通院1ヶ月の交通事故慰謝料はいくら?計算方法や増額・減額されるケースも解説

通院1ヶ月の交通事故慰謝料は、軽傷で19万円、重傷で28万円です。
ただし、加害者側が提示してくる金額はもっと低額な傾向にあります。また、場合によっては相場よりも増減することもあります。
この記事では、通院1ヶ月の慰謝料はいくらになるのか、20日や1ヶ月10日といった「約1ヶ月」の場合や、入院した場合も含めて解説します。
慰謝料が増減するケースや適正な慰謝料額を得る方法についても紹介するので、ぜひご覧ください。
目次
通院1ヶ月の交通事故慰謝料はいくら?
まずは、通院1ヶ月の入通院慰謝料について、以下のケースに分けて相場を紹介します。
- 通院1ヶ月
- 通院約1ヶ月(20日、1ヶ月10日など)
- 通院1ヶ月で入院もした
通院1ヶ月の慰謝料
通院1ヶ月の慰謝料相場は、軽傷の場合19万円、重傷の場合28万円です。軽傷とは打撲やむちうちなどを指し、重傷とはそれ以外の場合を指します。
この相場は、過去の判例に基づく「弁護士基準(裁判基準)」という基準に基づいています。
しかし、示談交渉の際、加害者側の任意保険会社は4,300円~12万9,000円程度の金額を提示してくるでしょう。
加害者側の任意保険会社は、弁護士基準ではなく自社独自の基準(任意保険基準)に基づき慰謝料を計算します。
具体的な金額は各社で異なり非公開ですが、国が定めた最低限の金額(自賠責基準)に近いとされています。その自賠責基準では、通院1ヶ月の慰謝料は4,300円~12万9,000円なのです。
通院1ヶ月の慰謝料を、自賠責基準と弁護士基準でまとめると以下の通りです。
通院1ヶ月の慰謝料
通院日数 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
5日 | 4万3,000円 | 重傷28万円 軽傷19万円 |
10日 | 8万6,000円 | 重傷28万円 軽傷19万円 |
15日 | 12万9,000円 | 重傷28万円 軽傷19万円 |
20日 | 12万9,000円 | 重傷28万円 軽傷19万円 |
25日 | 12万9,000円 | 重傷28万円 軽傷19万円 |
30日 | 12万9,000円 | 重傷28万円 軽傷19万円 |
*2020年4月1日以降に発生した事故を想定した金額
通院20日、1ヶ月10日など端数があるときの慰謝料
通院1ヶ月といっても、厳密に1ヶ月ちょうどというケースばかりではありません。中には20日、1ヶ月10日というように「約1ヶ月」という場合もあるでしょう。
こうした場合の弁護士基準の慰謝料相場は、以下の通りです。
通院 | 軽傷 | 重傷 |
---|---|---|
20日 | 12万6,700円 | 18万6,700円 |
25日 | 15万8,300円 | 23万3,300円 |
1ヶ月5日 | 21万8,300円 | 32万円 |
1ヶ月10日 | 24万6,700円 | 36万円 |
1ヶ月15日 | 27万5,000円 | 40万円 |
※端数は四捨五入
自賠責基準の慰謝料は実通院日数によっても変わりますが、いずれにしても弁護士基準よりも低額です。
通院が1ヶ月ちょうどではなく、日数に端数がある場合の計算方法は、本記事内で後ほど詳しく解説します。
通院1ヶ月で入院もしているときの慰謝料
通院1ヶ月のほかに入院をしていた場合は、入通院慰謝料が高額になります。
弁護士基準での具体的な慰謝料額は、以下の通りです。
入通院慰謝料|通院1ヶ月のほかに入院していた場合(弁護士基準)
入院 | 重傷 | 軽傷 |
---|---|---|
なし | 28万円 | 19万円 |
入院1ヶ月 | 77万円 | 52万円 |
入院2ヶ月 | 122万円 | 83万円 |
入院3ヶ月 | 162万円 | 106万円 |
通院1ヶ月の交通事故慰謝料の計算方法
ここからは、通院1ヶ月の入通院慰謝料をどう計算するのか、解説していきます。
任意保険基準は各社で異なり非公開なので、自賠責基準と弁護士基準のみ確認していきましょう。
自賠責基準での計算方法と計算例
自賠責保険から支払われる慰謝料は、「4,300円×対象日数」です。対象日数には2通りあり、短いほうが採用されます。
【入通院慰謝料の計算式】
- 4,300円 × 対象日数
次のうちどちらか短い方を「対象日数」として採用します。
- 治療期間
- 実際に治療した日数×2
※治療期間とは、一番最初に病院を受診した日~治療終了までの期間をさします。
※診断書に「治癒見込」「継続」「転医」「中止」と記載された場合は、治療期間に7日を加算します。
通院1ヶ月の場合、通院期間は「30日」となります。
実通院日数の2倍と比較して少ない方が慰謝料の対象日となりますので、15日が慰謝料の分かれ目です。通院15日で慰謝料は最高額となり、通院16日以降は慰謝料が増額されることはありません。
慰謝料の計算例
- 通院1ヶ月・実通院日数10日
4,300円×(10×2)=8万6,000円 - 通院1ヶ月・実通院日数15日
4,300円×(15×2)=12万9,000円 - 通院1ヶ月・実通院日数23日
4,300円×(30)=12万9,000円
なお、加害者側の自賠責保険会社から支払われる金額には上限があります。
また、「被害者請求」を行えば、自賠責保険会社の支払い分を示談成立前に受け取ることも可能です。
詳しくは、『自賠責保険の慰謝料計算や限度額は?任意保険からも両方もらえる?』似て解説しています。
弁護士基準での計算方法と計算例
交通事故の慰謝料を弁護士基準で計算する時には、慰謝料の算定表を使います。
算定表は軽傷用と重傷用の2種類に分かれており、ケガの程度で使い分けなくてはなりません。
ケガの程度が「むちうち、軽い打撲、軽い挫創(挫傷)」などであれば軽傷用を用いますが、それ以外の場合は基本的に重傷用の表を用います。
算定表で、縦軸が示すのは通院、横軸が示すのは入院です。
通院月と入院月の交わる部分が慰謝料額となります。
慰謝料算定表【軽傷】

慰謝料算定表【重傷】

通院が1ヶ月10日のように、日数に端数がある場合は、表をもとに別途計算が必要です。
軽傷で通院1ヶ月10日の場合を例に解説します。
【通院月数に端数があるときの計算(例:1ヶ月10日)】
- 通院1ヶ月分の慰謝料を確認する。
→19万円 - 端数の10日分の金額を確認するため、まずは通院2ヶ月の金額から1ヶ月の金額を引く。
→36万円-19万円=17万円 - 17万円を日割し、10日分の金額を算出する。
→17万円÷30日×10日=約5万6,700円 - 通院1ヶ月分の金額と、端数の10日分の金額を足す。
→19万円+5万6,700円=24万6,700円
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通院1ヶ月の慰謝料が増額されるケース
通院1ヶ月の慰謝料はここまで解説してきた通り、弁護士基準なら軽傷で19万円、重傷で28万円です。しかし、場合によっては増額されることもあります。
具体的なケースを2つ紹介します。
ただし、これから紹介するケースに当てはまったとしても、実際に増額されるか、どの程度増額されるかは加害者側との交渉次第です。増額ケースに該当する場合は、一度弁護士までご相談ください。
加害者側の悪質性が高かった
加害者が事故に対して重い責任を持っている場合、慰謝料増額が認められる可能性があります。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 加害者が正常運転が困難な状態だった
大幅なスピード違反・信号無視・薬物の使用・飲酒・ひき逃げ・無免許 - 加害者が不誠実・悪意に満ちた態度だった
謝罪が全くない・虚偽の発現を繰返す・被害者や遺族に罵詈雑言を浴びせる
交通事故の慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われるものです。
加害者の悪質性が高ければその分、被害者は怒りや悲しさ、悔しさなどを強く感じるでしょう。
そのため、加害者の悪質性が高い場合には、被害者の精神的苦痛がことさらに大きいとして、慰謝料が増額される場合があるのです。
やむを得ない事情で早く退院した
やむを得ない事情で入院期間を短縮し、早く退院した場合は、そのことが考慮され慰謝料が増額される可能性があります。
具体的には以下のようなケースが該当します。
- 母親が幼い子の育児のため退院を早めた場合
- 仕事の事情でどうしても早く退院しなくてはならなかった場合
ただし、「やむを得ない事情であった」ことをしっかりと証明することが必要です。やむを得ない事情ではないと判断されれば、慰謝料は増額されません。
それどころか、早く退院したことで、実際よりもケガの程度が軽く見積もられたり、治療への消極性が疑われたりして、その他の費目の請求にも悪影響が及ぶこともあります。
通院はできる限り最後まで続け、やむを得ず短縮する必要がある場合は、事前に弁護士に相談することがおすすめです。
通院1ヶ月の慰謝料が減額されるケース
通院1ヶ月の慰謝料は、場合によっては相場よりも減額されることもあります。
通院1ヶ月の慰謝料が減額されるケースについても見ておきましょう。
通院頻度が低すぎる
通院1ヶ月でも、実際に通院した頻度が低すぎる場合には、慰謝料が減額される場合があります。
弁護士基準の場合、通院頻度が低すぎると、「実通院日数×3(軽傷の場合)」または「実通院日数×3.5(重症の場合)」をみなし通院期間として慰謝料が計算されることがあります。
例えば、通院1ヶ月の間に3日しか通院しなかった場合の慰謝料は、以下の通りです。
【例】通院1ヶ月の間に3日しか通院しなかった場合
- 軽傷:5万7,000円(みなし通院期間9日で計算)
- 重症:9万8,000円(みなし通院期間10.5日で計算)
通常、通院1ヶ月の慰謝料は軽傷で19万円、重傷で28万円なので、大幅に低額になっていることがわかります。
なお、医師の指示に従った結果、通院頻度が著しく低くなった場合は、事情が考慮され減額されない可能性があります。
無理に通院を引き延ばした
実際には1ヶ月未満の通院で十分なのに、無理に1ヶ月間通院した場合も、慰謝料が減額される可能性があります。
「必要性のない通院だったのなら、加害者がそれに対する補償をする必要はない」と判断されるからです。
通院頻度が低い場合や、湿布の処方や電気療法を受けるだけといった漫然治療が続いていた場合は、通院を無理に引き延ばしていると判断されるおそれがあります。
医師の許可なく整骨院に通っていた
医師の許可なく整骨院に通っていた場合も、慰謝料が減額されることがあります。
整骨院は厳密には医療機関ではなく、整骨院で行われる施術も医学的な治療ではありません。そのため、「交通事故のために必要な通院だったとは言えない」と判断されることがあるのです。
ただし、病院の医師の許可を受け、並行して病院にも定期的に通っているなら、整骨院への通院も必要性が認められることがあります。
整骨院に通いたい場合は事前に医師の許可を取るようにしましょう。
整骨院への通院を検討している場合は、関連記事『交通事故の治療を整骨院で受けても慰謝料はもらえる?半額になるって本当?』をご覧ください。
通院1ヶ月で適正な慰謝料を得る方法
ここまで通院1ヶ月の慰謝料について解説してきましたが、実際にいくら受け取れるのかは加害者側との示談交渉次第です。
そこでここからは、通院1ヶ月で適正な慰謝料額を得るポイントを解説します。
適正な相場は弁護士に確認する
通院1ヶ月の慰謝料は、弁護士に確認することがおすすめです。
通院1ヶ月の慰謝料は軽傷で19万円、重傷で28万円ですが、事情に応じて増減することがあり、厳密な相場の判断が難しいケースもあるからです。
また、慰謝料を含む損害賠償金の金額は、過失割合によっても変わります。
【過失割合とは】
交通事故が起きた責任が、加害者側と被害者側それぞれにどれくらいあるのか、割合で示したもの。
自身についた過失割合分、受け取れる慰謝料や賠償金が減額される。
様々なことを考慮した結果、最終的にどのくらいの金額が妥当なのかは簡単には判断できません。
そのため、専門家である弁護士に相談することが重要です。
弁護士に相談すれば、ほかの費目の相場もわかる
交通事故の賠償金には、慰謝料以外にも様々な費目が含まれます。加害者側は慰謝料以外の費目も低く見積もって提示してくることがあるため、弁護士に相談する場合はすべての費目について、妥当な金額を確認しましょう。
財産的損害と精神的損害
種類 | 内訳 |
---|---|
財産的損害 | 治療費 通院交通費 車両の修理費 休業損害 逸失利益 |
精神的損害 | 入通院慰謝料 後遺障害慰謝料 死亡慰謝料 |
また、被害者側からの請求費目に漏れがあったとしても、加害者側がわざわざそれを指摘してくれるとは限りません。弁護士なら、事故状況に応じて請求できる費目を全て把握できるので、請求漏れが生じる心配がなくなります。
示談交渉も弁護士に任せるのがベスト
弁護士に適正な慰謝料額を確認したら、その後の示談交渉まで任せることがおすすめです。
示談交渉で相手となる加害者側の任意保険会社は、日々仕事として交渉をしているプロです。知識も経験も豊富なので、たとえ弁護士に確認した適正な慰謝料額でも、聞き入れられる可能性は低いと言わざるを得ません。
また、そもそも弁護士基準の金額は、示談交渉で弁護士が主張するか、裁判を起こさなければ認められないことが多いです。
通院1ヶ月だと軽傷の場合も多いですが、軽傷で弁護士を立てることは大げさではありません。
後ほど弁護士費用の負担を軽減する方法についても解説するので、弁護士への相談・依頼をご検討ください。
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弁護士費用に関する記事
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了