後遺障害12級の症状・認定基準は?慰謝料や逸失利益の計算と請求時の注意点
交通事故の後遺障害12級が認定されうる症状は、片目の運動障害や調節機能障害、鎖骨や肋骨などの著しい骨の変形、指の用廃、局部の頑固な神経症状、外貌醜状などの14区分にわけられます。
後遺障害12級の後遺障害慰謝料の相場は290万円で、逸失利益は「労働能力を14%失ったことによる、症状固定~67歳までの減収額」が基本です。
ただし、加害者側は低額な金額を提示してきたり、労働能力や労働能力喪失期間を少なく見積もって提示してくる可能性があります。
この記事を通して、自分の症状は後遺障害12級に該当するか、認定されるにはどうしたらいいか、後遺障害12級として十分な慰謝料をもらうにはどうしたらいいか確認していきましょう。
目次
- 後遺障害12級に認定される後遺症とは
- 12級1号|片眼の調整力や眼球の動く範囲が低下した
- 12級2号|まぶたがしっかりと開閉しない
- 12級3号|歯を7本以上失った又は削った
- 12級4号|耳の軟骨部分の大半を失った
- 12級5号|特定の骨が明らかに変形している
- 12級6号|片腕の関節の一部が以前より曲がらない
- 12級7号|片足の関節の一部が以前よりも曲がらない
- 12級8号|長管骨が変形している
- 12級9号|片手の小指の一部を失った
- 12級10号|片手の人差し指、中指、薬指のどれかに障害が残った
- 12級11号|片足の指の一部を失った
- 12級12号|片足の指の一部に障害が残った
- 12級13号|体の一部に痛みやしびれが残った
- 12級14号|頭部、顔面、首などに傷跡が残った
- 後遺障害12級の認定は難しい?
- 後遺障害12級の慰謝料相場と増額のポイント
- 後遺障害12級の逸失利益の計算と注意点
- 後遺障害12級の示談金請求におけるポイント
- 後遺障害12級の認定を受ける流れと対策
- 後遺障害12級の認定や慰謝料請求は弁護士に相談を
後遺障害12級に認定される後遺症とは
後遺障害12級に該当する症状は1号~14号に分類されており、後遺症の部位は、目、歯、耳、骨、手や足の指、神経症状、顔の傷など多岐にわたります。
等級 | 内容 |
---|---|
12級1号 | 片目のピント調節能力や、眼球を動かして見える範囲に障害が残った |
12級2号 | まぶたの開閉に障害が残った |
12級3号 | 7本以上の歯について入れ歯・差し歯・ブリッジ治療を施した |
12級4号 | 耳の軟骨部分の2分の1以上を失った |
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨、または骨盤骨に著しい変形が残った |
12級6号 | 片腕の3つの関節のどれかに可動域制限が生じた |
12級7号 | 片足の3つの関節のどれかに可動域制限が生じた |
12級8号 | 長管骨に変形が残った |
12級9号 | 片手の小指を失った |
12級10号 | 片手のひとさし指、中指、または薬指が機能しなくなった |
12級11号 | 片足の指の一部を失った |
12級12号 | 片足の指の一部について機能を失った |
12級13号 | 体の一部に他覚的所見のあるしびれや痛みが残った |
12級14号 | 頭・顔面・首などに一定の傷跡が残った |
各号の詳しい症状・認定基準を解説していきます。
12級1号|片眼の調整力や眼球の動く範囲が低下した
12級1号は、「一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの」と定義されており、具体的には次の通りです。
- 片眼のピント調節力が2分の1以下に低下した
- 頭を固定し片方の眼球を動かして見える範囲が2分の1以下になった
片眼のピント調節力は、基本的に負傷していないもう片方の眼と比較して判断されますが、年齢と照らし合わせて判断されることもあります。
眼球を動かして見える範囲の平均は、一般的には以下の通りとされます。
ただし、個人差もあるので病院で確認してもらいましょう。
平均 | |
---|---|
単眼視 | 各方面約50度 |
両眼視 | 各方面45度 |
ただし、以下の点には注意してください。
- 55歳以上の場合、ピント調節力の低下は年齢のためだとして、後遺障害として認定されにくい傾向にある
- ケガをしていない方の眼のピント調節力も低い場合、もとから調節力が低いものとして後遺障害認定されにくい
目やまぶたの後遺症で認められうる後遺障害等級については、『交通事故による目の後遺障害|失明・視力低下・複視の認定基準を弁護士が解説』で網羅的に解説しています。12級の基準に当てはまらない方はこちらの記事もご参考ください。
12級2号|まぶたがしっかりと開閉しない
後遺障害12級2号は「一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの」とされており、具体的には次の通りです。
- まぶたを開いても、まぶたで瞳孔領が隠れてしまう
- まぶたを閉じても、まぶたで角膜を完全に覆えない
なお、片眼でなく両眼に上記のような症状が残っている場合は、後遺障害12級2号ではなく後遺障害11級の認定を受けられる可能性があります。
12級3号|歯を7本以上失った又は削った
後遺障害12級3号は「七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」と定義されています。
歯科補綴(しかほてつ)とは歯の欠損や喪失を人工物で補う処置のことで、具体的に12級3号の認定基準を言い換えると、次の通りです。
以下のような状態の歯合計7本以上に対して、入れ歯・差し歯・ブリッジ治療を施した
- 事故によって歯冠部の4分の3以上を欠損した歯
- 治療のために歯冠部の4分の3以上を削った歯
※歯冠部とは歯の見えている部分のこと
たとえば交通事故によって欠損した歯が5本だけであっても、治療のために他の2本も削った場合、歯科補綴を加えた歯は7本とカウントされます。
歯が折れた場合の後遺障害認定については、関連記事『交通事故で歯が折れたら慰謝料いくら?前歯欠損は後遺障害認定される?』も参考にしてください。
12級4号|耳の軟骨部分の大半を失った
後遺障害12級4号は、「一耳の耳殻の大部分を欠損したもの」と定義されており、具体的には次の通りです。
耳の軟骨部の2分の1以上を失った
なお、耳の欠損は「外貌の著しい醜状障害」として7級12号に認定される可能性もあります。
12級よりも7級の方が重い後遺障害とされ、加害者側に請求できる慰謝料も高額になるでしょう。
ただし、耳の欠損として12級の認定を目指すのか、外貌醜状として7級の認定を目指すのかによって等級認定の対策が変わってくるため、まずは一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
後遺障害7級の認定基準や慰謝料については、関連記事『後遺障害7級の症状と認定基準』で詳しく解説中です。
12級5号|特定の骨が明らかに変形している
後遺障害12級5号は、「鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」と定義されており、具体的には次の通りです。
鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨に、裸体になったときに明らかに分かる程度の変形が残った。
変形の程度はあくまでも裸体になった時に目で見てわかるものとなっているため、レントゲン写真などで初めて変形が確認できる程度では12級5号には認定されません。
なお、肋骨の変形は、本数・程度・部位などは不問です。仙骨は骨盤骨に含まれますが、尾骨は含まれないので注意しましょう。
12級6号|片腕の関節の一部が以前より曲がらない
後遺障害12級6号は「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」と定義されており、具体的には次の通りです。
肩関節、肘関節、手首の関節のうち1つの可動域が、健康な方と比べて4分の3以下になった
肩関節、肘関節、手首の関節の可動域のはかり方は、それぞれ決まっています。詳しい解説は『肩や手首の後遺障害・可動域制限とは?』の記事をご一読ください。
後遺障害12級6号の解決事例
右肩腱損傷で後遺障害12級6号認定を受けておられた方が、提示された341万円という金額に疑問を持ってアトムに相談いただきました。弁護士は提示内容に増額の余地があると判断して示談交渉を開始したのです。その結果、後遺障害12級6号のまま変わらず、交渉開始2ヶ月で約2.9倍の1,000万円という金額で示談が成立しました。
ご依頼者様からのお手紙
忙しい私にもぴったりな方法で行って頂けるのは、アトム法律事務所さんだけでした。本当に選んでよかったです。(右肩腱板損の増額事例)
アトム法律事務所は、後遺障害等級認定後の慰謝料・逸失利益の増額交渉にも注力しています。
同じ後遺障害等級でも、一人ひとりが負った損害は違うので、お見積りだけでもお気軽にお問い合わせください。
12級7号|片足の関節の一部が以前よりも曲がらない
後遺障害12級7号は「一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」と定義されており、具体的には次の通りです。
股関節、膝関節、足首の関節のうち1つの可動域が、健康な方と比べて4分の3以下になった
なお、可動域の角度がさらに制限を受けていたり、人工関節・人工骨頭を挿入置換している場合は、さらに重い後遺障害等級認定となる見込みがあります。
3大関節のうち、股関節について後遺障害認定を受けられる基準を知りたい方は、関連記事『股関節脱臼・股関節骨折の後遺障害等級は?人工関節や人工骨頭でも後遺障害になる?』もあわせてご参考ください。
後遺障害12級7号の解決事例
くるぶしの骨折(右足首内踝骨折および右足首外踝骨折)で後遺障害12級7号認定を受けた方からのご依頼でした。相手方は労働能力喪失期間を5年間と主張しましたが、弁護士が交渉したところおよそ30年分の労働能力喪失期間が認定されたのです。
その結果、後遺障害は12級7号のまま変わらず、最初の提示額369万円から大幅に増額して最終的に1,063万円という金額で示談が成立しました。
ご依頼者様からのお手紙
保険会社に提示された金額より大幅に増額していただき感謝しております。(右足首内踝外踝骨折の増額事例)
逸失利益が低いと、本来もらえる後遺障害部分の賠償金全体も低くなります。
逸失利益は、被害者の事故前年収が低く設定されたり、労働能力喪失期間を短縮されたりと、複数の要因で減額されがちです。
逸失利益の計算方法は複雑ですが、弁護士ならば適正金額の獲得に向けて粘りづよく交渉します。
12級8号|長管骨が変形している
後遺障害12級8号は「長管骨に変形を残すもの」と定義されており、具体的には次の通りです。
腕や足の長い骨が、骨折後にうまく癒着しなかったり、ねじ曲がったりしてしまう
長管骨は、腕や足の長い骨を指しますが、具体的には次の6本があります。
- 上腕骨
- 橈骨(とうこつ)
- 尺骨(しゃっこつ)
- 大腿骨(だいたいこつ)
- 脛骨(けいこつ)
- 腓骨(ひこつ)
なお、骨折後に骨がくっつかず、その箇所が関節のように動いてしまう「偽関節」が残った場合には、12級よりも重い後遺障害等級が認定される可能性があります。
一方で、変形の程度が外部から認識できない、変形の程度が軽いといった場合には12級8号の認定を受けられない場合こともあるでしょう。
交通事故による腕や足の変形については、以下の記事で詳しく解説しているので、ご一読ください。
関連記事
12級9号|片手の小指の一部を失った
後遺障害12級9号は、「一手のこ指を失つたもの」と定義されており、具体的には次の通りです。
片手の小指に以下のような症状が残った
- 手指を中節骨(第一関節~第二関節の骨)で切断した
- 手指を基節骨(指の付け根~第二関節の骨)で切断した
- 近位指節間関節において基節骨と中節骨とを離断した(第二関節から先を失った)
失ってしまった指の本数しだいで、後遺障害等級がさらに重くなる可能性もあります。
12級10号|片手の人差し指、中指、薬指のどれかに障害が残った
後遺障害12級10号は「一手のひとさし指,なか指又はくすり指の用を廃したもの」と定義されており、具体的には次の通りです。
片手の人差し指、中指、または薬指に以下の障害が残った
- 指先~第一関節までの骨の半分以上を失った
- 第2関節または指の付け根の関節の可動域が、もう一方の手の2分の1以下になった
- 指の腹や側部の表面・深部の感覚がなくなった
手指の切断や可動域制限については、『手指の後遺障害|指切断・欠損、可動域制限の認定基準。マレット指で曲がらない』の記事も参考になります。
12級11号|片足の指の一部を失った
後遺障害12級11号は「一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの」と定義されています。
具体的に言い換えると、次の通りです。
足の人さし指を喪ったか、足の人さし指とそれ以外の1本の指を喪ったか、中指と薬指と小指を喪った
※喪ったとは、指の付け根から先を失ったことを指す
12級12号|片足の指の一部に障害が残った
後遺障害12級12号は「一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの」と定義されており、具体的には次のことを指します。
片方の足の親指またはその他の4本の指について、以下のような障害が残った
- 親指の指先~第一関節までの骨が半分以上短くなった
- 親指以外の指の第一関節から先を失った
- 中足指節間関節または近位指節間関節の可動域が2分の1以下になった
足指の切断や足指が曲がらないといった症状については、『交通事故で足指を切断した・曲がらなくなった|後遺障害等級の認定基準は?』の記事もお役立てください。
12級13号|体の一部に痛みやしびれが残った
後遺障害12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」と定義されており、具体的には次のことを指します。
体の一部の痛みやしびれが残ったり、めまい、吐き気などが後遺症として残ったりした
交通事故の実務上では、後遺障害12級13号は主にむちうち(頚椎捻挫・頚部捻挫・外傷性)が該当します。
ただし、むちうちの場合は「局部に神経症状を残すもの」として14級9号に認定されることも多いです。
12級13号と14級9号の違い
むちうちによる神経症状は、後遺障害12級または14級に認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
後遺障害12級13号と14級9号の主な違いとしては、画像所見の有無という認定時の違い、そして後遺障害慰謝料の相場や労働能力喪失の程度など等級認定後の賠償面での違いがあげられます。
後遺障害12級13号と14級9号の具体的な違いは、関連記事『後遺障害14級9号の認定基準と慰謝料|逸失利益は5年?認定されないときは?』にて詳しく解説しているので、あわせてお読みください。
後遺障害12級13号の解決事例
アトム法律事務所の解決事例のうち、後遺障害12級13号認定を受けた事例を紹介します。
TFCC損傷、頚椎捻挫および腰椎捻挫を負った被害者の方が、適正な慰謝料の金額がいくらになるかという疑問を持ってご相談いただいたことがきっかけでした。弁護士による後遺障害等級認定に向けたサポートを経て後遺障害12級13号に認定され、慰謝料を含む974万円を受けとることに成功した事例があります。
ご依頼者様からのお手紙
残念ながら私には痛みが残ってしまいましたが、気持ちはすっきりしています。(TFCC損傷、頚椎捻挫の増額事例)
「妥当な金額を知りたい」という一見些細な疑問や好奇心が、適正な慰謝料を受けとるきっかけになります。弁護士に相談するほどではないと決めつけず、まずは気軽にお問い合わせください。
12級14号|頭部、顔面、首などに傷跡が残った
後遺障害12級14号は「外貌に醜状を残すもの」と定義されており、具体的には次のような状態を指します。
頭部、顔面、首など日常的に露出していてる部位について、以下のような傷跡が残った
- 頭部:鶏の卵より大きい瘢痕が残ったり、頭蓋骨に鶏の卵より大きい欠損が残ったりした
- 顔面:10円銅貨より大きい瘢痕が残ったり、長さ3cm以上の線状痕が残ったりした
- 頸部:鶏の卵より大きい瘢痕が残った
瘢痕(はんこん)とは、ケガが治った後に残る痕のことです。
線状痕には、手術のメスの痕も含まれます。交通事故の治療のため、顔面にメスを入れて手術をした痕も、線状痕として後遺障害認定の対象になります。
一方で、眉毛や頭髪で隠れる瘢痕・線状痕は外貌の醜状に認められません。
なお、後遺障害12級14号の後遺障害慰謝料は290万円ですが、より大きな傷跡やひどい組織陥没の場合、異なる等級認定を受けることでより高額な後遺障害慰謝料を請求できる可能性が高いです。
目立つ部位に傷が残ったという方は『交通事故による顔の傷跡(外貌醜状)の後遺障害認定|顔面骨折・神経麻痺も解説』の解説記事もあわせてご覧ください。
後遺障害12級14号の解決事例
交通事故によって顔に傷が残った被害者の方からのご依頼でした。すでに後遺障害12級14号に認定されていましたが、弁護士が適正な補償額まで増額されるように交渉をスタートした事例です。示談交渉開始から約1ヶ月で、当初の提示額340万円から大幅にアップし、慰謝料を含む948万円を受けとることができました。
ご依頼者様からのお手紙
進捗状況を丁寧に教えてくださったため、安心して任せることができました。(顔の醜状痕の増額事例)
後遺障害等級が変わらずとも、弁護士を立てて交渉すること自体が増額につながる可能性があります。
適切な等級の把握は後遺障害認定や慰謝料請求のために重要です。本当に12級が妥当か不安な場合は、ぜひ弁護士までお問い合わせください。
後遺障害12級の認定は難しい?
後遺障害12級が認定された割合は、後遺障害等級が認定された全体数のうち約16.4%、交通事故全体数のうち約0.73%です。(後遺障害等級が認定された件数は交通事故全体の約4.5%)
後遺障害等級認定の件数からも、後遺障害12級の認定を受けることは決して簡単なことではないといえます。
この割合の算定根拠は以下の通りです。
まず、後遺障害等級が認定された事例のうち、12級に認定された割合が約16.4%であることは、『2023年度 自動車保険の概況(2022年度統計)』(損害保険料率算出機構)において発表されています。
次に、交通事故全体で見た場合の割合は、同じく『2023年度 自動車保険の概況(2022年度統計)』の統計をもとに、以下のように計算しました。
統計
- 交通事故の総件数:84万2,035件
※自賠責保険の支払い総数。後遺症が残らなかった事故、死亡事故、後遺障害等級が認定されなかった事故もすべて含む。 - 後遺障害等級の認定件数:3万7,728件
- 後遺障害12級の認定件数:6,187件
上記の統計をもとに次のように計算。
- そもそも後遺障害等級に認定された件数は、交通事故全体*の約4.5%
(3万7,728÷84万2,035×100=4.48…%) - 後遺障害等級に認定された件数に対する12級の認定件数は約16.4%
(6,187÷3万7,728×100=16.39…%) - 交通事故全体*に対する12級の認定率は、約0.73%
(6,187÷84万2,035×100=0.73…%)
*自賠責保険の支払い総数。後遺症が残らなかった事故、死亡事故も含む
後遺障害12級の慰謝料相場と増額のポイント
後遺障害等級に認定されると、後遺障害部分の損害賠償として後遺障害慰謝料が請求できます。ただし、加害者側の任意保険会社は適切な金額を提示してこないことが多いです。
同じ交通事故であっても、どんな基準で慰謝料を計算するのかで金額が大きく変わります。
後遺障害12級の慰謝料相場は290万円
後遺障害12級の後遺障害慰謝料相場は弁護士基準で290万円です。
ただし自賠責基準で支払われる慰謝料相場は94万円にとどまります。
後遺障害等級 | 弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|---|
12級 | 290万円 | 94万円 (93万円) |
※()内の金額は、2020年3月までに起こった交通事故の場合に適用
弁護士基準は、過去の判例に基づく法的正当性の高い金額基準であり、被害者が本来獲得するべき相場です。
一方自賠責基準とは、交通事故被害者に補償される最低限の金額基準です。加害者側の任意保険会社は、この自賠責基準か、各社独自の基準(任意保険基準)に基づく、自賠責基準に近い金額を提示してきます。
ただし、弁護士基準の金額は本来は裁判で認められうるものです。専門家ではない被害者が、裁判も起こさず弁護士基準の金額を主張しても、受け入れてもらえることはほぼありません。
なお、先に示した290万円という相場は「後遺障害」への慰謝料です。
交通事故によりケガを負ったことで請求できる入通院慰謝料を別途請求できるので、関連記事『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』もしくは下記バナーより慰謝料計算機を使ってみましょう。
相場の慰謝料を得るには弁護士への相談・依頼を
相場の慰謝料を得たい場合には弁護士への相談・依頼を行うことが効果的です。
弁護士に依頼を行うと、加害者側の任意保険会社との示談交渉において弁護士が増額交渉を行ってくれます。
加害者側の任意保険会社は「弁護士の主張を受け入れないと、裁判を起こされる可能性がある。その結果、弁護士基準の金額を支払うことになるうえ、時間も労力も費用もかかってしまう。」と考え、裁判を避けて示談で話をつけようとする傾向にあります。
そのため裁判までいかない段階で弁護士が交渉の場に立つことで、裁判で認められうる水準に近い金額を示談段階で認めてくれる可能性が高まるのです。
裁判までいかずに示談で解決することは被害者にとっても早期解決・費用負担軽減というメリットがあります。
後遺障害12級の逸失利益の計算と注意点
逸失利益とは、後遺障害を理由に労働能力が低下することで減ってしまう、生涯収入に対する補償です。
ここからは後遺障害12級認定を受けた際の逸失利益の相場と計算方法、注意点をみていきましょう。
後遺障害12級の逸失利益の相場と計算方法
後遺障害12級における逸失利益の相場は、被害者の年齢や事故前の収入などによって異なります。基本的には「労働能力を14%失ったことによる、症状固定~67歳までの減収額」という考え方です。
なお、大まかな相場は以下の計算機からも確認できるので、活用してみてください。
後遺障害12級の逸失利益計算式
逸失利益の計算式は被害者の立場が「有職者または就労可能者」と「症状固定時に18歳未満の未就労者」とで変わります。計算式についても確認しておきましょう。
逸失利益の計算式
- 有職者または就労可能者の場合の計算式
1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数 - 症状固定時に18歳未満の未就労者の場合の計算式
1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数 )
原則として、後遺障害12級に認定された場合の労働能力喪失率は14%です。
労働能力喪失期間とは、症状固定時から67歳までの年数をいいます。労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数は以下の通りです。
労働能力喪失期間 | ライプニッツ係数 |
---|---|
1年 | 0.97 |
5年 | 4.58 |
10年 | 8.53 |
20年 | 14.88 |
30年 | 19.60 |
逸失利益の計算例を示します。
逸失利益の計算例
たとえば基礎収入500万円の47歳(就労可能年数20年)の方が、後遺障害12級認定を受けた際の逸失利益は約1,041万円です。
500万円×14%×14.88=約1,041万円
後遺障害12級の逸失利益相場は、1年あたりの基礎収入と症状固定時の年齢でおおよそわかります。
逸失利益の詳しい計算方法は、関連記事『【逸失利益の計算】職業別の計算方法を解説!早見表・計算機つき』で解説しています。
後遺障害12級の逸失利益を計算する際の注意点
注意点(1)労働能力喪失率が14%以下になることがある
後遺障害12級の労働能力喪失率は14%が目安とされますが、実際にはそれ以下と判断され、逸失利益が低額になることがあります。
とくに、後遺障害12級14号の「外貌醜状」は、被害者の仕事がホステスやモデルなど容貌に関するものでない場合、働くうえでそれほど支障をきたすものではないと考えられがちです。
よって、加害者側が「労働能力喪失率は14%以下だ」と主張してくる可能性があります。
他にも骨の変形や神経症状も労働能力低下を否定されやすい後遺障害といえます。
しかし、外貌醜状や骨の変形、神経症状でも、労働能力喪失率が必ずしも14%以下になるわけではありません。加害者側から労働能力喪失率を低く提示されてお困りの場合は、弁護士にご相談ください。
注意点(2)むちうちで12級13号認定の労働能力喪失期間は注意
後遺障害は基本的には一生治らないものと考えられるので、働ける年齢である67歳までの労働能力が失われたと考えるのが原則です。
しかし、むちうちで後遺障害12級13号の認定を受けた場合は、神経症状はしだいに軽快していくものと考えられ、労働能力喪失期間を10年とすることが多くなっています。
後遺障害12級の示談金請求におけるポイント
後遺障害12級の示談金請求については、以下の点も押さえておきましょう。
- 示談金として慰謝料以外の損害も請求できる
- 通勤中や業務中の交通事故は労災保険へも請求する
- 後遺障害12級の示談金が減額する要素を知っておく
それぞれ詳しく見ていきましょう。
慰謝料以外の損害も示談金として請求
後遺障害12級に認定された場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益以外にも、交通事故により発生した損害についても示談金として請求することができます。
内訳 | 概要 |
---|---|
治療関係費 | 治療費、入院費、手術費、付添看護費、リハビリ費用 |
入通院慰謝料 | ケガの精神的苦痛の補償(関連記事:交通事故の慰謝料は通院1日いくら?) |
休業損害 | 事故に伴う休業による減収の補償(関連記事:交通事故の休業損害) |
後遺障害慰謝料※ | 後遺障害を負った精神的苦痛の補償 |
後遺障害逸失利益※ | 後遺障害の影響で生じる将来的な減収の補償 |
修理関係費用 | 修理費用、評価損など |
※後遺障害認定を受けたら請求可能な費目
上記の費目のうち、慰謝料と逸失利益については、以下の「慰謝料の自動計算機」でおおまかな金額を確認できます。
後遺障害等級や治療期間、年齢や年収を入力するだけで自動で計算できるので、ぜひご利用ください。
通勤中や業務中の交通事故は労災保険へも請求
通勤中や業務の交通事故であれば、加害者側に損害賠償金を請求することと合わせて労災保険にも保険金を請求しましょう。
後遺障害12級に認定された場合に労災保険から支払われる費目としては、次のものがあります。
- 障害補償給付
- 障害特別支給金
- 障害特別一時金
このうち障害補償給付は、加害者側に請求する逸失利益と同じものです。よって、障害補償給付と逸失利益の金額は互いに相殺されます。
一方、障害特別支給金と障害特別一時金は労災独自の費目です。加害者側から受け取る賠償金との相殺はないため、労災保険にも保険金請求すればより多くのお金をもらうことが可能です。
労災保険については『通勤や業務中の交通事故で労災保険と任意・自賠責を両方使うメリット』で詳しく解説しています。
労災保険が使えるケースや後遺障害関連以外で請求できる費目もわかるので、ご確認ください。
後遺障害12級の示談金を減額する要素にも注意
示談金の金額は、以下のような要素によって減額するおそれがあります。
- 過失相殺
- 素因減額
過失相殺による減額
交通事故の発生の原因について被害者側にも過失がある場合には、過失の程度に応じて示談金の金額を減額することとなり、このような減額を過失相殺といいます。
仮に過失が1割付いてしまうと、過失相殺によりもらえる示談金は1割減額となるのです。
過失割合でもめているなら、不当な過失割合で示談してしまわないよう、交通事故に力を入れている弁護士に過失割合の交渉を任せましょう。
素因減額
後遺障害12級に認定されても、もともと被害者にその症状を引き起こす体質的・心理的な要因があった場合、賠償金が減額されます。
これを素因減額(そいんげんがく)といいます。
たとえば交通事故でむちうちを負い、しびれや痛みが残って後遺障害12級に認定されたとします。
しかし、事故前から脊柱管の狭窄や椎間板ヘルニアなどの既往症があった場合、しびれや痛みは100%交通事故のせいとは言えません。
よって、既往症の影響分だけ慰謝料や賠償金が減額されることがあるのです。
既往症があり素因減額が心配な方は、関連記事『素因減額とは?減額されるケースや判断基準がわかる【判例つき】』もご覧のうえ、一度弁護士にご相談ください。
後遺障害12級の認定を受ける流れと対策
後遺障害12級の認定を受けるまでの流れ
後遺障害12級の認定を受けるまでの流れは以下の通りです。
症状固定の診断を受ける
これ以上治療を続けても、症状の改善は見込めないと医師が判断することで症状固定となります。
後遺症が残ったことになるので、後遺障害等級認定の申請が可能となるのです。
後遺障害診断書を準備する
後遺症の症状・程度や治療経過、今後の見通しなどを記載した後遺障害診断書を医師に書いてもらいます。
後遺障害等級認定を申請する
後遺障害診断書やそのほかの資料をもとに、後遺障害等級認定の申請を行います。
申請方法については、被害者自身で書類を収集する被害者請求によって行うことをおすすめします。
審査機関による審査がなされ結果が通知される
審査機関である損害保険料率算出機構において、12級の後遺障害に該当する症状の有無が審査されます。
審査結果は書面で通知され、審査結果に不服がある場合は異議申し立てが可能です。
後遺障害12級の認定を受けるためのポイント
後遺障害診断書の内容をしっかり精査
後遺障害診断書は、後遺障害等級の認定審査を受けるために必ず提出する書類です。医師に後遺障害診断書を書いてもらったら、記載内容に問題がないか確認しましょう。
医師は後遺障害認定の専門家ではないため、認定率を上げるための要点までは押さえられていないことがあります。後遺障害認定の専門家は弁護士です。専門知識や過去の事例を踏まえた効果的な対策はお任せください。
適切な後遺障害診断書の書き方は後遺症の種類などによっても異なります。一度弁護士に確認してもらい、必要があれば医師に訂正を依頼してもらうことがおすすめです。
後遺障害診断書の書き方は、関連記事『後遺障害診断書のもらい方と書き方は?自覚症状の伝え方と記載内容は要確認』でも解説しています。
後遺障害等級認定の申請は被害者請求がベスト
申請方法には事前認定と被害者請求があります。
- 事前認定
申請のための書類について後遺障害診断書以外を相手方の任意保険会社に用意してもらう - 被害者請求
申請のための書類を全て被害者自身で用意する
事前認定の方が準備の手間がかからない点はメリットですが、被害者は後遺障害診断書以外の書類に関与できません。
一方、被害者請求では書類準備の手間はかかりますが、追加書類を添付したり、提出書類の質を高めたりすることで審査機関に症状の存在・程度を伝えやすくなります。
そのため、認定の可能性が高くなりやすい被害者請求がおすすめです。
どのように書類の質を高めれば良いのかわからない、どんな追加書類を添付すればいいのかわからない、書類の準備に手間をかけられないという場合は、弁護士にご相談ください。
相談時に用意すべき書類についてアドバイスがもらえますし、ご依頼まで進んだ場合は書類の準備・ブラッシュアップを任せられます。
重要
むちうちなどの神経症状で後遺障害12級13号認定を目指すことは簡単ではありません。「後遺障害12級に認定されるかどうか微妙だ」「後遺障害非該当かもしれない」という方は被害者請求がおすすめです。
もっと詳しく
納得いかない認定結果になったら異議申し立ても検討
後遺障害認定の結果に不服がある場合は「異議申し立て」ができます。
ただし、異議申し立てをする際には、異議申し立てにより等級が上がる可能性、等級を上げるための対策をしっかりしなければなりません。
異議申立てが必要になった場合はまず、『後遺障害の異議申し立てを成功させる方法と流れ』を読んでみることがおすすめです。
後遺障害12級の認定や慰謝料請求は弁護士に相談を
無料電話・LINE相談はこちらから
アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方を対象とした無料電話・LINE相談をおこなっています。
自分の後遺症は12級に該当する?12級に認定されるにはどうしたらいい?12級になったけれど示談金はいくら?などのご質問を、交通事故案件の経験が豊富な弁護士に相談することが可能です。
また、相談後に正式な依頼すれば、以下のようなメリットを受けることもできます。
- 後遺障害等級認定を受けられるよう申請に関してサポートを受けられる
- 示談金の増額交渉をしてもらうことで、増額の可能性が高くなる
- 必要な手続きを弁護士に任せることで被害者の負担軽減につながる
ぜひ一度、弁護士への無料法律相談をご活用ください。
弁護士に依頼する際の費用負担は軽減できる
弁護士に依頼する際は費用がかかりますが、「弁護士費用特約」を利用できるなら、その費用をご自身の保険会社に負担してもらうことも可能です。
弁護士費用特約の詳細な補償額は約款しだいですが、法律相談料として10万円、弁護士費用として300万円まで補償を受けられることが多いでしょう。
弁護士費用が300万円を超えることは多くないため、弁護士費用特約を利用すれば金銭的な負担なく弁護士への依頼が可能となるのです。
弁護士費用特約が使えない場合でも、アトム法律事務所は原則として着手金無料となっているため、手元のお金が不安な方でも安心して依頼が可能です。
アトム法律事務所の解決事例
最後に、アトム法律事務所の解決事例を紹介します。
後遺障害12級7号の慰謝料事例|左足複雑骨折など
左足の複雑骨折や関節機能障害などの怪我について、適正な慰謝料金額を知りたいとご相談があった事例です。弁護士が事故後の治療状況などを詳しく確認したところ、後遺障害認定を受けられる可能性があると分かりました。
そこで正式に契約をいただき、弁護士が等級認定に向けたサポートを実施したところ、後遺障害12級7号に認定されたのです。
示談交渉の開始から10ヶ月後に、最終的には慰謝料を含む1,561万円で示談が成立しました。
この交通事故の解決実績を詳しく知りたい方は、左足骨複雑骨折の増額事例にて確認してください。
後遺障害12級6号の慰謝料事例|右手首のTFCC損傷など
10代の学生さんが交通事故にあい、親御さんから相談を頂いたことがきっかけです。弁護士が詳しく話を聞き取ったところ、後遺障害等級認定が十分に見込めることがわかりました。そこで、後遺障害等級認定の獲得に向けた活動を実施し、結果として後遺障害12級6号の認定となりました。
示談交渉開始から11ヶ月の粘り強い交渉を経て、最終的には慰謝料を含む1,369万円にて示談が成立したのです。
この交通事故では、お仕事をされている親御さんより、LINEでやりとりできるアトムのサービスもご評価いただきました。この交通事故の解決実績を詳しく知りたい方は、右手首のTFCC損傷の増額事例にて確認してください。
その他の事例についてはアトム法律事務所の後遺障害12級の慰謝料増額事例において知ることができます。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了