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交通事故慰謝料の「任意保険基準」とは?慰謝料3つの基準と計算方法を解説

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士 岡野武志

2020年4月1日改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故の慰謝料には3つの基準があります。
自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(別名:裁判基準)です。

交通事故で負ったケガの治療が終わったあと、相手方の任意保険会社と示談交渉が開始されます。
そのとき、相手方の提示する賠償金の金額の基準が「任意保険基準」であり、これは被害者の方が本来もらうべき金額の基準と比べると非常に低い水準のものとなります。

交通事故慰謝料の任意保険基準について解説し、慰謝料を増額する方法などについても紹介します。

交通事故慰謝料の任意保険基準、弁護士基準、自賠責基準とは?

任意保険基準

損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」によれば、2018年3月末の段階で、日本の家庭用の普通乗用車のうちおよそ8割の車両が対人賠償保険に加入していると言います。
交通事故に遭ったとき、その多くは相手方の任意保険会社と賠償などのやり取りを行うことになるわけです。

交通事故の賠償は、示談交渉によって取り決められていくのが通常です。
示談とは、当事者同士の話し合いによって民事的な紛争を解決するという手続きです。
平たく言ってしまえば、裁判などをせず、事故被害者と加害者の代理となる相手方任意保険の担当者とのあいだで話し合いをして賠償金の金額を決定。
その支払いを終えた段階で、加害者の責任は果たされたと約束するという手続きです。

交通事故の多くは、ケガの治療が終わった段階で示談交渉が始まります。
相手方保険会社は最終的な賠償金の金額を自社で算定し、事故被害者に提示します。
このとき提示される金額の基準が「任意保険基準」です。

任意保険会社はあくまで営利組織です。
事故被害者への支払い金額が大きくなればなるほど、自社の利益は減ってしまいます。
任意保険基準は任意保険会社ごとにそれぞれ独自に算定基準が定められていますが、そのいずれもが「被害者の方が本来受けとるべき金額の基準」と比較すると低額なものとなります。

弁護士基準(裁判基準)

弁護士基準は、裁判基準とも呼ばれる算定の基準で、過去に開廷され蓄積されてきた交通事故裁判の判例から導き出された算定基準です。
裁判例に則った基準ですから、日本の法律上、事故被害者の方が本来受けとるべき金額の基準とも言えるでしょう。

この算定基準は、日本弁護士連合会(日弁連)の交通事故相談センターが発行する『交通事故損害額算定基準(通称:青本)』や『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤い本)』といった書物にまとめられており、全国の交通事故実務に携わる弁護士のあいだで共有されています。

自賠責基準

普通乗用車のうちおよそ8割の車両が対人賠償保険に加入していると先述しました。
逆にいえば、残り2割の車両については任意保険に加入していないということになります。

事故加害者が任意保険に加入していない場合、任意保険を介さずに直接加害者本人と示談を締結する必要があります。
しかし加害者と連絡がつかなかったり、加害者の資力が乏しくて賠償金を受けとれないという事態に陥ることもよくあります。
事故で負った被害について十分な補償がなされない場合があるのです。

ただ、全自動車は自賠責保険への加入が義務付けられています。
自賠責保険は、事故被害者が最低限の補償を受けとれるよう整備された保険です。
事故被害者が相手方の自賠責保険に請求をすれば、一定限度の補償を受けることができるようになります。

この自賠責保険から支払われる金額の基準を自賠責基準と言います。
事故被害者に最低限の補償をすることを目的としているため、自賠責基準の金額は非常に低額です。
先に挙げた任意保険基準や弁護士基準よりも低い金額となります。

交通事故の傷害、後遺障害、死亡慰謝料の任意保険基準と弁護士基準の比較

交通事故慰謝料の種類とは?

慰謝料とは「精神的な苦痛に対する賠償金」のことを言います。
交通事故の被害者になったときには慰謝料の他にも、病院での治療にかかった費用や、治療のために休業した分の給料の補償、将来にわたっての減給分の補償など、様々な費目での賠償金を受けとれます。

交通事故被害者になったときの、賠償金の費目、賠償の流れなどについて知りたい方は「交通事故の賠償金を解説|被害者が押さえるべき5つのポイント」をご覧ください。

交通事故における慰謝料は大きく分けて3つあります。
傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料です。

傷害慰謝料の任意保険基準と弁護士基準

交通事故で傷害を負ったことにより発生した精神的な苦痛に対する賠償金が、傷害慰謝料です。
傷害慰謝料は、任意保険基準と裁判基準(弁護士基準)、どちらの基準についても入通院期間・日数に応じて金額が算定されます。

任意保険基準の傷害慰謝料は、任意保険会社がそれぞれ独自に基準を設けているため、正確な算定基準は不明となります。
ただ以前は保険会社のあいだで統一された基準が用いられており、現在もそれを準用し算定している保険会社は多いようです。
任意保険会社がかつて使っていた算定基準は以下の通りとなります。

旧任意保険支払基準による入通院慰謝料
旧任意保険支払基準による入通院慰謝料

一方、弁護士基準の傷害慰謝料は軽傷の場合と重傷の場合とで別れています。
軽傷の場合と言うのは、程度の軽い神経症状(自覚症状のみのむち打ちなど)、軽い打撲や挫創などを指します。
重傷というのは、大腿骨の複雑骨折や脊髄の損傷を伴う骨折、苦痛や身体の拘束が強い症状などを指します。
軽傷や重傷の間ぐらいの傷害については、重症の基準の7~8割程度の基準。
さらに、脳の損傷や内臓の損傷、生命の危険が非常に高く絶対安静を必要とする期間が長い重大な傷害などについては、重症の場合の金額基準をさらに2割程度まで引き上げることもあります。
算定基準は、それぞれ以下の通りとなります。

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

入院期間なし、通院期間3か月の場合、任意保険基準では37万8000円。
軽傷の弁護士基準では、53万円。
重傷の弁護士基準では、73万円です。
入院期間1か月、通院期間6か月の場合、任意保険基準では83万2000円。
軽傷の弁護士基準では、113万円。
重傷の弁護士基準では、149万円です。

任意保険基準と弁護士基準とを比較すると、軽傷の場合で2~4割ほど、重症の場合で2倍近く、裁判基準の方が金額が高くなるのがわかります。

後遺障害慰謝料の任意保険基準と弁護士基準

交通事故でケガを負った際、治療を続けても一定の症状が残り、完全な回復には至らないことがあります。
これ以上治療を継続してもケガの回復に至らないという状態になることを「症状固定」と言います。

症状固定後に残った症状のことを一般用語として「後遺症」と言いますが、この後遺症のうち一定の要件を満たし、特別な補償の対象となるような症状のことを「後遺障害」といいます。

後遺症と後遺障害の違い、後遺障害等級や認定の流れについてくわしく知りたい方は「遺障障害認定の4つのポイント」の記事をご覧ください。

後遺障害が残った場合には、傷害慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」がもらえます。
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったという精神的な苦痛に対する賠償金です。

後遺障害慰謝料は等級ごとに慰謝料の金額が決まっています。
自賠責基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料の基準は以下の通りです。

後遺障害慰謝料

等級 自賠責弁護士
1級・要介護1,650
(1,600)
2,800
2級・要介護1,203
(1,163)
2,370
1級1,150
(1,100)
2,800
2級998 (958)2,370
3級861 (829)1,990
4級737 (712)1,670
5級618 (599)1,400
6級512 (498)1,180
7級419 (409)1,000
8級331 (324)830
9級249 (245)690
10級190 (187)550
11級136 (135)420
12級94 (93)290
13級57 (57)180
14級32 (32)110

*単位は万円
*括弧内は2020年3月31日以前に発生した事故の基準。

任意保険基準は、自賠責基準と弁護士基準のあいだの金額となりますが、保険会社によっては自賠責基準とほとんど変わらないような算定基準を設けている場合もあります。

症状別の慰謝料相場金額についてくわしく知りたい方は「【症状別】交通事故慰謝料相場」をご覧ください。

死亡慰謝料の任意保険基準と弁護士基準

死亡慰謝料は、死亡事故においてもらえる慰謝料です。
死亡時に負った精神的な苦痛に対する賠償金として、まず死亡した本人に慰謝料が認められるほか、親族を喪ったという精神的な苦痛に対する賠償金として、父母、配偶者、子どもについてもそれぞれ固有の慰謝料が認められます。

任意保険基準の死亡慰謝料は、任意保険会社がそれぞれ独自に定めています。
相場としては、事故被害者の立場ごとに、遺族の分も含めておおむね以下の通りとなっています。

任意保険基準の死亡慰謝料

被害者の立場金額
一家の支柱1500万円~2000万円程度
母親・配偶者1500万円~2000万円程度
その他の場合1200万円~1500万円程度

弁護士基準(裁判基準)の死亡慰謝料も、事故被害者の立場ごとに定められています。
遺族の分も含め、相場は以下の通りです。

弁護士基準の死亡慰謝料

被害者の立場金額
一家の支柱2800万円
母親・配偶者2500万円
その他の場合2000万円~2500万円

弁護士基準の場合、父母、配偶者、子ども以外の親族であっても、それと実質的に同じような身分関係があり、 被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には補償の対象になります。

また弁護士基準では、たとえば飲酒運転や無免許運転など、事故発生の要因が悪質であるなどの事情がある場合、さらに慰謝料が増額される可能性もあります。

例えば、東名高速飲酒事故として有名な事故の民事裁判では、基準額の2倍弱に近い慰謝料が認められています。

事故の概要女児2名を後部座席に乗せた被害者車両の後方から、加害者車両が追突したという事故。
加害者は飲酒し酩酊状態だった。
被害者の女児2名は事故直後はまだ生きており、その後の車両火災によって焼死。
また事故加害者は飲酒運転が常態化しており、直前に料金所の人から休むよう言われたにもかかわらずこれを無視して本件事故を起こした。
判決慰謝料の増額を認めた。
被害者1名につき3900万円の慰謝料が認められた。

*東京地方裁判所 平成15年7月24日判決 事件番号 平成14年(ワ)第22987号 

このほか、飲酒運転の上、高速道路を逆走し被害者車両と正面衝突した事例、危険運転行為により被害者が212メートルにわたって引きずられ死亡した事例、事故後に逃走した上、刑事裁判の場で虚偽の証言をする等した事例で慰謝料の増額が認められています。

ただし「事故後に加害者が見舞いに来なかった」等、単に不誠意・不誠実な態度をとったという程度の理由では、慰謝料の増額は認められない場合が多いです。

任意保険基準は弁護士基準よりも低額な基準!

いずれの慰謝料についても、任意保険基準の金額は弁護士基準の金額よりも低額であることがお分かりいただけるかと思います。
繰り返しになりますが、被害者の方が本来受けとるべき慰謝料の基準は弁護士基準です。
相手方任意保険会社から提示された金額をそのまま鵜呑みにすることがないよう注意すべきといえます。

交通事故慰謝料計算機

交通事故の慰謝料についてのお悩み相談では、相手方保険会社から提示された金額が適正なのかどうか疑問に思っている方が多いです。
当サイトでは、交通事故の慰謝料計算機を公開しています。

こちらの慰謝料計算機では、治療期間や年収など必要な事項を入力するだけで弁護士基準での賠償金の金額を手軽に計算することができます。
会員登録など、面倒な手続きは一切不要です。
ご自身の慰謝料についてお悩みの方はぜひご利用ください。

交通事故慰謝料の計算方法についてさらに詳しく知りたい方は「慰謝料の計算方法|慰謝料は弁護士基準が正解」の記事をご覧ください。

交通事故慰謝料の増額事例を紹介

具体的に、任意保険基準からどれくらい増額し得るか。
アトム法律事務所が過去にとり扱った実際の交通事故事案から、増額の具体例をいくつか見てみましょう。

事例① 3000万円以上の増額となった事例

事故の概要交差点において加害者車両が左折。
交差点を直進しようとしていた被害者自転車を巻き込んだという事故。
被害者は頭がい骨骨折、脳挫傷の傷害を負い、聴力の低下などの後遺症が残った。
後遺障害7級に認定された。
相手方保険会社提示額3537万7384円
最終回収額7350万円
増額金額3812万2616円

事故が重大で、被害者の負ったケガが重い場合、任意保険基準でも相当高額な金額が提示されます。
そのため大幅に増額する余地があるにも関わらず、任意保険会社からの提示額で納得してしまうというケースも数多くあります。

こちらの事例では、相手方保険会社からまず3500万円を超える金額の提示がありました。
弁護士が加入したところ、最終的には7350万円での示談となり、ほぼ倍に近い増額となりました。

事例② 任意保険基準から4倍近い増額となった事例

事故の概要交差点を横断中の被害者に、信号無視の加害者バイクが突っ込み被害者を轢いたという事故。
被害者は鎖骨を骨折。
肩関節に機能障害が残り、後遺障害10級10号に認定された。
相手方保険会社提示額621万8724円
最終回収額2300万円
増額金額1678万1276円

任意保険会社によっては、自賠責基準とほとんど変わりのないような金額を提示してくる場合もあります。
この事例では、弁護士介入後、示談金の金額が4倍近くに増額しました。

適切な過失割合を主張する、適切な後遺障害認定を受けるなどすることで、大幅な増額となる可能性があります。
相手方任意保険会社から「今回のケガは後遺障害にならない」などと言われていたり、事故の状況などについて自身の見解とは違った主張をされ過失割合に争いがあったりする場合には、早急に弁護士に相談するべきだと言えるでしょう。

事例③ 軽傷の事例

事故の概要被害者が路肩に停車中、加害者車両が横合いから追突した事故。
被害者は頚椎を捻挫した。
後遺障害なしの軽傷事例。
相手方保険会社提示額42万7537円
最終回収額74万1411円
増額金額31万3874円

軽傷の事例でも、弁護士に相談するべきだと言えます。
上記の事例は後遺障害の残らなかった軽傷事例ですが、弁護士費用を差し引いても依頼者に15万円以上の利益が発生しました。

また弁護士費用特約が使える場合、弁護士費用を実質的に1銭も負担しなくて良い場合もあります。
その場合、弁護士介入による増額分はすべて被害者の方の利益となります。

なお、「交通事故の慰謝料事例を紹介|増額のための3つのポイント解説」で他の事例も紹介しているので、気になる方はぜひご参考になさってください。

交通事故慰謝料のお悩みは弁護士に相談!

メリット① 慰謝料が増額される!

交通事故の示談交渉において相手方任意保険会社が提示する額は、任意保険基準での金額です。
任意保険基準は、事故被害者の方が本来もらうべき金額よりも低額な基準です。
しかし事故被害者自らが弁護士基準での支払いをするよう増額交渉を行っても、任意保険会社が首を縦に振ることは無いでしょう。
おそらく、「弁護士基準は裁判を行った場合に得られる金額です」などと言われ、再度任意保険基準での金額を提示されることになります。

最終的に賠償金を支払うのは、相手方任意保険会社です。
任意保険会社が自社基準の金額を固辞した場合、いつまでも賠償金が支払われないという事態に陥ってしまいます。

民事裁判を提起して被害者側が勝訴すれば、相手方保険会社に対して強制力を持って裁判基準での支払いを要求できます。
ただ、被害者の独力で裁判を提起するのは大変な手間となります。(裁判の起こし方・事前準備
ケガの回復後、日常生活を営みながら裁判を起こすのは、現実的とは言えないのです。
相手方保険会社もそれを知っているため、被害者に弁護士がついていない場合には強気に自社基準での金額を提示してくるわけです。

弁護士に依頼すれば、相手方保険会社に対し、過去の裁判例や類似事故の過去の増額事例など、増額すべき具体的根拠を提示できるようになります。
また、弁護士に依頼したという事実は、任意保険会社にとってはある種のプレッシャーとなります。
被害者ひとりの場合とは違い、民事裁判を起こされるという可能性が現実的になってくるわけです。
仮に民事裁判を提起された場合、裁判基準での支払いを命令されるのは必定となります。
任意保険会社としても、弁護士からの増額交渉は無下にできないのです。

弁護士基準での賠償金の支払いを受けたいならば、弁護士に相談するべきといえるでしょう。

メリット② 示談交渉の手間が軽減される

本来、ケガの治療に専念しなければならない状況で、任意保険会社との交渉や各種必要書類の作成などを行うのは非常に大変です。
またケガの治療後には示談交渉が本格化しますが、それと並行し日常生活の再建をしていかなければなりません。

弁護士は賠償金受け取りまでの手続きを代理することができます。
弁護士が窓口となることで被害者の方の負担を軽減することができるのです。
また、交通事故紛争の実務経験が豊富な弁護士に頼めば、手続きや書類の作成について間違いが発生する可能性を低くすることができます。

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