交通事故による顔の傷の後遺障害等級や慰謝料は?症状固定など注意点も解説

交通事故で顔に傷(瘢痕・線状痕・陥没)が残った場合、実務では外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)として後遺障害7級12号、9級16号、12級14号に認定される可能性があります。

後遺障害が認定されれば、治療費や休業損害等の他に、等級に応じて後遺障害慰謝料・逸失利益が請求できるようになります。
たとえば、弁護士基準(過去の裁判による適切な相場)の後遺障害慰謝料は、7級で1000万円、9級で690万円、12級で290万円です。
交通事故による顔の傷では、事故相手の自賠責保険・任意保険のほか、ご自身の傷害保険、通勤中・仕事中なら労災保険等に保険金を請求できます。
事故後、すみやかに形成外科などで治療を開始し、症状固定(これ以上よくならない状態)をむかえたら後遺障害の申請をしましょう。
本記事では、交通事故による顔の傷跡について、後遺障害等級の認定基準や、受け取れる慰謝料の相場などを紹介します。
また、手足などの傷跡、顔のその他の障害についてもあわせて解説しますので、ぜひご参考ください。
目次
交通事故の顔の傷で請求できる慰謝料・賠償金
交通事故で顔の傷跡が残った場合、慰謝料・損害賠償金として相手方に請求できるお金は以下のとおりです。
顔の傷の請求(自賠責・任意保険含む)

- 治療中の損害
- 治療費
- 休業損害
- 入通院慰謝料 など
- 症状固定後(後遺障害が認定された場合)
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
- 事故で物損がある場合
- 車の修理費 など
まずは、慰謝料と逸失利益の相場や計算方法、請求する際の注意点を見ていきましょう。
顔の傷の入通院慰謝料(治療中の慰謝料)
入通院慰謝料は、交通事故による入通院で生じる精神的苦痛を補償するものです。

入通院慰謝料の相場額(弁護士基準)は、所定の算定表を用いて計算します。
算定表は2種類ありますが、基本的に重傷用の表を用い、打撲やすり傷などの軽傷の場合は軽傷用の表を用いてください。
弁護士基準の算定表(重傷用)

弁護士基準の算定表(軽傷用)

入院月数と通院月数の交差する箇所の数値が入通院慰謝料の相場です。
たとえば、顔の傷跡が重傷で、1か月入院・6か月通院した場合、入通院慰謝料の相場は149万円となります。
入院月数と通院月数はいずれも暦に関係なく「1月=30日」となります。30日で割り切れない場合は日割計算を行いますが、やや計算が複雑になるので、以下の慰謝料計算機もご活用ください。
交通事故の慰謝料についてより詳しく知りたい方は、『交通事故の慰謝料|相場や計算方法を知って損せず増額』の記事もご参考ください。
慰謝料の弁護士基準とは?
慰謝料の弁護士基準とは、裁判で用いる法的にみて妥当な水準の支払い基準のことです。
慰謝料には弁護士基準のほかに、自賠責基準(自賠責保険の支払い基準)や、任意保険基準(任意保険会社ごとの独自の算定基準)があります。
通常、弁護士基準で計算する慰謝料が、もっとも高額で妥当な相場となります。
顔の傷の入通院慰謝料を自賠責基準で計算した場合
自賠責基準では、入通院慰謝料は「日額4300円×対象日数」で算定されます。
対象日数は、治療期間(事故日~完治・症状固定した日)または、入通院した日数の2倍のうち、いずれか少ない方の日数となります。
詳しく知りたい方は、『交通事故の慰謝料は通院1日いくら?8600円より増額する方法と通院6ヶ月の相場』の記事もあわせてご覧ください。
顔の傷の後遺障害慰謝料(後遺障害の慰謝料)
後遺障害慰謝料は、後遺障害を負って生きていく辛さに対して支払われる賠償金のことです。

交通事故による顔の傷跡が、治療をしても治らなかった場合に、後遺障害等級が認定されたら後遺障害慰謝料を請求することができます。
後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級によって金額が決まります。
等級ごとの後遺障害慰謝料の相場は、以下のとおりです。
後遺障害慰謝料の相場
| 等級 | 自賠責保険 | 弁護士基準 (裁判の相場) |
|---|---|---|
| 1級・要介護 | 1,650(1,600) | 2,800 |
| 2級・要介護 | 1,203(1,163) | 2,370 |
| 1級 | 1,150(1,100) | 2,800 |
| 2級 | 998(958) | 2,370 |
| 3級 | 861(829) | 1,990 |
| 4級 | 737(712) | 1,670 |
| 5級 | 618(599) | 1,400 |
| 6級 | 512(498) | 1,180 |
| 7級 | 419(409) | 1,000 |
| 8級 | 331(324) | 830 |
| 9級 | 249(245) | 690 |
| 10級 | 190(187) | 550 |
| 11級 | 136(135) | 420 |
| 12級 | 94(93) | 290 |
| 13級 | 57(57) | 180 |
| 14級 | 32(32) | 110 |
※単位:万円
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合
顔の傷跡で認定されうる後遺障害等級は、7級、9級、12級です。
弁護士基準の後遺障害慰謝料相場は、290万円~1,000万円となります。
具体的な認定基準については、本記事内「顔の傷で認定される後遺障害等級と認定基準」で解説していますので、このまま読み進めていってください。
顔の傷の後遺障害慰謝料相場(弁護士基準)
- 7級:1,000万円
- 9級:690万円
- 12級:290万円
なお、顔の傷跡が残るようなケガをした場合、目・耳・鼻・口などにも障害が残ることがあります。
これらの障害についても後遺障害認定を受けた場合、「併合」によって後遺障害等級が繰り上がり、より多額の後遺障害慰謝料を請求できる可能性もあるでしょう。
顔の傷の逸失利益(将来の収入減少)
逸失利益とは、後遺障害が原因で労働能力が失われたため減った将来的な収入のことです。
このような将来の減収分についても、相手方(自賠責保険・任意保険含む)に請求可能です。

逸失利益の計算式
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
- 基礎収入
事故にあう前の年収のこと。
専業主婦や学生などは賃金センサスを用いる。 - 労働能力喪失率
後遺障害によって失われた労働能力を示す数値。
後遺障害等級ごとにおおよその目安が決まっている。 - 労働能力喪失期間
労働能力が失われた期間のこと。基本的に「症状固定時~67歳」の期間となる。 - ライプニッツ係数
逸失利益を預金・運用して生じる利息を差し引くための数値。
なお、被害者の年齢や属性によっては上記と異なる計算方法となることもあります。
逸失利益の基本的な計算方法については、『交通事故の逸失利益は?計算式や早見表・計算機で解説【職業別の計算も】』の記事をご覧ください。
顔の傷の逸失利益の注意点
顔の傷の賠償請求で、もっとも保険会社と揉めるのが逸失利益です。
「顔の傷は働くのに支障がない」と主張され、保険会社から「労働能力の喪失」を低く見積もられる傾向があります。
労働能力喪失率(相場)
- 7級:56%
- 9級:35%
- 12級:14%
しかし、対人関係が重要な職業や、将来転職する場合に顔の傷が障がいとなる可能性は否めません。保険会社からの提示額が少ない場合、このようなことを反論して、増額交渉をする必要があるでしょう。
詳しくは本記事内「顔の傷は逸失利益で揉めやすい!請求のポイント」で解説しています。
顔の傷の治療費・休業損害などその他の項目
交通事故で顔の傷跡を負った場合、他にも以下のような費目を相手方に請求できます。
請求できる主な費目
| 治療費 | ケガの治療費(診察、検査、手術代、薬局代など) (関連記事:交通事故の治療費は誰が支払う?) |
| 休業損害 | 事故の影響で仕事を休んだことによる減収の補償 (関連記事:交通事故の休業損害) |
| 通院交通費 | ケガの通院にかかった交通費 (関連記事:交通事故の通院交通費) |
| 車の修理費 | 事故車の修理費用 (関連記事:物損事故の示談の流れと示談金相場|交渉時の注意点) |
それぞれの費目の計算方法については、表中で紹介している関連記事で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
顔の傷で認定される後遺障害等級と認定基準
人目につく顔の傷が認定される?認定基準一覧表
顔の傷跡は「外貌醜状」として、後遺障害認定7級12号、9級16号、12級14号に認定される可能性があります。各等級の認定基準は、次の通りです。
外貌醜状の後遺障害認定基準
| 等級 | 認定基準 |
|---|---|
| 7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
| 9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
| 12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
顔の傷跡の醜状障害は、いずれの等級についても「人目につく程度以上のもの」であることが必要です。
つまり、顔に傷痕があっても、眉毛、頭髪等にかくれる部分については、醜状として評価されません。
また、顔に複数の傷跡がある場合、傷跡の位置関係によっては、合算して等級認定される可能性があります。これについては本記事内「顔の傷が複数ある場合│面積の合算もありうる」で詳しく説明します。
交通事故の後遺障害認定についてより詳しく知りたい方は、『後遺障害等級が認定されるには?後遺症との違いや認定の仕組みを解説』の記事をご参考ください。
7級|鶏卵以上の瘢痕・10円玉以上の組織陥没
後遺障害7級12号(外貌に著しい醜状を残すもの)は、以下のいずれかに該当し、かつ「人目につく程度以上のもの」をいいます。
7級12号の認定基準
- 顔面(以下のいずれかに該当)
- ニワトリの卵の大きさ以上の瘢痕
- 10円玉の大きさ以上の組織陥没
- 頭部
- 手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕
- 手のひら大(指の部分は含まない)以上の頭蓋骨の欠損
- 頚部
- 手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕
「瘢痕」とは?
瘢痕(はんこん)とは、やけどや外傷・潰傷などの治ったあとにできる傷跡や、組織の欠損部に増殖した肉芽組織が古くなって繊維化したものをいいます。
9級|5cm以上の線状痕
後遺障害9級16号(外貌に相当程度の醜状を残すもの)の認定基準は、以下のとおりです。
9級16号の認定基準
- 顔面
- 5cm以上の線状痕で、人目につく程度のもの
12級|10円玉以上の瘢痕・3cm以上の線状痕
後遺障害12級14号(外貌に醜状を残すもの)の認定基準は、以下に該当し、かつ「人目につく程度以上のもの」となります。
12級14号の認定基準
- 顔面
- 10円玉の大きさ以上の瘢痕
- 3cm以上の線状痕
- 頭部
- ニワトリの卵の大きさ以上の瘢痕
- ニワトリの卵の大きさ以上の頭蓋骨の欠損
- 頚部
- ニワトリの卵の大きさ以上の瘢痕
女性と男性で顔の傷の認定基準は変わる?
2011年以前は男女によって等級の認定基準に差がありましたが、現在は性別に関係なく同一の基準が用いられています。
| 改正前 | 改正後 (現行法) | |
|---|---|---|
| 7級 | 女子の外貌に著しい醜状を残すもの | 外貌に著しい醜状を残すもの |
| 9級 | ー | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
| 12級 | 男子の外貌に著しい醜状を残すもの 女子の外貌に醜状を残すもの | 外貌に醜状を残すもの |
| 14級 | 男子の外貌に醜状を残すもの | ー |
顔の傷が複数ある場合・顔の傷以外もある場合
交通事故では、以下のような形で複数の傷跡や後遺症が残ることがあります。
- 同じ部位に隣接して複数の傷跡が残る
- 顔の傷以外にも外貌醜状や後遺障害が残る
顔の傷が複数ある場合│面積の合算もありうる
顔・頭部・首の外貌醜状については、複数の傷跡が隣接していて一見すると1個の傷跡と同程度以上の大きさに見える場合、それらの傷跡の面積や長さなどを合算して後遺障害認定を受けることになります。
なお、手足の醜状障害についても同じように面積を合算して認定を受けられますが、少なくとも手のひら大以上の傷跡が1個以上残っている必要があります。
複数の傷跡を合計して後遺障害認定を受けたい場合、写真を添付する、合計するとどれくらいの面積になるか医師に意見書を書いてもらうといった工夫をすれば、より希望の等級に認定されやすくなるでしょう。
顔の傷以外もある場合│等級の併合
傷跡以外にも後遺障害があり、複数の後遺障害等級が認定された場合、それらを併合した等級を基準に、後遺障害慰謝料などが算定されます。
併合の基本ルールは次の通りです。
基本の併合ルール
- 5級以上が2つ以上あるなら、重い方の等級を3級繰り上げる
- 8級以上が2つ以上あるなら、重い方の等級を2級繰り上げる
- 13級以上が2つ以上あるなら、重い方の等級を1級繰り上げる
- 14級が2つ以上あるなら、14級のまま
- その他の場合、重い方の等級に従う

顔の傷に伴う後遺障害|咀嚼・言語・嗅覚・視覚・神経麻痺など
顔の傷跡とともに残りやすい、「顔面神経麻痺による外貌醜状」「顔面骨折」「顔以外の部位の後遺障害等級」についても紹介します。
- 顔面麻痺による外貌醜状
後遺障害12級14号 - 顔面骨折
- 変形・外貌醜状
7級12号、9級16号、12級14号 - 鼻の欠損障害
9級5号 - 嗅覚障害
- 12級相当:鼻の欠損はないが、鼻呼吸困難や嗅覚脱失を残すもの
- 14級相当:鼻の欠損はないが、嗅覚の減退を残すもの
- 耳殻の欠損障害
- 耳殻軟骨部の1/2以上の欠損:「耳殻を欠損したもの」または「外貌の醜状障害等」のいずれか上位の等級を認定。
- 耳殻軟骨部の1/2以下の欠損:「外貌に醜状を残すもの」と認められる場合は、醜状障害として等級を認定。
- 変形・外貌醜状
- 神経障害
12級13号・14級9号 - 眼球の運動障害
10級2号・13級2号 - 咀嚼機能障害・言語機能障害
1級2号・3級2号・4級2号・6級2号・9級6号・10級3号・12級相当
関連記事
腕や足の傷の後遺障害
交通事故による傷痕について、顔・頭・首の以外の部位では、自賠責調査事務所では以下のように認定されます。
- 腕・足の露出面の傷
- 14級4号
上肢の露出面(肩関節以下。手部を含む)に、てのひらの大きさの醜いあと(瘢痕、または線条痕)を残すもの - 14級5号
下肢の露出面(股関節以下。足背部を含む)に、てのひらの大きさの醜いあと(瘢痕、または線条痕)を残すもの - 12級相当
両上肢または両下肢の露出面の1/2程度以上に醜状を残すもの
- 14級4号
- 腕・足の露出面以外、胸部・腹部・背部・臀部の傷
- 12級相当
- 両上腕または両大腿のほとんど全域
- 胸部または腹部は各々の全域
- 背部および臀部はその全面積の1/2程度をこえるもの
- 14級相当
- 上腕または大腿はほとんど全域
- 胸部または腹部はそれぞれ各部の1/2程度
- 背部および臀部はその全面積の1/4程度をこえるもの
- 12級相当
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バイク事故は顔の傷以外も残りやすい?
バイクは身体が外に露出しているため、転倒や衝突の衝撃を直接受けやすく、顔の傷だけでなくさまざまなケガにつながりがちです。
その結果、顔に複数の傷跡が残るだけでなく、今まで見てきた咀嚼・言語機能や嗅覚・視覚、神経などの後遺障害や、手足・胴体へのダメージが残るケースも少なくありません。
バイク事故で生じる後遺症の種類や、認定される後遺障害等級については、『バイク事故の怪我で後遺症が残ったら?後遺障害認定基準から慰謝料まで解説』の記事で詳しく解説しています。
顔の傷で後遺障害認定は「症状固定」と「審査対策」に注意
交通事故で顔の傷跡を負ったとき、必ずしも想定どおりの後遺障害等級に認定されるとは限りません。状況によっては想定より低い等級に認定されたり、非該当になったりする可能性があるのです。
ここからは、顔の傷跡で適切な後遺障害認定を受けるためのポイントを解説していきます。
症状固定は原則として、6カ月以上治療してから
顔の傷跡で後遺障害認定を受けるためには、基本的に治療開始から症状固定まで6か月以上の治療期間が必要です。
症状固定とは?
これ以上治療してもケガが改善しない状態のこと。つまり、後遺症が残ったと判断されること。

交通事故で顔の傷跡が残り、治療しても完全に治らなかった場合、症状固定の診断を受けてから後遺障害認定の申請をすることになります。
治療開始から症状固定までが6カ月未満だと、「もっと長く治療をしていれば、傷跡が目立たないくらい治っていたのでは?」と後遺障害認定の審査機関に疑われる恐れがあるのです。
医師とも相談しつつ、基本的には6カ月以上治療したうえで、後遺障害等級の認定を受けましょう。
症状固定について詳しくは、関連記事『症状固定とは?時期や症状固定と言われたらすべき後遺障害認定と示談』で解説しています。
保険会社から症状固定を催促されても従わないよう注意
治療の途中で加害者側の保険会社から「そろそろ症状固定です。これ以上の治療費は補償しません。」と連絡を受けても、従う必要はありません。
不適切なタイミングで治療を終えると後遺障害認定されにくくなります。
症状固定のタイミングについては、医師に判断してもらいましょう。
保険会社から症状固定を催促された場合は、以下のように対応してください。
- 医師から治療の必要があると判断されていることを伝えて、治療費支払いの継続を交渉する
- 治療費の支払いが打ち切られてしまった場合は、治療費を被害者自身で一旦負担し、示談交渉時に加害者側に請求する
一時的に治療費を立て替える場合は、健康保険を利用することで負担軽減が可能です。
治療費負担の打ち切りに対する対応や、打ち切られた場合にすべきことは『交通事故で治療費打ち切りの連絡が保険会社から来た!阻止するための対応方法』の記事で詳しく知ることができます。
書類審査・面接審査の具体的な対策方法
症状固定と診断されたら、後遺障害認定の申請を行うことになります。後遺障害認定は原則として書類審査ですが、顔の傷に関しては面接審査も行われることがあります。
それぞれの具体的な対策方法を見ていきましょう。
書類審査の対策方法
顔の傷跡で適切な後遺障害等級に認定されるためには、申請書類で傷跡の大きさや程度を示し、認定基準に該当していることをアピールする必要があります。
申請書類のうち、とくに重要視されるのが医師の作成する「後遺障害診断書」です。医師に後遺障害診断書の作成を依頼する際は、以下の点を意識するとよいでしょう。
- 傷跡の大きさや、将来的な改善が期待できないことを明確に記載してもらう
- 「交通事故受傷後の傷痕等に関する所見」という、醜状障害について詳しく記載できる書式を使ってもらう
- 実際の傷跡の写真を貼付する、複数の傷跡の大きさの合計値を医師の意見書に記載してもらう
医師は医療の専門家であっても後遺障害認定には詳しくないことがあります。
よって、後遺障害診断書の作成にあたっては事前に打ち合わせしたり、出来上がったものを被害者側でも確認したりすることが大切です。
後遺障害診断書の書き方・もらい方については、『後遺障害診断書の書き方や書式のもらい方は?自覚症状の伝え方や認定のポイント』の記事が参考になります。
面接審査の対策方法
後遺障害認定は書面審査が原則となりますが、醜状障害については審査機関における面接審査が実施されることもあります。
面接審査では、担当者に傷跡の形状を確認されたり、長さを図られたりすることになるでしょう。
書類だけでは伝わりにくそうな点を洗い出し、面接時に直接審査員に伝えられるようにしておくことがポイントです。
ただし、担当者の主観によって認定の可否を判断されるケースもあります。
事前に弁護士に相談し、気を付けるべき点や説明方法などのアドバイスをもらったり、面接に同行してもらったりすることも検討してみましょう。
アトム法律事務所では電話・LINEによる弁護士相談を実施しています。無料で相談できるので、面接対策に不安がある方は気軽にお問い合わせください。
後遺障害の申請方法は2種類
後遺障害認定の申請方法には「被害者請求」と「事前認定」があります。
| 被害者請求 | 事前認定 | |
|---|---|---|
| 内容 | 被害者が自ら申請する方法 | 相手方の任意保険を通じて申請する方法 |
| 申請書類の準備 | 被害者側 | 加害者の任意保険 |
| 資料の任意提出 | できる | できない |
| 自賠責保険金 | 示談の前に受領できる | 示談の後に受領することになる |
事前認定は申請書類全般を、相手方の任意保険会社が準備してくれるため、手間が省けます。
ただし、事前認定の場合、有利な資料の任意提出はできず、後遺障害等級が認定された場合でも自賠責保険金の受領は、示談の後になります。
そのため、医師の意見書や自身の陳述書等を添付したい場合、自賠責保険金を示談の前に取得したい場合などは、被害者請求を選択する必要があります。
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顔の傷は逸失利益で揉めやすい!請求のポイント
顔の傷跡で後遺障害等級が認定された場合、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求できるようになります。
ただし、逸失利益は顔の傷跡では請求が認められないことがあります。
逸失利益は「後遺障害による労働能力の低下で減ってしまう、生涯収入の補償」ですが、顔の傷は労働能力の低下にはつながらないと判断されやすいからです。
どうすれば顔の傷の後遺障害で逸失利益の請求が認められるのか、ポイントを解説します。
顔の傷による労働能力の低下を証明する
交通事故により、顔の傷跡が残った場合には、顔の傷跡が原因で労働能力が喪失していることを明らかにすることで、逸失利益が認められる可能性があります。
具体的には、以下のような主張を行うこととなるでしょう。
- 顔の傷跡が就労に影響を与えるものであること
- 被害者が学生や子どもの場合は、将来の生活や就労に影響があること
顔の傷跡が就労に影響することを主張する
顔の傷跡であっても、就労に影響があり、労働能力が喪失することを明らかにできれば、逸失利益を認めてもらえる可能性があります。
特に、営業や接客といった日常的に他人と接する機会の多い仕事についている場合、逸失利益を認めてもらいやすくなります。実際の判例を紹介します。
判例(1)
介護従事者(女・固定時45歳)の眉間の人目につく3cm以上の線状痕(12級14号)、頸項部痛、胸背部痛及び腰痛(14級9号、併合12級)につき、介護の仕事は日常的に他人と接し、円満な人間関係の形成等が必要とされること、年齢に照らし今後転職する可能性も否定できないこと等から、外貌醜状が労働能力に影響をもたらすとして、22年間10%の労働能力喪失を認めた。
(事故日平24.3.28 横浜地判平26.1.30 交民47・1・195)
顔の傷跡を隠すことが難しいことから精神的苦痛を感じ、対人関係が消極的になってしまい、以前のように仕事ができず成果が上がらないといった事実を、具体的なエピソードを交えて主張すると効果的でしょう。
将来の就業に関する不利益について主張する
被害者が学生や子どもであり実際に働いていない場合は、将来に与える影響を主張して逸失利益が認められた例もあります。
実際の判例の判断は以下の通りです。
判例(2)
小学生(女・固定時12歳)の顔面線状痕・陥没痕(12級15号)につき、今後の職業の選択・就業等において不利益な扱いを受ける蓋然性は否定できず、線状痕を気にして消極的になる可能性も考慮し、賃セ全労働者全年齢平均を基礎に、49年間5%の労働能力喪失を認めた。
(名古屋地判平24.11.27 自保ジ1890・38)
顔の傷が残ったことで、対人関係が重要となる職業に就くことが難しくなったという点を主張すると良いといえるでしょう。
顔の傷を理由に慰謝料増額を求める手もある
実際に顔の傷跡が就労に影響しない職種や専業主婦の場合、逸失利益の代わりに慰謝料の増額を認めてもらうという選択肢もあります。
実際に慰謝料の増額が認められた判例は以下のとおりです。
判例(3)
顔面醜状(9級16号)の会社員(男・固定時37歳)につき、外貌醜状について逸失利益を認めないことを考慮し900万円の慰謝料を認めた。
(事故日平24.4.18 大阪地判平27.7.17 自保ジ1956・60)
判例(4)
顔面醜状(7級)の専業主婦(30歳)につき、家事能力が本件後遺症によって現実に低下したとは認められないと逸失利益を否定したが、これを斟酌して1200万円の慰謝料を認めた。
(事故日平3.4.30 仙台地判平7.2.6 自保ジ1098・2)
ただし、「逸失利益の代わりに他の慰謝料を増額すべき根拠は何か」「具体的にどれくらい慰謝料を増額させるのが妥当なのか」などについて、加害者側と揉める可能性があります。明確な決まりがあるわけではなく、被害者自身での判断は難しいことが多いため、一度弁護士までご相談ください。
【事例】顔の傷で適切な後遺障害認定・慰謝料請求をする方法
こちらでは、過去にアトム法律事務所の弁護士が解決した交通事故のうち、顔の傷が問題になった事例をご紹介します。
バイク事故で顔の傷で11級認定│約983万円回収
被害者の方(バイク)が、コンビニから出てきた自動車と衝突した事故の事例です。
バイク運転中に駐車場から出てきた自動車と衝突した事例
被害者は脳挫傷、鼻の下の切り傷などを負い、顔に傷が残った。後遺障害等級の認定を受けることで、適切な賠償金を得ることに成功したケース。
弁護活動の成果
983万円の損害賠償金を得ることに成功した。
年齢、職業
40~50代、会社員
傷病名
脳挫傷、外傷性くも膜下出血、顔の傷
後遺障害等級
11級
事故から約半年で症状固定となり、後遺障害認定、示談交渉を経て、983万円を獲得しました。
顔の傷で後遺障害12級14号認定│約483万円増額
こちらの交通事故は、加害者の任意保険会社から示談金額の提示を受けた後に、アトム法律事務所にご依頼いただいた事例です。
交通事故で顔に傷を負い12級14号認定を受けた事例
被害者は自動車同士の事故で前額部裂創を負い、3㎝程度の傷が残った。弁護士の受任後に後遺障害等級認定を受けることで、慰謝料などの金額に増額に成功したケース。
弁護活動の成果
提示額の約25万円から、最終的な受取金額が約509万円まで増額された(約483万円の増額)。
年齢、職業
20~30代、主婦・主夫
傷病名
前額部裂創
後遺障害等級
12級14号
当初、後遺障害認定を受けない状態で約25万円を提示されていましたが、ご依頼後に後遺障害12級14号の認定を受けて、約509万円を獲得しました。
交通事故で顔の傷が残ったら弁護士に相談を
交通事故を弁護士に相談するメリット
交通事故で顔の傷を負った場合、以下の点から弁護士に相談・依頼するのがベストだといえます。
- 過去の事例や専門知識をもとに、適切な後遺障害認定対策ができる
- 逸失利益の請求を否定されても、効果的に交渉ができる
- 加害者側が提示してくる慰謝料・賠償金の増額が期待できる
同じ顔の傷といっても、程度や具体的な部位、仕事への影響度は個々により異なります。そのため、具体的な対応も個別ケースに合わせて柔軟に考える必要があります。
弁護士なら、過去の経験や判例、法的知識などに基づき、適切な対応ができるため、後遺障害認定や逸失利益の請求においてより良い結果を目指せるでしょう。
また、本記事で紹介した慰謝料相場は「弁護士基準」という過去の判例に基づいたものですが、加害者側の任意保険会社は「任意保険基準」「自賠責基準」と呼ばれる低い金額を提示してきます。
示談交渉時点で提示額を弁護士基準近くまで引き上げるには、弁護士を立てることが必須といっても過言ではありません。
交通事故の慰謝料の算定基準
- 3つの慰謝料基準がある
自賠責保険会社が用いる「自賠責基準」
任意保険会社が用いる「任意保険基準」
弁護士や裁判所が用いる「弁護士基準」 - 慰謝料額は基本的に「自賠責基準≦任意保険基準<弁護士基準」となる。

たとえば、顔の傷跡で後遺障害7級に認定された場合、自賠責基準の相場は419万円、弁護士基準の相場は1,000万円と、約2.4倍もの金額差があるのです。
弁護士に依頼して示談を行ってもらうことで、保険会社から適切な金額の示談金(保険金)の支払いを受けることができるでしょう。
交通事故の弁護士費用の負担は軽減できる
弁護士に依頼する際に弁護士費用が不安になる方も多いですが、後遺障害認定を受けたような事案では、実は弁護士費用についてはあまり心配いりません。
まず、弁護士費用は「弁護士費用特約」を使うことで保険会社に負担してもらえます。弁護士費用の合計300万円、相談料の合計10万円までを負担してもらえるので、被害者の自己負担は0円となることが多いです。
弁護士費用特約は、被害者自身の自動車保険だけではなく、火災保険やクレジットカード、被害者の家族が加入している保険に付帯されていても使える可能性があります。
弁護士費用特約について詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士特約とは?使い方・使ってみた感想やデメリットはあるかを解説』の記事をご覧ください。

弁護士費用特約が使えない場合も、すぐにあきらめるのは勿体ないと言えます。
なぜなら、後遺障害認定を受けているなら示談金の増額幅が大きく、弁護士費用を差し引いても弁護士に依頼した方が最終的に手元に入る金額が増えることが多いからです。
まずは無料相談を利用し、示談金の増額幅と弁護士費用の見積もりをとってみるとよいでしょう。
示談が成立してしまうと、あとから撤回・再交渉することは基本的にできません。
示談に合意する前に一度見積もりをとり、このまま示談してよいのか検討することが大切です。
交通事故の無料相談ご予約受付中
アトム法律事務所では、交通事故被害者の方を対象とした無料の法律相談を行っています。
顔の傷跡は後遺障害の認定について争いになりやすい後遺症のひとつです。
被害者の方が適切な補償を受け取るためには、入念な準備と法知識、相手方の任意保険会社に対する適切な対応が必要になるので、弁護士に相談して適切なアドバイスを受けるべきといえます。
「自分の傷跡のサイズで何級になるか確認したい」
「後遺障害申請の面接審査に不安がある」
「相手方の任意保険会社との交渉を任せたい」
交通事故による顔の傷跡に関して、このようなお悩みはある方は、アトム法律事務所の無料相談をご利用ください。
アトム法律事務所では、電話・LINEで弁護士に相談することができます。
弁護士事務所までお越しいただかなくとも自宅から弁護士のアドバイスを受けられるので、手軽にご利用いただくことが可能です。
相談予約は24時間365日受け付けています。まずは気軽にお問い合わせください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

