交通事故・刑事事件に加えてネット削除依頼等の対応を本格化しています。

上肢(肩・肘・手首)の後遺障害を解説|可動域制限、機能障害の認定基準とは?

更新日:

上肢可動域制限(肩・肘・手首)機能障害の認定基準

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故の被害に遭ってケガを負ってしまった際、肩や肘、手首の関節に後遺症が残ってしまうことがあります。

上肢の関節が動かなくなったり、可動域に制限が残ってしまったりしたとき、特定の条件を満たせば後遺障害として認定されて特別な賠償金を受けとれる場合があります。

ここでは上肢の可動域制限、機能障害について症状別に後遺障害の等級認定基準を解説します。

【症状別】上肢(肩・肘・手首)の機能障害、可動域制限の等級一覧

上肢の用を全廃したもの|肩、肘、手首のすべてが強直か麻痺

等級認定基準
1級4号両上肢の用を全廃したもの
5級6号1上肢の用を全廃したもの
上肢の用を全廃したものの後遺障害認定基準

「上肢の用を全廃したもの」とは、肩、肘、手首の関節がすべて強直し、手指の全部の用を廃したものをいいます。

強直というのは後遺障害認定の実務上、関節が完全に動かないか動いても健康な関節と比較して可動域が10%以下に制限されているものを指します。また、上腕の神経叢の損傷などによる完全麻痺も「上肢の用を全廃したもの」に含まれます。

この後遺障害等級に認定されるためには、手指についても用を廃している必要があります。手指の機能障害については『交通事故による手指の障害について解説|欠損障害、機能障害の後遺障害認定基準とは?』もご覧ください。

肩・肘・手首の用を廃したもの|強直、麻痺、人工関節挿入後の可動域制限

等級認定基準
6級6号1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
上肢の関節の用を廃したものの後遺障害認定基準

3大関節というのは肩、肘、手首の関節のことで、この3つの関節のうちいくつに可動域制限が生じたかによって等級が変わります。

「関節の用を廃したもの」とは以下の3つのいずれかに該当するものを指します。

  • 関節が強直したもの
  • 関節の完全弛緩性麻痺または自分で関節を動かしたとき健康な方の腕の関節と比較して可動域角度が10%以下になったもの
  • 人工関節、人工骨頭を挿入置換した関節について、健康な方の腕の関節と比較して可動域が1/2以下に制限されているもの

肩・肘・手首の機能に著しい障害を残すもの|可動域が1/2以下に制限、人工関節挿入

等級認定の基準
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
上肢の関節の機能に著しい障害残すものの後遺障害認定基準

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは以下の2つのいずれかに該当するものを指します。

  • 関節の可動域が健康な方の腕の関節と比較して1/2以下に制限されているもの
  • 人工関節、人工骨頭を挿入置換した関節で、健康な方の腕の関節と比較して可動域が1/2以下に制限されているわけではないもの

肩・肘・手首の機能に障害を残すもの|可動域が3/4以下に制限

等級認定の基準
12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
上肢の関節の機能に障害残すものの後遺障害認定基準

「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健康な方の腕の関節と比較して3/4以下に制限されているものを指します。

等級表に乗ってない症状は何級になる?

これら等級表には載っていない症状をお持ちの方もいるかもしれません。

例えば、3大関節中の2関節の機能に障害が残った場合、上記の等級表には具体的な等級が設定されておらず等級認定が困難になります。

このようなとき、交通事故の実務では併合や準用、あるいはそれらを行わずに下位の等級のままとするなど、症状に応じて色々な対応が取られることになります。

上記の例で言えば、「3大関節中の2関節の機能に障害が残った場合」というのは、3大関節中の1関節の機能に障害が残った場合(12級6号)と上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害が残った場合(10級10号)の中間等級だと解釈され、11級相当の認定をされる可能性が高いです。

個別具体的な話になってしまうので、ご自身の症状について後遺障害何級になるか疑問の方は弁護士に相談してください。

肩・肘・手首の可動域の測定方法とは?

肩の可動域の測定方法

上記の通り、上肢の関節の機能障害の認定では関節の可動域の測定が非常に大きな意味を持ちます。関節の可動域の測定方法は厳密に定められているため、ここでご紹介します。

まず肩の可動域については、屈曲外転・内転について5度単位で測定されます。

肩の屈曲

手を降ろした状態からまっすぐ前ならえするように手を挙げていき、そのまま頭上まで挙げていく動き

肩の外転・内転

手を降ろした状態からまっすぐ横に開いていき、腕が地面と平行になったら掌を上に向けてそのまま頭上まで挙げていく動き

基本的にはこの2つの動きを5度単位で測定し等級を認定します。ただし、測定した結果、等級認定される角度にわずかに届かない場合などでは、さらに伸展外旋・内旋の2つの動きも参考として測定されます。

肩の伸展

手を降ろした状態からまっすぐ後方に挙げていく動き

肩の外旋・内旋

手を降ろした状態から肘を90度持ち上げて、肘は体幹に固定したまま腕を内向き、外向きにひねる動き

肘の可動域の測定方法

肘は屈曲・伸展の動きを5度単位で計測することになります。

肘の屈曲・伸展

腕をまっすぐ横に開き、掌を上に向けて地面と平行になるようにした状態で、掌を顔の横に近づけるように肘を折り曲げ、また伸ばす動き

なお肘については参考運動が想定されておらず、原則としてこの屈曲・伸展の動きのみを測定することになっています。
測定の結果、可動域の制限が等級認定基準にわずかに届かないような場合であっても、何か別の動きを参考として測定されるということはなく、屈曲・伸展の結果のみによって判定されることになります。

手首の可動域の測定方法

手首の可動域は主要運動としてまず屈曲・伸展の動きを5度単位で計測することになります。

手首の屈曲・伸展

手首を掌側、手の甲側に曲げる動き

基本的にはこの2つの動きを5度単位で測定し等級を認定します。ただし、測定した結果、等級認定される角度にわずかに届かない場合などでは、さらに橈屈・尺屈の2つの動きも参考として測定されます。

手首の橈屈・尺屈

手首を親指側、小指側に曲げる動き

後遺障害慰謝料の等級ごとの相場とは?

肩・肘・手首の可動域制限について後遺障害等級に認定されると後遺障害慰謝料や逸失利益といった特別な賠償金を獲得することができます。

後遺障害慰謝料は可動域の制限を負ったという精神的な苦痛に対する賠償金で、その相場は以下の通りです。

等級 相場(万円)
1級・要介護2,800
2級・要介護2,370
1級2,800
2級2,370
3級1,990
4級1,670
5級1,400
6級1,180
7級1,000
8級830
9級690
10級550
11級420
12級290
13級180
14級110
後遺障害慰謝料の相場(弁護士基準)

逸失利益は可動域制限によって将来にわたって減額されてしまう給料に対する賠償です。

後遺障害の認定にあたっては適切な治療と検査を受けていることが重要となります。
医師は治療の専門家ではありますが、その後の交通事故賠償の実務のプロというわけではありません。
「肩・肘・手首の可動域について認定基準に沿った適切な測定をしてくれない」「後遺障害の認定に必要な検査や治療をしてくれない」といったケースもしばしば発生します。

肩・肘・手首の後遺障害についてはなるべく早くに弁護士にご相談ください。
「必要な治療・検査が行われているか」「相手方の提示する賠償金の金額が適正か」といったことについて、一度交通事故賠償の実務のプロである弁護士の視点からチェックしたほうが良いでしょう。

代表弁護士岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点

あわせて読みたい記事

全ての記事を見る