交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になった。賠償金と家族がすべきこと

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交通事故で植物状態

植物状態(遷延性意識障害)とは、脳の損傷により自力での移動や意思疎通、排せつなどが出来ず、寝たきりになることをいいます。
交通事故においては頭部外傷で発症するケースが多く、後遺障害1級1号にあたることが多いです。

被害者が植物状態になった場合、本人は意識不明の状態であるため、慰謝料請求などの手続きはご家族が代わりにおこなわなければなりません。

この記事では、交通事故で植物状態になった被害者のご家族がすべきことや損害賠償金、将来の金銭的な負担を和らげる方法を解説しているので、参考にしてみてください。

目次

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交通事故で植物状態|遷延性意識障害とは?

植物状態(遷延性意識障害)とはどのような状態を指すのか、回復の見込みはあるのかについて解説していきます。

ただし、医学的な内容になりますし、細かい症状・今後の見通しは人それぞれなので、詳しい情報は担当医にお尋ねください。

植物状態(遷延性意識障害)の定義

植物状態とは、交通事故で脳に衝撃・損傷が加わり、大脳の機能が停止して意識不明・寝たきりになっている状態です。いわゆる遷延性意識障害ともいいます。

日本脳神経外科学会は、次の6項目に該当する状態が3ヶ月以上継続することを植物状態(遷延性意識障害)と定義づけており、後遺障害で最も重い1級と認定される可能性が高いです。

植物状態に該当する6つの状態

  1. 自力での移動ができない
  2. 自力での摂食ができない
  3. 失禁してしまう
  4. 声は出せるが意味のある発語はできない
  5. 簡単な命令(眼を開く、手を握るなど)にはかろうじて応じることもあるが、それ以外の意思疎通はできない
  6. 眼球がかろうじて物を追うことはあっても認識はできない

「日本脳神経外科学会植物状態患者研究協議会」の定義に基づく

脳死や高次脳機能障害とは違う

植物状態は脳死と混同されやすいですが、脳のすべての機能が止まってしまい、自力呼吸もできない脳死に対し、植物状態で機能が止まっているのは大脳のみです。

植物状態では小脳や脳幹は働いているため、自力で呼吸ができるケースも多い点が脳死との大きな違いといえます。

また、高次脳機能障害も植物状態と混同されやすいですが、高次脳機能障害では、脳の損傷が原因で他の人とは違う言動をしたり、人格が変わったりする症状が見られます。

関連記事

植物状態の回復見込み|後遺症は残る?

植物状態の場合、小脳や脳幹といった脳の一部は働き続けているので、目を覚ます・意思疎通ができるようになるなどの回復が見られるケースもあります。

しかし、事故前の状態にまで回復する可能性は低く、いずれにせよ後遺症が残るケースがほとんどであるといわれています。

植物状態のまま回復しない場合には、後遺障害の要介護1級が認定されることが多いです。

等級内容
要介護1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

植物状態から回復しても寝たきりのままであることも珍しくないので、将来にわたって介護や治療、入院が必要となるケースが多いでしょう。

そのため、十分な損害賠償金を相手方に請求し、将来の医療費や生活費を確保することが大切になります。

植物状態(遷延性意識障害)で家族がすべき4つのこと

交通事故で被害者が植物状態(遷延性意識障害)になった場合、事故後のさまざまな手続きや対応はご家族が代わりにおこなう必要があります。

今後、具体的に何をする必要があるのか、4つ解説していきます。

(1)成年後見人になる手続き

植物状態になってしまった被害者に代わってご家族がさまざまな手続きをするには、まず成年後見人になる必要があります。

成年後見人になるための手続きは、次の通りです。

成年後見人になる手続き

  1. 配偶者、4親等内の親族(父母、子供、祖父母、兄弟姉妹、孫)の中から成年後見人になる人(申立人)を決める
  2. 必要書類を揃える
    診断書、被害者と申立人の戸籍謄本・住民票、申立書類一式(裁判所ホームページからダウンロード可)など
  3. 被害者の住所地を管轄する家庭裁判所に電話をし、面接日を予約
  4. 書類を家庭裁判所に郵送
  5. 面接や親族の意向照会
  6. 後見人の選任、登記

成年後見人を立てるためには、申立て費用(800円)・予納郵便切手(各裁判所で指定)・登記費用(2600円)といった費用がかかりますが、これらは相手方に請求できます。

(2)症状固定後の後遺障害認定の手続き

被害者が症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定の手続きをします。
後遺障害認定は、相手方に対して後遺障害慰謝料・逸失利益を請求するために必要です。

  • 症状固定
    これ以上治療を続けても、大幅な改善は見込めないと判断されること。医師の判断が尊重される。
症状固定のタイミング
  • 後遺障害慰謝料
    交通事故で後遺障害が残ったことで生じる、精神的苦痛に対する補償。
  • 逸失利益
    後遺障害により労働能力が低下することで得られなくなった、将来の収入に対する補償。

後遺障害等級には1級~14級がありますが、植物状態の場合、後遺障害の要介護1級1号を目指していくことになります

後遺症の症状や程度を証明する診断書・各種検査結果などを適切に用意し、相手方保険会社に提出すると、それが審査機関に渡って等級認定の審査が受けられます。

詳しい後遺障害申請の手続き方法や流れは、関連記事『交通事故で後遺障害を申請する』にてご確認ください。

また、障害者手帳を取得すると様々な公的サービスが受けられるようになりますので、後遺障害申請の手続きとあわせて取得しましょう。

障害者手帳の申請手続きについては、関連記事『遷延性意識障害で障害者手帳は取得できる?取得条件や申請の仕方』をご確認ください。

(3)慰謝料・過失割合の算定と示談交渉

後遺障害等級認定の結果が出たら、相手方の任意保険会社と示談交渉をおこない、慰謝料・賠償金の請求をします。

示談交渉時に話し合われる主な内容は、次の通りです。

  • 慰謝料・賠償金の費目、金額
  • 過失割合
    交通事故が起きた責任が、相手方と被害者にそれぞれどれくらいあるかを割合で示したもの
  • 慰謝料・賠償金の支払い方法、期限

基本的には、相手方の任意保険会社の方から上記の内容を提示されます。

相手方の提示内容は必ずしも正しいとはいえないため、「これが適正な内容です」「通常の金額よりも多めに算定しています」などと言われても、鵜呑みにしないようにしてください。

ただし、漠然と「相手方の提示内容は間違っている、訂正すべきだ」と言っても、聞き入れてはもらえません。

相手方の言葉に惑わされず、被害者側で正しい慰謝料・過失割合を算定して示談交渉に臨むことが重要です。

植物状態の慰謝料・過失割合算定は非常に難しい

一方で、被害者側で正しい慰謝料・過失割合を算定することは難しいです。
慰謝料や過失割合は事故の細かい事情まで反映させて算定するので、教科書通りの基本的な算定方法だけでは不十分なことも多いからです。

とくに被害者が植物状態になっている場合は、以下ような問題から適正な損害賠償金額・過失割合の算定が一層難しくなります。

  • 未確定かつ高額になりがちな将来の医療費まで算定しなければならない
  • 正しい過失割合算定のカギとなる事故時の状況を、被害者本人から聞き出せない

被害者側で正しい慰謝料・過失割合の算定ができない場合、相手方の主張が通りやすくなってしまいます。

慰謝料・賠償金については本記事内でも相場・計算方法を解説していきますが、厳密な算定は難しい事案の対応にも慣れている弁護士に相談してみることをおすすめします。

関連記事

▼実情に即した慰謝料・過失割合の算定は、弁護士にお任せください。

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(4)捜査への捜査協力、刑事裁判への参加

ここまでに紹介してきたご家族がすべきことは、主に民事面に関することでした。交通事故の場合、民事面だけでなく、刑事面でも捜査協力や裁判といった対応が必要になります。

警察への捜査協力について

事故後、警察がおこなう実況見分捜査・供述捜査についても、被害者に代わってご家族が協力することになります。

事故発生時にその場にいなかったご家族に対しては、事故状況というよりも以下のような内容を聞かれる可能性があります。

  • 相手方への処罰感情
  • 被害者に関する情報
    • 注意深くていつも安全には気を付けていた
    • 大きな仕事を任され張り切っていたため、本人も非常に無念だと思う
    • 事故現場の道は通り慣れていた など

捜査への協力は任意なので、無理をする必要はありません。
しかし、協力しなかった場合、相手方の話だけが捜査資料にまとめられてしまいます。

捜査資料(実況見分調書など)は示談交渉で過失割合を決める際にも参照されるため、偏った内容では被害者側に不利に働きかねません。

よって、できる限り捜査には協力するようにしましょう。

刑事裁判について

交通事故について、相手方の有罪・無罪や刑罰を決める刑事裁判がおこなわれる場合は、「被害者参加制度」を利用して、裁判所で意見を述べることができます。

参加するかどうか検討してみてください。

植物状態(遷延性意識障害)による金銭的な負担を和らげる方法

ご家族が交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になった場合、将来の医療費に関する不安を感じることもあるでしょう。

被害者が一家の大黒柱であったり、介護のためご家族が仕事をセーブしたりする場合は、今後の生活費や子供の教育費などに関する不安も生じます。

こうした金銭的な負担による不安を和らげる方法を、損害賠償請求の観点から紹介していきます。

示談成立前に賠償金の一部を請求することで家計を守る

交通事故の損害賠償金は基本的に、示談成立後に支払われます。しかし、示談成立前でも被害者請求によって損害賠償金の一部を受け取ることは可能です。

被害者請求とは?

相手方の自賠責保険に直接賠償金を請求すること。損害賠償金は通常、相手方の自賠責保険分と任意保険分をまとめて任意保険会社から支払われますが、自賠責保険分だけならば示談成立前でも直接請求できます。

被害者請求は、治療段階の損害と、症状固定後の損害にわけて請求できます。治療段階の損害として、治療費と休業損害に関する詳細は、下記をご覧ください。

示談前にできる請求

  • 治療費の請求
  • 休業損害の請求
    • 相手方の任意保険会社に毎月「休業損害証明書」を提出すれば、その月分の休業損害を受け取れる場合がある。
    • 被害者の休業による減収を毎月補える。
    • 毎月の休業損害の支払いに対応してもらえない場合もある。
    • 関連記事:交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方

自賠責保険から支払われる損害賠償金は、過失割合の影響を受けにくく、過失割合が7割未満であれば、過失の影響を受けずに賠償金を受け取れます。

また、過失割合が確定する前であっても、事故態様から被害者の過失割合におおきな争いがなければ請求は認められるでしょう。

植物状態で示談成立前の請求をすべき理由

交通事故で被害者が植物状態になった場合、示談成立後まで示談金の受け取りを待っていると、時間がかかり家計が圧迫されやすくなります。

被害者が植物状態の事故で示談成立に時間がかかりやすい理由は、次の通りです。

  • 回復の見込みについて不明瞭な部分が多く、症状固定の判断がむずかしい
  • 治療や後遺障害認定の審査に時間がかかりやすく、示談開始が遅くなる
  • 損害賠償金が高額になるので示談交渉で相手方ともめやすく、示談成立が遅くなる

示談成立までの長い期間、被害者側で治療費を立て替えたり、被害者の休業による減収を貯蓄やご家族の収入で補ったりするのは大変です。

上で紹介した方法で示談成立前に受け取れるお金は受け取り、目下の家計を守ることをおすすめします。

将来の治療・介護費をしっかりと請求|追加請求は原則不可

交通事故で被害者が植物状態になった場合、将来にわたって治療や入院、介護、施設への入所などが必要になり、さまざまな費用が必要となります。

実際に将来どれくらいの費用がかかるのかは示談交渉時点では推測しかできません。
しかし、こうした将来発生する費用も、原則として示談交渉時にまとめて相手方に請求する必要があります。

一度示談が成立してしまうと、あとから追加で医療関係費を請求することは原則としてできません。なるべく正確に将来かかる費用を計算し、妥協することなく相手方と交渉するようにしましょう。

弁護士なら、さまざまな点を考慮しながら将来かかる費用を計算できます。

定期金賠償という考え方もある

示談時に一度に請求するのではなく、ある一定の期間に賠償金を定期的に受けとる定期賠償金という方法もあります。具体的には将来の治療費や介護費、逸失利益などで適用される考え方です。

定期賠償金の方法では、その時々の実情に即した金額を請求できます。たとえば、介護費用が将来増額になっても、その変化を反映しやすく、実際の損害分を請求できるのです。

ただし、一度決まった賠償金額を変更するには手続きが必要だったり、将来的に保険会社の資金繰りが悪化すると支払いが滞る可能性もあったりと、デメリットもあります。

いずれにせよ、どういった金額を、どんな方法で請求するべきなのかを弁護士に相談してみましょう。

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本人の慰謝料増額・家族の慰謝料獲得で将来に余裕を

被害者が植物状態になった場合、以下の点から慰謝料の金額が通常より多くなりやすいです。

  • 被害者本人分の金額が通常より多くなる
    自由な未来を奪われた精神的苦痛・無念さがことさらに大きいと判断されるため
  • 通常は認められないご家族分の慰謝料も認められる
    思い描いていた家族との未来を奪われた精神的苦痛や、将来にわたり介護をする負担が考慮されるため

しかし、本当に慰謝料増額・ご家族への慰謝料が認められるか、具体的な慰謝料額はいくらになるのかについては相手方との示談交渉次第です。

被害者本人やご家族が受けた精神的苦痛はお金で癒えるものではありませんが、慰謝料は将来生じる不慮の支出や子供の教育費などに充てることもできます。

将来の金銭的不安を和らげるためにも、十分な慰謝料獲得を目指していきましょう。

植物状態(遷延性意識障害)で請求できる慰謝料の内訳は?

次に、被害者が植物状態(遷延性意識障害)になった場合に相手方に請求できる、慰謝料をはじめとする損害賠償金の内訳や相場を解説していきます。

なお、相場の解説の中で「自賠責基準」「弁護士基準」という言葉が出てきますが、それぞれの意味は次の通りです。

  • 自賠責基準
    • 交通事故被害者に補償される最低限の金額基準
    • 示談交渉時に相手方の任意保険会社が提示してくる金額も、自賠責基準と同程度であることが多い。
  • 弁護士基準(裁判基準)
    • 弁護士や裁判所が用いる金額基準。
    • 過去の判例をもとにしており相場の金額といえる。

示談交渉の際、相手方の任意保険会社は自賠責基準に近い金額を提示してくることが多いので、弁護士基準に近い金額になるよう増額交渉することが重要。

また、ここで紹介する相場はあくまでも基本的なものです。
すでに解説した通り、被害者が植物状態の場合は被害の重大性を考慮して、相場よりも多くの金額が得られることもあります。

(1)治療・介護関係費|治療費や入院費等

被害者が植物状態となった場合において、損害賠償金として請求することが考えられる費目は以下の通りです。

  • 治療関係費
  • 入通院交通費
  • 入院雑費
  • 付添看護費
  • 将来介護費
  • 器具購入費
  • 家屋・自動車等改造費

金額の計算方法や、請求するために必要な要件などについて、費目ごとに解説を行います。

治療関係費

治療費、入院費、手術費など、治療のためにかかった費用のことで、基本的には実費が相手方から支払われます。

治療と並行して相手方の任意保険会社が直接病院に支払う「任意一括対応」がとられることも多く、この場合、被害者側は病院に対する治療費支払いに関与せずに済みます。

治療費支払いの流れ(任意一括対応)

任意一括対応をしてもらえない場合は、一旦被害者側が治療費を立て替え、あとから相手方に請求します。

任意一括対応が適用されるかどうかは、相手方の任意保険会社の方針や事故状況などにもよるので、初めに確認をとってみましょう。

通院交通費

ご家族などのお見舞い・付き添いにかかる交通費も、必要性・相当性が認められれば請求できます。

書類作成費

警察や保険会社などに提出する診断書などの作成費です。実費を請求できます。

なお、診断書には警察提出用・保険会社提出用・後遺障害等級認定提出用の3種類があります。

それぞれ提出のタイミングや取り寄せ方が異なるので、詳しくは『交通事故の診断書|提出しないと慰謝料減額?』から確認してみてください。

入院雑費

入院中に必要になる、通信費(電話代など)や備品の費用です。

実際に何にどれくらいの金額を使ったかが細かく確認されることは少なく、基本的には自賠責基準なら日額1,100円、弁護士基準なら日額1,500円が支払われます。

付添看護費

通院や入院に近親者や職業人が付き添う必要があった場合に、相手方に請求する費用です。

近親者が付き添った場合の相場は次の通りです。

  • 入院付添費
    • 自賠責基準:日額4,200円
    • 弁護士基準:日額6,500円
  • 通院付添費
    • 自賠責基準:日額2,100円
    • 弁護士基準:日額3,300円

なお、付き添いを職業人に依頼した場合には、基本的には実際にかかった費用が請求できます。

付添費については、『交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場は?』で解説しているので、あわせてご覧ください。

将来介護費

将来にわたって介護が必要になった場合に請求する費目です。

植物状態のように後遺障害等級が要介護1級・2級になる場合に請求でき、弁護士基準における基本的な相場は次のようになります。

  • 日額×365日×平均余命のライプニッツ係数
    日額は、付添人が家族なら8,000円、職業人なら実費

ただし、途中までは家族による介護、途中からは職業人による介護を想定して計算される場合もあります。

また、将来介護費は介護する側とされる側の体格差、自宅の仕様、今後介護制度が変更される可能性など、さまざまな要素を考慮しながら決められるので、必ずしも上記の計算式通りになるとは限りません。

将来介護費の金額がどのように決まるのかについては、『交通事故で介護費用が請求できる2ケース』でより詳しく解説しています。

器具購入費

被害者の介護のために必要な器具の購入費用を請求することが可能です。

具体的には、介護用ベッド、マットレス、吸引機などとなります。

また、器具を一定の期間で買い替える必要があることから、将来の買い替えの費用についても請求することができます。

器具以外にも、おむつ代などの将来必要となる雑費について請求することが可能です。

家屋改造費

被害者を自宅で介護する場合に家屋の改造が必要となるなら、その改造費用について請求することができます。

被害者の症状から、合理性のある改造について請求可能です。
そのため、改造前に専門家からアドバイスや指示を受け、必要な改造であることを明確にしましょう。

(2)慰謝料|精神的な苦痛に対する補償

慰謝料とは、交通事故で植物状態になるなどして被った精神的な苦痛に対する補償です。
植物状態になった場合、基本的に入通院慰謝料と後遺障害慰謝料が請求できます。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、ケガや入通院によって生じる精神的苦痛に対する補償です。
たとえば事故時に痛い思いをした、治療時に怖い思いをしたなどといった精神的苦痛に対して支払われるのです。

入通院慰謝料は、入通院期間や通院日数などから金額が決まります。
具体的な算定方法は次の通りです。

  • 自賠責基準:(「治療期間」と「実治療日数×2」のうち少ない方)×4,300円
  • 弁護士基準:植物状態の場合は以下の表から算定
重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

なお、入通院慰謝料は、生死をさまよう重篤な状態に陥った、治療や手術の中で特に大きな苦痛があったなどの事情が認められれば、さらに増額される可能性もあります。

ただし、どのような場合にどれくらい増額されるのか明確な決まりはなく、あくまでも相手方との交渉次第となるので、心当たりがある場合は一度弁護士に相談してください。

植物状態となった後に亡くなってしまったら

死亡慰謝料は、交通事故で死亡した被害者とその遺族の精神的苦痛に対する補償です。

植物状態で一定期間入院したのちに亡くなられたという場合は、死亡慰謝料と合わせて入通院慰謝料も相手方に請求できます。

死亡慰謝料の相場は2,000万円から2,800万円とされており、亡くなられた方の家庭での役割や立場によって変動するものです。

死亡慰謝料について詳しく知りたい方は、関連記事『死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点』も役立ててください。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する補償で、後遺障害等級に応じて金額が決まります。

植物状態(遷延性意識障害)になったことへの後遺障害慰謝料相場は、弁護士基準で2,370万円から2,800万円です。詳しくいうと要介護1級1号で2,800万円、要介護2級1号で2,370万円になります。

もっとも、自賠責基準といって被害者に最低限支払われる金額は要介護1級1号で1,650万円、要介護2級1号で1,203万円が相場です。

認定されうる後遺障害等級と後遺障害慰謝料は下表の通りです。

  • 要介護1級1号:神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
    • 生活全般において、常時介護が必要な状態
    • 自賠責基準:1,650万円
    • 弁護士基準:2,800万円
  • 要介護2級1号:神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
    • 食事や排せつなど、生活の一部において随時介護が必要な状態
    • 自賠責基準:1,203万円
    • 弁護士基準:2,370万円

近親者慰謝料

後遺障害慰謝料は、一般的には被害者本人のみに対して支払われます。

しかし、被害者の後遺障害が家族に多大な精神的苦痛・負担を及ぼす場合には、被害者の家族に対しても慰謝料の支払いが認められるのです。

請求が認められる範囲については、原則として被害者の両親、配偶者及び子どもとなっていますが、祖父母や兄弟など他の家族にも多大な精神的苦痛・負担が認められる場合には、慰謝料の支払いが認められるケースがあります。

ただし、範囲や金額の計算方法に明確な基準がないため、誰にいくらの支払いが認められるのかについては相手方との交渉次第です。

(3)本来なら得られたはずの収入

交通事故により植物状態となることで、本来なら仕事を行うことで得られたはずの収入が得られなくなるという損害が生じます。

このような損害について、以下のような費目の請求が可能です。

  • 休業損害
  • 逸失利益

それぞれの費目について、計算方法や請求できる範囲を解説します。

休業損害

休業損害は、症状固定までの期間における減収を補償するもので、「日額×休業日数」が相場となります。

日額は自賠責基準なら基本的に6,100円、弁護士基準なら事故前の収入を日割りした金額です。

なお、休業損害は専業主婦や一部の学生、一部の無職者でも請求できます。被害者の属性に応じた解説は、下記の関連記事をご覧ください。

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逸失利益

逸失利益は、後遺障害によって労働能力が低下した、あるいは死亡により働けなくなったことで減少する生涯収入に対する補償です。

逸失利益とは何か

逸失利益は、以下の計算式から算定されます。

逸失利益の計算式

  • 後遺障害逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
  • 死亡逸失利益=1年あたりの基礎収入×(1–生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数

植物状態の場合、労働能力喪失率は100%とみなされます。

労働能力喪失期間や就労可能年数は基本的に「症状固定あるいは死亡時~67歳」とされます。ライプニッツ係数は、逸失利益を預金・運用することで将来的に生じる利子をあらかじめ差し引くものです。

逸失利益の計算に用いる各数値は、関連記事『交通事故の逸失利益とは?計算方法を解説!早見表・計算機で相場も確認』で紹介しています。
のちほど本記事内で逸失利益がわかる計算機を紹介しますが、自身で計算したい場合には関連記事を参考にしてみてください。

逸失利益はもめやすい

植物状態になると、平均余命が通常より短くなりやすいといわれています。

そのため、相手方は植物状態での平均余命を引き合いに出し、67歳まで存命ではないなどとして労働能力喪失期間を短く見積もってくるため、逸失利益に関してもめる可能性があるのです。

もし相手から賠償金額の提示を受けているならば、サインをする前に、一度弁護士に内容を確認してもらいましょう。

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(4)物損に関する費目

物損に関する費用は主に、車に関する費用を請求できます。

修理費・弁償代

交通事故によって壊れた車両や物の修理費・弁償代などのことです。

車両が修理不可な場合や、修理代より新車購入費の方が安くなる場合は、買い替え費用が支払われます。

格落ち損(評価損)

修理歴や事故歴が残ることで落ちた車の価値に対する補償で、相場は修理費の10%~30%程度です。

ただし、必ずしも請求が認められるとは限りません。

代車費用

車を修理している間の代車費用です。

ただし、公共交通機関などで代用できる場合は請求できない可能性があります。

また、修理に出している車よりも明らかに高級な車を代車とした場合は、代車費用の一部しか認められない可能性があります。

休車損害

営業車の修理のため営業ができず生じた損害への補償です。

ただし、他の営業車を使うことで営業できる場合は請求できない可能性があります。

植物状態(遷延性意識障害)は症状固定の時期に注意

植物状態の場合、実務上では、事故から1年程度の経過観察を行ったうえで症状固定と判断されることが多いです。

症状固定の時期に注意すべき理由としては、症状固定前と症状固定後で請求できる項目が切替るものがあるためです。

症状固定前後で切替る主な項目

項目
症状固定前治療関係費
入通院交通費
入院雑費
付添看護費
入通院慰謝料
休業損害
症状固定後将来医療費
将来介護費
後遺障害慰謝料
逸失利益

症状固定は「これ以上治療を続けても大幅な改善が見込めない状態」をいうので、通常は症状固定となれば治療そのものを打ち切ります。

しかし、植物状態の場合、生涯にわたって生命維持・体調維持のための治療が必要です。

つまり、植物状態の方にとっての症状固定は、相手方への損害賠償請求を行うために必要なひとつの区切りといえるでしょう。

もっとも、症状固定日からすぐに損害賠償金を受け取れるわけではありませんので、症状固定日の決定は慎重に判断してもらう必要があります。

植物状態(遷延性意識障害)の賠償請求は弁護士が必要

交通事故で被害者が植物状態(遷延性意識障害)になった場合の損害賠償請求をご家族だけで対応するには限界があります。

植物状態の損害賠償請求で、弁護士が必要な理由について解説していきます。

植物状態(遷延性意識障害)の示談交渉はもめやすい

交通事故の被害者が植物状態という重篤な状態になった場合、示談交渉でもめる可能性が高くなります。その理由は次の通りです。

  • 慰謝料・賠償金が非常に高額になりやすい分、少しでも金額をおさえようという相手方の意識が強くなり、被害者側の主張が通りにくくなる。
  • 植物状態の場合、残念ながら平均余命が通常よりも短くなる可能性があり、それを理由に相手方が将来介護費や逸失利益の減額を求めてくる場合がある。
  • 被害者自身による証言ができないため、正しい事故状況が判断しにくい。

上記3点から考えると、示談交渉で適切な慰謝料・賠償金を得るためには、シビアな態度で臨んでくる相手方に効果的に交渉するスキルが必要です。

また、被害者自身による証言ができない分、被害者側の主張を裏付ける証拠集めも入念におこなう必要があります。

それだけではなく、被害者の介護や財産の管理など行わなければらないことは多いので、肉体的にも精神的にも疲弊してしまう恐れがあります。

そのため、少しでもご家族の負担を軽くするために、弁護士に依頼し、代わりに示談交渉や証拠の収集を行ってもらうべきです。

依頼すべきかどうかお悩みの方は、弁護士に相談してみましょう。

▼法律相談のご予約は24時間365日受け付けています。まずはご予約をお取りください。

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損害賠償請求権の消滅時効が迫りやすい

被害者が植物状態になった場合、「損害賠償請求権の消滅時効」にも注意しなければなりません。

これは、被害者側が相手方に対して損害賠償請求できる期限のことで、費目の分類別に次のように定められています。

  • 傷害に関する費目
    • 事故翌日から5年
    • 入通院慰謝料、治療関係費、休業損害など
  • 後遺障害に関する費目
    • 症状固定翌日から5年
    • 後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益
  • 物損に関する費目
    • 事故翌日から3年

※相手方自賠責保険会社に対する被害者請求の時効はいずれも3年

被害者が植物状態の場合、治療や後遺障害等級認定の審査に長い時間がかかりがちで、示談交渉を始めるころにはすでに時効が迫っている可能性があります。

さらに、すでに解説した通り示談交渉ももめやすいため、示談が成立し、相手方への損害賠償請求が完了するまでにはさらに時間がかかるリスクがあります。

損害賠償請求権の消滅時効は、適切な手続きをとれば延長することも可能です。
また、弁護士が介入することで、示談交渉がスムーズに進む可能性もあります。

時効が迫ってきて十分に交渉できなかった、という事態を防ぐためにも、一度弁護士に相談してみてください。

弁護士費用を差し引いても獲得額が増えることが多い

弁護士に相談・依頼をすると費用がかかるからと敬遠される方がいます。
とくに被害者が植物状態になってしまった場合、今後何かと費用がかかることを思えば、弁護士費用はネックとなるでしょう。

しかし、弁護士費用を差し引いてもなお、弁護士を立てた方が多くの損害賠償金が得られることは多いです。

また、弁護士費用は以下の方法によって抑えることもできます。

弁護士を立てることで弁護士費用以上のメリットが得られるかどうかは、事前の法律相談で確認できます。

弁護士費用を敬遠して弁護士への依頼をあきらめる前に、まずは一度、無料相談を利用してみることがおすすめです。

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植物状態(遷延性意識障害)の問題を弁護士に相談

交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になった場合の損害賠償問題は、弁護士にご相談ください。無料で弁護士に相談する方法を紹介します。

植物状態では慰謝料等が高額になる|交通事故の実績や経験が重要

ここまで解説してきた内容を踏まえると、交通事故でご家族が植物状態になった場合には、弁護士に相談・依頼することがおすすめです。

ただし、大切な家族が植物状態になってしまうほどの重大事故の示談交渉は、高い交渉力や証拠収集能力などが求められます。

よって、満足なサポートを受けるためには、交通事故事案の受任件数は豊富か、実績はあるか、実際に相談・依頼した人からの評価はどうかなど、しっかり吟味することが重要です。

また、弁護士に依頼する際は相性も重要です。植物状態という重い後遺障害を負った件では、相手方との示談交渉がまとまるまでに、時間がかかる可能性もあります。

弁護士とも長期のやり取りになるので、なんでも相談しやすい、信頼できるなど、人柄面もしっかり確認したうえで弁護士を選ぶようにしてください。

慰謝料相場を知って弁護士の必要性を検討

相手方に請求する費目の中でも特に高額になりやすい慰謝料・逸失利益の相場は、以下の計算機から簡単に確認できます。

慰謝料相場を知ることは、弁護士の必要性を検討する際に役立ちます。

というのも、植物状態の賠償金は高額になりやすいです。妥当な慰謝料相場を知らなければ、保険会社の提示額を見ただけでは、一見、妥当な金額のように思えてしまうかもしれません。

しかし、弁護士が算定し直すと、保険会社の提示額よりはるかに高額になる可能性があります。計算機の結果より、保険会社の提示額のほうが低ければ必ず弁護士に相談してください。

たとえ、保険会社の提示額が計算機の結果と同じくらいでも提示漏れがあるかもしれないので、いずれにせよ弁護士には相談したほうがいいでしょう。

ただし、計算機でわかるのは弁護士基準における相場額であること、実際にはさまざまな事情を考慮し、増額・減額される可能性があることには注意してください。

より厳密な相場額を知りたい場合は、弁護士に問い合わせるのがおすすめです。

まずは一度、無料で弁護士と話してみよう

アトム法律事務所では、無料の電話相談・LINE相談をおこなっています。無料相談の予約受付は、24時間いつでも対応中です。下記よりお問い合わせください。

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相談後、無理に契約を迫ることはありません。相談のみの利用も可能なので、ぜひお気軽にご連絡ください。

また、交通事故のご相談は、基本的に全国どこからでも対応可能です。お住いの近くに弊所の事務所がなくても気にせずに、まずはお問い合わせください。

ご依頼者様の声

これまでアトム法律事務所へご依頼いただいた方から寄せられた声の一部を抜粋して紹介します。

LINE相談がきっかけ

我々素人は相談をもっていきにくいという意識がありましたが、ラインを通じて相談・質問が出来た鎖骨骨折の件での交通事故依頼者

親身且つ丁寧な相談

怪我の治療の件、後遺障害の件等、不安な事が沢山ありましたが、親身に且つ丁寧に相談にのって頂いたので大変感謝しております。(右検査関節脱臼などでの交通事故依頼者

突然の交通事故によりご家族が植物状態になってしまい、相手にどう損害賠償請求していくのか保険会社に任せていてよいのか、こうした不安はまず弁護士にご相談ください。

アトム法律事務所の特徴

  • 全国主要都市に支部を持つ法律事務所
  • 交通事故事案・示談交渉の実績豊富な弁護士が在籍
  • わかりやすい弁護士費用

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

突然生じる事故や事件に、
地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。