交通事故で発症したPTSD・うつ病(非器質性精神障害)と後遺障害

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PTSD・うつ病

交通事故は、身体的な傷害だけでなく、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病といった精神的な障害も引き起こすことがあります。

交通事故でPTSDやうつ病などの非器質性精神障害を発症した場合は、早めに専門医に相談して適切な治療を受け、後遺症が残った場合には後遺障害の認定を受ける必要があるでしょう。

しかし、PTSDやうつ病については交通事故により症状が生じたのか、後遺障害が認定される症状なのかといった点を証明することが困難なことがあります。

そのため、本記事では、交通事故によりPTSDやうつ病などの非器質性精神障害を発症した場合に、加害者へ慰謝料や損害の請求を行う際に知っておくべきことを解説しています。

PTSDやうつ病による慰謝料や損害の請求を適切に行いたい方は、一度ご確認ください。

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交通事故とPTSD・うつ病(非器質性精神障害)

交通事故は、身体的な傷害だけでなく、精神的な障害も引き起こすこともあるでしょう。この精神的な障害を「非器質性精神障害」といいます。

非器質性精神障害には、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病などがあります。

PTSDの原因と症状

PTSDは、交通事故など命に関わるような経験がトラウマとなって発症する精神疾患です。

三大特徴として、「持続的再体験症(フラッシュバック)」「持続的覚醒亢進症状」「持続的回避症状」があげられます。

交通事故によるPTSDについて、主な症状は以下の通りです。

  • 交通事故の記憶がフラッシュバックして強い不安や恐怖を感じる
  • 救急車のサイレンを聞くなど、事故を思い出すものに触れるとドキドキする
  • 事故に遭う夢を何度もみてしまう
  • ささいなことでイライラしたり驚いたりするようになる
  • 睡眠障害
  • 集中力の低下
  • 感情の麻痺

以上のような症状が1ヶ月以上続く場合は、PTSDである可能性が高いです。時間経過とともに自然に回復することも多いですが、症状を感じたら迷わず治療を受けましょう。

うつ病の原因と症状

うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下、食欲の変化、睡眠障害、疲労感などの症状が続く精神疾患です。

うつ病の原因は環境や生活習慣などさまざまな要因が考えられますが、交通事故を原因とする場合もあります。

たとえば、交通事故でむちうちを負い、慢性的な痛みに長いあいだ悩まされ続けたり、治療が長引きこの先を悲観してしまったりと、うつ病発症につながる可能性はいくらでもあります。

このように、交通事故は身体的な傷害だけでなく、精神的な負担も大きく、うつ病を発症する可能性があるのです。

慰謝料請求のためにも早期の受診と治療を

PTSDやうつ病は、事故発生後に被害者自身が症状の発生を認識してもすぐに受診しないというケースも珍しくありません。

しかし、事故から受診までの期間が経過していると、交通事故とPTSDやうつ病の発生との間に因果関係があるのかどうかを疑われ、治療費や慰謝料の請求が難しくなる危険性があるのです。

このような事態を避けるためにも、少しでも気になる点がある場合には、PTSDやうつ病を発症していないかについて早期に受診してください。

早期の受診が適切な治療だけでなく、加害者に対する損害賠償請求のためにも効果的といえます。

PTSD・うつ病(非器質性精神障害)の治療法

事故後に精神が不安定なら精神科や心療内科に通院

交通事故後、不安な気持ちが続くようであれば、早めに専門医による診療を受けましょう。

PTSDやうつ病といった非器質性精神障害の治療は、精神科や心療内科などで行われます。

非器質性精神障害の具体的な治療法

適切な治療を受けることで、症状を改善させ、日常生活を送れるようになることが期待できるでしょう。

非器質性精神障害の治療法は主に、以下のものがあります。

治療法
PTSD持続エクスポージャー療法
EMDR
認知療法
グループ療法
薬物療法 など
うつ病十分な休養
薬物療法
認知行動療法 など

これらの治療法は、患者の症状や状態によってさまざまです。交通事故でPTSDやうつ病といった非器質性精神障害を発症した場合は、一人で悩まずに専門医に相談してください。

PTSD・うつ病(非器質性精神障害)の後遺障害

後遺障害の基準は診断名ではない

PTSDやうつ病といった診断名がつき、後遺症が残っただけで後遺障害が認定される訳ではありません。

交通事故の後遺障害認定では、以下のような症状が問題になっているかが非器質性精神障害の認定基準となります。

非器質性精神障害の認定基準

  • 以下の精神症状のうち、1つ以上の精神症状を有している
    かつ
  • 以下の能力に関する判断項目のうち、1つ以上の能力に障害が認められる
精神症状1.抑うつ状態
2.不安の状態
3.意欲低下の状態
4.慢性化した幻覚・妄想性の状態
5.記憶または知的能力の障害
6.その他の障害(衝動性、だるい・眠れないといった不定愁訴など)
能力に関する判断項目1.身辺日常生活
2.仕事・生活に積極性・関心を持つこと
3.通勤・勤務時間の遵守
4.普通に作業を持続すること
5.他人との意思伝達
6.対人関係・協調性
7.身辺の安全保持、危機の回避
8.困難・失敗への対応

また、東京地裁平成14年判決では、PTSDによる後遺障害認定の判断時には次の4要件の有無を検討すべきとしています。

  1. 強烈な外傷体験(自分または他人が死んだり、重傷を負ったりする外傷的な出来事の体験)
  2. 再体験症状(外傷的な体験が継続的にフラッシュバックしている)
  3. 回避症状(外傷と関連した刺激を持続的に回避する)
  4. 覚醒亢進症状(持続的に過覚醒の状態にある)

こうした背景から、PTSDで後遺障害等級認定を受けることは簡単なことではないとされています。

非器質性精神障害の後遺障害等級

うつ病やPTSDなどの非器質性精神障害で認定される可能性がある後遺障害等級は、後遺障害9級10号12級13号14級9号です。

判断基準については、労災認定における「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」という厚生労働省からの通達を交通事故のケースにも利用しています。

等級内容
9級10号通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当程度に制限されているもの
12級13号通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少障害を残すもの
14級9号通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの

上記の後遺障害等級の内、何級に該当するのかについては、非器質性精神障害の認定基準である「精神症状」と「能力に関する判断項目」の組み合わせで判断されます。

非器質性精神障害の9級

就労意欲能力低下
ある能力に関する判断項目の2.~8.のうち一つを喪失
能力に関する判断項目のうち四つ以上で、しばしば助言・援助が必要
ない能力に関する判断項目の1.について、時に助言・援助が必要

非器質性精神障害の12級

就労意欲能力低下
ある能力に関する判断項目のうち四つ以上で、時に助言・援助が必要
ない能力に関する判断項目の1.について、適切または概ねできる

非器質性精神障害の14級

就労意欲能力低下
ある能力に関する判断項目のうち一つ以上で、時に助言・援助が必要

非器質性精神障害の後遺障害慰謝料

うつ病やPTSDにより生じた後遺症の症状が、後遺障害に該当するという認定を受けた場合には、後遺障害慰謝料を請求することができます。

後遺障害慰謝料の相場額は認定された後遺障害等級に応じて異なり、うつ病やPTSDといった非器質性精神障害の後遺障害慰謝料の相場は110万円から690万円です。

後遺障害慰謝料(抜粋)

等級相場額
9級690万円
12級290万円
14級110万円

()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用

交通事故で非器質性精神障害を発症した場合、後遺障害の認定を受けることで、後遺障害慰謝料を請求できます。

後遺障害認定を受けるためには、医師の診断書や通院記録などの資料を用意し、保険会社に提出することが必要です。

適切な等級で後遺障害の認定を受けるためには専門知識が必要となってくることから、弁護士に相談すべきでしょう。

PTSD・うつ病(非器質性精神障害)により請求できる損害や慰謝料

交通事故によりPTSDやうつ病となり、後遺障害等級の認定がなされた場合には、後遺障害慰謝料以外にも以下のような損害や慰謝料について請求が可能です。

  • 治療関係費
    投薬代、カウンセリングの費用など治療に必要であった費用
  • 通院交通費
    原則として公共交通機関の利用料金となる
  • 休業損害
    治療のために仕事ができなかったことで生じる減収
  • 後遺障害逸失利益
    後遺障害により事故前のように仕事ができなくなったことで生じる将来の減収分
  • 入通院慰謝料
    治療のために入院や通院したことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料
    入通院の期間に応じて請求が可能

後遺障害慰謝料以外の慰謝料や損害についても、相場の金額を算定したうえで、加害者側への請求を行う必要があります。

それぞれの損害や慰謝料の相場額に関する計算方法を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

慰謝料や後遺障害逸失利益の相場額を簡単に計算できる計算機

以下の自動計算機を利用すると、慰謝料や後遺障害逸失利益の相場額を簡単に知ることが可能です。
もっとも、交通事故の個別の事情は考慮できない点にご注意ください。

事故によるPTSD・うつ病(非器質性精神障害)は弁護士に相談

後遺障害の認定を有利に進めることができる

後遺障害認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求が認められるようになります。

そして、後遺障害認定の申請には、後遺障害診断書や通院記録などの資料を用意して、保険会社に提出せねばなりません。

審査に必要な書類が不足していると再提出を求められて認定結果が出るまでに時間を要したり、資料不足のまま審査されてしまい適切な等級認定を受けられない可能性もあるのです。

特に、PTSDやうつ病の後遺障害認定については、後遺障害の発生を客観的に判断することが難しいため、後遺障害の発生を適切に証明するには専門知識や認定手続きの経験が大切になります。

弁護士に依頼すれば、交通事故に関する専門知識を活かして、後遺障害の認定を受けるために必要な証拠を収集し、適切な方法で後遺障害の発生について主張してくれるでしょう。

以下の関連記事では後遺障害認定の流れや認定率を上げるためのコツについて解説中です。

関連記事

交渉から解放されてストレスが減る

交通事故による非器質性精神障害の症状は、被害者の日常生活を生きづらいものに変えてしまいます。加害者側の保険会社との交渉中に、交通事故を思い出すきっかけになってしまい、PTSDの症状があらわれる可能性があるでしょう。

もちろん、弁護士であっても被害者自身の損害賠償請求を適切におこなうために、交通事故の話をお伺いする必要はあります。

しかしながら相手の保険会社とのやり取りがなくなることで、ストレスの緩和につながる可能性があるでしょう。

関連記事『交通事故を弁護士に依頼するメリット8選|弁護士は何をしてくれる?』では、交通事故の賠償問題を弁護士に任せるメリットを解説しています。弁護士への相談・依頼を検討している方は関連記事も参考にしてください。

適切な補償を受けることができる

交通事故による非器質性精神障害の被害者は、適切な補償を受けるべきです。

しかしながら、加害者側の任意保険会社は、被害者が本来なら受け取れるはずの補償よりも少ない金額しか提示してきません。

被害者が保険会社に相場の金額へ増額するよう交渉しても認めてくれないのが通常です。

一方、弁護士は交通事故の専門知識を有しており、相場の金額になるように適切な増額交渉を行うことができます。

専門家からの根拠のある主張であり、示談交渉が決裂すると裁判となる可能性が高いことから、弁護士による増額交渉は成功しやすいといえるのです。

加害者側の提示額に納得がいかない場合には、弁護士に相談してみるべきでしょう。

弁護士に相談・依頼する際の費用負担は抑えることができる

弁護士に相談・依頼する場合には、弁護士に支払う費用を気にする方が多いでしょう。

弁護士に支払う費用に関しては、弁護士費用特約を利用することで抑えることが可能になります。

交通事故の弁護士費用特約は、保険会社が被害者の弁護士費用を支払ってくれるという特約です。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約の補償上限は、法律相談料として10万円まで、弁護士費用として300万円までとしているものが多いです。

こうした補償上限の範囲内で弁護士費用が収まることは珍しくないため、弁護士費用特約を利用することで、被害者は自己負担金なしで弁護士を立てられることになります。

弁護士費用特約が使えるなら、費用の心配がぐんと減るのです。

弁護士費用は被害者本人の名義にかぎらず、一定の範囲の家族名義の特約が適用されることもあります。関連記事を参考に、ぜひ交通事故の弁護士費用特約が使えるかどうかも調べてみてください。

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アトム法律事務所では、交通事故でケガをした方に向けての無料相談をおこなっています。交通事故で負った身体的なケガは治っても、精神的な問題を抱えてしまうこともあるでしょう。

  • 精神的な問題についても損害賠償請求できる?
  • PTSDと診断されて後遺障害等級認定を受けるための手続きは?
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PTSDやうつといった非器質性精神障害でお悩みの方は、アトム法律事務所の無料相談がおすすめです。

アトム法律事務所の特徴

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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