交通事故によるうつ病の症状とは?うつ病の後遺障害認定はどうなる?

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交通事故の精神的ショックや長引く治療による心身の疲労などが原因で、うつ病を発症することがあります。

うつ病と診断された場合、後遺障害等級の9級から14級に認定される可能性があり、最大で690万円(弁護士基準)の後遺障害慰謝料を請求できます。

本記事では、交通事故によるうつ病の症状、後遺障害認定の基準、賠償金の相場、うつ病が認定された裁判例について解説します。

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交通事故によるうつ病とは?

うつ病とは?

うつ病とは、「うつ病エピソード」と呼ばれる症状が見られる気分障害の総称です。

気分障害とは精神障害の一種で、長期間にわたり感情の変動が日常生活に支障をきたす症状を指します。

うつ病には、以下のような症状があります。

  • 身体反応
    睡眠障害(不眠・過眠)、食欲の変化(減退・増進)、疲労感、倦怠感、自律神経症状(頭痛、便秘、口渇など)など
  • 精神反応
    抑うつ気分(気分の落ち込み)、意欲・関心の低下、集中力の低下、思考制止、悲観的思考、自殺念慮など

うつ病を発症すると、上記のような症状により人と交わることが困難になり、外出もできず引きこもりがちになったりします。

交通事故もうつ病の原因になる

うつ病の原因は環境や生活習慣などさまざまな要因が考えられますが、交通事故を原因とする場合もあります。

たとえば、交通事故でむちうちを負い、慢性的な痛みに長いあいだ悩まされ続け、うつ病になるケースもあるでしょう。

また、交通事故で重傷を負い、治療が長引いたり、後遺障害が残ること等この先を悲観してしまったりすることで、うつ病の発症につながる可能性もあります。

うつ病の受診と治療

交通事故の後、できるだけ早期に精神科等を受診

交通事故後、不安な気持ちが続くようであれば、できるだけ早く精神科や診療内科を受診しましょう。

早期の受診は回復のためだけでなく、賠償請求の観点からも非常に重要です。

専門医による精神医学的治療がなされていないと、事故とうつ症状の因果関係を否定され、賠償を受けられなくなるおそれがあります。

また、後遺症が残った場合に、後遺障害認定が下りなくなるリスクも高まります。後遺障害等級が認定されなければ、後遺症に関する賠償金(後遺障害慰謝料、逸失利益)は請求できません。

交通事故によるうつ病の治療方法

うつ病の治療方法としては、以下のようなものがあげられます。

  • 十分な休養
  • 薬物療法
  • 認知行動療法 など

ただし、治療法は個人の症状や状態によりさまざまです。

交通事故でうつ病になった場合は、お一人で悩まずに、まずは専門医に相談してください。

交通事故によるうつ病の後遺障害認定

うつ病の後遺障害認等級は?

後遺障害とは、症状固定(これ以上治療を継続しても、回復が見込まれない状態)をむかえた後遺症のうち、自賠責保険の損害保険料率算出機構による等級の認定を受けたものを指します。

後遺障害等級には1級から14級があり、数字が小さくなればなるほど後遺障害の程度が重く、賠償金の相場も高額になります。

交通事故によるうつ病について、後遺障害等級が認定される場合、以下のような等級になる可能性があります。

うつ病の後遺障害等級

等級内容
9級10号  通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当程度に制限されているもの
12級13号   通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少障害を残すもの
14級 9号  通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの

うつ病の後遺障害等級の認定基準

うつ病などの精神症状の後遺障害等級については、一般に以下のような認定基準が用られます。

うつ病などの後遺障害認定基準

  • 以下の精神症状のうち、1つ以上の精神症状を有している
    かつ
  • 以下の能力に関する判断項目のうち、1つ以上の能力に障害が認められる
精神症状1.抑うつ状態
2.不安の状態
3.意欲低下の状態
4.慢性化した幻覚・妄想性の状態
5.記憶又は知的能力の障害
6.その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴等)
能力に関する判断項目1.身辺日常生活
2.仕事・生活に積極性・関心を持つこと
3.通勤・勤務時間の遵守
4.普通に作業を持続すること
5.他人との意思伝達
6.対人関係・協調性
7.身辺の安全保持、危機の回避
8.困難・失敗への対応

精神症状の内容

精神症状の内容について一つずつ見ていきます。

1.抑うつ状態

持続するうつ気分(悲しい、寂しい、憂うつである、希望がない、絶望的であるなど)、何をするのもおっくうになる(おっくう感)、それまで楽しかったことに対して楽しいという感情がなくなる、気が進まないなどの状態をいいます。

2.不安の状態

全般的不安や恐怖、心気症、脅迫など強い不安が続き、強い苦悩を示す状態をいいます。

3.意欲低下の状態

すべてのことに対して関心が湧かず、自発性に乏しくなる、自ら積極的に行動せず、行動を起こしても長続きしない、口数も少なくなり、日常生活上の身の回りのことにも無精となる状態をいいます。

4.慢性化した幻覚・妄想性の状態

自分に対する噂や悪口、命令が聞こえるなど実際には存在しないものを知覚体験する(幻覚)、自分が他者から害を加えられている、食べ物や薬に毒が入っているなど確信が異常に強く、訂正不可能な妄想を持続的に示す状態をいいます。

5.記憶又は知的能力の障害

非器質性の記憶障害としては、自分が誰であり、生活史の全部または一部を思い出せない状態(解離性(心因性)健忘)を、非器質性の知的能力の障害としては、自分の名前や年齢を答えられない、1+1=3のように的外れの回答をするような状態(ガンザー症候群、仮性認知症)をいいます。

6.その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴等)

1~5に分類できない多動(落ち着きの無さ)、衝動行動、徘徊、身体的な自覚症状やだるい、眠れないなどの状態をいいます。

能力に関する判断項目を評価する際のポイント

能力に関する判断項目について一つずつ見ていきます。

1.身辺日常生活

入浴・更衣など清潔保持を適切にすることができるか、規則的に十分な食事をすることができるかなどが判定のポイントです。なお、特筆すべき事項がある場合は、食事・入浴・更衣以外の動作についても加味して判定が行われます。

2.仕事・生活に積極性・関心を持つこと

仕事の内容、職場での生活や働くことそのもの、世の中の出来事、テレビ、娯楽など日常生活に対する意欲や関心があるか否かが判定のポイントです。

3.通勤・勤務時間の遵守

規則的な通勤や出勤時間など約束時間の遵守が可能かどうかが判定のポイントです。

4.普通に作業を持続すること

就業規則に則った就労が可能かどうか、普通の集中力・持続力をもって業務を遂行できるかどうかなどが判定のポイントです。

5.他人との意思伝達

職場の上司や同僚に対して発言を自主的にできるかなど他人とのコミュニケーションが適切にできるかが判定のポイントです。

6.対人関係・協調性

職場において上司・同僚と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうかなどが判定のポイントです。

7.身辺の安全保持、危機の回避

職場における危険から適切に身を守れるかどうかが判定のポイントです。

8.困難・失敗への対応

職場で新たな業務上のストレスを受けたときにどの程度適切に対応できるか(極度に緊張したり、混乱したりすることなく対処できるか)などが判定のポイントです。

実際に、何級に該当するのかについては「精神症状」と「能力に関する判断項目」の組み合わせで判断されます。

うつ病で後遺障害9級に認定される場合

就労意欲能力低下
ある能力に関する判断項目の2.~8.のうち一つを喪失
能力に関する判断項目のうち4つ以上で、しばしば助言・援助が必要
ない能力に関する判断項目の1.について、時に助言・援助が必要

うつ病で後遺障害12級に認定される場合

就労意欲能力低下
ある能力に関する判断項目のうち4つ以上で、時に助言・援助が必要
ない能力に関する判断項目の1.について、適切または概ねできる

うつ病で後遺障害14級に認定される場合

就労意欲能力低下
ある能力に関する判断項目のうち一つ以上で、時に助言・援助が必要

うつ病の後遺障害慰謝料の相場金額

うつ病について後遺障害等級が認定された場合、後遺障害慰謝料は等級に応じて、以下のような金額が相場となります。

後遺障害慰謝料(抜粋)

等級自賠責基準弁護士基準
9級249(245)690
12級94(93)290
14級32(32)110

単位:万円
()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用

自賠責基準とは、自賠責保険から支払われる保険金の金額です。

弁護士基準とは、裁判になった場合の慰謝料相場です。自賠責基準を上回る賠償金については、事故相手本人や任意保険会社に請求することになります。

【コラム】交通事故でうつ病が悪化した場合はどうなる?

交通事故被害者の中には、事故前からうつ病などの精神疾患を発症していた人もいます。

そのような場合でも、交通事故によりうつ病などの精神疾患が悪化した結果、上記の後遺障害認定基準を満たしていれば、後遺障害等級は認定されます。

ただし、交通事故前のうつ病(精神疾患)の症状が、既に後遺障害等級認定基準を満たしていた場合、もともとあった障害分の慰謝料が減額されるというルールになっています。

このルールのことを「加重ルール」といいます。

たとえば、事故前から後遺障害14級相当のうつ病を発症していた交通事故被害者が、事故により症状が悪化して後遺障害12級相当の精神疾患と判定された場合、後遺障害慰謝料額は12級の290万円から14級の110万円を差し引いた180万円となります。

また、後遺障害以外の損害賠償金額についても、交通事故前からうつ病を発症していた場合、素因減額が争点になることが多いのが注意点となります。

交通事故によるうつ病が認定された裁判例

事故によるうつ病の発症が認められた事例

大阪地判平成18年9月25日(平13(ワ)9267号)

交通事故により、腰部打撲等の傷害を負った被害者について、整形外科的症状が改善しなかったこと、就労直後に事故に遭い、その後復職の見込みが立たなかったこと、事故の補償問題が難航したこと等があいまって、うつ病を発症したとして、事故と被害者に生じたうつ病との間の因果関係が認められた事例。


賠償額

損害額は、58,443,926円(後遺障害慰謝料600万円を含む)5。
一方、頸椎捻挫や外傷性頚腕症候群等は通常、治癒まで長期間を要せず、症状が遷延し、うつ病を発症するに至ったのは、被害者の心因的要素が相当影響しているとして、素因減額2割を認めた。
また、過失相殺50%、損益相殺等を考慮して、裁判所は、最終的に234万円及び遅延損害金の賠償を命じた。

傷病名

頸椎捻挫、外傷性頸腕症候群、頭部外傷、腰部挫傷、うつ病

後遺障害等級

併合9級相当
うつ病に伴う意欲の低下、全身倦怠感等について9級
外傷性頸腕症候群、腰部打撲及び捻挫による頭痛、吐き気等について14級

事故によるうつ病の悪化が認定された事例

京都地判平成25年3月14日(平成24年(ワ)第2819号)

交通事故によるPTSDの発症、及びうつ病の症状の悪化について、14級9号相当の後遺障害を認定する一方、心的疾患に関連する5割の素因減額を認めた事例。


賠償額

損害額は合計で584万5,442円(後遺障害慰謝料110万円を含む)。
素因減額5割、損益相殺(-172万3,502円)、弁護士費用+30万円を考慮して、裁判所は、337万0,155円及び遅延損害金の支払いを命じた。

傷病名

PTSDの発症、及びうつ病の症状の悪化

後遺障害等級

14級9号相当

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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