後遺障害11級の症状と認定基準|慰謝料と逸失利益、11級7号の注意点
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交通事故の後遺障害11級とは、著しい目の調節機能障害や運動障害、歯の欠損、聴力障害、脊柱の変形障害、手足の指の障害、内臓の障害などで認定される等級です。
後遺障害11級の労働能力喪失率は20%が目安となっており、事故前の労働能力からの低下は認められた状態です。
後遺障害11級における慰謝料相場は420万円です。加えて数百万〜数千万円の後遺障害逸失利益やその他の賠償金も請求できるため、示談金全体では1,000万円を超えるケースもあります。
後遺障害11級の認定基準や慰謝料・逸失利益の相場・計算方法、11級の認定を受けるポイントを見ていきましょう。
後遺障害11級の認定基準
後遺障害の認定基準は、「交通事故損害賠償法施行令」で定められています。後遺障害11級の認定基準は以下の10区分です。
11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
11級2号 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
11級3号 | 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
11級4号 | 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
11級5号 | 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの |
11級6号 | 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
11級8号 | 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの |
11級9号 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの |
11級10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
「著しい調節機能障害」「労務の遂行に相当な程度の支障がある」など、具体的にイメージしづらいものも多いのではないでしょうか。
それぞれの認定基準を、詳しく確認していきましょう。
後遺障害11級1号|両眼の眼球に障害
後遺障害11級1号の症状は、「両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの」です。
「眼球の著しい調節機能障害」「眼球の著しい運動障害」とは、具体的には以下のような状態を指します。
両目の障害
- 眼球の著しい調節機能障害:瞳の調節力が通常の半分以下
- 眼球の著しい運動障害:注視野が通常の半分以下
※注視野とは:頭を固定した状態で直視できる範囲のこと
両眼が著しい調節機能障害を負った場合、年齢別の調節力と比較して程度を判定することになります。
眼球周辺の筋肉などに麻痺が残り、目のピントを合わせる能力が半分以下になるか、頭を固定した状態の視野が半分以下になった場合、後遺障害11級1号に認定されるのです。
もっとも、55歳以上の場合は通常年齢のため調節力が低下しているため、後遺障害認定を受けられません。
交通事故による目の後遺症については『交通事故による目の後遺障害と慰謝料相場|失明・視力低下などの認定基準』の記事で網羅的に解説しています。調節機能障害・運動障害の測定方法もわかるので、あわせてご一読ください。
後遺障害11級2号|両眼のまぶたの障害
後遺障害11級2号の症状は、「両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの」です。「まぶたに著しい運動障害を残す」とは、以下のような状態をいいます。
まぶたの著しい運動障害とは
- 目を開いたときに瞳孔部分がまぶたによって覆われている
- 目を閉じたときに角膜が完全に覆われない
両方のまぶたに麻痺などが残り、目を開いたときに瞳孔が隠れてしまうか、目を閉じたときに角膜が完全に覆われない状態になると、後遺障害11級2号に認定されるでしょう。
後遺障害11級3号|片眼のまぶたが欠損
後遺障害11級3号の症状は、「一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの」です。
片目のまぶたが欠損し、目を閉じたときに角膜が完全に覆われない状態になると、後遺障害11級3号に認定されることになります。
後遺障害11級4号|多くの歯を失った
後遺障害11級4号の症状は、「十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」です。
後遺障害認定における歯科補綴の定義とは、「喪失した歯や歯冠部の4分の3以上を欠損した歯を義歯やクラウンなどで補った」を指します。
なお、ブリッジでダミーを作ったような状況で失った歯と義歯の数が異なる場合、失った歯の数をカウントしてください。
また、親知らずは認定の対象となりません。乳歯についても、永久歯が生えないという医師の証明がなければ認定の対象とはならないでしょう。
10本以上の歯が失われるか歯冠部の4分の3以上が欠け、義歯などの治療で補った場合、後遺障害11級4号に認定されるのです。
歯に関する後遺障害は、欠損だけではありません。詳しく知りたい方は『交通事故で歯が折れたら慰謝料いくら?前歯欠損は後遺障害認定される?』の記事をご覧ください。
後遺障害11級5号|両耳の聴力低下
後遺障害11級5号の症状は、「両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの」です。
具体的には、「両耳の平均純音聴力レベルが40デシベル以上」の状態を指します。
上記の聴力では、1メートル以上の距離では小声を聞き取れないとみなされ、後遺障害11級5号に認定されるのです。
聴覚に関する後遺障害については『交通事故による聴覚障害の後遺障害。難聴(聴力低下等)や耳鳴りの等級は?』の記事で網羅的に説明を行っています。
聴力低下以外の聴覚に関する後遺障害に関しても知ることができるので、聴力低下以外にも聴覚に関する後遺症が気になる方は、一度ご覧ください。
後遺障害11級6号|片耳の聴力低下
後遺障害11級6号の症状は、「一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの」です。
具体的には、以下の状態をいいます。
後遺障害11級の聴力障害
- 片耳の平均純音聴力レベルが70デシベル以上80デシベル未満
- 片耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上かつ最高明瞭度が50%以下
聴力低下の結果このような検査結果が出た場合には、40センチメートル以上の距離では普通の話声を聞き取れないとみなされ、後遺障害11級6号に認定されるでしょう。
なお、片耳の平均純音聴力レベルが90デシベル以上という検査結果になったときには、ほとんど聞こえないような状態と判断される見通しです。
そうすると「一耳の聴力を全く失った」として後遺障害9級認定される可能性があります。
後遺障害11級7号|脊柱の変形
後遺障害11級7号の症状は、「脊柱に変形を残すもの」です。
「脊柱に変形を残す」とは、以下のいずれかの状態に該当していることを言います。
後遺障害11級の脊柱変形
- 脊椎圧迫骨折を残していることがX線写真などの画像検査で確認できる
- 脊椎固定術が行われた(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収された場合を除く)
- 3個以上の脊椎が椎弓切除術などの椎弓形成術を受けた
脊椎に変形が残っていることが客観的にわかる場合や手術を受けている場合、後遺障害11級7号に認定されることになります。
ただし後遺障害11級7号の脊柱変形は逸失利益の金額で争いになる可能性も高いです。本記事内「コラム|11級7号脊柱変形の逸失利益は要注意」にて理由と対処法を解説しているので、あわせてお読みください。
脊柱の変形は圧迫骨折によって起こることが多いです。
関連記事『交通事故による圧迫骨折の後遺障害等級と慰謝料の基準を弁護士が解説』もお読みいただければ、より後遺障害認定や損害賠償請求について理解を深められます。
後遺障害11級8号|手指の欠損
後遺障害11級8号の症状は、「一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの」です。
「指を失った」とは、具体的には以下の状態をいいます。
- 手指を中手骨または基節骨で切り離した
- 近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)において基節骨と中手骨を切り離した
手指の骨や関節の位置は、以下の図をご覧ください。
つまり、片手の人差し指、中指、薬指のいずれかを根元から失った場合、後遺障害11級8号に認定されるのです。
交通事故で手指を切断した障害については、どの指か、欠損した指の本数は何本かなどでこまかく等級が変わります。たとえば、片方の親指を失ったら後遺障害10級認定となる見通しです。
以下の関連記事もあわせて参考にご覧ください。
関連記事
- 片方の親指のみ欠損:後遺障害10級
- 片方の親指を含む2本または親指以外の3本を欠損:後遺障害8級
- 交通事故による手指の後遺障害|欠損・可動域制限・マレットフィンガーの認定基準
後遺障害11級9号|足指が動かない
後遺障害11級9号の症状は、「一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの」です。
「足指の用を廃した」とは、以下の状態のことを指します。
- 親指の末端骨が半分以下になった
- 親指以外の足指が中節骨もしくは基節骨で切り離されたか、遠位指節間関節または近位指節間関節で切り離された
- 中足指節間関節か近位指節間関節の可動域が通常の半分以下に制限される
(親指については、指節間関節の可動域が通常の半分以下に制限される)
つまり、片足の親指を含む2本の足指が途中で切り離されたか麻痺などで動かなくなった場合、後遺障害11級9号に認定されることになります。
足指が曲がらない症状が残った方は『交通事故で足指を切断した・曲がらなくなった|後遺障害等級の認定基準は?』の記事もご一読ください。後遺障害認定を受けるためのポイントがわかります。
後遺障害11級10号|内臓の障害で仕事に制限
後遺障害11級10号の症状は、「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」です。
内臓に障害が残り、働くことはできるものの業務にかなりの差し障りがある場合、後遺障害11級10号に認定されます。
11級10号に認定されうる症状は、内臓の種類ごとに異なります。器官系ごとに詳しく確認していきましょう。
呼吸器
呼吸器の状態として、以下のような検査結果となったときには後遺障害11級10号に認定される見込みです。
呼吸器の状態
- 動脈血酸素分圧が70Tprrを超えており、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr~43Torr)にない
- スパイロメトリーの結果が%1秒量55以下または%肺活量が60以下で、健常者と同じように階段の昇降ができない程度の呼吸困難がある
- スパイロメトリーの結果が%1秒量55超~70以下または%肺活量が60超~80以下で、健常者と同じように階段の昇降ができない程度以上の呼吸困難がある
循環器
循環器の状態として、以下のような検査結果となったときには後遺障害11級10号に認定される見込みです。
循環器の状態
- 心機能が低下し、階段を連続して昇るなど8METsを超える強度の身体活動が制限される
- 心臓の弁を置換したが、継続的な抗凝血薬療法の必要はない
- 大動脈に偽腔開存型の乖離を残す
消化器
消化器(胃・大腸・小腸など)の状態として、以下のような検査結果となったときには後遺障害11級10号に認定される見込みです。
消化器の状態
- 胃に消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除術後の逆流性食道炎のいずれかがある
- 小腸を大量に切除し、空腸と回腸の長さが100センチ以上300センチ未満になり、小腸吸収障害がある
- 小腸・大腸の皮膚瘻が残り、瘻孔から少量ではあるものの明らかに小腸の内容が流出する
- 小腸・大胃腸の狭窄が残る(月1回程度の症状とX線画像による確認が必要)
- 用手摘便を要さない便秘がある(神経損傷の確認と排便回数が週2回以下であることが必要)
- 便失禁があるが、常時おむつの装着は必要ない
- 慢性肝炎
- 膵臓に外分泌・内分泌のいずれかの機能障害がある
- 腹壁瘢痕ヘルニア・腹壁ヘルニア・鼠経ヘルニア・内ヘルニアがあり、重い作業を行ったときに脱出・膨隆する
泌尿器
泌尿器の状態として、以下のような検査結果となったときには後遺障害11級10号に認定される見込みです。
泌尿器の状態
- じん臓を失い、GFR値が70超~90
- じん臓を失っていないが、GFR値が50超~70
- 外尿道口形成術を行った
- 尿道カテーテルを留置した
- 排尿障害があり、残尿が50ミリリットル以上100ミリリットル未満
- 尿道狭窄による排尿障害があり、糸状ブジーを必要とする
- 切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁のため、常にパッドなどの装着は必要ないが、下着が少し濡れる
- 支配神経の損傷により、多飲などの原因がない日中8回以上の頻尿がある
交通事故による内臓機能障害の後遺障害認定については『交通事故で内臓損傷・内臓破裂|後遺障害等級の認定基準や慰謝料の相場を解説』の記事で網羅的に解説しています。こちらの記事もご確認ください。
後遺障害11級の慰謝料・逸失利益|示談金の内訳・費目
後遺障害11級に認定されたら、治療終了後にも残る損害として、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できるようになります。
後遺障害11級で請求できる後遺障害慰謝料の相場や逸失利益の算定方法、そして相手方に請求できる示談金の費目を紹介します。
後遺障害11級の後遺障害慰謝料|相場と増額の重要性
後遺障害11級の慰謝料相場は420万円です。この金額は裁判でも認められ、法的に正当性の高い弁護士基準(裁判基準)による相場となります。
もっとも、この弁護士基準以外にも、慰謝料を算定する基準には自賠責基準や任意保険基準があり、相手方の任意保険会社はそうした基準で金額を提示してくるのです。
自賠責基準とは、法令で定められた最低水準の金額になります。任意保険基準とは、任意保険会社が用いる独自の基準で、自賠責基準とほぼ同額や若干高い程度が多いです。
後遺障害11級の慰謝料は、自賠責基準で算定すると136万円にとどまってしまい、弁護士基準の3分の1程度になってしまいます。
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
11級 | 136(135) | 420 |
相手方の提示した条件に「こういうものなのだろう」と何となく合意してしまうと、本来受け取れるはずの金額が受け取れなくなってしまいます。
弁護士が示談交渉すれば、相手方の任意保険会社が弁護士基準まで増額を認める可能性があります。
弁護士に依頼すると費用がかかることを心配される方も多いですが、他の示談金の費目も高額になりやすくなるため、弁護士に依頼した方が多くの金額が手元に入ることが多いです。
まずは無料相談で弁護士に増額幅の見積もりをとってみましょう。
後遺障害11級の逸失利益|計算式と計算方法の例
後遺障害逸失利益は、後遺障害の影響で減ってしまう生涯収入を補償するものです。
事故時の年齢や年収、後遺障害によりどの程度労働能力が低下するかなどの要素から金額が決まります。具体的な計算方法は以下のとおりです。
逸失利益の計算式
- 有職者または就労可能者の場合
1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
- 症状固定時に18歳未満の未就労者の場合
1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数 )
後遺障害11級の労働能力喪失率は20%となるため、計算式に20%(0.2)を当てはめて計算します。
また、労働能力喪失期間は後遺障害による労働能力低下の影響を受ける期間のことです。原則として「症状固定~67歳」の年数だと考えてください。
ライプニッツ係数とは逸失利益で生じる利息を差し引くための数値で、労働能力喪失期間に応じてあらかじめ決められた数値を用います。
労働能力喪失期間 | ライプニッツ係数 |
---|---|
1年 | 0.97 |
5年 | 4.58 |
10年 | 8.53 |
20年 | 14.88 |
30年 | 19.60 |
後遺障害11級の逸失利益の計算例を以下に示します。
逸失利益の計算例
労働能力喪失期間30年、つまり被害者が症状固定時37歳であって事故前の収入が500万円ならば、後遺障害11級認定の逸失利益は1,960万円です。
500万円×0.2×19.60=1,960万円
計算式には事故前の時点における被害者の年収、年齢などの複数の情報をもとに算定します。
示談金のなかでも後遺障害逸失利益が占める割合は高く、金額が大きな費目ほど相手方の任意保険会社とも争いになりやすいです。
関連記事『交通事故の逸失利益とは?計算方法を解説!早見表・計算機で相場も確認』を参考に、逸失利益の見通しを立てていきましょう。
そして、相手方の任意保険会社との示談交渉時には弁護士への依頼も検討してみてください。
交通事故の示談金内訳は?慰謝料計算機もご紹介
交通事故の示談金は、被害者が負ったすべての損害賠償金であるため、慰謝料や逸失利益も示談金の一部となります。
よって、後遺障害11級の示談金は1,000万円を超えることも十分あるでしょう。
後遺障害11級認定を受けたときの示談金の費目の代表例を以下に示します。
概要 | |
---|---|
治療関係費 | 治療費、入院費、手術費、付添看護費など |
入通院慰謝料 | ケガを負った精神的苦痛の補償 |
休業損害 | 休業や家事ができないことへの補償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害による精神的苦痛の補償 |
逸失利益 | 後遺障害による将来的な収入減の補償 |
修理関係費用 | 修理費用、評価損など |
各費目の計算方法のうち、金額相場のわかりづらい入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益については、以下の慰謝料計算機を使うと便利です。
おおよその金額を確認しておき、被害者が損をすることのない示談金の獲得を目指しましょう。
関連記事『交通事故の示談金相場は?一覧表や増額のコツ、示談交渉の注意点を解説』では、よりくわしく交通事故の示談金の費目や内訳を解説しています。
コラム|11級7号脊柱変形の逸失利益は要注意
後遺障害11級7号の脊柱変形では、他の11級の後遺障害と比べて、逸失利益の算定でもめる可能性があります。なぜなら脊柱変形による労働能力への影響が非常に個別的であるためです。
脊柱の変形がもたらす痛みや可動域の制限は人によって異なり、同じ障害等級であっても、その影響がどれほど労働能力に反映されるかは職業や業務内容によって変わります。
特に、肉体的な負担が大きい仕事では脊柱変形が顕著な影響を及ぼす一方で、デスクワークなど身体的負担の少ない職業では、影響が小さくなることもあります。
職業の特性に応じて労働能力の喪失度が異なることも事実です。相手の任意保険会社との交渉の場では、適切な証拠に基づいて冷静に主張していきましょう。
逸失利益を獲得するための対処法
まずは、損害賠償に詳しい弁護士に相談して、自分のケースに合った適切なアドバイスやサポートをもらいましょう。
次に、医療機関からの診断書や意見書を取り寄せ、後遺障害の影響を具体的に示す資料をしっかり整えることも重要です。これにより、障害が労働能力に与える具体的な影響を裏付けることができます。
交渉の場では冷静に自己主張をし、適切な証拠に基づいて主張することが重要です。いかに仕事に影響を与えているのかを説明し、損害として認めてもらうようにしましょう。
後遺障害11級認定までの流れ
次に、後遺障害11級に認定されるまでの流れを見ていきましょう。
(1)医師から症状固定の診断
後遺障害認定の申請をするのは、医師から「症状固定」と診断されたあとです。
症状固定とは、「これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと判断された状態」のことを言います。症状固定と診断されたことは、すなわち交通事故による後遺症が残ったこということです。
なお、後遺障害認定を受けるためには、治療開始から症状固定までおおよそ6か月経過していることが必要になります。
ただし、指の欠損といった後遺障害の残存が客観的に明らかな症状は6か月経過していなくても後遺障害認定を受けられる可能性があります。
(2)後遺障害診断書の作成を依頼
症状固定の診断を受けたら、まずは医師に後遺障害認定の申請に必要な「後遺障害診断書」の作成を依頼しましょう。
後遺障害診断書とは、症状固定日、他覚症状、検査結果といった内容が記載されている書類です。様式は相手方の自賠責保険会社から取り寄せるか、インターネット上でダウンロードすることができます。
後遺障害診断書は、後遺障害認定の審査でとくに重要になる書類です。後遺障害診断書に不適切な記載があったため、本来なら認定されるはずの等級に認定されないこともあります。
後遺障害診断書の記載に問題がないかは、後遺障害認定を取り扱っている弁護士に確認を受けることをおすすめします。
「医師に任せていたら大丈夫だろう」と思われる方もいらっしゃいますが、医師は医療の専門家であり、後遺障害認定の専門家ではありません。
後遺障害診断書の記載例は、『後遺障害診断書のもらい方と書き方は?自覚症状の伝え方と記載内容は要確認』の記事で紹介しています。様式もダウンロードできるため、ぜひお役立てください。
(3)後遺障害の申請|申請方法は2通り
後遺障害診断書の準備ができたら、後遺障害の申請方法についても検討しましょう。
後遺障害認定の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」の2つがあり、被害者が手間をかけずに済む、後遺障害認定されやすい工夫ができるなど、それぞれに特徴があります。
事前認定と被害者請求の特徴について、手続きの手間、書類提出時の工夫、被害者の準備書類について比較してみましょう。
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
準備・手間 | かからない | かかる |
提出の工夫 | しづらい | しやすい |
準備書類 | 後遺障害診断書のみ | すべて |
事前認定と被害者請求のどちらで申請するのが最適かは、症状によって異なります。ご自身の場合はどちらを選べばよいか迷ったら、無料相談で弁護士からアドバイスを受けるようにしましょう。
後遺障害11級の障害者手帳や労災保険金は?
後遺障害11級に該当する症状で障害者手帳を取得することは、基本的に難しいです。
一方、労災保険からは条件を満たしていれば保険金を受け取れます。後遺障害に関する保険金を挙げると、以下のとおりです。
- 障害補償一時金=給付基礎日額×223日分
- 障害特別一時金=算定基礎日額×223日分
- 障害特別支給金=29万円
労災保険の支給ルールは一律であるため、増額という考え方はありませんし、同じ損害についての補償を労災と任意保険の両方から二重で受け取ることはできない決まりです。
ただし労災保険から慰謝料は一切支払われないため、交通事故の賠償にくわしい弁護士にも相談して、適正な慰謝料獲得を目指していきましょう。
関連記事『交通事故で労災保険は使える?慰謝料は?任意・自賠責併用のメリット・デメリット』では、労災事故でもあり、交通事故でもある場合の対応をわかりやすく説明しています。
後遺障害11級の可能性があるなら弁護士に相談
弁護士に相談・依頼するメリット
交通事故により後遺症が残り、後遺症の症状が後遺障害に該当する可能性があるなら、弁護士に相談するべきです。
弁護士に相談や依頼を行うことで、以下のようなメリット受けることができます。
弁護士相談・依頼のメリット
- 後遺障害等級の認定に向けたサポートを受けられる
- 弁護士が連絡の窓口となる
- 適正相場への増額交渉を任せられる
それぞれのメリットの具体的内容を、以下において紹介します。
後遺障害等級の認定に向けたサポートを受けられる
後遺障害等級11級の認定を受けるためには、後遺症の症状が11級各号の症状に該当することを、後遺障害診断書の記載内容やそのほかの書類により証明する必要があります。
証明のために必要となる後遺障害診断書の記載内容や、書類の種類などについては、専門家である弁護士が熟知しているのです。
そのため、弁護士に依頼を行うと、後遺障害等級11級の認定を受けるために必要な書類の作成や収集のサポートを受けることができるため、11級の認定を受けられる可能性が上昇します。
弁護士が連絡の窓口となる
弁護士に依頼すると、弁護士が加害者側からの連絡の窓口となってくれます。そのため、相手方からの連絡に対する対応を弁護士に任せることが可能となるのです。
後遺障害等級11級に該当するような後遺症が生じているのであれば、長期の治療やリハビリが必要となることも珍しくありません。
その中で相手方への対応まで行うと、身体的にも精神的にも疲労がたまってしまう恐れがあります。
弁護士に窓口となってもらうことでこのような疲労を回避し、穏やかな生活を取り戻すことに専念することができるのです。
適正相場への増額交渉を任せられる
後遺障害11級に認定されたら、相手方の任意保険会社と慰謝料・示談金の金額などを決める「示談交渉」を行うことになります。
相手方の任意保険会社は、本来被害者が受け取れる慰謝料・示談金より大幅に低い金額を提示してくることが多いでしょう。
相場の金額で示談するには増額交渉が必要となりますが、知識や示談交渉経験が豊富な相手方の任意保険会社に対して増額を認めさせることは簡単ではありません。
しかし、弁護士に依頼し、示談交渉に介入してもらうことで、交渉態度が軟化して示談でまとまる可能性も出てきます。
これまでの事例を熟知した弁護士からの根拠のある主張であり、示談交渉が決裂すると裁判となるおそれがあるためです。
アトムでは無料の法律相談を受けられます
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弁護士費用については、弁護士費用特約を利用することで金銭的な負担を和らげることができます。
弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、弁護士に相談・依頼する際の費用について、保険会社が代わりに負担してくれる特約です。
負担の上限は契約内容ごとに異なりますが、相談料10万円、依頼による費用300万円としていることが多く、実際の相談料や費用がこの上限を上回ることは少ないでしょう。
そのため、弁護士費用特約を利用すると、依頼者が金銭的な負担なく依頼することができるのです。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了