遷延性意識障害で障害者手帳は取得できる?取得条件や申請方法、障害年金と賠償金の関係

更新日:

遷延性意識障害は

遷延性意識障害とは、いわゆる植物状態のことで、重度のこん睡状態をさします。

遷延性意識障害となった本人は自発的な生活ができなくなるので、家族は医療費や介護費用などの出費が強いられることとなるでしょう。こういった場合、遷延性意識障害で身体障害者手帳が交付されると、様々な公的サービスが受けられるようになります。

もっとも、重度のこん睡状態というだけで手帳が交付される訳ではなく、一定の条件を満たしていなければ身体障害者手帳の交付は受けられません。

本記事では、遷延性意識障害で身体障害者手帳を取得できる条件や申請方法を簡単に解説します。また、遷延性意識障害の原因が交通事故であった場合なら弁護士に相談すべき理由についても解説していますので、最後までご覧ください。

損害賠償について

関連記事『交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になった。賠償金と家族がすべきこと』では、遷延性意識障害を負ったことの損害賠償について解説中です。相手方との示談前という方は、関連記事もご覧のうえ、弁護士依頼をご検討ください。

交通事故の無料法律相談
相談料 無料
毎日50件以上のお問合せ!

遷延性意識障害で障害者手帳は取得できる?

遷延性意識障害では身体障害者手帳が取得可能

遷延性意識障害で障害者手帳が取得できる可能性は極めて高いといえます。

次のような6つの条件を満たす場合、遷延性意識障害と診断されます。

  1. 自力で移動できない
  2. 自力で食事がとれない
  3. 失禁してしまう
  4. 声は出ても、意味のある発語ではない
  5. 眼を開く、手を握るなどかろうじて反応はあるが、それ以外の意思疎通はできない
  6. 眼球が物を追うことはあってもその物を認識できない

こうした遷延性意識障害は、交通事故の後遺障害1級(要介護)に認定されるほどの重い障害です。

なお、障害者手帳は、「身体障害者手帳」、「精神障害者保健福祉手帳」、「療育手帳」の3種類です。このうち、遷延性意識障害では身体障害者手帳が交付されることになるでしょう。

身体障害者等級の認定が手帳取得の条件

重度のこん睡状態だからといって、身体障害者手帳を取得できるわけではありません。

重度のこん睡状態に陥る原因となった怪我の治療が終了したにもかかわらず、医学的にこん睡状態が続いている場合、手帳が交付される可能性があるのです。

遷延性意識障害では、一定以上の身体障害者等級に該当すると認められる必要があります。

身体障害者等級は、身体障害者福祉法施行規則別表第五号の「身体障害者障害程度等級表」において、障害の種類と程度に応じて1級から7級に分けられています。そして、「身体障害者等級1級から6級」は障害者手帳の交付対象です。

遷延性意識障害など意識がない場合、身体障害者障害程度等級表の「肢体不自由」の基準が適用され、かつ障害者手帳交付の条件となる「身体障害者等級1級から6級」に該当する可能性が高いといえます。

遷延性意識障害でなぜ障害者手帳を取得すべき?

障害者手帳があると様々なサービスが受けられる

遷延性意識障害で身体障害者手帳があると、以下のように様々なサービスが受けられます。

内容
医療費等の助成医療費
車椅子や補聴器等の補装具
リフォーム費用 等
税金の軽減所得税
住民税
自動車税 等
公共料金の割引公共交通機関の運賃
高速道路の利用料金
NHKの放送受信料
携帯電話会社の料金
公共施設の入場料 等

障害者手帳の申請の仕方

障害者手帳のうち、身体障害者手帳の申請方法は、福祉事務所か市役所に申請します。申請には以下の書類を用意してください。

主な申請書類

  • 申請書
  • 都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が指定する医師の診断書・意見書
  • 身体に障害のある方の写真

詳しい申請方法については、お住いの市町村の窓口にお問い合わせください。

後遺障害等級と障害者手帳の疑問3選

(1)後遺障害等級認定と同時に障害者手帳が交付される?

後遺障害等級が認定されたからといって、自動的に障害者手帳が交付されるわけではありません。

交通事故の後遺障害等級認定をするのは損害保険料率算出機構という第三者機関です。そして、障害者手帳の交付可否を決定するのは市区町村といえます。

等級認定と障害者手帳は全く別物です。

後遺障害等級認定には申請手続きが必要になります。これから後遺障害等級認定を受けるという方は、関連記事『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』にて全体の流れを掴んでみてください。

また、弁護士であれば後遺障害等級認定の手続きをサポートできます。今後の示談交渉も見据えて、早めに弁護士へ相談・依頼をしておくと良いでしょう。

交通事故の無料法律相談
相談料 無料
毎日50件以上のお問合せ!

(2)障害者手帳を取得すれば後遺障害慰謝料は高くなる?

障害者手帳を持っていることは、後遺障害慰謝料の増額理由には直結しません。

相手の任意保険会社に対してより多くの後遺障害慰謝料を請求するためには、法的に適正な金額まで増額する交渉が必要といえます。

ここで重要なことは後遺障害慰謝料は誰が計算するかで金額が変わるということです。慰謝料の金額には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3基準があります。自賠責基準や任意保険基準は、相手の保険会社が慰謝料を算定する時の基準です。一方で弁護士基準は、裁判所や弁護士など法律の専門家が慰謝料を算定する時の基準になります。

慰謝料金額相場の3基準比較

後遺障害慰謝料を多く受けとるには弁護士基準で計算・請求する必要があり、そのためには弁護士の存在が欠かせません。

関連記事は、弁護士への依頼を検討する上で役立つ記事になっているので、参考にしてみてください。

(3)損害賠償金と障害年金は両方もらえる?

交通事故の加害者からの賠償金を受け取っている場合、二重取りにならないよう、障害年金が調整されます。

交通事故の損害項目に「逸失利益」があります。この逸失利益を受け取っている場合には、障害年金が3年間支給停止することで調整がなされるのです。

重要なことは、まず逸失利益について適切に受けとることといえます。逸失利益とは、後遺障害によって労働能力を喪失したことで、得られなくなった将来の収入を補てんするものです。

遷延性意識障害となった場合には労働能力喪失率100%、つまり全く働くことができなくなったものとして考えられるため、逸失利益は高額になりやすいといえます。

相手の保険会社は、「遷延性意識障害の余命は長くない」「被害者の事故前収入はもっと低いはずだ」などといって、逸失利益を不当に低く見積もってくる可能性もあります。

そうした心無い言葉に負けず、毅然とした態度で臨むためにも弁護士を立てることをおすすめします。逸失利益の計算方法は下記の記事を参考にしてみてください。

遷延性意識障害の原因が交通事故なら弁護士にご相談ください

ご家族が交通事故で遷延性意識障害となったら、障害者手帳の申請とともに弁護士相談もご検討ください。弁護士であれば、被害者にとって妥当な損害賠償金の獲得に向けたサポートが期待できるでしょう。まずは、無料相談からはじめて、弁護士に今後の対応について聞いてみましょう。

アトム法律事務所では、交通事故の被害者やそのご家族からの無料法律相談を受付中です。被害者のケアやお見舞いに時間をしっかりと取れるよう、電話やLINEでの相談窓口となっています。

交通事故の無料法律相談
相談料 無料
毎日50件以上のお問合せ!

本人の自発的な生活ができないので、事故後の生活が一変して不安が大きいのは当然、医療費や介護費用なども大きくなります。損害賠償金の受け取りだけで、これらの不安がすべて解消される訳ではありませんが、交通事故の被害を受けたら妥当な金額を受け取るべきです。

弁護士費用が心配な方へ

まず、弁護士費用についても無料の法律相談にて弁護士に直接おたずねください。弁護士がわかりやすくご案内いたします。

その際には、「弁護士費用特約」の有無がわかっているとよりスムーズです。

弁護士費用特約とは、被害者の弁護士費用を保険会社が支払うという特約です。約款しだいですが、おおむね法律相談料として10万円、弁護士費用として300万円を上限とする場合が多いでしょう。

弁護士費用特約とは何か

遷延性意識障害の場合は、弁護士費用特約の上限を超える弁護士費用になる可能性もあります。特約の範囲を超えた分は、被害者自らでお支払いただくことになるでしょう。具体的には損害賠償金がいくらになるかで変わるため、損害賠償金の見積もりと併せて弁護士がお伝えします。

もっとも、「弁護士費用を支払うことで、かえって被害者の手元に入るお金が減った」というマイナスが生じるような契約にならないよう、弁護士からご案内します。

弁護士費用を支払ってもなお、相手の任意保険会社に対して増額請求できる可能性が高いのです。

交通事故の無料法律相談
相談料 無料
毎日50件以上のお問合せ!

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

突然生じる事故や事件に、
地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。