自賠責保険なら過失割合の減額が軽減。限度額や慰謝料計算の注意点

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自賠責保険なら

交通事故の発生について被害者にも過失がある場合は、被害者の損害賠償金について減額がなされます。

しかし、自賠責保険に対する損害賠償請求では、過失割合による減額がなされなかったり、減額の程度を抑えることができるのです。

もっとも、自賠責保険の制度からすると、被害者に過失がある場合には常に自賠責保険に損害賠償請求をした方が良いとは限りません。

本記事では、自賠責保険を利用した場合の過失割合の減額のルールや、自賠責保険利用による損害賠償請求を行う際に知っておくべきことを解説しています。

交通事故の被害に遭ったものの、自身にも過失があるかもしれないと考えている方は、ぜひご覧ください。

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自賠責保険における過失割合の影響とは?

交通事故の損害賠償では、被害者に過失があるとその分賠償額が減らされるのが通常ですが、自賠責保険ではこの取り扱いが異なります。

被害者救済を重視する自賠責では、過失があっても補償が大きく減らされない仕組みとなっています。

自賠責保険では過失割合による減額方法が異なる

民法上の損害賠償では、被害者に1割でも過失があれば、その分の賠償額が減額されます。しかし、自賠責保険では、被害者に過失割合が7割以上ある「重過失」の場合のみ減額される(重過失減額)という特例的な扱いが存在します。

以下のように、自賠責保険の支払基準では、被害者に重大な過失がない限り、過失割合による減額は限定的です。

被害者の過失割合傷害の場合後遺障害・死亡の場合
7割~8割未満2割減額2割減額
8割~9割未満2割減額3割減額
9割~10割未満2割減額5割減額

たとえ過失が9割あったとしても、傷害の場合は2割しか減額されないというのが自賠責保険の特徴です。

このような仕組みとなっていることから、被害者に大きな過失があるケースでも、自賠責保険を活用することで一定の補償を受けられる可能性があります。

なお、請求方法には「加害者請求」と「被害者請求」がありますが、被害者請求を行うことで、被害者が自ら直接請求することも可能です。

自賠責保険への請求方法や必要書類に関しては『自賠責保険とは?請求の流れと必要書類の書き方|被害者請求・加害者請求を解説』の記事を確認してください。

被害者の過失が100%だと自賠責保険を利用できない

運転中に停止中の車両に追突した場合や自損事故など、被害者本人(ここでは交通事故で死亡・怪我した人という意味)の過失割合が100%の事案では、自賠責保険からの支払いを受けられません

  • 赤信号を無視して交差点に進入し、事故に遭った場合
  • 一方通行を逆走していて衝突した場合
  • 停車中の車に追突した場合(被害者が追突側)
  • 単独の自損事故(電柱に衝突したなど)

このような事故では、自賠責保険の補償対象とはならないため、自分の任意保険に付帯されている「人身傷害保険」や「労災保険」など、別の制度を利用して補償を受ける必要があります。

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過失割合がある場合の自賠責保険利用の注意点

自賠責保険は、過失割合が大きい場合でも一定の補償を受けられる点で有利ですが、すべての損害を十分にカバーできるわけではありません。

ここでは、自賠責保険を利用する際に特に注意しておきたいポイントを3つ紹介します。

自賠責保険の補償額には限度額がある

自賠責保険では、補償される金額に上限が設けられており、損害の実額がいくら大きくても、上限を超えての支払いは受けられません。

支払限度額
傷害分120万円
後遺障害分75万円~4,000万円
死亡分3,000万円

※後遺障害分の限度額は、認定された後遺障害等級に応じて異なる

たとえば、治療費や休業損害が合計150万円かかった場合でも、自賠責保険から支払われるのは120万円が上限となります。

限度額の対象となる損害は以下のようなものです。

  • 傷害分の費目
    治療関係費(治療費、手術費、入院費など)、入院に要した雑費、通院交通費、看護料、義肢等の費用、文書料、休業損害、入通院慰謝料等(傷害慰謝料)
  • 後遺障害分の費目
    後遺障害慰謝料後、遺障害逸失利益
  • 死亡分の費目
    死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀費用

過失による減額がなかったとしても、損害額が高額なケースでは限度額に達してしまい、不足分は別途請求する必要があります。限度額を超える部分については、加害者本人や加害者側の任意保険会社に対して請求することになります。

自賠責保険の限度額の対象や限度額を超えた場合の対処法については『交通事故慰謝料が120万を超えたらどうなる?自賠責保険の限度額や請求方法を解説』の記事でより詳しく知ることができます。

自賠責保険で支払われる慰謝料は相場よりも低額である

自賠責保険で支払われる慰謝料は、「自賠責基準」と呼ばれる独自の計算基準に基づいて算出されます。あくまで最低限の補償を目的とした自賠責基準は、実際の相場(裁判所で認められる金額)よりも低いのが一般的です。

慰謝料の金額を計算する基準には、自賠責基準を含めて下記の3つがあります。

慰謝料の計算基準

  • 自賠責基準
    自賠責保険が支払う慰謝料の金額を算出する計算基準
    最低限度の金額に過ぎない
  • 任意保険基準
    加害者の任意保険会社が支払う慰謝料の金額を算出する計算基準
    自賠責保険と同程度か多少増額された金額であることが多い
  • 弁護士基準(裁判基準)
    弁護士が加害者に慰謝料の支払いを求める際の金額を算出する計算基準
    裁判で認められる金額であり、相場の金額といえる
慰謝料金額相場の3基準比較

そのため、自賠責保険利用のため過失割合による減額がないケースであっても、相場の慰謝料額が高額であるなら、自賠責保険の利用だけでは相場の慰謝料を得られない恐れがあります。

自賠責保険の利用により得られる慰謝料額が相場よりも低額である場合は、加害者本人や加害者の加入している任意保険会社に不足分を請求する必要があるでしょう。

自賠責基準で算出される慰謝料の金額については『自賠責保険の慰謝料計算や限度額は?任意保険からも両方もらえる?』の記事で知ることができます。

また、弁護士基準により算出される相場の慰謝料の金額については、以下の計算機を利用すると簡単に知ることが可能です。

自賠責保険ではそもそも補償されていない損害がある

自賠責保険がカバーするのは人身事故による損害に限られます。自賠責保険だけでは、全ての損害が補償されない場合があるのです。

そのため、以下のように、自賠責保険は物的損害(物損)は補償範囲外となっています。

  • 車両(自動車やバイク、自転車など)の修理費用
  • 代車費用
  • 休車損害
  • 評価損
  • 事故に壊れた積荷の代金

こうした物的損害については、加害者本人や加害者の加入している任意保険会社への請求が必要となります。

自賠責保険と過失割合の基礎知識

そもそも「自賠責保険」とはどのような保険なのか、また「過失割合」が損害賠償にどう影響するのかを正しく理解しておくことは、交通事故の補償を受けるうえで非常に重要です。

ここでは、自賠責保険と過失割合の基本についてわかりやすく解説します。

自賠責保険とは?強制保険の基本と補償範囲

自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法という法律上、すべての自動車に加入が義務付けられている自動車保険です。

交通死亡事故の遺族や交通事故で怪我をした被害者救済を最低限図るため、強制保険となっています。

多くの請求を迅速かつ公平に処理する必要性から、法律で定められた支払基準によって、多くの部分が定型・定額化されています。

過失割合とは?損害賠償金の減額ルール

交通事故の責任割合を数値で表したものが過失割合です。

交通事故が発生した場合、責任がすべて加害者にあるとは限りません。

被害者側にも何らかの過失が認められるケースもあり、その場合、相手方に請求できる損害賠償金額は過失割合に応じて減額されます。

このような減額を「過失相殺」というのです。

被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

民法722条2項

過失割合は、事故状況や各当事者の行為などを総合的に判断して決定されます。

過失相殺による減額の流れについて詳しく知りたい方は『過失相殺とは?計算方法の具体例や判例でわかりやすく解説』の記事をご覧ください。

自賠責保険と過失割合について弁護士に相談してみよう

自賠責保険の補償内容や過失割合の判断は複雑で、被害者自身で正当な請求を行うのが難しいケースも少なくありません。

そんなときは、交通事故に詳しい弁護士に相談することで、適切な対応や補償を受けられる可能性が高まります。

過失割合があるときの自賠責保険請求は弁護士が頼りになる

弁護士に相談することで、事故の過失割合が適正かや、相場の損害賠償金を得るために自賠責保険への請求を行うべきかどうかなどを知ることができます。

自賠責保険に請求できる金額には上限があり、慰謝料の金額は相場より低額です。

そのため、被害者自身に過失割合が認められるケースであっても、減額の程度が小さいため自賠責保険だけに請求を行えばよいかどうかという点は、簡単には判断できません。

専門的な知識と経験を有する弁護士への相談は、自身の過失や損害の程度からすると、自賠責保険への直接請求(被害者請求)を行うべきなのか、加害者に対する請求で十分なのかを知ることができるのでおすすめです。

過失割合だけでなく慰謝料や後遺障害の相談も可能

弁護士は、たとえば慰謝料や後遺障害についてなど、過失割合に関する問題以外についても適切に対応してくれます。

弁護士に相談・依頼することで主に以下のようなメリットを得られるでしょう。

  • 加害者側の保険会社との示談交渉を行ってもらえる
  • 適切な損害額の算定を行ってもらえる
  • 自賠責保険や加害者への損害賠償請求に必要な書類の収集を手伝ってもらえる
  • 裁判による請求が必要となった場合には裁判手続きを適切に行ってもらえる
  • 後遺症が残った際に必要な後遺障害認定申請の手続きを手伝ってもらえる

実際に自賠責保険や加害者への損害賠償請求を行う場合には、証拠や書類の収集や示談交渉といった手続きが必要となってきます。

弁護士なら、専門知識を活かして迅速かつ適切に必要な手続きを行ってくれるため、被害者自身の負担を軽減することが可能です。

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弁護士費用特約について詳しくは『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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