障害等級に認定される可能性が高まる
- 被害者請求後の示談交渉で得られる金額が多くなる
それぞれについて解説します。
煩雑な手続きを一任できる
被害者請求は早期に損害賠償金を得られるといったメリットがある一方で、必要書類の収集が非常に煩雑というデメリットもあります。
弁護士に依頼すれば、被害者請求の負担を大幅に軽減できます。
弁護士に依頼することで、必要書類を被害者自身で集める手間を少なくするだけでなく、書類を素早く収集でき、損害賠償金を迅速に受け取ることも可能です。
被害者請求を行いたいが、治療や仕事、家事などで忙しい方は、弁護士への依頼を検討してみてください。
後遺障害等級に認定される可能性が高まる
交通事故の後遺障害にくわしい弁護士は、等級認定の申請方法や必要書類を熟知しています。
そのため、後遺障害の等級認定率を上げるための適切なサポートが可能です。
後遺障害等級認定の申請には、様々な資料を提出せねばなりません。
等級認定の審査機関に対して有効な資料は何か、弁護士であれば広い視野で検討可能です。
被害者が独力で全ての資料をそろえることは大変ですが、弁護士のサポートを受けられることで、被害者の負担は大きく軽減されます。
被害者請求後の示談交渉で得られる金額が多くなる
被害者請求で自賠責保険分の損害賠償金を受け取ったら、今度は残りの損害賠償金を得るため、加害者側の任意保険会社と示談交渉を行うことになるでしょう。
弁護士に依頼すれば、示談交渉を代わりに行ってもらいつつ、示談金額が増額しやすいというメリットがあります。
加害者側の任意保険会社は示談交渉において相場よりも低額な損害賠償金を提示してきますが、被害者本人による交渉で、損害賠償金を十分に増額させられることは困難です。
しかし、弁護士に依頼して示談交渉を代理してもらうと、相場の損害賠償金額に近い金額まで増額させられる可能性があります。

被害者請求後の示談交渉まで見据えるなら、弁護士に相談することをおすすめします。
ご自身のケースで、損害賠償金の内、慰謝料や逸失利益の相場がいくらくらいになるかを知りたいという方は、以下の慰謝料計算機をご利用ください。
弁護士費用特約を使えば弁護士費用の心配は不要
弁護士に相談や依頼する際の費用負担に不安がある方は、まず弁護士費用特約が使えるかどうかを確かめてみましょう。
弁護士費用特約とは、弁護士への相談料や依頼による弁護士費用を保険会社が負担してくれるオプションのことです。
保険によっても異なりますが、通常、相談料は10万円、依頼による弁護士費用は300万円を限度額として弁護士費用を負担してもらえます。
損害賠償金がよほど高額でない限り、弁護士費用が300万円をこえることはすくないので、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となるのです。

また、弁護士費用特約は、被害者自身や家族の保険に付帯されていれば利用できる可能性があります。さらには自動車保険だけではなく、火災保険やクレジットカードなどに付帯されているものも利用できることが多いです。
弁護士費用特約のメリットは大きいので、交通事故の被害者になった場合は、ご自分やご家族の保険に付帯されているか必ず確認しましょう。
弁護士費用特約の内容や利用方法を詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。
アトム法律事務所に相談・依頼するメリット
被害者請求を弁護士に頼むことを検討していても、数多くいる弁護士の中からどの弁護士に依頼すればよいのかわからない方もいらっしゃると思います。
被害者請求から任せるのであれば、交通事故の取扱実績が豊富であること、そして相手方との増額交渉のノウハウを多く持っていることがポイントです。
アトムは交通事故分野に注力
アトム法律事務所は数多くの交通事故案件を取り扱い、その中で知識を深めてきました。
被害者請求を考えている人の中でも、「少しでも早く賠償金を受け取りたい」「後遺障害等級認定を受けたい」などお悩みは様々です。あらゆる角度から最適なアドバイスとサポートができるので、安心してご相談ください。
アトムは増額実績も多数
交通事故の損害賠償金は、自賠責保険から支払われる金額だけでは不十分なことが多いです。
つまり、被害者請求をしたあとに、相手方との示談交渉によって適正な金額の獲得を目指すことになります。
アトムの弁護士が保険会社との示談交渉に介入したことで、保険会社の提示額から最終的な回収額が5.2倍に増額した実績などがあります。

アトム法律事務所の弁護士が実際に解決した実績は幅広く、比較的軽傷で済んだ事案から、重大な結果になってしまった事案まで対応可能です。
アトム法律事務所は、交通事故の被害者の方から相談料や着手金といった費用を基本的にいただいておりません。
そのため、依頼時点では原則費用負担がないことがアトム法律事務所の特徴です。
法律相談では依頼時の費用のことも気兼ねなくご相談いただけます。あらかじめ弁護士費用を詳しくお知りになりたい方は、『交通事故の弁護士費用』のページをご覧ください。
24時間365日予約受付!弁護士無料相談
アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方を対象に無料相談を実施しています。
ご自宅から弁護士のアドバイスを受けられるので、「弁護士への相談はハードルが高い」と思われる方も、気軽にお問い合わせください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了