交通事故の慰謝料早見表|弁護士基準などの相場・計算方法もわかる【最新版】

交通事故の慰謝料は、けがの内容や通院期間、後遺障害の有無によって大きく異なります。
相場を知りたい方のために、まずは弁護士基準(裁判基準)によるおおまかな金額目安をまとめました。
| 慰謝料の種類 | 弁護士基準の相場目安 | 主な算定要素 |
|---|---|---|
| 入通院慰謝料 | 約30万円〜 ※通院1ヶ月を最低ラインとした場合 | 入通院日数・期間・通院頻度 |
| 後遺障害慰謝料 | 約110万〜2,800万円前後 | 後遺障害等級(1〜14級) |
| 死亡慰謝料 | 約2,000万〜2,800万円前後 | 被害者の立場・家族構成 |
※上記は弁護士基準(いわゆる「赤い本」)をもとにした一般的な相場です。
より具体的な日数別・等級別・症状別の早見表は本文で詳しく紹介しています。
本記事では、各慰謝料のさらに細かい早見表を掲載するほか、これらの金額がどのように算定されるのか、また自賠責基準との違いや増減の理由を弁護士がわかりやすく解説します。
目次
交通事故の慰謝料とは?早見表確認前の基礎知識
交通事故の慰謝料早見表を確認する前に、そもそも交通事故慰謝料にはどのようなものがあるのか確認しておきましょう。
また、交通事故慰謝料には3つの算定基準があり、それぞれで相場が違います。この点も押さえておくと、次に紹介する早見表が見やすくなるので解説します。
早く早見表を確認したい場合は、本記事内「交通事故の慰謝料早見表|弁護士基準と自賠責基準」をご覧ください。
交通事故の慰謝料は3種類
交通事故の慰謝料は、交通事故によって生じた精神的苦痛に対する補償です。入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類があります。

入通院慰謝料
入通院慰謝料は、交通事故によるケガや治療の中で生じる精神的苦痛を補償するものです。基本的には治療期間(治癒または症状固定と診断され、治療を終えるまでの期間)に応じて金額が算定されます。
後遺障害慰謝料
交通事故で後遺障害が残ったことによる、精神的苦痛を補償するものです。
後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合に請求でき、金額は等級に応じて決まります。
また、後遺障害が死にも比肩するほど重大なものであり、家族の精神的苦痛もことさらに大きいと考えられる場合は、被害者本人だけでなく近親者に対しても固有の慰謝料が支払われることがあります。
近親者とは、基本的に配偶者・親(養父母含む)・子(養子含む)のことですが、兄弟姉妹などでも慰謝料の対象となる場合があります。
死亡慰謝料
交通事故で死亡した被害者と、その遺族の精神的苦痛を補償するものです。
金額は、生前被害者が家族内でどのような立場にあったかによって決まります。具体的には一家の支柱・配偶者・独身・子供などです。
また、死亡事故では原則として、近親者である遺族に対しても固有の金額が支払われる点が特徴です。
慰謝料の算定基準は弁護士基準など3種類
交通事故の慰謝料は、算定基準ごとに金額が異なります。慰謝料の算定基準は以下の3つです。
慰謝料の算定基準
| 算定基準 | 概要 | 金額 |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 自賠責保険が使用する基準 | 国が定める最低限の補償額 |
| 任意保険基準 | 任意保険会社ごとに定める基準 | 自賠責基準と同額程度 |
| 弁護士基準 | 裁判の判例をもとにした基準 | 最も高額かつ法的正当性あり |

示談交渉で加害者側の任意保険会社が提示してくるのは、任意保険基準の金額になります。
任意保険基準の詳細は各保険会社で異なり非公開ですが、自賠責基準と同程度か少し高い程度であり、相場である弁護士基準の半分~3分の1程度であることが多いです。
一方、弁護士基準は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故相談センター東京支部)という冊子に掲載されている基準です。
「赤い本」とも呼ばれるこの本は弁護士や裁判所も用いるもので、弁護士基準の金額は過去の判例に沿った法的正当性の高いものとされています。
交通事故の慰謝料早見表|弁護士基準と自賠責基準
ここからは、各慰謝料の自賠責基準・弁護士基準の計算方法と、慰謝料額がひとめでわかる早見表を紹介していきます。
なお、任意保険基準は各保険会社で異なり非公開なので割愛します。自賠責基準に近い金額とお考えください。
入通院慰謝料の早見表
弁護士基準の場合は早見表から、自賠責基準の場合は計算式によって金額を算定します。
(1)弁護士基準の早見表、(2)自賠責基準の計算方法、(3)弁護士基準と自賠責基準の金額比較早見表を見ていきましょう。
(1)弁護士基準の入通院慰謝料の早見表
弁護士基準の入通院慰謝料額の早見表には、軽傷用と重傷用があります。以下のように使い分けてください。
- 軽傷用:レントゲンやMRI画像といった他覚的所見に異常が写らない場合や、打ち身や捻挫といった軽い外傷
- 重傷用:骨折など上記以外の外傷
早見表の入院した月数と通院した月数は「1月=30日」と考えてください。
重傷用の慰謝料早見表

軽傷用の慰謝料早見表

入通院した月数に端数がある場合は、以下のように計算します。
端数があるときの入通院慰謝料の計算
重傷で入院1ヶ月、通院3ヶ月15日となった場合を例に解説します。
- 入院1ヶ月、通院3ヶ月が交わる部分を確認すると、115万円です。
- 通院日数の端数15日の金額を算出していきましょう。
入院1ヶ月、通院4ヶ月の金額は130万円です。入院1ヶ月、通院3ヶ月の金額を引き算することで、通院4ヶ月目の1ヶ月間の金額を確認できます。
130万円-115万円=15万円 - 15日分の慰謝料(15万円)を30日で割り、通院4ヶ月目の1ヶ月間の日額を算出し、15日分の金額を算定しましょう。
15万円÷30日×15日=7万5,000円 - 115万円と7万5,000円(15日分の端数)を足すと、入通院慰謝料が算定できます。
115万円+7万5,000円=122万5,000円
また、症状や治療内容に対して通院期間が長期に渡り、通院頻度が少ないと判断された場合には、以下を「みなし治療期間」として慰謝料が算定されることがあります。
- 重傷の場合
実通院日数の3.5倍程度の期間を通院期間とする - 軽症の場合
実通院日数の3倍程度の期間を通院期間とする
このような方法で通院期間の計算がなされると、入通院慰謝料の金額が少なくなってしまいます。
上記の方法により計算されることを防ぐためには、月に10日程度を目安とした通院を行うと良いでしょう。もっとも、医師から通院頻度の指示があった場合には、その指示に従って下さい。
適切な通院頻度に関して詳しく知りたい方は『交通事故の被害者は毎日通院した方がいい?通院頻度や期間と慰謝料の関係』の記事をご覧ください。
(2)自賠責基準の入通院慰謝料の計算式
自賠責基準では、以下のように入通院慰謝料を計算します。
自賠責基準の入通院慰謝料
入通院慰謝料=4,300円*×入通院日数
*2020年3月31日以前の事故については4,200円
入通院日数は、次のうち少ない方を採用します。
- 入院日数+通院期間
- 入院日数+実通院日数×2
※慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して決まります。
たとえば入院1ヶ月、通院3ヶ月15日、実通院日数28日(事故発生は2020年4月1日以降)の場合には、次のような計算式となります。
計算例
- 計算式に用いる入通院日数を検討する
入院日数+通院期間=1ヶ月+3ヶ月15日=135日
入院日数+実通院日数×2=1ヶ月+28日×2=86日
少ない方を用いるので、入通院日数は86日 - 計算式を用いて入通院日数を算出する
4,300円×86日=36万9,800円
(3)弁護士基準と自賠責基準の比較早見表
ここで、軽傷で通院のみした場合の入通院慰謝料額を弁護士基準と自賠責基準とで比較します。
なお、実通院日数は治療期間の半分以上とします。
| 治療期間 | 弁護士基準 | 自賠責基準 |
|---|---|---|
| 1ヶ月 | 19万円 | 12.9万円 |
| 2ヶ月 | 36万円 | 25.8万円 |
| 3ヶ月 | 53万円 | 38.7万円 |
| 4ヶ月 | 67万円 | 51.6万円 |
| 5ヶ月 | 79万円 | 64.5万円 |
| 6ヶ月 | 89万円 | 77.4万円 |
同じ治療期間でも、弁護士基準か自賠責基準かで金額が大きく変わることがわかります。
以下の関連記事では、通院1ヶ月から通院9ヶ月まで、治療期間ごとの慰謝料を紹介しています。より詳しい計算方法も解説しているので参考にしてください。
後遺障害慰謝料の早見表
後遺障害慰謝料は、後遺障害の程度により定められる後遺障害等級に応じて金額が決まります。
自賠責基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料額をまとめた早見表で比較してみると、弁護士基準の後遺障害慰謝料は自賠責基準の相場と比べて高額であり、2倍以上の差が生じることもあるとわかります。
後遺障害慰謝料の早見表
| 等級 | 自賠責* | 弁護士 |
|---|---|---|
| 1級・要介護 | 1,650(1,600) | 2,800 |
| 2級・要介護 | 1,203(1,163) | 2,370 |
| 1級 | 1,150(1,100) | 2,800 |
| 2級 | 998(958) | 2,370 |
| 3級 | 861(829) | 1,990 |
| 4級 | 737(712) | 1,670 |
| 5級 | 618(599) | 1,400 |
| 6級 | 512(498) | 1,180 |
| 7級 | 419(409) | 1,000 |
| 8級 | 331(324) | 830 |
| 9級 | 249(245) | 690 |
| 10級 | 190(187) | 550 |
| 11級 | 136(135) | 420 |
| 12級 | 94(93) | 290 |
| 13級 | 57(57) | 180 |
| 14級 | 32(32) | 110 |
単位:万円
()は2020年3月31日以前の事故に対する金額
ではここで、交通事故で残りうる後遺障害別に、後遺障害慰謝料の早見表を見てみましょう。
むちうちの慰謝料早見表
| 等級 | 慰謝料 |
|---|---|
| 12級 | 290万円 |
| 14級 | 110万円 |
高次脳機能障害の慰謝料早見表
| 等級 | 慰謝料 |
|---|---|
| 1級 | 2,800万円 |
| 2級 | 2,370万円 |
| 3級 | 1,990万円 |
| 5級 | 1,400万円 |
| 7級 | 1,000万円 |
| 9級 | 690万円 |
歯の欠損の慰謝料早見表
| 等級 | 慰謝料 |
|---|---|
| 10級 | 550万円 |
| 11級 | 420万円 |
| 12級 | 290万円 |
| 13級 | 180万円 |
| 14級 | 110万円 |
外貌醜状の慰謝料早見表
| 等級 | 慰謝料 |
|---|---|
| 7級 | 1,000万円 |
| 9級 | 690万円 |
| 12級 | 290万円 |
関連記事
- 等級ごとにどのような後遺障害の内容になるのか:【後遺障害等級表】認定される後遺症・症状の一覧と等級認定の仕組み
- 後遺障害等級認定を受ける方法:後遺障害等級が認定されるには?|認定の仕組みと認定率の上げ方を解説
死亡慰謝料の早見表
近親者固有の金額も含まれる死亡慰謝料は、弁護士基準であればあらかじめ近親者分の金額も含めた金額が設定されています。
一方、自賠責基準では被害者本人分の金額に、遺族の人数や扶養者の有無に応じた金額を加算します。
死亡慰謝料の早見表
| 被害者 | 自賠責 | 弁護士 |
|---|---|---|
| 一家の支柱 | 400 (350) | 2,800 |
| 母親 配偶者 | 400 (350) | 2,500 |
| 独身の男女 | 400 (350) | 2,000~2,500 |
| 子ども | 400 (350) | 2,000~2,500 |
| 幼児 | 400 (350) | 2,000~2,500 |
| 遺族1名※ | + 550 | – |
| 遺族2名※ | + 650 | – |
| 遺族3名以上※ | + 750 | – |
| 被扶養者有※ | + 200 | – |
慰謝料の単位:万円
遺族:被害者の配偶者、子、両親(認知した子、義父母などを含む)
( )内の金額は2020年3月31日以前に発生した交通事故に適用
※該当する場合のみ
では、死亡した被害者に扶養家族が2人いた場合の、自賠責基準における死亡慰謝料の計算例をみていきましょう。交通事故は2020年4月1日以降のものとします。
計算例(自賠責基準)
本人分+遺族2人分(扶養家族あり)=400万円+850万円=1,250万円
なお、固有の死亡慰謝料を請求できる遺族とは、基本的には配偶者、子(養子含む)、被害者の親(養父母含む)とされます。
例外として、死亡した被害者の兄弟姉妹や内縁関係者についても、遺族と同じくらい被害者と近しい関係にあり、悲しみが深いと判断された場合には、死亡慰謝料が支払われる可能性があります。
死亡慰謝料の相続人や分配方法については、『死亡事故の慰謝料相場・平均はいくら?賠償金の計算や示談の流れと注意点』をご覧ください。
症状別の慰謝料額の早見表
慰謝料の種類ごとの計算方法や早見表を紹介してきましたが、ここからは、症状別に請求できる慰謝料の金額の早見表について紹介を行います。
例えば後遺障害が残った場合は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を請求できるので、それぞれをまとめた早見表を用意しました。
むちうちで通院した場合の早見表
むちうちで通院した場合の、入通院慰謝料の金額は以下の通りです。
| 通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1ヶ月 | 12.9万円 | 19万円 |
| 3ヶ月 | 38.7万円 | 53万円 |
| 6ヶ月 | 77.4万円 | 89万円 |
通院期間が6ヶ月を超えており、痛みが引かず後遺症が残った場合には、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料の請求を行える可能性があります。
その場合の早見表は、以下の通りです。
| 等級 | 慰謝料 |
|---|---|
| 12級 | 290万円 |
| 14級 | 110万円 |
むちうちの治療期間や認定されうる後遺障害に関して知りたい方は『交通事故によるむちうちの症状・治療期間・後遺症|慰謝料相場も解説』の記事をご覧ください。
骨折で通院した場合の早見表
骨折で通院した場合の、入通院慰謝料の金額は以下の通りです。
| 通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1ヶ月 | 12.9万円 | 28万円 |
| 3ヶ月 | 38.7万円 | 73万円 |
| 6ヶ月 | 77.4万円 | 116万円 |
骨折では、治療期間が6ヶ月程度になることが多いでしょう。
骨折が原因で関節の可動域が狭くなったり、痛みが引かない場合には、後遺障害慰謝料の請求を行える可能性があります。
たとえば、肩・肘・手首に可動域制限が残った場合、可動域制限が残った部位の数や程度に応じて、以下の慰謝料が請求できるでしょう。
| 等級 | 慰謝料 |
|---|---|
| 1級 | 2,800万円 |
| 5級 | 1,400万円 |
| 6級 | 1,180万円 |
| 8級 | 830万円 |
| 10級 | 550万円 |
| 12級 | 290万円 |
骨折の部位ごとにどのような後遺障害が残るのかが異なっており、『交通事故による骨折の慰謝料相場はいくら?骨折部位や後遺症別の賠償金』の記事でより詳しく知ることが可能です。
高次脳機能障害を負った場合の早見表
交通事故により脳損傷を負った場合、記憶や言語、思考などの認知機能が低下するという高次脳機能障害を生じることがあります。
脳の損傷の治療のために6ヶ月通院し、高次脳機能障害が生じている旨の後遺障害認定を受けた場合における慰謝料の金額は以下の通りです。
| 自賠責基準 | 弁護士基準 | |
|---|---|---|
| 入通院慰謝料 | 77.4万円 | 116万円 |
| 後遺障害慰謝料(1級) | 1,650万円 | 2,800万円 |
| 後遺障害慰謝料(2級) | 1,203万円 | 2,370万円 |
| 後遺障害慰謝料(3級) | 861万円 | 1,990万円 |
| 後遺障害慰謝料(5級) | 618万円 | 1,400万円 |
| 後遺障害慰謝料(7級) | 419万円 | 1,000万円 |
| 後遺障害慰謝料(9級) | 249万円 | 690万円 |
高次脳機能障害によりどのような症状が生じるのかについては、『交通事故で記憶障害に|記憶喪失・性格が変わる・言語障害も高次脳機能障害?』の記事で確認可能です。
歯を欠損した場合の早見表
交通事故により歯が欠損してしまった場合には、失った歯の本数に応じて後遺障害の認定流される可能性があります。
歯の治療のために3ヶ月間通院し、後遺障害の認定を受けた場合の慰謝料額は以下の通りです。
| 自賠責基準 | 弁護士基準 | |
|---|---|---|
| 入通院慰謝料 | 38.7万円 | 73万円 |
| 後遺障害慰謝料(10級) | 190万円 | 550万円 |
| 後遺障害慰謝料(11級) | 136万円 | 420万円 |
| 後遺障害慰謝料(12級) | 94万円 | 290万円 |
| 後遺障害慰謝料(13級) | 57万円 | 180万円 |
| 後遺障害慰謝料(14級) | 32万円 | 110万円 |
歯の欠損に関する後遺障害の内容についてより詳しく知りたい方は『交通事故で歯が折れたら慰謝料いくら?前歯欠損は後遺障害認定される?』の記事をご覧ください。
外貌醜状となった場合の早見表
交通事故により顔や頭部に眼に見える傷跡が残った場合には、外貌醜状が生じたとして後遺障害の認定を受けられる可能性があります。
傷跡の治療のために3ヶ月間通院し、外貌醜状の後遺障害の認定を受けた場合の慰謝料額は以下の通りです。
| 自賠責基準 | 弁護士基準 | |
|---|---|---|
| 入通院慰謝料 | 38.7万円 | 73万円 |
| 後遺障害慰謝料(7級) | 419万円 | 1,000万円 |
| 後遺障害慰謝料(9級) | 249万円 | 690万円 |
| 後遺障害慰謝料(12級) | 94万円 | 290万円 |
外貌醜状が認定される具体的な症状に関しては『交通事故による顔の傷の後遺障害等級』の記事で詳しく知ることが可能です。
慰謝料が早見表より増額・減額されるケース|実際の判例付き
交通事故慰謝料の基本的な金額は表や計算式から確認することができます。
しかし実際には、そこからさらに事情に応じた増額や減額がなされるのです。
どのような場合に慰謝料が増額・減額されるのかを、事例を交えてみていきましょう。
ただし、実際に増額・減額されるのか、どの程度増額・減額されるのかは示談交渉次第です。増額・減額されるケースに該当する場合には、弁護士への相談をおすすめします。
慰謝料が早見表よりも増額される5ケース
交通事故の慰謝料は、次のような場合に増額される可能性があります。
- 加害者に故意または重過失があった場合
- 加害者の態度が不誠実だった場合
- 治療や手術が特に苦痛を伴うものだった場合
- 交通事故によって流産・中絶をした場合
- 交通事故を受けて家族が精神疾患を患った場合
それぞれについて詳しく解説していきます。
加害者に故意または重過失があった場合
加害者が故意に事故を起こした場合や重過失があった場合には、慰謝料が増額される可能性があります。
重過失に認定されるケースの例は以下のとおりです。
- 無免許運転
- ひき逃げ
- 酒酔い運転
- 著しいスピード違反
- 信号無視
- 薬物により正常な運転ができない状態での運転
加害者に重過失があり慰謝料が増額された事例をご紹介します。
飲酒運転・ひき逃げ事故の裁判例
名古屋地判平20・2・20(平成19年(ワ)793号)
コンビニでビール・酎ハイを購入し店前や車内で飲酒した被告が、パトカーに発見され飲酒運転の発覚を恐れて逃走し、時速70キロ(制限速度40キロ)で走行中、脇見運転をしながら赤色点滅信号を無視して交差点に進入。原付バイクの高校生(17歳)と衝突し、さらにひき逃げを図った死亡事故。
裁判所の判断
「…本件事故は被告の一方的過失によるものといえる。」
名古屋地判平20・2・20(平成19年(ワ)793号)
- 死亡慰謝料:2300万円(脇見、飲酒運転、一時停止違反、ひき逃げ等の事情を考慮)
- 両親の固有慰謝料:各300万円
- 姉2名の固有慰謝料:各100万円
- 死亡逸失利益:4884万2276円(17歳時・高校中退・父の運送業手伝い予定)
慰謝料の合計
3100万円
被害者の死亡慰謝料は、弁護士基準でも2,000万~2,500万円が相場(家族に対する慰謝料も含む)のため、大幅に増額されていることがわかります。
加害者の態度が不誠実だった場合
加害者の態度が不誠実である場合も、慰謝料が増額される可能性があります。
- 事故後、加害者が被害者に対して適切な救護を行わなかった
- 加害者が被害者に対して挑発的な言動をとった
- 加害者がうその証言をした
実際に加害者側の不誠実な態度により慰謝料が増額された事例を紹介します。
加害者の態度が不誠実とされた裁判例
大阪地判平19・4・10(平成18年(ワ)557号)
塗装工の男性(31歳)がバイクを運転中、駐車場から道路に進入してきたトラックとの衝突を避けようと急ブレーキをかけたが転倒し、トラックと衝突して死亡。事故後、トラック運転手は救護措置も警察への連絡もせずに逃走し、運行記録のチャート紙を廃棄していた。
裁判所の判断
「…若くして突如として命を絶たれたAの無念の思いを評価する」
大阪地判平19・4・10(平成18年(ワ)557号)
- 過失割合はトラック側85%、バイク側15%(バイクの速度超過26キロを考慮)
- 死亡慰謝料2,300万円、母親の慰謝料500万円(救護義務違反・証拠隠滅を考慮)
慰謝料の合計
2800万円
被害者の死亡慰謝料は、相場が弁護士基準でも2,000万円~2,500万円(家族に対する慰謝料も含む)なので、大幅に増額されていることがわかります。
治療や手術が特に苦痛を伴うものだった場合
交通事故によるケガを原因とした精神的苦痛を補償するものは、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料です。
しかし次のような場合には、さらに慰謝料が増額される可能性があります。
- 何度も手術をした
- 麻酔ができない状態で手術をした
- 治療中生死の間をさまよった
- 今後も症状悪化の危険性がある
治療や手術で特に苦痛が大きかったことや、今後も症状悪化の危険性があることを理由に慰謝料が増額された事例を紹介します。
慢性骨髄炎による慰謝料増額が認められた裁判例
東京地判平23・2・3(平成22年(ワ)14362号)
被害者の男性がバイク事故で左脛骨高原骨折を負傷。手術でMRSAに感染し、左膝化膿性慢性骨髄炎という「いつ再発するか分からない」疾患を抱える状態となった。5回の手術と499日の入院を経ても根治は困難。慢性骨髄炎の精神的苦痛を慰謝料算定で考慮するかが争点となった。
裁判所の判断
「…いつ再発するか分からない疾患を抱える状態となったことについては、後遺障害慰謝料を算定する際に考慮するのが相当」
東京地判平23・2・3(平成22年(ワ)14362号)
- 12級相当の慰謝料290万円を100万円増額して390万円
- 慢性骨髄炎の再発不安を慰謝料算定で考慮
- 根治困難で「大腿部切断しかない」状況を評価
- 労働能力喪失率14%も別途認定
損害賠償額
3,058万4,733円
後遺障害12級の後遺障害慰謝料は、弁護士基準でも290万円となっているため、100万円増額されていることがわかります。
交通事故によって流産・中絶をした場合
交通事故により流産・中絶した場合、流産・中絶による母体への負担や母親の精神的苦痛を考慮し、母親の入通院慰謝料が増額される可能性があります。
場合によっては父親に対しても慰謝料が支払われます。
ただし、まだ生まれていなかったお腹の胎児に対しては慰謝料は支払われません。
妊娠中の交通事故では、次のような場合にも慰謝料が増額される可能性があります。
- 必ずしも中絶が必要という状態ではなかったが、母親に対する治療薬やリハビリなどが胎児に影響する可能性を考慮し、中絶を選択した場合
- 妊娠中に交通事故にあい、事故の衝撃や治療薬などの影響を受けて障害をもった赤ちゃんが生まれてきた場合
では、交通事故による流産・中絶により慰謝料が増額された事例をご紹介します。
妊娠中絶による慰謝料が認定された裁判例
大阪地判平6・1・19(平成4年(ワ)8166号)
女性(原告)が、交通事故で負傷し治療を受けた際、妊娠に気づかずレントゲン検査や内服薬治療を受けた結果、胎児への影響を懸念した医師から人工妊娠中絶を勧められ、やむなく手術を行った。事故当時は妊娠2週目で、原告は精神的打撃の大きさから慰謝料1030万円を請求したが、被告らは過大として争った。
裁判所の判断
「…原告の精神的打撃は甚だ重大であつたことが認められる」
大阪地判平6・1・19(平成4年(ワ)8166号)
- 妊娠中絶による慰謝料を含め100万円を認定
- 休業損害は56日間分の252,000円と認定
- 療養関係費約17万円を認定
損害賠償額
約114万円(既払金控除後)
通院55日の入通院慰謝料は、弁護士基準では軽傷の場合約33万円、重傷の場合でも48万円なので、大幅に増額されていることがわかります。
妊婦が交通事故の被害にあった場合、事故後の対応についても気を付けるべきです。関連記事では、交通事故の慰謝料や示談交渉のポイントについてもまとめていますので、参考にしてください。
交通事故を受けて家族が精神疾患を患った場合
交通事故を原因として被害者の家族が精神疾患を患った場合には、慰謝料が増額される可能性があります。
- 幼い兄弟が事故の瞬間を目撃し、日常生活に支障が出るようなトラウマが残った
- 死亡事故により遺族が精神疾患を患い、精神科への通院を余儀なくされた
交通事故により家族が精神疾患を患い、慰謝料が増額された事例を紹介します。
家族の精神疾患に慰謝料が認定された裁判例
横浜地判平19・6・20(平成18年(ワ)4719号)
無免許運転の被告(過去12回の交通違反歴あり)が坂道で作業車両を停車させる際、サイドブレーキを引かずに降車し、その後エンジンを切って補助ブレーキを解除したため、車両が約20メートル暴走して自転車で遊んでいた7歳の男児を轢過し死亡させた事故。
裁判所の判断
「…原告母は、母親として、本件事故につき、自責の念に苛まれ、また、その悲しみのため、カウンセリングを受ける必要があるまでに憔悴した」
横浜地判平19・6・20(平成18年(ワ)4719号)
- 慰謝料:2,500万円(通常2,200万円から300万円増額)
- 母親の固有慰謝料:200万円を別途認定
- 逸失利益:2,882万5,510円(基礎収入542万7,000円、49年間)
損害賠償額
父:約3,061万円、母:約3,121万円
この場合、弁護士基準でも死亡慰謝料は2,000万~2,500万円とされるため、慰謝料が増額されていることがわかります。
慰謝料が早見表よりも減額される3ケース
交通事故の慰謝料は、次のような場合には減額されてしまう可能性があります。
- 被害者側に過失割合がついた場合
- 身体的素因減額が適用された場合
- 心因的素因減額が適用された場合
- 医師の許可なく整骨院に通院していた場合
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
被害者側に過失割合がついた場合
過失割合とは、交通事故が起きた責任が被害者と加害者それぞれにどれくらいあるかを示した割合です。
たとえ被害者でもいくらかの過失割合がつくことが多く、過失割合がつけばその割合分、受け取れる慰謝料や賠償金が減額されます。
たとえば、被害者に1割の過失割合がついたとすると、受け取れる慰謝料や賠償金は1割減額されてしまうのです。
交通事故の過失割合は、最終的に当事者同士で決めるものですが、事故類型ごとに「基本の過失割合」というものが存在します。
関連記事『交通事故の過失割合とは?パターン別に何%か調べる方法と決め方の手順』では、自動車同士、歩行者、バイクなどのパターン別に、基本の過失割合をイラスト付きで解説中です。
身体的素因減額が適用された場合
身体的素因減額とは、交通事故によるケガの原因が、事故だけではなく被害者の元々の持病や疾患にもあるとみなされた場合に適用される減額です。
たとえば、被害者が元々腰痛持ちで、交通事故をきっかけに腰痛が悪化したという場合、腰痛の原因はすべて交通事故にあるとは言えません。
そのため、こうした事情を考慮して慰謝料や賠償金が減額されることがあります。
ただし、被害者の持病や疾患が本当に素因減額すべきものなのかについてはもめることも多いです。
実際に身体的素因減額が適用された事例を紹介します。
身体的素因減額とされた裁判例
最判平4・6・25(昭和63年(オ)1094号)
個人タクシー運転手(56歳)が事故の1か月前に車内仮眠中の一酸化炭素中毒で入院。退院後すぐに運転業務に復帰したが、追突事故に遭い頭部打撲。事故後は煙草を2本同時に吸うなど奇異な行動を示し、記憶喪失・理解力欠如・言語障害等の精神障害が現れ、約3年後に呼吸麻痺で死亡した。
裁判所の判断
「…一酸化炭素中毒における各種の精神的症状が本件事故による頭部打撲傷を引金に顕在発現して長期にわたり持続し、次第に増悪し、ついに死亡した」
最判平4・6・25(昭和63年(オ)1094号)
- 損害額の50%を減額(一酸化炭素中毒の寄与度を考慮)
- 事故による頭部外傷と既往症の一酸化炭素中毒が併存競合
- 民法722条2項の過失相殺規定を類推適用
既往症や基礎疾患がある被害者の交通事故では、因果関係の立証と寄与度の判断が重要なポイントとなります。
心因的素因減額が適用された場合
心因的素因減額とは、被害者の心理的要素や性格によって事故の被害が拡大したと考えられる場合に適用される減額です。
たとえば、被害者が治療に消極的だったために治療期間が長引き、治るはずだったケガが治りきらなかったとします。
この場合、治療期間が長くなった責任やケガが治りきらなかった責任がすべて加害者にあるとは言い切れません。
そのため、こうした事情を考慮して慰謝料や賠償金が減額されるのです。
ではここで、主な心因的素因を表でまとめてご紹介します。
| 素因 | 具体例 |
|---|---|
| 被害者の性格 | 一般的な被害者以上にケガの症状に敏感、神経質 |
| 積極的意欲の欠如 | ケガの回復に対する意欲が見られない、治療に消極的 |
| 賠償性神経症 | 賠償金を多く得たいという願望から、実際よりも症状が重いと思い込んでいる |
実際に心因的素因減額が適用された事例を紹介します。
心因的素因減額とされた裁判例
最判昭63・4・21(昭和59年(オ)33号)
軽微な追突事故が発生し、被害者(52歳女性)は事故直後「何の異常もない」と答えたが、2日後に頭頸部の痛みを訴え約50日の安静加療が必要と診断され入院。その後も頭痛、頸部強直、流涙等の症状が続き、長期間にわたる治療を受けたが、被害者の特異な性格や心理的要因が症状の悪化・固定化に大きく寄与していることが争点となった。
裁判所の判断
「…上告人の心因的要因が寄与していることが明らかである」
最判昭63・4・21(昭和59年(オ)33号)
- 被害者の心因的要因による損害拡大を考慮し、4割の限度で減額
- 事故後3年間の損害についてのみ因果関係を認定
- 過失相殺の規定を類推適用して心因的要因を斟酌
被害者の心理的要因が症状に与える影響を適切に評価し、公平な損害分担を実現する法的枠組みが確立されました。
医師の許可なく整骨院に通院していた場合
医師の許可なく整骨院に通院していたり、整骨院に通院する代わりに病院への通院をやめていたりすると、慰謝料が減額される可能性があります。
整骨院での施術は厳密には医療行為ではないため、治療の必要性・相当性が疑われて入通院慰謝料の対象外となるケースがあるのです。
整骨院への通院は必ず医師の許可を受けたうえで行い、並行して病院への通院も続けましょう。
しかし、それでも整骨院への通院で慰謝料が減額される可能性は否定できません。
整骨院通院にあたっては、医師だけでなく弁護士にも相談しておいた方が無難でしょう。
交通事故の慰謝料請求の流れと注意点
最後に、交通事故の慰謝料請求の流れと注意点を確認しておきましょう。
適切な金額の慰謝料を受け取るためには、示談交渉に向けた対策も必要です。
交通事故の慰謝料請求の流れ
交通事故の慰謝料額は、加害者側の任意保険会社との示談交渉によって決められます。事故が起こってから示談交渉、慰謝料振り込みまでの流れは次のとおりです。
事故発生から慰謝料獲得までの流れ
治療
事故によって負ったケガの治療
治療終了
完治または症状固定*の診断を受けたら、基本的には治療終了
*医学的に一般的に認められた治療を続けても、これ以上は症状の改善が見込めない状態になること
後遺障害等級認定
後遺症が残った場合、後遺障害等級認定の審査を受ける
後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益が請求可能になる
示談交渉開始
完治または後遺障害等級認定後、加害者側の任意保険会社から提示金額を記載した示談案が届き、示談交渉が始まる
示談成立
合意出来たら、加害者側の任意保険会社から示談書が届く
示談書の内容を確認したら、署名・捺印して返送
慰謝料の振り込み
示談書返送後、2週間程度で口座に示談金が振り込まれる
交通事故の慰謝料は、示談成立後に示談金の一部として受けとることが通常の流れです。
しかし、示談交渉が難航する恐れや長期化する場合、示談終了まで待てないというケースもあるでしょう。
この場合、相手方の任意保険会社ではなく、自賠責保険会社に直接請求する「被害者請求」をおこなえば、示談前に一定額を受け取れます。
被害者請求について詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故の被害者請求|自賠責保険に請求するには?やり方とデメリット』をあわせてお読みください。
適切な金額の交通事故の慰謝料を得るための注意点
交通事故の慰謝料を請求する際には、次の3点に注意する必要があります。
- 後遺障害等級認定はしっかり対策したうえで受ける
- 正しい慰謝料・過失割合を把握しておく
- 慰謝料以外の賠償金にも増額の余地はないか確認する
それぞれについて解説します。
(1)後遺障害等級認定はしっかり対策したうえで受ける
後遺障害慰謝料については、後遺障害等級がひとつ違うだけで相場額が大きく変動します。
後遺障害等級は審査を経て認定されるものであり、しっかり対策をするかしないかで審査の結果は変わることがあるのです。
ただ必要書類を事務的に揃えるのではなく、後遺障害等級の認定基準などを踏まえて入念な審査対策ををすることが、適切な慰謝料額の獲得につながります。
適切な慰謝料額を得るには示談交渉が重要だと思われがちですが、その前段階として後遺障害認定も非常に重要です。
後遺障害認定については『交通事故で後遺障害を申請する|認定までの手続きの流れ、必要書類を解説』をご覧ください。
(2)正しい慰謝料・過失割合を把握しておく
正しい慰謝料・過失割合を把握しておくことも重要です。
加害者が被害者側にとって不利な慰謝料・過失割合を主張してきたとしても、被害者側が適切な慰謝料・過失割合を把握していなければ反論できないからです。
慰謝料の金額は算定基準によって異なります。
また、増額事由・減額事由などその事故個別の事情も慰謝料額に影響するため、被害者自身で適切な慰謝料額を把握することは難しいです。
慰謝料額に影響する過失割合も、事故の個別的な事情を柔軟に考慮しながら算定するものなので、自力での算定は難しいと言わざるを得ません。
厳密な慰謝料額や過失割合を知るには、弁護士に相談することがベストです。
アトム法律事務所では無料相談を実施しており、慰謝料額や過失割合についてもご質問いただけます。ぜひご活用ください。
(3)慰謝料以外の賠償金にも増額の余地はないか確認する
交通事故の被害者は、慰謝料以外にもさまざまな損害賠償金を加害者側に請求できます。
慰謝料の他にも増額の余地がある費目が含まれている可能性があるので、しっかり確認しましょう。
- 治療関係費
治療費や通院交通費、看護費など治療で必要になった費用。
関連記事:交通事故の治療費は誰が支払う?過失割合がある場合や立て替えのポイントは? - 休業損害
交通事故によって仕事を休んだ日の収入減に対する補償。主婦やアルバイトも請求できる。
関連記事:交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方・いつもらえるか弁護士解説 - 逸失利益
交通事故にあわなければ得られていたはずの将来の収入に対する補償。後遺障害が残った場合に請求できる「後遺障害逸失利益」と死亡事故の場合に請求できる「死亡逸失利益」がある。
関連記事:交通事故の逸失利益とは?計算方法を解説!早見表・計算機で相場も確認 - 葬祭費
死亡事故の場合に請求できる、通夜や葬儀、位牌などの費用。 - 物損に対する損害賠償金
車の修理費、代車費用、評価損など。
交通事故の被害者が請求できる損害賠償金全般について知りたい場合は、『交通事故|人身事故の賠償金相場と計算方法!物損事故との違いは何?』もご覧ください。
交通事故の慰謝料についてよくある質問
続いて、交通事故の慰謝料についてよくある質問にお答えします。
弁護士基準は誰でも使えますか?
はい。
法律上「弁護士が関与しなければ使えない」という決まりはありません。
ただし、実務上は保険会社との交渉を弁護士が代理することで、初めてこの基準が採用されるケースがほとんどです。
被害者自身で請求しても、多くの保険会社は任意保険基準(低い金額)での提示にとどまるため、弁護士に依頼することが弁護士基準での請求を実現する近道といえます。
赤本と緑本はどっちが正しい?
どちらも正しい裁判実務の基準です。
「赤本」は東京地裁交通部がまとめた『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』、
「緑本」は大阪地裁交通部などがまとめた『交通事故損害賠償算定基準』を指します。
基本的な考え方は共通しており、いずれも弁護士基準(裁判基準)の根拠となる資料です。
地域や裁判所の運用の違いで金額に若干の差が生じる場合がありますが、どちらを使っても実務上の支障はありません。
通院が週1回でも早見表の金額は使えますか?
基本的には使えますが、通院期間全体を通して通院頻度が少なすぎる場合は、金額が調整されることがあります。
弁護士基準では、早見表の前提として「治療期間中は3日に1回程度の通院」が理想とされています。
実通院日数が少なすぎる場合は、治療実態を踏まえて「実通院日数 × 3」や「実通院日数 × 3.5」を目安に慰謝料を算定することがあります。
むちうちで後遺障害が認定されないと慰謝料は減りますか?
はい。
後遺障害等級の認定がない場合、後遺障害慰謝料は支払われないため、その分慰謝料が少なくなります。
ただし、治療期間中の「入通院慰謝料」は別途請求できるため、すべてが減るわけではありません。
むちうちは他覚的所見が乏しいため、等級認定を受けるには医師の診断書やMRI画像など客観的な資料の提出が重要です。
また、認定が取れなかった場合も、弁護士が介入すれば個別的な事情を考慮して、入通院慰謝料について相場より高めの金額を得られることがあります。
慰謝料はいつ支払われますか?
一般的には、示談が成立したあと2週間程度で支払われます。
示談前でも被害者請求の手続きによって、一部の慰謝料を示談前に受け取ることが可能です。しかし、全額を回収できるのは示談成立後となるのが通常です。
後遺障害がある場合は、等級認定が確定した後に示談交渉が始まるため、治療終了から支払いまで半年~1年以上かかることもあります。
早期に支払いを受けたい場合は、被害者請求をしたり、交渉がスムーズに進むよう弁護士を立てたりすることがおすすめです。
慰謝料の提示額が早見表と違うなら弁護士に相談
弁護士に相談・依頼することで適切な慰謝料を得られる
相場の慰謝料額を得るためには、弁護士への相談・依頼を行いましょう。
弁護士に相談・依頼することで、以下のような相場の慰謝料獲得に必要な点について実現が可能となります。
- 適切な慰謝料額を知ること
- 適切な後遺障害等級を獲得すること
- 加害者側の任意保険会社に慰謝料増額を認めてもらうこと
これら3点の実現は専門知識が必要となってくるため、被害者1人では難しいと言わざるを得ません。
適切な慰謝料額を受け取るにあたってお困りの場合は、弁護士への相談・依頼を行うべきでしょう。
慰謝料の表の見方はやや複雑です。慰謝料の見通しを知りたい方は、弁護士への無料相談をご利用ください。
弁護士に相談・依頼する費用は抑えることができる
弁護士への相談・依頼となると、弁護士に支払う費用の負担が気になる方は多いのではないでしょうか。
弁護士に支払う費用については、弁護士費用特約を利用することで抑えることが可能です。
弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、被害者自身が加入している任意保険についているオプションであり、保険会社が弁護士に支払う相談料や依頼の際の費用を、上限額まで負担してくれるというものになります。

相談料や依頼の際の費用が上限内に収まることは珍しくないので、多くのケースで金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となるでしょう。
自覚がないまま弁護士費用特約に加入しているケースも多いため、ぜひ一度確認してみてください。
アトム法律事務所は無料相談が可能
アトム法律事務所では、電話やLINEによる無料法律相談を行っています。
また、依頼となった場合に弁護士費用特約が使えないなら、原則として弁護士費用の後払が可能です。
金銭的な負担を気にすることなく弁護士への相談・依頼を行えるので、ぜひお気軽にご連絡ください。
法律相談の予約受付は、24時間体制となっています。
最後に、アトム法律事務所のご依頼者様の声をご紹介します。
示談の前からの相談でも丁寧に対応して頂き、示談でもとても早い解決で助かりました。
むちうち、坐骨神経痛の増額事例
先生はとても話やすく、事故に強い先生だったので、思っていたより金額が出てびっくりしました。
むちうちの増額事例
こちらの法律事務所と弁護士さんの対応は、とても身近に感じ有難かったです。
右脛骨果部骨折、右腓骨頭骨折の増額事例

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

