下肢(股関節、膝、足首)の可動域制限、人工骨頭の後遺障害を解説|等級の認定基準や慰謝料相場

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下肢(股関節、膝、足首)の可動域制限|等級の認定基準・慰謝料相場

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故の被害に遭った際、足にケガを負うなどして関節が動かせなくなったり、可動域が制限されてしまったりするケースがあります。
特に股関節の骨を損傷したとき、人工骨頭への置換手術が行われた際にはその後の生活に大きな影響が生じてしまいます。

足の関節の可動域制限は、一定の要件を満たす場合に後遺障害等級の認定を受けられます。認定を受けられれば後遺障害慰謝料、逸失利益など特別な賠償金を受けとれるようになります。

ここでは足の関節、具体的には股関節、膝の関節、足首の関節についてそれぞれどのような症状で何級に該当し得るのか、その具体的な基準を解説していきます。

【症状の程度別】下肢(股関節・膝・足首)の機能障害、可動域制限の等級一覧

下肢の用を全廃したもの|3つの関節すべてが強直

等級認定の基準
1級6号両下肢の用を全廃したもの
5級7号1下肢の用を全廃したもの
下肢の用を全廃したものの後遺障害等級

「下肢の用を全廃したもの」というのは、股関節、膝関節、足首の関節の全てが強直したものを言います。

強直というのは関節が完全に動かないか、動いてもその可動域が健康なものと比べ10%以下に制限されている状態を指します。

また股関節、膝関節、足首の関節の他、足指の関節が動かなくなった場合についても、基本的に等級が上がったりすることは無く「下肢の用を全廃したもの」の中に含まれるとされています。

2本の足それぞれの股関節、膝関節、足首の関節が強直した場合には1級、どちらか1本の足について股関節、膝関節、足首の関節が強直した場合には5級が認定されます。

下肢の用を廃したもの|強直、麻痺、人工骨頭置換による可動域制限

等級認定の基準
6級7号1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
関節の用を廃したものの後遺障害等級

「関節の用を廃したもの」というのは、具体的には以下のいずれかに該当するものを指します。

  • 関節が強直したもの
  • 関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの
  • 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健康な方と比較して1/2以下に制限されているもの

「関節の完全弛緩性麻痺」というのは、他人に動かしてもらえば動くものの、自分の力で自発的に動かすことはできない状態のことを言います。また自分で動かせる角度が健康な方と比較して10%以下の場合、「これに近い状態にあるもの」として評価されます。

関節の機能に著しい障害を残すもの|可動域制限、人工骨頭置換

等級認定の基準
10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
関節の機能に著しい障害を残すものの後遺障害等級

「関節の機能に著しい障害を残すもの」というのは、具体的には以下のいずれかに該当するものを指します。

  • 関節の可動域が健康な方と比較して1/2以下に制限されているもの
  • 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健康な方と比較して1/2以下に制限されているわけではないもの

関節の機能に障害を残すもの|より軽度の可動域制限

等級認定の基準
12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
関節の機能に障害を残すものの後遺障害等級

「関節の機能に障害を残すもの」というのは、関節の可動域が健康な方と比較して3/4以下に制限されているものを指します。

「人工関節・人工骨頭の挿入置換の有無」「可動域制限が1/2以下か3/4以下か」のふたつの要素によって「著しい機能障害」なのか単なる「機能障害」なのかが区別されているわけです。

等級表に載っていない症状は何級になる?

これら等級表には載っていない症状をお持ちの方もいるかもしれません。

例えば、股関節、膝関節、足首の関節のすべての機能に著しい障害が残った場合、上記の等級表には具体的な等級が設定されておらず等級認定が困難になります。

このようなとき、交通事故の実務では併合や準用、あるいはそれらを行わずに下位の等級のままとするなど、症状に応じて色々な対応が取られることになります。

上記の例で言えば、「股関節、膝関節、足首の関節すべての機能に著しい障害が残った場合」は8級相当として取り扱われます。
またこれが著しい機能障害ではなく、単なる機能障害であった場合には10級に準じるものとして扱われます。

個別具体的な話になってしまうので、ご自身の症状について後遺障害何級になるか疑問の方は弁護士に相談してください。

また足指の強直や可動域の制限といった機能障害については『交通事故による足指の障害について解説|欠損障害、機能障害の後遺障害認定基準とは?』の記事をご覧ください。

股関節・膝・足首の可動域の測定方法とは?

股関節の可動域の測定方法

下肢の機能障害では、関節の可動域がどれくらい減じたかというのが一つの大きな指標になります。

可動域の計測方法はあらかじめ厳密に定められているので、各関節ごとの測定方法をここで確認していきましょう。

まず股関節については、原則的に「屈曲・伸展」「外転・内転」の動きについて計測することになっています。

股関節の屈曲・伸展

屈曲は仰向けに寝転んだ状態で、膝を抱えるように足を持ち上げ折りたたむ動き

伸展はうつぶせに寝転んだ状態で、足を伸ばしたまま後ろに持ち上げる動き

股関節の外転・内転

外転は仰向けに寝転んだ状態で、足まっすぐ伸ばしたままを横に開く動き

内転は仰向けに寝転んだ状態で、反対の足を持ち上げたうえでその下をくぐらせるように足を内側に入れる動き

股関節は原則としてこの2つの運動を測定することになっています。

ただし測定した結果、可動域制限の程度が1/2、1/4をわずかに(10度程度)上回るような場合には、「外旋・内旋」の動きについても測定し、補助的に等級認定の参考にするとされています。

股関節の外旋・内旋

外旋は仰向けに寝転んだ状態で大腿部が地面と垂直になるように、下腿部が地面と平行になるように足を持ち上げ、そのまま足先が外側に向くように回す動き

内旋は同じ姿勢で足先が内側に向くように回す動き

膝関節の可動域の測定方法

膝関節の可動域については「屈曲・伸展」の動きを計測することになっています。

膝関節の屈曲・伸展

屈曲はうつ伏せに寝転んだ状態で足をまっすぐ伸ばし、膝を曲げていく動き

伸展は上記の状態から膝をもとに戻していく動き

膝関節の可動域の測定はこの「屈曲・伸展」のみによって判断されます。たとえ認定の有無が微妙な場合であっても、他の可動域を参考として測定するといったことはありません。

足首の関節の可動域の測定方法

足首の関節の可動域については「屈曲・伸展」の動きを計測することになっています。

足首の関節の「屈曲・伸展」

屈曲は仰向けに寝転んだ状態で足首を地面と垂直になるように立てて、足先を頭の方へ向けるように曲げる動き

伸展は同じ状態で足先を頭から離すように曲げる動き

足首の関節の可動域についても、この「屈曲・伸展」のみによって判断されることになります。認定の有無が微妙な場合であっても、他の可動域を参考として測定することはありません。

後遺障害慰謝料の等級ごとの相場とは?

後遺障害等級に認定されると後遺障害慰謝料や逸失利益といった特別な賠償金を獲得することができます。

後遺障害慰謝料は後遺障害が残ったということに対する精神的な苦痛への賠償金であり、等級ごとに相場が定められています。

等級 相場(万円)
1級・要介護2,800
2級・要介護2,370
1級2,800
2級2,370
3級1,990
4級1,670
5級1,400
6級1,180
7級1,000
8級830
9級690
10級550
11級420
12級290
13級180
14級110
後遺障害慰謝料の相場(弁護士基準)

また逸失利益は後遺障害が残ったことによって将来にわたって減額されてしまった給料等への賠償金です。
ただし、下肢の後遺障害については「労働能力がどれくらい減じたか」という点について被害者の方に不利な判断が行われてしまうケースも珍しくありません。
例えばデスクワークを主とする仕事に就いていた場合、下肢の障害による仕事への影響は少ないと判断され、相場よりも低い労働喪失率が認定される場合があります。

下肢の障害については、任意保険会社との交渉に際し請求する金額の客観的な根拠や障害によって負った損害を法的根拠に基づき丁寧に提示する必要があります。
この点、下肢の機能障害についてお悩みの方はなるべく早く弁護士に相談したほうがいいでしょう。

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