頭蓋骨骨折の後遺症はどう残る?慰謝料の相場と後遺障害認定もわかる!

この記事でわかること
交通事故で頭を強く打ち、「骨折しているかもしれない」と感じている方、またはすでに「頭蓋骨骨折」と診断された方へ。
骨折の部位や種類によっては、脳へのダメージや神経損傷により、重い後遺症が残ることもあります。
なかには、日常生活や仕事に深刻な影響を及ぼすケースも少なくありません。
「この症状、放っておいていいの?」「もし後遺症が残ったら、補償はどうなる?」
そんな不安を少しでも軽くするために、医療と法律の観点からわかりやすく解説します。
目次

頭を強く打った!交通事故による頭蓋骨骨折とは?
交通事故で頭部に強い衝撃を受けたとき、「見た目は大丈夫そうでも、実は骨折していた」というケースは珍しくありません。
頭蓋骨は脳を守る重要な骨のため、損傷を見逃してしまうと、後遺症や命に関わるリスクにもつながります。
この章では、事故後に頭蓋骨骨折が起こりやすい受傷パターンや、検査・治療の流れについてご紹介します。
頭蓋骨骨折が起こりうる受傷パターン
頭蓋骨骨折は、以下のようなケースで起きることがあります。
- バイクや自転車で転倒して、頭を打った場合
- 歩行中に車にはねられて、地面に頭部をぶつけた場合
- 車の事故で、ダッシュボードや窓枠に頭を強くぶつけた場合
一見すると軽傷に見えても、骨折しているケースは少なくありません。
事故の衝撃が頭に集中していたときは、念のため精密検査を受けるようにしましょう。
目立った外傷がなくても、頭蓋骨骨折の可能性がある
「外傷もないし、意識もあるから大丈夫かな…」と思ってしまう方もいらっしゃいますが、実際には髄液が漏れていたり、骨に小さなヒビが入っていたりする場合があります。
頭蓋骨骨折は、出血や腫れといった目立つ症状が出ないことも多く、見た目だけで判断するのはとても危険です。
特に、以下の症状があれば、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
- 耳や鼻からの出血
- 目の周囲のあざ
- 感覚の異常やしびれ
CT検査や診断の流れ|いつ治療が必要になるのか
医療機関ではまず、CT検査で頭蓋骨に骨折がないか確認します。この検査で、線状骨折や陥没骨折、頭蓋底骨折などがわかります。
さらに必要に応じてMRIや神経学的検査を行い、骨折による出血や神経への影響がないかを詳しくチェックします。
骨折が軽度で脳に異常がなければ、入院せずに経過観察で済むこともあります。一方で、出血や神経障害がある場合は、開頭手術が必要になることもあります。
いずれの場合も、早期に検査と診断を受けることで、後遺症のリスクを抑えられます。
少しでも不安を感じたら、自己判断せず医師の診断を受けるようにしましょう。
頭蓋骨骨折の種類|必ずしも手術になるとは限らない
頭蓋骨は、外部からの衝撃から脳を守る「防御壁」のような存在です。
交通事故で頭を強く打つと、この頭蓋骨が骨折し、重篤な症状につながるおそれがあります。
骨折が起きる場所によって、その後の症状や後遺症も大きく変わります。
ここでは、頭蓋骨骨折を「頭蓋円蓋部骨折」と「頭蓋底骨折」に分けて解説します。
頭蓋円蓋部骨折(陥没・線状・粉砕・複合)
頭蓋円蓋部骨折とは、頭のてっぺんから側面にかけての「前頭骨・側頭骨・頭頂骨・後頭骨」が骨折することをいいます。
頭髪でおおわれるエリアなので、打撲やたんこぶと見分けにくいこともあります。
この部位の骨折には、次のような種類があります。
種類 | 概要 |
---|---|
陥没骨折 | 頭蓋骨の骨が内側にへこんだ骨折 |
線状骨折 | 頭蓋骨の骨が長い線状に折れている骨折 |
粉砕骨折 | 頭蓋骨の骨が細かく砕けてしまった骨折 |
複合骨折 | 頭蓋骨の骨が複数箇所で折れている骨折 |
骨折だけでは、必ず手術が必要になるわけではありません。
しかし、出血を伴ったり、脳を圧迫する状態が見つかったりした場合には、開頭手術などが検討されることもあります。
頭蓋底骨折|重要な神経を通す部位の骨折
頭蓋底骨折とは、頭蓋骨の底面にある骨が骨折してしまう状態です。
このエリアは、顔や内臓につながる重要な神経が多数通っているため、骨折によって神経障害や出血などの合併症が生じるリスクが非常に高くなります。
頭蓋底骨折は、頭蓋円蓋部骨折とは異なり、外見上わかりにくく、かつ症状が重くなる傾向があるため、注意深い観察と専門的な処置が求められます。
頭蓋骨骨折の症状|疑わしい場合は早急に検査を受けよう
先述の通り、頭蓋骨骨折は程度によっては打撲やたんこぶと見分けがつきにくく、見過ごしてしまうこともあります。
頭蓋骨骨折の症状を紹介するので、少しでも疑わしいと思えばすみやかに検査を受けましょう。
典型的な症状は髄液漏・目の周りのあざ・耳漏など
頭蓋骨骨折では、見た目ではわからない内出血や神経の損傷が起きていることがあります。
以下のような症状があれば、骨折や脳への影響が疑われます。
- 透明な髄液が鼻や耳から漏れ出す(髄液漏)
- 耳の奥に血がたまる(鼓膜内出血)
- 目のまわりや耳の後ろにあざが出る(バトルサイン)
頭蓋底骨折に特有の症状もある
けいれんや嘔吐、強い頭痛、ひどい眠気や錯乱、手足のしびれや動かしにくさといった神経症状が出ることもあります。
こうした症状がある場合、頭蓋底骨折や脳の損傷を伴っている可能性が高いため、注意が必要です。
外傷が軽く見えても、内部では深刻なダメージが起きていることがあります。
少しでも不安があれば、なるべく早めに医療機関を受診しましょう。
頭蓋骨骨折の後遺症と後遺障害等級
頭蓋骨骨折は軽傷で済むケースもありますが、事故の衝撃が強かったり、骨折の場所が神経に近かったりすると、後遺症が残ってしまうこともあります。
たとえば、頭蓋骨骨折では次のような後遺症が残ることがあるでしょう。
- 遷延性意識障害(植物状態)
- 高次脳機能障害(記憶・思考・性格などの変化)
- 身体機能障害(麻痺・感覚障害・言語障害など)
- 醜状障害(見た目に残る傷や変形)
このような後遺症が残ってしまったとき、その程度や種類などに基づいて等級を認定し、それに応じた慰謝料などを請求できる仕組みがあります。
これを「後遺障害等級認定」といいます。
それぞれどのような症状で、どのような等級に認定される可能性があるのか、詳しくみていきましょう。
遷延性意識障害|植物状態になってしまう
交通事故で重い脳損傷を負った場合、長期間にわたって意識が戻らないことがあります。
このような状態を「遷延性意識障害」といい、いわゆる植物状態を指します。
以下のすべてを満たす状態が3か月以上続く場合に、遷延性意識障害に該当するとされます。
- 自力で移動できない
- 自力で食事がとれない
- 糞・尿失禁がある
- 意味のある発語ができない
- 簡単な命令に辛うじて反応するが意思疎通は困難
- 眼球は動くが周囲を認識できない
遷延性意識障害は意識が戻らない状態が続く後遺症であり、後遺障害等級としては最重度の1級や2級に認定されることが多いです。
このような重い後遺症が残った場合には、適正な補償を受けるためにも後遺障害等級の申請が重要です。
詳しくは関連記事『交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になった場合の後遺症と賠償金』もあわせてご覧ください。
高次脳機能障害|記憶や感情に影響する「見えにくい後遺症」
交通事故などで脳が損傷すると、「記憶」「注意力」「感情」など日常生活に欠かせない機能がうまく働かなくなることがあります。
これが高次脳機能障害です。
たとえば次のような症状が現れることがあります。
- 記憶障害(すぐ忘れる・過去を思い出せない)
- 失認症(見えているのに認識できない)
- 注意障害(集中が続かない)
- 遂行機能障害(計画して行動することが難しい)
- 言語障害(言葉が出にくい)
- 失行症(動作の段取りができない)
- 半側空間無視(一方の空間を認識できない)
- 社会行動障害(怒りっぽくなる・感情が不安定になる)
外見ではわかりにくいため、家族や周囲の人が「性格が変わった」「様子がおかしい」と感じて気づくことも少なくありません。
高次脳機能障害では、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号に認定される可能性があり、症状の重さや回復の程度によって変わってきます。
詳しくは、関連記事『高次脳機能障害で後遺障害等級認定される後遺症とは?記憶障害や性格の変化は?』でも詳しく解説しています。
身体機能障害|顔面を中心に全身の機能に影響
頭蓋骨の骨折によって、脳や顔面の神経が傷つくと、目・耳・口などの感覚や動きに不調が残ることがあります。
これが身体機能障害です。
具体的には次のような症状があげられます。
- 麻痺(手足が動かない・しびれる)
- 言語障害(話す・聞き取るのが難しい)
- 歩行障害(ふらつき・バランスが取れない)
- 認知機能障害(理解力・判断力の低下)
- 味覚障害(味がわかりにくくなる)
- 嗅覚障害(においを感じない)
こうした症状が残ると、仕事や日常生活への影響も大きく、心身ともに大きな負担となることがあります。
身体機能障害は、症状の部位や重さによって後遺障害等級が大きく変わります。
たとえば言語障害では1級2号、3級2号、4級2号、6級2号、9級6号、10級3号と等級認定の幅が非常に広いです。
認定の見通しや必要な書類はケースによって異なるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
醜状障害|骨折により頭部に傷や欠損ができる
頭部の骨折によって皮膚や骨が大きく損傷すると、見た目に変化が残ることがあります。
このような後遺症が「醜状障害」です。
たとえば、頭部に手のひら大の傷や骨の欠損があれば7級12号、鶏卵大であれば12級14号といった等級が認定される可能性があります。
傷や変形が残ることで日常生活や人との関わりに影響が出ることもあります。
詳しくは関連記事『交通事故による顔の傷跡(外貌醜状)の後遺障害認定』をご覧ください。
頭蓋底骨折による後遺症|神経損傷が残す深刻な障害
頭蓋底骨折は、脳神経が集中する頭蓋骨の底面に起こるため、損傷によって多様かつ深刻な後遺症を残すリスクが高い部位です。
他の部位の骨折と比べて、神経へのダメージが強く出る傾向があります。
たとえば以下のような後遺症が生じることがあるでしょう。
- 聴力障害(内耳神経の損傷)
- 味覚・嗅覚障害(嗅神経や顔面神経の損傷)
- 顔面麻痺(顔面神経の損傷)
- 眼球運動障害(動眼神経など)
- 嚥下障害・発声障害(舌咽神経・迷走神経)
これらの症状は重複することも少なくなく、日常生活に大きな制限が出る可能性否定できません。
後遺障害等級認定では複数の等級が認定され、併合されるケースもあります。
頭蓋骨骨折で後遺障害認定を受けるには
交通事故で頭を強く打ち、治療を終えたあとも症状が残っているという場合、どうすればいいのか悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
実は、こうした症状がある場合は「後遺障害等級認定」を受ければ、後遺障害に対する補償を受けられる可能性があります。
ここでは、その手続きの流れやポイントをわかりやすく解説していきます。
後遺障害等級認定の流れとポイント
後遺障害認定を受けるには、まず主治医に「後遺障害診断書」の作成を依頼しましょう。
この診断書には、これまでの治療経過や後遺症の症状、今後の見通しなどが記載されます。
後遺障害診断書の作成も含む、認定の流れは以下の通りです。
後遺障害等級認定までの基本的な流れ
- 症状固定(これ以上改善しないと医師が判断)
- 診断書の作成を依頼
- 後遺障害認定の申請手続きをする
- 審査後、結果が通知される
認定を受けるには診断書の内容が非常に重要であり、記載ミスや漏れがあると正当な等級が認められないこともあります。
主治医に伝える際は、具体的な症状や困っていることをしっかり伝えるようにしましょう。
後遺障害診断書については、関連記事『後遺障害診断書のもらい方と書き方は?自覚症状の伝え方と記載内容の注意点』で解説しています。
申請方法|事前認定と被害者請求の違い
後遺障害の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。
事前認定
加害者側の任意保険会社がほとんどの手続きを代行してくれる方法です。
被害者の手間が少ないのが利点ですが、後遺障害診断書以外の資料の事前確認はできません。提出書類では説明不足で、不利な結果になるリスクもあります。
被害者請求
被害者が自ら資料をそろえる申請方法です。
時間や労力はかかりますが、資料を精査・追加できるため、正確な認定につながりやすいです。
関連記事:後遺障害申請の被害者請求|流れや弁護士に依頼すべき理由を解説
書類の準備に不安があるなら事前認定、正当な認定を強く望むなら被害者請求がおすすめです。
なお、弁護士に依頼すれば、被害者請求もスムーズに進められるので、不安な方は一度相談してみるとよいでしょう。
頭蓋骨骨折の後遺障害慰謝料|相場と請求方法
後遺障害の認定を受けたら、次に気になるのが「慰謝料の金額」ではないでしょうか。
実際にどのくらいの金額が認められるのか、そして保険会社からの提示金額が適正なのか、不安になる方も多いと思います。
ここでは、後遺障害の等級ごとに異なる慰謝料の相場と、請求時の注意点を解説します。
等級別の慰謝料相場と増額の余地
後遺障害慰謝料は、認定された等級によっておおよその金額が決まっています。
以下は、裁判基準(弁護士基準)に基づいた等級別の相場です。
後遺障害慰謝料の等級別相場(弁護士基準)
等級 | 慰謝料 (万円) |
---|---|
1級・要介護 | 2,800 |
2級・要介護 | 2,370 |
1級 | 2,800 |
2級 | 2,370 |
3級 | 1,990 |
4級 | 1,670 |
5級 | 1,400 |
6級 | 1,180 |
7級 | 1,000 |
8級 | 830 |
9級 | 690 |
10級 | 550 |
11級 | 420 |
12級 | 290 |
13級 | 180 |
14級 | 110 |
ただし、保険会社から提示される金額は、これよりも大幅に低いことがほとんどです。
提示金額に納得できない場合は、弁護士に相談することで増額の可能性が広がります。
後遺障害慰謝料以外に請求できるもの
交通事故の損害賠償では、後遺障害慰謝料以外にも、以下のような補償が認められるケースがあります。
- 入通院慰謝料:治療のために通院・入院した期間に応じて発生する慰謝料
- 休業損害:ケガや後遺症により仕事ができなかった期間の減収分
- 治療関係費:診療費、薬代、入院費、通院交通費など
- 逸失利益:後遺症によって将来の収入が減る分の補償
保険会社の提示では、これらが十分に反映されていない場合もあります。
気になる場合は、弁護士に「正しく計算されているか」を確認してもらうと安心です。
慰謝料を請求するには?示談・ADR・裁判の違いと選び方
慰謝料を請求する方法としては、主に以下の3つの手段があります。
- 示談交渉: 保険会社との交渉によって合意を目指す
- ADR(裁判外紛争解決手続): 費用や時間を抑えて解決を図る制度
- 民事訴訟(裁判): 交渉が決裂した場合の最終手段
中でも、弁護士に示談交渉を任せることで、金額アップの可能性が高まるだけでなく、手間や精神的負担も大きく軽減されます。
どの方法を選ぶか迷ったときは、一度専門家に相談するのがおすすめです。
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詳しくは『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』をご覧ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了