無職でも交通事故の慰謝料は請求できる|休業損害や逸失利益の計算方法

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交通事故の慰謝料無職でも請求できる

失業者、専業主婦、学生、子ども、年金暮らしなど、一般的に無職と言われる方が交通事故にあうと、慰謝料がもらえるのか心配になるかもしれません。

結論からいうと、被害者が無職でも交通事故の慰謝料は変わりません

ただし、無職の方は「休業損害」や「逸失利益」といった慰謝料以外の損害賠償金に注意が必要です。休業損害や逸失利益は、無職の方でもらえる場合ともらえない場合があります。

この記事では、交通事故の慰謝料や、無職の方がとくに注意すべき休業損害や逸失利益について詳しく解説しています。ぜひ最後までご確認ください。

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無職でも慰謝料・損害賠償金をもらえる?

無職でも慰謝料の金額は変わらない

被害者が無職の場合も、交通事故の慰謝料の金額は変わりません

慰謝料とは、交通事故で負った精神的苦痛に対して支払われる補償です。精神的苦痛は職業に関係なく負う損害であるため、無職であっても問題なく慰謝料を請求できるのです。

なお、交通事故の慰謝料には以下の3種類があります。無職の方であっても、どの慰謝料も請求可能です。

交通事故の慰謝料の種類

入通院慰謝料交通事故でケガを負った精神的苦痛の補償。
入通院治療をしたら、その日数や期間に応じて請求できる。
後遺障害慰謝料交通事故で後遺障害を負った精神的苦痛の補償。
後遺症が「後遺障害認定」を受けたら、等級に応じて請求できる。
死亡慰謝料交通事故で亡くなった精神的苦痛の補償。
被害者本人分と被害者の家族分を請求できる。

慰謝料の金額はいくら?

交通事故の慰謝料の金額を知るためには、「慰謝料の3つの算定基準」を知っておく必要があります。

交通事故の慰謝料の算定基準

  • 以下の3種類がある
    • 自賠責保険が用いる「自賠責基準」
    • 任意保険が用いる「任意保険基準」
    • 弁護士や裁判所が用いる「弁護士基準(裁判基準)」
  • どの基準を用いるかによって慰謝料の金額が変わる。
    基本的には「弁護士基準>任意保険基準≧自賠責基準」となる。
慰謝料金額相場の3基準比較

上記の前提を踏まえたうえで、交通事故の慰謝料の相場を見てみましょう。

なお、任意保険基準は各保険会社が独自に定めており、公開されていないため、ここでは割愛します。基本的には自賠責基準と同じくらいか、自賠責基準よりやや高額な程度と考えてください。

入通院慰謝料の相場

通院期間自賠責基準※弁護士基準※※
1か月12.9万円(重)28万円
(軽)19万円
2か月25.8万円(重)52万円
(軽)36万円
3か月38.7万円(重)73万円
(軽)53万円
4か月51.6万円(重)90万円
(軽)67万円
5か月64.5万円(重)105万円
(軽)79万円
6か月77.4万円(重)116万円
(軽)89万円

※2日に1度通院した場合を想定
※※(重)は重傷の場合の金額、(軽)はむちうちなど軽症の場合の金額

後遺障害慰謝料の相場

等級自賠責基準※弁護士基準
1級(要介護)1,650万円2,800万円
2級(要介護)1,203万円2,370万円
1級1,150万円2,800万円
2級998万円2,370万円
3級861万円1,990万円
4級737万円1,670万円
5級618万円1,400万円
6級512万円1,180万円
7級419万円1,000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

※2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合

なお、後遺障害慰謝料を受け取るためには、先述のとおり事故の後遺症が「後遺障害等級」に認定される必要があります。

後遺障害認定の審査を受ける方法は、関連記事『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』で確認してください。

死亡慰謝料の相場

被害者自賠責基準※弁護士基準
一家の支柱400万円2,800万円
母親・配偶者400万円2,500万円
独身の男女400万円2,000~2,500万円
子ども400万円2,000~2,500万円
幼児400万円2,000~2,500万円
以下は該当する場合のみ
+遺族1名550万円
+遺族2名650万円
+遺族3名以上750万円
+被扶養者あり200万円

※2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合

無職の方の場合は、「母親・配偶者」、「独身の男女」、「子ども」のいずれかに当てはまることが多いでしょう。

死亡慰謝料についてさらに詳しく知りたい場合は、関連記事『死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?』を参考にしてください。

慰謝料の自動計算機

さらに詳しい慰謝料の相場額を知りたい方は、以下の計算機をご利用ください。

また、関連記事『交通事故の慰謝料の計算方法|正しい賠償金額がわかる計算式や計算例を紹介』では、慰謝料の計算方法を詳しく紹介しています。あわせてお読みいただくことで、慰謝料に関する知識が深まります。

無職の方は「休業損害」と「逸失利益」に注意

慰謝料は、交通事故の被害にあったとき請求できる損害賠償金の一部です。

交通事故の損害賠償金には、他にも以下のようなものが含まれます。基本的には、無職であっても問題なく請求が可能です。

交通事故の損害賠償金

損害の内容請求できる費目
事故でケガをした入通院慰謝料
休業損害
治療関係費 など
事故で後遺障害を負った後遺障害慰謝料
後遺障害逸失利益 など
事故で亡くなった死亡慰謝料
死亡逸失利益
葬祭費 など

各費目の詳しい計算方法や相場を知りたい場合は、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事をご覧ください。

上記の費目のうち、休業損害と逸失利益については、無職であることが請求の可否や金額に影響します

休業損害と逸失利益とはどのような費目か、無職であってもどのような状況であれば請求できるかを確認していきましょう。

休業損害とは?

交通事故の休業損害とは、交通事故により仕事を休んだ日の収入に対する補償です。

休業損害とはケガで働けず、収入が減少する損害に対する補償のこと

休業損害は基本的に働いている人が請求できるものですが、家事労働をしている人や、事故当時に働いていなくても今後働く見込みがあった人なら、無職でも請求可能です。

無職であっても休業損害をもらえる人・もらえない人の具体例は以下のとおりです。

  • 無職で休業損害をもらえる人
    • 専業主婦・専業主夫
    • 求職中の失業者で、特定の条件を満たす人
    • 大学生・高校生で、特定の条件を満たす人
  • 無職で休業損害をもらえない人
    • 失業者で就労の見込みがない人
    • 中学生以下の子ども
    • 年金受給者
    • 生活保護受給者
    • 家賃収入などの不労所得者

休業損害の計算にあたっては以下のような項目が用いられます。

基礎収入事故前の被害者の収入(日額)
休業日数事故にあわなければ働けていたはずの日数

なお、無職の方の場合、実際の収入がないため、基礎収入の算定にあたっては「賃金センサス」という厚生労働省が実施している統計に基づいた資料をもとにした平均賃金を参考にすることが多いです。

休業損害については、『交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方、いつもらえるかを解説』の記事にまとめています。請求方法や支払い時期も解説しているので、ご参考ください。

逸失利益とは?

交通事故による逸失利益とは、交通事故がなければ得られたはずの将来的な収入に対する補償です。

逸失利益とは、交通事故がなければ得られたはずの将来の収入に対する補償

逸失利益は、家事労働をしていた人や、事故当時に働いていなくても今後働く見込みがあった人、年金収入を得ていた人なら、無職でも請求可能です。

無職でも逸失利益をもらえる人・もらえない人の具体例は以下のとおりです。

  • 無職で逸失利益をもらえる人
    • 将来就労していた可能性の高い人
    • 専業主婦・専業主夫
    • 大学生・高校生
    • 中学生以下の子ども
    • 年金受給者
  • 無職で逸失利益をもらえない人
    • 就職活動を全くしていないなど、就労意欲が乏しいとみなされた人
    • 家賃収入などの不労所得者

逸失利益の計算にあたっては以下のような項目が用いられます。

労働能力喪失率事故でどのくらい労働能力が落ちたかを示す数値
後遺障害等級によって目安が決められている
労働能力喪失期間労働能力を失った状態で働く年数
基本的に「67歳-症状固定時の年齢」だが例外あり
死亡により就労できなくなった年数死亡により働けなくなった年数
基本的に「67歳-死亡時の年齢」だが例外あり
ライプニッツ係数逸失利益を一括で受け取ることで生じる利息を差し引く数値
生活費控除率死亡逸失利益のうち被害者が生きていたら使ったはずの生活費を差し引く数値

逸失利益の詳しい計算方法については、『【逸失利益の計算】職業別の計算方法を解説!早見表・計算機つき』の記事で解説しています。逸失利益の計算式は専門用語も多くわかりづらいので、ぜひあわせてご一読ください。

次章からは、失業中の方、専業主婦・専業主夫の方など、無職の方の属性別に休業損害と逸失利益を請求できる条件と計算式を解説していきます。

無職でも休業損害・逸失利益をもらえる条件と計算方法

(1)失業者

失業して求職中だった人は、以下の条件にあてはまれば、休業損害や逸失利益を請求できる可能性があります。

失業者の請求条件

  • 休業損害の請求条件(以下の条件すべてに該当)
    • 就労の意欲がある
    • 就労の能力がある
    • 就労の見込みがある(就労の蓋然性がある)
  • 逸失利益の請求条件
    • 基本的に休業損害と同じ

具体的には、事故にあったときに内定を得ていた場合や、意思・能力・求職活動の状況から事故にあわなければ働いていた可能性が高いとみなされる場合などがあてはまります。

ただし、求職中の人の休業損害は示談交渉で争いとなりやすいです。場合によっては、上記の条件に当てはまっても休業損害を得られない可能性があるので注意しましょう。

失業者で休業損害を請求したい場合は、内定通知書や求職活動を行っていたことがわかる書類を用意し、弁護士にも対策を相談しておくとよいでしょう。

失業者の休業損害の計算方法

失業者の休業損害は、次のように計算します。

失業者の休業損害

  • 基礎収入×休業日数
    • 基礎収入=内定先で想定される収入、以前の勤務先における収入、賃金センサスに基づく性別・年齢・学歴などを考慮した平均賃金

求職中だった人の基礎収入は、さまざまな要素を考慮して決められます。
源泉徴収票など、前職での収入額を証明できる書類があるとよいでしょう。

ただし、適正な基礎収入の判断は被害者自身では難しい場合が多いです。
あらかじめ弁護士に相談し、アドバイスを受けておくことをおすすめします。

失業者の逸失利益の計算方法

失業者の逸失利益は、次のように計算します。

失業者の逸失利益

  • 後遺障害逸失利益
    = 年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
  • 死亡逸失利益
    = 年収×(1‐生活費控除率)×死亡により就労できなくなった年数に対するライプニッツ係数

年収については、内定を受けていた場合、内定先での年収をもとにすることが多いです。

内定を受けていなくても将来的に就労していた可能性が高い人の場合は、前職での年収や、賃金センサスに基づく性別・年齢・学歴などを考慮した平均賃金を考慮することになるでしょう。

なお、前職での年収が平均賃金を下回っているが、将来的に平均賃金が得られていた可能性が高いと判断される場合には、平均賃金を年収とします。

逸失利益の年収の考え方についても、加害者側の任意保険会社と争いになることが予想されます。事前に弁護士に相談し、適切な金額を確認しておくとよいでしょう。

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(2)専業主婦・専業主夫

専業主婦・専業主夫の場合、休業損害も逸失利益もとくに条件なく認められるでしょう。

専業主婦の請求条件

  • 休業損害の請求条件
    • とくに条件なく認められる
  • 逸失利益の請求条件
    • とくに条件なく認められる

とくに条件なく認められる理由は、交通事故で損害賠償を請求するとき、主婦の家事労働は賃金労働と同様に扱われるからです。

なお、家事労働は基本的に家族のために行うものに限られます。よって、自分のために家事労働をしている独り暮らしの方は専業主婦・専業主夫に含まれません。

関連記事『主婦の交通事故|慰謝料がすぐ計算できる!休業損害の相場もわかる』では、交通事故の慰謝料や休業損害、逸失利益計算の具体例や、主婦ならではの注意点を解説しています。主婦の方はぜひ目を通してみてください。

専業主婦の休業損害の計算方法

専業主婦の休業損害の計算方法は、次のとおりです。

専業主婦の休業損害

  • 基礎収入×休業日数
    • 基礎収入=賃金センサスの女性全年齢平均から算出

賃金センサスにおける年度別の女性全年齢平均賃金は以下のとおりです。

女性の全年齢平均賃金(年額)

女性全年齢平均賃金
2023年約400万円
2022年約394万円
2021年約386万円
2020年約382万円
2019年約388万円

※2019年以前の調査結果は「厚生労働省のホームページ」において確認できます。

なお、男性の専業主夫の場合も女性の全年齢平均賃金を用います。これは、男性と女性で平均賃金が異なるため、公平を期すための措置です。

休業日数とは、入通院などのため家事労働を現実に行えなかった日数をいいます。単純に家事労働を行わなかっただけでは休業損害の対象とはならないことに注意してください。

専業主婦の逸失利益の計算方法

専業主婦の逸失利益は、以下のように計算します。

専業主婦の逸失利益

  • 後遺障害逸失利益
    = 年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
  • 死亡逸失利益
    = 年収×(1‐生活控除率)×死亡により就労できなくなった年数に対するライプニッツ係数

年収については、休業損害と同様に、賃金センサスの女性全年齢平均の金額を用います。

(3)大学生・高校生

学生の場合は、逸失利益はとくに条件なく認められます。

一方、休業損害については下のいずれかの条件に当てはまる必要があります。なお、条件に当てはまっていても示談交渉でもめる場合も多いので注意してください。

学生の請求条件

  • 休業損害の請求条件
    • アルバイトをして給与を得ていた
    • 交通事故による怪我のため、内定を取り消されたり就職が遅れたりした
  • 逸失利益の請求条件
    • とくに条件なく認められる
      (卒業後に就職して収入を得ることが予想されるため)

なお、学生の場合、交通事故によって休学・留年が生じたため必要になった学費や下宿代なども請求できる可能性があります。詳しくは、『学生(大学生・中高生)の交通事故慰謝料は?計算方法や相場を解説』をご覧ください。

大学生・高校生の休業損害の計算方法

学生の場合の休業損害は、次のように計算します。

学生の休業損害

  • 基礎収入×休業日数
    • アルバイトをしていたなら、
      基礎収入=時給や月々の勤務日数などから算定
    • 内定取り消しや就職遅れが生じたなら、
      基礎収入=内定先で想定される収入や賃金センサスに基づく平均賃金から算定

内定取り消しや就職遅れが生じた場合、平均賃金については、学歴や性別をもとにするのか、被害者の能力や就職活動の内容から就職する可能性の高い職種をもとにするのかなど、個別の事情を考慮して決める必要があります。

このように、学生の基礎収入の判断は非常に難しいため、専門家である弁護士に確認をとることをおすすめします。

参考として、学生の休業損害が認められた裁判例をご紹介します。

裁判例(1)

就職が内定していた修士課程後期在学生(男・事故時27歳)につき、事故により就職内定が取り消され症状固定まで就業できなかった場合に、就職予定日から症状固定まで2年6カ月余の間、就職内定先からの回答による給与推定額を基礎に、955万円余を認めた(名古屋地判平14.9.20 交民35・5・1225)

裁判例(2)

専門学生(男・事故時18歳、右目失明・外貌醜状等で併合5級)につき、事故がなければ翌々年4月から就労開始予定であったとして、賃セ男性高専短大卒20歳から24歳平均を基礎に、就労開始予定時から症状固定までの約40月分、989万円余を認めた(大阪地判平24.7.30 交民45・4・933)

大学生・高校生の逸失利益の計算方法

学生の逸失利益は、以下のように計算します。

学生の逸失利益

  • 後遺障害逸失利益
    = 年収×労働能力喪失率×(労働能力喪失期間の終期までの年数に対応するライプニッツ係数-就労開始年齢までの年数に対応するライプニッツ係数)
  • 死亡逸失利益
    = 年収×(1‐生活費控除率*)×(労働能力喪失期間の終期までの年数に対応するライプニッツ係数-就労開始年齢までの年数に対応するライプニッツ係数)

*男性なら0.5、女性なら0.3(年収を平均賃金で計算する場合は0.45とすることも)

年収の考え方は、基本的に以下のとおりです。

高校生男性なら賃金センサスの男性労働者の全年齢平均賃金
女性なら賃金センサスの男女全年齢平均賃金
大学生賃金センサスの男女別大卒の全年齢平均賃金

年収の計算に用いる平均賃金については、以下の表をご参考ください。

高校生の場合に用いる平均賃金(年額)

高校生・男高校生・女
2023年約570万円約400万円
2022年約555万円約394万円
2021年約546万円約386万円
2020年約546万円約382万円
2019年約561万円約388万円

大学生の場合に用いる平均賃金(年額)

大学生・男大学生・女
2023年約655万円約470万円
2022年約640万円約462万円
2021年約631万円約454万円
2020年約638万円約451万円
2019年約671万円約472万円

ただし、高校生でも、大学に進学して卒業していた可能性が高いと認められれば、大学生と同じ年収で逸失利益を計算することもあります。

参考として、学生で逸失利益が認められた裁判例をご紹介します。

裁判例

高校2年生(男・17歳)につき、高校1年時の成績は優れていなかったが、勉学に対する意欲があり大学へ進学するのを当然とする家庭環境(両親大学卒、姉2人も国立大学卒)にあって両親及び本人も大学進学を希望していたことから、大学に進学した蓋然性が高いとして、賃セ男性大卒全年齢平均を基礎とした(東京高判平15.2.13 交民36・1・6)

(4)年金受給者

年金受給者の場合、休業損害と各種逸失利益についての請求の可否や条件は以下のとおりになります。

年金受給者の請求条件

  • 休業損害の請求条件
    • 基本的に認められない
      (年金は事故による入通院で減るものではないため)
  • 後遺障害逸失利益の請求条件
    • 将来的に再就職の見込みがあった
    • 同居人のための家事労働をしていた
  • 死亡逸失利益の請求条件
    • とくに条件なく認められる

年金受給者の死亡逸失利益の請求条件がないのは、年金は被害者が年金保険料を支払っていたことを前提として支給されるものであるため、年金は家族の生活を支える役割も持っているためです。

なお、高齢者が交通事故で死亡した場合の慰謝料・損害賠償金については、『交通事故で高齢者(老人)が死亡した場合の慰謝料や逸失利益の金額は?』でも詳しく解説しています。

年金受給者の逸失利益の計算方法

年金受給者の逸失利益は、以下のように計算します。

年金受給者の逸失利益

  • 後遺障害逸失利益
    = 年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
  • 死亡逸失利益
    = 年収×(1‐生活費控除率)×平均余命までの年数に対するライプニッツ係数

年収については、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益で考え方が異なります。

後遺障害逸失利益の場合は、再就職の見込みがあった場合は失業者と同様に考え、同居人のための家事労働をしていた場合は専業主婦と同様に考えてください。

一方、死亡逸失利益の場合は、年金受給額から算出することになるでしょう。

また、年金受給者の場合、生活費控除率が基準よりも多い50%~70%に設定されることが多いです。

生活費控除率とは、死亡事故の被害者が得ていたであろう将来の収入から、被害者本人が消費したであろう金額を差し引くための数値になります。

年金はそのほとんどが生活費に使われると考えられるため、年金受給者の生活費控除率は基準よりも高くなるのです。

無職の方が交通事故にあったときによくあるお悩み

Q1.慰謝料・損害賠償金の受け取りまでどれくらいかかる?

慰謝料・損害賠償金は、通常は加害者側の任意保険会社との示談成立から約2週間後に支払われます。

交通事故の種類ごとに、示談成立までにかかる期間の目安は以下のとおりです。

示談にかかる期間の目安

後遺障害なしの人身事故治療終了から半年程度
後遺障害ありの人身事故後遺障害認定から半年~1年程度
死亡事故法要を終えてから半年~1年程度

ただし、休業損害や逸失利益の請求の可否でもめている、過失割合でもめているといった状況の場合、上記の期間よりも長くなる可能性があるでしょう。

関連記事『交通事故の示談にかかる期間の目安は?早く終わらせたいときの対処法』では、事故の種別ごとに示談成立までの流れやかかる期間を紹介しています。あわせてご一読ください。

Q2.当面の生活費に困る場合はどうすればいい?

交通事故の示談成立までには長期間かかることも多いため、事故の影響で求職活動ができなくなった場合など、当面の生活費に困るケースも多いと思われます。

交通事故の影響により当面の生活費に困る場合は、以下の2つの方法で解決することが可能です。

  • 示談前に「加害者側の自賠責保険会社」に請求する
  • 被害者側の保険を使う

それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。

加害者側の自賠責保険会社に請求する

加害者側の自賠責保険会社からは、示談成立前でも一定の金額を受け取ることができます。

交通事故の慰謝料・損害賠償金は、「自賠責保険会社が支払う分」と「任意保険会社が支払う分」の2段構造になっています。

このうち、自賠責保険会社が支払う分については、法令で金額が決まっています。よって、交通事故によって発生した損害が確定しているなら、示談で慰謝料・損害賠償金を決める前でも請求が可能なのです。

詳しい請求方法は、『交通事故の被害者請求とは?自賠責へ請求すべき?やり方やメリットもわかる』の記事が参考になります。

被害者側の保険を使う

示談成立まで時間がかかりそうなら、被害者側の保険を使うことも選択肢のひとつです。

たとえば、被害者側の任意保険に含まれる「人身傷害補償保険」を利用すれば、加害者側から支払われる損害賠償金と同じ金額が受け取れるでしょう。他にも「搭乗者傷害保険」「車両保険」なども利用可能です。

なお、被害者側の保険から受け取った金額は、あとから被害者側の保険会社から加害者側の保険会社に請求されます。

交通事故で使える保険については、『交通事故で使える保険の種類と請求の流れ|被害者自身の保険も使える?』の記事をご覧ください。

Q3.保険会社から休業損害・逸失利益の支払いを拒否されたら?

無職の方の場合、本来は休業損害・逸失利益を支払ってもらえる状況であるにも関わらず、保険会社から支払いを拒否されるケースも少なくありません。

保険会社から休業損害・逸失利益の支払いを拒否されても、「そういうものなのだろう」と諦めないでください。以下のような具体的な根拠を示せば、支払いに応じてもらえる可能性があります

  • 被害者自身に就労の蓋然性があったとわかる根拠
    • 内定通知書や内定証明書
    • 職務経歴書
    • 資格や技能を証明する書類
    • 求人への応募を証明できる書類 など
  • 似たような状況で休業損害・逸失利益が認められた過去の判例
    • 「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)などで代表的な判例を確認可能

どのような証拠が有効かわからなかったり、証拠を示しても「根拠に乏しい」などとして交渉に応じてもらえなかったりする場合は、交通事故に精通した弁護士に相談・依頼することを検討しましょう。

無料相談で「このような書類が有効」「過去にこのような判例がある」とアドバイスをもらえることも多いです。アトム法律事務所は無料の電話・LINE法律相談を実施していますので、利用をご検討ください。

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無職で交通事故にあったら弁護士に相談した方がいい理由

無職の慰謝料・損害賠償金は低額にされやすい

無職の人の慰謝料・損害賠償金は、以下の2つの理由から低額になりやすいです。

  • 加害者側の任意保険会社は任意保険基準の金額を提示してくるから
  • 任意保険会社は、無職の人への休業損害・逸失利益を渋る傾向にあるから

加害者側の任意保険会社は、先述の「任意保険基準」で計算した金額を提示してきますが、この金額は「弁護士基準」で計算した金額の半分から3分の1程度であることも珍しくありません。

また、休業損害の日額についても、任意保険基準で計算すると大幅に低くなる可能性があります。

任意保険基準では、休業損害の日額は6,100円程度とされることが多いです。一方、弁護士基準なら、たとえば専業主婦の方の場合は日額約10,575円になります(2021年の賃金センサスより算出した金額)。

また、加害者側の任意保険会社は、被害者が無職の場合、そもそも休業損害や逸失利益を認めたがらない可能性も高いです。

よって、被害者が無職の場合、慰謝料や損害賠償額が低くなりやすいと言えるのです。

被害者自身による交渉で増額を目指すのは難しい

適切な金額まで増額するよう交渉したり、加害者側に休業損害や逸失利益の支払いを認めさせたりすることは、決して容易ではありません。

加害者側の任意保険会社は、会社の売り上げや担当者個人の成績をかけて交渉に臨んでくるため、そう簡単に被害者の主張を聞き入れようとはしないのです。

中には、あえて高圧的な態度をとったり、専門用語を多用してはぐらかしたりするようなケースもあります。

一方、弁護士は法律や損害賠償請求の専門家であり、示談交渉のプロです。

そのため、被害者が弁護士を立てた場合、加害者側の任意保険会社は弁護士の主張を聞きつつ、示談交渉を進めていく姿勢をとることが多いでしょう。

その結果、被害者自身が示談交渉に臨むよりも、慰謝料・損害賠償金の増額が認められやすいのです。

弁護士による増額交渉

交通事故の問題を弁護士に相談・依頼するメリットは他にも多くあります。関連記事『交通事故を弁護士に依頼するメリットと必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』も参考にして、弁護士への依頼を検討してみてください。

弁護士費用は意外と心配しなくていい

弁護士への相談・依頼で心配なのが、弁護士費用ではないでしょうか。

たしかに弁護士費用は安いといえる金額ではありませんが、お得に相談・依頼できる方法があります。

  • 弁護士費用特約を利用して弁護士費用を保険会社に負担してもらう
  • 相談料・着手金が無料の法律事務所を利用する

それぞれの方法について解説します。

弁護士費用特約を利用して弁護士費用を保険会社に負担してもらう

弁護士費用特約があると任意保険会社に弁護士費用を負担してもらえる

弁護士費用特約とは、被害者が加入している任意保険会社に弁護士費用を負担してもらえる特約のことです。

弁護士費用特約を使えば、弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを保険会社に負担してもらえます。

弁護士費用が300万円をこえることは、最終的な慰謝料・損害賠償金が数千万円にならない限りほとんどありません。よって、弁護士費用特約を使えば自己負担金は0円といえるのです。

もし、弁護士費用特約が被害者自身の保険についていなくても、ご家族の保険についていれば利用できることがあります。なお、弁護士費用特約の利用により保険の等級が下がることはありません。

弁護士費用特約の詳しい解説は、関連記事『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』でご確認ください。

相談料・着手金が無料の法律事務所を利用する

弁護士費用特約が利用できない場合は、相談料・着手金無料の法律事務所の利用を検討するとよいでしょう。

相談料は弁護士に法律相談を行った時点で発生する費用をいい、着手金は弁護士に依頼を行った時点で発生する費用をいいます。

相談料や着手金が無料なら、支払う弁護士費用は事案解決後の成功報酬のみになります。加害者側から慰謝料・損害賠償金を獲得するまでは、費用を支払わなくてよいので、安心して依頼することが可能です。

アトム法律事務所の無料相談のご案内

最後に、アトム法律事務所が実施している無料の法律相談についてご案内させてください。

アトム法律事務所の特徴

  • 無料相談は電話・LINEから可能
  • 着手金も原則無料だから依頼時の初期費用が不要
  • 交通事故の示談交渉にくわしい弁護士が多数在籍
  • ご依頼者様の満足度90%超え

相談は、電話・LINE・メールから無料で承っております

少しでも不安なことがあれば、お気軽にご連絡ください。もちろん、無料相談の際に本格的な依頼を強要することはありません。

セカンドオピニオンとしてのご利用でも大丈夫です。皆様からのお問合せをお待ちしております。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

突然生じる事故や事件に、
地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。