後遺障害等級が認定されたら障害者手帳ももらえる?
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後遺障害等級と障害者手帳は、どちらも交通事故によって生じた障害の程度を表すものです。
後遺障害等級が認定されたからといって必ずしも障害者手帳が交付されるわけではありません。しかし、障害者手帳を持っていると介護サービスや税金の優遇などの支援を受けることができます。
後遺障害等級と障害者手帳の違いや関係性、申請方法などについて解説していきます。
目次
後遺障害等級と障害者手帳の違い
後遺障害等級の等級と認定機関
後遺障害等級とは、交通事故によって生じた障害について、部位や程度ごとに1~14級の14段階で表したものです。
交通事故で後遺症が残った場合、後遺障害を申請すると、審査機関によって後遺障害等級に該当するかどうかが審査されます。
認定された後遺障害等級に応じて、交通事故の損害賠償金を請求できるようになります。
障害者手帳の等級と認定機関
障害者手帳とは、身体障害、知的障害、精神障害のいずれかがある人に対して交付される公的証明書です。
障害者手帳の交付を受けるには、都道府県知事や指定都市の市長などから障害者等級の認定を受ける必要があります。
身体障害者障害程度等級表によって7つに分類された障害者等級のうち、6級以上であれば障害者手帳が発行されるのです。
交通事故で後遺症が残った場合、「身体障害者福祉法」に基づいた身体障害者手帳、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に基づいた精神障害者保健福祉手帳が発行されます。
障害者手帳を持っていると、介護サービスや税金の優遇などの支援を受けることができます。
後遺障害等級と障害者手帳の関係
後遺障害等級は事故の賠償金に影響する
後遺障害等級が高いほど障害の程度は重くなるので、事故の賠償金は高額になる傾向があります。
これは、後遺障害等級が障害の程度を客観的に表すものであり、障害の程度が重いほど、被害者が被った損害も大きいと認められるためです。
後遺障害等級に応じて後遺障害慰謝料や逸失利益などが算定されることになるので、後遺障害等級は事故の賠償金に影響するといえます。
関連記事では、後遺障害等級に応じた慰謝料の相場や逸失利益の計算について解説中です。
障害者手帳があると得られる公的サービス
障害者手帳を持っていると、介護サービスや税金の優遇などの支援を受けることができます。具体的には、次のようなものがあります。
- 介護サービス:介護保険の利用、ヘルパー派遣、デイサービスなどの利用
- 税金の優遇:所得税や住民税などの減免
- 割引サービス:公共料金や公共施設での割引
障害者手帳があると、これらの支援を受けることで、生活をより安心して送ることができるようになります。障害者手帳の交付を受けるためには、一定以上の後遺障害等級に認定されていることが必要といえるのです。
一定以上の後遺障害等級に認定されていることが障害者手帳の交付を受けるためには必要です。つまり「障害者手帳の交付を受けられるほど」の障害であれば、後遺障害に関する賠償金も高額なものといえるでしょう。
障害者手帳は後遺障害が何級でも交付される?
後遺障害等級と障害者手帳の交付を受けるための等級は別物になります。後遺障害が何級に認定されれば必ず障害者手帳が交付されるとは言い切れません。
ただし、後遺障害等級に応じて、身体障害者手帳が交付されやすいかどうかの傾向は一定程度みることができるでしょう。
8級から14級|身体障害者手帳が発行されない可能性が高い
後遺障害8級から後遺障害14級の場合、身体障害者手帳は発行されない可能性が高いです。
身体障害者手帳が発行されない可能性が高い等級
たとえば、交通事故により、なか指、くすり指、小指を欠いた場合には後遺障害8級3号認定を受けられます。しかし身体障害者障害程度等級表によると7級認定となるため、身体障害者手帳の交付対象とはなりません。
3級から7級|身体障害者手帳が発行される可能性がある
後遺障害3級から後遺障害7級は、身体障害者手帳が発行される可能性がある等級といえます。身体障害者手帳の発行基準に当てはまる場合もあるので、一度、ご自身の都道府県知事や指定都市の市長などに問い合わせてみてください。
身体障害者手帳が発行される可能性がある等級
たとえば、交通事故により1つの足をリスフラン関節以上で失った場合は後遺障害7級8号に認定されるものです。身体障害者障害程度等級表によると6級認定されます。6級以上になるので、身体障害者手帳の交付対象といえるでしょう。
1級または2級|身体障害者手帳がほぼ発行される見込み
後遺障害1級や後遺障害2級は、身体障害者手帳がほぼ発行されるであろう等級といえます。もっとも、身体障害者手帳の交付対象となるかどうかは、都道府県知事や指定都市の市長などで決められるため、市区町村の担当部門へ問い合わせてみましょう。
身体障害者手帳がほぼ発行されるであろう等級
介護が必要な別表1の後遺障害1級と2級も含みます。
後遺障害等級と障害者手帳の申請方法
後遺障害等級の申請方法
交通事故の加害者が加入する自賠責保険会社または任意保険会社に必要な書類を提出することで、後遺障害等級を申請できます。申請に必要な書類は、次のとおりです。
- 後遺障害診断書
- 診断書
- 事故の状況を説明する書類
- 交通事故証明書
など
後遺障害等級の審査には約1~2ヶ月かかる場合が多いですが、後遺症の内容によっては審査が長引くこともあるでしょう。
後遺障害等級の申請には、事前認定と被害者請求の2通りがあります。
事前認定について
事前認定では、主治医に作成してもらった「後遺障害診断書」を、相手の任意保険会社に提出します。その他書類は相手の任意保険会社が用意して、損害保険料率算出機構に書類が送られるのです。
損害保険料率算出機構が等級審査をおこない、被害者には相手の任意保険会社を介して結果が通知されます。
相手の任意保険会社は、後遺障害等級の認定を受けやすくするための準備はしてくれません。あくまで等級認定の申請手続きを行ってくれるのだと考えておきましょう。そのため、後遺障害等級の認定を受けられるかが曖昧だったり、後遺障害等級をより上位で認められたいといった場合には事前認定はおすすめしません。
逆に、少しでも手間をかけたくない人や、後遺障害の存在が外見からも分かるなど等級の認定を受けられることがほぼ確定的ならば事前認定で申請するメリットが大きいといえます。
被害者請求について
被害者請求は、主治医に作成してもらった「後遺障害診断書」と、その他必要書類を収集・作成して、相手の自賠責保険会社に提出します。その後、損害保険料率算出機構に書類が送られるのです。
損害保険料率算出機構が等級審査をおこない、被害者には相手の任意保険会社を介さず、直接自賠責保険会社から通知されます。
書類を揃えるには手間もかかりますが、後遺障害等級の認定を受けやすくするために書類を精査することが可能です。
後遺障害の存在が外見から分からず等級の認定を受けることが第一の目的であったり、より上位の後遺障害等級認定を目指すならば、被害者請求を選択するべきでしょう。
関連記事では後遺障害等級申請や被害者請求について、より詳しく解説しています。
障害者手帳の申請方法
障害者手帳の申請は、身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳とで異なります。
身体障害者手帳の申請方法
身体障害者手帳は、福祉事務所または市役所に申請します。
申請に必要な書類は、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が指定する医師の診断書・意見書、身体に障害のある方の写真です。
精神障害者保健福祉手帳の申請方法
精神障害者保健福祉手帳は、市町村の担当窓口を経由し、都道府県知事や指定都市の市長に申請します。
申請に必要な書類は、申請書・診断書など・本人の写真です。
後遺障害等級と障害者手帳に関する疑問
後遺障害等級認定で障害者手帳はもらえる?
後遺障害等級と障害者手帳の交付を受けるための等級は、別物です。そのため、後遺障害等級が認定されたからといって、必ずしも障害者手帳が交付されるわけではありません。
たとえば、身体障害者手帳の交付を受けるためには、一定以上の身体障害者等級があると認められる必要があります。身体障害者等級は1級~7級まで分けられていますが、身体障害者手帳の交付を受けられる対象は身体障害等級1級~6級の方です。
障害者手帳があれば後遺障害慰謝料は高くなる?
障害者手帳を持っていることだけで、後遺障害慰謝料が高くなるわけではありません。
ただし、後遺障害慰謝料は、後遺障害等級や障害者手帳の等級だけでなく、年齢や職業、事故の状況など、さまざまな要因によって異なります。そのため、障害者手帳を持っているからといって、必ずしも後遺障害慰謝料が高くなるとは限りません。
相手の任意保険会社からより多くの後遺障害慰謝料を受け取るためには、提示してくる金額をうのみにすることなく、法的に適正な金額まで増額させることが必要です。そして、法的に適正な金額への増額交渉には弁護士の存在が欠かせません。
交通事故の損害賠償金と障害年金は両方もらえる?
障害年金と交通事故の加害者からの賠償金は二重取りできず、調整がなされます。
交通事故の場合、被害者が負った損害に対して損害賠償金を受け取っています。この場合には障害年金を受け取ることは二重取りにあたるため、先に逸失利益を受け取っている場合には、3年間年金支給が停止するという関係にあるのです。
交通事故の場合、相手の任意保険会社から十分な賠償金を受け取ることが重要です。相手方の提示内容をうのみにせず、一度弁護士に見解を聞いてみましょう。
交通事故の後遺障害で弁護士に相談するメリット
後遺障害等級を適正に認定させる
弁護士は、交通事故の法律に精通しており、後遺障害等級の認定基準を熟知しています。そのため、弁護士に相談することで、適正な後遺障害等級が認定される可能性が高くるのです。
適正な賠償金を獲得する
弁護士は交通事故の損害賠償算定に精通しており、被害者が得られる賠償金を見積もることができます。そのため、弁護士に相談することで、適正な賠償金を獲得できる可能性が高くなります。
慰謝料の金額相場は弁護士が計算するとき最も高く、相手の任意保険会社や自賠責保険会社は低い金額となっています。
示談交渉の段階から弁護士を立てることで、相手の任意保険会社主導の損害賠償ではなく、被害者が損をすることのない損害算定を目指しましょう。
示談交渉を有利に進める
弁護士は、交通事故の示談交渉に精通しており、加害者側の任意保険会社との交渉にも慣れています。そのため、弁護士に相談することで、示談交渉を有利に進めることが可能です。
交通事故の後遺障害で悩んでいる方は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。弁護士が交通事故の被害者の権利を守り、適正な賠償金を獲得できるようサポートいたします。
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交通事故の弁護士費用特約とは?
保険会社が弁護士費用の全部または一部を負担するもの。事故の損害賠償請求においては弁護士による交渉で、慰謝料が増額することが多く、特約に加入している場合は利用した方がよいといえる。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了