事故後の吐き気・頭痛・めまいの後遺障害と慰謝料|むちうちなど原因も解説

交通事故の後に吐き気をもよおしたり、頭痛に悩まされたり、めまいで生活に支障が出ることは十分起こりえます。こうした症状の原因は、むちうち、脳損傷、平衡機能障害などさまざまです。
また、こうした症状が完治せずに続く場合は後遺障害として認定され、後遺障害慰謝料などを請求できる可能性があります。
交通事故後の吐き気・頭痛・めまいの原因や後遺障害等級・慰謝料についてみていきましょう。
目次

交通事故後に吐き気・頭痛・めまいがする原因は?
吐き気や頭痛、めまいは、交通事故を原因として発生することもあります。
具体的には、交通事故による以下のケガが吐き気や頭痛、めまいを引き起こすことがあります。
- むちうちによる神経などの損傷・圧迫
- 筋肉の緊張による血行不良
- 頭部外傷による脳損傷
- 脳脊髄液減少症
- 内耳損傷による平衡機能障害
- 全身の打ち付けによる内臓損傷
それぞれの原因がなぜ吐き気や頭痛、めまいにつながるのか、具体的にどのような症状を感じるのか見ていきましょう。
原因(1)むちうちによる神経などの損傷・圧迫
交通事故でむちうちになると、首の骨や筋肉・神経が損傷したり、患部の炎症によって神経や頸動脈が圧迫されたりします。
その結果、後頭部を中心として、頭全体を締め付けるような痛みや吐き気、めまいを感じることがあります。
むちうちは交通事故で多いケガで、たとえば追突事故で頭部が大きく前後に振れた場合などに発症することがあるでしょう。
むちうちの症状としては他に、しびれや痛みなどがあります。交通事故で頭部が大きく振れた場合やしびれや痛みも併発している場合は、むちうちの可能性があるでしょう。
ただし、むちうちは自覚症状にとどまることも多く、検査では異常を確認できないこともあります。医師に自分の感じている症状や日常生活への影響を伝え、適切な診断を受けられるよう意識してみてください。
- むちうちが頭痛などにつながる理由
首の骨や筋肉・神経が損傷したり、患部の炎症により神経や頸動脈が圧迫されたりする - 症状の例(頭痛の場合)
後頭部を中心として、頭全体に締め付けるような痛みを感じる - むちうちを引き起こす事故例
追突事故
※むちうちなどで頚椎を損傷し、めまいや頭痛のほか、耳鳴り・不眠といった症状もみられる場合は、バレリュー症候群である可能性もあります。
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原因(2)筋肉の緊張による血行不良
交通事故時に首周りの筋肉が過度に緊張し、固まることで血行が悪くなり吐き気や頭痛、めまいを引き起こすこともあります。
肩こりなどで頭痛を感じる人もいますが、それと似たような原理です。
たとえば頭痛の場合は、後頭部を中心として頭全体を締め付けられるような痛みを感じるでしょう。
- 筋肉の緊張が頭痛などにつながる理由
肩周りの筋肉が凝った状態になり、血行不良が発生する - 症状の例(頭痛の場合)
後頭部を中心として、頭全体に締め付けるような痛みを感じる
原因(3)頭部外傷による脳損傷
交通事故の強い衝撃で頭部外傷を負うと、脳損傷が起こり、吐き気やめまい、頭痛が発生することもあります。
具体的には、頭蓋骨骨折や脳挫傷、くも膜下出血、くも膜下血腫、くも膜下外血腫などが考えられます。脳震盪で頭痛が発生することもあるでしょう。
頭部外傷では、意識障害を併発することもあります。
頭を強く打った後、特に異常がないように見えても、だんだん症状が進んで危険な状態になることもあるので、早急に病院を受診してください。
- 頭部外傷による脳損傷が頭痛などにつながる理由
頭蓋骨骨折や脳挫傷、くも膜下出血、くも膜下血腫、くも膜外血腫などにより脳が損傷を受ける - 症状の例(頭痛の場合)
気を失うほどの激しい頭痛(くも膜下出血の場合)
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原因(4)脳脊髄液減少症
脳脊髄液減少症も、交通事故による吐き気や頭痛、めまいの原因として考えられます。
脳脊髄液減少症とは、頭蓋内部の硬膜が損傷することで脳脊髄液が減少し、頭蓋内部の圧力が下がってしまう傷病です。
これにより、起き上がったときに頭痛を感じる起立性頭痛や、吐き気、めまいが発生することがあります。
脳脊髄減少症は、むちうちを原因として発生することもあるとされています。
追突事故などでむちうちになり頭痛や吐き気、めまいを感じる場合は、脳脊髄減少症の可能性もあるでしょう。
- 脳脊髄減少症が頭痛などにつながる理由
たとえば起立性頭痛は、起き上がる際、脳脊髄液が減少しているために脳と硬膜とが接触してしまうことが原因で発生する - 症状の例(頭痛の場合)
起立性頭痛、吐き気、めまいなど
原因(5)内耳損傷による平衡機能障害
頭部を打ち付けた際に内耳が損傷を受け、平衡機能障害を引き起こしている可能性もあるでしょう。平衡機能障害は、めまい、ふらつき、立ちくらみなどの症状を引き起こします。
また、頭部外傷や耳介の損傷で、平衡機能障害の他にも、難聴や耳鳴り、耳漏などの症状が出ることもあります。
- 内耳損傷がめまいなどにつながる理由
内耳損傷により平衡機能に障害が生じる - 症状の例
めまいやふらつき、立ちくらみなど
難聴や耳鳴りを併発することもある
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原因(6)全身の打ち付けによる内臓損傷
交通事故で全身を強く打ち付けられると、内臓損傷が起こることがあります。内臓損傷の結果、吐き気や嘔吐、腹痛などの症状があらわれることがあります。
- 全身の打ち付けが吐き気などにつながる理由
全身の打ち付けにより内臓が損傷する - 症状の例
吐き気を感じることが多い
貧血やお腹の膨らみ、腹痛、顔色の悪化を伴うこともある
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メニエール病の原因は交通事故以外の可能性がある
回転性のめまいを引き起こすものとしてメニエール病が有名ですが、交通事故後に生じるめまいはメニエール病によるものではない可能性が高いです。
メニエール病はストレスや睡眠不足、疲労といった原因で発症するものであり、基本的には交通事故のような外傷によって発症するものではありません。
交通事故後に吐き気・頭痛・めまいを感じたら通院先は?
交通事故後に吐き気や頭痛、めまいを感じる場合、原因によって通院先が変わります。
ここでは通院先として整形外科、神経内科・脳神経外科、耳鼻科を解説しますが、どこにかかれば良いかわからない場合は、一旦総合病院や整形外科にかかると良いでしょう。
なお、頭痛や吐き気、めまいは自覚症状にとどまることも多く、医師に適切に症状の程度を伝えにくいことがあります。
痛みの種類・部位をメモしておくほか、痛みの程度を数値で表す、いつどんな風に痛みが始まりどのくらい続いたのかを記録しておくなどしておくと良いでしょう。
整形外科
明らかにむちうちに起因している吐き気や頭痛、めまいと推察される場合は、まず整形外科にかかって指示を仰ぎましょう。
むちうちでは整骨院や接骨院に通う方もいますが、まずは整形外科へ行き、きちんと検査を受けることが重要です。
神経内科・脳神経外科
頭部を打ち付けている場合の通院先としては神経内科、脳神経外科などがあげられます。吐き気・頭痛・めまいは初期症状に過ぎず、これから重大な症状が出てくる可能性もあるので、早急に病院を受診してください。
耳鼻科
頭部を打ち付けた場合でも、脳ではなく内耳を損傷している場合は耳鼻科で治療を受けることになります。
周囲が回るような回転感や、床が傾くようなめまいがある場合は、内耳損傷による症状の可能性があります。
吐き気・頭痛・めまいの後遺障害等級と慰謝料相場
交通事故後に吐き気や頭痛、めまいなどの神経症状が後遺症として残った場合、後遺障害に認定される可能性があります。
ここからは、どんな後遺障害等級に該当しうるのか、後遺障害慰謝料はどれくらいになるのかを解説します。
吐き気・頭痛・めまい以外にもなんらかの障害が残っている場合には、併合されてさらに重い後遺障害等級認定を受ける可能性も十分あります。
詳しくは、『後遺障害等級の認定ルール「併合・相当・加重」』をご覧ください。
吐き気・頭痛の後遺障害等級と慰謝料相場
吐き気・頭痛で認定される可能性がある後遺障害等級は、12級13号または14級9号です。慰謝料相場は12級13号で290万円、14級9号で110万円となります。
等級 | 認定基準 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの 慰謝料相場:290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの 慰謝料相場:110万円 |
交通事故後の吐き気や頭痛、めまいで後遺障害14級9号に認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
後遺障害14級9号認定の条件
- 交通事故と吐き気・頭痛に因果関係があること
- 症状を引き起こす神経症状があると推定されること
- およそ6ヶ月以上を目安に通院治療を続けていても治らないこと
後遺障害12級13号認定の条件
- 交通事故と吐き気・頭痛に因果関係があること
- 吐き気や頭痛といった神経症状を引き起こしている原因が画像検査で明らかになっていること
- およそ6ヶ月以上を目安に通院治療を続けていても治らないこと
吐き気や頭痛と交通事故の因果関係は、事故の状況や怪我の程度などからも判断されます。たとえば、車両の破損状態がわずかであったなら人体への影響も少なかったと推察され、後遺症が残るほどの大きなものではなく、後遺障害非該当という判断になることもあります。
後遺障害14級9号と12級13号はどのように違うのか、さらに具体的に解説した関連記事『後遺障害14級9号の認定基準と慰謝料・逸失利益|認定されない理由と対処法』もおすすめです。
加害者が提示する慰謝料はもっと低額
上記の慰謝料相場は、過去の判例に沿った法的正当性の高いもの(弁護士基準)です。
加害者側の任意保険会社は示談交渉の際、より低い金額(自賠責基準や任意保険基準)を提示してくる可能性が高いです。
加害者側からの提示額を鵜呑みにせず、増額交渉をしましょう。

弁護士基準の詳細や、他の基準との金額比較は『交通事故の慰謝料は弁護士基準(裁判基準)で請求!相場と増額成功のカギ』にてご確認ください。
めまいの後遺障害等級と慰謝料相場
めまいが後遺症として残った場合は、その程度に応じて3級、5級、7級、9級、12級、14級に認定される可能性があります。
等級 | 認定基準 |
---|---|
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 1990万円 |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1400万円 |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1000万円 |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 690万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの 110万円 |
めまいは交通事故の受傷に限った症状ではありません。メニエール病や心因性など、めまいには様々な原因が考えられるので、交通事故との因果関係を明確に示すことが重要です。
後遺障害認定されると逸失利益も請求できる
頭痛や吐き気、めまいで後遺障害認定を受けると、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益も請求できるようになります。
逸失利益とは、後遺障害により労働能力が低下したことで減ってしまう、生涯収入に対する補償です。

逸失利益は、事故前の収入や年齢、労働能力喪失率などから算定されます。
その他の慰謝料・逸失利益の相場は以下の計算機から大まかな目安を確認できますので、ご活用ください。逸失利益の計算方法は『交通事故の逸失利益とは?計算方法を解説!早見表・計算機で相場も確認』でも解説しています。
交通事故で請求できるその他の費目
交通事故でケガをした場合、後遺障害認定の有無に関係なく、治療期間中に負った精神的苦痛に対する入通院慰謝料、休業損害、治療費を請求できます。
- 入通院慰謝料:交通事故によるケガや治療で受けた精神的苦痛を緩和するための金銭
- 休業損害:交通事故によって休業したことによる収入の損失に対する賠償金
- 治療費:通院治療にかかった費用
- 通院交通費:通院のためにかかった交通費
吐き気・頭痛・めまいで後遺障害認定を受けるポイント
後遺障害認定の審査を受けるための申請方法には、「被害者請求」と「事前認定」があります。
頭痛や吐き気、めまいで後遺障害認定を受ける場合は、被害者請求を選択することがポイントです。
被害者請求は、必要書類を全て被害者側で集めたうえで、加害者側の自賠責保険会社を介して後遺障害認定の申請をする方法です。

事前認定では、後遺障害診断書以外の書類は加害者側の任意保険会社が用意してくれます。

吐き気や頭痛、めまいで後遺障害認定を受けるには、交通事故との因果関係を丁寧に証明することが重要です。
その点、被害者請求なら全ての書類を被害者側で管理でき、ブラッシュアップや追加書類の添付ができるため、事故との因果関係の証明を丁寧にできます。
なお、被害者請求での資料集めや後遺障害認定対策は、弁護士に任せることも可能です。
被害者請求に興味のある方は、関連記事『後遺障害申請の被害者請求|流れや弁護士に依頼すべき理由』をご覧ください。
交通事故後の吐き気・頭痛・めまいの損害賠償は弁護士へ!
交通事故後の吐き気や頭痛、めまいでお困りの方は、弁護士にご相談ください。弁護士は、事故被害者のお悩みをしっかり聞き取り、適切な賠償額を獲得するために全力でサポートします。
とくに、交通事故の損害賠償金額は弁護士が交渉することで増額できる可能性が高いです。本来は裁判所で認められうる金額を、弁護士ならば示談段階で目指せます。裁判所で認められる金額に近づける交渉は、被害者の独力では難しいものです。

交通事故後の吐き気や頭痛、めまいは、後遺障害に認められる可能性があります。しかし、神経症状は後遺障害等級認定を受けることが難しいため、手続きや申請業務に慣れていない被害者には複雑な手続きに思えるでしょう。
弁護士は、交通事故の状況や怪我の程度、吐き気の症状などから、後遺障害等級認定の可能性を判断し、適切な賠償請求をサポートいたします。また、保険会社との交渉や裁判の準備など、賠償請求に必要な手続きをすべて代わりにおこなうことが可能です。
交通事故後の吐き気、頭痛、めまいでお困りの方は、お早めに弁護士にご相談ください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了