スピード違反による事故の過失割合|故意の有無や死亡事故かどうかは関係ある?
交通事故の原因として、加害者側がスピード違反をしていたというのはよくあるケースです。
スピード違反は死亡事故にもつながるものですが、事故発生に対する責任を示した「過失割合」にはどのように反映されるのでしょうか。
スピード違反が過失によるものが故意によるものかによっても過失割合は変わるため、詳しく見ていきましょう。
目次
スピード違反による事故の過失割合は?
速度違反が15km以上か30km以上かで過失割合は変わる
交通事故時に加害者が15km以上30km未満のスピード違反をしていた場合、加害者側の過失割合は10%程度加算されます。
一方、加害者側のスピード違反が30km以上だった場合は、過失割合が20%程度加算されます。
ただし、事故類型によっては加算される過失割合の程度が違うこともあります。
また、交通事故の過失割合はスピード違反以外にもさまざまな要素を考慮して決められるものです。
ほかの要素も考慮した結果、最終的に加害者側に加算される過失割合が上記よりも多くなったり少なくなったりすることもあります。
具体的な事故類型にあてはめた過失割合
ここでは、具体的な事故類型に当てはめて、スピード違反の過失割合を紹介します。
なお、ここで紹介する内容は「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。
- センターラインのない道路で加害者側が道路の中央を超えて正面から衝突してきた場合
- 基本の過失割合 加害者:被害者=80:20
- 加害者が15km以上のスピード違反 加害者:被害者=90:10
- 加害者が30km以上のスピード違反 加害者:被害者=100:0
- 信号なしの交差点における右直車(加害者)と直進車(被害者)の事故
- 基本の過失割合 加害者:被害者=80:20
- 加害者が15km以上のスピード違反 加害者:被害者=90:10
- 黄色信号で横断歩道を渡る歩行者と赤信号で交差点に進入した自動車の事故
- 基本の過失割合 自動車:歩行者=90:10
- 自動車が15キロ以上のスピード違反 自動車:歩行者=95:5
- 自動車が30キロ以上のスピード違反 自動車:歩行者=100:0
基本の過失割合に関しては『交通事故の過失割合とは?決め方の具体的な手順とパターン別の過失割合』から詳しくご確認いただけます。
スピード違反が故意か過失かは過失割合に関係ない
故意のスピード違反は慰謝料の増額事由にはなりえる
スピード違反が故意か過失かによって過失割合に違いが出ることはありません。基本的には先述の通り、スピード違反の程度に応じて過失割合が加算されます。
しかし、スピード違反が故意によるもので、それにより交通事故が発生した場合、慰謝料が通常よりも増額される可能性はあります。
スピード違反が故意とされるケース
スピード違反が故意だと判断されるのは、「明らかに事故を起こそうという意図をもってスピードを出していた場合」と「未必の故意に該当する場合」です。
未必の故意とは、「積極的に事件や事故を起こそうという意図はなかったものの、その行為によって事件や事故が起こり得るという認識は持っており、もし事件や事故が起こったとしても、それはそれで構わない」と思っていた状態のことです。
例えば行き過ぎたスピード違反の場合、それにより事故が起こり、誰かを死傷させてしまうかもしれないという予想はつくと考えられます。
それにもかかわらずスピード違反を犯したということは、事故を起こそうという明確な故意があったとは言えないまでも、事故が起こったとしても構わないという未必の故意はあったと思われます。
ただし、上記と似たようなケースでも、未必の故意が認められるかどうかは個別に検討しなければなりません。
もし未必の故意が認められれば、加害者側の過失割合が100%となる可能性があります。
加害者側のスピード違反を証明する方法
ドライブレコーダー映像を確認する
ドライブレコーダー映像から加害者側のスピード違反を証明できることがあります。
自身の車のドライブレコーダー映像で加害者のスピード違反を証明できそうな場合は、映像を警察に提出したり、示談交渉の際に証拠として提示したりしましょう。
加害者側の車のドライブレコーダー映像では、加害者の速度違反だけでなく、加害者の故意の有無まで確認できる可能性があります。
しかし、加害者側がドライブレコーダー映像の提出を拒否することも考えられます。
拒否を押し切りドライブレコーダー映像を提出させるには、裁判を起して裁判所から「文書提出命令」を出してもらうことが必要です。
防犯カメラ映像を確認する
事故現場周辺の防犯カメラ映像から、加害者側のスピード違反を証明できることもあります。
ただし、交通事故問題に巻き込まれたくないという理由から防犯カメラ映像を見せてもらえないこともあります。
弁護士を介して防犯カメラの確認をお願いすると見せてもらえることもあるので、弁護士に相談することもご検討ください。
実況見分調書・供述調書を確認する
実況見分調書や供述調書から加害者のスピード違反を証明できることもあります。
特に実況見分調書には、事故現場の様子を実際に見て確認した内容がまとめられています。
タイヤ痕などからスピード違反を証明できることがあるので確認してみましょう。
また、加害者が示談交渉でスピード違反を否認していても、警察による聞き取り捜査では、スピード違反を認めていることがあります。
聞き取り捜査の内容は供述調書から確認できるので、念のため供述調書も見てみるとよいでしょう。
車体の損傷具合を確認する
事故車の損傷具合から加害者のスピード違反を証明できることもあります。
事故車の損傷具合については、警察や修理業者、保険会社のアジャスターなどが詳細に調べているので内容について確認するとよいでしょう。
速度違反は死亡事故を引き起こすこともある
死亡事故であることが過失割合に影響する?
事故時にスピード違反があったかどうか、故意による事故かどうかは過失割合に影響しますが、被害者が死亡したかどうかは過失割合には影響しません。
過失割合は、事故が起こったことに対する責任を割合で表したものです。
被害者の死傷は事故による結果であるため、事故の発生そのものには関係ありません。よって死亡事故だからといって加害者側の過失割合が加算されることはないのです。
死亡事故の場合、実況見分捜査で不利になる?
死亡事故の場合、事故発生時に被害者と一緒にいた人がいない限り、実況見分捜査では不利になる可能性があります。
事故発生時の状況を知る人が加害者しかいないからです。
しかし、事故の目撃者に協力を仰いだり、ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像を提出したりすれば、警察に事故状況を公平な目線で確認してもらいやすくなるでしょう。
また、事故時にその場にいなかったご遺族でも、「被害者は日頃この道をよく注意して通っていた」「被害者は人一倍安全運転に気を遣う人だった」などの情報を警察に伝えると、それを捜査資料に書いてもらえることがあります。
示談交渉や裁判の際に参考にされる可能性があるので、警察に伝えられる情報がある場合は、積極的に捜査に協力してください。
スピード違反の事故は弁護士にご相談ください
加害者側のスピード違反で交通事故が起きた場合、示談交渉では「スピード違反によりどれくらい過失割合を加算するか」、「そもそも本当に加害者はスピード違反をしていたのか」などについてもめる可能性があります。
うまく交渉に対応できなければ、被害者側の過失割合が不当にに大きくなってしまいます。
その結果、受け取れる示談金が必要以上に減額されてしまうため、過失割合についてしっかりと交渉することは非常に重要です。
過失割合についてお困りの場合は一度弁護士に相談してみることがおすすめです。
アトム法律事務所では、電話・LINEにて無料で相談を受け付けております。ご依頼まで進んだ場合は、弁護士費用特約を使うことで費用の負担を無くすことも可能です。
弁護士費用特約が使えない場合は、基本的に着手金が無料となるので、まずはお気軽にご連絡ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了