交通事故の被害者の嘘はばれる!過剰請求がばれるリスクと理由を解説
この記事でわかること
- 虚偽の症状を訴え慰謝料を増額させる
- 不要な治療を行い治療費を過剰請求する
- 物損の被害をかさ増しして修理費を過剰請求する
交通事故の被害者がこのような嘘をついて、慰謝料や治療費などを過剰請求することは可能なのでしょうか。
結論からいえば、交通事故の嘘はばれます。
もし噓がばれたら、治療費や慰謝料の返還を求められることはもちろん、刑事告訴されて実刑判決を受ける可能性もあります。
この記事では、交通事故の嘘がばれたときのリスクや、嘘がばれてしまう理由を解説します。
また、嘘をついて過剰請求しなくても示談金を多くもらう方法も紹介するため、ぜひ最後までお読みください。
目次
交通事故の嘘がばれるリスクは?
全く痛くないのに「まだ痛みがある」と噓をついたり、交通事故とは関係のないケガを「事故が原因だ」と嘘をついて通院を続けたりすると、次のようなリスクが発生する可能性があります。
- 治療費や慰謝料などの返還を求められる
- 詐欺罪に問われる可能性がある
順番にみていきましょう。
治療費や慰謝料などの返還を求められる
嘘がばれるまでに保険会社から治療費や慰謝料、休業損害などが支払われていた場合、それらの返還を求められることになります。
特に保険会社が一括対応をしていた場合、一括対応はすぐさま打ち切られると同時に、保険会社がこれまで病院に支払った分の、治療費の返還が求められる流れとなるでしょう。
保険会社の一括対応
加害者側の任意保険会社が治療費を直接病院に支払ってくれる仕組み。被害者は治療のたびに治療費を立て替える必要がない。
治療費や慰謝料、休業損害などの返還が求められるうえ、通院にかかった交通費や、入院にかかった雑費なども被害者の自己負担になってしまいます。
また、物損事故で修理費を過剰請求した場合には、修理費やレンタカー代の返還が求められます。
慰謝料や休業損害を増額させるために嘘をついたのに、かえって余計な出費をすることになってしまうのです。
詐欺罪に問われる可能性がある
痛くないのに嘘をついて通院を続けた結果、最悪のケースでは保険金の不正請求や過剰請求を疑われる可能性もあります。
保険金の過剰請求や不正請求は、刑法第246条「詐欺罪」になり得る犯罪行為です。いわゆる保険金詐欺です。
過剰請求や不正請求を行った場合、保険会社に治療費や慰謝料などをすべて返還したとしても、保険会社から詐欺罪として刑事告訴される可能性はあります。
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
刑法第246条
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪には懲役刑しか規定されていないので、起訴され有罪判決を受けることになれば、実刑判決を受ける可能性もあります。
お金をだまし取るところまでいかず未遂に終わった場合でも、保険会社に虚偽の申請をしていれば詐欺未遂罪が成立します。詐欺未遂罪も1月以上10年以下の懲役ですが、未遂のため減刑される可能性はあります。
また、被害者自身が詐欺をしているつもりはなくても、事件に巻き込まれてしまうケースも存在するので注意してください。
たとえば、病院や整骨院が痛くないのに通院することを受け入れ、不正に保険金を請求した場合、被害者も疑われる可能性があるのです。
事故後、痛くないのに通院するときには、リスクを抑えるための対策が必須といえます。
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交通事故の被害者の嘘がばれる理由は?
交通事故で被害者の嘘がばれてしまうのは、主に以下の理由からです。
- 交通事故の内容と症状が一致しない
- 映像証拠と被害者の主張が矛盾する
また、物損事故の過剰請求がばれる理由の多くは「相場よりも高い物損の修理費用を請求した」ことです。
詳しく解説します。
交通事故の内容と症状が一致しない
交通事故の被害者が嘘をついているとばれる1つめの理由は、「事故の内容と症状が一致しない」です。
むちうちのような客観的に症状が見えにくいケガの場合、本人が「痛みがある」と主張すれば症状を大げさに伝えやすいかもしれません。
しかし、保険会社は交通事故の内容とケガの症状の関係について豊富なデータを持っています。
そのため、事故の状況から考えられる症状と、被害者が訴える症状が大きく異なる場合、不自然だと判断して被害者の嘘を疑うことになります。
嘘がばれる例
- 軽い追突事故だったのにもかかわらず、むちうち症状で半年近く通院している(むちうちの平均通院期間は3か月程度)
- 軽度なケガなのに過度なリハビリを行って治療期間を伸ばしている
保険会社が、被害者の嘘を見破るために特に注目するのは以下のような点です。
- 事故の衝撃の強さと症状の重さが合わない
- 事故でぶつかった部位と、痛みを訴える部位が違う
- 頻繁に痛みを訴える部位が変わる
- 同じような事故の一般的な症状とかけ離れている
示談金(損害賠償金)を増額する目的で過剰診療を行った結果、嘘がばれてしまうと治療費をすべて自身で負担することになってしまいます。
映像証拠と被害者の主張が矛盾する
2つめの理由は、「監視カメラやドライブレコーダーの映像証拠と、被害者の主張が一致しない」です。
現代では街中の至る所に監視カメラが設置されており、多くの車にドライブレコーダーが搭載されています。そのため、事故の状況は客観的な映像として記録されていることが多くなっています。
映像証拠によって被害者の嘘がばれるケースもとても多いのです。
嘘がばれる例
- 「足を強くぶつけて歩行が困難だ」と主張しているが、事故現場の監視カメラには普通に歩いて車を降りる被害者の姿がとらえられていた。
保険会社は、被害者の主張の真偽を確認するため、以下のような点に注目して映像や記録を確認します。
- 事故の衝撃の強さが映像で確認できる場合、その程度と症状の重さが合うか
- 事故直後の被害者の様子と、主張する症状が一致しているか
- 現場での行動や移動の様子が自然か
事故直後は「嘘ついて過剰請求しよう」などと考える余裕はないため、事故現場での様子と、あとからの主張に矛盾が生まれてしまうことが多いのです。
相場よりも高い物損の修理費用を請求した
物損事故について被害者が嘘がばれる理由の多くは、「相場よりも高い修理費を請求した」ことです。
よくあるケースとして、交通事故によって損傷した部分だけではなく、別の損傷も同時に修理して、それらの修理費をまとめて請求することが挙げられます。
しかし、保険会社は以下のような点に注目して、物損事故での被害者の嘘を見破ります。
- 事故直後の写真や修理工場での見積書を精査
- 損傷の状態と修理内容の整合性をチェック
- 同型車の一般的な修理費用と比較
また、被害者と修理工場が結託して過剰請求をしようとするケースもありますが、保険会社は一般的な修理費や工賃の相場を把握しているため、こちらも簡単に嘘を見抜かれてしまいます。
交通事故で嘘をつかずに示談金を多くもらう方法
交通事故で嘘をついて示談金を増額させようとする行為は、実刑判決を受ける可能性もあり、非常に危険です。
交通事故で、嘘をつかずに示談金を増額させるためには「弁護士への依頼」がおすすめです。
実は、保険会社が最初に提示する示談金額は「任意保険基準」と呼ばれる基準で算出されており、本来被害者が受けられる補償よりも低い金額です。
慰謝料や休業損害の算定基準には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」の3種類があり、同じ事故でも基準によって金額が大きく異なります。
むちうちで3か月通院(通院日数30日)した場合の慰謝料相場を例に見てみましょう。
- 自賠責基準:25万8000円
- 任意保険基準:自賠責と同程度
- 弁護士基準:53万円
弁護士基準で請求することで、はじめに提示された示談金額の2倍近くの金額を獲得できる可能性があるのです。
しかし、被害者が自力で保険会社と交渉しても、弁護士基準の示談金額に増額されることはほとんどありません。
なぜなら、弁護士基準は裁判で認められる金額だからです。被害者が個人で裁判を起こす可能性は低いため、保険会社はわざわざ弁護士基準で支払う必要はないと考えます。
保険会社も営利団体なので、なるべく出費は抑えたいのです。
弁護士基準で受け取るなら弁護士依頼
そこでおすすめしたいのが、弁護士への依頼です。
弁護士が示談交渉を行うことで、保険会社は「このまま交渉が長引けば裁判に発展するかもしれない」と考えます。
裁判になれば保険会社の負担も大きくなるため、「裁判になるくらいなら弁護士基準で払って示談しよう」と増額を認めてくれるようになるのです。
弁護士費用特約で「0円」で弁護士依頼
「弁護士費用が心配」という声もよく聞かれますが、実は多くの交通事故の被害者は弁護士費用特約を利用することができます。
弁護士費用特約とは、交通事故の被害に遭った際の弁護士費用を補償する保険の特約です。加入している自動車保険や火災保険に、特約として付帯されていることが多くあります。
この特約では一般的に、法律相談料は10万円まで、弁護士費用は300万円までが補償されます。これは示談交渉や訴訟に必要な費用のほとんどをカバーできる金額です。
つまり、多くのケースで被害者の金銭的負担なしに弁護士依頼することができるのです。
アトム法律事務所では、特約の有無に関係なく無料の法律相談を行っています。まずは「弁護士に依頼することでどのくらいの利益があるのか」無料相談で確認してみましょう。
交通事故の嘘についてよくある質問
むちうちのように症状がわかりにくくても嘘はばれる?
客観的に症状がわかりにくい、むちうちのようなケガの嘘も、基本的にはばれてしまいます。
基本的には本記事内「交通事故の内容と症状が一致しない」でも解説した、以下のような理由で嘘がばれます。
- 事故の内容と症状の重さが合わない
- 事故の内容から見て通院期間が長すぎる
- 症状に対して通院頻度が高すぎる
また、担当医に指摘されるケースもあります。経験豊富な医師であれば嘘をついている人の独特な反応に気がつけるため、医師との関係が悪くなってしまう可能性もあるのです。
交通事故の治療では嘘をつかず医師の指示に従い、適切な治療を受けるようにしましょう。
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嘘をついていないのに疑われたときの対処法は?
むちうちのような外見からはケガの具合が分かりにくいケースでは、本当に必要な治療を行っているだけでも、嘘をついていると疑われてしまう可能性があります。
保険会社に嘘だと疑われてしまった場合の対処法は、以下の通りです。
- 事故直後の適切な医療機関の受診
- 症状や痛みの正確な申告と記録
- 必要な医療検査の実施
- 適切な通院頻度の維持
保険会社から嘘をついていると疑われた場合、最も重要なのは事故直後の対応です。できるだけ早期に医療機関を受診し、感じているすべての症状を正確に伝えましょう。
具体的には、一週間以上経過してからの受診だと、事故とケガの因果関係を疑われる可能性があります。
受診が難しい場合(祝日や大型連休など)でも、市販の痛み止めを使用した際のレシートは保管しておくことをおすすめします。
有効な医療検査は、たとえばむちうち症状なら、レントゲンやMRI検査、ジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経学的検査が挙げられます。
これらの医療記録が、症状の信憑性を裏付ける重要な証拠となります。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了