頭蓋骨骨折の後遺症はどう残る?慰謝料の相場と後遺障害認定もわかる!
頭蓋骨骨折は部位や骨折の種類にもよりますが、出血が生じて頭蓋内を圧迫してしまったり、顔面神経や内耳神経に悪影響を及ぼしたりと重篤な症状につながる可能性があります。
頭蓋骨骨折でどんな後遺症が生じるのか、そして後遺障害認定を受けることが出来るのか、損害賠償について弁護士が解説します。
目次
頭蓋骨骨折の種類|必ずしも手術になるとは限らない
頭蓋骨は頭部を守る骨の総称で、顔の構造を維持したり、外傷から守ったりという働きを持ちます。交通事故によって強い衝撃が頭部に加わると、頭蓋骨骨折が生じてしまうのです。
頭蓋骨骨折は、骨折する頭蓋骨の部位によって、大きく「頭蓋円蓋部骨折」と「頭蓋底骨折」に分かれます。
頭蓋円蓋部骨折
頭蓋円蓋部骨折とは、頭蓋骨のうち前頭骨・側頭骨・頭頂骨・後頭骨の部分が骨折することです。頭髪でおおわれる部分といえば、頭蓋円蓋部をイメージしやすいでしょう。
頭蓋円蓋部骨折には、陥没骨折、線状骨折、粉砕骨折、複合骨折といった複数の種類があります。
種類 | 概要 |
---|---|
陥没骨折 | 頭蓋骨の骨が内側にへこんだ骨折 |
線状骨折 | 頭蓋骨の骨が長い線状に折れている骨折 |
粉砕骨折 | 頭蓋骨の骨が細かく砕けてしまった骨折 |
複合骨折 | 頭蓋骨の骨が複数箇所で折れている骨折 |
骨折だけでは、必ずしも手術につながるとは限りません。しかし、急性硬膜外血腫を合併している場合には、開頭血栓除去術といった手術が必要になることもあります。
頭蓋底骨折
頭蓋底骨折とは、頭蓋骨の底面が骨折することです。頭蓋底には顔や内臓につながる重要な脳神経が通っているので、頭蓋底の骨折に伴って神経や脳にも損傷が及ぶ危険性が非常に高くなります。
したがって、頭蓋底骨折の場合には、頭蓋円蓋部を骨折した場合とは異なる処置がとられることになるでしょう。
頭蓋骨骨折の症状|疑わしい場合は早急に検査を受けよう
頭蓋骨が骨折していると、次のような症状がみられます。
- 脳表面を覆う透明な髄液が、鼻や耳から漏れ出す
- 鼓膜の奥に血液が溜まる
- 耳の後ろや目の周りにあざができる
また、けいれん発作や嘔吐、ひどい頭痛、持続・悪化する眠気と錯乱、平衡感覚の消失、腕や足が動かない・感覚がないなどの諸症状がみられることもあります。
頭蓋骨は頭部を守る重要な骨ですので、頭蓋骨骨折が疑われる場合は早期に病院を受診してください。
頭蓋骨骨折の後遺症と後遺障害等級
頭蓋骨骨折の後遺症は、骨折の程度や脳の損傷の程度によって異なります。
軽度の骨折では、後遺症が残らないこともありますが、重度の骨折では、以下の後遺症が残ることがあります。
- 遷延性意識障害
- 高次脳機能障害
- 身体機能障害
- 醜状障害
それぞれの後遺症についてみていきましょう。
遷延性意識障害|植物状態になってしまう
遷延性意識障害とは、意識障害が数週間以上続く状態をさします。具体的には以下のすべてを満たした状態が、3ヶ月以上続いた場合です。
- 自力で移動できない
- 自力で食事がとれない
- 糞・尿失禁がある
- 意味のある発語ができない
- 簡単な命令に辛うじて対応するが意思疎通はほとんどできない
- 眼球は動くが認識はできない
遷延性意識障害は後遺症としては極めて重篤なものといえます。後遺障害等級としては、非常に重い後遺障害1級や2級認定となる可能性が高いです。
この後に解説する後遺障害等級認定を受け、適正な補償を請求しましょう。
遷延性意識障害については、関連記事『交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になった。賠償金と家族がすべきこと』で深掘り解説していますので、あわせてご確認ください。
高次脳機能障害|人が変わったようになる
高次脳機能障害とは、脳が損傷を受けることで、記憶力、注意力、判断力、感情コントロール、言語能力などの機能が低下している状態です。
高次脳機能障害の症状の例を示します。
- 記憶障害
- 失認症
- 注意障害
- 遂行機能障害
- 言語障害
- 失行症
- 半側空間無視
- 社会行動障害
高次脳機能障害は、性格が変わった、怒りっぽくなった、以前出来ていたことが急にできなくなったなど、周囲からの評価や日常生活の困難さから発覚することも多いです。
高次脳機能障害では、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号に認定される可能性があります。いずれも神経系統の機能や精神に障害があるものとして認定されるのです。
高次脳機能障害の後遺障害については、関連記事『高次脳機能障害で後遺障害等級認定される後遺症とは?記憶障害や性格の変化は?』で深掘り解説していますので、参考にしてみてください。
身体機能障害|顔面を中心に全身の機能に影響
頭蓋骨は顔面を構成する骨であるため、目・耳・鼻・口などに関連する後遺症や、脳の損傷による麻痺や言語障害などの身体機能障害が残ることがあります。
身体機能障害は、仕事や家事への影響が非常に大きいものといえます。つづいて後遺障害等級認定について解説するので、身体機能障害についても適正な等級認定を目指しましょう。
身体機能障害は、その障害の内容に応じて認定される等級が大きく異なります。たとえば、言語障害では1級2号、3級2号、4級2号、6級2号、9級6号、10級3号と等級認定の幅が非常に広いです。
身体機能障害の内容次第になりますので、後遺障害認定見込みについては、弁護士に問い合わせることをおすすめします。
醜状障害|骨折により頭部に傷や欠損ができる
頭蓋骨を骨折した場合には、骨の一部を失うなどして、醜状障害が残ってしまうことがあります。
頭部に手のひら大ほどの傷や欠損があれば7級12号、鶏卵大ほどであれば12級14号の認定が見込まれるでしょう。
顔に残る醜状障害については、関連記事『交通事故による顔の傷跡(外貌醜状)の後遺障害認定』にて詳しく解説しています。
頭蓋骨骨折での後遺障害認定の基礎知識
交通事故で頭蓋骨骨折を負って後遺症が残った場合に、その後遺症が「後遺障害」であると認定を受けることは、損害賠償面で重要です。
後遺障害等級認定を受けることができれば、後遺障害慰謝料や逸失利益といった後遺症に対する損害賠償を請求することができます。
後遺障害等級認定の流れ
頭蓋骨骨折の後遺障害認定を受けるためには、まず医師に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。後遺障害診断書には、頭蓋骨骨折のこれまでの治療経過や後遺症の程度が記載されます。
後遺障害診断書の具体的なもらい方や、診断書の内容・書き方の注意点について詳しくは、関連記事『後遺障害診断書のもらい方と書き方は?自覚症状の伝え方と記載内容は要確認』が参考になりますので、あわせてご確認ください。
ここで知っておきたいポイントとして、後遺障害等級認定を受ける方法は大きく2つあるということです。
後遺障害等級認定の申請方法
後遺障害等級認定には、事前認定と被害者請求の2つの方法があります。
事前認定とは、交通事故で後遺障害が残った場合に、相手の任意保険会社に主体となってもらって後遺障害等級認定を申請する手続きです。被害者は後遺障害診断書さえ準備すればよく、負担の少ない方法といえます。
一方、被害者請求とは、交通事故で後遺障害が残った場合に、加害者の自賠責保険会社に対して直接損害賠償を請求する手続きです。相手の任意保険会社を介することがありません。
後遺障害等級認定の確率を上げるには?
事前認定と被害者請求のどちらを行うかは、ケースバイケースで判断する必要があります。ただし、後遺障害等級が認定される見込みが低い場合は、被害者請求を行うことをおすすめします。被害者請求の方が、申請資料をじっくりとチェックしたり、内容を吟味したりと工夫ができるからです。
ただし、被害者請求は手間もかかる申請方法になります。頭蓋骨骨折による後遺症でおつらい中、様々な書類を集めることは大変です。後遺障害等級の認定をどうやって目指すべきか、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
被害者請求による後遺障害申請と弁護士依頼の関係性については、関連記事『後遺障害申請の被害者請求|流れや弁護士に依頼すべき理由』で詳しく解説中です。参考にご覧ください。
頭蓋骨骨折の後遺障害慰謝料|相場と請求方法
頭蓋骨骨折で後遺障害認定を受けることが出来れば、後遺障害等級に応じた慰謝料を請求可能です。後遺障害慰謝料の相場と、なぜ弁護士に依頼するべきなのかをお伝えします。
頭蓋骨骨折の後遺障害慰謝料の適正相場
下表は、これまで裁判で認められている金額相場になります。
等級 | 弁護士 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
こうした後遺障害慰謝料の金額を、相手の保険会社が提示してくれることはほぼありません。そのため、相手の保険会社の提示してくる金額がこれよりも低い場合には、増額交渉の余地があるかどうかを弁護士に相談してみてください。
後遺障害慰謝料以外に請求できるもの
交通事故の損害賠償では、次のようなものも請求できます。
- 入通院慰謝料:頭蓋骨骨折の治療にかかった期間に応じて金額が決まる
- 休業損害:頭蓋骨骨折により働けず収入が下がったことへの補てん
- 治療関係費:治療費、医薬品代、入院費用、通院交通費などが含まれる
- 逸失利益:後遺症によって生涯年収が減少した分への補てん
交通事故で負った損害に応じて請求できる費目があります。相手の保険会社から提示された賠償案に、すべて網羅されているとは限りません。判断に迷ったり、金額の根拠がわからないときは弁護士に相談しましょう。
頭蓋骨骨折の慰謝料を請求する方法
交通事故の慰謝料請求方法には、示談交渉、ADR、裁判といった方法があります。交通事故においては、まず示談交渉によって損害額の確定をおこない請求することが多いです。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、被害者自身が交渉の窓口になる必要はありません。また示談交渉がうまくまとまらなかった場合、ADRや裁判といった異なる選択肢も、弁護士であれば説明可能です。
交通事故の慰謝料を少しでも増額したいというお考えは当然のことといえます。残念なことに、交通事故の慰謝料は弁護士でないと増額が難しい部分が大いにあるのです。
弁護士に相談してみることで、慰謝料増額の余地がわかるだけでなく、被害者ご本人やそのご家族の心身の安心にもつながるでしょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了