後遺障害11級│交通事故の慰謝料と逸失利益の計算方法

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後遺障害等級11級|症状と認定基準

交通事故で後遺障害11級に認定されるのは、目、まぶた、歯(10本以上)、聴力、手指、足指、胸腹部臓器などの障害や、脊柱の変形が残った場合で、10区分に分かれます。

交通事故の後遺障害11級の慰謝料相場は、弁護士基準(裁判基準)で420万円です。さらに、将来の減収分である「逸失利益」が加わると、示談金の総額が1,000万円を超えるケースもあります。

逸失利益の計算方法は「事故前の年収×労働能力喪失率(後遺障害11級は20%が目安)×ライプニッツ係数」が基本です。

ただし、相手方保険会社は任意保険基準や自賠責基準(後遺障害11級は136万円)を用いて示談金を計算し、低い慰謝料を提示してくるケースが多いです。

この記事では、交通事故の後遺障害11級について、認定基準、慰謝料・逸失利益の計算方法、妥当な慰謝料をもらうためのポイントなどを詳しく解説します。

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目次

交通事故の後遺障害11級の症状一覧

交通事故による後遺症のうち、日常生活や業務に明確な支障や制限が生じる症状は、後遺障害11級に認定される可能性があります。

交通事故の後遺障害11級の認定基準は、「自動車損害賠償保障法施行令」で定められています。具体的には、以下の1号から10号までの10区分あります。

後遺障害11級の認定基準

等級認定基準
11級1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
11級2号両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
11級3号一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
11級4号十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
11級5号両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
11級6号一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
11級7号脊柱に変形を残すもの
11級8号一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
11級9号一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
11級10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

「著しい調節機能障害」「労務の遂行に相当な程度の支障がある」など、言葉だけでは具体的にイメージしづらいものも多いでしょう。

それぞれの認定基準については、本記事内「後遺障害11級の具体的な認定基準」で詳しく解説しますので、このまま読み進めていってください。

後遺障害11級の解決事例(交通事故の慰謝料増額)

ここでは、実際に、アトム法律事務所が扱った交通事故の解決事例をあげて、後遺障害11級で獲得した慰謝料・逸失利益などの示談金の総額を紹介します。

後遺障害11級7号で慰謝料請求|約137倍増額

停車中の車のドアが突然開き自転車で激突した事故

被害者が自転車で走行中、停車中の自動車のドアが突然開いて激突し、胸椎圧迫骨折を負った事故。

約4ヶ月の通院を経て症状固定となり、相手方保険会社からは示談金として約6万円のみが提示されていたケース。


弁護活動の成果

弁護士介入後、医師の協力を得て、後遺障害11級7号の認定を獲得。

弁護士基準で交渉した結果、提示額の約6万円から最終的な受取金額が約825万円まで増額された(約137倍増額)。

年齢、職業

40~50代、会社員

傷病名

胸椎圧迫骨折(脊柱の変形障害)

後遺障害等級

11級7号

後遺障害11級9号で慰謝料請求|約2.5倍増額

信号停止中のバイクに追突され楔状骨骨折を負った事例

被害者は、バイクで信号待ちのため停止中だったところ、後方からきた自動車に追突された。事故の過失割合は10対0。

左内側外側楔状骨骨折・左第1~4中足骨基底部骨折を負って9日間入院し、症状固定後に後遺障害11級9号が認定されたケース。


弁護活動の成果

加害者が自賠責保険のみであったため、無保険車傷害保険に請求を行った。

当初の提示額約552万円から、慰謝料を弁護士基準で請求し逸失利益も交渉した結果、最終的な受取金額が1,414万円まで増額された(約2.5倍増額)。

年齢、職業

40~50代、会社員

傷病名

楔状骨骨折

後遺障害等級

11級9号

交通事故の後遺障害11級の具体的な認定基準

ここからは、後遺障害11級の10区分(1号から10号まで)について、具体的な認定基準を解説します。

後遺障害11級1号|両眼の眼球に著しい調節機能障害・運動障害が残るもの

交通事故で「両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害」が残った場合、後遺障害11級1号が認定されます。

「眼球の著しい調節機能障害」「眼球の著しい運動障害」とは、具体的には以下のような状態を指します。

両目の眼球の障害

  • 眼球の著しい調節機能障害
    瞳の調節力(ピントを合わせる能力)が通常の半分以下になった場合。
    年齢別の調節力と比較して程度が判定される。55歳以上は、加齢により調節力が低下しており、後遺障害認定の対象外
  • 眼球の著しい運動障害
    注視野(頭を固定した状態で直視できる範囲)が通常の半分以下になった場合。

交通事故による目の後遺症については『交通事故による目の後遺障害と慰謝料相場|失明・視力低下などの認定基準』の記事で網羅的に解説しています。調節機能障害・運動障害の測定方法もわかるので、あわせてご一読ください。

後遺障害11級2号|両眼のまぶたに著しい運動障害が残るもの

交通事故で「両眼のまぶたに著しい運動障害」が残った場合、後遺障害11級2号が認定されます。

両眼のまぶたの障害

  • 目を開いたときに瞳孔部分がまぶたによって覆われている
  • 目を閉じたときに角膜が完全に覆われない

両方のまぶたに麻痺などが残り、目を開いたときに瞳孔が隠れてしまうか、目を閉じたときに角膜が完全に覆われない状態になると、後遺障害11級2号に認定されます。

後遺障害11級3号|片眼のまぶたに著しい欠損が残るもの

交通事故で「一眼のまぶたに著しい欠損」が残った場合、後遺障害11級3号に認定されます。

片目のまぶたが欠損し、目を閉じたときに角膜が完全に覆われない状態になると、後遺障害11級3号に認定されることになります。

後遺障害11級4号|10歯以上に歯科補綴を加えたもの

交通事故で「十歯以上に対し歯科補綴(ほてつ)を加えたもの」となった場合、後遺障害11級4号に認定されます。

後遺障害認定における歯科補綴の定義とは、「喪失した歯や歯冠部の4分の3以上を欠損した歯を義歯やクラウンなどで補った状態」を指します。

なお、ブリッジでダミーを作った場合など、失った歯と義歯の数が異なるときは失った歯の数でカウントします。また、親知らずは認定の対象外です。乳歯についても、永久歯が生えないという医師の証明がなければ認定対象にはなりません。

10本以上の歯が失われるか歯冠部の4分の3以上が欠け、義歯などの治療で補った場合、後遺障害11級4号に認定されるのです。

歯に関する後遺障害は、欠損だけではありません。詳しく知りたい方は『交通事故で歯が折れたら慰謝料いくら?前歯欠損は後遺障害認定される?』の記事をご覧ください。

後遺障害11級5号|両耳の聴力が1メートル以上で小声を聞き取れない程度に低下したもの

交通事故で「両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度」となった場合、後遺障害11級5号が認定されます。

具体的には、「両耳の平均純音聴力レベルが40デシベル以上の状態」を指します。

1メートル以上の距離では小声を聞き取れない程度に聴力が低下した場合、後遺障害11級5号に認定されます。

聴覚に関する後遺障害について詳しく知りたい方は『交通事故での聴覚障害や難聴(聴力低下)、耳鳴りの後遺障害|等級や認定ポイント』の記事をご覧ください。

後遺障害11級6号|片耳の聴力が40センチメートル以上で普通の話声を聞き取れない程度に低下したもの

交通事故で「一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度」になった場合、後遺障害11級6号が認定されます。

後遺障害11級6号は、具体的には、以下の状態をいいます。

後遺障害11級の聴力障害

  • 片耳の平均純音聴力レベルが70デシベル以上80デシベル未満
  • 片耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上かつ最高明瞭度が50%以下

上記の検査結果に該当する場合、40センチメートル以上の距離では普通の話声を聞き取れないとみなされ、後遺障害11級6号に認定されます。

なお、片耳の平均純音聴力レベルが90デシベル以上の場合は、「一耳の聴力を全く失った」として後遺障害9級に認定される可能性があります。

後遺障害11級7号|脊柱に変形が残るもの

交通事故で「脊柱に変形を残すもの」となった場合、後遺障害11級7号が認定されます。

後遺障害11級7号は、具体的には、以下のいずれかに該当する状態をいいます。

後遺障害11級の脊柱変形

  • 脊椎圧迫骨折を残していることがX線写真などの画像検査で確認できる
  • 脊椎固定術が行われた(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収された場合を除く)
  • 3個以上の脊椎が椎弓切除術などの椎弓形成術を受けた

脊椎に変形が残っていることが客観的にわかる場合や手術を受けている場合、後遺障害11級7号に認定されます。

脊柱の変形は圧迫骨折によって起こることが多いです。『交通事故で圧迫骨折│後遺障害等級・慰謝料・保険金・逸失利益を弁護士が解説』の記事を読めば、後遺障害認定や損害賠償請求について理解を深められます。

後遺障害11級8号|手指を失ったもの

交通事故で「一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの」となった場合、後遺障害11級8号が認定されます。

「指を失った」とは、具体的には以下の状態をいいます。

  • 手指を中手骨または基節骨で切り離した
  • 近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)において基節骨と中手骨を切り離した

手指の骨や関節の位置は、以下の図をご覧ください。

手の関節と骨

片手の人差し指、中指、薬指のいずれかを根元から失った場合、後遺障害11級8号に認定されます。

どの指か、欠損した本数によって等級が変わります。たとえば、片方の親指を失った場合は後遺障害10級認定となる見通しです。

後遺障害11級9号|足指の用を廃したもの

交通事故で「一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの」となった場合、後遺障害11級9号に認定されます。

「足指の用を廃した」とは、以下のいずれかの状態を指します。

足指の用を廃した状態とは

  • 親指の末端骨が半分以下になった
  • 親指以外の足指が中節骨もしくは基節骨で切り離されたか、遠位指節間関節または近位指節間関節で切り離された
  • 中足指節間関節か近位指節間関節の可動域が通常の半分以下に制限される(親指は指節間関節の可動域が半分以下)

つまり、片足の親指を含む2本の足指が途中で切り離されたか麻痺などで動かなくなった場合、後遺障害11級9号に認定されることになります。

足指が曲がらない症状が残った方は『交通事故で足指を切断した・曲がらなくなった|後遺障害等級の認定基準は?』の記事もご一読ください。後遺障害認定を受けるためのポイントがわかります。

後遺障害11級10号|内臓の障害で労務に相当な支障があるもの

交通事故で「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」となった場合、後遺障害11級10号が認定されます。

内臓に障害が残り、働くことはできるものの、業務にかなりの差し障りがある場合、後遺障害11級10号に認定されます。

11級10号に認定されうる症状は、臓器の種類ごとに異なります。器官系ごとに詳しく確認しましょう。

呼吸器

呼吸器の状態として、以下のような検査結果となったときには後遺障害11級10号に認定される見込みです。

呼吸器の状態

  • 動脈血酸素分圧が70Torrを超えており、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr~43Torr)にない
  • スパイロメトリーの結果が%1秒量55以下または%肺活量が60以下で、健常者と同じように階段の昇降ができない程度の呼吸困難がある
  • スパイロメトリーの結果が%1秒量55超~70以下または%肺活量が60超~80以下で、健常者と同じように階段の昇降ができない程度以上の呼吸困難がある

循環器

循環器の状態として、以下のような検査結果となったときには後遺障害11級10号に認定される見込みです。

循環器の状態

  • 心機能が低下し、階段を連続して昇るなど8METsを超える強度の身体活動が制限される
  • 心臓の弁を置換したが、継続的な抗凝血薬療法の必要はない
  • 大動脈に偽腔開存型の解離を残す

消化器

消化器(胃・大腸・小腸など)の状態として、以下のような検査結果となったときには後遺障害11級10号に認定される見込みです。

消化器の状態

  • 胃に消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除術後の逆流性食道炎のいずれかがある
  • 小腸を大量に切除し、空腸と回腸の長さが100センチ以上300センチ未満になり、小腸吸収障害がある
  • 小腸・大腸の皮膚瘻が残り、瘻孔から少量ではあるものの明らかに小腸の内容が流出する
  • 小腸・大腸の狭窄が残る(月1回程度の症状とX線画像による確認が必要)
  • 用手摘便を要さない便秘がある(神経損傷の確認と排便回数が週2回以下であることが必要)
  • 便失禁があるが、常時おむつの装着は必要ない
  • 慢性肝炎
  • 膵臓に外分泌・内分泌のいずれかの機能障害がある
  • 腹壁瘢痕ヘルニア・腹壁ヘルニア・鼠経ヘルニア・内ヘルニアがあり、重い作業を行ったときに脱出・膨隆する

泌尿器

泌尿器の状態として、以下のような検査結果となったときには後遺障害11級10号に認定される見込みです。

泌尿器の状態

  • じん臓を失い、GFR値が70超~90
  • じん臓を失っていないが、GFR値が50超~70
  • 外尿道口形成術を行った
  • 尿道カテーテルを留置した
  • 排尿障害があり、残尿が50ミリリットル以上100ミリリットル未満
  • 尿道狭窄による排尿障害があり、糸状ブジーを必要とする
  • 切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁のため、常にパッドなどの装着は必要ないが、下着が少し濡れる
  • 支配神経の損傷により、多飲などの原因がない日中8回以上の頻尿がある

交通事故による内臓機能障害の後遺障害認定については『交通事故での内臓損傷・内臓破裂の後遺障害等級と認定ポイント、慰謝料相場を解説』の記事で網羅的に解説しています。こちらの記事もご確認ください。

交通事故の後遺障害11級の慰謝料計算

交通事故で後遺障害が認定された場合、「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」を請求できるようになります。

交通事故示談金の内訳

後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は、計算基準によっても金額が変わります。

ここでは、後遺障害11級の慰謝料について、弁護士基準、任意保険基準、自賠責基準といった3つの計算基準による金額の違いを解説します。

後遺障害11級の慰謝料は420万円

後遺障害11級の慰謝料相場は、弁護士基準で420万円です。

弁護士基準とは、別名「裁判基準」と呼ばれ、実際の「裁判」でも認められる慰謝料の計算基準です。法的な正当性が高く、弁護士基準で計算すると最も高額になります。

ただし、加害者側の任意保険会社は、はじめから弁護士基準で慰謝料を提示してくれることはまずありません。

示談交渉では「自賠責基準」や「任意保険基準」という別の計算基準を用いて、低額の慰謝料を提示してきます。

慰謝料金額相場の3基準比較

同じ後遺障害11級でも自賠責基準の慰謝料は136万円

自賠責基準とは、自賠責保険金の支払いの際に用いる計算基準です。

自賠責基準は、法令で定められた最低水準の金額となります。

後遺障害11級の後遺障害慰謝料は、自賠責基準で計算すると136万円です。

後遺障害11級の後遺障害慰謝料

自賠責基準弁護士基準
11級136万円
(135万円)
420万円

任意保険基準による後遺障害11級の慰謝料

任意保険基準は任意保険会社独自の計算基準です。

各社で異なり非公開ですが、後遺障害11級の慰謝料を任意保険基準で計算した場合、自賠責基準と同水準か、やや上回る程度となることが多いです。

たとえ加害者側が自賠責基準や任意保険基準の金額を提示してきても、弁護士が示談交渉すれば、弁護士基準まで増額できる可能性があります。

弁護士に依頼すると他の示談金の費目も高額になりやすいため、弁護士費用がかかったとしても、弁護士に依頼した方が多くの金額が手元に入ることが多いです。

また、弁護士費用の負担は任意保険の「弁護士費用特約」で軽減できます。

まずは無料相談で弁護士に増額幅の見積もりをとってみましょう。

後遺障害11級の入通院慰謝料の計算方法

交通事故で後遺障害11級が認定された場合、後遺障害慰謝料のほかに、入通院慰謝料の請求も通常可能です。

入通院慰謝料とは、交通事故によるケガで入通院を余儀なくされた場合に請求できる慰謝料です。

弁護士基準で入通院慰謝料を計算した場合

後遺障害11級に該当するようなケガでは、多くの場合「重傷」と評価されるでしょう。

重傷の場合、弁護士基準では、以下のような重傷用の算定表を用いて入通院慰謝料を計算します。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

目盛りの単位は月単位で、タテ軸が通院期間、ヨコ軸が入院期間を表します。

たとえば、交通事故に遭ってから、重傷で1ヶ月入院し、その後、12ヶ月通院したような場合は、ヨコ軸「1月」とタテ軸「5月」の交差する部分が入通院慰謝料の相場(この場合は183万円)となります。

自賠責基準・任意保険基準で入通院慰謝料を計算した場合

自賠責基準では、1日あたり4,300円として、「入通院期間」または「入通院日数×2倍」のいずれか少ない方を乗じて計算します。

自賠責基準による慰謝料計算

  • 4,300円×入通院期間
    または
  • 4,300円×入通院日数×2倍

※いずれか少ない方の金額となる
※治療関係費や休業損害等と合わせて傷害の補償上限は120万円

任意保険基準は非公開なので実際の計算方法は明らかではありませんが、自賠責基準による計算結果とほぼ同程度の慰謝料を提示されることが多いでしょう。

交通事故の後遺障害11級の逸失利益の計算

交通事故で後遺障害11級が認定された場合、将来の減収分である「逸失利益」の賠償請求も可能です。

ここでは、後遺障害11級の逸失利益の計算方法を解説します。

年収×労働能力喪失率20%×ライプニッツ係数

逸失利益とは

後遺障害逸失利益とは、後遺障害の影響で減ってしまう将来の収入を補償するものです。

後遺障害逸失利益は、事故時の年齢や年収、後遺障害によりどの程度労働能力が低下するかなどの要素をもとに、計算して金額が決まります。

後遺障害逸失利益の計算式は、「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」となります。

後遺障害逸失利益の計算方法

例えば被害者が37歳で症状固定となり、事故前の収入が500万円、労働能力喪失率20%の場合、逸失利益の計算は以下のようになります。

逸失利益の計算例

500万円×労働能力喪失率20%(0.2)×ライプニッツ係数19.60(労働能力喪失期間30年)
=1,960万円

後遺障害逸失利益の計算方法について、詳しく知りたい方は『交通事故の逸失利益は?計算式や早見表・計算機で解説【職業別の計算も】』の記事をご覧ください。ここでは、後遺障害逸失利益の計算方法について、簡単に説明します。

1年あたりの基礎収入

原則として、事故前年度の1年あたりの実収入が加味されます。

学生や家事従事者などは、賃金センサスで計算することもあります。

労働能力喪失率(後遺障害11級は20%が目安)

労働能力喪失率は、後遺障害によって労働能力がどの程度低下したかを示す割合です。

後遺障害等級ごとに目安が決められており、後遺障害11級の労働能力喪失率は20%です。

ただし、この労働能力喪失率はあくまでも目安です。

被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して、実際にどの程度仕事に影響が出ているかによって増減することも多々あります。

労働能力喪失期間・ライプニッツ係数

労働能力喪失期間

労働能力喪失期間は、後遺障害による労働能力低下の影響を受ける期間のことです。

原則として「症状固定~67歳」の年数だと考えてください。

労働能力喪失期間

  • 就労者の場合
    • 67歳までの年数
      ※計算上、平均余命の1/2の年数となることもある
  • 未就労者の場合
    • 原則18歳から67歳までの年数
    • 大学卒業後に就労予定の場合は、大学卒業時から67歳までの年数

ライプニッツ係数

ライプニッツ係数とは、逸失利益として受け取った金額を預金・運用する中で生じる利益をあらかじめ差し引くための数値です。労働能力喪失期間に応じて決まっています。

労働能力喪失期間ごとのライプニッツ係数

労働能力喪失期間ライプニッツ係数
1年0.97
5年4.58
10年8.53
20年14.88
30年19.60

後遺障害11級・77歳(平均余命の1/2で計算)で逸失利益が認められた裁判例

こちらの裁判例のポイントは、67歳を超える高齢者であっても、就労実績があれば逸失利益が認められるという点です。

女性には「赤信号無視」という重大な過失があったにもかかわらず、裁判所は労働能力と将来の収入機会を評価し、約84万円の逸失利益を認定しました。

77歳女性に後遺障害11級の逸失利益84万円が認定された裁判例

大阪地判平27・4・16(平成26年(ワ)第3004号)

シルバー人材センターで清掃作業に従事する77歳の女性が、夕方5時30分頃に赤信号を無視して横断歩道を横断中、青信号を直進してきた普通乗用車と衝突。女性は左脛骨骨幹部骨折、頚椎骨折など重篤な多発骨折を負い、後遺障害等級併合11級の認定を受けた。


裁判所の判断

「…併合一一級と判断するのが相当である」

大阪地判平27・4・16(平成26年(ワ)第3004号)
  • 過失割合は加害者3割、被害者7割
  • 77歳でも就労していれば、後遺障害逸失利益は認められる
  • 労働能力喪失率の相場:20%
  • 労働能力喪失期間:6年
逸失利益

84万1,671円

通常、ライプニッツ係数は症状固定時から67歳までの年数に対するものを用いますが、この事案では、被害者が67歳を超えていたため、労働能力喪失期間を平均余命の1/2として逸失利益を計算しています。

高齢者の逸失利益については『高齢者や定年退職者の逸失利益は何歳までもらえる?計算方法も解説』の記事もご覧ください。

後遺障害11級でも逸失利益がもらえないケース

交通事故による後遺症で後遺障害11級の認定を受けても、必ずしも逸失利益がもらえるとは限りません。以下の場合は逸失利益が認められなかったり、減額されたりする可能性があります。

後遺障害が残った後も減収が生じていない場合

逸失利益は後遺障害による減収を補償するものであるため、実際に減収が生じていなければ請求できないことがあります。

ただし、本来なら減収が生じているはずのところ、周囲の理解や協力・本人の努力によって減収せずに済んでいるだけであれば、逸失利益を請求できる可能性があります。

後遺障害が残っても仕事への影響が小さい場合

後遺障害が残っても、仕事への影響が小さいと逸失利益がもらえなかったり、低額になったりすることがあります。

たとえば、後遺障害11級7号の脊柱変形はデスクワークなど身体的負担の少ない職業では影響が小さいと判断されることがあります。この場合、労働能力喪失率は20%以下とされ、逸失利益が低額になる可能性があります。

後遺障害に見合った逸失利益を請求するには、診断書や検査結果などを根拠に、後遺障害の程度や仕事への影響を具体的に主張することが重要です。

逸失利益は高額になりやすい分、示談交渉で争いになる傾向があります。お困りの場合は弁護士への相談をご検討ください。

後遺障害11級の交通事故示談金の内訳・総額の目安

交通事故で後遺障害11級に認定された場合、後遺障害慰謝料や逸失利益以外にも請求できる費目があります。そのため、後遺障害11級の示談金の総額は1,000万円を超えることも十分にあり得ます。

後遺障害11級認定を受けたときの示談金の費目の代表例を以下に示します。

交通事故の示談金内訳(後遺障害認定を受けた場合)

費目概要
治療関係費治療費、入院費、手術費、付添看護費など
入通院慰謝料ケガを負った精神的苦痛の補償
休業損害休業や家事ができないことへの補償
後遺障害慰謝料後遺障害による精神的苦痛の補償
逸失利益後遺障害による将来的な収入減の補償
修理関係費用修理費用、評価損など

上記のとおり、示談金は複数の費目の合計です。後遺障害慰謝料420万円に逸失利益が数百万〜数千万円加算され、さらに入通院慰謝料や休業損害なども含まれるため、総額は高額になるのが一般的です。

交通事故の示談金の費目や内訳については、『交通事故の示談金相場は?一覧表や増額のコツ・示談交渉の注意点を弁護士解説』で詳しく紹介しています。

交通事故で後遺障害11級が認定されるまでの流れ

ここでは、交通事故による後遺症が、後遺障害11級に認定されるまでの流れを解説します。

(1)医師から症状固定の診断を受ける

(2)後遺障害診断書の作成を依頼する

(3)後遺障害の申請をする

各フェーズに分けて解説します。

(1)医師から症状固定の診断を受ける

後遺障害認定の申請をするのは、医師から「症状固定」と診断されたあとです。

症状固定とは、「これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと判断された状態」のことを言います。症状固定と診断されたことは、すなわち交通事故による後遺症が残ったということです。

症状固定のタイミング

なお、後遺障害認定を受けるためには、治療開始から症状固定までおおよそ6か月経過していることが必要になります。

ただし、指の欠損といった後遺障害の残存が客観的に明らかな症状は6か月経過していなくても後遺障害認定を受けられる可能性があります。

(2)後遺障害診断書の作成を依頼する

症状固定の診断を受けたら、医師に「後遺障害診断書」の作成を依頼しましょう。

後遺障害診断書とは、症状固定日、他覚症状、検査結果といった内容が記載されている書類です。後遺障害認定の際には提出しなければなりません。

様式は相手方の自賠責保険会社から取り寄せるか、インターネット上でダウンロードできます。

(3)後遺障害の申請をする|申請方法は2通り

後遺障害診断書の準備ができたら、後遺障害の申請方法についても検討しましょう。

後遺障害認定の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」の2つがあり、被害者が手間をかけずに済む、後遺障害認定されやすい工夫ができるなど、それぞれに特徴があります。

事前認定と被害者請求の特徴について、手続きの手間、書類提出時の工夫、被害者の準備書類について比較してみましょう。

事前認定と被害者請求のメリット・デメリット

事前認定被害者請求
準備・手間かからないかかる
提出の工夫しづらいしやすい
準備書類後遺障害診断書のみすべて

事前認定と被害者請求のどちらで申請するのが最適かは、症状によって異なります。ご自身の場合はどちらを選べばよいか迷ったら、無料相談で弁護士からアドバイスを受けるようにしましょう。

交通事故で後遺障害11級を認定してもらうためのポイント

ここでは、交通事故の後遺症で後遺障害11級を認定してもらうためのポイントを2点解説します。

(1)事故と後遺症との因果関係を証明する

後遺障害11級の認定を受けるためには、事故と後遺障害との因果関係を証明するようにしましょう。

後遺障害11級の症状の中には、交通事故以外の要因で発生しうるものもあります。

たとえば腰椎圧迫骨折は後遺障害11級7号に認定されうるものですが、骨粗鬆症などにより、日常生活の中でも発生することがあるのです。

交通事故にあったら速やかに病院で受診し、定期的な治療や検査を受け、「この症状は交通事故で生じたものだ」と証明できるようにしておきましょう。

(2)後遺障害診断書の質にこだわる

後遺障害診断書は、後遺障害認定の審査でとくに重要な書類です。後遺障害診断書に不適切な記載があったため、本来なら認定されるはずの等級に認定されないこともあります

後遺障害診断書の記載に問題がないかは、後遺障害認定を取り扱っている弁護士に確認を受けることをおすすめします。
「医師に任せていたら大丈夫だろう」と思われる方もいらっしゃいますが、医師は医療の専門家であり、後遺障害認定の専門家ではありません。

後遺障害診断書の記載例は、『後遺障害診断書の書き方や書式のもらい方は?自覚症状の伝え方や認定のポイント』の記事で紹介しています。様式もダウンロードできるため、ぜひお役立てください。

後遺障害11級で障害者手帳や労災保険金は受け取れる?

障害者手帳の取得は基本的に困難

後遺障害11級に該当する症状で障害者手帳を取得することは、基本的に難しいでしょう。後遺障害11級の症状では、障害者手帳の交付条件である「身体障害者障害程度等級6級以上」を満たさないからです。

ただし、他に条件を満たす後遺障害が残っていれば、障害者手帳の交付を受けられる可能性はあります。

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後遺障害等級1~14級の認定で「障害者手帳」ももらえる?交付の基準と申請方法

労災保険の保険金は条件を満たせば受け取れる

労災保険からの保険金は、条件を満たしていれば受け取ることができます。後遺障害に関する保険金を挙げると、以下のとおりです。

  • 障害補償一時金=給付基礎日額×223日分
  • 障害特別一時金=算定基礎日額×223日分
  • 障害特別支給金=29万円

ただし、同じ損害についての補償を労災と任意保険の両方から二重に受け取ることはできません。また、労災保険から慰謝料は一切支払われないため、適正な慰謝料の獲得には弁護士への相談も検討しましょう。

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労災保険と自賠責保険の優先順位は?慰謝料請求は自賠責・任意保険へ

後遺障害11級の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

交通事故に遭い、後遺障害11級の慰謝料請求をする際、弁護士に依頼するメリットは以下の3点です。

後遺障害11級を弁護士に依頼するメリット

  • 後遺障害11級認定に向けたサポートがある
  • 弁護士が保険会社とやりとりしてくれる
  • 慰謝料を弁護士基準で計算して増額

後遺障害11級認定に向けたサポートがある

交通事故を弁護士に依頼すると、後遺障害11級認定に向けたサポートを受けられます。

後遺障害等級11級の認定を受けるためには、ご自身の症状が11級各号の症状に該当することを、後遺障害診断書の記載内容やそのほかの書類により証明する必要があります。

弁護士は認定に必要な書類の作成・収集をサポートするため、申請手続きをより適切に進めることができます。

アトムの解決事例(後遺障害11級認定獲得)

以下は、過去にアトム法律事務所が扱った事例です。弁護士の介入により、後遺障害11級が認定された事案です。弁護士基準で慰謝料計算し、妥当な示談金を回収しました。

弁護士が保険会社とやりとりしてくれる

交通事故を弁護士に依頼すると、保険会社とのやりとりを全て任せることができます。

後遺障害11級に該当するような後遺症が残っている状況では、長期の治療やリハビリが必要になることも珍しくありません。弁護士に窓口になってもらうことで、治療に専念することができます。

弁護士が保険会社とやりとりしてくれる

慰謝料を弁護士基準で計算して増額

交通事故を弁護士に依頼すると、慰謝料等を弁護士基準で計算して請求・交渉してくれるので、増額する可能性が高いです。

後遺障害11級に認定されたら、相手方の任意保険会社と慰謝料・示談金の金額などを決める「示談交渉」を行うことになります。

相手方の任意保険会社は、本来被害者が受け取れる慰謝料・示談金より大幅に低い金額を提示してくることが多いです。弁護士が示談交渉に介入することで、弁護士基準(裁判基準)に基づいた適正な金額での示談が期待できます。

増額交渉(弁護士あり)

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後遺障害11級のまとめ

後遺障害11級の症状は、両眼の調節機能障害、歯の著しい欠損(10歯以上)、聴力障害、脊柱の変形障害、手足の指の障害、内臓の機能障害など、計10区分で認定されます。

しかし、保険会社の提示額は弁護士基準による計算と比べると、非常に低いです。

後遺障害11級の慰謝料相場は、弁護士基準で420万円です。

適正な慰謝料・示談金を受け取るためには、提示額をそのまま受け入れず、後遺障害11級に該当する可能性がある段階・認定された段階で弁護士に相談することが重要です。

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どの弁護士に相談すべきか迷ったら、アトム法律事務所もご検討ください。

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もっとも、実際には加害者側の保険会社から、弁護士基準を大きく下回る金額を提示されるケースが少なくありません。交通事故に強い弁護士に相談して、まずは今後の方針を立てましょう。

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交通事故の弁護士費用特約を利用して依頼も可能

弁護士費用については、弁護士費用特約を利用することで金銭的な負担を和らげることができます。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約とは、弁護士に相談・依頼する際の費用について、保険会社が代わりに負担してくれる特約です。

負担の上限は契約内容ごとに異なりますが、相談料10万円、依頼による費用300万円としていることが多く、実際の相談料や費用がこの上限を上回ることは少ないでしょう。

そのため、弁護士費用特約を利用すると、依頼者が金銭的な負担なく依頼することができるのです。

弁護士費用特約とは

関連記事:交通事故の弁護士特約とは?使い方・使ってみた感想やデメリットはあるかを解説

仮に、弁護士費用特約が利用できない場合であっても、アトム法律事務所では、依頼の際に生じる着手金を原則無料としているので、加害者側から賠償金を得た後に費用の支払いとすることができます。

そのため、依頼の時点で金銭的に余裕がない方でも、依頼可能です。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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