後遺障害慰謝料の相場はいくら?等級認定で支払われる金額と賠償金の種類

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【後遺障害慰謝料】

交通事故で後遺障害が残ると、後遺障害慰謝料の請求が可能です。しかし、その金額は認定される後遺障害等級によって大きく変わるだけでなく、慰謝料の算定に用いる基準によっても左右されます。

後遺障害慰謝料の適正相場は等級に応じて110万円から2800万円ですが、適切な賠償金を受け取るためには、「正しい等級認定を受けること」と「弁護士基準を用いて算定すること」が重要です。

この記事では、交通事故専門の弁護士が後遺障害慰謝料の相場額と、後遺障害等級認定の申請方法を詳しく解説します。さらに、慰謝料以外の損害賠償金の種類や賠償金請求時の注意点もお伝えします。

後遺障害で悩む方々に、公正な補償を受けるためのポイントをわかりやすくお伝えしていきます。

目次

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後遺障害慰謝料とは?

後遺障害が残った精神的苦痛に対する賠償金

後遺障害慰謝料とは、交通事故によって負った怪我や病気が完治せず、将来にわたって障害が残ったことの精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。

具体的には、以下のような精神的苦痛に対する補償となります。

  • 障害が残ることによる将来への不安
  • 日常生活における不便さやストレス
  • 仕事や社会生活での制限や困難
  • 外見の変化による精神的ショック

たとえば、交通事故で脊髄を損傷し、歩行が困難になった場合、その後の人生に大きな影響を与えます。このような長期的な苦痛や人生の変化に対する金銭的な補償が、後遺障害慰謝料の役割なのです。

後遺障害等級の認定で請求できるようになる

後遺障害慰謝料を請求するためには、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

後遺障害等級とは、障害の程度を14段階に分類したものです。後遺障害等級は1級から14級まであり、1級が最も重度で14級が最も軽度となります。

治療中の痛みや入院生活の苦痛に対して支払われる「入通院慰謝料」とは別に、後遺障害認定されると等級に応じた後遺障害慰謝料という賠償金を請求できるようになるのです。

等級によって後遺障害慰謝料の金額は大きく変わるため、適切な等級認定を受けることが非常に重要です。

後遺障害慰謝料の相場はいくら?

後遺障害慰謝料は110万円~2800万円が適正相場【相場がひとめでわかる早見表】

後遺障害等級認定を受けることで請求できる後遺障害慰謝料の金額は14段階ある後遺障害等級ごとに様々ですが、110万円から2,800万円が適正相場です。

もっとも、この適正相場は「弁護士基準(裁判基準)」と呼ばれる算定基準を用いた場合の金額となります。算定基準はその他に「自賠責基準」「任意保険基準」があり、「弁護士基準」を用いた算定が最も高額となります。

慰謝料金額相場の3基準比較

以下は後遺障害等級ごとに、後遺障害慰謝料の相場を自賠責基準と弁護士基準で比較した表です。任意保険基準については自賠責基準の金額に少し上乗せした程度とお考えください。

各基準における後遺障害慰謝料の相場

等級 自賠責基準*弁護士基準
1級・要介護1650万円
(1600万円)
2800万円
2級・要介護1203万円
(1163万円)
2370万円
1級1150万円
(1100万円)
2800万円
2級998万円
(958万円)
2370万円
3級861万円
(829万円)
1990万円
4級737万円
(712万円)
1670万円
5級618万円
(599万円)
1400万円
6級512万円
(498万円)
1180万円
7級419万円
(409万円)
1000万円
8級331万円
(324万円)
830万円
9級249万円
(245万円)
690万円
10級190万円
(187万円)
550万円
11級136万円
(135万円)
420万円
12級94万円
(93万円)
290万円
13級57万円
(57万円)
180万円
14級32万円
(32万円)
110万円

*()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合

弁護士基準による後遺障害慰謝料の金額は、法律の専門家である弁護士が後遺障害慰謝料を算定するときの金額です。示談段階から弁護士による増額交渉をしたり、裁判を起こしたりした場合に認められる可能性がある金額といえます。

一方、自賠責基準は相手方の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準で、後遺障害慰謝料の金額は最低限の金額です。また、任意保険基準は相手方の任意保険会社が独自に設定している慰謝料の算定基準で、後遺障害慰謝料の金額は弁護士基準には及びません。

同じ交通事故であってもどの算定基準を用いるかで得られる慰謝料の金額が変わってきます。被害者にとって大切なことは、法的に正当性の高い弁護士基準の慰謝料を獲得することです。

後遺障害慰謝料まとめ

  • 後遺障害が何級に認定されたかどうかで後遺障害慰謝料の金額は変わる
  • 後遺障害等級は障害の程度で14段階に分かれており、1級が最も重度で慰謝料も最も高額
  • 後遺障害慰謝料の算定でどの基準を用いるかでも金額は変わり、弁護士基準による算定が最も高額

後遺症が後遺障害等級何級にあたるのか知りたい方へ

ご自身の症状がどういった後遺障害等級に該当しうるのかは、自賠責の後遺障害等級表を参考にしてみてください。

それぞれ後遺障害等級の具体的な内容や慰謝料の金額を記載しているので、知りたい内容に応じてお役立てください。

事例|むちうちなら慰謝料いくら?

交通事故の怪我で最も多いといわれているのがむちうちです。むちうちは治療を受けても痛みやしびれといった後遺症が残ってしまうこともあります。

むちうちで後遺障害等級が認められる場合、14級9号または12級13号に該当する可能性が高いでしょう。具体的な後遺障害認定のコツやポイントは関連記事『後遺障害14級9号の認定基準と慰謝料|逸失利益は5年?認定されないときは?』をご確認ください。

以下は12級と14級ごとに、後遺障害慰謝料の相場を自賠責基準と弁護士基準で比較した表です。

12級と14級の後遺障害慰謝料

等級自賠責基準*弁護士基準
12級94万円
(93万円)
290万円
14級32万円
(32万円)
110万円

*()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合

表を見ると、自賠責基準に比べて弁護士基準の方が約3倍ほど高額です。自賠責基準と弁護士基準の差額分は、増額の余地がある金額ともいえます。

たとえば、後遺障害14級に認定され、任意保険会社から自賠責基準程度の後遺障害慰謝料を提示されても、弁護士が介入することで78万円の増額が見込めるのです。提示された金額を鵜呑みにすることなく、増額余地がどれくらいあるのかしっかり確認しましょう。

弁護士に慰謝料の増額交渉を任せたい方や、既に金額の提示を受けていて妥当性を知りたい方は、ぜひ無料の法律相談を活用してみてください。

コラム|複数の後遺障害等級が認定されたら慰謝料はどう計算する?

後遺症が複数残り、後遺障害等級が複数認定されたときには「併合〇級」として認定を受けます。併合後の等級に応じた後遺障害慰謝料を請求しましょう。

後遺障害等級の併合ルールは、次の通りです。

  • 5級以上が2つ以上:重い方の等級を3級繰り上げ
  • 8級以上が2つ以上:重い方の等級を2級繰り上げ
  • 13級以上が2つ以上:重い方の等級を1級繰り上げ
  • 14級が複数:14級
  • その他:重い方の等級に従う

たとえば、後遺障害13級と12級にあたる後遺症について認定を受けた場合は併合11級認定となり、後遺障害11級の慰謝料420万円が相場です。

後遺障害13級(相場180万円)と12級(相場290万円)を合算した470万円の後遺障害慰謝料がもらえるわけではありません。

また、どんな後遺症でも併合されるわけではなく、一定のルールに基づきます。

後遺障害等級の併合・相当・加重などの等級認定ルールについては、関連記事『後遺障害等級の併合・相当・加重|複数の後遺症認定時のルール』で詳しく解説しているので参考にしてみてください。

後遺障害の認定から慰謝料が支払われるまでの流れ

後遺障害等級認定の流れ

たとえ後遺症が残っても、後遺障害等級の認定を受けていなければ後遺障害慰謝料の請求はできません。

後遺障害等級の認定を受けるためには、相手方の保険会社を介して必要書類を審査機関に提出し、審査を受ける必要があります。

具体的な流れは以下の通りです。

  1. 必要書類を集める
  2. 相手方の自賠責保険会社または相手方の任意保険会社に書類を提出する
  3. 保険会社から審査機関に書類が渡る
  4. 審査機関にて審査が行われる
  5. 被害者に審査結果が通知される

後遺障害の申請方法については『交通事故で後遺障害を申請する|認定までの手続きの流れ、必要書類を解説』の記事も参考になりますので、あわせてご覧ください。

なお、相手方の自賠責保険会社に書類を提出する方法は「被害者請求」、相手方の任意保険会社に書類を提出する方法は「事前認定」といいます。

それぞれの方法の特徴と、メリット・デメリットをみていきましょう。

被害者請求について

被害者請求は、書類のすべてを被害者自身で集める申請方法です。相手方の自賠責保険会社を介して、審査機関に必要書類を提出する方法になります。

被害者請求の流れ

被害者請求はこんな人におすすめ

  • 後遺障害等級に認定されるかどうかわからない
  • 望む等級に認定されるかわからない
  • 早く後遺障害慰謝料を受け取りたい

被害者請求ではすべての書類を被害者側が用意するので、提出書類をブラッシュアップしたり追加の書類を添付したりといった審査対策が可能です。

また、後遺障害等級の認定後、後遺障害慰謝料の一部が支払われる点もメリットと言えます。

書類集めに手間がかかる、提出書類の内容をどうブラッシュアップすべきか・どんな追加書類を添付すべきかの判断が難しいというデメリットはありますが、これらのデメリットは弁護士のサポートを受けることで解消できます。

被害者請求のメリット・デメリット

メリット提出書類に工夫を施せるので、等級の認定率を上げられる
後遺障害慰謝料の一部を示談成立前に受け取れる
デメリット書類集めに手間がかかる
どんな工夫をすればよいのか判断が難しい

事前認定について

事前認定とは、相手方の任意保険会社を介して審査機関に必要書類を提出する方法です。

後遺障害診断書以外の書類は任意保険会社が用意してくれるので手間はかかりませんが、被害者請求のような審査対策は難しいといえます。

事前認定の流れ

事前認定はこんな人におすすめ

  • 後遺障害の有無を示す証拠がレントゲン写真やMRI画像にはっきり写っている
  • 後遺障害等級認定の準備に手間をかけられない

そのため、必要最低限の書類でも適切な後遺障害等級に認定される可能性が高い場合以外は、被害者請求を選んだ方が良いでしょう。

事前認定のメリット・デメリット

メリット書類集めの手間が省ける
デメリット必要最低限の書類や改善の余地がある書類を提出される恐れがある

「事前認定では適切な等級獲得が難しいけれど、申請準備に手間をかけられない」という事情があれば、一度弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すれば、書類の収集・精査を任せられるので、手間をかけずに被害者請求ができます。

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後遺障害慰謝料の支払い時期

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級の認定を受け取った後に行う示談が成立した後、およそ2週間ほどで振り込まれる見込みです。

もっとも、後遺障害申請から数えると数ヶ月以上かかる見込みとなるでしょう。

各段階で見込まれる期間

目安
後遺障害申請1ヶ月~3ヶ月程度
示談交渉1ヶ月~3ヶ月程度
示談成立から支払いまで2週間ほど

たとえば、後遺障害認定の申請から等級認定を受けるまでの期間は1ヶ月程度ですが、後遺症の内容によっては審査に時間がかかります。

後遺障害認定を受けるにしても、後遺障害診断書を用意したり、後遺障害認定の申請方法を検討したりと準備期間も必要になってくるので、後遺障害申請の期間だけでもトータルで3ヶ月程度は見込むべきでしょう。

示談交渉においては、後遺障害等級認定を受けられたことで、保険会社が他の賠償部分をシビアに算定して、少しでも示談金額を低くするように働きかけてくる可能性もあります。その結果、示談交渉が長引くこともあるでしょう。

様々な事情が考えられるため、後遺障害慰謝料の振込時期は事案ごとに異なります。

弁護士であれば、治療の経過、後遺症の内容からおおよその今後の流れをご説明できますので、法律相談時に確認することをおすすめします。

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後遺障害慰謝料以外に請求できる損害賠償金

後遺障害逸失利益|後遺障害認定で賠償請求

後遺障害の賠償金は後遺障害慰謝料だけではありません。後遺障害が残ったことで将来得られるはずだった収入が失われる「後遺障害逸失利益」も損害のひとつです。

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことにより労働能力が低下して得られなくなった、将来の収入に対する補償です。

後遺障害が残ると、それまでしていた仕事に支障が生じて退職や異動を余儀なくされたり、出世が難しくなったりして、生涯年収が減ってしまう場合があります。そうした損害に対する補償が、後遺障害逸失利益なのです。

逸失利益

後遺障害逸失利益の計算式は、被害者が就労者の場合と未就労者の場合で異なります。

就労者の場合の計算式

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間の年数に対応するライプニッツ係数

未就労者の場合の計算式

基礎収入×労働能力喪失率×(労働能力喪失期間終期までの年数に対応するライプニッツ係数-就労開始年齢までの年数に対応するライプニッツ係数)

サラリーマンのような給与所得者だけでなく、自営業者、家事従事者、場合によっては学生も後遺障害逸失利益の請求が可能です。

後遺障害逸失利益は後遺障害の程度や収入、年齢しだいで数千万円にもなる可能性があり、後遺障害における賠償金の大半を占めるケースもあります。

くわしい解説記事『【逸失利益の計算】職業別の計算方法を解説!早見表・計算機つき』では事例つきで逸失利益の計算方法を解説しているので、お役立てください。

入通院慰謝料|治療期間に応じて賠償請求

後遺障害に対する慰謝料とは別に、ケガの治療期間に応じて支払われる「入通院慰謝料」も賠償金として請求すべきでしょう。

入通院慰謝料は、交通事故でケガをして入院・通院した場合に生じる精神的苦痛の補償です。入院や通院の期間により金額が異なります。

自賠責保険基準であれば、日額4300円とし、「実際の治療日数の2倍」または「治療開始から終了までの期間の日数」のうち少ない方をかけます。

弁護士基準で算定した慰謝料の相場は、以下の表を使って確認します。

弁護士基準の入通院慰謝料算定表(重傷)

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

弁護士基準の入通院慰謝料算定表(軽傷)

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

もっとも上表はひと月を30日として計算するので、入通院日数に端数がある場合は面倒な計算が必要になります。

以下の「交通事故の慰謝料計算機」も便利なツールです。

具体的な日数を入力すれば自動計算可能になっていますし、後遺障害等級も入力すれば後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益もあわせた金額がわかります。個人情報の登録も必要ないので、どなたでもお気軽にお試しください。

なお、慰謝料の計算方法をもっと詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故の慰謝料の計算方法|正しい賠償金額がわかる』も参考にしてください。

慰謝料は事情に応じて増額されることがある

慰謝料の金額は入通院の期間だけではなく、事故ごとの個別の事情により増額される場合があります。
実際に増額が認められた事情として挙げられる例は、以下の通りです。

  • 飲酒運転や無免許など加害者の過失が悪質である
  • 加害者がひき逃げや救助活動を全くしないなど、本来行うべき対応を行わなかった
  • 加害者が反省の態度を示さない、事故を起こしたことを認めないなど不誠実な対応をしている

ただし、どのような事情においてどのくらい慰謝料が増額されるのか、明確な決まりはありません。
判例や過去のケースを元に相手方との交渉次第となるので、一度弁護士にご相談ください。

後遺障害認定で請求可能な賠償金まとめ

交通事故で後遺症が残った場合に認められる可能性のある損害賠償金は、以下の通りです。

交通事故損害賠償の内訳
  • 治療費
  • 休業損害
  • 入院通院慰謝料
  • 傷害に関する賠償その他
    • 入院、通院交通費
    • 入院、通院の付添費用
  • 後遺障害逸失利益
  • 後遺障害慰謝料
  • 後遺障害に関する賠償その他
    • 将来の介護費用
    • 近親者の慰謝料
  • 物的損害(自動車の修理費用、代車費用など)

近親者の慰謝料は、近親者が死亡事故と同程度の精神的苦痛を受けたといえる場合に認められます。等級の高い後遺障害が認定されると請求できる可能性が高く、金額も高額になりやすいでしょう。

交通事故で損害賠償請求するべき内容を見逃したまま示談を結んでしまうと、後からの追加請求は困難です。このような損害賠償請求の原則を知っておくことは、円滑な示談交渉のためにも重要なので、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲』の記事から確認しておくことをおすすめします。

後遺障害の賠償金請求で気を付けるべきポイント

後遺障害等級認定を獲得するコツを抑える

(1)症状固定まで定期的に通院する

通院は最低でも月に1回以上、できれば月に10日以上、症状固定まで通院することが理想的です。

通院頻度が低すぎたり、症状固定の診断を受ける前に治療をやめてしまったりすると、審査機関から「本当は完治しているのではないか?」「治療に対する意欲がなかったから後遺症が残ったのではないか?」といった疑いをもたれる可能性があります。

疑いがもたれると、交通事故を理由として後遺症が残ったとはいえないとして、後遺障害等級が認定されない可能性が高まるので注意しましょう。

(2)後遺障害認定に必要な検査を受ける

後遺症の存在・程度を他覚的・医学的に証明するためには、後遺障害診断書に神経学的検査の結果を記載する必要があります。

特に、レントゲン写真やMRI画像などに異常が写っていない場合は、検査結果による後遺症の証明が重要です。

しかし、医学的な観点から必要な検査と、後遺症の存在を証明するために必要な検査は必ずしも同じではありません。
そのため、医師から指示のあった検査を受けるだけでは、後遺症の存在を証明するのに不十分な可能性があります。

弁護士にどのような後遺症が残っているのかを伝えれば、受けるべき検査を教えてもらえることがあるので、不安があれば積極的に相談してみてください。

(3)後遺障害診断書の内容を確認する

後遺障害等級認定で審査機関に提出する書類の中でも、後遺障害診断書は非常に重要です。
「診断書は医師が書いてくれるものだから、医師に任せておけば大丈夫」と思いがちですが、決してそうとは言い切れません。

もちろん医師は医療の専門家ですが、医学的に良い後遺障害診断書の書き方と、後遺障害等級認定に有利な後遺障害診断書の書き方は別です。

特に、今後の見通しを書く欄は必ずチェックしてください。
「症状固定」「後遺症あり」などと書かれていれば問題ありませんが、「治癒」「緩解」などと書かれていると、後遺症は残っていないということになってしまいます。

後遺症が残っているのに治癒、緩解などといった記載がある場合は、事情を説明したうえで、訂正してもらいましょう。

(4)適切な追加書類を添付する

レントゲン写真やMRI画像などに異常が写っていない場合は、追加書類を添付できる「被害者請求」で後遺障害等級認定を申請してください。

具体的な追加書類としては、日常生活状況報告書医師の意見書などが効果的です。

後遺障害の賠償金請求は全損害がわかってから始める

慰謝料等の損害賠償請求は、全体の損害額が明らかになった時点で行うべきです。

損害賠償請求は基本的に示談交渉を通して行いますが、一度示談が成立した後に新たな損害が発覚しても、原則として追加の賠償請求はできないからです。

後遺症が残っている場合には、後遺障害の等級が認定されれば、請求可能な内容や金額が判明し、全体の損害額が明らかになります。そのため、後遺障害の等級が認定された時点で損害額の計算を行い、請求を行ってください。

もし損害が確定する前に相手方の任意保険会社から示談交渉を持ちかけられても、損害が確定するまで待ってもらうことが必要です。

示談前でも一定額の賠償金請求は可能

後遺症が残っている場合には、後遺障害認定の結果が出て、その結果に納得してから示談交渉を始めるべきです。

しかし、なかには金銭的に苦しくなってきたために示談成立を優先させ、後遺障害認定を諦める方もおられるといいます。もし金銭的な理由であれば一度弁護士に相談してみてください。

なぜなら、賠償金のうち自賠責保険から支払われる部分について、治療中の休業損害や慰謝料を示談前でも請求できるからです。こうした自賠責保険への直接請求は「被害者請求」と呼ばれます。

被害者請求の手続きは弁護士に任せることも可能です。ただしお手続きには一定の時間も要しますので、できるだけ余裕をもって弁護士相談することをおすすめします。

慰謝料は減額されることもある

慰謝料の金額は過失割合や損益相殺、事故前からの心身の特徴などで減額される場合があります。

過失相殺による減額

交通事故の原因が被害者にもある場合には、被害者の過失の割合に応じて慰謝料が減額されます。

被害者の過失割合の程度については、赤い本(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準)などに記載されている基準表をもとに判断されます。基準表には典型的な事故のケースと、過失割合に影響する要素が記載されているので、それらを組み合わせて算定していきます。

交通事故の過失割合については、関連記事『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』をご覧ください。事故形態ごとの基本の過失割合や、過失割合決定の流れについて、わかりやすく解説しています。

損益相殺による減額

事故により、慰謝料や損害賠償金と同じような金銭をすでに受け取っている場合、二重取りを防ぐためにその金額分が慰謝料・損害賠償金から差し引かれる損益相殺が行われます。

被害者が後遺障害を負った場合に損益相殺されるものと、損益相殺されないものは以下の通りです。

損益相殺されるものとされないもの

損益相殺種類
される・労災保険による休業補償、障害年金
・国民年金法や厚生年金保険法による障害基礎年金
されない・労災保険による休業特別給付金、障害特別支給金、障害特別年金
・身体障害福祉法に基づく給付
・生活保護の扶助費

    素因減額による減額

    被害者が事故前から有していた身体的または心理的な疾患や、身体的特徴が損害拡大の原因となっている場合には、慰謝料が減額される素因減額が認められる可能性があります。

    素因減額が認められる事例は次のようなケースです。

    • 事故前から被害者の体に疾患が存在した
    • 負傷しないように慎重な行動が求められる身体的特徴を有していた
    • 軽微な事故であるにもかかわらずうつ病に陥り、一般的な治療期間よりも長期の治療期間を要した

    素因減額については『素因減額とは?減額されるケースや判断基準がわかる【判例つき】』も参考になりますので、あわせてご確認ください。

    損害賠償請求の権利には時効がある

    慰謝料を請求する権利が時効となってしまうと、そもそも請求自体ができなくなるので気を付けましょう。損害賠償請求権の時効期間は、事故の発生日や損害の内容により異なります。

    損害賠償請求権の時効期間

    2020年4月1日以降2020年3月31日以前
    人損部分5年3年
    物損部分3年3年

    後遺障害を負うようなケガは治療期間が長期に渡ることが多いため、治療中に時効期間が迫ってくる恐れがあります。
    弁護士に相談すると、時効の成立を阻止してもらえることがあるので、時効が迫っている場合にはできるだけ早くご連絡ください。

    弁護士に相談すべき3つの状況

    (1)被害者請求を効果的に行いたい

    被害者請求で後遺障害等級認定の申請を行いたいけれど、次のような理由でためらっている方もいらっしゃるでしょう。

    • 仕事や子育て、後遺症などで書類を集められない
    • 後遺障害診断書を見ても記載内容の良し悪しがわからない
    • どのような追加書類を添付すればいいのかわからない
    • どのような検査を受ければ良いのかわからない

    被害者請求は後遺障害等級を獲得するための工夫や対策をしやすい申請方法ですが、上記のような悩みを抱えたまま被害者請求をしても、被害者請求の良さを活かすことができません。

    被害者請求をしたいけれど困っていることがある、わからないことがあるという場合には、弁護士にご相談ください。
    弁護士に相談することで、資料集めを代わりにしてもらえたり、提出書類や検査に関するアドバイスをもらえたりします。

    (2)後遺障害等級認定の結果に納得いかない

    後遺障害等級認定の審査はすでに受けたけれど、納得のいく結果ではなかったという場合も、弁護士にご相談ください。

    後遺障害等級認定の結果に満足できない場合、後遺障害の異議申立てを行って再度審査を受けることができます。

    しかし、異議申立てをしたからといって必ずしも結果が変わるわけではありません。
    また、異議申立てをする分示談交渉の開始時期が遅れ、慰謝料や賠償金の受け取り時期も遅くなってしまいます。

    そのため、異議申立てをするのであれば以下の点について確認しておくことが重要です。

    • 異議申し立てをした場合、結果が変わる可能性はあるか
    • 何が審査機関にきちんと伝わっていなかったのか
    • 審査機関に伝わっていなかったことを確実に伝えるためにはどのような書類を送ればいいのか

    上記の点について十分に把握したうえで異議申し立てを行わなければ、時間ばかりがかかり、望む結果が得られない可能性が高いです。

    時間を無駄にしないためにも、適正な等級が認定されるという結果を得るためにも、異議申し立てをする際には事前に弁護士に相談し、上記の点についてアドバイスを受けることをおすすめします。

    関連記事

    後遺障害の異議申し立てを成功させる方法と流れ

    (3)相手方の任意保険会社からの提示額が少ない

    後遺障害等級認定の審査が終わったら、相手方の任意保険会社から慰謝料や賠償金の提示額を記載した書類が届きます。書類が届いた時にはまず、金額が適切なものであるか確認してください。

    目安となる相場金額は、下の計算機から確認できます。

    ※治療関係費は実費となりますのでこちらの計算機では計算できません。

    「慰謝料計算機」で算出される金額よりも相手方の任意保険会社の提示額が低い場合、その金額はまだ増額の余地があるといえますので、増額交渉が必要です。

    しかし、被害者本人で増額交渉をしても、十分に聞き入れられることはないでしょう。
    任意保険会社にとって、被害者に支払う慰謝料・損害賠償金は支出です。そのため、少しでも低額にしようとシビアな態度で交渉に臨んでくるのです。

    増額交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。
    弁護士なら法律知識と資格を持っているため、任意保険会社の態度が軟化する傾向にあります。

    また、任意保険会社内で「被害者が交渉人なら金額はここまでしか出さない、弁護士が交渉人ならこの金額まで増額可能」と設定している場合もあるのです。

    他にも、弁護士を立てると直接相手方とやり取りする必要がなくなるので精神的負担が減る、仕事や日常生活に専念できるといったメリットもあります。

    弁護士に依頼するメリットについては、『交通事故を弁護士に依頼するメリットと必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』で詳しく解説しているので、合わせてご確認ください。

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    無料相談をしたときに対応が好印象でしたので、そのままお願いさせていただきました。やはりお願いして良かったと心から思います。ありがとうございました。

    むちうち、坐骨神経痛の増額事例

    契約前にも親切にアドバイス頂き、頼むことにしました。先生はとても話やすく、事故に強い先生だったので、思っていたより金額が出てびっくりしました。

    むちうちの増額事例

    納得のいかない点、判らない点を1つ1つ整理して下さり、手順を追って、それぞれ電話・メール・fax・手紙等で丁寧に対応してくださいました。

    右脛骨果部骨折、右腓骨頭骨折の増額事例

    保険会社の対応不安から、依頼したのですが、予想以上の結果に満足しています。毎日毎日頭の中の不安から開放され、やっと新しいスタートを切れます。

    神経症状、醜状障害の増額事例

    アトム法律事務所では、今後も弁護士・事務員ともにご依頼者様に寄り添った丁寧な対応に努めてまいります。

    アトム法律事務所の解決実績

    アトム法律事務所の弁護士は、交通事故の解決実績が多数あります。

    • 示談交渉や裁判の経験が豊富
    • 過去に任意保険会社の弁護士として示談交渉をした経験がある

    アトム法律事務所の過去の実績をご紹介します。

    むちうち症(後遺障害14級)の増額事例

    傷病名むちうち症
    後遺障害等級14級9号
    増額金額171万円→309万円

    左肩骨折(後遺障害12級)の増額事例

    傷病名左肩骨折
    後遺障害等級12級13号
    増額金額645万円→1624万円

    ※相手方からの金額提示後、弁護士のサポートを受け後遺障害等級認定を受けた事例

    第一腰椎圧迫骨折(後遺障害8級)の増額事例

    傷病名第一腰椎圧迫骨折(脊柱に中程度の変形が残るもの)
    後遺障害等級8級2号
    増額金額2397万円→2874万円

    脳挫傷(後遺障害4級)の増額事例

    傷病名脳挫傷、高次脳機能障害、頭蓋骨の陥没
    後遺障害等級併合4級
    増額金額3353万円→4400万円

    この他にも「交通事故の解決事例」ページでは、アトム法律事務所の弁護士が実際に解決した事例をご確認いただけます。ぜひあわせてご覧ください。

    アトム法律事務所への相談は、後遺障害等級認定の申請前でも、任意保険会社からの示談金額提示前でも、示談金額提示後でも可能です。
    気になる点やお困りごとなどがある場合は、一人で悩まずお話をお聞かせください。

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    岡野武志弁護士

    監修者


    アトム法律事務所

    代表弁護士岡野武志

    詳しくはこちら

    高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
    現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

    保有資格

    士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

    学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

    突然生じる事故や事件に、
    地元の弁護士が即座に対応することで
    ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。