任意保険未加入で自賠責保険のみの加害者と事故…請求はどうする?加害者の末路は?

任意保険未加入(自賠責保険のみ)の相手との事故では、「補償は受けられるのか?」と不安に感じる方も少なくありません。
自賠責保険のみでは、不十分な側面も多いです。
自賠責保険のみの場合
- 物損(例:車の修理費)は補償されない
- 自賠責保険金には上限がある
傷害(けが):最大120万円
後遺障害:最大4,000万円
死亡 :最大3,000万円
※上限を超える部分は、加害者に直接請求
十分な補償を受けるには、ご自身の人身傷害保険、労災保険・健康保険、加害者本人への請求などが必要です。
本記事では、加害者が任意保険未加入の事故について、被害者の立場から注意すべきポイントを詳しく見ていきましょう。
高額な賠償金の負担や、資産の差押えなど、自賠責保険の未加入の加害者が陥りうる末路についても解説します。

目次
任意保険未加入の加害者との事故…補償はどうなる?
加害者が任意保険未加入だとどうなる?
交通事故による損害賠償は、基本的に加害者が加入している自動車保険を通じて支払われます。
車やバイクの自賠責保険と、任意保険の違い
自動車保険には、「自賠責保険」と「任意保険」があります。
- 自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)
車やバイク(原付含む)を運転する人に加入義務のある強制保険。
加入者が交通事故を起こした場合の相手方に対する最低限の補償(被害者救済)を目的とする。 - 任意保険(任意の自動車保険)
車やバイクを運転する人が任意で加入する保険。
自賠責保険からの補償だけでは足りない分の補償を目的とする。

自賠責保険への加入は法律上の義務です。未加入の場合は、罰則があります。
自動車だけでなく、バイクや原付も自賠責保険に加入する義務があります。
もしも自賠責保険に未加入なのに、車やバイクを運転したら、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金となります(自動車損害賠償保障法5条、同86条の3第1項第1号)。
一方、任意保険への加入はあくまで任意です。
そのため、加害者が任意保険に未加入で自賠責保険のみ加入しているというケースも実際にあります。
車やバイクの任意保険の加入率
損害保険料率算出機構「2024年度版 自動車保険の概況」によると、2024年3月末時点の任意保険の加入率は88.7%(自動車保険と自動車共済の合計)であり、約1割が任意保険に未加入です。
さらに、2024年3月末時点の二輪車の任意保険(対人賠償保険)の加入率は47%(自動車保険のみ)であり、バイク事故の場合には、半数程度が加害者が自賠責保険のみしか加入していない形になります。
加害者が自賠責保険のみ加入のとき、受けられる補償内容とは?
「任意保険未加入・自賠責保険のみ加入」の加害者との事故において、被害者が確実に受け取れるのは「加害者側の自賠責保険会社からの賠償金」です。
ただし、注意点として、自賠責保険からの賠償金は、補償範囲と補償対象に以下の特徴があります。
- 「自賠責基準」と呼ばれる国の定めた最低限の支払い基準に沿って計算されるため、低額
- 自賠責保険から支払われる賠償金には、上限(支払限度額)がある
- 物損に関する補償(対物賠償)は対象外(対人賠償のみ)
- 過失割合が7割未満なら減額されない
事故で自賠責保険からもらえる金額
自賠責保険から支払われる賠償金の上限は、以下の通りです。
| 傷害分 120万円まで | 治療関係費 休業損害 入通院慰謝料 |
| 後遺障害分 75万円~4,000万円まで (後遺障害等級に応じて) | 逸失利益 後遺障害慰謝料 |
| 死亡分 3,000万円まで | 葬儀費用 逸失利益 死亡慰謝料 |
特に、バイク事故の場合、莫大な治療関係費、重大な後遺障害などが生じやすく、死亡率も高いです。そのため、自賠責保険金の上限を上回ることも多いです。
後遺障害の自賠責保険金
後遺障害の場合は、等級に応じて自賠責保険金の上限が変わります。以下のとおりです。
介護を要する後遺障害の場合の等級・限度額
| 別表第1 | 金額 |
|---|---|
| 第1級 | 4,000万円 |
| 第2級 | 3,000万円 |
上記以外の後遺障害の場合の等級・限度額
| 別表第2 | 金額 |
|---|---|
| 第1級 | 3,000万円 |
| 第2級 | 2,590万円 |
| 第3級 | 2,219万円 |
| 第4級 | 1,889万円 |
| 第5級 | 1,574万円 |
| 第6級 | 1,269万円 |
| 第7級 | 1,051万円 |
| 第8級 | 819万円 |
| 第9級 | 616万円 |
| 第10級 | 461万円 |
| 第11級 | 331万円 |
| 第12級 | 224万円 |
| 第13級 | 139万円 |
| 第14級 | 75万円 |
国土交通省 自賠責保険・共済ポータルサイト「限度額と補償内容」
自賠責保険からの支払い分以上の金額を受け取るためには、加害者本人への請求が必要です。
自賠責保険、加害者本人それぞれへの請求方法は、次に詳しく解説します。
【コラム】加害者が自賠責保険にも未加入の場合はどうする?
上記のとおり、自賠責保険への加入は法律上の義務ですが、実際には契約期限切れなどが原因で加害者が自賠責保険にも未加入のケースがあります。
そのようなケースの場合は、被害者は政府保障事業という制度を利用して、国(国土交通省)から補償を受けることができます。
政府保障事業は、自賠責保険とほぼ同様の補償内容となっています。詳しくは、『政府保障事業を利用するには?請求方法・慰謝料計算・支払いまでの期間』をご覧ください。
任意保険未加入の加害者への賠償金請求方法
車やバイク事故の加害者が、任意保険未加入の場合の請求手順
加害者が任意保険に未加入(自賠責保険のみ加入)の場合、被害者は、以下の手順で損害賠償請求をします。
- 加害者の自賠責保険に対して、人身関連の最低限の補償を請求(被害者請求)
- 不足する賠償金(物損関連の賠償金、自賠責基準を超える賠償金など)を、加害者本人に直接請求する
具体的な方法を解説します。
手順(1)加害者が自賠責保険のみなら、まず自賠責保険に請求
交通事故の加害者が自賠責保険のみ加入しているなら、まずは被害者が自分で自賠責保険に賠償請求をしましょう。この手続きを「被害者請求」といいます。

被害者請求は自動車損害賠償保障法16条1項に基づく手続きです。
第十六条 第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
自動車損害賠償保障法16条1項
被害者請求の手順は、以下のとおりです。
加害者の加入する自賠責保険会社を特定する
加害者の自賠責保険会社から被害者請求書の書式を入手する
被害者請求書に必要な書類を添付して、加害者の自賠責保険会社に提出する
加害者の自賠責保険会社から、調査機関へ書類が送付され調査開始
審査の結果、保険金の支払が決定した場合、加害者の自賠責保険会社から保険金が支払われる
関連記事『交通事故の被害者請求|自賠責保険に請求するには?やり方とデメリット』では、こうした「被害者請求」についてくわしく紹介しています。
被害者請求の期限は3年
自賠責保険に対する被害者請求は、3年で時効です。
時効の起算点は症状によって異なり、具体的には以下のタイミングとなっています。
自賠責保険への請求期限の起算点
| 症状 | 起算点 |
|---|---|
| 傷害 | 事故発生日の翌日 |
| 後遺障害 | 症状固定日の翌日 |
| 死亡 | 死亡した日の翌日 |
自賠責保険の仮渡金制度も活用しよう
自賠責保険には、仮渡金(かりわたしきん)制度があります。
事故の被害者が、当面の費用をまかなうためのものです。
こちらも加害者が加入している自賠責保険に対して、請求できます。
| 金額 | |
|---|---|
| ・死亡 | 290万円 |
| ・脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの ・上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの ・大腿又は下腿の骨折 ・内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの ・14日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの | 40万円 |
| ・脊柱の骨折 ・上腕又は前腕の骨折 ・内臓の破裂 ・病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの ・14日以上病院に入院することを要する傷害 | 20万円 |
| ・11日以上医師の治療を要する傷害 | 5万円 |
自動車損害賠償保障法施行令5条1号・同2号・同3号・同4号
手順(2)足りない分や物損の賠償金は加害者本人に直接請求を
自賠責保険から支払われる損害賠償金には、人身損害のみに限られるという制限があります。
また、補償額にも上限があるため、実際の損害をすべてカバーできるとは限りません。
特に、以下のような損害については自賠責保険のみでは補償されないため、被害者自身で対応を検討する必要があります。
- 車の修理費などの物的損害
- 治療費・休業損害などが自賠責基準による上限金額を超えた部分の不足分
こうした損害については、加害者本人に直接請求しましょう。
その際は、示談交渉によって金額や支払方法を話し合うことになります。
基本的な示談交渉の流れは次のとおりです。
示談交渉の申し入れ
被害者から示談を申し入れるか、加害者側から示談の申し入れを受けることで示談が開始される。
交渉
損害賠償金や過失割合について、交渉する。メールやFAXでのやり取りが多い。
示談成立
示談書を作成し、署名・捺印。
損害賠償金の振り込み
指定の口座に損害賠償金が支払われる。
注意点
なお、加害者が任意保険未加入の場合、示談交渉に非協力的だったり、連絡が取れなくなることもあるため注意が必要です。
そうした場合は、内容証明郵便の送付など、証拠を残しながら慎重に対応しましょう。
また、加害者本人と連絡がとれたとしても、加害者本人に、支払いに応じられるだけの資力がある場合にのみ、賠償金の回収が可能となります。
「加害者が任意保険未加入」の場合、「十分な補償が受けられない可能性が高い」という懸念があります。
関連記事
事故相手が保険を使わない|3つの賠償請求方法と内容証明のメリット
加害者が任意保険未加入の事故での注意点3選
加害者が任意保険未加入の場合は、以下の点に注意が必要です。
- 治療費は一旦被害者側での負担になる
- 示談交渉は加害者本人が相手となる
- 加害者本人からの賠償金は分割払いの可能性がある
それぞれについて解説します。
(1)治療費は一時的に被害者が立て替える必要がある
加害者が任意保険未加入の場合、治療費は被害者側が一旦立て替え、後から加害者に請求することになります。
加害者が任意保険に入っていれば、任意保険会社が治療費を病院に直接支払ってくれる「任意一括対応」を受けられることがあります。
しかし、加害者が任意保険未加入なら任意一括対応は受けられないため、被害者側で一時的に治療費を負担する必要があるのです。
このような状況では、治療が長期化したり高額な医療費が発生したりすると、経済的な理由から治療の継続が難しくなるおそれもあります。
こうした場合は、以下のように対応しましょう。
- 自身の健康保険を使い、立て替え負担を軽減させる
関連記事:交通事故の治療費は誰が支払う?立て替えや過失割合による自己負担も解説 - 早めに被害者請求をして、加害者の自賠責保険から治療費を回収する
なお、交通事故で健康保険を使う場合には、「第三者行為による傷病届」という書類の提出が必要です。
また、交通事故の損害賠償金は治療などが終了し、示談交渉をした後でないと通常支払われませんが、被害者請求は示談成立前でも可能なので、早めに自賠責保険に被害者請求の申請をすることも検討してください。
(2)示談交渉は加害者本人が相手となる
任意保険未加入の加害者との事故では、示談交渉の窓口が保険会社ではなく、加害者本人となる点に注意が必要です。
加害者が任意保険に加入している場合、示談代行サービスが付帯していることが一般的なため、通常は任意保険会社の担当者が代理人として示談交渉を行います。
しかし、任意保険に入っていない場合、交渉は被害者と加害者の当事者同士で直接行う必要があります。
その結果、次のようなリスクが発生するおそれがあるのです。
- 示談に応じてもらえない、交渉が進まない
- 途中で連絡が取れなくなる
- 威圧的な言動や不誠実な対応に悩まされる
こうしたトラブルを避けるためにも、早い段階で弁護士に相談し、代理交渉を依頼することをおすすめします。
【弁護士費用特約の利用も検討を】
弁護士に支払う必要がある相談料や費用を保険会社が代わりに負担してくれる特約です。
負担の上限額は、相談料10万円、費用について300万円となっていることが多いでしょう。
弁護士に支払う金額は、上限の金額内に収まることが珍しくないので、被害者自身が金銭的な負担を心配することなく、依頼できる可能性が高くなります。

弁護士費用特約について詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士特約とは?使い方・使ってみた感想やデメリットはあるかを解説』の記事をご覧ください。
(3)加害者本人からの賠償金は分割払い・踏み倒しの可能性がある
加害者が任意保険に加入していない場合、損害賠償金は加害者本人が直接支払う必要があります。
このとき、加害者に十分な資力(支払い能力)がなければ、賠償金は分割払いになることが多いのが実情です。
通常であれば、任意保険に加入していれば保険会社が損害賠償金を一括で支払うため、被害者は早期に全額を受け取れます。
しかし、任意保険未加入のケースではこのような対応ができず、実際に賠償金が支払われるまでに時間がかかるリスクもあります。
場合によっては分割払いの途中で連絡が取れなくなるなど、踏み倒しのリスクも否定できません。
特に長期的な治療や休業損害が発生している場合は、支払いを待つ余裕がないケースも多いため、早めの対処が重要です。
【番外編】任意保険未加入の加害者による踏み倒しを防ぐ方法は?
加害者との示談で賠償金の支払い方法が決まった場合、その内容を「公正証書」にしておくことを強くおすすめします。
公正証書とは?
公証役場で作成される公的な書面で、金銭支払いに関する内容を記載し、「強制執行認諾文言(=支払いがなければ差し押さえOK)」を入れることができます。
これにより、加害者が示談内容に違反して支払いを滞らせた場合でも、裁判を経ずに財産の差し押さえが可能になります。
たとえば、給与・預金・不動産などを差し押さえて、支払いを実現することもできます。
示談書を公正証書にするメリットは、以下の通りです。
- 裁判よりも手間・コストを抑えて強制執行できる
- 弁護士に依頼すれば、作成から交渉までスムーズに進められる
加害者が任意保険未加入で分割払いになるようなケースでは、支払いトラブルが発生するリスクが高くなります。
そのリスクに備える意味でも、示談書は必ず公正証書化しておくのが安心です。
賠償金が支払われない・分割払いを待てないときの対処法
自賠責保険から損害賠償金を受け取っても、十分な補償を受けられるとは限りません。
特に、重篤な症状が生じやすいバイク事故の場合には、自賠責保険のみでは補償として不足することが多いでしょう。
しかし、加害者本人から残りの損害賠償金を支払ってもらう場合、「本当にきちんと支払ってもらえるのか?」「分割払いを待つ余裕はない」と不安を感じる方も多いでしょう。
そこでここからは、そうした不安への対策を解説します。
被害者自身が加入している保険を利用する
損害賠償金の踏み倒しや分割払いが不安な場合は、被害者自身が加入している保険を利用し、補償を受けることがおすすめです。
任意保険未加入の相手との交通事故においては、以下のような保険の利用が考えられます。
| 内容 | |
|---|---|
| 人身傷害保険 | 支払基準にしたがって上限まで、実際の損害額の補償を受けられる保険 |
| 搭乗者傷害保険 | 契約で決められた一定額の支払いを受けられる保険 |
| 無保険車傷害保険 | 無保険車との事故で、死亡・後遺障害の賠償不足分の補償を受けられる保険 |
| 車両保険 | 自分の車両(自動車・バイク等)の損害の補償を受けられる保険 |
| ファミリーバイク特約 | 原付のけがの補償を受けられる保険 |
それぞれの保険の補償内容について解説します。
人身傷害保険
自動車の運転中による交通事故で運転者や同乗者が死傷した場合に、慰謝料や治療費などの損害を負担してくれる保険です。
限度額については、契約者が設定することができ、無制限にすることも可能です。
保険内容によっては、保険者や家族が歩行中の交通事故であっても対象となるでしょう。
人身傷害保険の内容や他の保険との違いに関しては『人身傷害補償特約は必要?いらない?補償内容や他の保険との違いとは』の記事で確認可能です。
搭乗者傷害保険
事故が起きた自動車に乗車中(搭乗中)であった人を対象とし、事故により生じた慰謝料や治療費などの損害を負担してくれる保険です。
人身傷害保険と類似していますが、人身傷害保険と異なり、実際に生じた損害額ではなく、契約で定められた所定の金額が支払われます。
無保険車傷害保険
加害者が任意保険に加入していない、ひき逃げのため加害者が特定できない場合などの事故において生じた損害を補償する保険です。
ただし、死亡事故または後遺障害が認められたという事故のケースであることが必要になります。
車両保険
交通事故により生じた車の修理代といった物的損害を補償する保険です。
ただし、利用によって等級が下がり、今後の保険料が増加してしまう可能性があるので、利用の際は注意しましょう。
原付ならファミリーバイク特約
原付で事故に遭った場合は、ファミリーバイク特約も役立ちます。
ファミリーバイク特約とは、自動車保険(任意保険)に付帯する特約の一つで、125cc以下のバイク(原付・原付二種)による事故を補償する制度です。
ファミリーバイク特約で賄える範囲は、通常、他人のけが・物損、自身のケガです。乗車していたファミリーバイクの修理費用や自身の携行品への補償、ロードサービスはありません。
労災保険の利用を検討する
交通事故が業務中または通勤中に発生した場合は、加害者が任意保険未加入であっても、労災保険から労災認定されることで、補償(労災保険給付)を受けることが可能です。
労災保険では、交通事故の場合、以下のような補償が受けられます。
| 場面 | 通勤中の事故 | 業務中の事故 |
|---|---|---|
| 治療費 | 療養給付 | 療養補償給付 |
| 仕事を休んだ | 休業給付 | 休業補償給付 |
| 後遺障害 | 障害給付 | 障害補償給付 |
| 死亡時 | 遺族等給付 葬祭給付 | 遺族補償給付 葬祭料 |
労災保険は国の制度のため、加害者に支払い能力がなくても確実に受給できるのが最大のメリットです。
会社員・アルバイトなど被雇用者であれば、原則として適用対象になります。
また、労災保険と自賠責保険は併用も可能な場合があります。裁判基準による賠償額が満つるまで、二重取りにならない限り、請求できます。
どちらか一方に限定せず、事故相手が任意保険未加入の場合は、両方の活用を検討することが大切です。
傷害(けが)の補償の対比
| 労災保険 (上限なし) | 自賠責保険 (最大120万円) | |
|---|---|---|
| 治療費 | 治ゆするまで全額 | 必要かつ相当な金額 |
| 休業損害 | 休業4日目以降の給与80% | 1日あたり 6,100円 |
| 慰謝料 | なし | 1日あたり 4,300円 |
後遺障害の補償の対比
| 労災保険 (上限なし) | 自賠責保険 (最大4,000万円) | |
|---|---|---|
| 逸失利益 | 【1級~7級】 等級に応じた年金・特別支給金 【8級~14級】 等級に応じた一時金・特別支給金 | 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 就労可能年数のライプニッツ係数 |
| 慰謝料 | なし | 最大1,650万円 |
死亡補償の対比
| 労災保険 (上限なし) | 自賠責保険 (最大3,000万円) | |
|---|---|---|
| 葬祭料 | 315,000円 + 給与30日分 | 最大100万円 |
| 逸失利益 | 遺族数等に応じた年金・一時金・特別年金など | 基礎収入 × (1-生活費控除率) × 就労可能年数のライプニッツ係数 |
| 慰謝料 | なし | 400万円※ |
※この他遺族の慰謝料もある
労災保険との併用や違いについて知りたい方は『交通事故が労災なら自賠責・任意保険へ慰謝料請求!どっちが優先?』の記事をご覧ください。
健康保険を利用する
通勤中や業務中以外の交通事故の場合、健康保険を利用できます。
健康保険を利用することで治療費の負担をおさえることができます。
交通事故で健康保険を利用する場合の方法については『交通事故で健康保険は使える!切り替え手続きや医療保険の併用まで弁護士が解説』も参考にしてみてください。
加害者以外に請求できる相手がいないか検討する
交通事故による損害については、加害者以外に請求できるケースがあります。
たとえば「使用者」「運行供用者」にあたる人がいる場合は、そちらにも賠償請求できることがあるので、一度検討してみましょう。

使用者とは
加害者が業務中に起こした交通事故である場合は、雇用主である会社に対して民法715条の使用者責任を根拠に損害賠償請求を行うことが可能です。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
民法715条1項本文
基本的に会社の方が資力を有しているため、使用者責任による請求が可能であるなら、会社に請求を行うべきでしょう。
運行供用者とは
事故を起こした自動車の運行を支配・管理して利益を得ている人に対しては、自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任を根拠に慰謝料や治療費などの損害を請求できます。
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
自動車損害賠償保障法3条本文
運行供用者の対象となる人は、以下のような立場の人です。
- 加害者に自動車を貸していた所有者
- 管理が不十分であったために加害者に自動車を盗まれた所有者
- 加害者を雇い、自動車を使わせて利益を得ていた会社
ただし、物的損害については請求できません。
運行供用者責任の対象について詳しく知りたい方は『運行供用者責任とは?わかりやすく具体例つきで解説』の記事をご覧ください。
バイク事故の加害者が未成年者の場合、その親に賠償請求できる?
子どもが事故をおこした場合、その子どもが「責任能力」を持たない年齢(おおむね12歳程度)であれば、親が監督責任(民法714条)に基づき賠償義務を負うケースがあります。
しかし、バイク事故の加害者が未成年である場合、親に賠償請求するのは、原則として難しいといえます。
というのも、バイクに乗ることができるのは、少なくとも16歳以上です。
この年齢の未成年者であれば、一般に、行為の是非や結果を理解できます。つまり、子どもに「責任能力」が認められるため、親に法的責任を問うことが難しいのです。
被害者がすべき対処と任意保険未加入の加害者がたどる末路
加害者が任意保険未加入の場合には、自賠責保険や被害者自身の保険利用などで十分に補償が得られないのなら、加害者本人に損害賠償請求を行う必要があります。
加害者本人に損害賠償請求を行う際の注意点について知っておきましょう。
交通事故後に加害者の情報を確認しておく
加害者に損害賠償請求を行うのであれば、加害者の氏名や住所などを事前に把握しておくことが必要になります。
そのため、交通事故後に、加害者の氏名・住所・連絡先などの情報をしっかりと聞き出しておくと良いでしょう。
この際には、免許証などの公的な書類から確認を行いましょう。
交通事故後に、その他に行うべきことについて知りたい方は『交通事故後は警察への報告義務あり|報告・届け出をしないデメリット』の記事をご覧ください。
加害者の情報を確認できなかった場合は交通事故証明書を入手しよう
交通事故により負ったケガが大きい場合や、交通事故に遭ったことで動揺してしまった結果、連絡先の交換や保険の加入状況の確認などを忘れてしまい、加害者の情報を入手できないケースもあります。
このような場合には、交通事故証明書から加害者の情報を確認しましょう。
交通事故証明書には、加害者の氏名や住所などの情報が記載されています。
警察に事故の届け出を出していれば、自動車安全運転センターの窓口などから入手が可能です。
交通事故証明書の取得方法について知りたい方は『交通事故証明書とは?後日取得の期限やもらい方、コピーの可否を解説』の記事をご覧ください。
示談交渉で感情的にならない
加害者本人に請求を行う場合、基本的には、加害者との示談交渉で損害賠償金の金額を決めることとなります。
しかし、事故の当事者同士であると、お互いの感情が高ぶってしまい、示談交渉が進まなくなってしまう恐れがあるのです。
示談交渉が決裂すると請求のための手間が余計にかかってしまうため、示談交渉を行う際には、冷静に進めることを心がける必要があります。
加害者本人との示談交渉がうまく進まないのであれば、弁護士に相談や依頼を行うことを検討するべきでしょう。
示談交渉がまとまらない場合は裁判へ移行する
加害者本人と直接交渉を行っても、加害者が損害賠償金を支払う意思がない場合は、示談交渉がまとまらず、裁判を起こすことが必要となるでしょう。
しかし、裁判を行うとなると、専門知識が必要となるので、その手続きは簡単ではありません。
裁判手続きがよくわからず、やり方がまずかったために本来得られる損害賠償金を得られなくなるという危険性があります。
裁判を行ってでも請求したいという場合は、専門家である弁護士に手続きを任せるべきでしょう。
ご自身で裁判を起こすことを検討している方は『交通事故裁判の起こし方や流れ|民事裁判になるケースは?出廷は必要?』を記事をご覧ください。
【コラム】任意保険未加入の加害者の末路はどうなる?
任意保険未加入の事故の加害者は、自賠責保険の補償上限を超えた分については全額自己負担となり、被害者から賠償請求される可能性があります。具体的には次のような賠償金が考えられるでしょう。
- 被害者の物的損害
- 自賠責保険の補償限度を超える高額な賠償金
これまでの裁判で認められた損害をみていきます。
被害者の物的損害
物的損害は、被害車両の修理費やレッカー代といった費用のほか、積載物も対象となります。
- 事故でバイオリン及びバイオリン弓が焼失した事案につき、年数経過で価値が減少するものではないとして購入価格計900万円を損害と認めました(名古屋地裁平成15年4月28日判決)
- トラックの積荷である缶ジュースにつき、積荷積替費、応援車両、全量廃棄処分としたジュース代など合計237万円余を損害と認めました(名古屋地裁昭和63年9月30日判決)
自賠責保険の補償上限を超える高額な賠償金
自賠責保険の補償上限は、傷害部分で120万円、死亡部分で3,000万円、後遺障害部分で4,000万円です。こうした自賠責保険の補償が最低限であることは、これまでの判例をみればわかります。
- 眼科開業医の死亡事故において、裁判所は逸失利益が4億7,850万円、損害合計を5億843万円と認めました(横浜地裁平成23年11月1日判決)
- 乗用車のボンネットから被害者が転落して重大な後遺症が残りました。裁判所は損害額を3億7,829万円と認めました(名古屋地裁平成23年2月18日判決)
- 被害者のバイクと乗用車が交差点で衝突して、重大な障害が残りました。裁判所は損害額を3億6,756万円と認めました(名古屋地裁平成17年5月17日判決)
交通事故の損害賠償は一つひとつの事故で異なります。加害者が任意保険に未加入の場合、多額の損害賠償金を自身で支払うことになり、加害者の生活は一変するのです。
そのため、万が一の場合を想定して、任意保険に加入しておく必要性は非常に高いといえます。
なお、交通事故の加害者は刑事責任や行政責任(違反点数の加算)も負うことになります。
加害者が任意保険未加入の場合は弁護士に相談
弁護士に相談するメリット
加害者が任意保険未加入の場合に弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを受けることが可能です。
- 適切な請求方法を知ることができる
- 示談交渉を代わりに行ってもらえる
- 裁判になっても安心
それぞれのメリットについて、解説を行います。
適切な請求方法がわかる
自動車事故・バイク事故の加害者が任意保険に未加入の場合は、自賠責保険からの補償だけでは十分な賠償を得られない恐れが高いでしょう。
弁護士に相談すれば、自賠責保険への請求以外にどのような方法があるのか、どの方法で請求することが最も適切なのかという点について知ることが可能です。
加害者が任意保険に未加入であるため十分な補償が受けられるのか不安な方は、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。
示談交渉を代わりに行ってもらえる
弁護士に依頼すると、加害者との示談交渉を代わりに行ってもらえます。
弁護士から根拠のある請求を行ってもらえるので、加害者がこちらの主張を聞き入れ、相場の金額まで増額した示談金を受け取れる可能性が高くなるでしょう。
また、加害者との連絡を弁護士が窓口となって対応してくれるため、加害者と直接連絡を取る手間はなくなり、治療に専念することも可能です。
裁判になっても安心
加害者本人との示談交渉が決裂する、示談が成立したが支払いがなされないといった場合には、裁判により請求を行う必要が出てきます。
この際には、弁護士に依頼して裁判手続きを任せるべきでしょう。
弁護士であれば複雑な裁判手続きであっても適切に対処し、妥当な判決を得られる可能性が高いです。
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弁護士費用特約を利用すると、依頼により生じる費用の負担も気にせず依頼を行うことができます。
なお、弁護士費用特約の有無や範囲については、契約内容や約款をよくご確認ください。

「無保険の事故相手と交渉してほしい」
「後遺障害の被害者請求をお願いしたい」
このようなお悩みがある方につきまして、増額・回収の可能性を考慮しながら、弁護士費用倒れの懸念も加味しつつ、ご依頼いただけるかどうかをご回答いたします。
人身傷害保険との交渉をご希望の方へ
「自動車事故の相手方が無保険だった」
「バイク事故で自賠責保険のみだった」
「任意保険未加入でよくある末路を回避したい」
このような場合、ご自身の人身傷害保険に保険金請求をおこなうことも一つの手段です。
人身傷害保険の場合、逸失利益の提示内容について増額交渉できるケースもございます。
まずは一度、事故のお悩みをご相談いただければと存じます。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
