交通事故での腕切断・偽関節・変形癒合の慰謝料や後遺障害等級は?

交通事故で腕を切断した方、腕に偽関節や変形が残った方向けに、後遺障害等級や慰謝料について解説します。
交通事故やバイク事故で腕を骨折し、切断や偽関節、変形癒合といった後遺症が残ってしまった方は、強いショックを受けると同時に、将来の生活について不安を抱えていることと思います。
こうした後遺症に対して後遺障害認定を受ければ、後遺障害等級に応じた「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」を事故の相手方に請求することが可能です。
この記事では、交通事故やバイク事故による腕の切断や変形癒合、偽関節についての後遺障害認定基準、後遺障害に認定されたら請求できる慰謝料の相場や、慰謝料を受け取るまでの流れなどを詳しく解説します。ぜひお役立てください。
お悩みに合わせて、以下の記事もお役立てください。
- 腕の切断や変形ではなく手首などの可動域制限についてお悩みの方
『肩や手首の後遺障害・可動域制限とは?』 - 腕ではなく手指の切断・可動域制限についてお悩みの方
『指切断・欠損、指が曲がらない可動域制限、マレット指の後遺障害等級認定基準』
目次
交通事故で腕切断・偽関節・変形癒合した場合の賠償金は?
交通事故やバイク事故で腕の切断や変形が生じた場合に請求できる主な賠償金は、次の通りです。
- 入通院慰謝料:入院・通院した期間に応じて金額が決まる
- 後遺障害慰謝料:後遺症に対して認定される、後遺障害等級に応じて金額が決まる
- 逸失利益:後遺障害による労働能力の低下率や事故前の収入などによって金額が決まる
- その他:介護費用や休業損害、治療費なども請求可能
それぞれの計算方法や相場などについて、解説します。
なお、腕の切断・偽関節・変形癒合で認定される後遺障害等級については、本記事内で後程解説します。
入通院慰謝料|入通院期間で金額が決まる
入通院慰謝料とは、「交通事故によるケガで入院・通院することで生じる精神的苦痛」を補償するものです。
腕の切断や偽関節、変形癒合では、基本的に以下の表を用いて入通院慰謝料を算定します。

ただし、上記は重傷用の表です。むちうちや打撲などの軽傷の場合は、軽傷用の表を用いるため、同じ入通院期間でも金額が異なります。
なお、上記は過去の判例に基づく「弁護士基準」と呼ばれる金額ですが、加害者側の保険会社は自社独自の基準(任意保険基準)に基づく金額を提示してきます。
任意保険基準は各社で異なり非公開ですが、国が定めた最低限の基準である「自賠責基準」に近いことが多いので、ここでは自賠責基準における計算も紹介します。
【自賠責基準における計算】
4300円 × 対象日数
※次のうちどちらか短い方を「対象日数」として採用します。
- 治療期間
※治療期間とは、一番最初に病院を受診した日~治療終了までの期間をさします。 - 実際に治療した日数×2
後遺障害慰謝料|後遺障害慰謝料で金額が決まる
後遺障害慰謝料とは、交通事故によって後遺症が残り、後遺障害等級の認定を受けた場合に請求できる慰謝料です。
金額は、後遺障害等級に応じて決まります。
ここでは、腕の切断・偽関節・変形癒合が該当する等級の慰謝料相場を紹介します。
【腕切断】
等級 | 弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|---|
1級3号 | 2,800万円 | 1,150万円 (1,100万円) |
2級3号 | 2,370万円 | 998万円 (958万円) |
4級4号 | 1,670万円 | 737万円 (712万円) |
5級4号 | 1,400万円 | 618万円 (599万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故
【偽関節】
等級 | 弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|---|
7級9号 | 1,000万円 | 419万円 (409万円) |
8級8号 | 830万円 | 331万円 (324万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故
【変形癒合】
等級 | 弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|---|
12級8号 | 290万円 | 94万円 (93万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故
逸失利益|労働能力の低下によって金額が決まる
逸失利益とは、後遺障害の影響で減ってしまう将来的な収入の補償です。後遺障害慰謝料と同様、後遺障害等級の認定を受けると請求できます。
交通事故やバイク事故で腕の切断や変形といった後遺症が残ると、仕事に大きな影響が生じることが多いです。現職を辞めざるを得なくなったり、今後の昇進・昇給ができなくなったり、配置転換になったりすることがあるでしょう。
このように後遺障害の影響で将来的に減ってしまう収入については、逸失利益という形で事故の相手方に補償してもらえるのです。

逸失利益は、簡単にまとめると「症状固定から67歳までの間、労働能力を〇%喪失した状態で働く場合の減収額」となります。
労働能力喪失率は後遺障害等級ごとに目安が決められており、以下の通りです。
【腕切断】
等級 | 喪失率 |
---|---|
1級3号 | 100% |
2級3号 | 100% |
4級4号 | 92% |
5級4号 | 79% |
【偽関節】
等級 | 喪失率 |
---|---|
7級9号 | 56% |
8級8号 | 45% |
【変形癒合】
等級 | 喪失率 |
---|---|
12級8号 | 14% |
具体的な計算式は以下の通りです。
逸失利益の計算式
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
- 基礎収入
事故前の年収のこと。
専業主婦や学生などは平均賃金を用いることもある。 - 労働能力喪失率
後遺障害によって落ちた労働能力を示す数値。
後遺障害等級ごとにおおよその目安が決まっている。 - 労働能力喪失期間
労働能力を失った期間のこと。基本的に「症状固定時~67歳」となる。 - ライプニッツ係数
逸失利益を預金・運用することで生じる利息を差し引くための数値。
ただし、労働能力喪失率や労働能力喪失期間などは、実情に応じて柔軟に変動することがあります。
特に偽関節などの変形障害では、相手方から「後遺障害が労働にあまり影響していると考えられないため、労働能力喪失率を低く見積もるべきだ」などと主張されることがあります。
逸失利益は高額になりやすい分、加害者側と揉めやすい費目でもあるため、お困りの場合は弁護士までご相談ください。
▼複雑な逸失利益の計算も、簡単にできます。
関連記事
交通事故の逸失利益とは?計算方法を解説!早見表・計算機で相場も確認
その他|介護費・義肢の購入費など
交通事故やバイク事故で腕の切断・変形といった後遺障害を負った場合、慰謝料や逸失利益の他にも以下のような費目を示談金として請求できます。
請求できる費目
- 介護費
将来に私介護が必要になった場合の補償 - 義肢などの購入費
義肢の作成費用やバリアフリー住宅へのリフォーム費用など - 治療関係費
診察費、手術費、入院雑費、通院交通費、付添看護費など - 休業損害
交通事故で仕事を休んだことによる減収の補償 - 物損分の費目
車の修理費など
交通事故により腕を切断した場合は、義手の作成費用やバリアフリーに必要な自宅のリフォーム費用などについても請求することが可能です。
義手については、耐用年数(通常5〜7年)に基づく将来の交換費用や、メンテナンス費用も含めて請求できるでしょう。
また、腕の切断により介護が必要となったのであれば、将来分も含めた介護費用についても請求できます。
しかし、このような費用についてはどこまでが本当に必要な費用なのかを証明することが難しいケースもあるため、専門家である弁護士に相談して請求内容を決めるべきでしょう。
各費目の詳しい計算方法や相場を知りたい場合は、『交通事故の損害賠償とは?請求できる賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』をご覧ください。
腕を切断した場合の後遺障害等級と慰謝料
ここからは、腕の切断・偽関節・変形癒合の後遺障害等級と慰謝料について解説します。
まずは腕の切断から、認定されうる等級別に、認定基準や慰謝料相場を見ていきましょう。
両腕を肘関節以上で切断した|1級
交通事故やバイク事故で両腕を肘関節より上で切断した場合、後遺障害1級3号に認定される可能性があるでしょう。
【1級3号の認定基準】
両上肢をひじ関節以上で失ったもの
上肢を肘関節以上で失ったとは、以下のいずれかに該当していることを言います。
- 肩関節で、肩甲骨と上腕部を切断した
- 肩関節と肘関節の間で、腕を切断した
- 肘関節で、上腕骨と橈骨・尺骨を切断した
後遺障害1級の後遺障害慰謝料相場は、以下のとおりです。
弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|
2,800万円 | 1,150万円(1,100万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合
両腕を手関節以上で切断した|2級
交通事故やバイク事故で両腕を手関節より上で切断した場合、後遺障害2級3号に認定される可能性があります。
【2級3号の認定基準】
両上肢を手関節以上で失ったもの
上肢を手関節以上で失ったとは、以下のいずれかに該当していることです。
- 肘関節と手関節の間で、腕を切断した
- 手関節で、橈骨・尺骨と手根骨を切断した
後遺障害2級の後遺障害慰謝料相場は、以下のとおりです。
弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|
2,370万円 | 998万円(958万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故
片腕を肘関節以上で切断した|4級
交通事故やバイク事故でどちらか片方の腕を肘関節より上で切断した場合、後遺障害4級4号に認定される可能性があるでしょう。
【4級4号の認定基準】
1上肢をひじ関節以上で失ったもの
上肢を肘関節以上で失ったとは、1級3号の認定基準と同じく、以下のいずれかに該当している状態を指します。
- 肩関節で、肩甲骨と上腕部を切断した
- 肩関節と肘関節の間で、腕を切断した
- 肘関節で、上腕骨と橈骨・尺骨を切断した
後遺障害4級の後遺障害慰謝料相場は、以下のとおりです。
弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|
1,670万円 | 737万円(712万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故
片腕を手関節以上で切断した|5級
交通事故やバイク事故で両腕を手関節より上で切断した場合、後遺障害5級4号に認定される可能性があります。
【5級4号の認定基準】
1上肢を手関節以上で失ったもの
上肢を手関節以上で失ったとは、2級3号の認定基準と同じく、以下のいずれかに該当している状態のことです。
- 肘関節と手関節の間で、腕を切断した
- 手関節で、橈骨・尺骨と手根骨を切断した
後遺障害5級の後遺障害慰謝料相場は、以下のとおりです。
弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|
1,400万円 | 618万円(599万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故
腕の偽関節が残った場合の後遺障害等級と慰謝料
偽関節とは、骨折した箇所の治癒が途中で止まり、本来関節ではない箇所が関節のように動いてしまう状態のことです。偽関節は骨の癒合不全の一種になります。
偽関節は骨折した箇所が安定しない場合や、骨の血流が悪い場合に発生する可能性があります。腕で偽関節が発生しうる部位は、上腕骨、前腕の橈骨、尺骨です。
腕の上腕骨、橈骨、尺骨に偽関節が残った場合、後遺障害7級9号または8級8号に認定される可能性があります。
なお、足に偽関節が残った場合は『交通事故による足の短縮・変形の後遺障害認定』の記事をご参考ください。
偽関節が残り補装具が必要になった|7級
偽関節が残り、補装具が必要になった場合は、7級9号に認定される可能性があります。
【7級9号の認定基準】
1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
偽関節が後遺障害7級9号に認定されるためには、原則として常に硬性補装具を必要とする状態であることが求められます。
硬性補装具とは、布ではなく金属やプラスチックでできたサポーターなどのことです。
そのうえで、下記のいずれかに該当する場合には、7級9号に認定されるでしょう。
- 上腕骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残す
- 橈骨および尺骨の両方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残す
骨幹部とは骨の中央部分のことを指します。
また、骨幹端部とは、骨の端にある太くなっている部分(骨端部)と骨幹部がつながる部分のことです。
骨端部に癒合不全が残った場合は、偽関節として後遺障害7級または8級に認定されるのではなく、腕の骨の変形として12級に認定されるでしょう。
【7級9号の認定基準】
1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
後遺障害7級の後遺障害慰謝料相場は、以下のとおりです。
弁護士基準 | 自賠責基準 | |
---|---|---|
7級 | 1,000万円 | 419万円(409万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故
装具が必要ない程度の偽関節が残った|8級
装具が必要ない程度の偽関節が残った場合は、8級8号に認定される可能性があります。
【8級8号の認定基準】
1上肢に偽関節を残すもの
偽関節が後遺障害8級8号に認定されるためには、下記のいずれかの条件に該当している必要があります。
- 上腕骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残す
(常に硬性補装具を必要とするわけではない) - 橈骨および尺骨の両方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残す
(常に硬性補装具を必要とするわけではない) - 橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残し、時々硬性補装具を必要とする
8級の後遺障害慰謝料は、以下の通りです。
弁護士基準 | 自賠責基準 | |
---|---|---|
8級 | 830万円 | 331万円(324万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故
腕の骨が変形癒合した場合の後遺障害等級と慰謝料
偽関節の後遺障害認定基準に該当しない変形障害については、「長管骨に変形を残すもの」に該当すれば後遺障害12級8号に認定されるでしょう。
【 12級8号の認定基準】
長管骨に変形を残すもの
長管骨とは、手足を構成する骨のうち、とくに長い骨のことを言います。腕にある長管骨は上腕骨、橈骨、尺骨の3本です。
腕の骨折で後遺障害12級8号の認定を受ける条件は、下記のとおりです。
- 上腕骨に外部から見てわかる変形を残した
(15度以上曲がって不正癒合した) - 橈骨および尺骨の両方に外部からわかる変形を残した
(15度以上曲がって不正癒合した) - 橈骨および尺骨の一方に変形を残し、その程度が著しい
- 上腕骨、橈骨または尺骨の骨端部に癒合不全を残した
- 橈骨または尺骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残し、硬性補装具を必要としない
- 上腕骨、橈骨または尺骨の骨端部のほとんどを欠損した
- 骨端部を除いた上腕骨の直径が3分の2以下に減少した
- 骨端部を除いた橈骨または尺骨の直径が2分の1以下に減少した
- 上腕骨が50度以上外旋または内旋変形癒合した
(X線写真などで上腕骨骨幹部の骨折部に回旋変形癒合が明らかに認められるうえで、以下のいずれかに該当している必要がある)- 外旋変形癒合については、肩関節の内旋が50度を超えない
- 内旋変形癒合については、肩関節の外旋が10度を超えない
なお、上記の症状が複数ある場合でも、原則として12級8号のみに認定され、より上位の等級認定は行われないとされています。
後遺障害12級の後遺障害慰謝料相場は、以下のとおりです。
弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|
290万円 | 94万円(93万円) |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故
腕の切断や偽関節・変形統合で慰謝料を得るまでの流れ
腕の切断や偽関節、変形癒合で慰謝料を得るまでの流れは以下のとおりです。
- 症状固定後に後遺障害診断書を作成
- 審査期間に書類を送付
- 審査結果の通知
- 示談を行い、示談金(慰謝料など)を受け取る
それぞれのフェーズについて解説します。
症状固定後に後遺障害診断書を作成|後遺障害別のポイントも解説
腕の切断・偽関節・変形癒合などで後遺症が残ると、医師から「症状固定」の診断を受けます。
症状固定の診断を受けたら、後遺障害慰謝料・逸失利益を請求できるよう「後遺障害等級」の審査を受けましょう。
審査を受けるために、まずは医師に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
後遺障害診断書に、交通事故により「腕が切断された」、「偽関節が残った」、「腕の骨が変形した」といった症状について記載してもらいましょう。
腕の切断における後遺障害診断書のポイント
腕の切断については、症状が見た目にも明らかであるため、後遺障害認定で想定より低い等級に認定されるようなケースはほとんどありません。
ただし、医師によっては後遺障害診断書の記入に慣れておらず、認定基準に該当していることを適切に書面で伝えられないケースもあります。
こうした場合は、適切な等級よりも低い等級に認定されてしまうおそれがあります。申請書類を準備したら、無料相談を利用して弁護士の確認を受けておくと安心です。
後遺障害診断書の書き方のポイントは、『後遺障害診断書のもらい方と書き方は?自覚症状の伝え方と記載内容の注意点』で詳しく解説しています。
偽関節・変形癒合における後遺障害診断書のポイント
偽関節や変形癒合における後遺障害認定については、「手術を受けていれば偽関節が治っていたのではないか?」といった点が争われる恐れがあります。
後遺障害等級は、「これ以上治療をしても治らない症状」に対して認定されるため、手術で治った可能性のある症状は認定対象にはならないのです。
しかし、「手術による体への負担が強いため、手術をしなかったことは医学的に明らかに不合理であるとは言い難い」ということが証明できれば、後遺障害等級の認定が認められるでしょう。
そのため、手術をしなかった場合はその理由まで後遺障害診断書に記載することがポイントです。
審査機関に書類を送付|手続き方法は2種類
加害者側の保険会社に対して書類を提出し、保険会社を通して審査機関に後遺障害認定の申請を行います。
申請方法には2種類あり、書類を加害者側の自賠責保険会社に提出する方法を「被害者請求」、加害者側の任意保険会社に提出する方法を「事前認定」というのです。
- 被害者請求
被害者自身が必要な書類全てを作成・収集して加害者側の自賠責保険へ提出する
書類の作成・収集の手間がかかるが、適切な書類を用意できるため等級認定を受けられる可能性が高まる - 事前認定
被害者自身は後遺障害診断書のみを用意し、その他の書類は加害者側の任意保険会社が用意する
書類の作成・収集の手間が省けるが、保険会社が用意する書類が適切であるとは限らない
それぞれメリット・デメリットがあるので、どちらを選ぶかは『後遺障害等級が認定されるには?|認定の仕組みと認定率の上げ方を解説』も参考にご検討ください。
審査結果の通知|異議申立可能
加害者側の保険会社から審査機関である損害保険料率算出機構に書類が提出され、審査が行われます。
審査期間は怪我の内容や程度によって異なりますが、1ヶ月~3ヶ月ほどで審査結果が通知されることが多いでしょう。
審査結果に納得がいかない場合には、異議の申し立てが可能です。
異議申立ての方法について詳しく知りたい方は『後遺障害の異議申し立てを成功させる方法と流れ!失敗や納得できない結果への対策』の記事をご覧ください。
加害者と示談交渉を行い示談金を受け取る
後遺障害認定の結果が出たら、加害者側から示談案が届きます。慰謝料や賠償金の金額などが記載されているので、確認してみてください。
この時点で示談案に特に問題がなければ合意しても良いですが、基本的に示談案の内容は被害者側に不利なものとなっていることが多いです。
加害者側の示談内容に問題がある場合は、正しい内容になるよう交渉します。
ただし、この際被害者側の主張がスムーズに通ることは少ないです。
相場の示談金額を得たい場合には、専門家である弁護士に依頼して示談交渉を行ってもらうべきでしょう。
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示談成立後、示談金(慰謝料など)が振り込まれる
示談が成立すると、基本的に加害者側の任意保険会社から示談書が送られてきます。
内容に問題なければ署名・捺印をして返送しましょう。その後、2週間ほどで示談金が振り込まれます。
なお、示談書に署名・捺印すると、原則として示談の撤回や追加の賠償請求はできません。
このまま示談を成立させて良いか不安な場合は、弁護士にご相談ください。
示談書が届かない、または、届いた際にすべきことを詳しく知りたい方は『交通事故の示談書が届くまでの期間と保険会社が示談書を送ってこない理由・対処法』の記事で確認可能です。
交通事故による腕切断の後遺障害に関するよくある質問
Q.後遺障害認定はいつまでに申請する必要がありますか?
後遺障害認定の申請期限は症状固定日から3年以内ですが、できるだけ早期の申請が推奨されます。
後遺障害等級の認定を受けた後には、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求を行うことができますが、このような損害賠償請求については、別途、時効期限があるためです。
後遺障害慰謝料や逸失利益といった後遺障害の発生により生じる損害の賠償請求は、症状固定となった日の翌日から5年間が時効期限となっています。
また、治療によって生じる損害に関しては、基本的に交通事故発生の翌日から5年間が時効期限となっているため、後遺障害等級認定の結果を待っていると時効期限を経過してしまう恐れもあるでしょう。
そのため、後遺障害等級認定の申請は、症状固定後になるべく早期に行うべきであり、場合によっては時効期限の経過を止めるための法的措置が必要となります。
時効期限の経過に関する対処法については、専門家である弁護士に相談すると良いでしょう。
Q.バイク事故での腕の切断は自動車事故と補償額が変わりますか?
バイク事故による腕切断の補償額は、基本的に自動車事故と同じです。
しかし、バイク事故では被害者が車体に守られていないため、腕の切断以外にも重大なケガを負ってしまい、損害賠償金額が高額なる可能性が高いといえます。
損害賠償金額が高額になるほど、加害者側は少しでも賠償金額を減らそうと示談交渉してくることがあるので、相場の金額を得るためには弁護士に相談して適切な請求を行てもらう必要性が高まるでしょう。
Q.腕の切断などと一緒に残ったしびれや傷跡も後遺障害認定されますか?
腕の切断をすると、それに伴い痛みやしびれ、傷跡といった症状も残ることがあります。これらはいずれも、後遺障害等級の対象となりえます。
たとえば腕の痛みやしびれといった神経症状は、後遺障害12級13号または14級9号に認められる可能性があるでしょう。
- 12級13号
痛みやしびれが残っていることが、画像検査などの結果から医学的に証明できる
後遺障害慰謝料:290万円(弁護士基準) - 14級9号
痛みやしびれが残っていると推定できる
後遺障害慰謝料:110万円(弁護士基準)
また、傷跡については以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。
- 12級相当
上肢の露出面に手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕を残すもの
後遺障害慰謝料:290万円(弁護士基準) - 14級4号
上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
後遺障害慰謝料:110万円(弁護士基準)
Q.複数の後遺障害が残った場合、後遺障害等級はどうなりますか?
交通事故やバイク事故で腕を切断する、偽関節が残るといった重い後遺症が残った場合、腕以外にも複数の後遺症が残る可能性があります。
事故で複数の後遺症が残ったら、症状ひとつひとつについて後遺障害認定を受けます。そのうえで、複数の後遺障害等級に認定されたら全体的な等級を繰り上げる「併合」という処理を受けることになるでしょう。
併合による後遺障害等級の繰り上げは、以下の考え方で行われます。
- 5級以上が2つ以上:最も重い等級を3級繰り上げる
- 8級以上が2つ以上:最も重い等級を2級繰り上げる
- 13級以上が2つ以上:最も重い等級を1級繰り上げる
- 14級が2つ以上:14級のまま
同じ腕に後遺障害を負った場合も、基本的には併合等級に認定されることになります。
ただし、それぞれの症状が派生関係と考えられる場合は、併合ではなく症状を全体的に評価してより上位の等級が認められることもあります。たとえば、交通事故によって骨を折り、偽関節としびれが残ったような場合などです。
詳しくは、『後遺障害等級の認定ルール「併合・相当・加重」後遺症が複数残った時の慰謝料は?』の記事をご覧ください。
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弁護士に相談するメリット
交通事故で腕の切断・偽関節・変形癒合が生じたら、一度弁護士にご相談ください。
弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを受けることが可能です。
- 適切な後遺障害等級の認定が受けられるようサポートしてもらえる
- 相場の金額で示談するよう示談交渉してもらえる
- 加害者側とのやり取りを行ってもらえるので治療に専念できる
適切な後遺障害等級の認定を受けられなければ請求できる損害賠償金額に大きな影響が出るため、弁護士に依頼して認定申請を行ってもらうべきといえます。
また、腕の切断などの大きなケガを負った場合には、治療するだけでも肉体的・精神的な負担が大きいため、加害者側とのやり取りや弁護士に任せるべきでしょう。
弁護士に依頼するメリットをより詳しく知りたい方は『交通事故を弁護士に依頼するメリット9選と必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』の記事をご覧ください。
弁護士費用の負担を軽減する方法
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しかし、自身の保険についている「弁護士費用特約」を使えば、上限の範囲内で費用を保険会社に負担してもらうことが可能です。

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詳しくは『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』で解説しています。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了