自賠責保険への被害者請求とは?やり方やデメリット、すべきケースを解説

交通事故の被害者請求(16条請求)とは、被害者が加害者側の自賠責保険に対して、自分から損害賠償請求することをいいます。
被害者請求を行うことで、「自賠責保険から支払われる賠償金」を示談前に受け取れる、後遺障害等級の認定率を上げられるといったメリットを受けられるでしょう。
その一方で、補償額に上限があることや、手続きの手間がかかるといったデメリットには要注意です。
本記事では、被害者請求のやり方や、被害者請求でもらえる金額などを解説しています。「被害者請求をした方がいいケースかどうか」も説明しているので、参考にしてください。
目次

交通事故における自賠責保険への被害者請求とは?
まずは、「交通事故で自賠責保険に被害者請求する」とはどういうことなのか、解説します。
【比較】被害者請求と通常の交通事故(加害者請求)の違い
被害者請求を行った場合は以下のように処理されます。
被害者請求をした場合の流れ
- 交通事故が発生する
- 被害者が被害者請求をし、加害者の自賠責保険会社から120万円回収する
- 被害者と加害者側の任意保険会社が損害額200万円の内容で示談する
- 加害者側の任意保険会社が被害者に示談金80万円(200万円-120万円)を支払う
80万円は加害者側の任意保険会社の負担となる
一方で、通常の交通事故は以下のように処理されます。
通常の事故の流れ(加害者請求)
- 交通事故が発生する
- 被害者と加害側の任意保険会社が損害額200万円の内容で示談する
- 加害者側の任意保険会社が被害者に示談金200万円を支払う
- 加害者側の任意保険会社が加害者請求をし、加害者の自賠責保険会社から120万円回収する
80万円は加害者側の任意保険会社の負担となる
つまり、通常は最終的に「加害者の自賠責保険→加害者の任意保険」に支払われる自賠責保険金を、「加害者の自賠責保険→被害者」に直接支払ってもらう仕組みが被害者請求ということになります。
自動車損害賠償保障法第16条第1項で定められている手続きのため、16条請求とも呼ばれます。
そもそも自賠責保険とは?
自賠責保険とは、交通事故にあわれた被害者の方について、限度額の範囲内で最低限の支払いを行う保険です。
自賠責保険とは
原則、すべての自動車が加入している保険。
人身事故の損害について、事案に応じて限度額の範囲内で必要最小限の支払いを行う。

自賠責保険から支払われる限度額は、以下のようになっています。
被害者の状態 | 支払い限度額 |
---|---|
ケガの場合 | 最高120万円 |
後遺障害が残った場合 | 最高120万円 +等級により75~4000万円 |
死亡した場合 | 最高120万円※ +最高3000万円 |
※死亡までに入通院している場合
被害者請求のメリットとデメリット
被害者請求には、以下のようなメリットがあります。
被害者請求のメリット
- 示談前でも、自賠責保険金を請求できる
- 事故相手が保険の使用を拒否していても、請求できる
- 被害者側の過失が70%未満であれば、過失相殺されない
被害者請求をすることにより、被害者側に不利な状況でも、早めに最低限の保険金が受け取れることができます。
一方で、以下のようなデメリット(注意点)もあります。
被害者請求の注意点
- 被害者請求の申請をしてから支払いがされるまで、1ヶ月以上はかかる
- 受け取れる金額は自賠責基準の最低限の額
また金額に上限がある - 被害者請求しても、保険金が支払われないことがある
- 請求手続きが煩雑
必ずしも迅速に自賠責保険金を受け取れるわけではなく、また受け取れる金額は最低限度ということに注意が必要です。
さらに、被害者請求をしたうえで「このケガは事故で負ったものとは考えられない」などと、事故と損害の因果関係を否定され、自賠責保険金が一切受け取れないこともあります。
交通事故で自賠責保険に被害者請求した方がいいケース
被害者請求は「事故被害者全員がやること」というわけではなく、注意点もあります。
ただし、次の4つのケースにおいては被害者請求を検討すべきといえます。
被害者請求をした方がいいケース
- 加害者側との示談前に一定の金額を受け取りたい
- 被害者側の過失割合が大きい
- 加害者が任意保険に未加入
- 後遺症について後遺障害等級認定を目指している
4つのケースについて、なぜ被害者請求が必要なのかを解説します。
(1)加害者側との示談前に一定の金額を受け取りたい
示談成立前にまとまった金額を受け取りたい場合は、被害者請求を検討するとよいでしょう。
損害賠償金は、基本的に損害確定後に行われる加害者側との示談成立後に受け取れます。
しかし、被害者請求は損害の確定前や示談成立前でも可能です。つまり、被害者請求をすれば自賠責保険分の金額のみ、示談成立前に受け取れるのです。
とくに、以下のようなケースでは、被害者請求をするメリットが大きいと言えます。
- 医療費を被害者自身が立て替えているなど、交通事故による出費が膨らんでいるケース
- 示談交渉が長期化していて、なかなか損害賠償金を受け取れないケース
示談金が支払われないため金銭的な余裕がなくなると、自身に不利な条件で示談してしまう恐れがあります。
このようなリスクを防ぐために、被害者請求を行い、示談成立前に損害賠償金の一部を入手するべきといえるでしょう。
被害者請求以外の対処法も検討
示談成立前にまとまったお金が必要な場合、被害者請求以外にも「健康保険を使って医療費の立て替え負担を減らす」「自身の保険から保険金を受け取る」という方法で対応できることがあります。
医療費を被害者自身で立て替える場合は、健康保険の利用が可能です。
通常の保険診療と同様、医療費の負担が1割〜3割で済むため、立て替え負担が大幅に軽減されます。
健康保険の利用方法について詳しく知りたい方は『交通事故治療での健康保険利用|切り替え手続きやメリット・デメリットを解説』の記事をご覧ください。
また、被害者自身が加入している保険から補償を受けることで、示談成立前に損害賠償金の一部を受け取るという方法も考えられます。
詳しく知りたい方は『交通事故で使える保険の種類と請求の流れ|被害者自身の保険も使える?』の記事をご覧ください。
(2)被害者側の過失割合が大きい
交通事故被害者の過失割合が大きい場合には、自賠責保険を利用した方が得られる損害賠償金が多くなる可能性があります。
過失割合とは、交通事故における責任の程度を表したものです。被害者側に過失割合が付くと、「過失相殺」によってその割合分、損害賠償金が減額されます。
しかし、自賠責保険の支払で適用される過失相殺の減額幅には制限があるため、被害者請求を行うと本来は過失相殺で減額される部分についても請求することが可能です。
例えば、被害者側に50%の過失が付いたとしても、自賠責保険からは減額されることなく、100%の損害賠償金を受け取れます。
被害者請求における過失相殺
被害者の過失割合 | 減額割合 (傷害分) | 減額割合 (後遺障害・死亡分) |
---|---|---|
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 2割減額 | 3割減額 |
9割以上10割未満 | 2割減額 | 5割減額 |
そのため、被害者側の過失が大きいときは、過失相殺された示談金<過失相殺されていない(減額割合が小さい)自賠責保険金になることがあります。
その場合は、相手方任意保険会社に損害賠償請求するのではなく、被害者請求を行う方がお得です。
(3)加害者が任意保険に未加入
加害者が任意保険に未加入の場合は、被害者請求を行って最低限の損害賠償金を確保すべきです。
加害者が任意保険に加入していない場合、加害者本人に損害賠償金の請求をすることになります。
しかし、加害者に資力がない場合、損害賠償金が支払われなかったり、分割払いになったりする可能性があります。
このような場合でも被害者請求を行えば、ひとまず自賠責保険の支払い分を一括で受け取れるので安心です。
被害者請求以外にも対処法がある
被害者請求以外にも、運行供用者といった加害者以外に対して損害賠償金の請求が可能かどうかも検討すると良いでしょう。
運行供用者への請求に関しては『運行供用者責任とは?わかりやすく具体例つきで解説』の記事で詳しく説明しています。
また、被害者請求以外の対処法についてより詳しく知りたい方は『任意保険未加入で自賠責保険のみの加害者と事故…請求はどうする?加害者の末路は?』の記事をご覧ください。
(4)後遺症について後遺障害等級認定を目指す
交通事故によるケガが完治せずに後遺症が残った場合は、被害者請求により後遺障害等級認定の申請手続きを行うべきでしょう。
後遺症に関する賠償金(後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益など)を受け取るためには、後遺障害等級認定を受けることが必要です。
後遺障害等級認定において適切な等級認定を目指すなら、被害者請求を行いましょう。
被害者請求で後遺障害認定を受ける場合、必要書類は被害者自身で全て集めなければなりません。
手間はかかりますが、以下の点はメリットです。
- 審査対策がしやすい
- 認定結果が出るのとほぼ同時期に自賠責保険分の後遺障害慰謝料・逸失利益がもらえる

後遺障害認定は、「事前認定」という方法で受けることも可能です。
ただし、事前認定では提出書類のほとんどを加害者側の任意保険会社に用意してもらうため、審査対策がなかなかできません。
後遺症の存在・程度の証明が不十分で、適切な等級認定がなされない恐れがあります。
詳しく知りたい人へ
後遺障害等級認定の申請は弁護士に相談・依頼を
被害者請求により後遺障害等級認定の申請を行うにしても、過去の認定事例や専門知識に精通していなければ、どのように書類を用意すべきか判断が難しいといえます。
この点、専門家である弁護士であれば、これまでの実務経験を踏まえてどのような書類が必要か判断でき、適切な後遺障害等級に認定される可能性が高まります。
既に後遺障害等級認定の申請をされた方でも、異議申し立てをすれば再審査が受けられるので、弁護士への相談もご検討ください。
被害者請求すべきか分からないときは弁護士に相談!
ご自身が被害者請求を行った方が良いかどうかについては、専門家である弁護士に相談すると良いでしょう。
被害者請求には、賠償金の一部を早く受け取れる、過失相殺による減額が軽減されるなどのメリットがあります。
しかし、一方で「自賠責保険分の金額では足りない分を、改めて加害者側の任意保険会社や加害者本人に請求せねばならず、手間がかかる」というデメリットもあります。
ご自身にとって被害者請求は有効なのか、気になる方は弁護士に相談して見解を聞くことが一番です。
弁護士なら、相手方への損害賠償請求に関する現状やお悩みについて伝えることで、被害者請求を行うべきか、被害者請求以外に適切な方法があるのかという点について、回答が可能です。
アトム法律事務所では24時間体制で法律相談の予約を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

交通事故の被害者請求のやり方
交通事故で自賠責保険に被害者請求するには、必要書類を加害者側の自賠責保険会社に提出する必要があります。
具体的なやり方の流れや必要書類などをみていきましょう。
自賠責保険に被害者請求する流れ
被害者請求の流れは、以下のとおりです。
加害者側の自賠責保険会社から被害者請求の書式を取り寄せる
自賠責保険会社へ書類を提出する
書類が自賠責保険会社から審査機関へ渡り、損害内容の調査が実施される
審査機関から自賠責保険会社に調査結果が報告される
調査結果にもとづいて自賠責保険から自賠責保険金が支払われる
それぞれのフェーズに分けて解説します。
(1)加害者側の自賠責保険会社から被害者請求の書式を取り寄せる
被害者請求に必要な書類の多くは、加害者側の自賠責保険会社から取り寄せられます。
加害者が加入する自賠責保険会社がわからない場合は、交通事故証明書を確認してみましょう。交通事故証明書には、警察が確認した事故当事者の車検証と自賠責保険証の内容が記載されているためです。
交通事故証明書の入手方法については『交通事故証明書とは?後日取得の期限やもらい方、コピーの可否を解説』の記事をご確認ください。
なお、まれに交通事故証明書で加害者側の自賠責保険を特定できないことがあります。その場合は弁護士照会などの手段をとる必要があるので、弁護士までお問い合わせください。
(2)自賠責保険会社に書類を提出する
必要書類が揃ったら、加害者側の自賠責保険会社に提出します。
具体的な必要書類はのちほど一覧で紹介しますが、医療機関に作成してもらうもの、自身で作成するものなどがあります。
書類を揃えるまでに時間がかかることもあるので、余裕を持って準備をしましょう。
(3)書類が審査機関に渡り、損害内容の調査が実施される
自賠責保険会社は書類をチェックしたあと、「損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所(自賠責調査事務所)」という機関に書類を送ります。
自賠責調査事務所は加害者側の自賠責保険会社とは別の機関で、調査は公平に行われます。
提出書類をもとに、事故状況の確認や、自賠責保険の補償対象となる事故かのチェックなどが行われます。
自賠責調査事務所は必要に応じて、病院に医療照会をしたり被害者に追加の資料請求をしたりします。
(4)審査期間から自賠責保険会社に調査結果が報告される
調査結果が自賠責調査事務所から自賠責保険会社に通知されます。
自賠責保険会社はその結果をもとに、支払額を算定します。
(5)調査結果にもとづいて自賠責保険から自賠責保険金が支払われる
被害者請求で支払われる損害賠償金は、申請手続きの際に指定した口座に振り込まれます。
被害者請求で自賠責保険金を受け取るまでの期間
被害者請求の手続きをしてから自賠責保険金が支払われるまでの期間は、2ヶ月程度であることが多いです。
自賠責損害調査事務所における損害調査所要日数(2023年度)
期間 | 割合 |
---|---|
30日以内 | 96.5% |
31日~60日 | 2.0% |
61日~90日 | 0.8% |
91日以上 | 0.6% |
参考:損害保険料率算出機構「2024年度(2023年度統計) 自動車保険の概況」
この表を見ると、1ヶ月以内に調査が終了するようにも思えます。
ですが、この表には自賠責保険会社での書類チェックの時間などが含まれていません。そのため、実際の申請~支払いまでの期間はこの表+1ヶ月程度で考えた方がいいでしょう。
また、脳、目、歯、耳などに症状が残っている場合は、むちうちより損害調査に時間がかかります。それらの症状に詳しい担当者の数が少ないためです。
もっと早く損害賠償請求したい場合の方法
被害者請求による支払いを待っている時間がない場合には「仮渡金請求」の制度を利用しましょう。
仮渡金請求では「損害の程度に応じて設定されている一定金額」が早期に支払われます。
事故でケガをした場合はケガの程度に応じて5万円~40万円、死亡した場合は290万円です。
ただし、仮渡金は損害賠償金の前払いのような形をとるので、仮渡金として受け取った金額は、あとから支払われる損害賠償金から控除されます。
なお、仮渡金請求を行った場合、被害者請求(本請求)を行えないといった制限はありません。
早くまとまったお金が必要なときは、まず仮渡金請求で当座の資金を確保し、追って被害者請求(本請求)の支払いを受けるといったことも可能です。
仮渡金制度については、『内払い金・仮渡金を解説|交通事故の慰謝料を示談前に受け取る方法』で詳しく解説しています。
被害者請求の必要書類とその取得方法
被害者請求の必要書類と取得方法は以下のとおりです。
被害者請求の必要書類・取得方法
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書 | 自賠責保険から書式を取り寄せ 被害者自身で作成 |
交通事故証明書 | 自動車安全運転センターから取得 |
人身事故証明書入手不能理由書 (警察で物損事故扱いの場合) | 被害者自身で作成 |
事故発生状況報告書 | 自賠責保険から書式を取り寄せ 被害者自身で作成 |
医師の診断書・診療報酬明細書 | 受診した医療機関すべてから取得 |
施術証明書・施術費明細書 (整骨院や接骨院に通った場合) | 施術を受けた整骨院や接骨院から取得 |
通院交通費明細書 (タクシー利用の場合は領収書) | 自賠責保険から書式を取り寄せ 被害者自身で作成 |
付添看護自認書 (病院で要付添とされた場合) | 自賠責保険から書式を取り寄せ 被害者自身で作成 |
休業損害証明書 源泉徴収票 (給与所得者の場合) | 勤務先の会社に書式を渡して作成を依頼 |
後遺障害診断書 (後遺障害認定を申請する場合) | 医師に通常の診断書とは異なった書式を渡して作成を依頼 |
CT、MRI画像等 | 撮影したすべての病院から取得 |
戸籍謄本 (被害者死亡の場合) | 本籍のある市区町村で取得 |
印鑑証明書 | 登録した市区町村役場で取得 |
住民票 または 戸籍抄本 (被害者が未成年の場合) | 本籍のある市区町村で取得 |
委任状及び委任者の印鑑証明書 (代理人に請求を依頼する場合) | 委任状は被害者が作成 委任者の印鑑証明書は委任者が取得 |
各書類の取得方法や書き方は、自賠責保険への請求について解説した記事『自賠責保険とは?請求の流れと必要書類の書き方』でも紹介しているので、準備の際に参考にしてみてください。
これらの書類は、自賠責保険会社に依頼して書式を送ってもらったり、病院に開示申請をしなければならないものもあり、非常に煩雑です。
交通事故に詳しい弁護士事務所であれば、書式の用意や収集のノウハウがあるため、格段に楽に被害者請求を進めることができます。
もしも実際に被害者請求をしようとする場合は、一度弁護士に相談するとよいでしょう。
被害者請求はいつまでに請求しなければならない?
自賠責保険に対する被害者請求には、3年の請求期限(時効)が存在します。
第十六条第一項及び第十七条第一項の規定による請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び保有者を知つた時から三年を経過したときは、時効によつて消滅する。
自動車損害賠償保障法第19条
請求期限を数え始める起点は、請求区分によって異なり、具体的には以下のとおりです。
被害者請求の請求期限
請求区分 | 請求期限 |
---|---|
傷害 | 事故発生日の翌日から3年 |
後遺障害 | 症状固定日の翌日から3年 |
死亡 | 死亡した日の翌日から3年 |
※ひき逃げなどで加害者を知ったのが上記基準日より後の場合、その日から3年
なお、被害者請求は、対象となる損害が発生してから自賠責保険への請求期限までなら、いつでも可能です。
請求期限及び限度額に達するまでなら回数に制限もありません。
なお、民法改正により、加害者に対する人身分の損害賠償請求権の時効は5年に延長されました。
しかし、被害者請求の時効は延長されてないので注意が必要です。
もし、請求期限(時効)が迫っている場合には、時効の進行を止める方法(時効の更新や完成の猶予)もあるので、弁護士にご相談ください。
被害者請求で受け取れる金額・上限はいくら?
自賠責保険から支払われる金額は最低限の金額で、かつ上限があります。
被害者請求で受け取れる金額
被害者請求で自賠責保険に請求できるものは、人身損害に関する損害賠償金です。修理費など物損に関する損害賠償金は受け取れません。

被害者請求で請求できる主な費目の金額は以下の通りです。
事故でケガを負った場合
費目 | 金額 |
---|---|
入通院慰謝料 | 4,300円× 総治療日数または実治療日数×2のうち少ない方 |
休業損害※ | 6,100円×休業日数 |
治療関係費 | 実際にかかった費用で必要・相当な範囲 |
文書料 | 実際にかかった費用で必要・相当な範囲 |
※収入減の立証がある場合、日額19,000円を限度とした請求が認められる可能性もある
事故で後遺障害を負った場合
費目 | 金額 |
---|---|
後遺障害慰謝料 | 後遺障害等級により32万円~1600万円 |
後遺障害逸失利益 | 年間収入×労働能力喪失×就労可能年数に応じたライプニッツ係数 |
※実務上は等級に応じ、後遺障害慰謝料+後遺障害逸失利益の総額として75万円~4000万円が支払われる
事故で死亡した場合
費目 | 金額 |
---|---|
死亡慰謝料 | 本人分400万円+遺族の人数や扶養家族の有無に応じた金額 |
死亡逸失利益 | 年間収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数のライプニッツ係数 |
葬儀費 | 最大100万円 |
これらの金額について、基本的に増額交渉はできません。
金額や支払いの認否に不服がある場合、異議申し立ての手続きを行う必要があります。
被害者請求で受け取れる限度額
自賠責保険はあくまで被害者の損害を最低限補償するための保険です。
よって、被害者請求で自賠責保険からもらえる金額には限度額が存在します。
具体的には、ケガの治療にかかった傷害分は120万円、後遺障害部分は等級に応じて75万円から4,000万円、死亡分は3,000万円が限度です。
- 傷害分(治療関係費、休業損害、入通院慰謝料、文章料):120万円
- 後遺障害分(後遺障害慰謝料、逸失利益):75万円~4,000万円
- 死亡分(死亡慰謝料、逸失利益、葬儀費):3,000万円
後遺障害分の限度額は後遺障害等級に応じて決められており、具体的な金額は以下の通りです。
後遺障害等級ごとの限度額
等級 | 限度額 |
---|---|
1級(要介護) | 4,000万円 |
2級(要介護) | 3,000万円 |
1級 | 3,000万円 |
2級 | 2,590万円 |
3級 | 2,219万円 |
4級 | 1,889万円 |
5級 | 1,574万円 |
6級 | 1,296万円 |
7級 | 1,051万円 |
8級 | 819万円 |
9級 | 616万円 |
10級 | 461万円 |
11級 | 331万円 |
12級 | 224万円 |
13級 | 139万円 |
14級 | 75万円 |
被害者請求で得られる自賠責保険の金額を超える分は、加害者側の任意保険会社または加害者本人に対して請求する必要があります。
限度額を超えた分の請求方法に関して詳しく知りたい方は『交通事故慰謝料が120万を超えたらどうなる?自賠責保険の限度額や請求方法を解説』の記事をご覧ください。
被害者請求で弁護士に相談・依頼するメリット
被害者請求をしようと思った場合は、まず弁護士に相談・依頼することがおすすめです。
弁護士に相談・依頼するメリットや、弁護士費用の負担を軽減する方法を解説します。
被害者請求を弁護士に頼むメリット3つ
被害者請求を弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが生じます。
- 煩雑な手続きを一任できる
- 後遺障害等級に認定される可能性が高まる
- 被害者請求後の示談交渉で得られる金額が多くなる
それぞれについて解説します。
煩雑な手続きを一任できる
弁護士に依頼すれば、被害者請求の負担を大幅に軽減できます。
被害者請求は早期に損害賠償金を得られるといったメリットがある一方で、必要書類の収集が非常に煩雑というデメリットもあります。
このようなデメリットは弁護士に依頼して、必要書類の収集を手伝ってもらうことで解消することができるのです。
また、損害賠償金を迅速に受け取ることも可能となるでしょう。
被害者請求を行いたいが、治療や仕事、家事などで忙しい方は、弁護士への依頼を検討してみてください。
後遺障害等級に認定される可能性が高まる
交通事故の後遺障害にくわしい弁護士は、等級認定の申請方法や必要書類を熟知しています。
そのため、後遺障害の等級認定率を上げるための適切なサポートが可能です。
後遺障害等級認定の申請には、様々な資料を提出せねばなりません。
等級認定の審査機関に対して有効な資料は何か、弁護士であれば広い視野で検討可能です。
また、被害者が独力で全ての資料をそろえることは大変ですが、弁護士のサポートを受けられることで、被害者の負担は大きく軽減されます。
被害者請求後の示談交渉で得られる金額が多くなる
弁護士に依頼すれば、示談交渉を代わりに行ってもらいつつ、示談金額が増額しやすいというメリットがあります。
被害者請求で自賠責保険分の損害賠償金を受け取ったら、今度は残りの損害賠償金を得るため、加害者側の任意保険会社と示談交渉を行うことになるでしょう。
加害者側の任意保険会社は示談交渉において相場よりも低額な損害賠償金を提示してきますが、被害者本人による交渉で、損害賠償金を十分に増額させられることは困難です。
しかし、弁護士に依頼して示談交渉を代理してもらうと、相場の損害賠償金額に近い金額まで増額させられる可能性があります。

被害者請求後の示談交渉まで見据えるなら、弁護士に相談することをおすすめします。
ご自身のケースで、損害賠償金の内、慰謝料や逸失利益の相場がいくらくらいになるかを知りたいという方は、以下の慰謝料計算機をご利用ください。
弁護士費用特約を使えば弁護士費用の心配は不要
弁護士に相談や依頼する際の費用負担に不安がある方は、まず弁護士費用特約が使えるかどうかを確かめてみましょう。
弁護士費用特約とは、弁護士への相談料や依頼による弁護士費用を保険会社が負担してくれるオプションのことです。
保険によっても異なりますが、通常、相談料は10万円、依頼による弁護士費用は300万円を限度額として弁護士費用を負担してもらえます。
損害賠償金がよほど高額でない限り、弁護士費用が300万円をこえることはすくないので、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となるのです。

また、弁護士費用特約は、被害者自身や家族の保険に付帯されていれば利用できる可能性があります。さらには自動車保険だけではなく、火災保険やクレジットカードなどに付帯されているものも利用できることが多いです。
弁護士費用特約のメリットは大きいので、交通事故の被害者になった場合は、ご自分やご家族の保険に付帯されているか必ず確認しましょう。
弁護士費用特約の内容や利用方法を詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。
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アトムは増額実績も多数
交通事故の損害賠償金は、自賠責保険から支払われる金額だけでは不十分なことが多いです。
つまり、被害者請求をしたあとに、相手方との示談交渉によって適正な金額の獲得を目指すことになります。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了