後遺障害9級の症状と認定基準|9級の慰謝料相場と逸失利益はいくら?
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交通事故で後遺障害9級に認定される症状は、両目の視力が0.6以下になった、片耳の聴力を失った、鼻を欠損したなどがあり、計17の区分にわけられます。
後遺障害9級への認定を目指すなら、各症状ごとの認定基準を知ることが欠かせません。同時に、後遺障害慰謝料や逸失利益などの補償も十分に理解しておくべきでしょう。
なぜなら、相手方の保険会社が提示してくる金額が本来の相場より大幅に低いことが多いからです。適切な相場を知らないと、せっかく後遺障害9級に認定されても、十分な補償を受けられません。
本記事では、後遺障害9級の具体的な認定基準や、認定を受けたら請求できる後遺障害慰謝料の相場を解説します。
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後遺障害9級の認定基準
後遺障害の認定基準は、「交通事故損害賠償法施行令」で決められています。
後遺障害9級の認定基準を抜粋して見てみましょう。
9級1号 | 両眼の視力が〇・六以下になつたもの |
9級2号 | 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの |
9級3号 | 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
9級4号 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
9級5号 | 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの |
9級6号 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの |
9級7号 | 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの |
9級8号 | 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの |
9級9号 | 一耳の聴力を全く失つたもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
9級11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
9級12号 | 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの |
9級13号 | 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの |
9級14号 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの |
9級15号 | 一足の足指の全部の用を廃したもの |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
9級17号 | 生殖器に著しい障害を残すもの |
上記のように、後遺障害9級の認定基準には17の区分があります。それぞれの区分について、どのような症状であれば認定されうるのか、詳しく解説していきます。
後遺障害9級1号
後遺障害9級1号の症状は、「両眼の視力が〇・六以下になつたもの」です。
後遺障害認定においては、視力とは基本的に眼鏡やコンタクトなどを使った矯正視力を指します。
つまり、眼鏡やコンタクトを使っても両目の視力が0.6以下になった場合、後遺障害9級1号に認定されるのです。
後遺障害9級2号
後遺障害9級2号の症状は、「一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの」です。
眼鏡やコンタクトを使っても片目の視力が0.06以下になった場合、後遺障害9級2号に認定されるでしょう。
後遺障害9級3号
後遺障害9級3号の症状は、「両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの」です。
後遺障害9級3号のような視野障害については、基本的にゴールドマン型視野計で視野角度を測定し、症状の程度が見極められます。8方向の視野角度の合計が、正常な視野角度の合計値の60%以下(336度以下)になると、視野障害と認められます。
なお、後遺障害認定における半盲症、視野狭窄、視野変状とは、以下の状態のことです。
- 半盲症
- 視野の右半分または左半分が欠けてしまうこと
- 視野狭窄
- 視野が狭くなること。視野の縁が全体的に狭くなる症状と、視野の一部がランダムに狭くなる症状がある。
- 視野変状
- 半盲症や視野狭窄以外で視野が欠けてしまうこと。視野の暗転や欠損など。
半盲症、視野狭窄、視野変状のいずれかの症状により、両目の視野が通常の60%以下になると、後遺障害9級3号に認められることになります。
交通事故の目の後遺症について網羅的に解説した記事『交通事故による目の後遺障害|失明・視力低下・複視の認定基準を弁護士が解説』もあわせてお役立てください。認定を受けるためのポイントもわかります。
後遺障害9級4号
後遺障害9級4号の症状は、「両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの」です。
両目がまぶたを閉じたときに角膜が完全に覆われない状態になると、後遺障害9級4号に認定されるでしょう。
後遺障害9級5号
後遺障害9級5号の症状は、「鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの」です。
「鼻の欠損」および「鼻の機能に著しい障害を残す」の定義は以下のとおりです。
- 鼻の欠損
- 鼻の軟骨部がすべて失われた
- 鼻の軟骨部の大部分が失われた
- 鼻の機能に著しい障害を残す
- 鼻呼吸が困難である
- 嗅覚が失われた
鼻の軟骨がほぼ失われ、鼻呼吸が困難であったり嗅覚がなくなったりした場合、後遺障害9級5号に認定されることになります。
なお、鼻の欠損は顔の傷跡(外貌醜状)の後遺障害認定基準に当てはまることがあります。この場合、鼻の欠損と外貌醜状のいずれか上位の等級が認められることになるでしょう。
後遺障害9級6号
後遺障害9級6号の症状は、「咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの」です。
「咀嚼機能に障害を残す」「言語機能に障害を残す」の定義は、以下のとおりです。
- 咀嚼機能に障害を残す
- 固形の食べ物のうち、たくあん、らっきょう、ピーナッツなど一定の固さのものは咀嚼がまったくできないか、十分にできない
- 言語機能に障害を残す
- 以下の4種の子音のうち、1種以上の発音ができない
- 口唇音(ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ)
- 歯舌音(な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ)
- 口蓋音(か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
- 喉頭音(は行)
- 以下の4種の子音のうち、1種以上の発音ができない
かみ合わせや顎関節などの障害で固めの食べ物を十分にかめない、一部の音が発音できないという2つの障害が残ったとき、後遺障害9級6号に認定されることになります。
どちらか一方の障害が残った場合は、後遺障害10級に認定されるでしょう。
後遺障害9級7号
後遺障害9級7号の症状は、「両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの」です。
具体的には、両耳が以下の状態になっていることを言います。
- 両耳の平均純音聴力レベルが60デシベル以上
- 両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上かつ最高明瞭度が70%以下
上記のような状態では、両耳の聴力が1メートル以上の距離で普通の話し声を理解できないと判断され、後遺障害9級7号に認定されます。
後遺障害9級8号
後遺障害9級8号の症状は、「一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの」です。
具体的には、以下のような状態が当てはまります。
- 耳に接しなければ大声を解することができない程度
- 平均純音聴力レベルが80デシベル以上
- 一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度
- 平均純音聴力レベルが50デシベル以上
上記のような状態だと、片耳の聴力は耳の知覚でないと大声を理解できない、もう片耳の聴力は1メートル以上の距離で普通の話し声を理解するのが難しいと判断され、後遺障害9級8号に認定されるでしょう。
後遺障害9級9号
後遺障害9級9号の症状は、「一耳の聴力を全く失つたもの」です。
「一耳の聴力を全く失った」とは、片耳の平均純音聴力レベルが90デシベル以上の状態を指します。
片方の耳の聴力が著しく低下し、ほとんど聞こえないような状態になったら、後遺障害9級9号に認定されることになります。
交通事故の耳の後遺症について網羅的に解説した記事『交通事故による聴覚障害の後遺障害。難聴(聴力低下等)や耳鳴りの等級は?』もあわせてお役立てください。認定を受けるためのポイントも解説しています。
後遺障害9級10号
後遺障害9級10号の症状は、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」です。
脳や神経に障害が残り、働くことはできるものの内容にかなりの制限がかかる場合、後遺障害9級10号に認定されることになるでしょう。
後遺障害9級10号に認定されうる症状は、高次脳機能障害と、脳挫傷・脊髄損傷などによる身体性機能障害の2種類があります。それぞれの認定基準を見ていきましょう。
高次脳機能障害の場合
高次脳機能障害が残った場合、次の4つの能力のうちいずれか1つが相当程度失われれば、後遺障害9級10号に認定されます。
- 意思疎通能力
例:職場で他の人と意思疎通するのが難しく、意味を理解するためたまに繰り返してもらう必要がある - 問題解決能力
例:作業手順の理解が困難なときがり、たまに助言が必要になる - 作業負荷に対する持続力・持久力
例:予定外の休憩や注意を喚起するための監督がたまに必要になり、監督なしでは約8時間働けない - 社会行動能力
例:障害が原因の不適切な行動がみられる
交通事故による高次脳機能障害については、その症状の程度に応じてさらに重い後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。関連記事『事故後の記憶障害・性格が変わる・言語障害…高次脳機能障害の症状とは?』では高次脳機能障害の症状ごとに認定されうる後遺障害等級や慰謝料の相場も解説しています。ご自身や家族の症状は後遺障害等級何級に近いのか、後遺障害等級認定を目指すうえでの参考にしてください。
脳挫傷・脊髄損傷による身体性機能障害の場合
脳挫傷や脊髄損傷による身体性機能障害で腕や足に麻痺が残った場合、以下の状態にあれば後遺障害9級10号に認定されるでしょう。
- 片側の腕または足に軽度の麻痺が認められる
(障害のある腕や足の運動性・支持性が多少失われ、基本動作の精密さや速度が相当程度失われている)- 障害のある片方の腕では文字を書くことが難しい
- 独りで歩けるが、障害のある片足のため不安定で転倒しやすく、速度も遅い
交通事故で脳挫傷や脊髄損傷を負い、何らかの症状が残った場合は、以下の関連記事もお役立てください。
後遺障害9級11号
後遺障害9級11号の症状は、「胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」です。
内臓に障害が残り、働くことはできるものの内容にかなりの制限がかかる場合、後遺障害9級11号に認定されることになります。
9級11号に認定されうる症状には、呼吸器の障害、循環器の障害、消化器の障害、泌尿器の障害など多岐にわたります。器官系ごとに認定されうる症状を確認していきましょう。
- 呼吸器
- 動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下で、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr~43Torr)
- 循環器
- 心機能が低下し、平地を急いで歩くなどおおむね6METsを超える強度の身体活動が制限される
- ペースメーカーが植え込まれている
- 心臓の弁を置換し、継続的に抗凝血薬療法を行う必要がある
- 消化器など
- 食道狭窄による通過障害がある
- 胃に消化吸収障害およびダンピング症候群がある
- 小腸を大量に切除し、回腸と空腸の長さが100センチメートル以下
- 小腸皮膚瘻が残り、瘻孔から1日あたり100ミリリットル以上が漏出する
- 便秘があり、用手摘便が必要
- 便失禁があり、常時おむつの装着が必要
- 肝硬変
- 膵臓に外分泌・内分泌の両方の機能障害がある
- 腹壁瘢痕ヘルニア・腹壁ヘルニア・鼠経ヘルニア・内ヘルニアがあり、常時ヘルニア内容が脱出や膨隆などの状態にある
- 泌尿器
- じん臓を失い、GFR値が50超~70
- じん臓を失っていないが、GFR値が30超~50
- 尿禁制型尿路変更術を行った
- 排尿障害があり、残尿が100ミリリットル以上
- 蓄尿障害があり、切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁のため常にパッドを装着しなければならないが、パッドの交換までは不要
交通事故で内臓の機能障害を負ったときの後遺障害認定基準については『交通事故で内臓損傷・内臓破裂|後遺障害等級の認定基準や慰謝料の相場を解説』で詳しく解説しています。上記の基準に当てはまらない方はこちらの記事もご参考ください。
後遺障害9級12号
後遺障害9級12号の症状は、「一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの」です。
手指を失うとは、以下の状態を指します。
- 手指を中手骨または基節骨で切り離した
- 近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)において基節骨と中手骨を切り離した
手指の骨や関節については、以下の図をご確認ください。
片手の親指を根元から失うか、片手の親指以外の2本の指を根元から失った場合、後遺障害9級12号に認定されます。
後遺障害9級13号
後遺障害9級13号の症状は、「一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの」です。
手指の用を廃するとは、以下の状態のことです。
- 末節骨が半分以下の長さになった
- 中手指節関節または近位指節間関節が、通常の半分の動きに制限されている
- おや指を橈側または掌側に曲げたとき、通常の半分の動きに制限されている
- 指先の腹部分・外側部分の皮膚の表面や内部の感覚が完全にない
再掲になりますが、手指の骨や関節がどこの部分のことを指しているかは以下の図を参考にしてください。
麻痺などにより、片手の親指を含む2本の指が動かなくなるか、片手の親指以外の3本の指が動かなくなった場合、後遺障害9級13号に認定されます。
手指の可動域制限といった後遺障害が残ったなら『手指の後遺障害|指切断・欠損、可動域制限の認定基準。マレット指で曲がらない』の記事もお役立てください。後遺障害認定を受けるためのヒントも解説しています。
後遺障害9級14号
後遺障害9級14号の症状は、「一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの」です。
「足指を失ったもの」とは、中足指節関節から先を失った状態、つまり足指の根元から先を失った状態のことを言います。
片足の親指を含む2本以上の足指について、付け根から先を失った場合、後遺障害9級14号に認定されるのです。
後遺障害9級15号
後遺障害9級15号の症状は、「一足の足指の全部の用を廃したもの」です。
「足指全部の用を廃する」とは、以下の状態のことです。
- 親指の末端骨が半分以上失われた
- 親指以外の足指が中節骨もしくは基節骨で切り離されたか、遠位指節間関節または近位指節間関節で切り離された
- 中足指節間関節か近位指節間関節の可動域が通常の半分以下に制限される
(親指については、指節間関節の可動域が通常の半分以下に制限される)
片足のすべての足指が途中で切り離されたか麻痺などで動かなくなった場合、後遺障害9級15号に認定されることになります。
足指を切断した、足指が曲がらないといった状況の方は『交通事故で足指を切断した・曲がらなくなった|後遺障害等級の認定基準は?』の記事もあわせてご参考ください。
後遺障害9級16号
後遺障害9級16号の症状は、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」です。
顔や体の露出するような箇所に5センチメートル以上の線状の傷が残った場合、後遺障害9級16号に認められるでしょう。
なお、眉毛や髪の毛で隠れる部分については、人目につくとは言えないため、基本的には醜状として取り扱われません。
外貌醜状の後遺障害認定については『交通事故による顔の傷跡(外貌醜状)の後遺障害認定|顔面骨折・神経麻痺も解説』の記事でさらに詳しく解説しています。外貌醜状は後遺障害認定の対策が必要な症状のため、ぜひあわせてご一読ください。
後遺障害9級17号
後遺障害9級17号の症状は、「生殖器に著しい障害を残すもの」です。
「生殖器に著しい障害を残す」とは、以下のいずれかの状態にあてはまっていることを言います。
- 陰茎の大部分を欠損する(陰茎を膣に挿入できないと認められるものに限る)
- 以下のような勃起障害が残る
- 夜間睡眠時に十分な勃起がないことが検査で認められる
- 支配神経の損傷など勃起障害の原因となりうる所見が検査で認められる
- 以下のような射精障害が残る
- 尿道または射精管が断裂している
- 両側の下腹神経が断裂し、機能が失われている
- 膀胱頸部の機能が失われている
- 膣口狭窄を起こしている(陰茎を膣に挿入できないと認められるものに限る)
- 以下のいずれかが画像所見で認められる
- 両側の卵管が閉塞するか癒着を残す
- 頸管に閉塞を残す
- 子宮を失う
生殖機能は残っているものの、通常の性行為ができないような状態になれば、後遺障害9級17号に認定されるでしょう。
後遺障害9級認定までの流れ
次に、後遺障害9級に認定されるまでの申請手続きの流れを確認していきましょう。
(1)医師に「症状固定」と診断される
まずは、後遺障害9級の申請をはじめるタイミングについてです。後遺障害認定の申請は、医師による症状固定の診断を受けてからはじめることになります。
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が期待できない状態のことです。症状固定と診断されたことは、すなわち後遺症が残ったことを意味します。
症状固定と診断されるまでの期間は、症状によります。
指の欠損といった症状では、比較的早く症状固定と診断されるでしょう。それ以外の症状では、基本的に治療期間が6か月以上ないと後遺障害に認定されない傾向にあります。また、高次脳機能障害では症状固定までに長い年月を要することが多いです。
(2)医師に「後遺障害診断書」を作成してもらう
症状固定の診断を受けたら、後遺障害認定の申請準備に入ります。まずは、申請に必要な「後遺障害診断書」の作成を医師に依頼しましょう。
後遺障害診断書とは、症状固定日や他覚症状・検査結果などについて記載する書類です。様式は相手方の自賠責保険会社から取り寄せるか、インターネット上で検索してダウンロードするとよいでしょう。
なお、後遺障害診断書の内容は認定審査において重視されます。
後遺障害認定において不利になるような記載があると、本来よりも低い等級に認定されたり、非該当になったりする可能性があるので注意が必要です。
診断書の内容は医師に任せておけば問題ないだろうと思う方も多いですが、医師は医療の専門家であり、後遺障害に認定の専門家ではありません。内容に問題がないか判断できない場合は、後遺障害認定を扱っている弁護士の確認を受けるとよいでしょう。
後遺障害診断書のもらい方や記載例については、『後遺障害診断書のもらい方と書き方は?自覚症状の伝え方と記載内容は要確認』の記事で紹介しています。
(3)後遺障害の申請を「事前認定」または「被害者請求」で行う
後遺障害認定の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」の2種類があり、どちらか一方を選ぶ必要があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを確認していきましょう。
事前認定は、相手方の任意保険会社を通して申請書類を審査機関に提出する方法です。被害者は後遺障害診断書のみを提出するだけでよく、残りの書類は保険会社が集めてくれます。
被害者申請は、相手方の自賠責保険会社を通して申請書類を審査機関に提出する方法です。事前認定と違い、すべての申請書類を被害者自身で集めなければなりません。
事前認定と被害者申請のメリット・デメリットを比較すると、以下のとおりになります。
- 事前認定
- メリット:被害者自身の手間がかからない
- デメリット:等級認定を受けやすくなるような申請書類の工夫は望めない
- 被害者請求
- メリット:等級認定を受けやすくなるよう申請書類に工夫を施せる
- デメリット:被害者自身の手間がかかる(弁護士に依頼すれば解消可能)
どちらの申請方法を選ぶのが最適かは、症状によって異なります。判断が難しい方は、無料相談を利用して弁護士にアドバイスをもらうことをおすすめします。
後遺障害9級の慰謝料と逸失利益|示談金の費目は?
後遺障害9級に認定されたら、後遺障害慰謝料や逸失利益を新たに加えて、事故の相手方に示談金を請求できるようになります。
後遺障害9級で請求できる後遺障害慰謝料の相場と逸失利益について確認していきましょう。あわせて、事故の相手方に請求できる示談金の主な費目も紹介していきます。
後遺障害9級の後遺障害慰謝料
後遺障害9級の後遺障害慰謝料は、自賠責基準で249万円、弁護士基準で690万円が相場です。
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
※()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用
自賠責基準と弁護士基準では、後遺障害慰謝料の金額が約440万円異なります。
なぜ、このように自賠責基準と弁護士基準で金額が異なるのかを理解するには、「交通事故の慰謝料の3種類の算定基準」を知っておく必要があります。
交通事故の慰謝料には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3種類の算定基準があり、どの基準を用いて計算するかによって金額が変わります。
最も高額になるのは弁護士基準であり、最も低額になるのは自賠責基準です。任意保険基準は各保険会社が独自に定めており非公開ですが、自賠責基準にやや上乗せした程度とされています。
弁護士基準の金額は、過去の判例をもとにしており、交通事故の被害者が本来受け取るべき金額と言えます。もし、相手方の任意保険会社が自賠責基準・任意保険基準で計算した後遺障害慰謝料を提示してきたなら、増額交渉を行う必要があるでしょう。
被害者自身で交渉しても増額を認めてもらえない場合は、弁護士への依頼をご検討ください。弁護士が示談交渉を行えば、弁護士基準の金額まで増額できる可能性が高くなります。
後遺障害9級の逸失利益
後遺障害9級が認定されると、後遺障害慰謝料とあわせて逸失利益も請求できるようになります。
逸失利益とは、後遺障害が残らなければ本来の労働能力で得られたはずの収入を補償するものです。
以下の計算式から逸失利益の金額を求めることができます。
逸失利益の計算式
- 1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
1年あたりの基礎収入は、事故前年の年収を用います。
労働能力喪失率は後遺障害が残ったことでどのくらい労働能力を失ったか示す数値のことです。後遺障害9級は「35%」で計算します。
労働能力喪失期間は後遺障害が残ったことで失った働ける期間のことです。基本的に「症状固定~67歳」の年数が用いられます。
ライプニッツ係数とは逸失利益で生じる利息を控除するための係数です。労働能力喪失期間に応じてあらかじめ決められた数値を用います。
逸失利益のより詳しい計算方法については、関連記事『【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき|もらえない原因と対処法』をご確認ください。
後遺障害9級の示談金費目|慰謝料以外の費目も把握しておこう
交通事故の被害者が相手方に請求できるお金は、慰謝料だけではありません。そもそも、慰謝料は「事故で精神的苦痛を受けたことへの補償」であり、示談金の一部になります。
示談金として請求できる主な費目を以下に紹介します。
概要 | |
---|---|
治療関係費 | 治療費、入院費、手術費、付添看護費、リハビリ費用、将来介護費など |
入通院慰謝料 | 交通事故でケガをした精神的苦痛の補償(関連記事:交通事故の慰謝料は通院1日いくら?) |
休業損害 | 交通事故で仕事を休んだため減った収入の補償(関連記事:交通事故の休業損害) |
後遺障害慰謝料※ | 交通事故で後遺障害を負った精神的苦痛の補償 |
後遺障害逸失利益※ | 交通事故で後遺障害を負ったため減る将来的な収入の補償 |
修理関係費用 | 修理費用、評価損など |
※後遺障害認定を受けたら請求可能な費目
各費目の詳しい計算方法については、表中の関連記事をご参考ください。
入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益については、以下の自動計算機でもおおよその金額を確認できます。後遺障害等級や治療日数を入力するだけで簡単に計算できるので、ぜひお試しください。
後遺障害9級の認定後に弁護士に相談すべき理由
後遺障害9級の認定を受けたら、相手方の任意保険会社との示談交渉を開始することになるでしょう。示談交渉では、合意する前に弁護士に一度相談しておくことをおすすめします。
相手方の任意保険会社は、示談交渉において相場より大幅に低い慰謝料・示談金を提示してくることが多いです。
示談交渉は一度合意すると基本的に撤回ができないため、本来被害者が受け取るべき金額がいくらか知り、適切な補償を受けるべく交渉していくことが必要なのです。
慰謝料・示談金の適切な金額は、交通事故案件を取り扱っている弁護士に確認するとよいでしょう。弁護士なら後遺障害慰謝料や、計算方法をめぐってもめやすい逸失利益、その他の費目についても、詳しく算定することが可能です。
また、被害者自身で慰謝料・示談金の増額を交渉しても認めてもらえないとき、弁護士に依頼して示談交渉を代理してもらえば事態が好転する可能性が高いでしょう。法律の専門家である弁護士の主張であれば、相手方も無下にするわけにはいかないためです。
アトム法律事務所では、交通事故被害者の方に向けた無料法律相談を実施しています。
後遺障害9級の詳しい認定基準、後遺障害診断書の内容、被害者が本来受け取れる慰謝料・示談金の金額、弁護士が介入することによる増額の見込みなど、気になることがあれば気軽にお問い合わせください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了