事故であとから痛みが出た|物損から人身への切り替えなど対処法を解説
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新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
交通事故の直後は痛みがなかったのに、一晩たったら痛みが出てきた…という例は実はよくあります。
事故であとから痛みが出てきたら、速やかに病院で診察を受け、診断書をもらって人身事故に切り替えましょう。
重篤な症状が隠れている可能性もあるため、すぐに医師の診察を受けることは重要です。また、人身事故に切り替えなかった場合、のちの示談交渉で不利になるリスクもあります。
本記事では、交通事故であとから痛みが出てきた方、人身事故への切り替えをお考えの方、あとから出てきた痛みの慰謝料・示談金への影響を知りたい方の疑問にお答えしていきます。ぜひ最後までご覧ください。
目次
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事故であとから痛みが出たらどうする?
交通事故であとから痛みが出てきたら、以下の対応を行いましょう。
- 速やかに受診し、診断書を発行してもらう
- 保険会社に痛みが出たことを連絡する
- 事故を物損から人身に切り替える
あとから出て来た痛みに対する補償もきちんと受けるために重要な手続きなので、詳しく見ていきましょう。
(1)すぐに病院に行く|何科に行くべき?
交通事故であとから痛みが出てきたら、速やかに医療機関で診察を受け、診断書を作成してもらってください。
診断書は、このあと警察に提出する必要があります。ただし、診断書の作成には数日~数週間かかることもあります。
診断書の完成までに時間がかかるようであれば、先に警察にその旨を伝えておくようにしてください。
なお、診断書の作成費用は2,000円~1,0000円程度です。診断書作成費用は加害者側に請求できるので、領収書をもらって保管しておきましょう。
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何科に何日以内に行けば良い?
「交通事故では何科に行けばいいの?」と悩まれる方も少なくありませんが、受診する診療科は、一般的には整形外科が適切です。整形外科を擁する総合病院を受診すれば、必要に応じて脳神経外科など他の診療科とも連携してもらえるでしょう。
目安としては、事故から10日以内に病院へ行くことが望ましいです。
あとから痛みが出てしばらく経ってから病院に行くと、以下のようなリスクがあります。
- 怪我が治りきらない可能性がある
- ケガが交通事故によるものかどうか判断できなくなる
- ケガの発症当時の様子を記録できなくなる
ケガと事故との因果関係があいまいになると、ケガの治療費などを加害者側に請求できなくなる恐れがあります。
また、しばらく痛みを放置しているとケガの発症当時の様子をレントゲンやMRI画像などに記録できません。
これでは後遺症が残った場合に「後遺障害等級」が認定されにくくなり、後遺障害残存に対する賠償金がもらえなくなる可能性があります。
よって、痛みを感じたらすぐに病院へ行きましょう。
(2)保険会社に痛みが出たことを伝える
交通事故のあとから痛みが出た場合は、被害者側の保険会社、加害者側の保険会社の両方に連絡を入れてください。
交通事故による怪我の治療費は、加害者側の保険会社が病院に直接支払ってくれることが多いです。
しかし、あとから痛みが出た場合、加害者側の保険会社が被害者の通院を把握できていないため上記の対応を受けられません。また、あとから治療費の支払いの可否をめぐって争いになる可能性もあります。
可能であれば病院に行く前に加害者側の保険会社に一報を入れておくと、トラブルになることを未然に防げるでしょう。
なお、タイミングによっては、初診時の治療費は被害者が一旦立て替えて支払うことになる可能性があります。この場合は、加害者側の保険会社に請求する金額がわかるよう、領収書をとっておくようにしてください。
また、ご自身の負担を減らすために健康保険を用いても問題ありません。交通事故における健康保険の利用方法については『交通事故で健康保険は使える|使えないケースや利用手続きを解説』の記事をご覧ください。
(3)事故を物損から人身に切り替える
病院へ行き診断書を作成してもらったら、警察署にて物損事故から人身事故に切替える手続きをします。
物損事故と人身事故の違いは次の通りです。
人身事故 | 怪我、精神的苦痛など、身体的な損害が発生している交通事故 |
物損事故 | 自動車の修理費など、物体的な損害のみ発生している交通事故 |
交通事故当初にケガが見当たらなかった場合、警察は事故を物損事故として処理しているはずです。
しかし、あとからケガが分かったのであればその事故は物損事故ではなく人身事故ということになるので、改めて人身事故への切り替え手続きをしましょう。
詳しい手続きの方法や人身事故へ切り替える必要性については、この後解説していきます。
あとから痛みが出たら物損から人身に切替えよう
物損から人身に切替える手続き
物損事故から人身事故に切り替える手順は、以下の通りです。
- 病院で診断書を受け取る
- 診断書を警察に提出する
- 被害者・加害者立ち会いのもと、実況見分が行われる
(関連記事:実況見分の流れや注意点は?過失割合への影響も踏まえて解説)
警察署に申請に行く際にはいくつかの注意点があります。
- 警察署へは事前予約が必要
- 申請の際には原則として被害者と加害者両方の参加が必要
- 事故車両そのものを持っていかなければならない
(修理中の場合は破損部分のカラー写真で代用できることもある)
持参品や必要書類、その他の細かな指示については、申請の予約をする際に確認するとよいでしょう。
加害者が手続きへの同行を拒否する場合は、その旨を警察に伝えてください。加害者が切り替えの申請に同行してくれずとも、被害者の診断書があれば人身事故への切り替えが受け付けられる場合もあります。
なお、場合によっては警察から人身事故への切り替えを拒否されることがあります。しかし、弁護士の仲介を受けることで警察の対応が変わる場合もあるので、一度弁護士までご相談ください。
物損事故から人身事故に切り替えできる期間
物損事故から人身事故に切り替える期間は、厳密にいつまでとは定められていません。
交通事故の発生からおよそ1~2週間以内であれば、人身事故に切り替えられることが多いでしょう。具体的な期間は管轄の警察により異なりますので、「人身事故に切り替えるのなら○日以内に連絡をください」といった警察からの指示に従ってください。
なお、交通事故から数週間~1か月以上経過してしまうと、人身事故への切り替えが難しくなるので注意しましょう。これは、時間が経つほど交通事故の痕跡がなくなり、怪我をするほどの事故があった証明ができなくなるためです。
あとから痛みが出た時、人身への切り替えが必要な理由
あとから痛みが出た場合、物損事故から人身事故に切り替えるべき理由は以下の3つです。
- 人身切り替えで慰謝料や治療費の請求が可能になる
- 示談にも影響する捜査・書類作成をしてもらえる
- 加害者に刑事罰・行政罰が科される
それぞれの理由について、詳しく説明していきます。
人身切り替えで慰謝料や治療費の請求が可能になる
物損事故から人身事故に切替えると、慰謝料や治療費といった人身被害に対する賠償金を請求できるようになります。この結果、示談金全体の金額が大幅にアップする可能性が高いです。
人身事故に切り替えることで請求できるようになる賠償金は、具体的に次の通りです。
費目 | 支払われる金額の基準 |
---|---|
治療費 | 必要・相当な範囲で実費全額 関連記事:交通事故の治療費は誰が支払う? |
通院交通費 | 必要・相当な範囲で実費全額 関連記事:交通事故にあったら【交通費】と慰謝料を請求できる? |
休業損害 | 1日あたりの収入×入通院で休んだ日数 関連記事:交通事故の休業損害は職業別に計算方法がある |
慰謝料 | 入通院日数・後遺障害等級などによる 関連記事:交通事故の慰謝料を正しく計算する方法 |
逸失利益 | 後遺障害等級・事故前の収入などによる 関連記事:逸失利益の計算をわかりやすく解説 |
ただし、人身事故・物損事故という区分は警察内部の処理にすぎません。
「人身事故証明書入手不能理由書」を加害者側の任意保険会社に提出し、先方が人身事故であることを認めれば、物損事故として処理されたままでも上記の費目が貰える可能性はあります。
しかし、加害者側の保険会社が人身事故であることを認めてくれず、争いになる可能性も十分にあります。
慰謝料に関するトラブルを防ぐためにも、可能な限り人身事故への切り替えを行うことが重要です。
慰謝料などが請求できると示談金はどれくらいアップする?
慰謝料や休業損害などの請求が認められた場合、どれくらい示談金がアップするかは事案によりけりです。
たとえばむちうちでしびれや痛みといった後遺症が残り後遺障害14級または12級に認定されれば、後遺障害慰謝料だけでも110万円(14級)~290万円(12級)がもらえます。(※弁護士基準の場合)
慰謝料の大まかな相場は以下の計算機を使うと分かるので、確認してみてください。
また、以下の記事では後遺障害12級と後遺障害14級の認定のポイントを詳しく解説しています。慰謝料の相場や事例を知りたい人も参考にしてください。
示談にも影響しうる捜査・書類作成をしてもらえる
物損から人身事故に切り替えると、「実況見分」をしてもらえます。
実況見分とは、事故現場を実際に確認しながら、事故発生時の状況を捜査することです。被害者・加害者・目撃者なども立ち会ったうえでおこなわれ、捜査した内容は実況見分調書という書類にまとめられます。
実況見分調書は事故時の状況を示す証拠として、示談交渉でも使われることがあります。
特に過失割合について話し合う際には、正しい事故状況の確認が欠かせません。
過失割合
交通事故が起きた責任が、加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのか割合で示したもの。
自身についた過失割合分、受け取れる示談金が減額される。
物損事故でも人身事故でも、基本的に示談交渉時に話し合って決定される。
事故状況を示す証拠にはドライブレコーダー映像などもありますが、必ずしもこうした証拠が用意できるとは限りません。
よって、正しい事故状況に基づいた過失割合を決めるためにも、ケガをしているのであれば人身事故に切り替え、実況見分をしてもらいましょう。
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加害者に刑事罰・行政罰が科される
事故が人身扱いになると、交通事故の加害者に自動車運転過失致傷といった罪で刑事罰が科されます。また、行政処分として違反点数も加算されるでしょう。
特に加害者に刑事罰が科されるかどうかは、加害者に対して処罰感情がある場合はもちろん、示談を有利に進めたい場合にも重要です。
刑事罰が決まる前に示談が成立すると減刑されることがあるため、加害者側が被害者の主張する条件で示談に応じやすくなるのです。
物損事故だと加害者に刑事罰は科されない?
物損事故では、刑事罰が科されることはほとんどありません。
他人の所有物を壊せば器物損壊罪、他人の建造物を壊せば建造物損壊罪に問われる可能性がありますが、これらの犯罪は故意(わざと)の場合のみ成立します。
交通事故は基本的に過失(うっかり)によって起こるものなので、成立することはないでしょう。
ただし、無免許運転や飲酒運転などによって物損事故を起こした場合は刑事罰を科される可能性があります。
なお、行政処分に関しても、物損事故の違反点数はゼロです。無免許運転や飲酒運転などをしていないなら、物損事故のままでは加害者に違反点数や罰金といった行政罰を問うこともできません。
人身切り替えを迷っている方へのアドバイス
(1)警察から人身事故に切り替えなくても良いと言われた
人身事故に切り替えようとした際、警察から以下のように言われることがあります。
- 物損事故のままでも損害賠償請求に関しては人身事故と同じように扱われます。
- このようなケースでは物損事故のまま処理することも多いです。
たとえ上記のようなことを言われたとしても、あとから痛みが出てきたのであれば人身事故に切り替えておくことがおすすめです。
確かに、本記事内でも解説したように警察内で物損事故として処理されていても、加害者側の任意保険会社が人身事故であると認めれば慰謝料や治療費はもらえます。
しかし、人身事故だと認めてもらえるとは限らないため揉めてしまったり、慰謝料・治療費の一部が減額されたりする可能性も否定できません。
よって、無駄な争いを避け確実に慰謝料や治療費を請求するために、人身事故に切り替えておいた方が良いでしょう。
(2)加害者に情がわき人身事故に切り替えるか迷う
「事故の加害者が誠意を尽くして謝ってくれたので、人身事故に切り替えたため罰を科されるのが申し訳ない…」と思われる被害者の方もいらっしゃいます。
こうした場合は、物損事故のままにするのではなく、人身事故に切り替えたうえで早めに示談を成立させ、示談書に「宥恕文言」を記載するとよいでしょう。
宥恕文言とは
「加害者を宥恕し、寛大な処分を受けること求める」など、加害者のことを許す内容の文言。
示談書に宥恕文言が記載されていると、検察が加害者の起訴・不起訴を決めたり、裁判所が加害者の処罰を決めたりする際、判断材料にされる可能性があるでしょう。
ただし、宥恕文言を盛り込んだ示談書は刑事罰が決定する前に作成されなければ意味がありません。
もし加害者側との示談交渉がうまく進まず刑事罰の決定前に示談が成立しそうにないなら、一度弁護士にご相談ください。弁護士が入ることで示談がスムーズに進み始めることがあります。
(3)軽傷すぎて人身事故に切替えるべきか迷う
ごく軽い症状であっても、ケガがあるのならその事故は人身事故です。
たとえ数日しか通院しなかったとしても、通院した日数分に対する入通院慰謝料や治療費、通院交通費などは請求できるので、あとから痛みが出た場合は人身事故への切り替え手続きをしてください。
軽傷の場合の慰謝料相場や慰謝料請求のポイントについては『軽傷の交通事故慰謝料はどれくらい?十分にもらう方法と症状別の相場』で解説しています。合わせてご覧ください。
事故であとから痛みが出たときのQ&A
交通事故の直後ではなくあとから痛みが出た場合、被害者の方はさまざまな不安や悩みを抱かれるでしょう。ここからは、事故であとから痛みが出たときのよくある質問にお答えしていきます。
Q1.事故の直後に痛みが出ないのはなぜ?
事故の直後に痛みが出ない理由としては、さまざまなものが考えられます。
警察庁が発表しているマニュアルでは、交通事故被害者によく見られる精神的反応として、ショックな出来事の際に物事を受け入れられず、感覚が麻痺したり知覚と意識が乖離したりした結果、痛みを感じなくなるといったものがあげられています。
これらの症状は一過性であることが多いですが、長期化する例も報告されています。とくに、交通事故の程度が重大であると知覚と意識との解離が起きやすいようです。
あとから首・腰に痛みが出るのはむちうちが原因かも
あとから首や腰に痛みが出た場合、むちうちが原因であることも考えられます。
むちうち症(頚椎捻挫、頚椎打撲、外傷性頚部症候群)とは、追突事故などの衝撃で首がむちのようにしなり、首の中の組織を痛めたことで起こる諸症状のことです。「首の痛み」「手足のしびれ」「肩こり」「頭痛」「吐き気」「めまい」などが発症したらまずむちうち症が疑われるでしょう。
むちうちであとから痛みが出る理由としては、外傷が見えない、首関節内の組織に炎症が起こり始めるのに時間がかかるなどさまざまな説がありますが、医学的に証明されたわけではありません。
交通事故のあとで上記のような症状が出てきたら、まずはむちうちかを確認してもらうため整形外科を受診しましょう。
むちうちの症状や慰謝料相場については、以下の関連記事でも紹介しています。
痛みがなくても事故後すぐに病院へ行くと安心
切り傷や出血など目に見える受傷があれば、たとえ痛みを感じていなくても気が付けるでしょう。「あとから痛みが出た」と思うのは、目に見えない自覚症状のみの怪我だったためであることも多いです。
そのため、事故直後には痛みや目に見える怪我がなくても、念のため病院を受診して検査を受けることが重要になります。
しかし、「痛くないのに通院していいの?」「怪我がなさそうなのに病院へ行ったら、治療費や慰謝料の不正請求を疑われそう」とためらってしまう方もいるでしょう。
関連記事『交通事故で痛くないのに通院しても良い理由と不正請求を疑われない対処法』では、痛くないけれど通院するべき理由と併せて、加害者側の保険会社から不正請求の疑いをかけられるリスクを下げる方法を解説しています。
Q2.あとから初診時と別の部位に痛みが出たら?
初診時は腰に痛みがあると伝えていたけれど、あとから首に痛みが出てきたようなケースも存在します。その場合は、まず主治医に痛みが新たに生じたことを伝えてください。
むちうちの一部の症状があとから生じることもありますし、骨折があとから発覚することもあります。しっかりと医師の診察を受け、カルテなどに症状を記載してもらいましょう。
ただし、あとから別の部位に痛みが出た場合、その部分については事故との因果関係が認められない可能性もあります。とくに、あとから痛みが出た部位に後遺症が残った場合、後遺障害認定を受けられない可能性が高いことはあらかじめ留意しておきましょう。
もし、明らかにあとから生じた痛みと交通事故に因果関係があると医師が認めるのなら、診断書にその旨を記載してもらうことをおすすめします。
Q3.あとから痛みが出たとき整骨院に通ってもいい?
あとから痛みが出た場合、病院ではなく整骨院に通って怪我を治そうとする方もいらっしゃいます。
しかし、整骨院に通うのは病院を受診して医師の許可を得たあとにしましょう。その理由は以下のとおりです。
- 整骨院では診断書が作成されず、人身事故に切り替えられないから
- 医師の許可なく整骨院に通うと、治療費や慰謝料を適正に支払ってもらえないから
- 整骨院だけに通っていると、後遺障害等級に認定されない可能性があるから
整骨院での施術は医療行為ではないため、有効性や必要性を認められづらいです。また、「あとから痛みが出たと主張しているが、本当は単なる健康維持のために施術を受けているのでは?」といったように、交通事故との因果関係を疑われる可能性もあります。
整骨院での施術がケガを治すために有効と示すには、医療のプロである医師の許可を得ておくことが重要になるのです。
交通事故で整骨院に通いたい場合は、『交通事故の治療を整骨院で受けても慰謝料はもらえる|慰謝料の計算と注意点』の記事をあらかじめご参考ください。整骨院で治療しても慰謝料をもらうための注意点がわかります。
Q4.すでに示談していたら慰謝料はもらえない?
交通事故においては、車の修理費や治療費といった損害額がすべて確定したら「示談交渉」がはじまります。
あとから痛みが出てきた場合は、すでに示談が成立しているケースもあるでしょう。
原則としてすでに示談を終えてしまっている場合、示談書に記載されている内容以外の請求をすることはできません。多くの示談書には「この示談書にある損害以外、今後一切請求しない」という文言が含まれているからです。
そのため、示談を締結した後に「あとから痛みが出てきたので治療費を払ってほしい」と言っても基本的には認められないでしょう。
しかし、以下のケースでは、例外的にあとから出てきた痛みに関する損害賠償を受けられることもあります。
- 物損部分のみ示談していたケース
- 事故現場で不当な示談をしていたケース
- 示談書にあとから出た痛みに対応できる文言があるケース
それぞれのケースについて、詳しく解説していきます。
物損部分のみ示談していたケース
物損のみの示談を締結していた場合は、あとから痛みが出ても治療費や慰謝料を請求することができます。
交通事故の示談は、物損部分・人身部分をわけて締結することが可能です。あとから痛みが出てきたときの治療費や慰謝料は「人身」の損害であり、示談が物損のみなら、この分については示談が成立していない扱いとなります。
示談書のなかに「示談書(物損)」、「損害は物損のみ」などの文言があれば、その示談書は物損のみの示談について記したものと言えます。
事故現場で不当な示談をしていたケース
事故現場で「損害賠償として○万円支払う」といった示談がなされていた場合、その金額や作成状況によっては示談自体が無効になる可能性があります。
具体的には、賠償の範囲が実態とかけ離れていた、脅迫を受けて示談したといった事情があれば、示談の撤回が認められるでしょう。
もし、上記のような事情で事故現場で示談してしまい、撤回したいときは「示談は無効である」旨の主張をしていく必要があります。被害者自身による交渉では主張が認められない可能性も高いので、弁護士にご相談ください。
示談書にあとから出た痛みに対応できる文言があるケース
以下のような「留保条項」が示談書に含まれている場合、示談成立後に発覚した損害についても請求が可能になります。
- 物損部分のみ示談とし、傷害部分については別途協議する
- 記載しているもの以外の損害が新たに発生した場合、発生後に別途協議する
示談書を作成する際は、上記のような文言を盛り込むとよいでしょう。
なお、最高裁判所の判例に、示談当時に予測できなかった損害については示談後でも請求できると示したものがあります。
示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない
最判昭和43.3.15
上記の文章を見てみると、示談の効力は示談当時に予測できた損害についてのみ及ぶ、つまり示談当時はなかった痛みについては改めて損害賠償を請求できるようにも思えます。
しかし、実は判決全文には「全損害を把握しづらい状況」などの限定的な条件がついています。よって、上記の判例をもとにあとから出た痛みについて損害賠償を請求しても、「示談当時に把握できたのでは?」「予測できなかったとまでは言えないのでは?」と反論される可能性があるでしょう。
確実に示談金を受けとるためにも、事故現場で示談しない、示談書の作成時にあとから出た痛みについて対応できる文言を盛り込むことが大切です。
事故であとから痛みが出てきたら弁護士に相談しよう
交通事故であとから痛みが出てきて不安な場合、弁護士に気軽に相談してみることをおすすめします。ここからは、弁護士への相談・依頼のメリットをお伝えしていきます。
弁護士に無料で相談できること
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- 物損から人身への切り替えに関する疑問・お困りごと
- あとから痛みが出た場合に請求できる損害賠償金の費目・相場
- 加害者側との示談交渉に関する疑問・お困りごと
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- 加害者側とのやり取りに関する疑問・お困りごと
- 通院に関する注意点の確認
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示談はまだ先でも早めの弁護士相談がおすすめ
弁護士への相談は示談前になってからでもいいと考える方も多いですが、これから通院を始めるのであれば通院に関する注意点を確認しておくことは非常に重要です。
交通事故で通院する場合、治療費や通院期間に応じた入通院慰謝料などを請求できます。しかし、たとえば以下のような通院をしてしまうと、十分な金額を得られない恐れがあるのです。
- 通院頻度が低すぎる
- 通院頻度が高すぎて過剰診療を疑われる
- 通院を中断する
- 医師の指示なく整骨院に通う
他にも、何気ない言動が賠償金の減額につながる可能性があるため、あらかじめ弁護士に相談しておくことが重要です。
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弁護士に依頼すれば慰謝料の増額も期待できる
弁護士相談後に依頼(委任契約)した場合、慰謝料の大幅な増額も期待できます。
示談交渉の際、加害者側の任意保険会社は独自の基準(任意保険基準)で計算した慰謝料・賠償金を提示してきます。しかし、これは過去の判例に基づく「弁護士基準」に沿った金額よりも大幅に低いことが多いです。

※自賠責基準は、交通事故被害者に補償される最低限の賠償金額
加害者側の提示額を被害者自身の交渉で十分に増額させることは非常に難しいです。
しかし、弁護士が交渉すれば、加害者側の保険会社は裁判への発展を懸念し、弁護士基準の慰謝料を認めることが多くなります。
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弁護士に示談交渉を依頼した時の増額事例
ここで、実際にアトム法律事務所が受任した案件の中から、弁護士依頼で増額を叶えた例を厳選してご紹介します。
捻挫で後遺障害なしの事例
傷病名 | 手首捻挫、腰椎捻挫 |
後遺障害等級 | なし |
当初の提示額 | 31万円 |
最終的な回収額 | 147万円 |
むちうちで後遺障害14級の事例
傷病名 | 頚椎捻挫 |
後遺障害等級 | 14級 |
当初の提示額 | 75万円 |
最終的な回収額 | 261万円 |
むちうちで後遺障害12級の事例
傷病名 | 頚椎捻挫 |
後遺障害等級 | 12級 |
当初の提示額 | 256万円 |
最終的な回収額 | 670万円 |
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弁護士に依頼することで得られるメリットをさらに知りたい方は、関連記事『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選』をご確認ください。
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お住いの地域付近に幣所の支部がなかったとしても、安心してご相談ください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了