交通事故の被害者請求とは?メリットや請求方法、必要書類を解説
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
交通事故の被害者請求とは、自賠責法第16条を根拠に、加害者側の自賠責保険に対して被害者が損害賠償金を直接請求する方法のことです。
被害者請求を行えば、示談前でも損害賠償金を受け取れます。ただし、金額の上限があること、物損部分の損害賠償金は受け取れないことなどには注意する必要があるでしょう。
この記事では、被害者請求のやり方や、被害者請求でもらえる金額、被害者請求をした方がよいケースなどを解説しています。被害者請求を検討している方は、ぜひご一読ください。
目次
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交通事故の被害者請求とは?
被害者請求とは自賠責保険に損害賠償金を直接請求する方法
被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者側の自賠責保険会社に対し、損害賠償金を直接請求する方法です。
加害者側との示談成立前であっても支払いを受けられるのが被害者請求の特徴です。必要書類を加害者側の自賠責保険に提出すれば、損害額の調査・計算が行われ、請求から1か月程度で損害賠償金が支払われるでしょう。
被害者請求は自動車損害賠償保障法16条で定められている権利のため、「16条請求」と呼ばれることもあります。
第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
自動車損害賠償保障法第16条第1項
そもそも自賠責保険とは?
自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法によって、すべての自動車に加入が義務付けられている保険です。
自賠責保険は交通事故の被害者への最低限の補償を目的としています。よって、自賠責保険から支払われる金額は、自賠責基準という基準に沿った最低限のものであるうえ、上限額も設けられています。これは、被害者請求をした場合も同様です。
交通事故の損害賠償金のうち、自賠責保険からの支払いのみでは足りない分については、加害者の任意保険などから支払いを受けることになるでしょう。

被害者請求のメリット・デメリット|他の請求方法との比較
加害者側の自賠責保険に対しては、「加害者請求」という方法で間接的に損害賠償を請求することもできます。
また、被害者請求には「本請求」と「仮渡金請求」の2種類があります。
ここからは、加害者請求や仮渡金請求と比較した、被害者請求(本請求)のメリット・デメリットを確認していきましょう。
加害者請求と比較した被害者請求のメリット・デメリット
加害者請求とは、加害者が被害者に対して損害賠償金を全額支払い、あとから自身の自賠責保険に対して保険金(自賠責保険の支払い分)を請求する方法です。
これにより被害者は、加害者を介して間接的に、加害者側の自賠責保険から損害賠償金を受け取ることになります。
なお、加害者が任意保険に入っている場合は、任意保険が被害者に対して損害賠償金を全額支払い、あとから加害者が加入している自賠責保険に対して保険金を加害者請求することが多いです。これを、「任意一括対応」と言います。
加害者請求と比較した被害者請求のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
- 被害者請求のメリット
- 示談成立前でも自賠責保険分の損害賠償金を受け取れる
- 過失相殺による減額幅が少なくなる可能性がある
- 被害者請求のデメリット
- 自賠責保険に加え、任意保険あるいは加害者本人に請求する必要があるため、手間がかかる
加害者請求の場合、基本的に示談成立後にしか損害賠償金を受け取れません。一方、被害者請求なら示談成立前でも自賠責保険分の損害賠償金を受け取れるため、早くまとまったお金が欲しい方にとっては有効でしょう。
一方、被害者請求は加害者請求に比べて手間がかかります。被害者請求を行う場合、自賠責保険に加えて任意保険か加害者本人に損害賠償を請求することになりますが、加害者請求の場合は被害者がやり取りの相手は任意保険あるいは加害者本人に一本化されるのです。
仮渡金請求と比較した被害者請求(本請求)のメリット・デメリット
被害者請求には、本請求の他に「仮渡金請求」という方法もあります。
本請求では損害額を計算したうえで被害者への支払いが行われますが、仮渡金請求では「損害の程度に応じて設定されている一定金額」が支払われます。この金額は、事故でケガをした場合は5万円~40万円、死亡した場合は290万円です。
なお、仮渡金は損害賠償金の前払いのような形をとるので、仮渡金として受け取った金額は、あとから支払われる損害賠償金からは差引かれます。
仮渡金請求と比較した被害者請求(本請求)のメリット・デメリットは、以下のとおりになります。
- 被害者請求(本請求)のメリット
- 損害に応じた金額が支払われる
(仮渡金請求より金額が大きいことも多い)
- 損害に応じた金額が支払われる
- 被害者請求(本請求)のデメリット
- 審査の必要があるため、仮渡金請求よりも支払いまでの期間が長い
なお、仮渡金請求を行った場合、被害者請求(本請求)を行えないといった制限はありません。早くまとまったお金が必要なときは、まず仮渡金請求で当座の資金を確保し、追って被害者請求(本請求)の支払いを受けるといったことも可能です。
仮渡金制度については、『内払い金・仮渡金を解説|交通事故の慰謝料を示談前に受け取る方法』で詳しく解説しています。
被害者請求でもらえる費目・金額|限度額あり
自賠責保険からは人身に関する損害賠償金のみ受け取れます。物損に関する損害賠償金は受け取れません。これは、被害者請求をした場合も同じです。

具体的には、主に以下のような費目を受け取れるでしょう。
事故でケガを負った場合
入通院慰謝料 | 事故によるケガで入通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する補償 |
休業損害 | 事故によるケガが原因で、休業したことによる減額分の補償 |
治療関係費 | 治療費、通院交通費、看護料、雑費、診断書代など |
文書料 | 交通事故証明書や印鑑証明書など被害者請求に必要な文書料 |
事故で後遺障害を負った場合
後遺障害慰謝料 | 後遺障害の残存により、今後強いられる精神的苦痛に対する補償 |
後遺障害逸失利益 | 後遺障害が残らなければ将来得られたはずの収入に対する補償 |
事故で死亡した場合
死亡慰謝料 | 命を奪われた被害者本人や残された遺族の精神的苦痛に対する補償 |
死亡逸失利益 | 被害者が生きていれば得られたはずの経済的利益の喪失に対する補償 |
葬儀費 | 葬儀などにかかる費用の補償 |
上記の費目のうち、慰謝料や休業損害などは、「自賠責基準」という基準で計算された金額が支払われます。治療費や文書料、葬儀費などは、実費で支払われることが多いでしょう。
自賠責基準の各費目の計算方法
- 入通院慰謝料
4,300円×(治療期間または実治療日数×2のうち少ない方) - 後遺障害慰謝料
後遺障害等級に応じて32万円~1,650万円 - 死亡慰謝料
本人分400万円+遺族の人数に応じた金額 - 休業損害
6,100円×休業日数
※2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合
先述のとおり、上記の自賠責基準で計算した金額は、被害者に補償される最低限の金額になっています。
自賠責基準における慰謝料の計算方法は『自賠責保険から慰謝料はいくらもらえる?』にて解説しています。また、休業損害については『交通事故の休業損害は職業別に計算方法がある』の記事をご覧ください。
被害者請求の限度額
自賠責保険はあくまで被害者の損害を最低限補償するための保険です。よって、被害者請求で自賠責保険からもらえる金額には、以下のような限度額が存在します。
- 傷害分:120万円
- 後遺障害分:75万円~4,000万円
- 死亡分:3,000万円
上記のうち、後遺障害分の上限額は、後遺障害等級に応じて決められています。
後遺障害等級ごとの限度額
等級 | 限度額 |
---|---|
1級(要介護) | 4,000万円 |
2級(要介護) | 3,000万円 |
1級 | 3,000万円 |
2級 | 2,590万円 |
3級 | 2,219万円 |
4級 | 1,889万円 |
5級 | 1,574万円 |
6級 | 1,296万円 |
7級 | 1,051万円 |
8級 | 819万円 |
9級 | 616万円 |
10級 | 461万円 |
11級 | 331万円 |
12級 | 224万円 |
13級 | 139万円 |
14級 | 75万円 |
被害者請求で得られる自賠責保険の金額を超える分は、加害者側の任意保険会社または加害者本人に対して請求することになるでしょう。
限度額を超えた分の請求方法に関して詳しく知りたい方は『交通事故慰謝料が120万を超えたらどうなる?自賠責保険の限度額や請求方法を解説』の記事をご覧ください。
被害者請求をしてから支払いまでの期間
被害者請求の手続きをしてから損害賠償金が支払われるまでの期間は、1か月以内であることがほとんどです。
被害者請求の手続きをすると、自賠責損害調査事務所が調査を行い、損害額が算定され、損害賠償金が支払われます。この調査にかかる日数は、以下のとおり30日以内であることがほとんどなのです。
自賠責損害調査事務所における損害調査所要日数(2020年度)
期間 | 割合 |
---|---|
30日以内 | 94.9% |
31日~60日 | 3.1% |
61日~90日 | 1.1% |
91日以上 | 0.9% |
参考:損害保険料率算出機構「2021年度(2020年度統計) 自動車保険の概況」
ただし、上記は被害者請求全体の統計になります。後遺障害等級認定を兼ねるケースや死亡事故のケースでは、調査期間が30日よりも長引く可能性が高いので、あらかじめ留意しておいてください。
交通事故の被害者請求のやり方
被害者請求から保険金支払いまでの流れ
被害者請求の流れは、以下のとおりです。
- 加害者の加入する自賠責保険会社を特定する
- 特定した自賠責保険会社から請求書などの書式を取り寄せる
- 書類を準備し、自賠責保険会社へ提出する
- 自賠責保険会社が書類に不備がないか確認して、調査機関である損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)へ送付する
- 自賠責損害調査事務所が、事故の発生状況、自賠責保険の対象となる事故かどうかや因果関係、発生した損害などを公正かつ中立の立場で調査する
- 損害保険料率算出機構が自賠責保険会社に調査結果を報告する
- 調査結果を踏まえ、自賠責保険会社が支払基準に従って保険金を支払う
加害者が加入する自賠責保険会社は、通常、交通事故証明書から特定できます。交通事故証明書には、警察が確認した事故当事者の車検証と自賠責保険証の内容が記載されているためです。
交通事故証明書の入手方法については『交通事故証明書はなぜ必要?どうやって入手する?申請方法と記載内容』の記事をご確認ください。
なお、まれに交通事故証明書で加害者側の自賠責保険を特定できないことがあります。その場合は弁護士照会などの手段をとる必要があるので、弁護士までお問い合わせください。
被害者請求をするタイミングは?
被害者請求は、対象となる損害が発生してから自賠責保険への請求期限までなら、いつでも行うことが可能です。なお、請求期限は起算日から3年になります。
被害者請求をする際、治療費や慰謝料といった損害の最終額が確定していなくても問題ありません。被害者請求は、請求期限及び上限に達するまでなら何回でも行えます。
被害者請求の必要書類とその取得方法
被害者請求の必要書類と取得方法は以下のとおりです。
被害者請求の必要書類・取得方法
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書 | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者自身で作成 |
交通事故証明書 | 自動車安全運転センターから取得 |
人身事故証明書入手不能理由書 (警察で物損事故扱いの場合) | 加害者側に作成を依頼 |
事故発生状況報告書 | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者自身で作成 |
医師の診断書・診療報酬明細書 (死亡の場合は死体検案書) | 受診した医療機関すべてから取得 |
施術証明書・施術費明細書 (整骨院や接骨院に通った場合) | 施術を受けた整骨院や接骨院から取得 |
通院交通費明細書 (タクシー利用の場合は領収書) | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者自身で作成 |
付添看護自認書 (病院で要付添とされた場合) | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者自身で作成 |
事業主の休業損害証明書 (給与所得者は源泉徴収票添付) (自営業者は以下の書類を添付) ・納税証明書 ・課税証明書 ・確定申告書 | 勤務先の会社に書式を渡して作成を依頼 |
後遺障害診断書 (後遺障害認定を申請する場合) | 医師に通常の診断書とは異なった書式を渡して作成を依頼 |
レントゲン写真等 | 撮影したすべての病院から取得 |
戸籍謄本 (被害者死亡の場合) | 本籍のある市区町村役場で取得 |
印鑑証明書 (未成年者の場合は以下の書類※) ・住民票 ・戸籍抄本 | 登録した市区町村役場で取得 |
委任状及び委任者の印鑑証明書 (代理人に請求を依頼する場合) | 登録した市区町村役場で取得 |
※未成年者は原則として親権者または後見人による請求となる。事故発生時は未成年でも請求時に成人している場合は被害者本人が請求する。
各書類の取得方法や書き方は、自賠責保険への請求について解説した記事『自賠責保険への請求|必要書類・書き方・請求方法など被害者請求の基本がわかる』でも紹介しているので、準備の際に参考にしてみてください。
交通事故で被害者請求を検討すべきケース
(1)加害者側との示談前に一定の金額を受け取りたい
加害者請求や任意一括対応では、基本的に示談が成立してからでないと損害賠償金を受け取れません。
しかし、被害者請求を行えば、示談成立前であっても自賠責保険の支払い分を受け取ることができます。よって、示談成立前にまとまった金額を受け取りたい場合は、被害者請求を検討するとよいでしょう。
とくに、以下のようなケースでは、被害者請求をするメリットが大きいと言えます。
- 医療費を被害者自身が立て替えているなど、交通事故による出費が膨らんでいるケース
- 示談交渉が長期化していて、なかなか損害賠償金を受け取れないケース
(2)被害者側の過失割合が大きい
交通事故の過失割合は、被害者側にも付くことがあります。被害者側に過失割合が付くと、「過失相殺」によって、損害賠償金が減額されてしまいます。
しかし、被害者請求を行えば、自賠責保険の支払い分に適用される過失相殺の減額幅は小さくなるのです。
被害者請求した場合の過失相殺
被害者の過失割合 | 減額割合 (傷害分) | 減額割合 (後遺障害・死亡分) |
---|---|---|
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 2割減額 | 3割減額 |
9割以上10割未満 | 2割減額 | 5割減額 |
そのため、被害者側の過失が大きいときは、あえて被害者請求をおこない、加害者側の自賠責保険のみから損害賠償金を受け取った方がよい可能性があります。
(3)加害者が任意保険に未加入かつお金がない
加害者が任意保険に加入していない場合、加害者請求によって損害賠償金が支払われます。具体的には、示談成立後に加害者本人から損害賠償金を支払ってもらい、その後加害者が自身の自賠責保険に保険金を請求するような流れになるでしょう。
しかし、加害者に資力がない場合、損害賠償金が支払われなかったり、分割払いになったりする可能性があります。
このような場合、被害者請求を行えば、ひとまず自賠責保険の支払い分を一括で受け取れるので安心です。
交通事故の被害者請求の注意点
(1)被害者請求には時間と手間がかかる
被害者請求のデメリットとして、必要書類が非常に多く、時間と手間がかかることがあげられます。
必要書類には、自身で記入するものだけではなく、自動車安全運転センターから取得するもの、医療機関や職場に作成を依頼するものなどがあります。治療や日常生活への復帰と並行して書類を収集することになるので、ある程度の負担はかかるでしょう。
負担が強いと思われる場合は、被害者請求の手続きを弁護士に任せてしまうこともおすすめです。後述の「弁護士費用特約」を使えば実質無料で弁護士に依頼することも可能なので、一度依頼を検討してみてください。
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(2)被害者請求を拒否されるケースがある
自賠責保険に被害者請求をしても、無条件に認められるわけではありません。以下のようなケースでは、請求を拒否される可能性が高いです。
被害者請求を拒否されるケース
- 加害者の過失割合が0のケース
- 交通事故と損害との因果関係が証明できないケース
- 加害者がわざと交通事故を起こしたケース
- 後遺障害等級に認定されなかったケース(※後遺障害部分の費目のみ拒否)
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
加害者の過失割合が0のケース
加害者の過失割合が0の場合は、そもそも加害者に損害賠償金を支払う責任がありません。
自賠責保険は、加害者が支払うべき損害賠償金を肩代わりする保険です。加害者に損害賠償金を支払う責任がないなら、自賠責保険が肩代わりすべきお金もないので、被害者請求をしても拒否されてしまうでしょう。
交通事故と損害との因果関係が証明できないケース
自賠責保険から補償を受けられる損害は、事故と相当因果関係のあるものに限られます。
車両の損傷が判然としないほどの軽微な事故など、事故とケガとの因果関係が証明できないケースでは、請求が拒否される可能性があるでしょう。
なお、被害者請求をする場合、ケガなどの損害と交通事故との因果関係は、被害者が証明しなければなりません。
加害者がわざと交通事故を起こしたケース
自動車損害賠償保障法14条では、「保険契約者又は被保険者の悪意によつて生じた損害についてのみ、てん補の責めを免れる」と定められています。
この条文は、「事故を起こしたのがわざとではないなら自賠責保険が加害者の支払いを肩代わりするが、わざとなら肩代わりはしない」といった意味合いです。
そのため、加害者がわざと交通事故を起こした場合は、被害者請求をしても拒否されてしまいます。
後遺障害等級が認定されなかったケース
交通事故による後遺症が残った場合、被害者請求をすると、まずその後遺症が「後遺障害等級」に認定されるか審査されます。
審査の結果、後遺障害等級が認定されれば、認定された等級をもとに後遺障害に対する費目の金額が支払われます。
しかし、後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害に対する費目は支払われません。
後遺障害等級は必ずしも認定されるものではないので、被害者請求時には審査対策を施した書類を提出する必要があるでしょう。
後遺症が残った場合の被害者請求については『後遺障害申請は被害者請求と弁護士依頼が正解』で解説しているので、あわせてご一読ください。
(3)被害者請求には請求期限がある
自賠責保険に対する被害者請求には、3年という請求期限(時効)が存在します。
第十六条第一項及び第十七条第一項の規定による請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び保有者を知つた時から三年を経過したときは、時効によつて消滅する。
自動車損害賠償保障法第19条
請求期限を数え始める起点は、請求区分によって異なり、具体的には以下のとおりです。
被害者請求の請求期限
請求区分 | 請求期限 |
---|---|
傷害 | 事故発生日の翌日から3年 |
後遺障害 | 症状固定日の翌日から3年 |
死亡 | 死亡した日の翌日から3年 |
※ひき逃げなどで加害者を知ったのが上記基準日より後の場合、その日から3年
なお、民法改正により、加害者に対する人身分の損害賠償請求権の時効は5年に延長されました。しかし、被害者請求の時効は延長されてないので注意が必要です。
もし、請求期限(時効)が迫っている場合には、時効を中断(時効の更新や完成の猶予)させる方法もあるので、弁護士にご相談ください。
交通事故の被害者請求に関する質問集
Q1.物損事故でも被害者請求できる?
物損事故で被害者請求はできません。被害者請求は、人身に関する損害賠償金を自賠責保険から受け取る方法だからです。
加害者側が対物賠償に関する任意保険に入っていなければ、物損に関する損害賠償金は加害者本人に請求するか、ご自身の車両保険を利用することになるでしょう。
Q2.被害者請求したら必ず請求は認められる?
被害者請求しても、必ず認められるとは限りません。
交通事故とケガの因果関係が認められる必要があります。交通事故とケガの因果関係は、レントゲン写真やMRIなどの客観的な証拠から証明せねばなりません。
Q3.被害者請求は知識がない素人でもできる?
被害者請求の流れを知り、必要な書類を揃えられればご自身でも対応可能です。被害者請求のやり方については、本記事の「交通事故の被害者請求のやり方」や関連記事をご確認ください。
もし、被害者請求の流れを確認する時間がなかったり、必要な書類集めが面倒だと思われたりする場合は、交通事故の案件に詳しい弁護士に相談してみましょう。
交通事故の案件に詳しい弁護士なら被害者請求について熟知していますし、場合によっては被害者請求以外の解決策を提案できるかもしれません。
被害者請求を弁護士に頼むメリットは多い
(1)煩雑な手続きを一任してしまえる
先述のとおり、被害者請求はメリットも多い一方で、必要書類の収集が非常に煩雑というデメリットもあります。
弁護士に依頼すれば、被害者請求の手続きを一任することができます。
弁護士に依頼することで、必要書類を被害者自身で集める手間が省けるだけでなく、書類を素早く収集でき、損害賠償金を迅速に受け取ることも可能です。
被害者請求を行いたいが、治療や仕事、家事などで忙しい方は、弁護士への依頼を検討してみてください。
(2)後遺障害等級に認定される可能性が高まる
被害者請求で後遺障害に関する費目を請求する場合は、先述のとおり後遺障害等級認定の審査がおこなわれます。
後遺障害等級認定では、提出した書類の内容によって、本来よりも低い等級に認定されたり、非該当になったりすることが少なくありません。適切な後遺障害等級に認定されるには、提出書類の質を上げ、効果的な追加書類を添付することが重要になります。
しかし、過去の認定事例や専門知識に精通していなければ、どのように書類の質を上げ、どのような追加書類を添付すべきか判断することは難しいです。
この点、専門家である弁護士に依頼すれば、知識やこれまでの実務経験を踏まえてどのような添付資料が必要か判断してもらえます。その結果、適切な後遺障害等級に認定される可能性が高まるのです。
既に後遺障害等級認定の申請をされた方でも、異議申し立てをすれば再審査が受けられるので、弁護士に相談してみることをおすすめします。
(3)被害者請求後の示談交渉での獲得金額が多くなる
被害者請求で自賠責保険分の損害賠償金を受け取ったら、今度は残りの損害賠償金を得るため、加害者側の任意保険会社と示談交渉を行うことになるでしょう。
被害者請求の手続きだけであれば行政書士に依頼することも可能ですが、被害者請求後の示談交渉まで対応を依頼できるのは基本的に弁護士だけです。
任意保険から支払われる金額は、示談交渉によって大きく左右されます。ここで注意すべきなのは、以下の2点です。
- 加害者側の任意保険会社は「任意保険基準」と呼ばれる基準にのっとった、低額な損害賠償金を提示してくる
- 被害者本人による交渉で、損害賠償金を十分に増額させられることはほとんどない
しかし、弁護士に依頼して示談交渉を代理してもらうと、弁護士や裁判所が用いる「弁護士基準」で計算した損害賠償金を増額させられる可能性があります。
弁護士基準の金額は過去の判例をもとに設定されており、任意保険基準の2倍~3倍程度高額なことが多いです。

被害者請求後の示談交渉まで見据えるなら、弁護士に相談することをおすすめします。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了