交通事故による骨折の慰謝料相場はいくら?骨折部位や後遺症別の賠償金
交通事故で骨折したときに請求できる慰謝料には「入通院慰謝料」があり、さらに後遺症が残った場合は「後遺障害慰謝料」を別途請求できる可能性があります。
入通院慰謝料は治療期間、後遺障害慰謝料は認定された後遺障害等級をベースにおおよその金額が決まる仕組みです。
骨折の入通院慰謝料は、通院6ヶ月のとき116万円が相場とされています。ただし入院期間があったり、通院がさらに長いときにはもっと高額となるでしょう。
後遺障害等級認定を受けた場合は、等級しだいで110万円から2,800万円の後遺障害慰謝料を追加請求できます。
この記事では、交通事故による骨折で請求できる慰謝料の相場を解説しています。骨折の治療期間および骨折の部位別に慰謝料の相場を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
なお、慰謝料の相場が手軽にわかる自動計算機もお役立てください。
目次
交通事故で骨折したら知っておきたいこと
交通事故後の骨折治療期間
交通事故で骨折したとき、その治療期間は6ヶ月が一つの目安とされています。
ただし骨折部位や骨折の仕方、年齢などの個人差で予後が変わってくるため、治療期間はケースバイケースといえます。
厚生労働省がおこなった「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、令和2年9月に退院した骨折患者の平均在院(入院)日数は下表のとおりです。
平均在院日数 | |
---|---|
0~14歳 | 5.5日 |
15~34歳 | 10.6日 |
35~64歳 | 21.3日 |
65歳以上 | 46.2日 |
70歳以上 | 47.7日 |
75歳以上 | 50.3日 |
上表はあくまで在院日数であること、骨が癒合してからも機能や筋力を取り戻すためのリハビリ期間が必要になることから、表中の日数よりも治療期間は長いと予想されます。
こうした骨折の治療期間中に感じた痛み、治療の苦労にさらされたことは「精神的苦痛」という損害にあたります。治療期間の長さに応じた「入通院慰謝料」の請求が可能です。
治りにくく治療期間が長いときは治療費打ち切りに注意
骨折の部位や種類にもよりますが、入通院をはじめてから3ヶ月~6ヶ月が経過した頃に治療費支払いの打ち切りを打診されることが多いでしょう。
治療開始から6ヶ月前後で相手の保険会社から「もうそろそろ治療は終了ですか」「まだ治療を続ける予定ですか」などと聞かれるようになると、治療費打ち切りが近い可能性があります。
まだ治療が必要であるにも関わらず、治療費打ち切りに伴って治療をやめてしまうと、自己判断で治療をやめた場合と同じリスクが生じます。
よって、加害者側の任意保険会社から治療費打ち切りを打診された場合は、治療をやめるのではなく、以下のように対応することをおすすめします。
治療費打ち切りへの対処
- 主治医に治療継続の必要性を確認
- 治療継続が必要ならば、加害者側の任意保険会社に治療費の支払いの継続を交渉
- 交渉しても治療費が打ち切られた場合は、治療費を自費で立て替え、示談交渉で請求
交通事故の治療費打ち切りへの対応については、関連記事『交通事故の治療費打ち切りを阻止・延長する対応法!治療期間はいつまで?』でも説明しています。あわせてお役立てください。
適正な慰謝料の獲得には示談での増額交渉が必要
交通事故の慰謝料には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」と呼ばれる3つの算定基準があり、それぞれで金額が変わってきます。
自賠責基準 | 被害者に補償される、最低限の金額 |
任意保険基準 | 各任意保険会社が独自に定め、非公開 自賠責基準との違いはあまりみられない |
弁護士基準 | 弁護士や裁判所が用いる算定基準 判例に基づく高額かつ法的に適正な金額 |
交通事故の示談では、加害者側の任意保険会社は、自賠責基準もしくは自社の任意保険基準による慰謝料を提示してくるでしょう。
被害者の方から増額交渉をしても「皆さんこの金額で納得してもらってる」「こちらから出せるのはこの金額」など、何らかの理由とともに増額を断られてしまう可能性があります。
弁護士基準は裁判で認められてきた金額でもあるため、保険会社からすると「裁判になっていない段階では支払いを避けたい金額」でもあるのです。
よって、示談交渉の段階から弁護士に依頼をして、増額交渉を任せることがポイントといえます。弁護士が交渉の場に立つことで、裁判に発展する可能性を示すことができるからです。
アトム法律事務所では、交通事故でケガをされた被害者からの相談を無料で受け付けています。慰謝料の見通し、増額幅の予想など、お気軽におたずねください。
関連記事
交通事故が労災事故であるときの対応
仕事中や通勤途中の交通事故により骨折となった場合には、労災保険の利用が可能です。
交通事故が労災事故である場合には「相手の保険会社への請求」と「自分の労災保険」を併用することで、もらえる補償を最大化できる可能性があります。
たとえば、労災保険しか利用しない場合には、交通事故の慰謝料はもらえません。労災保険から慰謝料は支払われないためです。
逆に、労災保険が休業補償に設ける特別支給金は、交通事故相手から受け取る損害賠償金とは別に受け取ることができるため、両方に請求することで受取額を最大化できます。
このほか労災保険には事故の過失割合は影響しないという特徴もあるため、適切に使っていくことが被害者のメリットにつながるでしょう。
以下の関連記事も参考にして、弁護士への相談も検討してみてください。
骨折の入通院慰謝料の相場と計算方法
入通院慰謝料とは、交通事故で怪我をしたことで生じる精神的苦痛に対する補償です。
具体的には、以下のような精神的苦痛を補償します。
- 治療や手術で怖い思い・痛い思いをした
- 入院・通院による時間的・身体的拘束により、不便な思いをした
- 怪我が治るまでの間、痛い思いや不便な思いをした
交通事故で怪我をしたことによる精神的苦痛の大きさは、人それぞれで客観的には測れません。そこで、治療期間の長さから精神的苦痛の程度を算定して入通院慰謝料の金額が判断されます。
入通院慰謝料は1日でも入院や通院をすれば請求できるので、交通事故で骨折したときはほぼ確実に入通院慰謝料を請求可能です。
入通院慰謝料の相場|治療期間ごとの相場表や計算機あり
まずは、交通事故で骨折したときの入通院慰謝料の相場を確認していきましょう。入通院慰謝料は治療期間で金額が決まるため、治療期間ごとに相場を知ることがポイントです。
なお、相場の入通院慰謝料を計算するには、弁護士基準による算出が必要です。弁護士基準で入通院慰謝料を算出する時は、慰謝料の算定表を用います。
縦列の通院月数と横列の入院月数が交わる部分をみると、入通院慰謝料の相場がわかります。
例えば、骨折により入院1ヶ月で通院4ヶ月となった場合、弁護士基準での入通院慰謝料相場は130万円です。
こうした法的に正当な「弁護士基準の入通院慰謝料」がありながら、相手の任意保険会社から積極的に提示してくれることはほぼありません。増額交渉によって弁護士基準へ近づけていくことが必要です。
そして、相手の保険会社との交渉は交通事故の損害賠償請求にくわしい弁護士に任せることが最適です。
アトム法律事務所では、あなたの事故ではどれくらいの慰謝料が妥当なのか、後遺症が残っているならどのように慰謝料を獲得していくのかなど、さまざまなご質問に無料で回答しています。
なお、治療期間が30日単位ではなく端数が生じるという方は、以下の慰謝料計算機を使ってみてください。少しの情報入力だけで慰謝料の目安がわかります。
【比較】弁護士基準の骨折慰謝料はどれくらい高額?
加害者の任意保険会社は少しでも支払う慰謝料の金額を減らすため、自賠責基準で算出された金額や、それに近い金額を支払うと提案してくることが多いでしょう。
自賠責基準では、日額4,300円を対象日数分、入通院慰謝料として支払うことになっています。
任意保険会社の基準は非公開とされており、各社で若干の違いはあるため、ここでは自賠責基準と弁護士基準で計算した時の慰謝料の相場を下表で比較してみます。
通院日数 | 自賠責基準* | 弁護士基準(重傷) |
---|---|---|
30日 | 25万8,000円 | 116万円** |
60日 | 51万6,000円 | 116万円 |
90日 | 77万4,000円 | 116万円 |
120日 | 77万4,000円 | 116万円 |
150日 | 77万4,000円 | 116万円 |
*2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用
**相場より低額になる可能性あり
自賠責基準で計算した慰謝料よりも、弁護士基準で計算した慰謝料の方が大幅に高額になることがわかります。
自賠責基準に近い金額で提案を受けているという方は、示談を成立させる前に、一度弁護士に相談してみてください。
ギプス固定での自宅療養や入院待期期間は入院と見なす
入通院慰謝料の算定において、ギプス装着による自宅療養期間や入院待機期間があるときは慰謝料減額の事由にならないどころか、入院期間として扱われることがあります。
たとえば、入院1ヶ月、ギプスで自宅療養1ヶ月、通院5ヶ月(リハビリ含む)だった場合、入通院慰謝料は入院2ヶ月・通院5ヶ月として計算されるのです。
ただし、自宅療養期間が入院期間として認められるかどうかは、示談交渉次第です。
以下のような状況であれば、自宅療養は入院と同様のものであったとみなされやすいでしょう。
- 医師から自宅療養の指示があった
- 家族が自宅で付添い介護を行った
自宅療養中の記録を残しておくことも、自宅療養を入院扱いにしてもらうために有効です。
通院頻度が少ない場合は注意
骨折の治療期間に対して、実際の通院日数が少ない場合や「漫然治療」が続いていた場合は、入通院期間ではなく「実通院日数の3.5倍」を基準に入通院慰謝料が算定される場合があります。
ただし、ギプス装着による自宅療養などの正当な理由によって通院日数が少なくなっている場合は、基本的に慰謝料減額の事由とはなりません。
正当な理由があるにもかかわらず、加害者側が通院日数を根拠に慰謝料の減額を主張してきた場合は、弁護士にご相談ください。
骨折は固定して安静にすること自体が治療方針になる段階もあります。
そのため治療期間に対して、実際の通院日数が少ないと指摘される可能性がよくあるといえるのです。
医師の指示に従ってギプスを装着して安静にしていたにもかかわらず、通院頻度が低いなどと指摘を受けて慰謝料を減らされている可能性があるなら、一度弁護士に相談してみてください。
関連記事『通院日数が少ない場合でも交通事故の慰謝料を適正額で獲得する方法』でも、通院日数が少ないと言われた場合にも対応策を紹介しているので、あわせて参考にしてください。
骨折の後遺障害慰謝料の相場と計算方法
後遺障害慰謝料とは、交通事故の治療が終わったあとにも後遺症が残ったことへの補償です。ただし、後遺障害慰謝料は単に骨折による後遺症が残っただけでは請求できません。
後遺症が一定の基準を満たす「後遺障害」と認定されたときに、後遺障害慰謝料の請求が可能となるのです。
骨折により残った後遺症の症状が、今後も治る見込みがなく労働能力に影響していると認定される必要があります。
この認定を「後遺障害等級認定」といい、後遺障害慰謝料を請求するためには後遺障害等級認定を受けることが必要です。
交通事故で骨折したときの後遺症
交通事故による骨折で生じる症状は、以下の通りです。
骨折の後遺症
- 欠損障害
腕や脚、手指足指の全部や一部が失われる - 機能障害
腕や脚が事故前よりも動かせなくなる - 変形障害
骨がゆがんだままとなってしまう - 短縮障害
事故前より骨が短くなってしまう - 神経障害
折れた骨が神経を傷つけ、しびれたり動かしづらくなる
骨折の治療にボルトを入れた場合や、うまく骨がくっつかないといった場合にも注意してください。
こうした症状について、治療しても治らない「後遺症」となったときには、後遺障害等級認定を受けましょう。
交通事故の損害賠償額を算定するときには「後遺障害等級」が一つの指標とされており、等級認定を受けていない症状についての補償を受けることは難しい可能性が高いです。
後遺障害等級認定を受けられたら、障害等級をベースにした後遺障害慰謝料を請求できます。
後遺障害慰謝料の一覧表
後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級は1級から14級まであり、認定された等級に応じて後遺障害慰謝料の金額が変わります。具体的な金額の目安は以下の表のとおりです。
後遺障害等級 | 自賠責基準※ | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1650万円 (1600万円) | 2800万円 |
2級・要介護 | 1203万円 (1163万円) | 2370万円 |
1級 | 1150万円 (1100万円) | 2800万円 |
2級 | 998万円 (958万円) | 2370万円 |
3級 | 861万円 (829万円) | 1990万円 |
4級 | 737万円 (712万円) | 1670万円 |
5級 | 618万円 (599万円) | 1400万円 |
6級 | 512万円 (498万円) | 1180万円 |
7級 | 419万円 (409万円) | 1000万円 |
8級 | 331万円 (324万円) | 830万円 |
9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
10級 | 190万円 (187万円) | 550万円 |
11級 | 136万円 (135万円) | 420万円 |
12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
13級 | 57万円 (57万円) | 180万円 |
14級 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
※()内は 2020年4月1日以前に発生した交通事故の場合
上記の表からもわかる通り、入通院慰謝料と同様に、後遺障害慰謝料についても弁護士基準の方が高額になります。
また、等級が1つ違うだけでも後遺障害慰謝料の金額は大きく変わってしまいます。後遺障害慰謝料の請求にあたっては、適切な後遺障害等級に認定されることが重要です。
適切な後遺障害等級認定を受けるために工夫する
後遺障害慰謝料の金額を左右する後遺障害等級は、審査機関による審査で決定されます。
ただし、後遺障害等級は認定されなかったり、適切な等級よりも低い等級が認定されてしまったりすることもあります。
その場合、後遺障害慰謝料が受け取れないか、適切な金額よりも低くなってしまいます。
適切な後遺障害等級に認定されるには、審査機関に症状の程度が伝わりやすいよう、申請書類に工夫をすることが大切です。
しかし、申請書類に工夫をすると言っても、どのようなことをすればよいかわからない方も多いでしょう。以下の理由から、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
- 弁護士は過去の認定事例に精通しているので、より効果的な審査対策ができる。
- 適切な後遺障害等級認定を得やすい「被害者請求」の手続きは書類の準備の手間がかかるが、弁護士に依頼すれば書類集めを代わりにしてもらえる。
弁護士を立てて後遺障害認定の手続きをするメリットについて詳しくは、『後遺障害申請の被害者請求|流れや弁護士に依頼すべき理由を解説』の記事をご覧ください。
また、後遺障害認定は異議申立てをすると再審査が受けられます。すでに後遺障害認定を受けたものの、結果に納得がいかないような場合も弁護士にご相談ください。
骨折で複数の後遺症が残ったときの後遺障害等級
骨折以外にも後遺障害があり、複数の後遺障害等級が認定された場合は、それらの等級を併合した「併合等級」に応じた後遺障害慰謝料を請求できます。
一つ一つの後遺障害等級しだいですが、重い方の等級が1級から3級繰り上がることがあるため、賠償金はより高額なものとなるのです。
たとえば、頭蓋骨骨折により高次脳機能障害を負ってしまったことに加えて、頭部を打ち付けたことで視力が下がってしまったり、外傷によって耳が聞こえにくくなったことも後遺障害に認定されると、併合により後遺障害等級が繰り上がることもあるのです。
事故の衝撃が相当に強い場合や、運転手の体が露出しているバイク乗車中のように、全身に衝撃を受けやすいときには他の後遺障害が生じやすいといえるでしょう。
複数の後遺症について後遺障害等級認定の見通しを知りたい方は、後遺障害等級認定のルールについて解説している関連記事も参考にしてください。
骨折部位ごとの後遺障害等級と後遺障害慰謝料
骨折と言っても部位に違いがあり、認定されうる後遺障害等級も多岐にわたります。
そこで、本記事内では以下の部位ごとに、それぞれ該当しうる後遺障害等級と後遺障害慰謝料の相場を解説していきます。
(1)頭蓋骨骨折
頭蓋骨の骨折は、主に頭蓋円蓋部(頭蓋骨の上の球の部分)と頭蓋底(頭蓋骨の底部)で生じます。
頭蓋骨骨折による脳損傷によって以下のような後遺症が残ることがあるでしょう。
頭蓋骨骨折による後遺症
- 遷延性意識障害(植物状態)
意識がなく寝たきりの状態になってしまう - 高次脳機能障害
認知面・行動面・人格(性格)面に問題が生じ、日常生活に影響が出る - びまん性軸索損傷
脳の軸索が引っ張られたことで断裂し、高次脳機能障害や神経症状などが起こる
頭蓋骨骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
頭蓋骨骨折の後遺障害慰謝料相場は110万円から2,800万円となっており、後遺障害等級によって大きく異なります。
頭蓋骨の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 2,800万円 |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 2,370万円 |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 1,990万円 |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 1,400万円 |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 1,000万円 |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 690万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
※1級1号と2級1号は別表第一の介護を要する後遺障害
頭蓋骨骨折による具体的な等級認定基準を知りたい方は『頭蓋骨骨折の後遺症はどう残る?慰謝料の相場と後遺障害認定もわかる!』を参考にしてください。
また、頭蓋骨骨折の場合は、頭蓋骨だけでなく、顔面についても骨折している可能性があるといえるでしょう。
顔面骨折による症状や、認定されうる後遺障害等級については『顔面骨折で後遺障害認定される?鼻骨骨折・頬骨骨折・下顎骨折の後遺症と慰謝料相場』の記事で確認可能です。
(2)頸椎・胸椎・腰椎圧迫骨折
後方からの追突や側面衝突などで、急激な衝撃が加わることで圧迫骨折が発生することがあります。脊椎の椎体に圧力がかかって押しつぶされてしまうと、脊椎が圧迫骨折してしまうのです。
脊椎の骨折が生じた際、脊椎のどの部分が折れたかによって、頸椎骨折、胸椎骨折、腰椎骨折と呼び分けられます。
脊椎の圧迫骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
脊椎骨折の後遺症
- 変形障害
症状固定後も脊椎が歪んだままになってしまう - 運動障害
背中や腰を曲げ伸ばししにくくなる - 神経障害
脊髄の損傷により麻痺やしびれが生じる
なお、外力によって骨が中の神経まで圧迫することを破裂骨折といい、圧迫骨折とは異なる診断名となります。
頸椎・胸椎・腰椎圧迫骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
頸椎・胸椎・腰椎圧迫骨折の後遺障害慰謝料は110万円から1,180万円まで幅広く、後遺障害等級ごとに相場が異なります。
頸椎・胸椎・腰椎圧迫骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、等級ごとの後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの | 1,180万円 |
6級相当 | 頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの | 1,180万円 |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの | 830万円 |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの 頸部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの | 830万円 |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの | 420万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
圧迫骨折のより具体的な等級認定基準を知りたい方は、以下の記事が参考となります。
(3)鎖骨骨折
鎖骨は、遠位端(肩に近い位置)、骨幹部(中心に近い位置)、近位端(胸骨に近い位置)といったように呼び分けられています。
鎖骨の骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
鎖骨骨折の後遺症
- 変形障害
骨幹部の骨折により、症状固定後も鎖骨が歪んだままになってしまう - 機能障害
遠位端の骨折により肩関節が動かしづらくなる - 神経障害
折れた鎖骨の骨片が神経を傷つけ、上肢や手指を動かしづらくなったりしびれたりする
鎖骨骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
鎖骨骨折による後遺障害慰謝料の相場は110万円から830万円で、認定された等級によって金額は大きく異なります。
鎖骨の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
8級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | 830万円 |
10級10号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | 550万円 |
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの | 290万円 |
12級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | 290万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
(4)上腕骨骨折
上腕骨は、遠位端(肘に近い位置)、骨幹部(中心に近い位置)、近位端(肩に近い位置)といったように呼び分けられます。
上腕骨の骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
上腕骨骨折の後遺症
- 欠損障害
開放骨折や粉砕骨折などの治療で上肢を切断し、上肢が失われたままになる - 変形障害
骨幹部の骨折により症状固定後も上腕骨が歪んだままになってしまう - 運動障害
骨幹部の骨折により偽関節が残り、硬性補装具なしでは上肢を動かすことが困難となる - 機能障害
遠位端の骨折により肘関節が動かしづらくなる
あるいは、近位端の骨折により肩関節が動かしづらくなる - 神経障害
折れた上腕骨の骨片が神経を傷つけ、上肢や手指を動かしづらくなったりしびれたりする
上腕骨骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
上腕骨骨折の後遺障害慰謝料は110万円から2,800万円が相場となっており、後遺障害等級が何級と認定されるかで大幅に変わります。
上腕骨の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
1級3号 | 両上肢をひじ関節以上で失つたもの | 2,800万円 |
4級4号 | 一上肢をひじ関節以上で失つたもの | 1,670万円 |
7級9号 | 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | 1,000万円 |
8級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | 830万円 |
8級8号 | 一上肢に偽関節を残すもの | 830万円 |
10級10号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | 550万円 |
12級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | 290万円 |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの | 290万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
上腕骨骨折では、腕を切断せざるをえなかったり、正しく癒合せずに偽関節となったりと、個人によって様々な後遺障害が残ってしまいます。
以下の関連記事では後遺症にあわせたよりくわしい後遺障害の解説をおこなっていますので、あわせてお読みください。
理解が深まる記事
(5)橈骨・尺骨骨折
前腕は、親指側から肘に向かって伸びている橈骨と、小指側から肘に向かって伸びている尺骨という2本の長管骨で構成されています。
橈骨と尺骨は、どちらも遠位端(手首に近い位置)、骨幹部(中心に近い位置)、近位端(肘に近い位置)といったように呼び分けられているのです。
橈骨と尺骨の骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
橈骨・尺骨骨折の後遺症
- 欠損障害
開放骨折や粉砕骨折などの治療で上肢を切断し、上肢が失われたままになる - 変形障害
骨幹部の骨折により症状固定後も橈骨や尺骨が歪んだままになってしまう - 運動障害
骨幹部の骨折により偽関節が残り、硬性補装具なしでは上肢を動かすことが困難となる - 機能障害
遠位端の骨折により手首関節が動かしづらくなる
または、近位端の骨折により肘関節が動かしづらくなる - 神経障害
折れた橈骨・尺骨の骨片が神経を傷つけ、上肢や手指を動かしづらくなったりしびれたりする
橈骨・尺骨骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
橈骨骨折・尺骨骨折の後遺障害慰謝料相場は110万円から2,370万円となっており、認定された等級によって金額が大きく異なります。
橈骨と尺骨の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
2級3号 | 両上肢を手関節以上で失つたもの | 2,370万円 |
5級4号 | 一上肢を手関節以上で失つたもの | 1,400万円 |
7級9号 | 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | 1,000万円 |
8級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | 830万円 |
8級8号 | 一上肢に偽関節を残すもの | 830万円 |
10級10号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | 550万円 |
12級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | 290万円 |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの | 290万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
後遺障害の認定基準がわかる記事
(6)手指の骨折
手指の骨は、手の先端から順に末節骨・中節骨・基節骨などで構成されています。それぞれの骨の位置は以下の図を参照にしてください。
交通事故では、手指の骨が粉々にくだけてしまう粉砕骨折や、靭帯や筋肉などが急激に収縮したため骨がはがれ落ちてしまう剥離骨折が起こる場合があります。
手指の骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
手首骨折の後遺症
- 欠損障害
開放骨折や粉砕骨折などの治療で手指を切断し、手指が失われたままになる - 機能障害
手指を動かしにくくなったり、まったく動かなくなったりする - 爪の変形
爪の下に血液が溜まってしまったため爪が青黒くなり、爪の変形がそのまま残る
手指の骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
手指の骨折で認められる後遺障害慰謝料は110万円から1,990万円が相場となっており、何級に認定されるかで金額は違ってきます。
手指の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
なお、手指の骨折により機能障害が残った場合、用を廃した手指の種類や本数に応じて後遺障害等級が決まります。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
3級5号 | 両手の手指の全部を失つたもの | 1,990万円 |
4級6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの | 1,670万円 |
6級8号 | 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの | 1,180万円 |
7級6号 | 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの | 1,000万円 |
7級7号 | 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの | 1,000万円 |
8級3号 | 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの | 830万円 |
8級4号 | 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの | 830万円 |
9級12号 | 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの | 690万円 |
9級13号 | 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの | 690万円 |
10級7号 | 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの | 550万円 |
11級8号 | 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの | 420万円 |
12級9号 | 一手のこ指を失つたもの | 290万円 |
12級10号 | 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの | 290万円 |
13級6号 | 一手のこ指の用を廃したもの | 180万円 |
13級7号 | 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの | 180万円 |
14級6号 | 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの | 110万円 |
14級7号 | 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの | 110万円 |
骨折などで手指の欠損・可動域制限といった後遺症を負った場合は、『手指の後遺障害|指切断・欠損、可動域制限の認定基準。マレット指で曲がらない』の記事をご参考ください。
可動域制限で後遺障害認定を受けるポイントもわかります。
(7)肋骨骨折
肋骨は胸部に存在する左右12対の骨で、肋硬骨と肋軟骨で構成されています。
肋骨の骨折の骨片が肺を傷つけることで、肺挫傷や気胸が起こる可能性があります。
また、下の方の肋骨が折れた場合、肝臓や脾臓を損傷させてしまうこともあるでしょう。
内臓に関する後遺障害等級と慰謝料相場については、ここでは割愛します。
肋骨の骨折に限って言えば、残る可能性がある後遺障害は以下のとおりです。
肋骨骨折の後遺症
- 変形障害
症状固定後も肋骨がゆがんだままになってしまう - 神経障害
折れた肋骨の骨片が神経を傷つけ、痛みやしびれが残る
肋骨骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
肋骨骨折の後遺障害慰謝料は110万円から290万円が相場となっており、後遺障害12級または14級のいずれと認定されるかで金額が変わります。
肋骨の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの | 290万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
肋骨骨折を負った場合、同時に胸骨骨折も負う可能性があります。肋骨骨折と胸骨骨折をあわせて解説した関連記事『肋骨骨折の後遺症は慰謝料いくら?胸骨骨折の後遺障害や胸の痛みの原因も解説』もおすすめです。
(8)骨盤骨折
骨盤は体幹の一番下にある部位で、左右一対の寛骨、仙骨、尾骨で構成されています。
骨盤の骨折に限って言えば、以下のような後遺症が残る可能性があります。
骨盤骨折の後遺症
- 変形障害
症状固定後も骨盤が歪んだままになってしまう - 下肢の短縮障害
骨盤が歪んだままになって一方の足の長さが変わる - 機能障害
股関節の可動範囲が狭くなる
人口関節を入れる手術を受けたことにより可動域制限が生じる場合もある - 神経障害
折れた骨盤の骨片が神経を傷つけ、痛みやしびれが残る
なお、女性に限り、骨盤を骨折した影響で正常分娩が困難になった場合も後遺障害とみなされる可能性がありますので、以下に後遺障害等級と慰謝料の相場を紹介します。
骨盤骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
骨盤骨折の後遺障害慰謝料は110万円から830万円が相場とされており、後遺障害等級ごとに金額が変わります。
骨盤の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
8級5号 | 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの | 830万円 |
8級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | 830万円 |
9級17号 | 生殖器に著しい障害を残すもの | 690万円 |
10級8号 | 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの | 550万円 |
10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | 550万円 |
11級10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの※ | 420万円 |
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの | 290万円 |
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | 290万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
13級8号 | 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの | 180万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
※骨盤骨折においては、女性の産道が狭まり、正常分娩が困難になった場合を指す
骨盤は頑強な部位なので、骨折が生じるほどの衝撃を受けたのであれば、周辺の神経や、膀胱、生殖器、腸などの臓器が損傷してしまっている可能性があるでしょう。
骨盤骨折に関するよりくわしい等級認定のほか、内臓損傷、足の短縮や変形については下記の関連記事をお読みください。
後遺障害の認定基準がわかる記事
(9)大腿骨骨折
大腿骨は太ももの中を通っている1本の太い骨で、股関節側から順に大腿骨頭部、大腿骨頸部、大腿転子部、大腿転子部、大腿骨幹部、大腿骨顆部といったように呼び分けられています。
交通事故で生じやすいのは、骨盤と接している大腿骨頸部の骨折です。
大腿骨頸部が折れた場合、骨折が重度でなければ金属製の大腿骨頭を固定し、股関節の修復を試みることになるでしょう。
股関節の修復が困難であれば、一部またはすべての股関節を人工関節に置換します。
この場合、後遺障害等級としては低くとも10級に認められることが多いです。
その他に、大腿骨の骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
大腿骨骨折の後遺症
- 欠損障害
開放骨折や粉砕骨折などの治療で下肢を切断し、下肢が失われたままになる - 下肢の短縮障害
大腿骨骨折が原因で下肢が短縮してしまう - 機能障害
股関節の可動範囲が狭くなる - 神経障害
折れた大腿骨の骨片が神経を傷つけ、下肢や足指を動かしづらくなったりしびれたりする
大腿骨骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
大腿骨骨折の後遺障害慰謝料は110万円から2,800万円が相場であり、認定される後遺障害等級に応じて相場が異なります。
大腿骨の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失つたもの | 2,800万円 |
4級5号 | 一下肢をひざ関節以上で失つたもの | 1,670万円 |
7級10号 | 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | 1,000万円 |
8級5号 | 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの | 830万円 |
8級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの※ | 830万円 |
8級9号 | 一下肢に偽関節を残すもの | 830万円 |
10級8号 | 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの | 550万円 |
10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの※ | 290万円 |
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | 290万円 |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの | 290万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
13級8号 | 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの | 180万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
※大腿骨頭部に人工骨頭置換術を施した場合、10級11号か8級7号が認定される
後遺障害の認定基準がわかる記事
(10)脛骨・腓骨骨折
下腿は、足指の親指側から膝に向かって伸びる脛骨と、足の小指側から膝に向かって伸びる腓骨という2本の長管骨で構成されています。
脛骨と腓骨は、どちらも遠位端(足首に近い位置)、骨幹部(中心に近い位置)、近位端(膝に近い位置)といったように呼び分けられているのです。
脛骨と腓骨の骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
脛骨・腓骨の骨折の後遺症
- 欠損障害
開放骨折や粉砕骨折などの治療で下肢を切断し、下肢が失われたままになる - 変形障害
骨幹部の骨折により症状固定後も脛骨や腓骨が歪んだままになってしまう - 運動障害
骨幹部の骨折により偽関節が残り、硬性補装具なしでは歩行することが困難となる - 機能障害
遠位端の骨折により足首関節が動かしづらくなる
または、近位端の骨折により膝関節が動かしづらくなる - 神経障害
折れた脛骨・腓骨の骨片が神経を傷つけ、下肢や足指を動かしづらくなったりしびれたりする
脛骨・腓骨の骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
脛骨骨折や腓骨骨折の後遺障害慰謝料は、110万円から2,370万円が相場です。後遺障害等級に応じて金額が大きく変わります。
脛骨と腓骨の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
2級4号 | 両下肢を足関節以上で失つたもの | 2,370万円 |
4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失つたもの | 1,670万円 |
5級5号 | 一下肢を足関節以上で失つたもの | 1,400万円 |
7級8号 | 一足をリスフラン関節以上で失つたもの | 1,000万円 |
7級10号 | 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | 1,000万円 |
8級5号 | 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの | 830万円 |
8級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | 830万円 |
8級9号 | 一下肢に偽関節を残すもの | 830万円 |
10級8号 | 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの | 550万円 |
10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | 550万円 |
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | 290万円 |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの | 290万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
13級8号 | 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの | 180万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 110万円 |
後遺障害の認定基準がわかる記事
(11)足指の骨折
足指の骨は、足の先端から順に末節骨・中節骨・基節骨などで構成されています。
交通事故では、足指の骨が粉々にくだけてしまう粉砕骨折や、靭帯や筋肉などが急激に収縮したため骨がはがれ落ちてしまう剥離骨折が起こる場合があるでしょう。
足指の骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
足指の骨折の後遺症
- 欠損障害
粉砕骨折などの治療で足指を切断し、足指が失われたままになる - 機能障害
足指を動かしにくくなったり、まったく動かなくなったりする
足指の骨折の後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士基準)
足指の骨折による後遺障害慰謝料は110万円から1,400万円が相場です。
後遺障害認定を受けた足は片足・両足どちらか、指の本数は何本か、どんな後遺障害かで等級が分かれます。
足指の骨折で認定される可能性がある主な後遺障害等級と、認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
なお、足指の骨折により機能障害が残った場合、用を廃した足指の種類や本数に応じて後遺障害等級が決まります。
等級 | 後遺障害 | 慰謝料 |
---|---|---|
5級8号 | 両足の足指の全部を失つたもの | 1,400万円 |
7級11号 | 両足の足指の全部の用を廃したもの | 1,000万円 |
8級10号 | 一足の足指の全部を失つたもの | 830万円 |
9級14号 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの | 690万円 |
9級15号 | 一足の足指の全部の用を廃したもの | 690万円 |
10級9号 | 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの | 550万円 |
11級9号 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの | 420万円 |
12級11号 | 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの | 290万円 |
12級12号 | 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの | 290万円 |
13級9号 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの | 180万円 |
13級10号 | 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの | 180万円 |
14級8号 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの | 110万円 |
骨折などで足の指を切断した・足の指が曲がらないといった後遺障害を負った場合は、『交通事故で足指を切断した・曲がらなくなった|後遺障害等級の認定基準は?』の記事もお役立てください。後遺障害認定を受けるためのポイントもわかります。
交通事故で骨折した人が気になる損害賠償金の疑問
交通事故で骨折したら何を損害賠償請求できる?
一般的に、交通事故の損害賠償には、治療費、休業損害、入通院慰謝料、逸失利益、後遺障害慰謝料など複数の内訳があげられます。
交通事故で骨折した場合に請求できる損害賠償金は、慰謝料だけではありません。
各損害賠償金の金額の決め方については、関連記事『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』も参考にお読みください。
ボルトやプレートによる固定や抜釘手術の費用は請求できる?
骨折治療の過程において、ボルトやプレートを入れて固定が必要になることがあります。
そして、ボルトやプレートが十分に役割を果たしたタイミングで、除去する抜釘手術(ばっていしゅじゅつ)も行われるのです。
こうした手術費用や手術のための入院費用や入院期間中の慰謝料は、事故の損害賠償として相手に請求できます。
骨折の治療のために仕事を休んだ補償はもらえる?
骨折の治療のために仕事ができない場合、被害者としては給料を得ることができないという損害が生じます。こうした場合には休業損害として、相手方に賠償請求可能です。
よく勘違いされやすいのですが、実際に金銭収入を得ていない主婦でも、家事労働ができないという損害について休業損害の請求ができます。
休業損害の請求にあたっては、職業によって請求に必要な手続きが変わります。たとえば、会社員であれば会社に協力を依頼して休業損害証明書の用意が必要です。
休業損害の請求については、以下の関連記事の解説を参考にしてください。
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関連記事:交通事故の弁護士費用特約 - 弁護士特約がない場合
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※成功報酬を差引いても、弁護士を立てた方が多くの示談金が手元に入ることが多い。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了