交通事故による内臓の後遺障害について解説|等級の認定基準や慰謝料相場とは?

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内臓の後遺障害|等級の認定基準・慰謝料相場

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故でケガを負った際、内臓に損傷を負い後遺症が残ってしまうことがあります。

交通事故による内臓の後遺症は、一定の要件を満たした場合に後遺障害の等級認定を受けられます。

後遺障害の認定を受けられれば、後遺障害慰謝料、逸失利益など特別な賠償金を受けとれるようになり、事故被害者の被害回復という点で非常に有利になります。

この記事では内臓の後遺症における後遺障害の認定基準について解説します。ご自身の症状が何級に該当し得るのかについて確認していってください。

内臓の後遺障害等級一覧

臓器の後遺障害の認定基準は、まず介護を必要とするかしないかによって分けられています。

介護を必要とする場合の等級認定基準は下記の通りです。

等級認定の基準
1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
臓器の後遺障害等級認定基準(要介護の場合)

介護を必要としない場合の等級認定基準は下記の通りです。

等級認定の基準
3級4号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級3号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級5号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級13号両側の睾丸を失ったもの
9級11号胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの
9級17号生殖器に著しい障害を残すもの
11級10号胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
13級11号胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
臓器の後遺障害等級認定基準(要介護でない場合)

内臓の後遺障害では、胸腹部臓器について一括してこのような認定基準が定められています。

ただ実務上は、各臓器ごとにどのような症状につき何級に該当するのかがさらに細かく定められています。

次の『【部位別】内臓の後遺障害の等級認定基準』の章で損傷した臓器ごとの認定基準をくわしく解説しているので、ご自身の症状が何級にあたるのか知りたい方はそちらもご覧ください。

【部位別】内臓の後遺障害の等級認定基準

呼吸器の後遺障害等級認定基準

呼吸器の後遺障害等級は、まず原則として動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定結果を元に認定します。

動脈血酸素分圧について「50Torr以下」「50Torrを超え60Torr以下」「60Torrを超え70Torr以下」「70Torrを超過」の4つの区分に分け、さらにそれぞれの区分の中で症状ごとに等級を認定しています。

動脈血酸素分圧が50Torr以下の場合

  • 呼吸機能の低下により常時介護が必要なものは1級4号
  • 呼吸機能の低下により随時介護が必要なものは2級2号
  • 上記2つに当たらないものは3級4号

動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下の場合

  • 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr以上43Torr以下)にないもので、かつ呼吸機能の低下により常時介護が必要なものは1級4号
  • 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもので、かつ呼吸機能の低下により随時介護が必要なものは2級2号
  • 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもので、かつ上記2つに該当しないものは3級4号
  • 上記3つに該当しないものは5級3号

動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下の場合

  • 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないものは7級5号
  • 上記に該当しないものは9級11号

動脈血酸素分圧が70Torrを超える場合

  • 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもの11級9号

動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧以外の計測方法

呼吸器の後遺障害については、原則として動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の計測結果を元に等級が認定されます。

しかし、補助的に「スパイロメトリーの結果と呼吸困難の程度による判定」「運動負荷試験の結果による判定」も用いられることがあります。

動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の計測結果による等級よりも、補助的な計測結果による等級の方がより上位になった場合、後者が採用されることになっています。

交通事故被害者の立場からすれば、補助的な計測を行うことでより適切な賠償金を受けとれるチャンスが増えるわけです。

補助的な計測による認定の基準について詳しく知りたい方は弁護士に相談してください。

循環器の後遺障害等級認定基準

血液の循環器、つまり心臓に関する障害については、「心機能が低下したもの」「除細動器またはペースメーカーを植え込んだもの」「房室弁または大動脈弁を置換したもの」「大動脈に解離を残すもの」の4つの症状につき、それぞれ等級の認定基準が定められています。

心機能が低下したもの

心機能の低下については、運動耐容能がどの程度低下したかによって等級が認定されます。

  • 心機能の低下による運動耐容能の低下が中程度(6METsを超える強度の身体活動が制限されるもの。例としては、平地を急いで歩く、健康な人と同じ程度の速度で階段を上るといった身体活動が制限される程度)の場合には9級11号
  • 心機能の低下による運動耐容能の低下が軽度(8METsを超える強度の身体活動が制限されるもの。例としては、平地を急いで歩く、健康な人と同じ程度の速度で階段を上るといった身体活動は行えるものの、それ以上激しかったり急激だったりする身体活動は制限される程度)の場合には11級10号

除細動器またはペースメーカーを植え込んだもの

  • 除細動器を植え込んだものは7級5号
  • ペースメーカーを植えこんだものは9級11号

房室弁または大動脈弁を置換したもの

  • 房室弁または大動脈弁を置換したもののうち、継続的に抗疑血薬療法を行うものは9級11号
  • 上記以外は11級10号

大動脈に解離を残すもの

  • 偽腔開存型の解離を残すものは11級10号

消化器(食道・胃・腸)の後遺障害等級認定基準

食道

食道の狭窄による通過障害については、「通過障害の自覚があること」「消化管造影検査により、食道の狭窄による造影剤のうっ滞が認められること」の2点を満たすとき、9級11号に認定されます。

胃は、胃の切除により生じる症状の程度によって以下の通り等級が認定されます。

  • 消化吸収障害、ダンピング症候群および胃切除術後逆流性食道炎のいずれもが認められるものは7級5号
  • 消化吸収障害およびダンピング症候群が認められるものは9級11号
  • 消化吸収障害、ダンピング症候群および胃切除術後逆流性食道炎のいずれかが認められるものは11級10号
  • 噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失したもので、上記に該当しないものは13級11号

「消化吸収障害」「ダンピング症候群」「胃切除術後逆流性食道炎」についてもそれぞれ独自の細かい定義が設けられています。

個別具体的な話になってくるので、ご自身の胃の後遺症について後遺障害等級の何級に認定されるか知りたい方は弁護士に相談したほうが良いでしょう。

腸の傷害については、まず人工肛門を増設したものについて、「腸の内容が漏出することによりストマ周辺に著しいびらんを生じ、パウチなどの装着ができないもの」は5級3号、それ以外は7級5号に認定されます。

このほか、切除、皮膚瘻、狭窄、便秘、便失禁などの症状ごとに等級認定の基準が定められています。

個別具体的な話になってくるので、ご自身の腸の後遺症について後遺障害等級の何級に認定されるか知りたい方は弁護士に相談したほうが良いでしょう。

生殖器の後遺障害等級認定基準

生殖器の後遺障害は「生殖機能を完全に喪失したもの」「生殖機能に著しい障害を残すもの」「生殖機能に障害を残すもの」「生殖機能に軽微な障害を残すもの」の4段階でそれぞれ具体的な認定基準が定められています。

生殖機能を完全に喪失したもの

以下に該当するものについてそれぞれ7級13号(もしくはそれを準用する)とされています。

  • 両側の睾丸を失ったもの
  • 常態として精液中に精子が存在しないもの
  • 両側の卵巣を失ったもの
  • 常態として卵子が形成されないもの

生殖機能に著しい障害を残すもの

「生殖機能に著しい障害を残すもの」というのは、具体的には生殖機能そのものは残存しているものの、通常の性交では生殖を行うことができないものとされています。

次に該当するものがそれぞれ9級17号に認定されます。

  • 陰茎の大部分を欠損したもの(陰茎を膣に挿入することができないとみとめられるものに限る)
  • 勃起障害を残すもの(具体的には「リジスキャンによる夜間陰茎勃起検査により夜間睡眠時に十分な勃起が認められないと証明されること」もしくは「あらかじめ定められている神経系検査もしくは血管系検査によって支配神経の損傷など勃起障害の原因となり得る所見が認められること」のいずれかに該当すること)
  • 射精障害を残すもの(具体的には「尿道または射精管が断裂していること」、「両側の下腹神経の断裂による当該神経の機能が失われていること」もしくは「膀胱頚部の機能が失われていること」のいずれかに該当するもの)
  • 膣口狭窄を残すもの(陰茎を膣に挿入することができないとみとめられるものに限る)
  • 両側の卵管に閉塞もしくは癒着を残すもの、頸官に閉塞を残すもの、または子宮を失ったもの(画像所見により認められる物に限る)

生殖機能に障害を残すもの

「生殖機能に障害を残すもの」というのは、通常の性交で生殖を行うことができるものの、生殖機能に一定以上の障害を残すものとされています。

実務上は狭骨盤または比較的狭骨盤について認定基準が定められており、産科的真結合線が10.5cm未満または入口部横径が11.5cm未満のものは11級10号を準用するとされています。

生殖機能に軽微な障害を残すもの

「生殖機能に障害を残すもの」というのは、通常の性交で生殖を行うことができるものの、生殖機能にわずかな障害を残すものとされています。

具体的には次に該当するものについてそれぞれ13級11号を準用するとされています。

  • 一側の睾丸を失ったか、亡失に準ずべき程度の萎縮が起こっているもの
  • 一側の卵巣を失ったもの

その他の臓器の後遺障害等級認定基準

その他、肝臓、胆のう、すい臓、ひ臓、腎臓、尿管や膀胱などについて、上記に書かれた臓器と同じくそれぞれ細かく認定の基準が定められています。

個別具体的な話になってくるので、ご自身の臓器の後遺症について後遺障害等級の何級に認定されるか知りたい方は弁護士に相談したほうが良いでしょう。

後遺障害等級ごとの慰謝料相場とは?

後遺障害等級に認定されると後遺障害慰謝料や逸失利益といった特別な賠償金を獲得することができます。

後遺障害慰謝料は後遺障害が残ったということに対する精神的な苦痛への賠償金であり、等級ごとに相場が定められています。

等級 相場(万円)
1級・要介護2,800
2級・要介護2,370
1級2,800
2級2,370
3級1,990
4級1,670
5級1,400
6級1,180
7級1,000
8級830
9級690
10級550
11級420
12級290
13級180
14級110
後遺障害慰謝料の相場(弁護士基準)

また逸失利益は後遺障害が残ったことによって将来にわたって減額されてしまった給料等への賠償金です。
内臓の障害により仕事を辞めたり配置転換をせざるを得なくなったときの減額が見込まれる給料について、労働能力喪失率が算定され賠償が行われます。

ただ、内臓の障害はわかりやすく目に見えるものではないことが多いため、後遺障害等級の認定にあたってはより詳細かつ客観的な立証が求められます。

この点、弁護士に一度相談しておくと、適切な等級認定を受けるという点で非常に安心できることでしょう。
弁護士は医師にはない交通事故賠償の実務的な側面から、必要となる検査や証拠についてアドバイスすることができます。
「後遺症について立証が足りず適切な等級が受けられなかった」といった事態を防ぐことができるのです。

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