後遺障害等級の併合・相当・加重|複数の後遺症認定時のルールと慰謝料への影響

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後遺障害等級

交通事故にあうと複数の骨が折れてしまったり、神経が傷ついたりすることが多々あります。そのため後遺症がひとつとは限らず、心身に複数の症状が残ることもあるでしょう。

交通事故で後遺障害が残った場合、後遺障害に対する賠償金は「後遺障害等級」をもとに算定されます。

後遺障害が複数残り、それぞれに後遺障害等級が認定された場合は、各等級を併合した「併合等級」にもとづいて賠償金が決まるため、併合のルールについて解説します。

他にも後遺障害等級については、「加重」「相当」というルールもあるので、合わせて確認していきましょう。

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後遺障害等級の覚えておきたい3つのルール

後遺障害等級については、複数の後遺症が残った場合の併合、「自賠法施行令別表第一及び第二の後遺障害等級の一覧表」に該当しない障害が残った場合の相当、従来の障害が悪化した場合の加重といった3つのルールがあります。

3つのルール

  1. 併合:複数の後遺症が残った場合
  2. 相当:後遺障害等級一覧(自賠法施行令別表第一及び第二)に該当しない症状が残った場合
  3. 加重:従来の障害が悪化した場合

ここからは併合、相当、加重という後遺障害等級の3つのルールについて解説していきます。

障害が複数残る場合の「併合ルール」

複数の後遺障害等級を1つに併合するルール

後遺障害等級の「併合」とは、異なる系列の後遺障害が複数残り、複数の後遺障害等級が認定された場合に、それらを1つに併合することです。

交通事故で後遺障害等級が認定されると、その等級にもとづいて後遺障害慰謝料や逸失利益が計算されます。

後遺障害等級が複数ある場合は、複数の等級を1つに併合した「併合等級」にもとづいて、後遺障害慰謝料や逸失利益が計算されるのです。

たとえば、後遺障害13級と11級が併合されると、重い方の等級である11級が1級繰り上がって併合10級として扱われます。後遺障害慰謝料であれば、後遺障害10級と同水準の550万円で請求するのが通常です。

後遺障害11級の420万円と、後遺障害13級の180万円の計600万円を請求できるというわけではありません。

同じ系列の障害に対する後遺障害等級は併合されない

先述の通り、併合は「異なる系列の後遺障害が複数残り、複数の後遺障害等級が認定された場合」に適用されます。同じ系列の複数の障害に対してそれぞれ後遺障害等級が認定されても、それは併合の対象にはなりません。

後遺障害の系列とは

後遺障害の系列とは、同一部位の後遺障害を種類別に分類したものです。

障害は眼、耳、鼻、口、神経系統の機能または精神、頭部・顔面・頸部、胸腹部臓器(外生殖器含む)、体幹、上肢、下肢など10の部位に大きく区分されており、それぞれの系列を合計すると35になります。

たとえば、眼球の視力障害と調節機能障害は同一系列に分類されます。それぞれで後遺障害等級認定を受けても、併合ルールは適用されません。

ただし実務上は、同系列の複数の後遺障害について、併合と同じようなルールを準用する場合もあります。

同系列の後遺障害が複数認められ、後遺障害等級がどのように扱われるかわからない場合は弁護士にご相談ください。

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併合で後遺障害等級は何級繰り上がる?一覧表あり

後遺障害等級の併合では、基本的に重い方の等級を何級か繰り上げたものが併合等級となります。

基本的なルールは以下のとおりです。

  • 5級以上が2つ以上あるなら、重い方の等級を3級繰り上げる
  • 8級以上が2つ以上あるなら、重い方の等級を2級繰り上げる
  • 13級以上が2つ以上あるなら、重い方の等級を1級繰り上げる
  • 14級が2つ以上あるなら、14級のまま
  • その他の場合、重い方の等級に従う

たとえば、後遺障害13級と9級に認定された場合は、重い方の等級を1級繰り上げて併合8級となります。

なお、要介護1級と要介護2級の後遺障害においては、併合が適用されません。併合は、介護が不要な後遺障害1級~14級のみに適用されます。

基本の併合ルールまとめ

横:最も重い等級
縦:次に重い等級
1~5級6~8級9~13級14級
1~5級重い等級+3級
6~8級重い等級+2級重い等級+2級
9~13級重い等級+1級重い等級+1級重い等級+1級
14級重い等級重い等級重い等級14級

併合は、単純に等級を足し算するのではなく、繰り上げされるので注意しましょう。

また、後遺障害1級を超える障害はないので、併合で等級を繰り上げたことで1級を超えても、併合1級にしかなりません。

以下に後遺障害等級別の慰謝料相場を載せておくので、併合等級がわかったら参考にしてみてください。

等級 自賠責*弁護士
1級・要介護1,650(1,600)2,800
2級・要介護1,203(1,163)2,370
1級1,150(1,100)2,800
2級998(958)2,370
3級861(829)1,990
4級737(712)1,670
5級618(599)1,400
6級512(498)1,180
7級419(409)1,000
8級331(324)830
9級249(245)690
10級190(187)550
11級136(135)420
12級94(93)290
13級57(57)180
14級32(32)110

単位:万円
自賠責基準は加害者側が提示する金額に近い相場、弁護士基準は過去の判例に基づく相場
()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用

併合で例外ルールが適用されるケース

(1)複数の障害を組み合わせた等級がすでにある場合

系列と部位のちがう複数の後遺障害でも、例外的にまとめて評価することがあります。これを「組み合わせ等級」と言います。

系列が異なる後遺障害は、併合した等級になるのが基本です。しかし、複数の障害を組み合わせた後遺障害等級(組み合わせ等級)がすでに存在する場合は、組み合わせ等級を優先することになるので注意してください。

組み合わせ等級の例|両方の腕を肘から下で切断したケース

たとえば、両方の腕を肘から下で切断した場合を例に考えてみましょう。

片方の腕を肘から下で切断した場合、該当するのは「後遺障害4級4号」です。

よって、この場合は右腕の切断に対して後遺障害4級4号、左腕の切断に対しても後遺障害4級4号が認められ、併合1級になるように思えます。

しかし、後遺障害等級表には、両方の腕を肘から下で切断した場合について「後遺障害1級3号」があらかじめ決められています。したがって、このような場合は、併合1級ではなく、後遺障害1級3号の組み合わせ等級が優先されることになるのです。

例:両方の腕を肘で切断
  • 右腕を肘から下で切断(後遺障害4級4号)
  • 左腕を肘から下で切断(後遺障害4級4号)

併合すると1級になるが、後遺障害等級にはすでに両方の腕を肘から下で切断した場合の後遺障害1級3号がある

(2)併合して繰り上げた等級が高すぎる場合

後遺障害は、障害の程度に応じて等級の序列が決められています。

基本ルール通りに等級を併合すると、等級が高くなりすぎて等級の序列が乱れるような場合には、序列を乱さない等級になるような調整がおこなわれます。

たとえば、右腕を手首から下で切断した「後遺障害5級4号」と、左腕を肘から下で切断した「後遺障害4級4号」の場合を例に考えてみましょう。この場合、基本の併合ルールに則ると併合1級になります。

しかし、後遺障害等級表には、両方の腕を肘から下で切断した場合の「後遺障害1級3号」があります。

等級の序列でいうと、両腕を肘から下で切断した1級3号の方が重いので、併合1級を認めてしまうと序列が乱れてしまいます。したがって、このようなケースでは序列を乱さないよう、併合2級の扱いになるのです。

例:右手首・左肘で切断
  • 右腕を手首から下で切断(後遺障害5級4号)
  • 左腕を肘から下で切断(後遺障害4級4号)

併合すると1級になるが、両方の腕を肘から下で切断(後遺障害1級3号)よりも軽いので、併合2級になる

(3)複数の障害を1つの障害と見なす場合

別系列の障害といえる場合でも、同一または関連する「同じ系列」とみなされることがあります。これを「みなし系列」と言います。

「みなし系列」として1つの障害とされる障害には、以下のものがあります。

  1. 両眼球の視力障害・調節機能障害・運動障害・視野障害
  2. 同一上肢の機能障害と手指の欠損または機能障害
  3. 同一下肢の機能障害と足指の欠損または機能障害

みなし系列では、重い方の等級が適用されます。

たとえば、左腕の肘に機能障害が残った「後遺障害12級6号」、左手小指の動きが通常の半分に制限される機能障害が残った「後遺障害13級6号」の場合を例に考えてみましょう。

この場合、左手小指の機能障害は、左腕の肘の機能障害に含まれると評価されることになります。したがって、併合ではなく、重い方の等級である左腕の肘の機能障害をもとに後遺障害12級6号が適用されるでしょう。

例:左腕の肘と小指に障害
  • 左腕の肘に機能障害(12級6号)
  • 左手の小指の機能障害(13級6号)

みなし系列の場合は、重い方の等級である12級6号になる

(4)1つの障害から派生して他の障害が生じた場合

1つの後遺障害から他の後遺障害が派生したと認められる場合は、併合ではなく、重い方の等級が適用されます。

たとえば、左足に偽関節が残り著しい運動障害が残った「後遺障害7級10号」、同じ部位に頑固な神経症状が残った「後遺障害12級13号」の場合を例に考えてみましょう。

この場合、頑固な神経症状は偽関節から派生する関係にあると考えられるため、重い方の等級である後遺障害7級10号が適用されるでしょう。

例:左足偽関節と頑固な神経障害
  • 左足の偽関節による著しい運動障害(7級10号)
  • 左足の偽関節部分に生じた頑固な神経症状(12級13号)

偽関節から派生して神経症状があるので、重い方の等級である7級10号になる

障害が等級表にない場合の「相当ルール」

後遺障害に相当するとして慰謝料がもらえるルール

相当とは、後遺障害等級表に載っていない障害でも後遺障害等級に相当するとして、相当する等級と同等の慰謝料・賠償金が得られるというルールです。

たとえば耳鳴りは後遺障害等級表には載っていない障害です。しかし、後遺障害12級または14級に相当すると認められることがあります。

この場合、12級相当なら12級と同等の290万円、14級相当なら14級と同等の110万円を後遺障害慰謝料として請求できます。(弁護士基準の場合)

相当等級に該当する主な障害一覧

相当等級に該当する主な障害は、次のとおりです。

主な相当等級

障害相当等級
外傷性散瞳11級相当、12級相当、14級相当
耳漏12級相当、14級相当
耳鳴り12級相当、14級相当
嗅覚脱失12級相当
鼻呼吸困難12級相当
嗅覚減退14級相当
味覚脱失12級相当
味覚減退14級相当
上肢の動揺関節10級相当、12級相当
上肢の習慣性脱臼12級相当
下肢の動揺関節8級相当、10級相当、12級相当
下肢の習慣性脱臼・弾発ひざ12級相当

実務上、労災保険で準用として扱っているものが、交通事故による後遺障害でも相当等級として認められています。

相当として評価される後遺障害の例として、耳鳴りで12級相当や14級相当で解説します。

弁護士基準による後遺障害慰謝料の相場は12級で290万円、14級で110万円です。

慰謝料の相場も相当等級が適用されるので、耳鳴りで12級相当のとき290万円、14級相当のとき110万円となります。

事故前から障害がある場合の「加重ルール」

もともとあった障害分の慰謝料を差し引くルール

加重とは、「交通事故によって残った後遺障害」に対する賠償金から、「事故前からあった障害」分の金額を差し引くルールを言います。

事故前から障害があり、交通事故によってその障害の程度がより重くなった場合を想像してみましょう。

この場合、障害によって生じる損害のすべてが交通事故によるものだとは言えません。よって、もとからある障害分の金額は差し引かれるのです。

なお、事故前からある障害と同一部分に新たな障害を負っても、悪化していなければそもそも後遺障害として評価されません。

加重ルールで慰謝料はどう差し引かれる?

具体的な加重の評価は、「今回の事故で生じた障害の等級に対応する補償」から「事故前からある障害の等級に対応する補償」を差し引くことになります。

例えば、交通事故以前から片腕を肘と手首の間で失っていた場合、後遺障害5級4号に相当する障害を負っている状態です。

この方が交通事故によって同じ腕を肩と肘の間で失ってしまうと、後遺障害4級4号認定を受けることになるでしょう。

この場合、今回認定された後遺障害4級の慰謝料(1,670万円)から、もともとある後遺障害5級の慰謝料(1,400万円)を引いた270万円が支払われます。(弁護士基準の場合)

後遺障害等級認定や併合・相当・加重のルールは弁護士に相談を!

後遺障害等級認定が大事な理由

後遺障害等級には1級から14級まであり、何級認定となるかで賠償金額が異なります。

しかし後遺障害等級認定を受けることは簡単なことではありません。認定申請をしても、非該当(後遺障害なし)だったり、想定より低い等級認定になったりも十分考えられます。

後遺障害認定のポイントは後遺症の存在や程度が客観的に認められることにあるので、申請時の提出書類が重要です。

もっとも、複数の後遺症が残っている場合は申請準備にかかる手間も増えてしまうものです。弁護士のサポートを受けて、被害者ご自身の負担を減らしていきましょう。

後遺障害等級のルールは弁護士がくわしい

交通事故の賠償問題に力を入れている弁護士であれば、後遺障害等級のルールを熟知しています。

複数の後遺症でお悩みの方が損害賠償金の目安をつかむためにも、ご自身で認定されうる後遺障害等級について理解しておくとよいでしょう。

関連記事『【後遺障害等級表】症状別の等級や認定基準』では部位ごとに認定されうる後遺障害等級を解説しています。どういった症状であれば何級に認定される可能性があるのか、ひと目でわかる一覧表になっているので活用してください。

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アトム法律事務所では、交通事故でケガをされた方を対象に無料の法律相談をおこなっています。

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  • 比較的軽傷から後遺症が残る重傷まで広く対応
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また、弁護士費用が心配な方に向けて「弁護士費用特約」の確認をおすすめします。

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保険会社が弁護士費用の全部または一部を負担するというもの。事故における損害賠償請求においては弁護士による交渉で、慰謝料が増額することが多いため特約に加入している場合は利用した方がよいといえる。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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