短期間で2回目の交通事故!治療中にまた事故にあったらどうなる?
交通事故の治療中や示談交渉中に再び事故にあったり、示談交渉が終わってから短期間で立て続けに事故にあったりするケースは珍しくありません。
しかし、こういった状況下では、賠償問題が複雑化して、適切な対応が困難になりやすいです。2回以上の交通事故にあったら、一度だけ交通事故にあった場合と異なる点に注意せねばなりません。
本記事では、弁護士の視点から短期間で複数回の交通事故に遭った場合の対処法や注意点、適切な賠償金を受け取るためのポイントを解説します。
目次
交通事故で治療中にまた事故にあった場合
交通事故の治療中に再び事故にあったら、怪我による身体的な影響はもちろんのこと、保険会社とのやり取りが複雑になる点に注意せねばなりません。
保険会社とのやり取りが複雑になる
交通事故の治療中に2回目の事故にあって再び怪我した場合、複数の保険会社が関与することになるので、保険会社とのやり取りが若干、複雑になります。複数の保険会社とやり取りすることになり、どうすべきかわかりにくく不安になる方も多いでしょう。
一般的に、交通事故の治療中に2回目の事故にあった場合、以下のいずれかのやり取りになるケースが多いです。
- 1回目の事故を担当する保険会社と示談して手続きをいったん終え、2回目の事故を担当する保険会社が今後の治療費を支払っていくケース
- 1回目の事故を担当する保険会社と、2回目の事故を担当する保険会社の双方が治療費を支払っていくケース
いずれのケースになるかは、怪我の状況次第といえるでしょう。
1回目と2回目の事故で怪我を明確にする
治療中に2回目の事故にあった場合、1回目の事故による怪我と2回目の事故による怪我を明確に区別することが極めて重要です。
たとえば、1回目と2回目の事故で怪我をした部位が明らかに異なっていたり、すでに症状固定していたりした場合、1回目と2回目の事故は別々の事故として取り扱えるので、個別に保険会社と示談交渉すればいいことになります。
しかし、1回目と2回目の事故で怪我をした部位が重なったり、悪化したりして、2つの事故の間に関連性が認められる場合は、共同不法行為が成立することになるので、1回目と2回目の事故を担当する保険会社が連帯して賠償責任を負うことになるのです。
怪我の部位 | 扱い |
---|---|
異なる・症状固定済み | 1回目と2回目の事故は別々の事故として取り扱う |
重なる・悪化した※ | 1回目と2回目の事故を担当する保険会社が連帯して賠償責任を負う |
※ 2つの事故に関連性が認められる場合のみ
共同不法行為が成立すれば、被害者としては1回目と2回目の事故を担当する保険会社のどちらに対しても、事故で生じた損害の全額を請求することが法的には可能です。
保険会社がお互いどのくらいの損害を負担するかは保険会社同士の求償で行われることなので、被害者としてはそこまで気にする必要はないでしょう。
もっとも、各保険会社は最終的に自社が負う負担をみすえて検討することになるので、1回目と2回目の事故で生じた怪我を明確にしておくことは非常に重要になるのです。
交通事故の手続きが終わって2回目の事故にあった場合
交通事故の示談交渉が終わった後、短期間で再び事故にあうケースもありますが、基本的に2回目の事故は独立した新たな事故として対応することになるでしょう。
もっとも、過去の事故で残った後遺障害と2回目の事故で負った怪我との関連性などを考慮する必要もあるので注意が必要です。
2回目の事故は独立した事故として扱うのが基本
1回目の事故の治療や示談交渉など、手続きが完了した後に発生した2回目の事故は、独立した新たな事故として扱うのが基本です。
まず、1回目と2回目の事故はそれぞれ異なる場所、異なる日時で発生しているので、各事故の責任や賠償額は個別に評価する必要があります。通常、1回目と2回目の事故の加害者も異なるので、加害者の過失割合や賠償責任を適切に評価する際、独立した事故として考えればよいのです。
また、各事故に対して適用される保険の種類や条件が異なる可能性があり、独立した事故として扱うことでそれぞれの保険を適切に適用できる可能性が高まるでしょう。独立した事故として扱うことで、それぞれの事故による被害を適切に評価し、公平な賠償を受けることができるようになるのです。
したがって、示談交渉を進める際は以下の点に注意しましょう。
- 2回目の事故の詳細な状況説明
- 2回目の事故による新たな怪我や損害の明確化
- 適切な賠償額の算定と提示
もっとも、1回目の事故で受けた損害に2回目の事故で受けた損害が影響するような場合、注意すべき点は他にもあります。
1回目の怪我が2回目の怪我に影響することもある
1回目の事故の手続きが終了していたとしても、1回目の事故による影響が完全に消失していない状況で2回目の事故にあった場合、2回目の事故との関連性は慎重に検討する必要があります。
2回目の事故でも同じ部位に怪我を負うと、損害賠償で争いが生じる可能性があるからです。
たとえば、1回目の事故で負ったむちうちが後遺障害14級に認定された後、2回目の事故にあってむちうちを負って後遺症が残ったとします。この場合、2回目の事故では後遺障害14級が認定されることはありません。2回目の事故によってむちうちが悪化しており、14級より上の後遺障害12級として評価されなければ、後遺障害慰謝料と逸失利益を得るのがむずかしくなってしまうのです。
1回目の事故と2回目の事故がそれぞれ、怪我にどのくらい関連性があるのか医学的に評価してから、示談交渉を行う必要があります。
必要に応じて専門医の意見書を取り付けたり、複合的・総合的な影響を考慮した適切な賠償額を算定したりするには、交通事故や後遺障害の知識が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
同一部位の障害は加重ルールも適用される
後遺障害が認定された後、同じ部位でより上位の後遺障害が認定されたとしても、加重ルールが適用され、後遺障害慰謝料は差引きした分しかもらえないので注意してください。
たとえば、後遺障害14級の後遺障害慰謝料110万円を1回目の事故で受け取っていた場合、2回目の事故で上位の後遺障害12級に認定されたとしても、12級の後遺障害慰謝料290万円は全額受け取れません。2回目の事故では、前からあった障害分が差し引かれるので、差額の180万円しか受け取れないのです。
※後遺障害慰謝料の金額は弁護士基準をベースに記載しています。
短期間で複数回の事故にあったら弁護士相談
短期間で複数回の交通事故にあった場合、示談交渉が複雑化しやすく、保険会社とのやり取りをお一人で対応するのがむずかしくなることが想定されます。
このような場合、適切な賠償金が得られるように、弁護士による専門的なサポートを受けましょう。
アトム法律事務所では、交通事故で怪我された方を対象に無料の法律相談を実施しています。法律相談を希望される場合、まずは下記の相談窓口までお問い合わせください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了