交通事故による葬儀費用は加害者に請求できる?補償の範囲と手続きのポイント

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交通事故で大切なご家族を亡くされた方へ。
突然の事故で心身ともに辛い中、避けて通れないのが「葬儀費用」の負担です。
「交通事故で亡くなった場合、葬式代などは加害者側に請求できるのか?」「保険でカバーされるのはどこまで?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、交通事故でご家族を亡くされた遺族の方が知っておきたい「葬儀費用の損害賠償」について、法的な根拠、請求方法、補償を受けられる範囲などを丁寧にわかりやすく解説します。
あわせて、弁護士に相談するメリットについてもご紹介します。

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交通事故による葬儀関連費用にはどんなものがある?

一般的な葬儀関連費用の内訳(例)

交通事故でご家族が亡くなった場合、多くの遺族がまず直面するのが葬儀の準備です。
葬儀費用といっても、その内訳はさまざまです。
損害賠償として請求できる範囲を知るためにも、実際に葬式をするにあたりどのような費用が発生するのか把握しておくことが大切です。

費用項目請求の認められやすさ(※)
葬儀一式費用
(祭壇設営、葬儀スタッフなど)
認められやすい
火葬料金、棺代、骨壺代など認められやすい
通夜振る舞い、会場使用料認められやすい
僧侶へのお布施、戒名料認められやすい
葬儀に必要な実費
(遺影写真、ドライアイス処置代など)
認められやすい
墓地代、仏壇代、仏具購入費認められやすい・場合によっては認められない
遺体搬送費用、遺体処置費用認められにくい・場合によっては認められる
各地の親族の交通費や宿泊費認められにくい
引出物代、四十九日忌の後の法要費認められにくい
香典返し認められない

※認められる葬儀費用の上限は原則150万円、遺体搬送費用などは別途認められることもある

葬儀にかかったこれらの費用の領収書は、必ず保管しておきましょう。

交通事故の葬儀費用は原則【150万円まで】支払われる

交通事故の葬儀費用(葬儀代、火葬料金などの合計)は、原則として150万円まで支払われます。

もしも葬儀費用が150万円未満の場合は、実際に支払った額となります。

また様々な事情を考慮し、150万円を超える葬儀費用が支払われたり、遺体搬送費用や仏具代などを葬儀費用とは別に認めた例もあります。

ですが、加害者側と争いになることも多いので、ご不安でしたら弁護士に相談しておくのがよいでしょう。

「交通事故の葬式」で発生しやすい特別な費用

また、交通事故による突然の死では、通常の葬儀に加えて次のような特別な費用がかかる場合があります。

  • 検案書や解剖費用
    事故死では死因確認のため検案書の発行や解剖となるケースがあり、数万円の費用がかかります。
  • 急な葬儀手配による追加料金
    日程調整が難しい場合、夜間対応や特急料金がかかることがあります。

こうした費用も、適正な範囲であれば損害賠償請求や保険の対象になることがありますので、領収書は必ず保管しておくようにしましょう。

交通事故による葬儀費用は損害賠償として請求可能

葬儀費用を損害賠償請求できる法的根拠

交通事故によって死亡事故が発生した場合、基本的に加害者や加害者の加入する保険会社には被害者遺族に対し、損害賠償責任が発生します。
これは民法709条および自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づくもので、葬儀費用は損害の一部として請求することが可能です。

  • 民法 第709条
    不法行為により他人に損害を与えた者は、その損害を賠償する責任を負うとされています。
  • 自動車損害賠償保障法(自賠法)
    自動車事故による人身損害について、加害者に一定の賠償責任を負わせる法律です。

つまり、被害者の死亡が加害者の運転行為によるものであれば、遺族は死亡に伴って発生した現実的損失(その一つが葬儀費用)について賠償請求できるのです。

ただし、すべての葬儀関連費用が全額認められるとは限りません。
裁判例などでは、常識的な金額・内容に基づく「相当な実費」までが認められる傾向があります。

ご遺族の誰が損害賠償を請求できるのか

交通事故で被害者が亡くなった場合、葬儀費用(損害賠償)を請求できるのは原則として法定相続人=ご遺族です。

主に以下の方が対象になります:

  • 配偶者(常に相続人となる)
  • 子ども(実子・養子を含む)
  • 両親(子どもがいない場合)
  • 兄弟姉妹(子どもも両親もいない場合)

相続人が複数いる場合や請求の手続きに悩んだときは、弁護士に相談すると安心です。

自賠責基準と弁護士基準による葬儀費用の補償内容と注意点

交通事故の損害賠償をするにあたっては、最低限保障される金額「自賠責基準」と、訴訟をした場合に請求可能な金額「弁護士基準」がいくらくらいかを確認する必要があります。

【比較】自賠責基準と弁護士基準による葬儀費用ほか

被害者が死亡した事故の場合、それぞれがどのような範囲まで補償してくれるのか見ていきましょう。

費用項目自賠責基準弁護士基準
葬儀費用100万円実際に支出した額
原則最大150万円
ただし例外的事情がある場合は加算される
死亡慰謝料(被害者本人分)
400万円
(遺族分)
父母・配偶者・子の人数による
1名の場合:550万円
2名の場合:650万円
3名の場合:750万円
4名以上の場合:200万円ずつ加算
(被害者本人分+遺族分)
一家の支柱:2800万円
母親・配偶者:2500万円
その他:2000万円~2500万円

ただし具体的な事情により増減される
死亡逸失利益被害者の収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
支払いの上限最大3000万円特になし

自賠責基準で最低限の損害賠償金を受け取るのと、弁護士に依頼して弁護士基準での損害賠償金獲得をめざすのでは、最終的な金額が大きく変わってきます。

ご家族が事故で死亡されたような場合は、弁護士にご相談ください。

加害者と直接交渉する場合の注意点

加害者が任意保険に加入していない場合など、ご遺族の方が直接やり取りをするケースもありますが、以下のようなリスクがあるため注意が必要です。

  • 支払いに応じてもらえない、または遅延する
  • 法的な知識がないまま不利な内容で示談してしまう
  • 証拠が不十分で後から請求できなくなる

直接交渉は感情面でも大きな負担となるため、可能であれば弁護士など専門家を間に入れることをおすすめします。

損害賠償として認められる「葬儀関連費用の適正範囲」

賠償が認められた費用の例

損害賠償として認められる葬儀関連費用の範囲には一定の限度があります。

「常識的な金額と内容」であることが求められますが、具体的にどのような費用が認められたのか確認していきましょう。

費用項目賠償が認められた例
複数回行われた葬儀費・家族も重傷を負っていた(さいたま地判平26.8.8)
・季節柄遺体の運搬が困難で、単身赴任先と地元で葬儀を行った(大阪地判平28.10.26)
盛大に行われた葬儀費・事故態様から手厚く葬儀するのももっともだった(東京地判平20.8.26)
・200名を超える弔問があった(神戸地判平28.10.27)
遺体搬送のための費用・死亡地が広島、葬儀が松山と距離が離れていた(松山地判平8.7.25)
遺族の交通費・遺体の確認及びその引き取りのために必要な費用だった(神戸地判平12.11.16)
・長く帰国予定のなかった遺族が葬儀出席のため帰国した(東京地判平21.11.18)

※一部のみ認められた費用も含む

なお、これらは特殊な事情を含むケースであるため、全ての場合でこのような葬儀費用の支払いが認められるわけではありません。

また、領収書や請求明細などで「客観的に支出が認められる」ことも重要なポイントです。

賠償が否定された費用例

一方で、裁判上認められなかった葬儀関連費用としては以下のようなものがあります。

費用項目賠償が認められなかった例
複数回行われた葬儀費・年末で遺体が運搬できなかった(神戸地判平12.11.16)
盛大に行われた葬儀費・葬儀費用760万円のうち、150万円を超える部分
(横浜地判平23.10.18)
墓地代、仏壇仏具代・被害者個人の墓でなく家族墓だった(岡山地判平12.4.6)
親族の交通費・警察の事情聴取、また親族の情愛に基づいた費用だった(神戸地判平12.11.16)

香典返し、墓地代、仏壇代などは「社会的儀礼」や「遺族の資産形成」とみなされ、通常は賠償の対象外となります。

これは、損害賠償が「実際に発生した、かつ必要かつ相当な支出」に限定されるためです。

裁判例にみる判断基準の傾向

過去の裁判では、葬儀費用として賠償が認められるのは「社会通念上相当とされる金額」とされています。

したがって、葬儀費用が裁判上認められるかどうかは、葬儀費用の一般的な性質だけではなく事故態様、金額などを総合的に考慮して決定されます。

遺族の心情上、盛大な葬儀を行うことはもっともだとしつつも、数百万円の葬儀代について否認した例もあります。

葬儀費用を請求するために必要な書類と手続き

交通事故による葬儀費用を加害者または保険会社に請求する場合、一定の準備が必要です。
以下に主な書類や流れをまとめます。

必要書類の例

葬儀費用の請求のため必要な書類としては、以下のようなものがあります。

書類名内容
葬儀費用の領収書実際に支払った金額の証拠。明細付きであることが望ましい。
死亡診断書・死体検案書死亡の事実および死因(交通事故の関与)を証明するため。
交通事故証明書警察から発行される交通事故の発生証明書。
戸籍謄本被害者との関係を証明するために必要になることがある。

手続きの概要

実際に葬儀費用を請求する際の手続きの流れは、以下のようになります。

  1. 必要書類を揃える
  2. 自賠責保険・任意保険それぞれの保険会社へ請求申請
  3. 金額交渉または示談交渉(任意保険の場合)
  4. 補償金の支払いを受ける

手続きが複雑で書類不備による遅延が起きやすいため、葬儀後落ち着いた段階で、専門家である弁護士に相談するのも一つの方法です。

葬儀費用をめぐるトラブルとその対応策

交通事故による葬儀費用の請求においては、以下のようなトラブルが起こるケースも少なくありません。

よくあるトラブルの例

実際に、葬儀費用に関しては相手方から否認されることもあります。

  • 保険会社に「費用が高すぎる」と支払いを拒否される
  • 加害者から過失割合を理由に減額を打診される
  • 通夜振る舞い、接待費などが「必要性がない」と判断され認められない

加害者や保険会社によっては「これは不要な支出だ」「社会通念から逸脱している」などの理由で減額や非該当とされることがあり、精神的にも大きな負担となります。

減額交渉・拒否に対応するためのポイント

加害者側が葬儀費用の支払いを拒否してきた場面では、以下のような対応策が有効です

  • 領収書や請求書など、実際にかかった経費の証拠を必ず保管する
  • 支出が「必要かつ相当」であることを、明細などで客観的に説明する
  • 減額交渉には安易に応じず、納得できない場合は弁護士に相談する

特にご家族が亡くなられた後ですと、事故相手側と争う気になれず、相手方の主張をそのまま認めてしまう方もいらっしゃいます。

ですが弁護士が介入すれば、相手方とのやりとりを一任できるだけではなく、適正な損害算定をもとに法的に根拠のある請求が可能になります。

特に交渉が難航している場合には、第三者が間に入り冷静に話を進めることで、有利な結果に結びつくこともあります。

よくある誤解と注意点

ご遺族の中には、「香典を受け取ったから補償されないのでは」「高額な葬儀を行ったら費用請求できないのでは」と不安を感じる方もいます。しかし、こうした考えは誤解です。

事実に基づいた説明と証拠の準備、必要であれば法律の専門家による判断を仰ぐことで、正当に認められるべき費用はきちんと請求できます。

Q.香典で受け取った分は損害賠償金から差し引かれる?

香典はあくまで個人の弔意であり、損害賠償額から差し引かれません。

Q.労災保険の遺族特別支給金は損害賠償金から差し引かれる?

労災など保険会社からの給付金は、遺族見舞金の性質があるものについては、損害賠償額から差し引かれません。

弁護士に相談することで得られるメリット

葬儀費用を含む損害賠償の請求は、法律や保険制度に基づいて進める必要があり、複雑で精神的にも大きな負担となることがあります。

弁護士への依頼メリット

実際に交通事故に強い弁護士に依頼することで、以下のようなメリットを得られます。

  • 保険会社や相手方との交渉を代行してくれる
  • 適正かつ最大限の損害賠償額を算定して請求できる
  • 慰謝料・逸失利益など含めたトータルの補償額が増える可能性
  • 裁判を見据えた強い交渉力が得られる
  • 必要書類の収集・作成をサポートしてくれる

葬儀を終えたあとの慌ただしい時期に、ご遺族がすべてを独力で進めるのは困難な場合もあります。

弁護士費用が不安な場合は?

費用面が不安な方も、アトム法律事務所では法律事務所では以下のようなサポートがあります。

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アトム法律事務所は、相談料・着手金が基本的に無料の料金体系を取っています。

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交通事故による葬儀費用は適切な方法で請求可能です

交通事故によって大切なご家族を突然失い、深い悲しみの中にいらっしゃることと存じます。その中でも葬儀という現実的な問題に向き合わなければならないことは、本当に辛いことです。

ですが、葬儀費用は法律上、加害者に対して損害賠償として請求でき、自賠責保険や任意保険によって補償される可能性も十分あります。大切なのは、適正な範囲での費用を把握し、必要な手続きを正しく進めることです。

もしご自身での対応が難しいと感じたときは、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。専門家の力を借りることで、心身の負担を軽減し、適切な補償を受けることが可能になります。

遺されたご家族が少しでも安心して未来に進めるよう、確かな手続きを踏んでいきましょう。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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