交通事故による目の後遺障害と慰謝料相場|失明・視力低下・複視の認定基準

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目の後遺障害

交通事故による目の後遺症は、視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害、複視、外傷性散瞳などがあげられます。

交通事故による目・眼球・まぶたの後遺症は、「後遺障害」として認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求可能です。

しかし、目の後遺症で後遺障害認定の申請をしようとするとき、「視力障害になるのはどこから?」「調節機能障害って何のこと?」など、具体的な基準がわからなかったり専門用語が多用されていたりして混乱する方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、交通事故による目の後遺症の後遺障害認定について、具体的な基準や測定方法とともにわかりやすく解説します。

あわせて、目の後遺症が後遺障害認定を受けたら請求できる慰謝料の相場も紹介しますので、ぜひお役立てください。

目次

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交通事故による目の後遺症の後遺障害認定

交通事故により失明や視力低下、目がかすむなどの見えづらさといった後遺症が残った方は後遺障害認定を受けられる可能性があります。

まずは、交通事故による視力障害・調節機能障害といった目の後遺症の後遺障害認定基準を確認していきましょう。

視力障害|失明した・視力が低下した

視力障害とは、失明や視力低下など、視力が失われたり著しく低くなったりしたことをいいます。

視力低下や失明が両眼か片目か、さらにどの程度まで視力低下したのかで等級が決まるのです。

視力障害の後遺障害認定基準を以下の表に示します。

視力障害の後遺障害認定基準

等級認定の基準
1級1号両眼が失明
2級1号1眼が失明、もう1眼は視力が0.02以下
2級2号両眼の視力が0.02以下
3級1号1眼が失明、もう1眼は視力が0.06以下
4級1号両眼の視力が0.06以下
5級1号1眼が失明、もう1眼は視力が0.1以下
6級1号両眼の視力が0.1以下
7級1号1眼が失明、もう1眼は視力が0.6以下
8級1号1眼が失明し、または1眼の視力が0.02以下
9級1号両眼の視力が0.6以下
9級2号1眼の視力が0.06以下
10級1号1眼の視力が0.1以下
13級1号1眼の視力が0.6以下

両眼ともに失明した場合は、後遺障害1級1号という非常に重い後遺障害等級認定を受ける見込みです。

片目失明の後遺障害等級は2級1号、3級1号、5級1号、7級1号、8級1号のいずれかに認定される可能性があります。具体的な後遺障害等級は、失明していない目の視力次第です。

視力とは?

後遺障害認定における視力とは、原則的に眼鏡やコンタクトレンズをつけた矯正視力のことを指します。

なお、後遺障害認定においては原則的に「万国式試視力表」を用いて視力を測定することとされています。万国式試視力表とは、ランドルト環やアラビア数字などが用いられた視力表のことです。

失明とは?

後遺障害認定における失明とは、以下のいずれかの状態に該当していることを言います。

  • 眼球を亡失(摘出)した
  • 光の明暗が完全に区別できない
  • 光の明暗がかろうじて区別できる
    • 暗室で光を点滅させられたときに明暗がわかる
    • 目の前で手を上下左右に動かされたときに動きの方向がわかる

調節機能障害|目がかすむ・目のピントがあわない

調節機能障害とは、近くのものや遠くのものを見るときの目のピントの調節力が下がってしまうことを言います。

目のピントは毛様体筋という筋肉が水晶体を伸び縮みさせることで調節されます。

しかし、目のケガで調節力が下がると、目がかすむピントがあわないといった後遺症が残ることがあるのです。

調節機能障害の認定基準は以下のとおりになります。

調節機能障害の認定基準

等級認定の基準
11級1号両眼の眼球に著しい機能調節障害を残すもの
12級1号1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの

著しい機能調節障害とは?

認定基準における著しい機能調節障害とは、調節機能が通常の半分以下になった状態のことを言います。

調節機能の検査では、「アコモドポリレコーダー」といった測定装置が用いられることが多いです。

複数回にわたって検査を行い、検査結果がほぼ一定かつ調節機能が半分以下になっていることが認められれば後遺障害に認定されることになります。

片目の調節機能が低下した場合は、健康な方の目と調節機能を比べることで評価します。

ただし、健康な方の調整力が1.5D(ジオプトリー)以下である場合は、もともと調整機能が失われていたと考えられるため、後遺障害認定を受けられません。

両目の調節機能が低下した場合は、年齢別の調整機能の標準値と比べて評価することになります。55歳以上の場合は、もともと調整機能が失われていたと考えられるため、後遺障害認定を受けられないでしょう。

運動障害|眼球を十分に動かせない・斜視になった

運動障害とは、目の周りの筋肉に支障が生じて眼球をうまく動かせなくなったり、斜視になったりすることを言います。

運動障害の後遺障害認定基準は以下のとおりです。

運動障害の後遺障害認定基準

等級認定の基準
11級1号両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの
12級1号1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの

著しい運動障害とは?

認定基準における著しい運動障害とは、眼球の「注視野」の広さが半分以下になった状態のことを言います。

注視野とは、頭を固定した状態で眼球を動かして直視できる範囲のことです。平均的な注視野は片目だけだと各方面約50度となっており、この半分以下になると後遺障害認定を受けられることになります。

なお、「両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの」とは片目だけで見たときの注視野が左右とも半分以下になった状態のことを言います。

両目で見たときの注視野が半分以下になった状態ではないので注意してください。

注視野については「ゴールドマン視野計」などで測定されることになるでしょう。

視野障害|視野が狭くなった

視野障害とは、目の前の1点を見つめているとき同時に見ることができる視野の広さが減ることをいいます。

視野障害の後遺障害認定基準は以下のとおりです。

視野障害の後遺障害認定基準

等級認定の基準
9級3号両眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの
13級2号1眼の半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの

半盲症・視野狭窄・視野変状とは?

後遺障害認定における半盲症・視野狭窄・視野変状の定義は、それぞれ以下のとおりです。

  • 半盲症
    • 注視している点を境界として視野の右半分または左半分が欠けること
  • 視野狭窄
    • 視野が狭くなること
      視野の縁が全体的に狭くなる「同心性狭窄」と、視野の一部がランダムに狭くなる「不規則狭窄」の2種類がある
  • 視野変状
    • 半盲症、視野狭窄以外で視野が欠けること
      暗点や視野欠損など

視野の測定は、基本的に「ゴールドマン視野計」によって行われます。

ゴールドマン視野計による測定では、「上、上外、外、外下、下、下内、内上」の8方向について視野の角度を調べます。8方向の視野角度の合計が正常の60%以下(336度以下)になっていれば、後遺障害認定を受けられるでしょう。

複視|ものが二重に見える

複視とは、目の周りの筋肉の麻痺などが理由で、ものが二重に見えることを言います。

複視の後遺障害認定基準は以下のとおりです。

複視の後遺障害認定基準

等級認定の基準
10級2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの
13級2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

複視の症状を残すものとは?

後遺障害認定における「複視の症状を残すもの」とは、以下のすべてに該当するものとされています。

  • 本人が複視のあることを自覚している
  • 目の周りの筋肉の麻痺など、複視の明らかな原因が認められる
  • ヘススクリーンテストにより、障害のある目の方の像が水平方向または垂直方向の目盛で5度以上離れた位置にあることが確認される

ヘススクリーンテストとは、片目に赤、片目に緑のガラスをつけてものの見え方のズレを確認する検査です。

ヘススクリーンテストにより正面視で複視が中心の位置にあることが確認されれば、「正面を見た場合に複視の症状を残すもの」として10級2号に該当し、それ以外の場合は13級2号に該当することになります。

交通事故によるまぶたの後遺症の後遺障害認定

交通事故にあったとき、まぶたを欠損した・うまく動かせなくなったといった後遺症を負うこともあります。まぶたの後遺症の後遺障害認定基準を見ていきましょう。

欠損障害|まぶたを失った・まつげがはげた

欠損障害とは、まぶたが欠けてしまった状態のことを言います。なお、まつげはげもまぶたの欠損障害に位置付けられます。

まぶたの欠損障害の後遺障害認定基準は以下のとおりです。

まぶたの欠損障害の後遺障害認定基準

等級認定の基準
9級4号両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
11級3号1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
13級4号両目のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの
14級1号1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの

まぶたに著しい欠損を残すもの・一部に欠損を残すものとは?

認定基準における「まぶたに著しい欠損を残すもの」「まぶたの一部に欠損を残すもの」の定義は、それぞれ以下のとおりです。

  • まぶたに著しい欠損を残すもの
    • まぶたを閉じたときに角膜(黒目)を完全に覆うことができない状態
  • まぶたの一部に欠損を残すもの
    • まぶたを閉じたときに角膜(黒目)は覆えるものの、球結膜(白目)が露出している状態

まつげはげを残すものとは?

後遺障害認定におけるまつげはげとは、まつげが本来生えている周縁の半分以上にわたってはげてしまった状態のことです。

運動障害|まぶたが十分に開閉できない

まぶたの運動障害とは、まぶたの周辺の筋肉に支障が生じてまぶたを十分に開閉できなくなった状態のことを言います。

まぶたの運動障害の後遺障害認定基準は以下のとおりです。

まぶたの運動障害の後遺障害認定基準

等級認定の基準
11級2号両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
12級2号1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

まぶたに著しい運動障害を残すものとは?

認定基準における「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは、以下のいずれかの状態に該当していることを言います。

  • まぶたを開いたときに瞳孔が完全に覆われる
  • まぶたを閉じたときに角膜(黒目)が完全に覆われない

こんな目の後遺症は後遺障害認定を受けられる?

ここまでは、交通事故による目やまぶたの後遺症が後遺障害認定を受けられる基準を紹介してきました。

交通事故では、他にも外傷性散瞳(常にまぶしく感じる)流涙(涙が止まらない)といった目の後遺症が残る可能性があります。

後遺症によっては、「後遺障害〇級に相当する」といった相当等級が設定されているので、認定基準を見ていきましょう。

あわせて、複数の目の後遺症が残っている場合や、むちうちにより目の後遺症が残っている場合の後遺障害認定についても解説します。

外傷性散瞳|常にまぶしさを感じる

外傷性散瞳とは、ケガなどにより瞳孔が開いたままになってしまい、まぶしく感じる状態が続くことを言います。

交通事故で外傷性散瞳の後遺症が残った場合、労働に支障をきたす程度のものであれば後遺障害認定を受けられる可能性があります

外傷性散瞳の後遺障害認定基準は以下のとおりです。

外傷性散瞳の後遺障害認定基準

等級認定の基準
11級相当両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
12級相当1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
もしくは両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの
14級相当1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの

外傷性散瞳の認定基準は、既存の基準を準用する形で定められています。

個別具体的な事情によって等級に認定されるかどうかが異なるため、自身の症状が後遺障害認定されるか知りたい方は弁護士に相談することをおすすめします。

流涙|涙が止まらない

流涙とは、涙道が断裂したり狭くなったりしたため目の表面における涙の量が過剰に増加し、常に涙を流す状態になってしまったことを言います。

流涙の後遺障害認定基準は以下のとおりです。

流涙の後遺障害認定基準

等級認定の基準
12級相当両眼に常時流涙を残すもの
14級相当1眼に常時流涙を残すもの

外傷性散瞳と同じく、流涙も後遺障害認定を受けられるかは個々のケースによって異なります。流涙の後遺症が残った方は、交通事故事案を取り扱っている弁護士に一度相談してみるとよいでしょう。

複数の目やまぶたの障害が残った

目やまぶたに複数の後遺症が残った場合は、各症状について後遺障害認定を受け、複数の等級に認定された場合に等級を繰り上げる「併合」の扱いを受けることになるでしょう。

併合による等級の繰り上げは、基本的に以下のような考え方で行われます。

  • 5級が2つ以上:最も重い等級を3級繰り上げる
  • 8級が2つ以上:最も重い等級を2級繰り上げる
  • 13級が2つ以上:最も重い等級を1級繰り上げる
  • 14級が2つ以上:14級のまま

たとえば、片目の視力が0.1以下になり、かつ片目にまぶたの運動障害が残った場合は、10級と12級を併合して併合9級の扱いになるのです。

ただし、片目のみに後遺症が残る場合、片目を失明した場合のもっとも低い等級である8級を超えて7級相当以上に認められることはありません。

また、両目に視力が残っている場合、両目を失明した場合の等級である1級相当とみなされることもないでしょう。

後遺障害等級の併合ルールは複雑で、なかには例外的な取り扱いをするケースもあります。

詳しい解説記事『後遺障害等級の併合・相当・加重|複数の後遺症認定時のルールと慰謝料への影響』も併せてお読みください。

むちうちによる視力低下や目のかすみ

交通事故でむちうちを負った結果、視力低下や目のかすみといった症状が残ることもあります。

むちうちに伴って自律神経の失調が生じる「バレ・リュー症候群」になったとき、とくに目の症状を訴える方が多いと言われています。

しかしながら、むちうちによる目の後遺症は、後遺障害認定を受けられないことがほとんどです。

交通事故による目の後遺症が後遺障害認定を受けるには、基本的に器質的な原因(骨折や筋肉の損傷など)があることが必要です。

むちうちで目の後遺症が起こった場合、器質的な原因があるのではなく心因性のものであると判断され、後遺障害認定を受けられない可能性が非常に高いでしょう。

ただし、むちうちにより神経症状が残っているなら後遺障害12級または14級に認定される可能性があります。むちうちの後遺症が残った場合、神経症状として等級認定を目指すのが現実的と言えるでしょう。

後遺障害認定の基準や、むちうちの後遺障害認定に関しては以下の関連記事もご参考ください。

目をケガしたときの慰謝料などの賠償金の計算方法

交通事故の被害者は、生じた損害について損害賠償請求を行うこととなります。

損害の内、慰謝料や逸失利益は、相手方と揉めやすかったり、適正相場がわかりづらく被害者が損をしやすい費目です。

そのため、目のケガにより請求できる慰謝料や逸失利益の相場額や、そのほかに請求できる損害をみていきましょう。

入通院慰謝料|ケガの治療期間に応じた慰謝料

入通院慰謝料は、ケガの治療期間に応じて請求できる金銭です。

入通院慰謝料の相場額を計算をするときは、以下の「慰謝料計算表」を用いましょう。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

仮に、目のケガで入院1ヶ月・通院3ヶ月となった場合、入通院慰謝料は115万円が相場です。もし入院がなかった場合には73万円が相場となります。

もっとも、相手の保険会社は相場よりも低額になる計算方法で算出した金額を支払うと提案してくることが多いでしょう。

相手の保険会社に慰謝料算定を任せず、相場の金額を弁護士に見積もってもらうべきです。

後遺障害慰謝料|目の後遺症に応じた慰謝料

後遺障害慰謝料とは、事故で後遺障害を負った精神的苦痛の補償のことです。

後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級によっておおよその相場が定められています。

後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料相場額は、以下の通りです。

後遺障害慰謝料の相場

等級 相場額
1級・要介護2,800
2級・要介護2,370
1級2,800
2級2,370
3級1,990
4級1,670
5級1,400
6級1,180
7級1,000
8級830
9級690
10級550
11級420
12級290
13級180
14級110

※単位:万円
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合

片目を失明して後遺障害8級に認定された場合、後遺障害慰謝料の相場は830万円になります。

事故の相手方の任意保険会社は、相場よりも後遺障害慰謝料を提示してくることが多いです。

相場の金額が高額になるほど、相手方の保険会社が提示してくる金額と相場額の差は大きくなりやすい傾向があります。

そのため、提示された案にそのまま同意してしまうと、本来被害者が受け取れる金額より大幅に低い金額しか受け取れなくなってしまうおそれがあるのです

ただし、被害者自身で相場の金額を主張しても、相手方の保険会社は認めないことが多いため、納得のいく解決のためには弁護士に示談交渉に介入してもらうとよいでしょう。

失明の後遺障害慰謝料の相場

失明した場合の後遺障害慰謝料相場は、830万円から2,800万円です。

失明による後遺障害慰謝料相場は以下のようになります。

失明の後遺障害慰謝料相場

等級 失明もう一方慰謝料
1級両眼2,800万円
2級1眼0.02以下2,370万円
3級1眼0.06以下1,990万円
5級1眼0.1以下1,400万円
7級1眼0.6以下1,000万円
8級1眼830万円

失明してしまうと、仕事はおろか私生活にも大きな影響をきたします。

適正な補償獲得のためにも、弁護士への依頼を検討しましょう。

逸失利益|後遺障害による将来の減収を補償

逸失利益とは、後遺障害が残ったため将来にわたって減ってしまう収入の補償です。

逸失利益とは減った将来収入の補償

目の後遺症は仕事への影響も大きく、同じ職業を続けられなくなったり配置転換を余儀なくされたりするケースも多いでしょう。

後遺症の影響による将来の収入減も、後遺障害と認定されればきちんと賠償してもらえるのです。

逸失利益は以下の式を用いて計算します。

逸失利益の計算式

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

  • 基礎収入
    事故にあう前の年収のこと。
    専業主婦や学生などは実収入がない場合は平均賃金を用いる。
  • 労働能力喪失率
    後遺障害によって失われた労働能力を示す数値。
    後遺障害等級ごとにおおよその目安が決まっている。
  • 労働能力喪失期間
    労働能力が失われた期間のこと。基本的に「症状固定時~67歳」となる。
  • ライプニッツ係数
    逸失利益を預金・運用して生じる利息を差し引くための係数。

逸失利益の計算方法については、『【逸失利益の計算】職業別の計算方法を解説!早見表・計算機つき』の記事でわかりやすくかみ砕いて紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。

また、以下の自動計算機を用いて、逸失利益・慰謝料のおおよその目安を確認することも可能です。治療期間や後遺障害等級、年齢や年収を入力するだけで簡単に計算できるので、ぜひご利用ください。

目のケガによりその他に請求できる損害

交通事故により目をケガした場合は、慰謝料や逸失利益の他に以下のような損害について請求が可能です。

  • 治療関係費
    投薬代・手術代・入院費用
  • 通院交通費
    原則として公共交通機関の利用料金
  • 休業損害
    治療のために仕事を休んだことで生じる減収
  • 装具作成費
    視力低下のため必要となるメガネや失明のため必要となる義眼などの作成費
  • 物的損害
    自動車や自転車の修理用、代車費用など

損害額の具体的な計算方法を知りたい方は『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事をご覧ください。

交通事故で目の後遺症が残りそうならすべきこと

交通事故で目の後遺症が残りそうな場合、通院を続けたのちに後遺障害認定を受け、相手方と示談交渉をして損害賠償してもらうことになります。

それぞれの段階で気を付けるべきポイントを確認していきましょう。

(1)6か月以上の定期的な治療

交通事故で目の後遺症が残りそうなら、交通事故後から症状固定まで6か月以上の定期的な治療をするようにしましょう。

症状固定とは、「これ以上治療しても症状が改善しないと判断された状態」のことです。症状固定と診断されたことは、後遺症が残ったことを意味します。

眼球が亡失している状態など、見た目にも明らかで治療を続けても回復の見込みがない症状は別ですが、それ以外の症状で治療期間が短いと「もう少し治療を続けていれば症状が改善していたのでは?」と後遺障害認定の審査機関に疑われてしまいます。

そのため、後遺障害認定を受けられないおそれがあるのです。

また、医師の指示がなく通院期間が1か月以上空いてしまった場合も、「被害者が治療に消極的だったから後遺症が残ったのでは?」と疑われ、後遺障害認定を受けられない可能性が生じます。

交通事故で目の後遺症が残りそうな場合は、適切な後遺障害等級に認定され、適切な補償を受けるためにも、6か月以上の定期的な治療を行うようにしてください。

目に後遺症が残る可能性のあるケガとして、眼窩底骨折、眼球破裂について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

(2)必要な検査を受けて後遺障害申請

医師から症状固定の診断を受けたら、後遺障害認定の申請を行います。

後遺障害認定の申請をするときは、交通事故による目の後遺症が後遺障害の認定基準に当てはまっていることを客観的に示す必要があります。

後遺障害等級基準の章で紹介した症状ごとの検査を受け、「後遺障害診断書」といった書類に検査結果の数値を明確に記載してもらうようにしてください。

書類の書き方に不備がないか確認してほしい、他に受けるべき検査がないか知りたいといった場合は、無料相談を利用して弁護士に相談してみるとよいでしょう。

後遺障害の申請方法については、『交通事故で後遺障害を申請する|認定までの手続きの流れ、必要書類を解説』の記事で詳しく説明しています。

(3)相手と示談交渉|相場額の請求を

後遺障害認定の結果が出たら、相手方の任意保険会社と示談交渉を行います。

相手方の任意保険会社は、少しでも支払う金額を少なくするため、相場よりも低額な示談金の支払いを提案してくるでしょう。

そのため、示談交渉を行う際には、相場の金額を提示したうえで増額交渉を行うことが欠かせません。

後遺障害が生じている場合には、損害額が高額になりやすいため、増額交渉を行わないと相場よりかなり低い金額で示談することになってしまいます。

もっとも、任意保険会社は示談交渉の経験が豊富であるため、簡単には増額交渉に応じてはくれないでしょう。

相場額への増額交渉については専門家である弁護士に依頼して行ってもらうことが最も適切といえます。

交通事故による目の後遺症は弁護士にも相談しよう

交通事故によって目の後遺症を負った場合、弁護士に相談することも効果的です。ここからは、目の後遺症について弁護士に相談するメリットなどを紹介していきます。

適切な後遺障害等級に認定されない可能性を減らせる

後遺障害認定は、申請すれば必ず適切な等級に認定されるとは限りません。

申請書類で目の後遺症の程度を証明できないと、後遺障害等級に非該当となったり、想定より低い等級に認定されることもあるのです。

目の後遺症の程度を示すには医師の作成する書類が重要になりますが、医師は医療の専門家ではあるものの後遺障害認定の専門家ではありません

場合によっては、後遺障害認定に不利になるような記載をされたり、症状が認定基準にあてはまることがわからないような記載をされる可能性があるのです。

後遺障害認定について専門的な知識を持っているのは弁護士です。

後遺障害認定の申請をする前にあらかじめ弁護士に相談しておけば、医師の作成した書類をチェックしてもらったり、「こんな検査を受けた方がいい」とアドバイスをもらったりすることができます

その結果、適切な後遺障害等級に認定されない可能性を減らせるのです。

後遺障害等級が1級違うだけで、後遺障害慰謝料の金額は数十万~数百万円も異なります。適正な後遺障害等級に認定されるためにも、弁護士のアドバイスを受けることも検討してみてください。

慰謝料が増額できるかわかる

先述のとおり、相手方の任意保険会社は、交通事故の被害者が本来受け取れる金額よりも大幅に低い慰謝料額を提示してくることが多いです。

示談が成立すると、あとから撤回・再交渉することは基本的にできません。

よって、示談成立前に「本来自分が受け取れる金額はいくらか」「慰謝料をもっと増額できないか」といった点を弁護士に確認することをおすすめします。

相手方の任意保険会社から提示された慰謝料は、弁護士が計算し直すと2倍~3倍に増額されることも少なくありません

なお、被害者自身で慰謝料の増額交渉をしても、相手方の任意保険会社が認めないことも多いです。「弊社ではこの金額が上限です」「裁判をしないとその金額は認められません」などと反論されてしまうのです。

この場合、弁護士に依頼して示談交渉に介入してもらえば、慰謝料の増額が認められる可能性が高くなります。

法律の専門家である弁護士の主張であれば、保険会社も無下にはできないからです。

増額交渉(弁護士あり)

示談交渉を任せることで自身の手間も省ける

弁護士に依頼すると、示談交渉や示談交渉に必要な証拠の収集を弁護士が行ってくれるため、被害者自身の手間を省くことができます。

被害者としては、相手方の任意保険会社からの連絡に対応するという負担がなくなり、ケガの治療や仕事の復帰に専念することができるというメリットがあるのです。

もし依頼する場合も弁護士費用の心配は無用

弁護士への相談後、正式な依頼を検討される場合も、弁護士費用についてはあまり心配しなくても大丈夫です。

弁護士費用は、保険に付帯されている弁護士費用特約を使うことで大幅に軽減することができます。

弁護士費用特約を使えば、弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを保険会社に負担してもらえます。「弁護士に依頼したことでかえって損をした」といった状況にはほぼならないと言えるでしょう。

弁護士費用特約は、自動車保険だけではなく、火災保険やクレジットカードなどにも付帯されていることがあります。

また、被害者のご家族の保険に付帯されていても使える可能性があるでしょう。

弁護士費用特約とは弁護士費用を保険会社が負担してくれる特約

弁護士費用特約について詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。

弁護士費用特約を利用できなくても弁護士に依頼すべき

弁護士費用特約を使えなくとも、後遺障害認定を受けている場合、弁護士費用を差し引いても弁護士に依頼した方が最終的に手元に入る金額が増えることは多いです。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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