タクシー・バス乗車中の交通事故|慰謝料請求相手は?バスと事故した場合も解説
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乗っていたタクシーやバスの事故に巻き込まれた場合、損害賠償金の請求相手は状況に応じて、タクシー会社・バス会社、あるいは事故の相手方、あるいはその両方となります。
ただし、示談交渉は請求相手本人とおこなうのではなく、請求相手が加入している共済や保険の担当者とおこなうことが一般的です。
この記事では、タクシーやバス乗車中の事故において、誰にどんな慰謝料・損害賠償金を請求するべきか、示談交渉ではどんなことに注意すべきか解説しています。
タクシーやバスの事故に巻き込まれた場合の対処法や、自身の車がタクシーやバスと接触事故になった場合についても解説しているので、確認してみてください。
目次
タクシーやバスの事故に巻き込まれた場合の対応
乗っていたタクシーやバスが事故になった場合、基本的には運転手の指示に従った行動をとることになります。
具体的には、次のような流れが予想されます。
- 運転手の指示に従って車両で待機、もしくは車両から降りて安全な場所で待機。
- 自身がケガをしている場合や、他にケガをしている人がいる場合は運転手に申告し、必要があれば応急処置をして医師に診てもらう。
- その場にとどまり警察の捜査に協力する必要があるかどうか、運転手や警察に確認する。振り替え輸送のタクシーやバスが手配されることもある。
事故後、その場を立ち去る場合は必ずタクシーやバス会社の連絡先を確認し、自身の連絡先も伝えておきましょう。
なお、自身がタクシーやバスと接触事故を起こした場合の対応は、次の通りです。
- 自身がケガをしていれば、周りに助けを求める。自身がケガをしておらず、他人がケガしている場合は安全な場所に移動させ、応急処置をする。
- 警察に連絡を入れ、現場の場所や被害状況を伝える。
- 警察到着後、警察の捜査に協力する。
自身がタクシーやバスと接触事故を起こした場合の対処法は、一般的な交通事故の場合と同じです。
交通事故の被害者がすべき事故対応については、『交通事故被害者がすべき対応の流れ|示談や慰謝料も解説』の記事が参考になります。
バスやタクシーの事故で請求できる慰謝料・賠償金
ここからは、タクシー・バス乗車中に事故にあった場合や、タクシー・バスと事故になった場合に請求できる慰謝料・損害賠償金について解説していきます。
ほとんどの費目は一般的な交通事故で相手方に請求できるものと同じです。
しかし、一部バスやタクシーの乗客ならではの費目もあるので確認していきましょう。
バス・タクシーの事故で請求できる費目一覧
バスやタクシーの事故で請求できる慰謝料・損害賠償金は、主に次の通りです。
- 治療関係費
治療に関連して必要となった費用。治療費の他、付添費用(付添人の必要性が認められた場合)や通院交通費なども請求できる。 - 休業損害
交通事故の影響で休業したことによる減収を補償するもの。
専業主婦や一部の学生、一部の無職者でも請求できる。 - 慰謝料
被害者の精神的苦痛に対して支払われる補償。症状の内容に応じて次の3種類がある。- 入通院慰謝料:交通事故による入院・通院の中で生じる精神的苦痛に対する補償。
- 後遺障害慰謝料*:後遺障害が残ったことで生じる精神的苦痛に対する補償。
- 死亡慰謝料:死亡した被害者とその遺族の精神的苦痛に対する補償。
- 逸失利益
交通事故がなければ得られていたであろう将来の収入に対する補償。損害の内容に応じて次の2種類がある。- 後遺障害逸失利益*:後遺障害の影響で減ってしまう生涯収入に対する補償。
- 死亡逸失利益:死亡により得られなくなった将来の収入に対する補償。
- 余分に必要になった交通費
タクシー・バス乗車中の事故の場合、次のような事情に該当すれば、余分に生じた交通費も請求できます。- 乗り継ぎの新幹線や高速バスなどに間に合わず、チケットを買い直した
- 振替輸送車を待つ時間がなく、自分で別の公共交通機関を使って目的地に向かった
*後遺症に対して後遺障害等級が認定されなければならない
計算機で慰謝料相場を今すぐ確認
上で紹介した費目のうち、慰謝料と逸失利益の相場は以下の計算機から簡単に確認できます。
ただし、以下の2点には注意してください。
- 計算機でわかる慰謝料額は、弁護士基準(別称:裁判基準)と呼ばれる「過去の判例に基づく相場額」です。相手方が提示してくる金額は、弁護士基準と比較して非常に低いことが多いです。
- 計算機でわかる金額は、あくまでも目安にすぎません。実際には他のさまざまな要素を考慮して、もっと高額あるいは低額な相場となることがあります。
具体的な慰謝料の計算方法については、関連記事『交通事故の慰謝料の計算方法|正しい賠償金額がわかる』を参考にしてください。
また、慰謝料を含む賠償金全体の相場や内訳を知りたい方は、関連記事『交通事故|人身事故の賠償金相場と計算方法』が役に立ちます。
損害賠償請求の相手は状況によって異なる
乗っていたバスやタクシーが事故に遭った場合や、自身がバスやタクシーと接触事故を起こした場合、損害賠償請求の相手は注意して確認しなければなりません。
簡単にポイントをまとめると次の通りです。
- 乗っていたバスやタクシーが事故した場合
バス・タクシー会社と事故の相手方どちらか、あるいは双方に損害賠償請求する。
場合によっては乗客である自身が損害賠償請求されることもある。 - バスやタクシーと自身とが接触事故になった場合
バス・タクシー会社に損害賠償請求するが、場合によってはその乗客に対しても損害賠償請求できることがある。
なお、バス・タクシー会社やその乗客から損害賠償請求されることもある。
どのようなケースで誰に損害賠償請求すればいいのかについては、この後詳しく解説していきます。
タクシーやバス乗車中の事故での損害賠償請求相手
乗っていたバスやタクシーが事故をした場合、損害賠償請求の相手は「タクシー・バス側と事故相手側のどちらに過失があるか」によって異なってきます。
タクシー・バス側に過失がある場合と事故相手側に過失がある場合、双方に過失がある場合に分けて解説していきます。
(1)乗っていたタクシーやバスのみに過失がある場合
乗っていたタクシーやバスの方に100%の過失がある場合、乗客が損害賠償請求する相手はタクシー会社・バス会社となります。
ただし、実際に損害賠償金を支払うのは、タクシー会社やバス会社が加入している共済・保険です。
そのため、示談交渉は多くの場合、相手会社が加入しているタクシー共済や保険会社の担当者とおこなうことになるでしょう。相手会社の顧問弁護士や相手会社の事務処理係が交渉相手となることもあります。
(2)バスやタクシーの事故相手のみに過失がある場合
タクシーやバスが一方的に相手車両に追突された場合など、タクシー・バス側に一切の過失がない場合は、事故の相手方に損害賠償請求をします。
損害賠償請求は示談交渉を通して行うことが一般的ですが、相手方ドライバー本人ではなく、相手方ドライバーの加入している任意保険の担当者と交渉することが多いです。
相手方ドライバーが任意保険に入っていない場合は、ドライバー本人との示談交渉が必要になります。この場合、ドライバーの資力の程度によっては賠償金の支払いが分割になる可能性があります。
その他、相手ドライバーが任意保険未加入の場合に注意すべきことと対処法については『交通事故相手が無保険でお金がない!賠償請求の方法とリスク対策』の記事にて確認してみてください。
(3)バスやタクシーと事故相手双方に過失がある場合
交通事故の多くは、当事者双方に過失があるとされます。
乗っていたタクシー・バス側と事故の相手方双方に過失がある場合、乗客はどちらにも損害賠償請求ができます。
このときのポイントは、次の2点です。
- 請求できる総額が倍になるわけではない
請求先が2か所あるからと言って、請求できる金額がその分増えるという認識は間違いです。損害賠償金が100万円の場合、タクシー・バス会社と事故の相手方に対して合計100万円を請求できるということです。 - 請求額の分配は自由に決められる
損害賠償金の何割をタクシー・バス会社に請求し、何割を事故の相手方に請求するかは自由に決められます。一方にのみ、全額請求することも可能です。
それぞれの負担額はタクシー・バス会社と事故の相手方とで話し合われ、清算されます。
ただし、実際には相手の資力や保険加入状況などを考慮したうえで、どちらか一方に全額請求することが多いです。
双方に請求したい場合は、まずどちらかと示談交渉して示談金額を決め、そのうちの一部を受け取った後、残りの金額をもう一方に請求します。
ただし、もう一方の方と示談金の総額について争いになることもあります。
バス・タクシーの乗客に過失がつき損害賠償請求されることも
通常、バスやタクシーの乗客として交通事故にあった場合、乗客がしかるべき相手に損害賠償請求することはあっても、乗客が誰かから損害賠償請求されることはありません。
ただし、次のような乗客の行為により交通事故が引き起こされたと判断される場合は、バス・タクシー会社や事故の相手方から損害賠償請求される可能性があります。
- バスやタクシー内で暴れるなど、安全運転の妨げとなる行為をしたことで事故が起きた
- バスやタクシーの運転手に高速運転や急停止、その他交通違反などを強要したことで事故が起きた
タクシーやバスと事故になった場合の損害賠償請求相手
つづいて、自身がタクシーやバスと事故になった場合の損害賠償請求について解説していきます。
タクシー・バスと接触事故|損害賠償請求相手
タクシーやバスと事故になった場合、損害賠償請求はタクシー会社・バス会社に対しておこないます。
ただし、実際に損害賠償金を支払うのは相手会社が加入している共済や保険です。
よって、示談交渉はタクシー共済や相手会社が加入する保険の担当者とおこなうことになるでしょう。場合によっては相手会社の顧問弁護士や事務処理係が出てくることもあります。
なお、交通事故は、当事者双方に過失が付くことも多いです。
自身にも過失があると判断されると、タクシー会社やバス会社から請求された損害賠償金を支払わなければならない可能性があります。
ただし、相手会社から請求された損害賠償金は、自身が加入する自賠責保険や任意保険(対人賠償保険・対物賠償保険)から支払うことが可能です。
タクシー・バスの乗客から損害賠償請求されることも
自身に過失がある場合、タクシーやバスの乗客から損害賠償請求される可能性もあります。
とくに、自身に100%の過失がある場合は、乗客が受け取れる損害賠償金を全額負担しなければなりません。
ただし、この場合も自身が加入する任意保険を使って、損害賠償金を支払うことができます。
タクシー会社・バス会社との示談交渉の注意点
タクシーやバス乗車中に事故にあった場合や自身がタクシー・バスと接触事故になった場合、示談交渉相手は状況によりさまざまです。
しかし、どんな相手であれ、基本的には示談交渉に慣れたプロが出てくるので、交渉は決して簡単には進みません。
相手方は低めの慰謝料・損害賠償金を提示してくる可能性が高いですが、それに対して増額を求めても、十分に聞き入れられることはほぼないでしょう。
また、バス会社やタクシー会社に対して1人で立ち向かうのは、心細く感じるでしょう。
よって、示談交渉では弁護士を立てることが重要です。
弁護士を立てるには弁護士費用が必要ですが、「弁護士費用特約」を使えば弁護士費用の自己負担を0円とできるケースが多くなっています。
また、たとえ弁護士費用を差し引いても、弁護士を立てなかった場合よりも多くの金額が手に入ることは多いです。
弁護士を立てる際の費用が気になる方は、交通事故の弁護士費用特約が使えるかどうかを確認してみてください。ご自身の加入する保険に弁護士費用特約が付帯されていれば、弁護士費用の自己負担を避けられる可能性があります。
弁護士費用特約の関連記事
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了