交通事故による味覚障害 | 後遺障害の等級と慰謝料の増額方法

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交通事故で味覚障害

交通事故で味覚障害を負った場合、後遺障害の等級認定を受けることで、慰謝料を増額することができます。

味覚障害の後遺障害の等級は、味覚減退であれば14級相当、味覚脱失であれば12級相当とされていて、後遺障害慰謝料は後遺障害の等級に応じて定められているのです。

また、慰謝料以外にも請求できる損害が存在するため、慰謝料を含めた損害賠償請求を適切に行うことも大切になります。

本記事では、交通事故により味覚障害となった場合の、慰謝料やそのほかの損害賠償請求を適切に行うために知っておくべきことについて解説しています。

交通事故により味覚障害となり、何をすべきか気になる方は、是非ご一読ください。

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交通事故による味覚障害の基礎知識

味覚障害とは?

味覚障害とは、通常、食べ物の味が感じられない状態または感じ方が低下した状態のことをいいます。ただし、味覚の異常や味覚の変化といった症状を含むこともあります。

味覚は甘味、塩味、苦み、酸味の4種類に分類されることが多いですが、最近では旨味を加えた5種類に分類されることもあります。

味覚を感じる器官は味蕾(みらい)と呼ばれ、そのほとんどは舌の表面部分に存在しますが、舌以外の口腔内(軟口蓋、咽頭蓋、咽頭)にも存在しています。

また、味覚障害は、食事の楽しみを奪うだけにとどまらず、栄養不良や体重減少、うつ病などの精神的症状を引き起こす場合もあるでしょう。

なお、交通事故における味覚障害は、部位別にいうと口の後遺障害の一つであり、口の後遺障害には、味覚障害以外にも一定の食べ物を摂取できない咀嚼(そしゃく)機能障害、一定の語音を発音できない言語機能障害、一定以上の歯を欠損する歯牙傷害などがあります。

交通事故での味覚障害の原因

食べ物の味は、味物質が味蕾に到達するだけでは認識できず、味蕾につながる味神経を介して脳中枢にシグナルが伝達されることによりはじめて認識できます。

そのため、交通事故においては、舌の損傷や顎周辺組織の損傷だけでなく、頭部外傷(頭蓋底骨折など)により味覚を司る神経の脳への伝達障害が原因で味覚障害が起こることも多いです。

交通事故で味覚障害と併発しやすい症状

大半の風味を識別するには味覚と嗅覚の両方の情報が脳に必要なことからもわかるとおり、味覚と嗅覚は、密接に関連しています。

そのため、交通事故で味覚障害が起こった場合には、嗅覚障害を併発する事案が多いです。

また、上記のとおり交通事故の味覚障害は頭部外傷が原因で発生することが多いため、同じく頭部外傷が原因で発生しやすい高次脳機能障害を併発する事案も多いです。

高次脳機能障害が疑われる症状について詳しく知りたい方は『事故で記憶喪失・記憶障害。言語障害・性格が変わる…これは高次脳機能障害の症状?』の記事をご覧ください。

【コラム】味覚障害は自覚症状がない場合もある?

高次脳機能障害を原因とする味覚障害や嗅覚障害は被害者に自覚症状がない場合があります。

なぜなら、食べ物の味や臭いが分からなくても、記憶が補正してしまい、美味しいと感じてしまうことがあるからです。

そのため、高次脳機能障害を原因とする味覚障害を見逃さないためには、家族や周囲の人々が被害者の食事の際に、事故前と違う行動がないか、注意深く観察をすることが重要になります。

味覚障害の後遺障害等級と認定基準

味覚障害により認定され得る後遺障害等級

味覚障害の後遺障害の等級は、味覚の喪失程度によって12級相当または14級相当と認定される可能性があります。

交通事故の味覚障害は、甘味、塩味、苦み、酸味の基本4味質で判定され、4つすべてを失ったか、一部を失ったかで等級が決まってくるのです。

後遺障害等級と認定基準

等級概要
12級相当甘味、塩味、苦み、酸味がすべて認知できない
(味覚脱失)
14級相当甘味、塩味、苦み、酸味のうち1種類以上が認知できない
(味覚減退)

味覚障害の後遺障害等級は、医師の診断書の記載内容などに基づいて第三者機関により認定されます。

なお、味覚障害以外に嗅覚障害や高次脳機能障害などを併発している場合は、それらの障害についても別途後遺障害等級が認定(併合)され、より上位の後遺障害等級が認定される可能性があります。

上記の併合のような後遺障害等級の認定ルールについてより詳しく知りたい方は『後遺障害等級の認定ルール「併合・相当・加重」後遺症が複数残った時の慰謝料は?』の記事をご覧ください。

味覚障害が後遺障害に該当するための認定基準

味覚障害が存在するのか、存在するとして後遺障害等級認定が可能な程度であるかどうかの立証方法は、以下のような検査方法による検査結果となります。

  • ろ紙ディスク法の最高濃度液検査
    舌の所定の部位に、甘味・塩味・酸味・苦味それぞれの味(精製白糖・塩化ナトリウム・酒石酸・塩酸キニーネ)が付いたろ紙を置き、どのように感じているのかを検査する
  • 電気味覚検査
    舌に電気を流して刺激を与え、障害が生じている部位や電流の大きさを調節することでどのくらい味覚が損なわれているのかを判断する(ろ紙ディスク法のように味ごとの感じ方を測定することはできない)

上記の検査を受けるには、通常専門医のいる耳鼻咽喉科を受診する必要があります。

【参考】嗅覚障害の検査方法

味覚障害と併発することの多い嗅覚障害は、T&Tオルファクトメーター(基準嗅覚検査)や静脈性嗅覚検査(アリナミン静脈注射)によって立証する必要があります。

より詳しく知りたい方は『交通事故による嗅覚脱失の後遺障害認定|等級ごとの慰謝料相場はいくら?』の記事をご覧ください。

交通事故の味覚障害で請求できる慰謝料や損害

交通事故の味覚障害で請求できる慰謝料

味覚障害について後遺障害等級認定を受けることができた場合、後遺障害を負ったという精神的苦痛に対して後遺障害慰謝料を請求することが可能です。

味覚障害の慰謝料は、後遺障害の等級に応じて算定されます。
後遺障害12級相当であれば290万円、後遺障害14級相当であれば110万円です。

等級慰謝料の相場
12級相当290万円
14級相当110万円

治療のために入院・通院したことによる慰謝料も請求できる

交通事故により味覚障害となった場合、原因となった怪我の治療のために入院・通院したことで生じる精神的苦痛についても慰謝料の請求が可能です。

このような慰謝料を入通院慰謝料といい、入院や通院の期間に応じて金額がきまります。

交通事故の味覚障害で請求できる慰謝料以外の損害

交通事故により味覚障害となった場合には、慰謝料以外にも以下のような損害について請求することが可能です。

  • 治療関係費
    治療のために必要であった、投薬代・手術代・入院代・通院交通費等
  • 休業損害
    治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
  • 逸失利益
    後遺障害により以前のように仕事ができなくなることで生じる将来の減収に対する補償
  • 物的損害
    自動車や自転車の修理代や代車費用など

ただし、逸失利益は12級なら14%、14級なら5%の労働能力喪失率として算定するのが原則ですが、職業に味覚が重要な要素となる料理人やソムリエ、主婦であるといった事情がない限り、味覚障害では労働に対する具体的影響や支障は生じないとして、労働能力喪失の有無が問題になることが予想されます。

交通事故において請求できる損害賠償の費目や計算方法について詳しく知りたい方は『交通事故の損害賠償とは?請求できる賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事をご覧ください。

交通事故で味覚障害となったのなら弁護士に相談を

交通事故後の味覚障害について弁護士に相談するメリット

味覚障害の慰謝料を請求する際には、一度弁護士に相談・依頼すべきです。弁護士ならば、状況を詳しく聞いて、適切なアドバイスやサポートを提供できます。

味覚障害の弁護士に相談・依頼するメリットは、以下のとおりです。

  • 適正な後遺障害等級認定を受けられるようサポートしてもらえる
  • 法律の専門家として、被害者の損害をもれなく主張できる
  • 加害者側との連絡を代わりに行ってくれる
  • 相場の示談金額で示談できるよう適切な示談交渉をしてくれる

交通事故による味覚障害は後遺障害の認定について争いになりやすい後遺症のひとつです。

後遺障害が生じていることを適切に主張し、後遺障害の認定を受けるためには、専門家である弁護士に手続きを手伝ってもらうべきといえます。

また、味覚障害が後遺障害として認定されたとしても、加害者側の保険会社は低額な賠償金しか提示してこないのが通常です。被害者の方だけで保険会社に交渉しても増額させるのは困難でしょう。

一方、被害者に代わって弁護士が保険会社に増額交渉すれば主張が通り、増額する可能性が高まることからも、弁護士への相談・依頼をおすすめします。

増額交渉(弁護士あり)

弁護士に依頼するメリットは他にもありますので、関連記事『交通事故を弁護士に依頼するメリット9選と必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』もあわせてご確認ください。
関連記事では、弁護士のメリットだけでなく、知っておきたい弁護士のデメリットについても解説しています。ご自身の件で本当に弁護士に頼るべきなのか判断する際にお役立てください。

弁護士に相談・依頼する費用は抑えることができる

弁護士に相談や依頼する際に生じる費用が気になる方は、弁護士費用特約を利用できないかどうかを確認してください。

弁護士費用特約とは、弁護士に相談・依頼する際に生じる費用を保険会社が代わりに負担してくれるというものです。

負担額に上限があるものの、上限内の負担で収まることが多いため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能できることが珍しくありません。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約について詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。

弁護士費用特約を利用できなくても弁護士に相談・依頼すべき

弁護士費用特約が利用できない場合でも、弁護士に相談・依頼を行った方が最終的にお得となるケースは多いです。

弁護士に依頼することで、慰謝料やそのほかの損害賠償金について増額できる可能性が高まり、弁護士費用を差し引いても得られる損害賠償金が増えることは珍しくありません。

依頼により最終的に得られる金額が増加するかどうかが気になる方は、無料法律相談の機会に弁護士へ問い合わせて、見積もりを取ってもらうと良いでしょう。

弁護士費用についてさらに深掘りした関連記事『交通事故の弁護士費用相場はいくら?弁護士費用特約を使って負担軽減』では、弁護士費用の内訳から一般的な相場、費用を抑えたい時に役立つ弁護士費用特約のことなどについて解説しています。あわせてご覧ください。

交通事故後の味覚障害についてよくある3つの質問

味覚障害で後遺障害の等級認定を受けるために必要な手続きは?

交通事故後の味覚障害が一定期間経過後も治ることなく残存した場合は、後遺障害の等級認定の申請も視野に入れましょう。後遺障害認定の申請に必要な手続きについて、被害者自身で行う場合の流れは、以下のとおりです。

  1. 症状固定の段階で主治医に後遺障害診断書を書いてもらう
  2. 保険会社を通して申請書類を加害者側自賠責保険へ提出する
  3. 損害保険料率算出機構にて等級認定の審査を受ける
  4. 後遺障害の等級が認定され、等級に応じた賠償金が支払われる

「後遺障害診断書」は後遺障害の程度を明確にするために必要なものです。後遺障害の申請をする際には、この診断書を提出する必要があります。

損害保険料率算出機構による審査では、診断書の内容や事故の状況などが確認されます。そして、後遺障害の等級が認定されると、等級に応じた慰謝料や逸失利益などの賠償金が支払われる流れです。

後遺障害の等級認定を受けるまでの流れやさらに具体的な申請手続きについては、『交通事故で後遺障害を申請する|認定までの手続きの流れ、必要書類を解説』の記事をご確認ください。

後遺障害の等級認定は複雑で難しい手続きですし、非常に手間がかかります。弁護士に依頼すれば、それらの手間を軽減できるだけでなく、書類の作成や提出をスムーズに進めることができます。

味覚障害の治療費は誰が負担する?

味覚障害の治療費は加害者に請求できることから、加害者に負担させることができます。

加害者が任意保険会社に加入している場合には、加害者の任意保険会社が負担してくれることが多いでしょう。

ただし、加害者が不明な場合や、加害者が任意保険に加入していない場合は、被害者本人がいったん治療費を負担する必要があります。

治療関係費用は、健康保険を使うことで軽減することができるため、いったん被害者本人が治療費を負担する場合には利用すると良いでしょう。

交通事故を原因とする味覚障害の治療で健康保険を利用する場合は、手続きの方法や注意点について解説した関連記事『交通事故治療での健康保険利用|切り替え手続きやメリット・デメリットを解説』をよくお読みください。

味覚障害を弁護士に依頼するタイミングは?

味覚障害を弁護士に依頼するタイミングは、早ければ早いほど良いものです。

弁護士に依頼することで、後遺障害の等級認定や慰謝料請求などの手続きを早期に進めることが可能となります。

また、弁護士に交渉手続きを早めに任せてしまえば、自分の体調回復や仕事、家事への復帰に注力できるというメリットも得られるでしょう。

味覚障害の弁護士に依頼する際には、以下の点に注目してみてください。

  • 交通事故の損害賠償に関する知識や経験が豊富な弁護士に依頼する
    • それぞれ力を入れている分野は、弁護士によって異なる
  • 着手金無料や成功報酬制などの弁護士費用体系を確認する
    • 弁護士費用については正式な依頼前に十分に確認しておく
  • 弁護士との相性も確認する

交通事故による味覚障害でお悩みの方はこちら!

「味覚障害で後遺障害認定の申請を考えている」「交通事故の損害賠償請求額に不安がある」という交通事故被害者の方は、アトム法律事務所の無料相談をご利用ください。

交通事故案件の経験豊富な弁護士に無料で相談することが可能です。

相談予約は24時間365日受付中ですので、まずは電話やLINE、メールで気軽にお問い合わせください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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