通院6ヶ月|交通事故慰謝料の相場と計算!むちうちの後遺障害認定も解説
更新日:

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。
- 交通事故の慰謝料の相場を知りたい。
- 少しでも慰謝料を多くもらいたい。
- 後遺症が残ってしまった分を補償してほしい。
慰謝料とは、交通事故の被害者が負った精神的苦痛に対して支払われる金銭的補償のことです。精神的苦痛にさらされる期間が長いほど、慰謝料は高額になります。
6ヶ月という長期の通院では、請求すべき金額も高額ですし、請求すべき費目も多岐にわたります。相手方の保険会社から提案される金額は、実は弁護士に示談交渉を依頼することで大幅に増額できる可能性があります。
この記事では、弁護士に依頼した時の慰謝料相場や、適正な金額の慰謝料を受けとるためのコツをまとめています。後遺障害認定の流れもご説明していますので、これから後遺障害認定を受ける方にもお役立ていただけます。
いち早く保険会社からの提案額が正当な金額なのかを知りたい方には「慰謝料計算機」がおすすめです。
目次
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通院6ヶ月の慰謝料の相場はどれくらい?
通院6ヶ月のとき、相手方が提案してくる慰謝料は最大77万円程度と考えられ、具体的には通院日数を元に慰謝料額が決まります。
しかし、今から説明する「弁護士基準」で算定すると、入通院慰謝料は大幅な増額が見込めるのです。ここからは便利な慰謝料の早見表をつかって以下のことを説明していきます。
- 慰謝料早見表|骨折など重傷の場合
- 慰謝料早見表|むちうちなど軽傷の場合
それでは順番にみていきましょう。
慰謝料早見表|骨折など重傷の場合
交通事故で入院や通院をした場合に請求できる慰謝料を、入通院慰謝料と言います。そして入通院慰謝料の相場は、被害者の怪我が重傷か軽傷かで異なるものです。
骨折などの重傷を負って6ヶ月通院した慰謝料の相場は、弁護士に示談交渉を依頼した場合116万円です。弁護士を立てた場合に得られる慰謝料の相場を「弁護士基準」といいます。
一方、加害者側の保険会社が主張してくる金額は弁護士基準よりも低額です。加害者側の提示額は実際に示談交渉が始まってみないとわかりませんが、一般的には「自賠責基準」と呼ばれる相場額と同程度であることが多いです。
重傷で治療期間が6ヶ月の場合、弁護士基準の相場で116万円、自賠責基準では通院日数に応じて最大77万4,000円の入通院慰謝料となります。
詳しい慰謝料の相場は下表を参照してください。
6ヶ月通院した時の慰謝料相場(重傷)
通院日数 | 自賠責基準* | 相場 (弁護士基準) |
---|---|---|
30日 | 25万8,000円 | 116万円** |
60日 | 51万6,000円 | 116万円 |
90日 | 77万4,000円 | 116万円 |
120日 | 77万4,000円 | 116万円 |
150日 | 77万4,000円 | 116万円 |
*2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用
**相場より低額になる可能性あり
自賠責基準の金額は実通院日数が増えるほど高額になりますが、90日以降77万4,000円以上には増額されません。その理由は、自賠責保険会社の慰謝料計算方法にあります。後ほど詳しくご説明します。
弁護士基準の場合、6ヶ月通院した時の相場は116万円なので、自賠責保険会社から支払われる77万4,000円は十分な金額とは言えません。
弁護士基準は、裁判を起こしたり、示談交渉で弁護士を立てたりした場合に得られる相場額なので、自賠責基準よりも正当性の高い金額であると言えます。
慰謝料額は誰が算定するかで金額が変わります。これは、慰謝料算定の基準(ルール・計算式)が統一されていないためです。詳しくは本記事中で解説していくのでご確認ください。
実通院日数と慰謝料額は必ずしも比例しない
交通事故後は毎日通院した方がいいと考える人もいるようですが、通院日数と慰謝料額は比例し続けるわけではないので、注意が必要です。
毎日通院する事にはデメリットもありますし、慰謝料を最大限にするための注意点は通院日数以外にもあります。
通院日数と慰謝料の関係については、以下の関連記事をご覧ください。
慰謝料早見表|むちうちなど軽傷の場合
次に、むちうち・打撲・擦り傷など比較的軽い怪我をした時の入通院慰謝料を示します。むちうちなどの軽傷で6ヶ月通院した時の入通院慰謝料の相場は、弁護士に示談交渉を依頼すると89万円です。
6ヶ月通院した時の慰謝料相場(軽傷)
通院日数 | 自賠責基準* | 相場 (弁護士基準) |
---|---|---|
30日 | 25万8,000円 | 89万円** |
60日 | 51万6,000円 | 89万円 |
90日 | 77万4,000円 | 89万円 |
120日 | 77万4,000円 | 89万円 |
150日 | 77万4,000円 | 89万円 |
*2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用
**相場より低額になる可能性あり
弁護士基準における慰謝料相場を比べてみると、軽傷時は重傷時の116万円と比べて低額になっています。
しかし、それでも自賠責保険会社から支払われる金額より高額です。
自賠責保険会社から支払われる金額は、軽傷時も重傷時も変わりません。
6ヶ月という長期の通院で多くの苦労をしたのに、保険会社が主張してくる低額な金額を受け入れてはいけません。軽傷・重傷問わず、弁護士基準への増額交渉が重要です。
慰謝料額は計算方法で変わる|通院6ヶ月の計算例つき
同じ交通事故であっても、計算方法が違えば慰謝料額も変わってきます。被害者が慰謝料で損をしないためには、次のような計算方法を知っておいてください。
- 自賠責保険会社の計算方法
- 任意保険会社の計算方法
- 弁護士の計算方法
弁護士による計算方法でどれだけ増額できるのかをみていきましょう。
自賠責保険会社の計算方法|最低限の金額
自賠責保険とは?
自賠責保険は強制保険ともいわれ、自動車1台ずつに加入が義務付けられている保険です。
自賠責保険は、交通事故の被害者に対して最低限の補償を行うことを目的としています。
自賠責保険会社による慰謝料計算
自賠責保険による慰謝料の計算方法を、「自賠責基準」といいます。
入通院慰謝料の場合は日額4,300円(または4,200円)とされ、この日額は年齢・性別・怪我の程度などで変動しません。
自賠責基準の入通院慰謝料
1日あたり4,300円(または4,200円)を対象日数に応じて支払う仕組み。補償は自動車損害賠償保障法に基づいており、法令を超えた金額を支払うことはありません。
自賠責保険の入通院慰謝料計算式は次の2通りあり、金額の少ない方が採用されます。
- [入院日数 + (実通院日数の2倍)]× 4,300円
- [治療期間]× 4,300円
※2020年3月31日以前の交通事故は日額4,200円
※慰謝料の対象日数は、傷害の態様、実治療日数その他を勘案して決まります。
自賠責基準の慰謝料計算例
具体的な例を計算式に当てはめてシミュレーションしてみましょう。
- 入院0日、通院期間6ヶ月、実通院日数75日
- [0 +(75日× 2)]× 4,300円=64万5,000円
- 180日× 4,300円=77万4,000円
2つの式を比較して少ない方を慰謝料とします。
入院0日、通院期間6ヶ月、実通院日数75日の慰謝料は64万5,000円となります。
この計算式からもわかるように、入院している場合はさらに慰謝料が増額される見込みです。これらの弁護士基準での金額は、基本的に示談を通して交渉していき、示談成立後に受け取ります。
一方自賠責保険から支払われる分は、被害者請求という方法で示談成立前でも請求可能です。自賠責保険の慰謝料がいつ支払われるのか、請求の流れや支払限度額についても知っておくと心強いでしょう。
任意保険会社の計算方法|示談交渉で提示される
任意保険とは?
任意保険とは、自動車の運転手自身の自由意思で加入する保険です。
自賠責保険が強制加入であるのに対し、任意保険は加入が義務付けられていません。
ここで紹介する任意保険基準の入通院慰謝料とは、示談交渉の際に加害者側の任意保険会社が提示してくる金額です。
実際の慰謝料額は示談交渉によって決められ、そのうち自賠責保険では補償しきれない部分が任意保険会社から支払われます。
なお、事故相手が任意保険未加入(無保険)の場合は、自賠責保険では補償しきれない金額が適切に支払われない可能性があります。具体的な対処法は『事故相手が無保険ならどうする?交通事故の慰謝料請求6つの対応』をご確認ください。
任意保険会社による慰謝料計算
すでに解説したように、任意保険基準の金額とは、示談交渉時に加害者側の任意保険会社が主張してくる金額を言います。
任意保険基準の入通院慰謝料
支払基準は各任意保険会社独自で設定されているため、詳細は非公開とされています。自賠責基準とほぼ同額または少し上回る程度の金額になると想定されます。
今は保険会社ごとに支払基準が異なりますが、以前はすべての任意保険会社で統一されていました。かつての共通支払基準(旧統一基準)をご紹介しますので、参考程度にご覧ください。

表のたて軸は通院期間、よこ軸は入院期間を示しています。「月」とは30日単位になりますので、通院期間が60日なら2月、180日なら6月となります。
具体的な例を計算式に当てはめてシミュレーションしてみます。
任意保険基準の慰謝料計算例
- 入院0日、通院期間6ヶ月、実通院日数75日
旧統一基準では入院期間・通院期間で慰謝料額を算出します。
そのため、入院0月・通院6月の交わるところが慰謝料となります。任意保険基準(旧統一基準)の入通院慰謝料は64万3,000円です。
もっとも、現在はこのルールが適用されるわけではありませんのでご注意ください。
弁護士の計算方法|もっとも正当性が高い
弁護士基準とは?
被害者から依頼を受けた弁護士が慰謝料を算定する時の基準を弁護士基準といいます。加害者側の自賠責保険会社や任意保険会社が慰謝料を算定するよりも、高額になる計算方法です。
弁護士基準の慰謝料
弁護士が被害者の損害を算定する時に使う慰謝料算定基準。金額は自賠責基準・任意保険基準よりも高額になります。これまでの裁判の結果を元にした基準です。
弁護士基準は、裁判基準といわれることもあります。
また、詳細が赤い本と呼ばれる「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故センター東京支部編)に記載されていることから、「赤い本の基準」と呼ばれることもあります。
交通事故の解決方法には3つの方法があり、それが示談・民事裁判・ADRです。
示談交渉の場合、基本的には加害者側の任意保険会社が提示する金額をベースとして慰謝料額が決まりますが、民事裁判を起こしたなら、裁判所の基準、つまり弁護士基準で損害算定がなされます。
ただし、民事裁判を起こさずとも弁護士に示談交渉を任せれば、裁判と同様の水準まで増額するように交渉することが可能です。
弁護士基準の慰謝料計算例
弁護士基準で慰謝料を算定する時には、慰謝料の算定表を使います。自賠責基準のように日額が設定されているのではなく、入院期間・通院期間の長さで計算可能です。ただし、被害者が重傷か軽傷かで2種類の算定表を使い分ける点に注意しましょう。
2つの算定表及び実際の計算例を紹介していきます。
- 骨折で入院60日、通院150日、実通院日数100日の場合
まず、入院日数と通院日数を月単位に変換します。「月」は30日単位となりますので、入院60日は2月、通院150日は5月となり、それぞれの交わるところが慰謝料となるため、入通院慰謝料は173万円です。実通院日数100日は慰謝料の計算には使用しません。
骨折の場合、基本的に重傷用の慰謝料算定表を用います。
慰謝料算定表(重傷)

- むちうちで通院123日、実通院日数70日
むちうちの場合は、軽傷時の慰謝料算定表を使います。
通院123日を月単位に直すと、4月と3日です。このように日数に端数が出た場合には、端数の出た月の慰謝料を日割りして算出します。
通院4月の入通院慰謝料は67万円です。端数の3日は5月目にあたりますので、5月目の79万円から67万円を差し引いた12万円が5月目の慰謝料と考えられます。
12万円を30日で割り算すると1日あたり4,000円なので、端数3日分は4,000×3=12,000円です。よって、むちうちで通院123日の時、入通院慰謝料は67万円+12,000円=68万2,000円となります。
慰謝料算定表(軽傷)

実通院日数が少ないと減額される可能性あり
弁護士基準は、保険会社の基準と比べると慰謝料が高額になります。また、実際の通院日数は原則慰謝料額を左右するものではありません。
しかし、通院期間が長期にわたる一方で実通院日数が少ない場合は要注意です。症状、治療内容、通院頻度などの面から総合的に判断されて、慰謝料の算定表(相場)よりも減額されてしまう可能性があります。
具体的には、実際の通院期間の代わりに、実通院日数をもとに算出したみなしの通院期間が慰謝料計算で採用されてしまいます。
みなしの通院期間は次のように算定されます。
- 重傷は実通院日数の3.5倍程度
- 軽傷は実通院日数の3倍程度
適切に示談金・慰謝料を獲得する方法
適切な金額で補償を受けるためには、次のような方法を検討するべきです。
- 弁護士に早めに相談をする
- 適切な治療と通院頻度を守る
- 治療費の打ち切りに安易に応じない
こうした3つの方法がなぜ大切なのかを解説します。
弁護士に早めに相談する
交通事故の示談交渉において、加害者側から提示される慰謝料額は適切とは言えません。
裁判を起こした場合と同等の、弁護士基準の金額を獲得するには、弁護士への相談が欠かせません。
弁護士に相談・依頼をするメリットには、弁護士基準の慰謝料額を目指せること以外にも、さまざまなものがあります。
弁護士相談・依頼のメリット
- 弁護士基準での慰謝料増額を目指せる
- 加害者側とのやり取りから解放される
- 煩雑な書類準備などを任せられる
- 後遺障害認定のサポートも受けられる
関連記事:交通事故を弁護士に依頼するメリット8選
弁護士に依頼するタイミングは早いほど、慰謝料請求に向けた資料収集などの準備ができます。
後遺障害認定の申請を検討した段階、通院治療が終わった段階、示談を始めた段階、あらゆる交渉の節目で弁護士相談をご検討ください。
関連記事は、交通事故の弁護士相談をするか悩んでいる方のお悩みを解決する疑問集です。今のご状況に合わせてお役立てください。
弁護士相談や示談の関連記事
適切な治療と通院頻度を守る
適切な治療内容や通院頻度は、十分な慰謝料額を得るために極めて重要です。
例えば長期通院していながら、実際の治療内容はむちうちで湿布を貼ってもらうだけ、といった場合、必要性の低い漫然治療と見なされ、慰謝料が減らされてしまう可能性があります。
また、通院頻度が低すぎると、もう治っているのではないか、痛みは嘘ではないかと疑われてしまい、治療費や慰謝料をスムーズに支払ってもらえない可能性もあります。
被害者の怪我をきちんと治すためにも、医師の指示をよく聞いて治療に集中すること、通院頻度を守ることがポイントです。
治療費の打ち切りに安易に応じない
交通事故の治療費は、加害者側の保険会社が病院に直接支払ってくれることが多いです。
しかし、まだ医師から治療終了を告げられていないのに、加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを提案される可能性があります。
まだ治療が必要なのに治療費打ち切りにより治療を終えてしまうと、以下の点で慰謝料・損害賠償金に悪影響が出るので、適切な示談金・慰謝料を得るためには、打ち切りに安易に応じないことが大切です。
- 通院期間が短くなるので、入通院慰謝料が減る
- 後遺症が残っても、「十分に通院していれば後遺症は残らなかった可能性がある」として、後遺症に対する補償が認められない恐れがある
治療費を打ち切られるケースとしては、通院が長期にわたっている場合、通院の頻度がきわめて低くなっている場合、治療関係費や慰謝料などの総額が120万円を超えそうな場合などがあります。
相手方の保険会社に治療費の打ち切りを提案されたら、まずは医師に相談をしてください。あくまで「治療費」の打ち切りであって、「治療行為」そのものを打ち切る権利は保険会社にはありません。
主治医から「まだ治療を続ける」という判断を受けたら、その旨を保険会社に伝えて、治療費の支払いを継続してもらうように交渉しましょう。
主治医も治療終了と判断した時の対応
もし主治医からも「そろそろ治療は終了」と判断を受けたら、治療費の打ち切りを避けることは難しいです。被害者が治療費を自分で支払いながら治療を継続することになりますので、健康保険を使って自己負担分をおさえたり、ご自身で加入されている人身傷害保険などを活用しましょう。
健康保険の利用方法については『交通事故で健康保険は使える|使えないケースや利用手続きを解説』の記事で確認可能です。
治療費の打ち切りでお困りでも、安易に治療を終えたり、症状固定(治療をやめる)を選ぶことはおすすめしません。ぜひ弁護士にご相談下さい。一緒に有効策を探していきましょう。
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事故の損害をもれなく請求する
被害者が交通事故で負う損害は幅広いため、お一人ですべての損害を明らかにすることは難しいです。また、示談を終えてから「まだ請求するべきお金が残っていた」と気づいても、示談後の再請求は認められづらいものです。
弁護士にご相談いただければ、お話をお伺いしながら加害者側に請求すべきお金を網羅的に調べられます。
一例になりますが、損害賠償請求のチェックリストを作成しました。弁護士基準の相場も目安として掲載していますので、ご不明点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

6ヶ月通院後も後遺症があれば後遺障害認定で補償を請求
通院を6ヶ月続けても、何らかの不具合や症状が残ってしまうこともあります。そうした場合、後遺症に対する補償請求も検討しましょう。
もっとも、後遺症に対する補償を請求するうえで知っておきたい4項目があります。
- 後遺症が残ったら後遺障害認定を申請する
- 症状固定から後遺障害認定までの流れ
- 後遺障害認定の申請は被害者請求がおすすめ
- 後遺障害慰謝料と逸失利益の計算方法
後遺障害認定を受けるための要点と、後遺障害認定後に請求すべき補償の計算方法をみていきましょう。
後遺症が残ったら後遺障害認定を申請する
後遺症が残った場合は、後遺障害認定を受けてください。後遺障害認定を受けないと、後遺症への補償がきちんと支払われません。
後遺障害に対する賠償金は、後遺障害慰謝料と逸失利益に分類できます。
請求費目 | 概要 |
---|---|
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことへの慰謝料 |
逸失利益 | 後遺障害が残ったことによる生涯年収の減収分の補てん |
後遺症・後遺障害に関するよくあるお悩みを集めました。後遺障害に関するお悩みやご相談がある方は、関連記事をお役立てください。
症状固定から後遺障害認定までの流れ
後遺障害認定を受けるまでの流れは次の通りです。
- 症状固定の診断を受ける
- 主治医に後遺障害診断書を作成してもらう
- 後遺障害認定を申請する
事前認定または被害者請求の選択可能 - 後遺障害認定の審査結果の通知を受ける
認定結果に納得がいくなら示談交渉を開始
認定結果に納得がいかないなら異議申立てを行う
症状固定とは、医学的に認められた一般的な治療方法を継続しても症状の改善がみられない状態のことをいいます。症状固定となると治療段階は終わり、後遺症への賠償を求める段階に移行します。
症状固定を以て、入通院慰謝料、休業損害、治療費、通院交通費などの対象となる期間が終わる点はご留意ください。

後遺障害認定の申請は被害者請求が正解
後遺障害認定の申請には、被害者請求がおすすめです。被害者請求のフローを簡単にご説明します。
- 主治医に後遺障害診断書を作成してもらう
- 被害者が検査結果や書類を収集する
治療経過の分かるもの、後遺症の存在を示すもの、労働への影響を示したもの - 後遺障害診断書と書類をまとめて加害者側の自賠責保険会社へ提出する
- 損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)で審査される
原則は書面審査のみ、顔の傷などの外貌醜状は面談が行われる - 加害者側の自賠責保険会社から審査結果の通知が被害者に届く
認定内容にそって後遺障害慰謝料と逸失利益が振り込まれる - 後遺障害認定結果に納得がいくなら示談交渉を開始
認定結果に納得がいかないなら異議申立てを行う
被害者請求のポイントは、被害者が必要書類を集めること、被害者が直接相手方の自賠責保険会社に書類を提出することにあります。
事前認定では、後遺障害診断書以外の書類は加害者側の任意保険会社が用意してくれます。そして、加害者側の任意保険会社から自賠責保険会社に書類が提出されます。
被害者請求は準備などの負担も大きいですが、申請を加害者の任意保険会社任せにせず、自分で書類を集めて提出できるというメリットがあります。
そのため、必要最低限の書類に加えてご自身の身体に残る症状をきちんと立証できるデータを提出できるなど、後遺障害認定の確率を上げるための工夫ができます。事前認定では、結局どんな書類が提出されたのか分かりません。
また、被害者請求では、後遺障害認定を受けた時点で、示談を待たずに自賠責保険会社から一定の補償金を受けとることができます。
事前認定では、自賠責保険会社から支払われる補償金も、示談金の一部としてまとめられてしまうので、示談を結ぶまで支払ってもらえません。
- 後遺障害認定確率を上げる工夫ができる
- 一定の補償金を示談前に早く受けとれる
被害者請求を選ぶメリットはたくさんあります。そして、デメリットである「手間」は、弁護士に依頼することで軽くすることができます。
被害者請求を行う方法や、請求手続きを弁護士に依頼するメリットについては『後遺障害申請は被害者請求と弁護士依頼が正解|必要書類も紹介』の記事でご確認ください。
後遺障害慰謝料と逸失利益はこう計算する
後遺障害慰謝料の計算
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて相場があります。
後遺障害がもたらす生活・労働への影響を加味して目安の金額から増減されます。
後遺障害慰謝料の相場
等級 | 自賠責* | 弁護士 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650 (1,600) | 2,800 |
2級・要介護 | 1,203 (1,163) | 2,370 |
1級 | 1,150 (1,100) | 2,800 |
2級 | 998 (958) | 2,370 |
3級 | 861 (829) | 1,990 |
4級 | 737 (712) | 1,670 |
5級 | 618 (599) | 1,400 |
6級 | 512 (498) | 1,180 |
7級 | 419 (409) | 1,000 |
8級 | 331 (324) | 830 |
9級 | 249 (245) | 690 |
10級 | 190 (187) | 550 |
11級 | 136 (135) | 420 |
12級 | 94 (93) | 290 |
13級 | 57 (57) | 180 |
14級 | 32 (32) | 110 |
※()内の金額は2020年3月31日以前に発生した交通事故
後遺障害等級は1級から14級までありますが、すべての等級において弁護士基準の金額が自賠責基準の金額を上回っています。
入通院慰謝料だけでなく、後遺障害慰謝料も弁護士基準で算出するべきです。
等級ごとの具体的な症状については、『後遺障害等級一覧表!症状別の等級認定基準と自賠責による後遺障害への保険金』の記事おける一覧表から確認できます。
逸失利益の計算
逸失利益は、次の項目で求めることができます。
- 症状固定時の年齢
- 基礎収入(事故前年の年収)
- 労働能力喪失率(後遺障害等級)
標準的な逸失利益の計算式は次の通りです。
逸失利益の計算式
基礎収入 × 労働能力喪失率 × (67-症状固定時の年齢)に対するライプニッツ係数
67とは、交通事故にあわなければ働いていたと考えられる年齢です。
67歳までの年収について、後遺障害による労働能力低下の影響を受けて減収してしまっていると考えるのが逸失利益の計算式です。
むちうちの労働能力喪失期間は例外扱い
むちうちの逸失利益には注意が必要です。
むちうちは、67歳までは労働能力喪失期間が続かないと考えられています。
具体的には、労働能力喪失期間は後遺障害12級13号認定で10年間、後遺障害14級9号で5年間とされます。
たとえば、37歳で症状固定となった場合、後遺障害12級13号なら47歳まで、後遺障害14級9号なら42歳までの減収について補償を受けられます。
逸失利益の計算は、被害者の職業・立場においても計算の方法が違います。関連記事『逸失利益の計算を職業別に解説!早見表や計算機つき|もらえない原因と対処法』で詳しい計算方法をご確認ください。
むちうちの慰謝料獲得の完全ガイド
交通事故によるむちうちは、通院を6ヶ月続けても症状の改善が見られないことが、後遺障害認定を受けるひとつの目安とされています。
ここからはむちうちの適正な慰謝料獲得に向けた治療時の注意点と、認定が見込まれる後遺障害等級についてみていきましょう。
知っておきたい治療時の注意点
むちうちの治療における重要ポイントは次の通りです。
重要ポイント
- 交通事故にあったら外傷がなくても疑うべき症状がむちうち
- むちうちの治療は整形外科で行う
- 自己判断せずに医師の指示を守って定期的に通院する
30日あたり10日以上は通院することが望ましい - 整骨院・接骨院はあくまで併用先と考える
事前に主治医の指示と相手方保険会社へ連絡する
交通事故で負うむちうちの症状は、痛み、しびれ、めまい、吐き気、頭痛、視力低下など多岐にわたります。
最初に病院を受診した時には、医師に気になる症状をもれなく伝えてください。治療を開始してしばらく経ってから「そういえばこの症状もありました」と伝えても、交通事故と症状の因果関係を証明しづらく、適正な補償を受けられない可能性もあります。
また、治療の主軸は整形外科にあります。自己判断で整形外科の通院をやめて整骨院・接骨院に切り替えたり、治療の間隔をあけるのは危険です。
あわせて読みたい
交通事故によるむちうち(外傷性頚部症候群)の症状や治療期間|慰謝料も解説
後遺障害12級13号・14級9号の認定ポイント
むちうちの後遺症は、後遺障害12級13号または後遺障害14級9号に認定される可能性があります。
後遺障害12級13号、後遺障害14級9号
後遺障害等級 | 認定基準 |
---|---|
後遺障害12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
後遺障害14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
しびれや痛みといった神経症状があることを示すために最も有効な方法は、MRIやCTなどの画像検査です。画像検査の結果で神経症状の原因が確認できれば、第三者からみても症状の存在が確認できるからです。画像検査の結果で示すことができれば、後遺障害12級13号認定の可能性が高まります。
次に、MRIやCTなどの画像検査の結果では症状の存在が示せなくても、神経学的検査の結果で神経症状の存在を確かめることが可能です。
神経学的検査の代表例
- 深部腱反射検査
- 徒手筋力テスト(MMT)
- 感覚検査
- スパーリングテスト・ジャクソンテスト
神経学的検査の結果で神経症状の存在が明らかにできれば、後遺障害14級9号認定の可能性が高まります。
その他、後遺障害認定のポイントとしては次のような条件があげられます。
- 6ヶ月以上通院治療をしていること
- 事故直後から症状が続いていること
- 労働に支障が出ていること
後遺障害12級および14級の認定基準や等級認定を受けるためのポイントは、次の関連記事でもさらに詳しく解説しています。後遺障害慰謝料の事例も紹介しているので、参考にしてください。
関連記事
むちうちの慰謝料|目安額がひとめでわかる
むちうちで通院し、弁護士に示談交渉を任せた場合の慰謝料相場をまとめた早見表は以下の通りです。通院期間ごとにまとめていますので、被害者の通院状況にあわせてご利用ください。
むちうちの慰謝料早見表
通院期間 | 入通院 | 後遺障害 |
---|---|---|
1ヶ月 | 19万円 | ー |
2ヶ月 | 36万円 | ー |
3ヶ月 | 53万円 | ー |
4ヶ月 | 67万円 | ー |
5ヶ月 | 79万円 | ー |
6ヶ月 | 89万円 | 12級:290万円 14級:110万円 |
7ヶ月 | 97万円 | 12級:290万円 14級:110万円 |
8ヶ月 | 103万円 | 12級:290万円 14級:110万円 |
9ヶ月 | 113万円 | 12級:290万円 14級:110万円 |
むちうちで後遺障害認定を受けるには、6ヶ月以上通院していることがポイントです。そのため通院6ヶ月未満の場合は、後遺障害慰謝料の獲得はあまり期待できません。
弁護士基準での入通院慰謝料、後遺障害慰謝料への増額交渉は、弁護士にお任せください。
弁護士相談があなたの負担を和らげます
交通事故後に6ヶ月も治療を続けることで、大きな精神的苦痛にさらされたことでしょう。
通院6ヶ月の精神的苦痛に対して適切な慰謝料を受け取るためには、弁護士に相談してみて、交通事故の慰謝料請求を弁護士に任せることも検討していきましょう。
弁護士に依頼するべき3つの理由
- 長期間の通院ほど弁護士基準で慰謝料を増額するべきだから
- 厳しい示談交渉となる恐れがあるから
- いち早く日常生活に復帰できるから
6ヶ月の通院は、本当に多くの苦労をされたことと思います。それだけの苦労に見合った金額を受けとるべきです。
また、6ヶ月の通院期間となると、自賠責保険会社から支払われる金額だけでは不十分な恐れがあります。自賠責基準で支払いきれない分は、加害者側の任意保険会社が補てんします。
この補てん分は任意保険会社としては出費になりますので、少しでも低額に済ませようというのが営利企業としての本音です。
具体的には、治療中にかかる費用が120万円を超えそうになるあたりから任意保険会社の態度が変わる可能性があります。
通院6ヶ月ですと容易に120万円を超えることが予想されます。相手方保険会社とのストレスフルなやり取りは弁護士に任せて、被害者の方はいち早く日常生活に復帰しましょう。
関連記事では、交通事故の示談の基本や示談金の相場をまとめています。弁護士と示談の関連もわかるので、併せてお読みください。
弁護士無料相談で期待できる
5つのメリット
慰謝料のメリット
保険会社独自の
低い基準の提示額
→
裁判所が認める
適正な金額に増額
示談交渉のメリット
保険会社の
言いなりに
→
示談交渉のプロである
弁護士が交渉窓口に
各種手続のメリット
書類や資料を
揃えるのが大変
→
弁護士にお任せで
スムーズに完了
治療のメリット
示談や手続きに
煩わされる
→
治療に
専念できる
後遺障害認定のメリット
後遺障害等級が
認定されない・低い
→
納得のいく
後遺障害等級認定
無料法律相談のご予約を24時間受付中
アトム法律事務所では、無料の法律相談を受け付けています。ご予約窓口は年中無休でつながりますので、お気軽にご利用ください。
- 法律相談のご予約受付は年中無休
- 交通事故でケガをした方なら無料法律相談を利用できる
- 慰謝料額だけでなく、過失割合など色んな疑問を聞ける
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まとめ
- 6ヶ月通院したときの慰謝料は、弁護士に依頼すると重傷(例:骨折)116万円、軽傷(例:むちうち)で89万円となる。自賠責保険からは最大77万4,000円にとどまる。
- 後遺障害認定を受けることで後遺障害慰謝料・逸失利益を受けとることができる。
- 後遺障害認定の申請方法は被害者請求がおすすめ。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了