嗅覚脱失の後遺障害は何級?受け取れる慰謝料と認定基準を解説
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交通事故で嗅覚(きゅうかく)を完全に失った場合は、原則として後遺障害12級相当、嗅覚が低下した場合は14級相当に認定される可能性があります。鼻の欠損も伴う場合には、9級5号などが問題になることもあります。
しかし、「においがしない」という本人の申告だけで認定されるわけではありません。後遺障害等級に認定されるには、T&Tオルファクトメーターによる基準嗅覚検査などを受け、嗅覚障害の程度や交通事故との因果関係を客観的に示すことが必要です。
この記事では、嗅覚脱失・嗅覚減退の後遺障害等級と慰謝料相場、必要な検査、認定を受けるためのポイントを解説します。
目次
嗅覚に後遺症が残った場合の後遺障害等級と慰謝料相場
交通事故で嗅覚に後遺症が残った場合の後遺障害等級と慰謝料相場は以下の通りです。
| 障害の程度 | 等級 | 慰謝料相場 |
|---|---|---|
| 嗅覚の脱失(嗅覚を完全に失った) | 12級相当 | 290万円 |
| 嗅覚の減退(嗅覚が低下した) | 14級相当 | 110万円 |
| 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの | 9級5号 | 690万円 |
嗅覚脱失や嗅覚減退は、自賠責保険の後遺障害等級表に直接記載されている障害ではありません。そのため、等級表に定められた障害と同程度のものとして、「相当等級」が認定されます。相当等級が認定された場合は、その等級の後遺障害として慰謝料を請求できます。
それぞれ詳しく解説していきます。
嗅覚脱失は12級相当・嗅覚減退は14級相当
交通事故によって鼻を欠損していないものの、嗅覚を完全に失った場合は、後遺障害12級相当に認定される可能性があります。
一方、においをまったく感じない状態ではないものの、事故前より嗅覚が低下した場合は、14級相当が認定される可能性があります。
嗅覚障害について後遺障害等級が認定されると、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求できます。過去の裁判例などをもとにした弁護士基準による後遺障害慰謝料の相場は、次のとおりです。
- 嗅覚脱失(12級相当):290万円
- 嗅覚減退(14級相当):110万円
嗅覚脱失または嗅覚減退が認定されるためには、T&Tオルファクトメーターによる基準嗅覚検査などを受け、嗅覚障害の程度を客観的に示す必要があります。
具体的な検査方法と数値基準については、本記事「嗅覚脱失の後遺障害認定基準」で解説します。
鼻を欠損した場合は9級5号
交通事故によって鼻を欠損し、嗅覚脱失や鼻呼吸困難が残った場合は、後遺障害9級5号に認定される可能性があります。
後遺障害9級5号の認定基準は、「鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの」です。
ここでいう「鼻を欠損した」とは、鼻の軟骨部分の全部または大部分を失った状態をいいます。
また、「機能に著しい障害を残す」とは、両側の鼻呼吸が困難になった場合や、嗅覚を完全に失った場合を指します。鼻の形が変わっただけで直ちに9級5号になるわけではなく、鼻の欠損と機能障害の両方が必要です。
9級5号の後遺障害慰謝料は、弁護士基準で690万円が相場です。
外貌醜状がある場合の等級
鼻を欠損すると、嗅覚や鼻呼吸の障害だけでなく、顔の外見にも大きな変化が残ることがあります。このような場合は、鼻の機能障害とは別に、外貌醜状の後遺障害に該当する可能性があります。
外貌醜状に関する主な等級と慰謝料相場は、次のとおりです。
| 障害の程度 | 等級 | 慰謝料相場 |
|---|---|---|
| 外貌に著しい醜状を残すもの | 7級12号 | 1000万円 |
| 外貌に相当程度の醜状を残すもの | 9級16号 | 690万円 |
| 外貌に醜状を残すもの | 12級14号 | 290万円 |
ただし、鼻の欠損による9級5号と、同じ鼻の欠損を理由とする外貌醜状の等級が単純に併合されるわけではありません。
たとえば、鼻の欠損と機能障害によって9級5号に該当し、同じ鼻の欠損が外貌に著しい醜状を残すものとして7級12号にも該当する場合は、原則として、より重い7級12号として評価されます。
嗅覚障害と味覚障害が併存した場合
交通事故では、嗅覚障害と味覚障害が併存することがあります。また、味覚障害がなくても、嗅覚の低下によって食べ物の風味を感じにくくなる場合があります。
検査によって味覚障害も確認された場合は、嗅覚障害とは別に後遺障害が認定される可能性があります。味覚脱失は12級相当、味覚減退は14級相当が目安です。
| 障害の程度 | 等級 | 慰謝料相場 |
|---|---|---|
| 味覚脱失 | 12級相当 | 290万円 |
| 味覚減退 | 14級相当 | 110万円 |
嗅覚障害と味覚障害がそれぞれ独立して認定された場合は、併合により最終的な等級が決まります。両方に異常を感じる場合は、嗅覚検査と味覚検査を受け、各障害を客観的に示す必要があります。
嗅覚脱失の後遺障害認定基準
嗅覚脱失や嗅覚減退の後遺障害認定では、主にT&Tオルファクトメーターによる基準嗅覚検査の結果から、障害の程度が判断されます。必要に応じて、静脈性嗅覚検査の結果も判断材料になります。
T&Tオルファクトメーターによる基準嗅覚検査
T&Tオルファクトメーター(基準嗅覚検査)は、においがする5種類の液体を8段階の濃度ごとに、ろ紙に染み込ませ、どの段階までにおいを感じることができるのかを調べる検査です。
検査結果は「平均認知域値」などとして示され、嗅覚脱失や嗅覚減退を判断する重要な資料になります。検査結果は次のように整理できます。
平均認知域値と等級の目安
| 平均認知域値 | 嗅覚障害の程度 | 等級の目安 |
|---|---|---|
| 2.6以上5.5以下 | 嗅覚減退 | 14級相当 |
| 5.6以上 | 嗅覚脱失 | 12級相当 |
ただし、数値基準を満たすだけで必ず認定されるわけではありません。事故直後から症状が一貫していることや、事故による損傷との因果関係も審査される点には注意が必要です。
静脈性嗅覚検査(アリナミン静脈注射)
アリナミン静脈性嗅覚検査(アリナミン静脈注射)は、アリナミンを静脈に注射し、においを感じ始めるまでの時間や、においが続く時間を調べる検査です。嗅覚障害の有無や程度を調べる際に用いられます。
注射後にまったくにおいを感じない場合は、嗅覚脱失を裏付ける資料になることがあります。
ただし、この検査だけでは嗅覚障害の程度を細かく数値化できません。そのため、後遺障害認定ではT&Tオルファクトメーターの結果を中心に、補足的な資料として用いられるのが一般的です。
診療記録や画像検査で事故との因果関係を示す
後遺障害認定では、嗅覚障害の程度だけでなく、その症状が交通事故によって生じたことも審査されます。
そのため、事故直後から嗅覚の異常を医師に伝え、診療記録に残してもらうことが重要です。事故から時間がたって初めて症状を訴えると、交通事故との因果関係を疑われる可能性があります。
鼻骨骨折や鼻腔の損傷がある場合はCT、脳挫傷や嗅球などの損傷が疑われる場合はMRIなどの画像検査も判断材料になります。
ただし、画像上の異常が確認できないだけで、直ちに嗅覚障害が否定されるわけではありません。事故直後からの症状の一貫性、治療経過、嗅覚検査の結果などを総合的に示すことが大切です。
嗅覚脱失・減退で請求できる逸失利益
嗅覚脱失や嗅覚減退によって仕事に支障が生じ、将来得られるはずだった収入が減少する場合は、後遺障害慰謝料に加えて後遺障害逸失利益を請求できます。
逸失利益の計算方法
後遺障害逸失利益は、一般的に次の計算式で算定します。
後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

逸失利益は計算が複雑であるため『交通事故の逸失利益とは?計算式や早見表・計算機で解説【職業別の計算も】』の記事で詳しく解説しています。
嗅覚脱失・減退の労働喪失能力
嗅覚脱失で12級相当が認定された場合の労働能力喪失率は14%、嗅覚減退で14級相当が認定された場合は5%が目安です。
ただし、実際の逸失利益は、被害者の収入や年齢、職業、嗅覚障害による仕事への影響などによって異なります。
調理師、食品開発、香料や化粧品の開発など、嗅覚を使う職業では、担当業務の変更や退職、収入の減少などを具体的に示すことが重要です。一方、嗅覚をほとんど使わない仕事では、労働能力への影響が小さいとして、喪失率や喪失期間が争われることがあります。
事故後に減収がない場合でも、本人の努力や勤務先の配慮によって収入が維持されている場合には、逸失利益が認められる可能性があります。配置転換や業務上の支障、勤務先による配慮などを資料で示しましょう。
交通事故で嗅覚脱失・嗅覚減退となった場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、後遺障害の申請に必要な資料について助言を受けられるほか、逸失利益や慰謝料を含む損害額を算定し、相手方と交渉してもらえます。
ご自身が受け取れるおおよその慰謝料についてを知りたい方は、以下の計算機で確認してみてください。
嗅覚脱失・減退で後遺障害認定を受けるポイント
嗅覚脱失・減退で後遺障害認定を受けるには、事故直後から嗅覚の異常を医師に伝え、症状の経過を診療記録に残してもらうことが重要です。
また、耳鼻咽喉科でT&Tオルファクトメーターによる基準嗅覚検査などを受け、障害の程度を客観的に示す必要があります。頭部や鼻を損傷している場合は、CTやMRIなどの画像検査も事故との因果関係を示す資料になります。
後遺障害診断書を作成してもらう際は、嗅覚障害の程度や検査結果が適切に記載されているか確認しましょう。
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嗅覚脱失・減退の後遺障害認定申請方法
嗅覚脱失・減退の後遺障害認定申請方法は、以下のとおりです。
後遺障害認定申請方法
- 症状固定の診断を受ける
- 医師に後遺障害診断書を作成してもらう
- 嗅覚検査の結果などの必要書類をそろえる
- 事前認定または被害者請求で申請する
- 後遺障害等級の認定結果が通知される
事前認定は、相手方の任意保険会社を通じて申請する方法です。被害者請求は、被害者自身が必要書類をそろえ、加害者側の自賠責保険会社へ請求する方法です。
申請書類は損害保険料率算出機構で調査され、その結果をもとに自賠責保険会社が後遺障害等級や支払額を判断します。
認定結果に納得できない場合は、新たな検査結果や医療資料などを添えて異議申立てを検討します。
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アトムの解決事例
嗅覚減退14級が認定された事例
信号機のない交差点での追突事故の事案。
被害者は優先道路を直進中、一時停止線で停止しなかった相手方車両に追突され、脳挫傷・嗅覚障害・膝の痛み・顔の傷を負い、入院14日、実通院日数357日の治療を受けた。過失割合は相手方80:被害者20だった。
弁護活動の成果
弁護士介入後、後遺障害は脳挫傷痕12級13号と嗅覚減退14級の併合12級の認定を獲得した。
当初の提示額は約330万6000円だったが、交渉により最終的な受取金額が600万円まで増額した(約269万円増額)。
年齢、職業
20~30代、主婦・主夫
傷病名
脳挫傷、嗅覚障害、顔の傷等
後遺障害等級
併合12級(脳挫傷痕12級13号・嗅覚減退14級)
相手側からの提示金額が低い場合であっても、弁護士が交渉することで慰謝料の増額が期待できます。
後遺障害等級の認定結果や保険会社からの提示額に疑問を感じた場合は、示談を成立させる前に弁護士へ相談することが重要です。
交通事故の被害者向け無料相談窓口はこちら
アトム法律事務所では、交通事故でケガをした方への無料法律相談をおこなっています。
- 後遺障害の申請を考えているけど、どうすればいいか分からない
- 相手の保険会社の態度が冷たく感じ、対応に困っている
- 相手の保険会社が提案してくる金額が妥当なのか判断できない
こうしたお悩みは、一度弁護士に相談してみませんか。法律の専門家の立場から、被害者のお悩みにお答えします。ご相談はお電話またはLINEでおこなっております。まずは相談予約をお取りください。
弁護士費用について心配な方は、ぜひ弁護士費用特約の有無の確認してみましょう。
交通事故の弁護士費用特約とは、被害者が加入する任意保険会社が被害者の弁護士費用を支払ってくれるという特約です。補償範囲は約款で定められており、多くのケースで相談料10万円まで、弁護士費用を300万円までを、被害者の代わりに支払ってくれます。

交通事故の弁護士費用は、よほどの重大なケガでないかぎり、特約補償内でおさまることが多いです。そのため、被害者は自己負担なく弁護士を立てることができます。
また、被害者名義でなくても、一定の範囲であれば家族名義の特約が適用されることもあるので、一度確かめてみてください。
そして、もし弁護士費用特約がない場合でも、まずは無料相談で見積もりを取ってもらいましょう。自身で弁護士費用を支払ってでも、弁護士を入れることで増額できる可能性があるなら、弁護士に依頼するメリットは大いにあります。
弁護士への依頼を悩んでいる方は、以下の記事も参考にしてみてください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

