症状固定は誰が決める?医師や保険会社の判断に納得できないときの対応は?

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交通事故や労災でけがをして治療を続けていると、「そろそろ症状固定ですね」と医師や保険会社から言われることがあります。

そんなとき、「痛みが残っているのに本当に治療を終えて大丈夫?」「そもそも症状固定って誰がどうやって決めるの?」と不安や疑問を感じることもあるかもしれません。

症状固定の時期が1ヶ月ずれたばかりに、本来認定されるはずだった後遺障害が認定されず、慰謝料100万円以上を受け取れなくなってしまう、ということもありえます。

この記事では、症状固定の意味とその決め方、そして納得できない場合の対応策や、症状固定後の治療・通院の扱いについて、わかりやすく解説します。

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症状固定とは?なぜ重要なのか

症状固定の意味

症状固定のタイミングをもって「治療は一区切り」とされ、それ以降に残る症状については「後遺症」として扱われます。

症状固定

これ以上治療を続けても、症状が良くも悪くもならない状態

症状固定のタイミングは「一般的な治療方法を行ってもこれ以上回復しない状態」

なぜ症状固定が重要か?

交通事故において症状固定されることやその時期が重要なのは、症状固定の時期によって損害賠償金が大きく変化する可能性があるためです。

たとえば、むちうちで5ヶ月または6ヶ月で症状固定した場合を考えてみましょう。

症状固定の時期慰謝料
5ヶ月で症状固定79万円
6ヶ月で症状固定89万円
6ヶ月で症状固定
 +
後遺障害14級認定
199万円

原則として、6ヶ月以上通院していないむちうちについては、後遺障害等級が認定されません。

つまり、症状固定の時期が1ヶ月ずれるだけで、慰謝料に100万円以上の差が生じる可能性があります。

症状固定の時期が重要な理由については、ほかにも以下のようなものがあります。

症状固定が重要な理由

  • 治療費の支払いが終了する
  • 損害賠償の計算基準になる
  • 後遺障害の申請手続きが始まる

理由についてそれぞれ説明していきます。

①治療費の支払いが終了する

保険会社は通常、症状固定日以降の治療費を負担しなくなります。

つまり、症状固定以降の通院やリハビリは原則として自己負担となるのです。

よって、「治療により症状がよくなっている実感があるので通院を続けたい」というような場合や、「この先手術の予定がある」というような場合は、症状固定にするべきではありません。

②損害賠償の計算基準になる

慰謝料や休業損害の金額計算は、原則として症状固定日までが対象となります。

よって症状固定となったら、その日以降通院をしたり会社を休んだりしても、慰謝料や休業損害の支払いは原則認められません。

③後遺障害の申請手続きが始まる

症状固定後に残っている症状(痛み、しびれ、運動制限など)は「後遺症」として扱われます。

症状固定になったあとから、後遺症について後遺障害等級の申請をするための手続きがスタートすることになります。

後遺障害等級認定手続きの流れ

症状固定の決め方|誰が症状固定を決めるのか?

症状固定を決めるのは担当医師

症状固定の最終判断を下すのは医師です。

具体的な症状固定の時期は、専門的な医学的知見と、症状の推移の分析、患者の主訴の検討に基づいて決定されます。

実際に症状固定と言われたときどうするべきか、解説していきます。

保険会社に「症状固定」と言われたらどうすればいい?

保険会社が「〇月で症状固定とします」と申し出てきたとしても、それは医学的な判断ではありません。

あくまで「〇月で治療費の支払い対応を終了する」という支払いの打ち切り判断にすぎません。

多くの場合は、「〇月で症状固定としますがよろしいですか」というような打診がありますので、その時に以下のような対処法をとりましょう。

保険会社への対処法

  • 医療照会をしているか確認する
    していないようであれば、照会をしてから決定するように請求する
  • 治療によりまだ症状が改善する見込みがあることを伝える
  • 次回通院日が決まっている場合は、その日まで待ってもらうよう伝える
  • 治療を続けたい理由や事情があれば述べる
  • 状況によっては、弁護士に相談して交渉代理をしてもらう

保険会社からの一方的な打ち切り提案に対し、泣き寝入りせず、冷静に対応することが大切です。

もっとも、これらの対処法を講じても、最終的に治療費の打ち切りをするかどうかは保険会社の一存となってしまうことは留意しておかなければなりません。

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医師が勝手に「症状固定」と判断?納得できない時の対応

保険会社だけではなく、担当医から「もう症状固定にしましょう」と言われることもあります。

症状固定日をめぐる判断は、損害賠償の結果に直結するため、納得できない場合には慎重に対応する必要があります。

そのような場合は、以下の対応を検討しましょう。

①主治医に症状を説明する

まずは、主治医になぜ症状固定と判断したのかを確認し、ご自身の症状を伝えましょう。

痛みやしびれなどの強さは、患者本人にしか実感できないものです。

したがって、痛みがまだ強いこと、日常生活でどれほど不便しているかなどを伝えることで、症状固定の時期を検討しなおしてもらえる可能性があります。

②セカンドオピニオンを受ける

他の医師に診てもらい、症状固定といえるかどうかを再評価してもらうこともできます。医学的な見解が異なれば、再検討の余地も生まれます。

ただし症状固定の判断については、交通事故当初から通院している病院の判断の方が重視されやすいので、必ずしも効果的なわけではありません。

③弁護士や後遺障害に強い専門家に相談する

もし医師の判断自体を覆せないとしても、その後には後遺障害診断書の作成、等級認定の申請などの手続きがあります。

それに備えて、法律や保険の知識を持つ交通事故に強い弁護士へ相談しておくのもいいでしょう。

医師が「保険会社が言ってきたから症状固定」と言ってきたら?

実際の現場では、保険会社が医師に「〇月で治療対応を打ち切ります」と先に伝え、医師も「治療費が支払われなくなるなら、もう症状固定です」と患者に伝えてくることもあります。

その場合の医師の表明は、あくまで「治療費を払ってもらえる保証がないから、治療終了とする」ということにすぎません。

まだ通院を希望するのであれば、その理由や健康保険を利用してでも通院したいと思っている、ということを伝えて、再検討してもらいましょう。

症状固定後でも通院はできる?費用はどうなる?

「症状固定=治療終了」と思われがちですが、症状固定後も通院自体は可能です。

ただし、原則として保険会社からの治療費支払い対応は終了しますので、自費で通院する必要があります。

症状固定後の通院はしてもいい?

治療費が自己負担となるおそれがある、ということを前提に、通院自体は続けて問題ありません。

自己負担を抑えるため、可能であれば健康保険で通院するのがよいでしょう。

労災であれば、症状固定後の治療について「特別支給金」や「療養保証給付」の対応があるケースもあります。

いずれの場合であっても、通院にかかった診療費の領収書などは保管しておくようにしましょう。

症状固定後の治療費は請求できる?

通院終了後、相手方保険会社に領収書を送ることで、症状固定後の治療費を請求することは可能ですが、原則的には支払われないものと思った方がよいでしょう。

例外的に、症状固定後も治療が必要だったということが診断書などから読み取れる場合などは、支払ってもらえる可能性はあります。

また実際の交渉では、「実費として被害者が負担しているので、少額なら認める」「慰謝料を妥協してもらうかわりに、症状固定後の治療費は支払う」といった対応がなされ、治療費が支払われることもあります。

医師が症状固定してくれないときの対応

医師がいつまで経っても症状固定にしてくれない・後遺障害診断書を書いてもらえないというケースもあります。

症状固定や後遺障害診断書は、主に事故で用いられる概念です。

そのため整形外科以外の診療科では、医師が症状固定や後遺障害という概念についてあまり馴染みがないのが現状です。

医師に症状固定にしてもらう方法

一部の医師は、症状固定時期について「不明」「事故から2年後」といったような曖昧な回答をしてくることがあります。

もちろんその回答が医学的な判断に基づいているのであれば、医師の判断を重視するべきです。

しかし患者自身の実感に反する場合は、まずその旨を伝えましょう。

そのうえで「後遺障害申請をしたいから症状固定としてほしい」「具体的に何月頃に症状固定となる見込みか」「不明となっているのはなぜか」を尋ねるべきです。

医師に後遺障害診断書を書いてもらう方法

後遺障害診断書は、病院の窓口で渡すことで作成依頼できます。まずは一度、作成を依頼してみましょう。

もしも、症状固定にしてくれない病院のほかにある程度通院している病院があれば、そちらの病院で後遺障害診断書を書いてもらうこともできます。

もっとも、後遺障害診断書にはある程度コツや書き方があり、ミスや書き漏れで後遺障害の認定を逃してしまったり、再提出を求められることがあります。

もしもご不安でしたら、弁護士に依頼し、弁護士を介して後遺障害診断書の作成依頼をすることもできます。

まとめ|症状固定は「医師の判断」が基本。でも疑問があれば行動を

症状固定は交通事故や労災によるケガの治療において非常に重要なステップです。

医学的には医師が判断を下しますが、被害者自身の体調・希望も考慮して決められなくてはなりません。

症状固定の決め方のポイント

  • 症状固定は主に医師が判断するが、一方的な決定には注意
  • 保険会社が症状固定を促してきても、自己判断せず医師に相談する
  • 症状固定となったら、通院継続や後遺障害申請への備えが必要
  • 不安があれば、弁護士への相談を検討する

症状固定は後遺障害申請における重要な判断ですが、被害者の方の立場ですと、本当にこの時期が症状固定でいいのか見極めることは困難です。

症状固定の時期次第で、受け取れる示談金額が数百万円以上変わってくるおそれもあります。

症状固定をめぐる判断に悩んだら、どうか一人で抱え込まず、専門家に相談して適切なサポートを受けるべきです。

ご不安がありましたら、まずは一度弁護士にご相談ください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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