交通事故で傷跡(瘢痕)が残ったら?線状痕等による醜状の後遺障害等級と慰謝料

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交通事故で傷跡

交通事故の怪我で治療を受けても、傷跡(瘢痕)が残ることがあります。

傷跡は傷が治るときに生じる正常な過程ではありますが、傷跡が残ってしまうと、肉体的な損傷だけでなく精神的な苦痛も伴うでしょう。

交通事故で傷跡が残ったら、醜状障害として後遺障害等級の認定を受け、後遺障害慰謝料やその他の賠償金を適切に請求していく必要があります。

本記事では、傷跡の種類や、傷跡で認定されうる後遺障害等級などについて解説します。

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交通事故による傷跡(瘢痕)の種類

交通事故による傷跡(瘢痕)は、その形状や大きさによって、いくつかの種類に分類されます。
傷跡の主な種類は以下の通りです。

  • 線状痕
  • 組織欠損・組織陥没

それぞれについて簡単にみていきましょう。

線状痕

線状痕とは、交通事故で切り傷を負ったり手術したりして皮膚が切れたとき、線のように形が残る傷跡のことです。線状痕は、傷の長さや深さによって、その形状や大きさが変わります。

組織欠損・組織陥没

組織欠損・組織陥没とは、交通事故で皮膚や組織が欠損したときにできる傷跡です。組織欠損・組織陥没は、線状痕や瘢痕よりも重症な傷跡です。

交通事故による傷跡(瘢痕)の後遺障害等級と認定基準

後遺障害等級は1級から14級まであり、等級が高いほど慰謝料や賠償金が高額です。

交通事故による傷跡(瘢痕)は、その大きさや位置、見た目によって後遺障害等級7級・9級・12級・14級のいずれかが認定されます。

ここからは、交通事故による傷跡の後遺障害等級と認定基準を部位別にみていきましょう。

ただし、これから紹介する傷跡の後遺障害等級と認定基準はあくまで目安であり、実際に認められる等級は、ケースによって異なります。

頭・顔・首の傷跡|外貌の醜状障害の等級

外貌の醜状障害とは、頭・顔・首に残る傷跡や火傷跡などの後遺障害です。外貌醜状とも呼ばれます。

外貌醜状は、傷跡の大きさや醜状の程度に応じて後遺障害等級7級・9級・12級に認定されます。

外貌醜状(頭・顔・首)の後遺障害等級

等級内容
7級12号外貌に著しい醜状を残すもの
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの
12級14号外貌に醜状を残すもの

外貌醜状は人目に付く程度以上のものである必要があるので、眉毛や頭髪等で隠れる場合は醜状として認められないことになります。

外貌醜状における認定基準の詳細

外貌醜状における認定基準をより詳しくみていきましょう。

まず、7級12号の「著しい醜状」は、頭・顔・首で詳細が異なります。

7級12号「著しい醜状」の詳細

著しい醜状
手のひら大以上の瘢痕
頭蓋骨に手のひら大以上の欠損
鶏卵大以上の瘢痕
10円硬貨大以上のくぼみ
手のひら大以上の瘢痕

手のひら大とは、「被害者本人の手のひら」の面積のことです。手のひらに、指部分は含みませんので注意してください。

つづいて、9級16号の「相当程度の醜状」は、顔のみに該当します。

9級16号「相当程度の醜状」の詳細

相当程度の醜状
5㎝以上の線状痕

さいごに、12級14号の「醜状」も、頭・顔・首で詳細が異なります。

12級14号「醜状」の詳細

醜状
鶏卵大以上の瘢痕
頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損
10円硬貨大以上の瘢痕
3cm以上の線状痕
鶏卵大面積以上の瘢痕

頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損があっても、人工骨がはめ込まれていれば等級の対象外です。

外貌醜状に関しては、関連記事『交通事故による顔の傷跡(外貌醜状)の後遺障害認定|顔面骨折・神経麻痺も解説』でも深掘りしていますので、あわせてご確認ください。

腕・手の傷痕|上肢の醜状障害の等級

上肢の醜状とは、腕や手に残る傷跡や火傷跡などの後遺障害です。

上肢の醜状は、傷跡の大きさや醜状の程度に応じて後遺障害等級14級に認定されます。

上肢の醜状障害の後遺障害等級

等級内容
14級4号上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

上肢の醜状は露出面に限られているので、肘関節以上の場所にある傷跡は醜状として認められないことになります。

上肢の醜状障害における認定基準の詳細

上肢の露出面とは、上腕部・肩の付け根から指先までです。これらの部分に手のひら大の醜状が残った時、14級4号が認定されることになるでしょう。なお、手のひら大とは「被害者本人の手のひら」の面積のことで、指先は含みません。

瘢痕が手のひらの3倍以上である場合は、著しい醜状となり12級相当が認定される可能性があります。

脚・足の傷跡|下肢の醜状障害の等級

下肢の醜状とは、脚や足に残る傷跡や火傷跡などの後遺障害です。

下肢の醜状は、傷跡の大きさや醜状の程度に応じて後遺障害等級14級に認定されます。

下肢の醜状障害の後遺障害等級

等級内容
14級5号下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

下肢の醜状は露出面に限られているので、膝関節以上の場所にある傷跡は醜状として認められないことになります。

下肢の醜状障害における認定基準の詳細

下肢の露出面とは、大腿・足の付け根から足の背部までです。これらの部分に手のひら大の醜状が残ったら、14級5号が認定されることになるでしょう。なお、手のひら大とは「被害者本人の手のひら」の面積のことで、指先は含みません。

手のひら3倍以上の瘢痕が残った場合は、著しい醜状となり12級相当が認定される可能性があります。

交通事故による傷跡(瘢痕)の慰謝料

認定された後遺障害等級に応じて、後遺障害慰謝料の請求が可能になります。頭・顔・首に残る傷跡(外貌醜状)は、体に残る傷跡(上肢や下肢の醜状)よりも後遺障害慰謝料が高額です。

これから紹介する傷跡の後遺障害慰謝料はあくまで目安であり、実際に認められる金額はケースごとに異なります。交通事故による傷跡の後遺障害慰謝料を請求する場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

外貌醜状の後遺障害慰謝料

外貌醜状の後遺障害慰謝料は、自賠責基準の場合で94万円~419万円、弁護士基準の場合で290万円から1,000万円です。

外貌醜状の後遺障害慰謝料

等級自賠責基準弁護士基準
7級419万円
(409万円)
1,000万円
9級249万円
(245万円)
690万円
12級94万円
(93万円)
290万円

()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用

上肢の醜状障害の後遺障害慰謝料

上肢の醜状障害の後遺障害慰謝料は、自賠責基準の場合で32万円、弁護士基準の場合で110万円です。

上肢の醜状障害の後遺障害慰謝料

等級自賠責基準弁護士基準
14級32万円110万円

下肢の醜状障害の後遺障害慰謝料

下肢の醜状障害の後遺障害慰謝料は、自賠責基準の場合で32万円、弁護士基準の場合で110万円です。

下肢の醜状障害の後遺障害慰謝料

等級自賠責基準弁護士基準
14級32万円110万円

交通事故による傷跡(瘢痕)に関するよくある質問

交通事故による傷跡(瘢痕)について、よくある質問をまとめて紹介します。

Q.傷跡の治療費は誰が払う?

A.交通事故による傷跡の治療費は、多くの場合、加害者側の任意保険会社が負担します。

ただし、任意保険会社が治療費の支払いを認めない場合は、被害者本人が健康保険を使用するなどして支払う場合があります。

治療費については、こちらの関連記事『交通事故被害者の治療費は誰が支払う?立て替えは健康保険を使う!過失割合との関係は?』で深掘り解説しています。参考にご覧ください。

Q.傷跡の治療なら皮膚科に行くべき?

A.傷跡の治療は、一般的に形成外科で行われることが多いです。

もっとも、場合によっては、皮膚科、整形外科など、さまざまな科で行う場合もあるでしょう。傷跡の種類や大きさによって、適した科は異なります。傷跡の治療を検討する場合は、医師に相談して、適切な科を受診してください。

Q.2個以上の傷跡が残ったら等級はどうなる?

2個以上の瘢痕や線状痕が隣り合ったり、相まって1個の傷跡と同程度以上の醜状になったりしている場合、2個以上の傷跡の面積や長さを合算して等級が判断されることになります。

もっとも、どのくらい傷跡が隣り合っているか、どのくらい傷跡が相まっているかに関しては具体的な基準は示されていません。個々の状態が確認され最終的な等級の判断が出されることになるでしょう。

Q.男女の違いは傷跡の慰謝料に影響する?

現在、男女の違いで傷跡の慰謝料額に違いはありません。性別に関係なく、傷跡は同一の基準で後遺障害等級が認定されます。

かつては、同じ傷跡でも女性より男性の後遺障害等級が低く取り扱われていました。「顔面の醜状痕に男女差を認めることは男女平等を定めた憲法に違反する」として、男女差の解消などを内容とする見直しにより、改正が行われたのです。

Q.傷跡が仕事に影響したら慰謝料は増額する?

A.傷跡が仕事に影響する場合、慰謝料が必ず増額されるとはいえません。傷跡が仕事に影響した場合の補償としては、慰謝料ではなく「逸失利益」が認められる可能性はあるでしょう。

ただし、傷跡による逸失利益が認められるかどうかは、個々の事情を踏まえて決められます。たとえば、芸能人やモデル、ホステスやホストといった外貌が重視される職業、保険の外交員や飲食店等の接客業などの場合に逸失利益が認められる可能性があります。

なお、逸失利益が認められるほどの傷跡ではないものの、個々の事情を反映する意味合いで慰謝料が多少増額されることはあるでしょう。

いずれにせよ、傷跡が仕事に影響すると感じた場合は一度、弁護士に相談して、慰謝料増額の可能性を探ってみてください。

弁護士に相談する前に以下の計算機を使えば、逸失利益と慰謝料の目安が知れます。

こちらの計算機はあくまで目安であるものの、加害者側の任意保険会社が提示してきた金額よりも計算機の結果の方が高額になれば、弁護士に相談すべきといえるでしょう。

逸失利益や慰謝料の計算の仕組みは複雑ですが、計算機の使い方は簡単です。事前の登録なども不要なので、気軽にお使いください。

交通事故による傷跡(瘢痕)の慰謝料を増やす方法

交通事故による傷跡(瘢痕)の慰謝料を増やすには、いくつかの方法があります。

適切な後遺障害等級を受ける

交通事故による傷跡が後遺障害として認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益が請求できるようになります。

ただし、傷跡といっても、最も重い後遺障害等級で7級、最も軽い後遺障害等級で14級と等級に幅があります。

後遺障害慰謝料や逸失利益の金額は、認定された等級に大きく左右されるものです。傷跡の実態に即した適切な等級が認定されていなければ、適切な慰謝料を受け取ることができません。

後遺障害等級の具体的な申請方法に関しては、こちらの関連記事『交通事故で後遺障害を申請する|認定までの手続きの流れ、必要書類を解説』をご覧ください。

傷跡の治療費も請求する

交通事故による傷跡の治療費は、必要かつ相当な範囲であると認められれば加害者側の任意保険会社に負担してもらえます。治療費を請求する場合は、治療費の領収書を保管しておきましょう。

ただし、症状固定以降に傷跡の治療を行う場合、被害者の自己負担となるのが原則なので注意してください。

もっとも、状況次第では、将来治療費として任意保険会社が認めてくれる可能性もあります。傷跡の治療費が認められる可能性があるかどうかは、一度弁護士に相談してみてください。

弁護士に相談する

交通事故による傷跡の慰謝料を請求する場合、弁護士に相談することをお勧めします。

加害者側の任意保険会社は、被害者が本来であれば受け取れる金額より相当低い慰謝料しか提示してきません。

先述した後遺障害慰謝料を例にみてみるとよくわかるでしょう。

たとえば、交通事故による傷跡が後遺障害14級に認定された場合、保険会社は自賠責基準の32万円か、それに少し上乗せした程度の後遺障害慰謝料しか提示してきません。

一方、弁護士が示談交渉に介入すると、弁護士基準の110万円に限りなく近い金額を保険会社が認めてくれる傾向にあります。弁護士基準の金額は、被害者だけで示談交渉しても実現できません。

慰謝料金額相場の3基準比較

弁護士は、被害者の権利を最大限に保護し、適切な慰謝料を獲得できるようにサポートします。

弁護士への相談なんて大げさではないかと感じる方は、下記の関連記事をご覧ください。弁護士は意外と身近な存在です。交通事故で怪我した時こそ弁護士は頼りになります。

関連記事

交通事故で傷跡(瘢痕)が残ったら弁護士相談

交通事故で傷跡(瘢痕)が残ったら、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、交通事故の法律に精通しており、被害者の権利を最大限に保護するために活動します。

交通事故で傷跡が残った場合、加害者側の保険会社から慰謝料を請求することができます。しかし、保険会社は、できるだけ少ない金額で済ませようとします。そのため、弁護士に相談することで、適切な慰謝料を獲得できる可能性が高くなります。

また、弁護士は、交通事故による傷跡の治療費や休業損害などの損害賠償を漏れなく請求することもできます。交通事故で傷跡が残った場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

アトム法律事務所では、弁護士による無料の法律相談を実施中です。下記バナーより、法律相談の予約をお取りください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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