交通事故であとから痛みが出てきたらどうする?すべき手続きと慰謝料について解説

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交通事故|あとから痛みが出てきたら?

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故の直後は痛みがなかったのに、一晩たったら痛みが出てきた…という例は実はよくあります。

事故であとから痛みが出てきたら、速やかに病院で診察を受け、診断書をもらって人身事故に切り替えましょう

重篤な症状が隠れている可能性もあるため、すぐに医師の診察を受けることは重要です。また、人身事故に切り替えなかった場合、のちの示談交渉で不利になるリスクもあります。

本記事では、交通事故であとから痛みが出てきた方、人身事故への切り替えをお考えの方、あとから出てきた痛みの慰謝料・示談金への影響を知りたい方の疑問にお答えしていきます。ぜひ最後までご覧ください。

事故であとから痛みが出たときの手続き

交通事故であとから痛みが出てきたら、以下の対応を行いましょう。

  1. 速やかに整形外科を受診し、診断書を発行してもらう
  2. 保険会社に痛みが出たことを連絡する
  3. 警察に診断書を提出し、人身事故に切り替えてもらう

痛みが出てきたにもかかわらず病院に行かないと、治療費や慰謝料などを事故の加害者側に支払ってもらえません。また、警察に診断書を提出しないと、物損事故として取り扱われてしまいます。

各手続きについて、詳しく確認していきましょう。

(1)整形外科に行く|受診が遅いとリスク有り

交通事故であとから痛みが出てきたら、速やかに医療機関で診察を受けてください

「交通事故では何科に行けばいいの?」と悩まれる方も少なくありませんが、受診する診療科は、一般的には整形外科が適切です。整形外科を擁する総合病院を受診すれば、必要に応じて脳神経外科など他の診療科とも連携してもらえるでしょう。

あとから痛みが出てしばらく経ってから病院に行くと、以下のようなリスクがあります。

  • 怪我が治りきらない可能性がある
  • 示談金が減る可能性がある

示談金が減る理由としては、症状が事故で生じたものかその後の日常生活で生じたものかわからなくなるため、加害者側の保険会社から「事故と関係ない治療費などは支払わない」と主張されるといったものがあります。

また、自然治癒が進んでレントゲンやMRIといった画像所見に異常が現れづらくなるため、後遺症が残ったときに「後遺障害」の認定を受けられず、後遺障害分の示談金を受け取れないこともあるでしょう。

怪我を適切に治すためにも、加害者側から十分な補償を受け取るためにも、痛みを感じたらすぐに受診することが何より重要です。

診断書は必ず作成してもらおう

診断書とは医師のみが作成できる、患者の症状についての所見などが記載された書類です。

診断書は「交通事故によって怪我をしたこと」の証明となります。警察や保険会社への提出が必要なので、必ず作成してもらいましょう

診断書の作成にかかる時間は即日~数週間と病院によって異なります。初診時に作成を依頼し、作成に時間がかかる場合は、その旨を警察署に連絡しておくとよいでしょう。

診断書の発行手数料は2,000円程度~10,000円程度です。あとから交通事故の加害者側に請求することができるので、領収書を忘れずに保管しておいてください。

(2)保険会社に痛みが出たことを伝える

交通事故後にあとから痛みが出た場合は、被害者側の保険会社、加害者側の保険会社の両方に連絡を入れてください

交通事故による怪我の治療費は、加害者側の保険会社が病院に直接支払ってくれることが多いです。

しかし、あとから痛みが出た場合、加害者側の保険会社が被害者の通院を把握できていないため上記の対応を受けられません。また、あとから治療費の支払いの可否をめぐって争いになる可能性もあります。

可能であれば、病院に行く前に加害者側の保険会社に一報を入れておくと、トラブルになることを未然に防げるでしょう。

なお、タイミングによっては、初診時の治療費は被害者が一旦立て替えて支払うことになる可能性があります。この場合は、加害者側の保険会社に請求する金額がわかるよう、領収書をとっておくようにしてください。

また、ご自身の負担を減らすために健康保険を用いても問題ありません。交通事故における健康保険の利用方法については『「交通事故で健康保険は使えない」は誤解!利用手続きやメリットを解説』の記事をご覧ください。

(3)人身事故に切り替える|方法や期限は?

交通事故は、発生した損害によって人身事故と物損事故の2種類にわけられます。

人身事故怪我、精神的苦痛など
身体的な損害が発生している交通事故
物損事故自動車の修理費など、
物体的な損害のみ発生している交通事故

交通事故を警察に届け出る際、怪我をしたと言って診断書を提出すれば人身事故、怪我はないと言えば物損事故として処理されているでしょう。

警察に届け出た時点で怪我がなかった場合、警察内での取り扱いは物損事故になっています。あとから痛みが出てきた場合は、怪我が発覚したことを警察に伝え、人身事故に切り替える必要があります

物損事故から人身事故に切り替える手順は、以下のとおりです。

  1. 病院で診断書を受け取る
  2. 診断書を警察署に提出する
  3. 被害者・加害者立ち会いのもと、実況見分が行われる
    (関連記事:実況見分の流れや注意点は?過失割合への影響も踏まえて解説

なお、警察署に申請に行く際にはいくつかの注意点があります。

  • 警察署へは事前予約が必要
  • 申請の際には原則として被害者と加害者両方の参加が必要
  • 事故車両そのものを持っていかなければならない
    (修理中の場合は破損部分のカラー写真で代用できることもある)

持参品や必要書類、その他の細かな指示については、申請の予約をする際に確認するとよいでしょう。

なお、加害者が切り替えの申請に同行してくれずとも、被害者の診断書があれば人身事故への切り替えが受け付けられる場合もあります。

人身事故への切り替えが受け付けられなかった場合、弁護士の仲介を受けることで警察の対応が変わった事例もあるようです。

物損事故から人身事故に切り替えできる期間は?

物損事故から人身事故に切り替える期間は、厳密にいつまでとは定められていません。

交通事故の発生からおよそ1~2週間以内であれば、人身事故に切り替えられることが多いでしょう。具体的な期間は管轄の警察により異なりますので、「人身事故に切り替えるのなら○日以内に連絡をください」といった警察からの指示に従ってください。

なお、交通事故から数週間~1か月以上経過してしまうと、人身事故への切り替えが難しくなるので注意しましょう。これは、時間が経つほど交通事故の痕跡がなくなり、怪我をするほどの事故があった証明ができなくなるためです。

あとから痛みが出たら人身事故に切り替えるべき理由

あとから痛みが出た場合、物損事故から人身事故に切り替えるべき理由は以下の3つです。

  • 物損事故では慰謝料をもらえない可能性があるため
  • 物損事故では過失割合の重要な証拠を得られないため
  • 加害者の刑事罰・行政罰を問うため

それぞれの理由について、詳しく説明していきます。

物損事故では慰謝料をもらえない可能性があるため

交通事故の慰謝料は、怪我によって生じる精神的苦痛に対する補償です。
そのため、理論上は人身事故として警察に届け出ていなければ、慰謝料はもらえません。

ただし、実務上は物損事故では慰謝料が一切もらえないというわけではありません。

人身事故・物損事故という区分は警察内部の処理にすぎないので、慰謝料を支払う加害者側の保険会社さえ人身事故だと認めていれば、慰謝料は支払ってもらえるのです。

もっとも、物損事故で処理されている場合は、慰謝料を受け取るために「人身事故証明書入手不能理由書」という書類が必要となります。

人身事故証明書入手不能理由書は、保険会社に対して「人身事故と証明する書類が入手できないけれども保険金を支払ってほしい」と依頼するための書類です。

あくまで「理由書」であるため、加害者側の保険会社が理由を不当だと判断したなら、十分な慰謝料を支払ってもらえない可能性があります

慰謝料に関するトラブルを防ぐためにも、可能な限り人身事故への切り替えを行うことが重要です。

物損事故では過失割合の重要な証拠を得られないため

物損事故扱いのままだと、警察内で実況見分調書が作成されません。

実況見分調書とは、警察が捜査した事故現場や事故車両の状況などを記載した書類で、事故がどのような場所・状況でどのように発生したかがわかる客観的証拠となります。とくに、過失割合を決める際、実況見分調書は重要な役割を果たします。

過失割合とは、事故が起きた責任が加害者側と被害者側にどれくらいあるかを割合で示したものです。被害者側にも過失割合が付くと、その分、示談金が減らされてしまいます。

もし、「一時停止をした・していない」といったように、事故発生時の状況について加害者側と被害者側が対立したとき、実況見分調書があれば交渉がスムーズに進むでしょう。

一方、物損事故として届け出ていたため実況見分調書が作成されていない場合、過失割合の交渉が難航し、最終的に被害者側の主張する過失割合を認めてもらえない可能性があるのです。

適切な過失割合で合意するためにも、人身事故への切り替えは大切になります。

加害者の刑事罰・行政罰を問うため

もし、交通事故の加害者に自動車運転過失致傷といった罪で刑事罰を科したいと思っている場合、人身事故に切り替える必要があります。

物損事故では、刑事罰が科されることはほとんどありません

他人の所有物を壊せば器物損壊罪、他人の建造物を壊せば建造物損壊罪に問われる可能性がありますが、これらの犯罪は故意(わざと)の場合のみ成立します。交通事故は基本的に過失(うっかり)によって起こるものなので、成立することはないでしょう。

ただし、無免許運転や飲酒運転などによって物損事故を起こした場合は刑事罰を科される可能性があります。

また、物損事故の違反点数はゼロのため、無免許運転や飲酒運転などをしていないなら、物損事故のままでは加害者に違反点数や罰金といった行政罰を問うこともできません。

なお、加害者を刑事罰に問うことで、間接的に加害者側と示談しやすくなる可能性もあります。裁判所が刑事罰を決める際、被害者側と示談していることが考慮される可能性があるため、「禁錮刑は避けたい」といった理由で加害者側が交渉に協力的になるからです。

コラム

事故の加害者が誠意を尽くして謝ってくれたので、人身事故に切り替えたため罰を科されるのが申し訳ない…」と思われる被害者の方もいらっしゃいます。

もし、加害者の刑罰を減らしてもよいと思っているなら、示談書に「宥恕文言」を記載するとよいでしょう。

宥恕とは一般的に犯罪者を許すことを言います。宥恕文言の例としては「加害者を宥恕し、寛大な処分を受けること求める」といったものがあります。

示談書に宥恕文言が記載されていると、検察が加害者の起訴・不起訴を決めたり、裁判所が加害者の処罰を決めたりする際、判断材料にされる可能性があるでしょう。

事故であとから痛みが出た場合、加害者側のデメリットを考慮して物損事故のままにしておくよりも、被害者自身が事故による損害を適切に補償してもらうために、人身事故に切り替えることをおすすめします

事故であとから痛みが出たときの慰謝料

次に、事故であとから痛みが出てきた場合、慰謝料や示談金にどのような変化があるのかを確認していきましょう。

あとから痛みが出たら慰謝料はいくら?

あとから痛みが出て病院に通院した場合、通院日数に応じて入通院慰謝料を受け取れます。

また、治療を続けても後遺症が残った場合、後遺障害認定を受ければ後遺障害慰謝料も受け取れるでしょう。

それぞれの慰謝料がいくらになるかを解説していきます。交通事故における慰謝料の概要・計算方法に関しては、『交通事故の慰謝料を正しく計算する方法|事故でもらえるお金は慰謝料以外にもある』で詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。

入通院慰謝料はいくら?

入通院慰謝料は、自賠責保険会社・任意保険会社・弁護士(裁判所)でそれぞれ計算方法が異なっています。

自賠責基準日額4,300円※
任意保険基準非公開(自賠責基準とほぼ同額~やや高額な程度)
弁護士基準3つの基準のなかで最も高額

※ 対象日数には、治療期間と治療日数×2のいずれか少ない方を用いる
※ 2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合は4,200円

被害者の方には、最も高額な弁護士基準で慰謝料を請求することをおすすめします。

弁護士基準での慰謝料は、以下の算定表をもとに計算します。算定表は2種類ありますが、打撲やむちうちといった軽傷の場合は「軽傷用」の表を、それ以外の場合は「重傷用」の表を用いてください。

慰謝料の算定表(軽傷用)

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

慰謝料の算定表(重傷用)

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

例として、あとから痛みが出てむちうちと診断され、3か月通院した場合の慰謝料を計算してみましょう。

軽傷用の算定表の「入院0カ月、通院3ヶ月」部分を見ると53万円の慰謝料が受け取れることがわかります。

自賠責基準だと、最も高額になる場合でも4300円×90日=38万7000円なので、弁護士基準がいかに高額かわかります。

なお、実際の慰謝料の金額は通院頻度などによって変わってきますので、より詳しい見積もりを知りたい方は弁護士に相談するとよいでしょう。

後遺障害慰謝料はいくら?

あとから痛みが出てきて治療したものの後遺症が残った場合、後遺障害認定を受ければ、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料も受け取れます。

後遺障害認定とは、交通事故の後遺症が法令で定められた1級~14級まである後遺障害等級に認められることを言います。詳しくは、『交通事故の後遺障害認定|認定の確率を上げるポイントと手続きを解説』の記事をご覧ください。

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級によって目安が定められています。以下に、自賠責基準と弁護士基準の目安の金額を紹介します。なお、任意保険基準の金額は自賠責基準とほぼ同じ~やや高い程度とお考えください。

後遺障害慰謝料の相場

等級 自賠責基準弁護士基準
1級・要介護1,650
(1,600)
2,800
2級・要介護1,203
(1,163)
2,370
1級1,150
(1,100)
2,800
2級998(958)2,370
3級861(829)1,990
4級737(712)1,670
5級618(599)1,400
6級512(498)1,180
7級419(409)1,000
8級331(324)830
9級249(245)690
10級190(187)550
11級136(135)420
12級94(93)290
13級57(57)180
14級32(32)110

※ 単位:万円
※ ()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合の金額

自賠責基準と弁護士基準では、少ない場合でも80万円弱、多い場合は1,000万円以上の金額の差が生まれることがわかります。

あとから痛みが出てくることの多いむちうちは、後遺障害12級か14級に認定される可能性があります。それぞれの認定基準については、以下の関連記事をご覧ください。

あとから痛みが出てきたら示談金は増額する?

示談金とは「示談で決まった賠償金」のことです。慰謝料は示談金の一部になります。

物損事故の場合、示談金の内訳は車の修理費や代車費用になるでしょう。一方、あとから痛みが出て人身事故と認められたならば、以下のような費目を追加で請求できます

費目支払われる金額の基準
治療費必要・相当な範囲で実費全額
関連記事:交通事故の治療費は誰が支払う?
通院交通費必要・相当な範囲で実費全額
関連記事:交通事故にあったら【交通費】と慰謝料を請求できる?
休業損害1日あたりの収入×入通院で休んだ日数
関連記事:交通事故の休業損害は職業別に計算方法がある
慰謝料入通院日数・後遺障害等級などによる
関連記事:交通事故の慰謝料を正しく計算する方法

より具体的な金額や計算方法については、それぞれの関連記事のリンクをご覧ください。

慰謝料相場がわかる!慰謝料計算機

以下の計算機を用いて慰謝料の簡易的な見積もりを出すことも可能です。

必要な情報は通院開始日・治療終了日・おおまかな通院頻度のみになります。

ご自身のケースで受け取れ得る慰謝料の金額を確かめたいとき、ぜひご活用ください。

事故であとから痛みが出たときのQ&A

交通事故の直後ではなくあとから痛みが出た場合、被害者の方はさまざまな不安や悩みを抱かれるでしょう。ここからは、事故であとから痛みが出たときのよくある質問にお答えしていきます。

Q1.事故の直後に痛みが出ないのはなぜ?

事故の直後に痛みが出ない理由としては、さまざまなものが考えられます。

警察庁が発表しているマニュアルでは、交通事故被害者によく見られる精神的反応として、ショックな出来事の際に物事を受け入れられず、感覚が麻痺したり知覚と意識が乖離したりした結果、痛みを感じなくなるといったものがあげられています。

これらの症状は一過性であることが多いですが、長期化する例も報告されています。とくに、交通事故の程度が重大であると知覚と意識との解離が起きやすいようです。

あとから首・腰に痛みが出るのはむちうちが原因かも

あとから首や腰に痛みが出た場合、むちうちが原因であることも考えられます。

むちうち症(頚椎捻挫、頚椎打撲、外傷性頚部症候群)とは、追突事故などの衝撃で首がむちのようにしなり、首の中の組織を痛めたことで起こる諸症状のことです。「首の痛み」「手足のしびれ」「肩こり」「頭痛」「吐き気」「めまい」などが発症したらまずむちうち症が疑われるでしょう。

むちうちであとから痛みが出る理由としては、外傷が見えない、首関節内の組織に炎症が起こり始めるのに時間がかかるといった様々な説がありますが、医学的に証明されたわけではありません。

交通事故のあとで上記のような症状が出てきたら、まずはむちうちかを確認してもらうため整形外科を受診しましょう。

むちうちの症状や慰謝料相場については、以下の関連記事でも紹介しています。

痛みがなくても事故後すぐに病院へ行くと安心

切り傷や出血など目に見える受傷があれば、たとえ痛みを感じていなくても気が付けるでしょう。「あとから痛みが出た」と思うのは、目に見えない自覚症状のみの怪我だったためであることも多いです。

そのため、事故直後には痛みや目に見える怪我がなくても、念のため病院を受診して検査を受けることが重要になります。

しかし、「痛くないのに通院していいの?」「怪我がなさそうなのに病院へ行ったら、治療費や慰謝料の不正請求を疑われそう」とためらってしまう方もいるでしょう。

関連記事『交通事故で痛くないのに通院しても良い理由と不正請求を疑われない対処法』では、痛くないけれど通院するべき理由と併せて、加害者側の保険会社から不正請求の疑いをかけられるリスクを下げる方法を解説しています。

Q2.あとから初診時と別の部位に痛みが出たら?

初診時は腰に痛みがあると伝えていたけれど、あとから首に痛みが出てきたようなケースも存在します。その場合は、まずは主治医に痛みが新たに生じたことを伝えてください

むちうちの一部の症状があとから生じることもありますし、骨折があとから発覚することもあります。しっかりと医師の診察を受け、カルテなどに症状を記載してもらいましょう。

ただし、あとから別の部位に痛みが出た場合、その部分については事故との因果関係が認められない可能性もあります。とくに、あとから痛みが出た部位に後遺症が残った場合、後遺障害認定を受けられない可能性が高いことはあらかじめ留意しておきましょう。

もし、明らかにあとから生じた痛みと交通事故に因果関係があると医師が認めるのなら、診断書にその旨を記載してもらうことをおすすめします。

Q3.あとから痛みが出たとき整骨院に通ってもいい?

あとから痛みが出た場合、病院ではなく整骨院に通って怪我を治そうとする方もいらっしゃいます。

しかし、整骨院に通うのは病院を受診して医師の許可を得たあとにしましょう。その理由は以下のとおりです。

  • 整骨院では診断書が作成されず、人身事故に切り替えられないから
  • 医師の許可なく整骨院に通うと、治療費や慰謝料を適正に支払ってもらえないから
  • 整骨院だけに通っていると、後遺障害等級に認定されない可能性があるから

整骨院での施術は医療行為ではないため、有効性や必要性を認められづらいです。また、「あとから痛みが出たと主張しているが、本当は単なる健康維持のために施術を受けているのでは?」といったように、交通事故との因果関係を疑われる可能性もあります。

整骨院での施術がケガを治すために有効と示すには、医療のプロである医師の許可を得ておくことが重要になるのです。

交通事故で整骨院に通いたい場合は、『交通事故の治療を整骨院で受けても慰謝料はもらえる|慰謝料の計算と注意点』の記事をあらかじめご参考ください。整骨院で治療しても慰謝料をもらうための注意点がわかります。

Q4.すでに示談していたら慰謝料はもらえない?

交通事故においては、車の修理費や治療費といった損害額がすべて確定したら「示談交渉」がはじまります。

あとから痛みが出てきた場合は、当初は想定していなかった損害が遅れて判明したということになります。痛みが出てきたときにはすでに示談が成立しているケースもあるでしょう。

原則として、すでに示談を終えてしまっている場合、示談書に記載されている内容以外の請求をすることはできません。多くの示談書には、「この示談書にある損害以外、今後一切請求しない」という文言が含まれているからです。

そのため、示談を締結した後に「あとから痛みが出てきたので治療費を払ってほしい」と言っても、基本的には認められないでしょう。

しかし、以下のケースでは、例外的にあとから出てきた痛みに関する損害賠償を受けられることもあります

  • 物損部分のみ示談していたケース
  • 事故現場で不当な示談をしていたケース
  • 示談書にあとから出た痛みに対応できる文言があるケース

それぞれのケースについて、詳しく解説していきます。

物損部分のみ示談していたケース

物損のみの示談を締結していた場合は、あとから痛みが出ても治療費や慰謝料を請求することができます。

交通事故の示談は、物損部分・人身部分をわけて締結することが可能です。あとから痛みが出てきたときの治療費や慰謝料は「人身」の損害であり、示談が物損のみなら、この分については示談が成立していない扱いとなります。

示談書のなかに「示談書(物損)」、「損害は物損のみ」などの文言があれば、その示談書は物損のみの示談について記したものと言えます。

事故現場で不当な示談をしていたケース

事故現場で「損害賠償として○万円支払う」といった示談がなされていた場合、その金額や作成状況によっては示談自体が無効になる可能性があります。

具体的には、賠償の範囲が実態とかけ離れていた、脅迫を受けて示談したといった事情があれば、示談の撤回が認められるでしょう。

もし、上記のような事情で事故現場で示談してしまい、撤回したいときは「示談は無効である」旨の主張をしていく必要があります。被害者自身による交渉では主張が認められない可能性も高いので、弁護士にご相談ください。

示談書にあとから出た痛みに対応できる文言があるケース

以下のような「留保条項」が示談書に含まれている場合、示談成立後に発覚した損害についても請求が可能になります。

  • 物損部分のみ示談とし、傷害部分については別途協議する
  • 記載しているもの以外の損害が新たに発生した場合、発生後に別途協議する

示談書を作成する際は、上記のような文言を盛り込むとよいでしょう。

なお、最高裁判所の判例に、示談当時に予測できなかった損害については示談後でも請求できると示したものがあります。

示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない

最判昭和43.3.15

上記の文章を見てみると、示談の効力は示談当時に予測できた損害についてのみ及ぶ、つまり示談当時はなかった痛みについては改めて損害賠償を請求できるようにも思えます。

しかし、実は判決全文には「全損害を把握しづらい状況」などの限定的な条件がついています。よって、上記の判例をもとにあとから出た痛みについて損害賠償を請求しても、「示談当時に把握できたのでは?」「予測できなかったとまでは言えないのでは?」と反論される可能性があるでしょう。

確実に示談金を受けとるためにも、事故現場で示談しない、示談書の作成時にあとから出た痛みについて対応できる文言を盛り込むことが大切です。

事故であとから痛みが出てきたら弁護士に相談しよう

交通事故であとから痛みが出てきて不安な場合、弁護士に気軽に相談してみることをおすすめします。ここからは、弁護士への相談・依頼のメリットをお伝えしていきます。

無料なら悩みを気軽に弁護士に相談できる

交通事故にあい、あとから痛みが出てきたときの混乱や精神的な負担は大変なものです。

無事に治るのか心配になるだけではなく、加害者側の保険会社との対応や人身事故への切り替え、慰謝料が適切に支払われるのかなど、さまざまな不安を感じるでしょう。

交通事故分野の実務経験が豊富な弁護士に相談すれば、実地に沿った知識から、交通事故でお困りの皆様の不安にこたえることができます。

弁護士相談は気軽にはじめられます。アトム法律事務所はLINEや電話での無料相談を広く受け付けておりますので、ちょっとしたご不安の解決にも気軽にご活用ください。

無料相談のみの利用、セカンドオピニオンとしての利用でも大丈夫です。強引に契約を迫ることはないのでご安心ください。

ご相談の予約は、24時間365日いつでも受け付けています
お問い合わせをお待ちしております。

通院中に慰謝料を減らさないための助言ももらえる

通院中に弁護士に相談しておけば、慰謝料を減額されないためのアドバイスをもらうことも可能です。

通院中に慰謝料減額の事由を作ってしまった場合、示談交渉では取り返せない可能性が高いです。具体的には、以下のような行動をしてしまうと、慰謝料が減額されるリスクが高くなります。

  • 通院頻度が低すぎる
  • 通院頻度が高すぎて過剰診療を疑われる
  • 通院を中断する
  • 医師の指示なく整骨院に通う

あらかじめ弁護士に相談しておけば、知らず知らずのうちに損することを防げるでしょう。

また、加害者側の保険会社による治療費支払いの打ち切りなど、通院中に起こり得るトラブルに関しても対処法を聞くことができます。

弁護士に依頼すれば慰謝料の増額も期待できる

弁護士に依頼した場合、慰謝料の大幅な増額を期待することもできます。

先述のとおり、自賠責基準・任意保険基準と弁護士基準では、計算される慰謝料の金額が大きく異なります。しかし、弁護士基準の慰謝料は、被害者自身による交渉では認められないことがほとんどなのです。

一方、弁護士が交渉すれば、加害者側の保険会社は裁判への発展を懸念し、弁護士基準の慰謝料を認めることが多くなります。

弁護士費用特約を使う、無料相談で慰謝料の増額幅と弁護士費用の見積もりを取るなど、弁護士に依頼しても弁護士費用で損しない方法の活用も視野に入れ、弁護士への依頼を検討してみてください。

ここで、実際にアトム法律事務所が受任した案件の中から、弁護士依頼で増額を叶えた例を厳選してご紹介します。

捻挫で後遺障害なしの事例

傷病名手首捻挫、腰椎捻挫
後遺障害等級なし
当初の提示額31万円
最終的な回収額147万円

むちうちで後遺障害14級の事例

傷病名頚椎捻挫
後遺障害等級14級
当初の提示額75万円
最終的な回収額261万円

むちうちで後遺障害12級の事例

傷病名頚椎捻挫
後遺障害等級12級
当初の提示額256万円
最終的な回収額670万円

また、弁護士に依頼すれば、加害者側の保険会社とのやりとりや、後遺症が残った場合の後遺障害等級の手続きといったサポートも受けられます。

弁護士に依頼することで得られるメリットをさらに知りたい方は、関連記事『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選』をご確認ください。

ご自分の負担を極力減らし、よりよい結果を得たい方は、まずは無料相談からはじめてみましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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