交通事故による顔の傷跡(外貌醜状)の後遺障害認定
交通事故の被害にあったとき、顔に傷跡が残り、その後の生活に大きな影響が生じてしまうことがあります。
顔、頭、首などに残った傷跡のことを、交通事故の実務では「外貌醜状」と言います。外貌醜状は程度により後遺障害認定を受けられ、後遺障害慰謝料や逸失利益も請求することが可能です。
本記事では、交通事故による顔の傷跡でお悩みの方に向け、具体的な後遺障害等級の認定基準や、受け取れる慰謝料の相場などを紹介します。
また、手足などの傷跡、顔のその他の障害についてもあわせて解説しますので、ぜひご参考ください。
目次
交通事故で顔の傷跡が残ったら請求できるお金
交通事故で顔の傷跡が残った場合、損害賠償金として相手方に請求できるお金は以下のとおりです。
相手方に請求できるお金の内訳
- 顔の傷跡が後遺障害認定を受けたら請求できる費目
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
- 顔の傷跡の治療を受けたら請求できる費目
- 入通院慰謝料
- 休業損害
- 治療費 など
- その他
- 車の修理費 など
なお、後遺障害認定とは、交通事故の後遺症が法令で定められた「後遺障害等級」の基準に該当すると認められることを言います。
顔の傷跡で認定されうる後遺障害等級については、この記事内で後ほど詳しく解説します。
まずは、慰謝料と逸失利益の相場や計算方法、請求する際の注意点を見ていきましょう。
慰謝料|複数の相場がある
交通事故で顔の傷跡が残った場合、請求できる慰謝料には以下の2種類があります。
- 入通院慰謝料(交通事故でケガを負った精神的苦痛の補償)
- 後遺障害慰謝料(交通事故で後遺障害を負った精神的苦痛の補償)
入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の相場を見ていくにあたり、「交通事故の慰謝料には複数の相場がある」ことを前提知識として知っておきましょう。
交通事故の慰謝料には複数の算定基準があり、どの基準を用いるかによって計算方法や相場が変わるのです。
交通事故の慰謝料の算定基準
- 自賠責保険会社が用いる「自賠責基準」、任意保険会社が用いる「任意保険基準」、弁護士や裁判所が用いる「弁護士基準」の3種類がある。
- 慰謝料額は基本的に「自賠責基準≦任意保険基準<弁護士基準」となる。
以上を踏まえ、顔の傷跡の慰謝料額を確認していきましょう。
なお、任意保険基準は非公開なのでここでは割愛しますが、自賠責基準に少し上乗せした程度と考えてください。
交通事故の慰謝料についてより詳しく知りたい方は、『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』の記事もご参考ください。
顔の傷跡の入通院慰謝料
入通院慰謝料は、治療期間や日数によって金額が決まります。
自賠責基準と弁護士基準で計算方法が異なるので、詳しく確認していきましょう。
自賠責基準では、以下の計算式を用いて入通院慰謝料を計算します。
自賠責基準の計算式
日額4,300円×対象日数
対象日数は、以下のうちいずれか少ない方を採用する。
- 治療期間(初診~完治または症状固定まで)
- 実際の治療日数×2
※2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合、日額4,200円
一方、弁護士基準では、以下の算定表を用いて入通院慰謝料を計算します。
算定表は2種類ありますが、基本的に重傷用の表を用い、軽いすり傷などの軽傷の場合は軽傷用の表を用いてください。
入院月数と通院月数の交差する箇所の数値が入通院慰謝料の相場です。
たとえば、顔の傷跡が重傷で、1か月入院・6か月通院した場合、入通院慰謝料の相場は149万円となります。
入院月数と通院月数はいずれも暦に関係なく「1月=30日」となります。30日で割り切れない場合は日割計算を行いますが、やや計算が複雑になるので、以下の慰謝料計算機もご活用ください。
顔の傷跡の後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級によって金額が決まります。
顔の傷跡で認定されうる後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料の相場は、以下のとおりです。
等級 | 自賠責 | 弁護士 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650(1,600) | 2,800 |
2級・要介護 | 1,203(1,163) | 2,370 |
1級 | 1,150(1,100) | 2,800 |
2級 | 998(958) | 2,370 |
3級 | 861(829) | 1,990 |
4級 | 737(712) | 1,670 |
5級 | 618(599) | 1,400 |
6級 | 512(498) | 1,180 |
7級 | 419(409) | 1,000 |
8級 | 331(324) | 830 |
9級 | 249(245) | 690 |
10級 | 190(187) | 550 |
11級 | 136(135) | 420 |
12級 | 94(93) | 290 |
13級 | 57(57) | 180 |
14級 | 32(32) | 110 |
※単位:万円
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合
顔の傷跡で認定されうる後遺障害等級は、7級、9級、12級です。
よって、顔の傷跡による後遺障害慰謝料の相場は、弁護士基準で計算すると290万円~1,000万円となります。
なお、顔の傷跡が残るようなケガをした場合、目・耳・鼻・口などにも障害が残ることがあります。
これらの障害についても後遺障害認定を受けた場合、「併合」によって後遺障害等級が繰り上がり、より多額の後遺障害慰謝料を請求できる可能性もあるでしょう。
逸失利益|相手方と非常にもめやすい
逸失利益とは、後遺障害が原因で労働能力が失われたため減った将来的な収入の補償です。
顔の傷跡で後遺障害認定を受けた場合、逸失利益も相手方に請求できますが、支払いをめぐって非常にもめやすい傾向にあります。
その理由を知るために、まずは逸失利益の計算式を見てみましょう。
逸失利益の計算式
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
- 基礎収入
事故にあう前の年収のこと。
専業主婦や学生などは賃金センサスを用いる。 - 労働能力喪失率
後遺障害によって失われた労働能力を示す数値。
後遺障害等級ごとにおおよその目安が決まっている。 - 労働能力喪失期間
労働能力が失われた期間のこと。基本的に「症状固定時~67歳」の期間となる。 - ライプニッツ係数
逸失利益を預金・運用して生じる利息を差し引くための数値。
なお、被害者の年齢や属性によっては上記と異なる計算方法となることもあります。
逸失利益の詳しい計算方法は、『交通事故の逸失利益とは?計算方法を解説!早見表・計算機で相場も確認』の記事をご覧ください。
顔の傷跡の場合、労働能力の喪失の有無をめぐって争うことが多いでしょう。
たとえば、デスクワークの方が骨折して腕を動かせなくなると仕事に支障が出るため、後遺障害によって労働能力が減ったと認められやすいです。
一方、デスクワークの方の顔に傷跡が残った場合、労働能力が減ったか判断しづらいのではないでしょうか。
そのため、相手方の任意保険会社は「顔の傷跡による逸失利益は認められない」などと主張してくることが多いのです。
顔の傷跡で逸失利益を認めてもらうためには?
顔の傷跡であっても、就労に与える影響を示すことができれば、逸失利益を認めてもらえる可能性があります。
営業や接客といった日常的に他人と接する機会の多い仕事についている場合、逸失利益を認めてもらいやすいでしょう。実際の判例を紹介します。
判例(1)
介護従事者(女・固定時45歳)の眉間の人目につく3cm以上の線状痕(12級14号)、頸項部痛、胸背部痛及び腰痛(14級9号、併合12級)につき、介護の仕事は日常的に他人と接し、円満な人間関係の形成等が必要とされること、年齢に照らし今後転職する可能性も否定できないこと等から、外貌醜状が労働能力に影響をもたらすとして、22年間10%の労働能力喪失を認めた。
(事故日平24.3.28 横浜地判平26.1.30 交民47・1・195)
また、学生や子どもなど実際に働いていない場合も、将来に与える影響を主張して逸失利益が認められた例もあります。実際の判例を見てみましょう。
判例(2)
小学生(女・固定時12歳)の顔面線状痕・陥没痕(12級15号)につき、今後の職業の選択・就業等において不利益な扱いを受ける蓋然性は否定できず、線状痕を気にして消極的になる可能性も考慮し、賃セ全労働者全年齢平均を基礎に、49年間5%の労働能力喪失を認めた。
(名古屋地判平24.11.27 自保ジ1890・38)
実際に顔の傷跡が就労に影響しない職種や専業主婦の場合、逸失利益の代わりに慰謝料の増額を認めてもらうという選択肢もあります。実際に慰謝料の増額が認められた判例は以下のとおりです。
判例(3)
顔面醜状(9級16号)の会社員(男・固定時37歳)につき、外貌醜状について逸失利益を認めないことを考慮し900万円の慰謝料を認めた。
(事故日平24.4.18 大阪地判平27.7.17 自保ジ1956・60)
判例(4)
顔面醜状(7級)の専業主婦(30歳)につき、家事能力が本件後遺症によって現実に低下したとは認められないと逸失利益を否定したが、これを斟酌して1200万円の慰謝料を認めた。
(事故日平3.4.30 仙台地判平7.2.6 自保ジ1098・2)
しかしながら、いずれの主張をするにせよ、相手方の任意保険会社は「根拠に欠ける」などとして逸失利益の支払いや慰謝料の増額を認めない可能性が高いです。
もし、顔の傷跡に関する逸失利益について相手方の任意保険会社ともめているなら、法律の専門家である弁護士への依頼もご検討ください。
弁護士であれば、過去の判例や法的知識をもとに、相手方の任意保険会社と交渉していくことが可能です。
その他の費目|治療費・休業損害など
交通事故で顔の傷跡を負った場合、他にも以下のような費目を相手方に請求できます。
治療費 | ケガの治療にかかった費用 (関連記事:交通事故被害者の治療費は誰が支払う?) |
休業損害 | 事故の影響で仕事を休んだことによる減収の補償 (関連記事:交通事故の休業損害) |
車の修理費 | 事故車の修理費用 (関連記事:物損事故の示談の流れと示談金相場|交渉時の注意点) |
それぞれの費目の計算方法については、表中で紹介している関連記事で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
顔の傷跡が残ったら後遺障害認定を受けよう
前章で紹介した後遺障害慰謝料と逸失利益を請求するには、顔の傷跡について後遺障害認定を受ける必要があります。
後遺障害に認定される基準は、「交通事故損害賠償法施行令」において定められています。
顔の傷跡は「外貌醜状」として後遺障害認定を受けられる可能性があるでしょう。外貌醜状の認定基準は以下のようになっています。
等級 | 認定基準 |
---|---|
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
なお、2011年以前は男女によって等級の認定基準に差がありましたが、現在は性別に関係なく同一の基準が用いられています。
認定基準では「著しい醜状」「相当程度の醜状」といった曖昧な表現が用いられており、実際にどの程度の傷跡があれば認定を受けられるのかがわかりづらいです。
そこで、顔、頭、首の部位にわけて、顔回りの傷跡の具体的な認定基準を見ていきましょう。
交通事故の後遺障害認定についてより詳しく知りたい方は、『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』の記事をご参考ください。
顔の傷跡の認定基準
顔の傷跡では、後遺障害7級12号、9級16号、12級14号に認定される可能性があります。
顔の外貌醜状の具体的な認定基準は以下のとおりです。
顔の外貌醜状の認定基準
- 7級12号(以下のいずれかに該当)
- ニワトリの卵より大きい傷跡
- 10円玉より大きい組織陥没
- 9級16号
- 5cm以上の線状痕で、人目につく程度のもの
- 12級14号(以下のいずれかに該当)
- 10円玉より大きい傷跡
- 3cm以上の線状痕
なお、等級認定の対象となるのは、人目につく程度以上の傷跡です。傷跡や線状痕、組織陥没があったとしても、眉毛や髪の毛で隠れる部分については認定の対象になりません。
頭部の傷跡の認定基準
頭部の傷跡では、後遺障害7級12号、12級14号に認定される可能性があります。
頭部の外貌醜状の具体的な認定基準は以下のとおりです。
頭部の外貌醜状の認定基準
- 7級12号(以下のいずれかに該当)
- 手のひら(指の部分は含まない)より大きい傷跡
- 手のひら(指の部分は含まない)より大きい頭蓋骨の欠損
- 12級14号(以下のいずれかに該当)
- ニワトリの卵より大きい傷跡
- ニワトリの卵より大きい頭蓋骨の欠損
顔の傷跡と同じく、髪の毛で隠れる部分については後遺障害認定の対象になりません。
また、頭蓋骨の欠損により頭部が陥没し、脳が圧迫されて神経症状が生じている場合は、外貌醜状と神経障害のいずれか上位の等級が認定されることになるでしょう。
首の傷跡の認定基準
首の傷跡では、後遺障害7級12号、12級14号に認定される可能性があります。
首の外貌醜状の具体的な認定基準は以下のとおりです。
首の外貌醜状の認定基準
- 7級12号
- 手のひら(指の部分は含まない)より大きい傷跡
- 12級14号
- ニワトリの卵より大きい傷跡
顔回り以外の傷跡・顔の傷跡以外の障害で認定される等級は?
顔に傷跡を負ったのではなく、手足や日常で露出しない胸や背中などに傷跡が残ることも考えられます。
また、顔面神経麻痺により外見に影響が生じたり、顔面骨折をしたりすることもあるでしょう。
ここからは、上記のような障害で認定される可能性がある後遺障害等級について紹介していきます。
手足や露出しない部分の傷跡による後遺障害等級
手足や日常で露出しない部分に傷跡を負った場合も、大きさによっては醜状障害として後遺障害に認定されることがあります。
手足の傷跡では、後遺障害12級相当、14級4号、14級5号に認定される可能性があります。
日常で露出しない胸、腹、背中、臀部の傷跡については、後遺障害12級相当、14級相当に認められる可能性があるでしょう。
また、交通事故で足に傷跡が残った場合、他にも後遺症が残る可能性が考えられます。
詳しく知りたい方は、交通事故による傷跡についてまとめた記事『交通事故で傷跡(瘢痕)が残ったら?線状痕等による醜状の後遺障害等級と慰謝料』をご覧ください。
顔面神経麻痺における後遺障害等級
顔面神経麻痺により外貌醜状が生じたとして、後遺障害12級14号に認定される可能性があります。
顔面神経麻痺は神経系統の障害ではありますが、麻痺により口のゆがみが生じている場合は「外貌に醜状を残すもの」として取り扱われます。
そのため、後遺障害12級14号に認定される可能性があるのです。
なお、顔面神経麻痺によりまぶたが閉じられなくなっている場合は外貌醜状ではなく目の障害として扱われます。
顔面骨折の認定基準
顔面骨には鼻骨・頬骨・上顎骨・下顎骨などがあり、骨折した場合は外貌醜状をはじめとしたさまざまな障害が残ることが考えられます。
具体的な後遺障害の内容や、認定される可能性がある後遺障害等級は、以下の通りです。
- 変形・外貌醜状
7級12号、9級16号、12級14号 - 鼻の欠損障害
9級5号 - 嗅覚障害
12級相当・14級相当 - 神経障害
12級13号・14級9号 - 眼球の運動障害
10級2号・13級2号 - 咀嚼機能障害
1級2号・3級2号・4級2号・6級2号・9級6号・10級3号・12級相当
上述した各障害の認定基準については『顔面骨折で後遺障害認定される?鼻骨骨折・頬骨骨折・下顎骨折の後遺症と慰謝料相場』において確認可能です。
また、眼に関する後遺障害について詳しく知りたい方は、『交通事故による目の後遺障害|失明・視力低下・複視の認定基準』関連記事をご覧ください。
バイク事故では特に顔の傷跡以外の後遺障害に注意
被害者がバイクを運転中に生じたバイク事故では、運転手の体が外にむき出しになっている関係で、大きなケガが生じやすくなっています。
そのため、バイク事故では、顔面損傷による顔の傷以外にも後遺障害となるケガが生じやすいといえるでしょう。
バイク事故において生じる可能性がある後遺症や認定される可能性がある後遺障害等級については『バイク事故の後遺症が残ったら?後遺障害認定の基準から慰謝料請求まで一挙解説』の記事で確認可能です。
顔の傷跡で後遺障害認定を受けるためのポイント
交通事故で顔の傷跡を負ったとき、必ずしも想定どおりの後遺障害等級に認定されるとは限りません。状況によっては想定より低い等級に認定されたり、非該当になったりする可能性があるのです。
ここからは、顔の傷跡で適切な後遺障害認定を受けるためのポイントを解説していきます。
症状固定までに6か月以上の治療期間が必要
症状固定とは、「これ以上治療してもケガが改善しない状態」のことです。
交通事故で顔の傷跡が残り、治療しても完全に治らなかった場合、症状固定の診断を受けてから後遺障害認定の申請をすることになります。
顔の傷跡で後遺障害認定を受けるためには、基本的に治療開始から症状固定まで6か月以上の治療期間が必要になります。
なぜなら、治療開始から症状固定までが短いと「もっと長く治療をしていれば、傷跡が目立たないくらい治っていたのでは?」と後遺障害認定の審査機関に疑われてしまうからです。
「十分な治療をした」という目安として最低でも6か月の定期的な治療が必要になります。
なお、症状固定の診断をするのは医師です。
相手方の任意保険会社から、治療費などの支払いを抑えるために「そろそろ症状固定としましょう」と打診されることがありますが、これを受けて治療をやめてしまうと後遺障害認定を受けられなくなるおそれがあります。
もし、相手方の任意保険会社から症状固定の打診があれば、まずは医師に症状固定としてよいのか相談してください。
まだ治療を続けるべきと判断されたなら、その旨を保険会社に伝えましょう。
症状固定後には後遺障害等級認定を申請する段階です。
症状固定の時期や後遺障害認定の重要ポイントは、『症状固定とは?時期や症状固定と言われたらすべき後遺障害認定と示談』の記事で詳しく解説しています。
治療費負担の打ち切りを打診された場合は
相手方の保険会社から症状固定の打診がなされると、基本的に治療費負担を打ち切る旨の連絡も同時になされます。
そのため、症状固定せずに治療を続ける場合には、治療費負担が打ち切られることが多いのです。
治療費負担の打ち切りを防ぎたい場合は、医師から治療の必要があると判断されていることを伝えて、治療費負担の継続を交渉しましょう。
治療費負担の継続が認められない場合は、治療費を被害者自身で一旦負担し、負担した治療費の請求を行うことになります。
治療費の負担に関しては、健康保険を利用することで軽減が可能です。
治療費負担の打ち切りに対する対応や、打ち切られた場合にすべきことは『交通事故の治療費打ち切りを阻止・延長する対応法!治療期間はいつまで?』の記事で詳しく知ることができます。
被害者請求で後遺障害認定の申請をする
症状固定と診断されたら、後遺障害認定の申請を行うことになります。
後遺障害認定の申請方法は、以下の2種類です。
後遺障害認定の申請方法
- 事前認定
相手方の任意保険会社を介して申請書類を審査機関に提出する方法 - 被害者請求
相手方の自賠責保険会社を介して申請書類を審査機関に提出する方法
事前認定では、相手方の任意保険会社に「後遺障害診断書」を送れば、残りの申請書類は保険会社側で用意してくれます。
被害者にとって手間がかからないのがメリットですが、保険会社は必要最低限の書類しか用意してくれないことが多い点に注意が必要です。
被害者請求では、被害者側で申請書類をすべて集める必要があります。
手間がかかる分、医師の意見書を添付するなど、書類に工夫が施せるのが大きなメリットです。
先述のとおり、後遺障害認定は申請すれば必ず希望通りの等級に認められるものではありません。納得のいく結果を得るためにも、被害者請求を選ぶことをおすすめします。
なお、被害者請求のデメリットである「手間がかかる」点は、弁護士に依頼して申請作業を任せることで解消可能です。
詳しくは、『後遺障害申請の被害者請求|流れや弁護士に依頼すべき理由』の記事をご覧ください。
申請書類に傷跡の程度がわかるような工夫をする
顔の傷跡で適切な後遺障害等級に認定されるためには、申請書類で傷跡の大きさや程度を示し、認定基準に該当していることをアピールする必要があります。
申請書類のうち、とくに重要視されるのが医師の作成する「後遺障害診断書」です。
ただし、医師は医療の専門家であっても後遺障害認定には詳しくないことがあります。
よって、後遺障害診断書の作成にあたっては事前に打ち合わせしたり、出来上がったものを被害者側でも確認したりすることが大切です。
たとえば、傷跡の大きさや、将来的な改善が期待できないことを明確に記載してもらうよう、事前に依頼しておくとよいでしょう。
後遺障害診断書には「交通事故受傷後の傷痕等に関する所見」という醜状障害について詳しく記載できる書式があります。
より傷跡の大きさがわかりやすくなるため、この書式を使うべきでしょう。
また、被害者請求で申請するなら、実際の傷跡の写真を貼付する、複数の傷跡の大きさの合計値を医師の意見書に記載してもらうといった工夫も有効です。
後遺障害診断書の書き方・もらい方については、『後遺障害診断書のもらい方と書き方は?自覚症状の伝え方と記載内容は要確認』の記事が参考になります。
審査機関での面接審査の対策をする
後遺障害認定の審査は書面審査が原則となりますが、醜状障害については審査機関における面接審査が実施されることもあります。
面接審査では、担当者に傷跡の形状を確認されたり、長さを図られたりすることになるでしょう。注意すべきは、担当者の主観によって認定の可否を判断されるケースもある点です。
よって、面接にあたっても十分な対策をしておくことをおすすめします。
交通事故事案を扱っている弁護士に事前に相談すれば、気を付けるべき点や説明方法などのアドバイスをもらえるでしょう。
アトム法律事務所では電話・LINEによる弁護士相談を実施しています。無料で相談できるので、面接対策に不安がある方は気軽にお問い合わせください。
複数の傷跡がある場合の扱い
顔・頭部・首の外貌醜状については、複数の傷跡が隣接していて一見すると1個の傷跡と同程度以上の大きさに見える場合、それらの傷跡の面積や長さなどを合算して後遺障害認定を受けることになります。
なお、手足の醜状障害についても同じように面積を合算して認定を受けられますが、少なくとも手のひら大以上の傷跡が1個以上残っている必要があります。
複数の傷跡を合計して後遺障害認定を受けたい場合、写真を添付する、合計するとどれくらいの面積になるか医師に意見書を書いてもらうといった工夫をすれば、より希望の等級に認定されやすくなるでしょう。
交通事故で顔の傷跡が残ったら弁護士に依頼すべき理由
交通事故で顔の傷跡が残った場合、弁護士への相談・依頼もご検討ください。
ここからは、顔の傷跡が残ったときに弁護士への相談・依頼をおすすめする理由を紹介していきます。
適切な等級に認定されやすくなるため
繰り返しになりますが、後遺障害認定の申請をしたとき、必ず想定どおりの等級に認定されるとは限りません。
顔の傷跡で後遺障害認定の申請をする場合、傷の程度がわかりづらかったり、面接審査で適切な対策をしなかったりすると、想定より低い等級になるか、そもそも認定されない可能性もあるのです。
交通事故事案を取り扱っている弁護士に依頼すれば、過去の事案や判例をふまえ、適切な等級に認定されやすくなる工夫を行ってもらえます。
たとえば、医師と後遺障害診断書や意見書の内容について打ち合わせをしてもらう、面接審査についてアドバイスをしてもらうといったサポートを受けられるでしょう。
また、後遺障害等級認定に必要な書類の作成や収集についても手伝ってもらえるため、被害者自身の負担を減らすことも可能です。
適切な後遺障害等級に認定されなければ、その分事故の相手方から支払ってもらえる損害賠償金額が低くなってしまいます。補償を十分に受けるためにも、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
逸失利益でもめても対抗できるため
先述のとおり、顔の傷跡で後遺障害認定を受けたなら、事故の相手方と逸失利益の請求をめぐってもめる可能性が高いです。
相手方の任意保険会社は、「顔の傷跡は労働能力に関係ないので、逸失利益は支払わない」と主張してくるでしょう。
被害者側は顔の傷跡によって就労に影響が生じることを立証していくことになりますが、被害者自身で効果的な主張をするのは困難と言えます。
また、逸失利益の代わりに慰謝料の増額を主張しても、認められないことが多いです。
一方、弁護士であれば、過去の判例などをもとに効果的な主張を行えます。
相手方の任意保険会社も、法律の専門家である弁護士の主張であれば無下にすることはできません。
顔の傷跡による補償をしっかり支払ってもらうためにも、弁護士への依頼が有効なのです。
慰謝料の増額が見込めるため|増額事例あり
慰謝料には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの計算基準があります。
示談交渉において任意保険会社は、自賠責基準か任意保険基準で計算した金額を提示してくるでしょう。
提示された金額を弁護士基準で計算すれば、大幅に増額できる可能性があります。
たとえば、顔の傷跡で後遺障害7級に認定された場合、自賠責基準の相場は419万円、弁護士基準の相場は1,000万円と、約2.4倍もの金額差があるのです。
しかし、被害者自身で弁護士基準の金額を主張しても、相手方の任意保険会社が認めることはほとんどありません。「裁判をしないと認められない金額です」「弊社ではこの金額が上限です」などと反論されてしまうでしょう。
一方、弁護士に依頼して示談交渉に介入してもらえば、相手方の任意保険会社は弁護士基準まで増額を認める可能性が高くなります。
なぜなら、弁護士が出てくれば裁判への発展が現実的になるからです。
裁判になればどのみち弁護士基準の金額を支払わなければならないうえ、長期化や遅延損害金の支払いなど任意保険会社にとってのデメリットも大きいので、「それならば示談交渉で弁護士基準まで増額を認めよう」と判断されることが多いのです。
示談交渉による手間やストレスを減らすこともできる
弁護士に依頼することで加害者側との示談交渉を弁護士が行ってくれます。
被害者自身は加害者側からの連絡に対応する必要がなくなり、示談交渉時に必要となる証拠の収集についても弁護士に手伝ってもらえるのです。
そのため、被害者としては治療や仕事の復帰に専念できるため、示談交渉により生じる手間やストレスを大きく減らすことができるでしょう。
アトム法律事務所の増額事例
参考までに、アトム法律事務所が実際に受任した事例の中から、顔の傷跡について増額に成功したものを厳選して紹介します。
被害者の属性 | 20~30代・会社員 |
傷病名 | 顔面醜状痕 |
後遺障害等級 | 併合12級 |
相手方の提示額 | 174万円 |
最終的な回収額 | 552万円(378万円増額) |
被害者の属性 | 20~30代・学生 |
傷病名 | 顔面醜状痕 |
後遺障害等級 | 12級14号 |
相手方の提示額 | 340万円 |
最終的な回収額 | 948万円(608万円増額) |
被害者の属性 | 10代・学生 |
傷病名 | 顔面醜状痕 |
後遺障害等級 | 9級16号 |
相手方の提示額 | 625万円 |
最終的な回収額 | 1,562万円(937万円増額) |
その他のアトムの解決事例は『交通事故の解決事例』のページで紹介しています。ぜひあわせてご確認ください。
弁護士費用は実はあまり心配しなくてよいため
弁護士に依頼する際に弁護士費用が不安になる方も多いですが、後遺障害認定を受けたような事案では、実は弁護士費用についてはあまり心配しなくてもよいのです。
まず、弁護士費用は「弁護士費用特約」を使うことで保険会社に負担してもらえます。弁護士費用の合計300万円、相談料の合計10万円までを負担してもらえるので、被害者の自己負担は0円となることが多いです。
弁護士費用特約は、被害者自身の自動車保険だけではなく、火災保険やクレジットカード、被害者の家族が加入している保険に付帯されていても使える可能性があります。
弁護士費用特約について詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。
弁護士費用特約が使えない場合も、すぐにあきらめるのは勿体ないと言えます。
なぜなら、後遺障害認定を受けているなら示談金の増額幅が大きく、弁護士費用を差し引いても弁護士に依頼した方が最終的に手元に入る金額が増えることが多いからです。
まずは無料相談を利用し、示談金の増額幅と弁護士費用の見積もりをとってみるとよいでしょう。
示談が成立してしまうと、あとから撤回・再交渉することは基本的にできません。
示談に合意する前に一度見積もりをとり、このまま示談してよいのか検討することが大切です。
交通事故で顔の傷跡が残ったらアトムに無料相談
アトム法律事務所では、交通事故被害者の方を対象とした無料の法律相談を行っています。
顔の傷跡は後遺障害の認定について争いになりやすい後遺症のひとつです。
被害者の方が適切な補償を受け取るためには、入念な準備と法知識、相手方の任意保険会社に対する適切な対応が必要になるので、弁護士に相談して適切なアドバイスを受けるべきといえます。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了