後遺障害慰謝料の相場はいくら?等級認定や慰謝料がいつ支払われるか解説

更新日:

【後遺障害慰謝料】

交通事故で後遺症が残った場合、入通院慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」の請求が可能です。

後遺障害慰謝料の金額は後遺障害等級によって決まります。つまり、後遺障害慰謝料をもらうためには、後遺症について「後遺障害等級認定」を受けていなければなりません。

そこでこの記事では、後遺障害慰謝料の相場、後遺症に関する等級認定から慰謝料支払いの流れ、後遺障害慰謝料をもらうために受けるべき後遺障害等級認定を中心に解説していきます。

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後遺症が残った場合の慰謝料相場額

後遺障害慰謝料の金額はいくら【相場がひとめでわかる早見表つき】

後遺障害等級認定を受けることで請求できる後遺障害慰謝料の相場は110万円から2,800万円と幅広く、14段階ある後遺障害等級ごとに様々です。

後遺障害認定を受けたときにいくらもらえるのか、各等級の慰謝料相場は下表にまとめています。

後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料の相場(弁護士基準)

等級 後遺障害慰謝料
1級・要介護2,800万円
2級・要介護2,370万円
1級2,800万円
2級2,370万円
3級1,990万円
4級1,670万円
5級1,400万円
6級1,180万円
7級1,000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

もっとも、こうした後遺障害慰謝料の金額は「弁護士基準」や「裁判基準」と呼ばれる算定基準になります。

法律の専門家が後遺障害慰謝料を算定するときの金額なので、示談段階から弁護士による増額交渉をしたり、裁判を起こしたりした場合に認められる可能性がある金額です。

後遺障害慰謝料の金額計算は弁護士基準を用いる

同じ交通事故であっても慰謝料の算定方法は3つあり、それぞれ金額が異なります。被害者にとって大切なことは、法的に正当性の高い弁護士基準の慰謝料を獲得することです。

慰謝料算定の3基準の概要

基準概要
自賠責基準加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。
最低限の金額となっている。
任意保険基準加害者側の任意保険会社が提示してくる慰謝料の算定基準。
各保険会社が独自に設定している。
弁護士基準(裁判基準)裁判所や弁護士が慰謝料を計算する際に用いる基準。
3基準の中で最も高額な算定基準といえる。

以下は後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料の相場を、自賠責基準と弁護士基準で比較した表です。

各基準における後遺障害慰謝料の相場

等級 自賠責基準*弁護士基準差額**
1級・要介護1650万円(1600万円)2800万円1150万円(1200万円)
2級・要介護1203万円(1163万円)2370万円1167万円(1207万円)
1級1150万円(1100万円)2800万円1650万円(1700万円)
2級998万円(958万円)2370万円1372万円(1412万円)
3級861万円 (829万円)1990万円1129万円(1161万円)
4級737万円(712万円)1670万円933万円(958万円)
5級618万円(599万円)1400万円782万円(801万円)
6級512万円 (498万円)1180万円668万円(682万円)
7級419万円 (409万円)1000万円581万円(591万円)
8級331万円 (324万円)830万円499万円(506万円)
9級249万円 (245万円)690万円441万円(445万円)
10級190万円 (187万円)550万円360万円(363万円)
11級136万円 (135万円)420万円284万円(285万円)
12級94万円 (93万円)290万円196万円(197万円)
13級57万円 (57万円)180万円123万円(123万円)
14級32万円 (32万円)110万円78万円(78万円)

*()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
**裁判基準の金額-自賠責基準の金額

自賠責基準と弁護士基準では75万円から1,700万円の「差額」があることがわかります。

差額分は、相手保険会社の提示額からの増額の余地がある金額ともいえます。
たとえば後遺障害3級で自賠責基準程度の後遺障害慰謝料を提示されたら、1000万円以上も増額の余地があるのです。

相手方任意保険会社は、示談交渉で自賠責基準と同程度または少し高額な程度の金額を提示してきます。提示された金額を鵜呑みにすることなく、増額の余地がどれくらいあるのかしっかり確認することが大切です。

後遺障害慰謝料の交渉を任せたい方や、既に金額の提示を受けていて妥当性を知りたい方は、ぜひ無料の法律相談を活用してみてください。

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後遺症が後遺障害等級何級にあたるのか知りたい方へ

ご自身の症状がどういった後遺障害等級に該当しうるのかは、自賠責の後遺障害等級表を参考にしてみてください。

関連記事『【後遺障害等級表】症状別の等級や認定基準を解説!自賠責保険金もわかる』では、症状ごとの後遺障害等級や保険金の金額を記載しているので、お役立てください。

【コラム】複数の後遺障害等級が認定されたら慰謝料はどう計算する?

後遺症が複数残り、後遺障害等級が複数認定されたときには「併合〇級」として認定を受けます。併合後の等級に応じた後遺障害慰謝料を請求しましょう。

後遺障害等級の併合ルールは、次の通りです。

  • 5級以上が2つ以上:重い方の等級を3級繰り上げ
  • 8級以上が2つ以上:重い方の等級を2級繰り上げ
  • 13級以上が2つ以上:重い方の等級を1級繰り上げ
  • 14級が複数:14級
  • その他:重い方の等級に従う

たとえば、後遺障害13級と12級にあたる後遺症について認定を受けた場合は併合11級認定となり、後遺障害11級の慰謝料420万円が相場です。

後遺障害13級(相場180万円)と12級(相場290万円)を合算した470万円の後遺障害慰謝料がもらえるわけではありません。

また、どんな後遺症でも併合されるわけではなく、一定のルールに基づきます。

後遺障害等級の併合・相当・加重などの等級認定ルールについては、関連記事『後遺障害等級の併合・相当・加重|複数の後遺症認定時のルール』で詳しく解説しているので参考にしてみてください。

後遺障害慰謝料はいつ支払われる?等級認定の流れも解説

ここからは後遺障害慰謝料の受け取り時期、後遺障害認定の流れなど、後遺障害慰謝料を受け取るまでの大まかな流れを説明します。

後遺障害慰謝料の支払い時期

後遺障害慰謝料は、相手の保険会社との示談成立後およそ2週間ほどで振り込まれる見込みです。

振込までの流れ

  • 後遺障害認定の申請をおこなう
  • 後遺障害認定の審査を経て等級認定される
  • 後遺障害に対する賠償金を含む示談が成立する
  • 後遺障害慰謝料を含む示談金が振り込まれる

後遺障害認定の申請から等級認定を受けるまでの期間は1ヶ月程度ですが、後遺症の内容によっては審査に時間がかかります。

また、後遺障害認定を受けるためには、後遺障害診断書を用意したり、後遺障害認定の申請方法を検討したりと準備期間も必要です。

示談交渉においては、後遺障害等級認定を受けられたことで、保険会社が他の賠償部分をシビアに算定して、少しでも示談金額を低くするように働きかけてくる可能性もあります。その結果、示談交渉が長引くこともあるでしょう。

様々な事情が考えられるため、後遺障害慰謝料の振込時期は事案ごとに異なります。

弁護士であれば、治療の経過、後遺症の内容からおおよその今後の流れをご説明できますので、法律相談時に確認することをおすすめします。

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後遺障害等級認定の流れ

たとえ後遺症が残っても、後遺障害等級の認定を受けていなければ後遺障害慰謝料の請求はできません。

後遺障害等級の認定を受けるためには、加害者側の保険会社を介して必要書類を審査機関に提出し、審査を受ける必要があります。

具体的な流れは以下の通りです。

  1. 必要書類を集める
  2. 加害者側の自賠責保険会社または加害者側の任意保険会社に書類を提出する
  3. 保険会社から審査機関に書類が渡る
  4. 審査機関にて審査が行われる
  5. 被害者に審査結果が通知される

加害者側の自賠責保険会社に書類を提出する方法は「被害者請求」、加害者側の任意保険会社に書類を提出する方法は「事前認定」といいます。

それぞれの方法の特徴と、メリット・デメリットをみていきましょう。

等級認定の申請|被害者請求と事前認定から選択

被害者請求について

被害者請求は、書類のすべてを被害者自身で集める申請方法です。加害者側の自賠責保険会社を介して、審査機関に必要書類を提出する方法になります。

被害者請求の流れ

被害者請求はこんな人におすすめ

  • 後遺障害等級に認定されるかどうかわからない
  • 望む等級に認定されるかわからない
  • 早く後遺障害慰謝料を受け取りたい

被害者請求ではすべての書類を被害者側が用意するので、提出書類をブラッシュアップしたり追加の書類を添付したりといった審査対策が可能です。

また、後遺障害等級の認定後、後遺障害慰謝料の一部が支払われる点もメリットと言えます。

書類集めに手間がかかる、提出書類の内容をどうブラッシュアップすべきか・どんな追加書類を添付すべきかの判断が難しいというデメリットはありますが、これらのデメリットは弁護士のサポートを受けることで解消できます。

被害者請求のメリット・デメリット

メリット提出書類に工夫を施せるので、等級の認定率を上げられる
後遺障害慰謝料の一部を示談成立前に受け取れる
デメリット書類集めに手間がかかる
どんな工夫をすればよいのか判断が難しい

事前認定について

事前認定とは、加害者側の任意保険会社を介して審査機関に必要書類を提出する方法です。

後遺障害診断書以外の書類は相手方任意保険会社が用意してくれるので手間はかかりませんが、被害者請求のような審査対策は難しいといえます。

事前認定の流れ

事前認定はこんな人におすすめ

  • 後遺障害の有無を示す証拠がレントゲン写真やMRI画像にはっきり写っている
  • 後遺障害等級認定の準備に手間をかけられない

そのため、必要最低限の書類でも適切な後遺障害等級に認定される可能性が高い場合以外は、被害者請求を選んだ方が良いでしょう。

事前認定のメリット・デメリット

メリット書類集めの手間が省ける
デメリット必要最低限の書類や改善の余地がある書類を提出される恐れがある

「事前認定では適切な等級獲得が難しいけれど、申請準備に手間をかけられない」という事情があれば、一度弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すれば、書類の収集・精査を任せられるので、手間をかけずに被害者請求ができます。

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【補足】むちうちに代表される神経症状は被害者請求がおすすめ

むちうちの後遺症に代表される神経症状が画像検査および神経学的検査で確認できるときには後遺障害12級13号認定の可能性があります。

あるいは神経学的検査のみで症状が確認できるときには、後遺障害14級9号認定の見通しです。

しかし、痛みやしびれといった神経症状は、画像検査でわかるケースばかりではありません。検査所見がみられなかったり、後遺障害申請の書類がそろっておらず、後遺障害非該当となれば後遺障害慰謝料は一切受け取れないのです。

むちうちで後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定の条件をしっかり確認したうえで適切な対策をとる必要があります。

むちうちで後遺障害等級認定を受けるには、次のような条件を満たしている必要があります。

後遺障害等級認定のポイント

  • CT・MRIといった画像検査で症状の存在が証明できること(後遺障害12級13号認定)
  • 神経学的検査で症状の存在が説明できること(後遺障害14級9号認定)
  • 事故直後から適切な治療を続けていること
  • 事故直後から症状が続いていること
  • 事故の規模が一定程度であること
  • 治療期間が6ヶ月(半年)以上であること

具体的な後遺障害認定のコツやポイントは関連記事『後遺障害14級9号とは?12級13号との違い、認定されないときの対処』で解説しているので、ぜひご確認ください。

後遺障害慰謝料以外の損害賠償金と計算方法

後遺障害の賠償金は後遺障害慰謝料だけではありません。

たとえば、後遺障害が残ったことで将来得られるはずだった収入が失われる「後遺障害逸失利益」も損害のひとつです。

また、後遺障害に対する慰謝料とは別に、ケガの治療期間に対して支払われる入通院慰謝料も賠償金として請求すべきでしょう。

ここからは後遺障害逸失利益入通院慰謝料の計算方法について重点的に解説します。

逸失利益の計算方法|生涯収入の減少を補償する

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことにより労働能力が低下して得られなくなった、将来の収入に対する補償です。

後遺障害が残ると、それまでしていた仕事に支障が生じて退職や異動を余儀なくされたり、出世が難しくなったりして、生涯年収が減ってしまう場合があります。そうした損害に対する補償が、後遺障害逸失利益なのです。

逸失利益

逸失利益の計算式は、被害者が就労者の場合と、年齢が原因で働けない未就労者の場合で異なります。

就労者の場合の計算式

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間の年数に対応するライプニッツ係数

未就労者の場合の計算式

基礎収入×労働能力喪失率×(労働能力喪失期間終期までの年数に対応するライプニッツ係数-就労開始年齢までの年数に対応するライプニッツ係数)

サラリーマンのような給与所得者だけでなく、自営業者、家事従事者、場合によっては学生も逸失利益の請求が可能です。

逸失利益は後遺障害の程度や収入、年齢しだいで数千万円にもなる可能性があり、後遺障害における賠償金の大半を占めるケースもあります。

くわしい解説記事『【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき』では事例つきで計算方法を解説しているので、お役立てください。

入通院慰謝料の計算方法|治療期間の精神的苦痛に対する補償

入通院慰謝料は、交通事故でケガをして入院・通院した場合に生じる精神的苦痛の補償です。
入院や通院の期間により金額が異なります。

自賠責保険基準であれば、日額4300円とし、「実際の治療日数の2倍」または「治療開始から終了までの期間の日数」のうち少ない方をかけます。

裁判基準で算定した慰謝料の相場は、以下の表を使って確認します。

裁判基準の入通院慰謝料算定表(重傷)

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

裁判基準の入通院慰謝料算定表(軽傷)

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

もっとも上表はひと月を30日として計算するので、入通院日数に端数がある場合は面倒な計算が必要になります。

以下は交通事故の慰謝料計算機も便利なツールです。個人情報の登録も必要ありませんし、具体的な日数を入力すれば自動計算可能になっています。どなたでもお気軽にお試しください。

慰謝料の計算方法をもっと詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故の慰謝料の計算方法|正しい賠償金額がわかる!』も参考にしてください。

慰謝料は事情に応じて増額されることがある

慰謝料の金額は入通院の期間だけではなく、事故ごとの個別の事情により増額される場合があります。
実際に増額が認められた事情として挙げられる例は、以下の通りです。

  • 飲酒運転や無免許など加害者の過失が悪質である
  • 加害者がひき逃げや救助活動を全くしないなど、本来行うべき対応を行わなかった
  • 加害者が反省の態度を示さない、事故を起こしたことを認めないなど不誠実な対応をしている

ただし、どのような事情においてどのくらい慰謝料が増額されるのか、明確な決まりはありません。
判例や過去のケースを元に相手方との交渉次第となるので、一度弁護士にご相談ください。

請求可能な損害賠償金一覧

交通事故で後遺症が残った場合に認められる可能性のある損害賠償金は、以下の通りです。

  • 治療費
  • 入院、通院交通費
  • 入院、通院の付添費用
  • 入院、通院に対する慰謝料
  • 休業損害
  • 後遺障害逸失利益
  • 将来の介護費用
  • 近親者の慰謝料
  • 物的損害(自動車の修理費用、代車費用など)

近親者の慰謝料は、近親者が死亡事故と同程度の精神的苦痛を受けたといえる場合に認められます。
等級の高い後遺障害が認定されると請求できる可能性が高く、金額も高額になりやすいでしょう。

交通事故で損害賠償請求するべき内容を見逃したまま示談を結んでしまうと、後からの追加請求は困難です。このような損害賠償請求の原則を知っておくことは、円滑な示談交渉のためにも重要なので、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲』の記事から確認しておくことをおすすめします。

賠償金請求の際に気を付けるべきポイント

後遺障害に関する賠償金を請求する際に注意したいポイントについて説明します。

適切な後遺障害等級獲得のコツをおさえよう

(1)症状固定まで定期的に通院する

通院は、最低でも月に1回以上、できれば月に10日以上、症状固定まで通院することが理想的です。

通院頻度が低すぎたり、症状固定の診断を受ける前に治療をやめてしまったりすると、審査機関から次のような疑いをもたれる可能性があります。

  • 本当は完治しているのではないか?
  • 治療に対する意欲がなかったから後遺症が残ったのではないか?

これらの疑いがもたれると、交通事故を理由として後遺症が残ったとはいえないとして、後遺障害等級が認定されない可能性が高まるので注意しましょう。

(2)後遺障害認定に必要な検査を受ける

後遺症の存在・程度を他覚的・医学的に証明するためには、後遺障害診断書に神経学的検査の結果を記載する必要があります。

特に、レントゲン写真やMRI画像などに異常が写っていない場合は、検査結果による後遺症の証明が重要です。

しかし、医学的な観点から必要な検査と、後遺症の存在を証明するために必要な検査は必ずしも同じではありません。
そのため、医師から指示のあった検査を受けるだけでは、後遺症の存在を証明するのに不十分な可能性があります。

弁護士にどのような後遺症が残っているのかを伝えれば、受けるべき検査を教えてもらえることがあるので、不安があれば積極的に相談してみてください。

(3)後遺障害診断書の内容を確認する

後遺障害等級認定で審査機関に提出する書類の中でも、後遺障害診断書は非常に重要です。
「診断書は医師が書いてくれるものだから、医師に任せておけば大丈夫」と思いがちですが、決してそうとは言い切れません。

もちろん医師は医療の専門家ですが、医学的に良い後遺障害診断書の書き方と、後遺障害等級認定に有利な後遺障害診断書の書き方は別です。

特に、今後の見通しを書く欄は必ずチェックしてください。
「症状固定」「後遺症あり」などと書かれていれば問題ありませんが、「治癒」「緩解」などと書かれていると、後遺症は残っていないということになってしまいます。

後遺症が残っているのに治癒、緩解などといった記載がある場合は、事情を説明したうえで、訂正してもらいましょう。

(4)適切な追加書類を添付する

レントゲン写真やMRI画像などに異常が写っていない場合は、追加書類を添付できる「被害者請求」で後遺障害等級認定を申請してください。

具体的な追加書類としては、日常生活状況報告書医師の意見書などが効果的です。

後遺障害の賠償金請求は全損害が明らかになってから開始

慰謝料等の損害賠償請求は、全体の損害額が明らかになった時点で行うべきです。

損害賠償請求は基本的に示談交渉を通して行いますが、一度示談が成立した後に新たな損害が発覚しても、原則として追加の賠償請求はできないからです。

後遺症が残っている場合には、後遺障害の等級が認定されれば、請求可能な内容や金額が判明し、全体の損害額が明らかになります。そのため、後遺障害の等級が認定された時点で損害額の計算を行い、請求を行ってください。

もし損害が確定する前に相手方任意保険会社から示談交渉を持ちかけられても、損害が確定するまで待ってもらうことが必要です。

示談前でも一定額の賠償金請求は可能

後遺症が残っている場合には、後遺障害認定の結果が出て、その結果に納得してから示談交渉を始めるべきです。

しかし、なかには金銭的に苦しくなってきたために示談成立を優先させ、後遺障害認定を諦める方もおられるといいます。もし金銭的な理由であれば一度弁護士に相談してみてください。

なぜなら、賠償金のうち自賠責保険から支払われる部分について、治療中の休業損害や慰謝料を示談前でも請求できるからです。こうした自賠責保険への直接請求は「被害者請求」と呼ばれます。

被害者請求の手続きは弁護士に任せることも可能です。ただしお手続きには一定の時間も要しますので、できるだけ余裕をもって弁護士相談することをおすすめします。

慰謝料は減額されることもある

慰謝料の金額は過失割合や損益相殺、事故前からの心身の特徴などで減額される場合があります。

過失相殺による減額

交通事故の原因が被害者にもある場合には、被害者の過失の割合に応じて慰謝料が減額されます。

被害者の過失割合の程度については、赤い本(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準)などに記載されている基準表をもとに判断されます。
基準表には典型的な事故のケースと、過失割合に影響する要素が記載されているので、それらを組み合わせて算定していきます。

交通事故の過失割合については、関連記事『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』をご覧ください。事故形態ごとの基本の過失割合や、過失割合決定の流れについて、わかりやすく解説しています。

損益相殺による減額

事故により、慰謝料や損害賠償金と同じような金銭をすでに受け取っている場合、二重取りを防ぐためにその金額分が慰謝料・損害賠償金から差し引かれます。
これが損益相殺です。

被害者が後遺障害を負った場合に損益相殺の対象となるのは、以下の給付です。

  • 労災保険による休業補償、障害年金
  • 国民年金法や厚生年金保険法による障害基礎年金

一方、以下のようなお金は、受け取っても損益相殺の対象とはなりません。

  • 労災保険による休業特別給付金、障害特別支給金、障害特別年金
  • 身体障害福祉法に基づく給付
  • 生活保護の扶助費

素因減額による減額

被害者が事故前から有していた身体的または心理的な疾患や、身体的特徴が損害拡大の原因となっている場合には、慰謝料が減額される可能性があります。
このような減額を素因減額といいます。

素因減額が認められる事例は次のようなケースです。

  • 事故前から被害者の体に疾患が存在した
  • 負傷しないように慎重な行動が求められる身体的特徴を有していた
  • 軽微な事故であるにもかかわらずうつ病に陥り、一般的な治療期間よりも長期の治療期間を要した

素因減額については『素因減額とは?適用される疾患・ケースや計算方法を解説【判例つき】』も参考になりますので、あわせてご確認ください。

損害賠償請求の権利には時効がある

慰謝料を請求する権利が時効となってしまうと、そもそも請求自体ができなくなるので気を付けましょう。
損害賠償請求権の時効期間は、事故の発生日や損害の内容により異なります。

2020年4月1日以降2020年3月31日以前
人損部分5年3年
物損部分3年3年

後遺障害を負うようなケガは治療期間が長期に渡ることが多いため、治療中に時効期間が迫ってくる恐れがあります。
弁護士に相談すると、時効の成立を阻止してもらえることがあるので、時効が迫っている場合にはできるだけ早くご連絡ください。

弁護士に相談すべき3つの状況

(1)被害者請求を効果的に行いたい

被害者請求で後遺障害等級認定の申請を行いたいけれど、次のような理由でためらっている方もいらっしゃるでしょう。

  • 仕事や子育て、後遺症などで書類を集められない
  • 後遺障害診断書を見ても記載内容の良し悪しがわからない
  • どのような追加書類を添付すればいいのかわからない
  • どのような検査を受ければ良いのかわからない

被害者請求は後遺障害等級を獲得するための工夫や対策をしやすい申請方法ですが、上記のような悩みを抱えたまま被害者請求をしても、被害者請求の良さを活かすことができません。

被害者請求をしたいけれど困っていることがある、わからないことがあるという場合には、弁護士にご相談ください。
弁護士に相談することで、資料集めを代わりにしてもらえたり、提出書類や検査に関するアドバイスをもらえたりします。

(2)後遺障害等級認定の結果に納得いかない

後遺障害等級認定の審査はすでに受けたけれど、納得のいく結果ではなかったという場合も、弁護士にご相談ください。
後遺障害等級認定の結果に満足できない場合、後遺障害の異議申立てを行って再度審査を受けることができます

しかし、異議申立てをしたからといって必ずしも結果が変わるわけではありません。
また、異議申立てをする分示談交渉の開始時期が遅れ、慰謝料や賠償金の受け取り時期も遅くなってしまいます。

そのため、異議申立てをするのであれば以下の点について確認しておくことが重要です。

  • 異議申し立てをした場合、結果が変わる可能性はあるか
  • 何が審査機関にきちんと伝わっていなかったのか
  • 審査機関に伝わっていなかったことを確実に伝えるためにはどのような書類を送ればいいのか

上記の点について十分に把握したうえで異議申し立てを行わなければ、時間ばかりがかかり、望む結果が得られない可能性が高いです。

時間を無駄にしないためにも、適正な等級が認定されるという結果を得るためにも、異議申し立てをする際には事前に弁護士に相談し、上記の点についてアドバイスを受けることをおすすめします。

関連記事

後遺障害の異議申し立てを成功させる方法と流れ

(3)加害者側の任意保険会社からの提示額が少ない

後遺障害等級認定の審査が終わったら、加害者側の任意保険会社から慰謝料や賠償金の提示額を記載した書類が届きます。書類が届いた時にはまず、金額が適切なものであるか確認してください。

目安となる相場金額は、下の計算機から確認できます。

※治療関係費は実費となりますのでこちらの計算機では計算できません。

「慰謝料計算機」で算出される金額よりも加害者側の任意保険会社の提示額が低い場合、その金額はまだ増額の余地があるといえますので、増額交渉が必要です。

しかし、被害者本人で増額交渉をしても、十分に聞き入れられることはないでしょう。
相手方任意保険会社にとって、被害者に支払う慰謝料・損害賠償金は支出です。そのため、少しでも低額にしようとシビアな態度で交渉に臨んでくるのです。

増額交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士なら法律知識と資格を持っているため、相手方任意保険会社の態度が軟化する傾向にあります。

また、任意保険会社内で「被害者が交渉人なら金額はここまでしか出さない、弁護士が交渉人ならこの金額まで増額可能」と設定している場合もあるのです。

他にも、弁護士を立てると直接加害者側とやり取りする必要がなくなるので精神的負担が減る、仕事や日常生活に専念できるといったメリットもあります。

弁護士に依頼するメリットについては、『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選』で詳しく解説しているので、合わせてご確認ください。

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  • 過去に加害者側の任意保険会社の弁護士として示談交渉をした経験がある

アトム法律事務所の過去の実績をご紹介します。

むちうち症(後遺障害14級)の増額事例

傷病名むちうち症
後遺障害等級14級9号
増額金額171万円→309万円

左肩骨折(後遺障害12級)の増額事例

傷病名左肩骨折
後遺障害等級12級13号
増額金額645万円→1624万円

※加害者側からの金額提示後、弁護士のサポートを受け後遺障害等級認定を受けた事例

第一腰椎圧迫骨折(後遺障害8級)の増額事例

傷病名第一腰椎圧迫骨折(脊柱に中程度の変形が残るもの)
後遺障害等級8級2号
増額金額2397万円→2874万円

脳挫傷(後遺障害4級)の増額事例

傷病名脳挫傷、高次脳機能障害、頭蓋骨の陥没
後遺障害等級併合4級
増額金額3353万円→4400万円

この他にも「交通事故の解決事例」ページでは、アトム法律事務所の弁護士が実際に解決した事例をご確認いただけます。ぜひあわせてご覧ください。

アトム法律事務所への相談は、後遺障害等級認定の申請前でも、加害者側からの示談金額提示前でも、示談金額提示後でも可能です。
気になる点やお困りごとなどがある場合は、一人で悩まずお話をお聞かせください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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