交通事故の慰謝料は通院なしでももらえる?病院には何日以内に行くべき?

更新日:

通院なしの慰謝料

交通事故の慰謝料は、治療費や交通費などの実費とは別に支払われる金銭で、目に見えない「被害者の精神的苦痛」を和らげるために支払われるものです。
慰謝料は、通院なしの場合には原則として請求できません。

慰謝料の金額は、治療のために費やした時間の長さによって決まるからです。

このことからもわかるように、病院への通院と慰謝料の金額には、深い関係があります。
適切に通院してケガを治療することが、正当な慰謝料獲得への早道となるので、「適切な通院」とはどのようなものなのか、確認していきましょう。

目次

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交通事故の慰謝料は通院なしでは認められない

慰謝料は3種類|いずれも通院なしでは受け取れない

交通事故の慰謝料は、被害者の精神的苦痛の緩和・除去を目的に支払われる金銭です。交通事故で認められる3つの慰謝料は、いずれも通院なしの時には認められません。

交通事故で認められる慰謝料は、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3つです。

それぞれがもつ意味を確認しておきましょう。

入通院慰謝料

入院・通院した場合に認められる慰謝料。ケガの痛み、入院・通院を余儀なくされた辛さなどといった精神的苦痛の緩和を目的として支払われる。

後遺障害慰謝料

後遺障害等級認定を受けた場合に認められる慰謝料。後遺障害という一生治らない症状を負うことになった精神的苦痛の緩和を目的として支払われる。

死亡慰謝料

命を落とすことになった被害者本人に支払われる慰謝料。死亡慰謝料は、被害者の遺族に対しても支払われる。これを「近親者固有の慰謝料」という。

各慰謝料の基本的な情報や相場については、『交通事故の慰謝料|相場や計算方法など疑問の総まとめ』で解説しています。相手方の任意保険会社からの提示額は相場よりも低い傾向があるので、正しい相場を確認してみてください。

また、軽傷で通院をはじめた場合、症状別にどのくらいの慰謝料がもらえるかは、『軽傷の交通事故慰謝料はどれくらい?』の記事で解説しています。

通院は遅くても事故後2~3日以内に病院へ行く

事故後、通院なしの状態でいるならば、早急に病院に行きましょう。
通院は早ければ早いほどいいですが、遅くても事故から2~3日以内に通院することが望ましいです。

早急に病院に行くべき理由は以下の通りです。

  • 事故後、大幅に時間が経ってから病院へ行っても、身体の異常が見つかりにくい可能性があるから
  • 事故後、大幅に時間が経ってから通院を開始しても、事故との関連性が認められず慰謝料や治療費を請求できない可能性があるから

交通事故の慰謝料は、「交通事故による身体の損傷から生じた精神的苦痛」に対して支払われます。
そのため、ケガと事故との因果関係を証明するために、できるだけ早く病院で診察を受ける必要があるのです。

人身事故としての届け出も必要?

実務上は物損事故扱いのままでも、相手方が事故によるケガの事実を認めていれば、交通事故の慰謝料は支払われることが多いです。

もっとも、ケガをしているのに物損事故扱いのままにすると、事故との因果関係や過失割合などで相手方ともめた際に証拠となる資料が入手できません。将来的なもめごとのリスクを回避するなら、人身事故へ切り替えておいた方が無難でしょう。

人身事故への切り替えをするためには、交通事故から10日以内に病院で診察を受け、診断書を警察に提出する必要があります。

人身事故と物損事故における損害賠償金の違い、物損事故から人身事故への切り替え方法について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

詳しい解説記事

交通事故|人身事故の賠償金相場と計算方法!物損事故との違いは何?

通院なしでは物損被害への賠償金のみが原則

交通事故における慰謝料は、人が負傷したり、後遺障害が残ったり、死亡したりと人的被害が生じた場合、つまり人身事故の場合に支払われます。

一方、通院なしの場合は人的被害なし、つまり物損事故と判断されるので、支払われるのは物損被害に対する賠償金のみです。

では、通院なしでももらえる「物損被害への賠償金」とはどのようなものなのか、見ていきましょう。

物損被害に支払われる賠償金の内訳

以下の表は、通院なしの場合に請求できる、物損被害の費目と金額を例示したものです。

物損被害|請求費目の一例

費目金額
修理費適正な修理費相当
買替え費時価と車両売却代金の差額
評価損修理費の3割程度
代車料実費
休車損*事故前3ヵ月または1年間の売上実績で算出

*被害車両が営業用車両の場合のみ

車の損害が修理できる範囲内であれば、修理することになります。

なお、修理費用は実際に修理をしなくても、受領してよいものとされています。
車の買い替えが認められるのは、被害車両が全損状態にあり、修理不能だと判断された場合です。

  • 全損状態とは:以下の3パターンを指す
    • 物理的に修理ができない物理的全損
    • 修理費用が時価を上回ってしまう経済的全損
    • 重大な損傷につき買い替えが相当と認められる社会的全損

物損被害の場合に請求できる費目について詳しくは、深掘り解説した関連記事『物損事故の示談の流れと示談金相場|交渉時の注意点』もおすすめです。

通院なしでも物損被害への慰謝料が認められた例外

物損被害への慰謝料は原則として認められませんが、例外ケースも存在します。

物損被害への慰謝料が認められた裁判例を紹介しましょう。

陶芸作品損壊への慰謝料

乗用車が陶芸作品を損壊した。被害物件が代替性のない芸術作品の構成部分であることから慰謝料100万円を認めた。(東京地判平15.7.28)

愛犬の傷害への慰謝料

愛犬・ラブラドールレトリバーに第二腰椎圧迫骨折、後肢麻痺、排尿障害の症状が残った。治療費13万6,500円と飼い主夫婦に慰謝料40万円を認めた。(東京地判平15.7.28)

紹介した判例から分かる通り、損壊物が被害者にとって特別な愛着のある物だったケース、唯一無二の存在であったケースでは、物損被害に対して慰謝料が認められる可能性があります。

しかし、基本的には、示談交渉で物損被害に対する慰謝料を請求することは困難であると考えておいてください。

通院なし?通院あり?誤解しやすいポイント

物損事故でも念のため病院に行きたい。行ってもいい?

後から痛みが出てくることも珍しくないので、事故直後は物損事故だと思っても、念のために病院へ行っても問題ありません。

念のために病院に行き、たとえケガが見つからなかったとしても、診療費や検査費などは相手方に請求できます。事故がなければ身体への影響がないか病院に行って調べる必要はなかったので、事故による損害として認められるからです。安心して、病院に行きましょう。

むしろ、本当にケガがないか確かめておくためにも、病院には行っておくべきです。

後から痛みが出てきた段階でもとれる手段はありますが、時間が経ってから病院に行くと事故とケガの因果関係が疑われ、争いになりやすいです。

無用な争いを避けるためにも、事故直後に病院に行っておくのがいいでしょう。関連記事『事故で後から痛み…因果関係が疑われないためには?』も参考になります。

また、『物損から人身への切り替え方法と手続き期限』の記事も参考に人身事故への切り替えをすすめましょう。

退院後の通院は通院日数に含まれる?

入院期間中は慰謝料の対象となりますが、退院後の通院は慰謝料の対象となる場合とならない場合があるので注意しましょう。

退院した後も、まだ治癒(完治)または症状固定の診断を受けておらず、手術後の抜糸、リハビリなどのために通院する必要があったなら、退院後の通院も慰謝料の対象となります。

しかし、退院時に診断書に「ケガは完治した」などと書かれた場合は、退院後に通院しても慰謝料の対象とならない恐れがあります。

症状固定についてはこの記事内でのちほど詳しく解説するので、ご確認ください。

退院後の通院が慰謝料の対象になるか

慰謝料判断
対象退院後も通院する必要があった
対象外退院後は通院する必要がなかった

整骨院・接骨院にかかっていれば通院あり?

整骨院・接骨院のみに通っていた場合、「通院なし」とみなされて慰謝料や施術代が認められない可能性があります。あんま・マッサージも通院とはみなされないリスクが高いので気を付けましょう。

整骨院・接骨院へ通院しても「通院なし」とされるリスクがあるのは、病院と整骨院・接骨院が別物だからです。
交通事故における「通院」とは基本的に、「病院で医療行為を受けること」を指しますが、整骨院・接骨院は厳密には病院ではなく、そこでの施術も医療行為ではないのです。

とくにむちうちで痛み・しびれなどの神経症状が生じた場合、整骨院・接骨院の利用を検討する方は多いです。

もしむちうちなどで整骨院や接骨院に通いたいのであれば、必ず以下のステップを踏みましょう。

  1. まずは整形外科で診断を受ける
    レントゲン検査やMRI検査などで身体の内部を検査し、骨折はないか、本当にむちうちなのかを確認する
  2. 医師に整骨院・接骨院利用の指示・許可をもらう
    医師の指示・許可があれば、整骨院・接骨院も「通院」と認められる可能性が高まる
  3. 相手方の任意保険会社に事前連絡を入れる
    トラブルを防ぐために、事前に任意保険会社にも連絡を入れておく

なお、たとえ医師から整骨院・接骨院通院に関する指示・許可を受けたとしても、必ず病院への通院も継続しましょう。

関連記事『交通事故の治療の流れ|整骨院と整形外科のどちらに通うのが正解?』ではより詳しい内容を解説しているので、整骨院・接骨院への通院を検討している場合は確認してみてください。

通院終了後にすべき手続き|症状固定・後遺障害の申請とは?

通院は完治または症状固定で終了

通院は、ケガが完治するか症状固定に至れば終了となります。
基本的に、通院終了後の期間に対して治療費・休業損害・入通院慰謝料が支払われることはありません。

完治ケガを負う前と同じ状態になること。
治癒ともいう。
症状固定これ以上治療してもケガの状態が改善しないという状態になること。
症状固定後に残ってしまった症状のことを一般用語として後遺症という。

ケガが完治した場合は、その後に相手方の任意保険会社との示談交渉が始まります。

症状固定の診断を受けた場合は、示談交渉に入る前に「後遺障害の申請手続き」をしなければなりません。
後遺症に対する慰謝料・損害賠償金を貰うためには、後遺障害の申請手続きをして、後遺症の症状・程度が一定の要件を満たすと認めてもらう必要があるからです。

いずれにせよ、完治・症状固定は交通事故の賠償において大きな契機となるので、治療は完治・症状固定まで行うようにしましょう。

後遺障害の申請手続きとは?手続きをするとどうなる?

後遺障害の申請手続きについて概要をまとめると、以下の通りです。

  • 手続きをすると、審査機関にて後遺症の症状・程度の審査が行われ、「後遺障害等級」が認定される。
  • 後遺障害等級は14の等級に分かれており、各症状がどの等級にあたるか細かく規定されている。
  • 後遺障害等級が認定されると、等級に応じた金額の後遺障害慰謝料・逸失利益がもらえる。
    • 後遺障害慰謝料:後遺障害を負ったことによる精神的苦痛に対する賠償
    • 逸失利益:後遺障害が残らなければ将来的に得られていたであろう給料等の利益への賠償
  • 後遺障害等級は、審査の結果、「非該当」とされる、つまり認定されないこともある。
  • 後遺障害認定の手続き方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類がある

後遺障害慰謝料・逸失利益は、交通事故でもらえるその他の費目と比べても高額になりやすいです。
そのため、後遺障害等級認定は被害者にとって極めて大切なポイントといえます。

後遺障害に該当する症状を知りたい方は『【後遺障害等級表】症状別の等級や認定基準を解説!自賠責保険金もわかる』の一覧表を確認してください。
後遺障害等級認定の具体的な申請方法については『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』の記事で確認可能です。

通院日数が少ないと慰謝料が低額になる理由

治療費が打ち切られ、慰謝料の対象期間も終わるリスクがある

通院日数が少ないと、相手方の任意保険会社は「もう治っているのではないか」と考え、治療費の打ち切り・治療終了を打診してきます。
入通院慰謝料は入通院日数・期間に応じて金額が決まるので、この打診に応じて早く治療を終えてしまうと、その分慰謝料額が減ってしまうのです。

治療費打ち切りのリスクを減らすためには、月に10回以上通院しておくと良いでしょう。
通院が1ヶ月以上途切れると治療費を打ち切られる可能性が高まるので、注意してください。

その他、通院日数が少ない場合の注意点については、関連記事『通院日数が少ない場合でも交通事故の慰謝料を適正額で獲得する方法』で詳しく解説しています。

なぜ相手方の任意保険会社が通院日数を把握しているの?

相手方が任意保険に加入している場合、相手方の任意保険会社が病院に直接治療費を支払ってくれることが多いです。これを任意一括対応といいます。

任意一括対応をする場合、相手方の任意保険会社は治療費などを把握するため、病院から診療報酬明細書などを取り寄せます。
これにより、任意保険会社は被害者の治療内容・通院日数(通院頻度)を把握できるのです。

治療費打ち切りを打診された場合の対処法は?

治療費打ち切りの打診を受けても、まだ治療が必要なら治療を継続するべきです。

具体的な対処法としては、まだ治療が必要であることを保険会社に伝えて治療費打ち切りを延期してもらう、被害者自身で費用を負担しながら治療を続け、示談交渉時に「打ち切り後の治療費」を請求していくといったものがあります。

治療費打ち切りの対処法についてさらに詳しくは、『交通事故の治療費打ち切りを阻止・延長する対応法!治療期間はいつまで?』でご確認ください。

後遺障害等級認定が受けられない可能性が高まる

後遺症が残った場合、後遺障害等級が認定されれば後遺障害慰謝料・逸失利益が貰え、被害者に支払われる損害賠償金の総額は高くなります。
しかし、通院日数が少ないと後遺障害等級が認定されない可能性が高まるので注意が必要です。

交通事故損害賠償の内訳

後遺障害等級の認定を受けるには、後遺症の症状・程度が以下の要件を満たす必要があります。

後遺障害等級認定の要件

  1. 交通事故と症状に因果関係がある
  2. 将来にわたって回復が難しいと見込まれる
  3. 症状の存在が医学的に認められる
  4. 労働能力が失われる
  5. 症状が自動車損害賠償保障法施行令で定められた等級に該当する

しかし、通院日数が少ない状態で症状固定となり後遺障害認定の申請をすると、以下のような疑いをもたれ、上記の要件を満たさないと判断されてしまうリスクが高まります。

  • もう少し治療をすれば完治するのではないか→上記2の要件を満たさない
  • 通院を怠ったために後遺症が残った、つまり後遺症が残った原因は交通事故ではなく、被害者の治療に対する姿勢にあるのではないか→上記1の要件を満たさない

一生治る見込みのない後遺症が残るほどの事故は、その規模も一定程度と推定されます。ケガの治療にも時間がかかりますし、適切に治療を受ける必要があります。
通院日数が少ないと、それほどの後遺症ではないと判断されてしまいかねないのです。

たとえば、むちうちであれば、最低限6ヵ月通院治療をしないと後遺障害等級認定は難しいとされています。

後遺障害等級が認定される後遺症の種類や、認定を受けるためのポイントは、以下の関連記事で詳しく解説しています。

通院日数は何日以下だと少ないの?

1ヵ月あたり10日未満だと少ないと判断される

通院日数は、1ヵ月(30日)あたり10日を最低限の目安と考えてください。

通院日数が月10日未満であると治療費打ち切りのリスクが高まりますし、治療費が打ち切られなかったとしても、慰謝料が減額される可能性があるからです。

適切な通院日数は通院期間との対比で考える

単純に通院日数だけをみて、多い・少ないの判断はできません。

たとえば通院日数が15日の場合、通院期間が45日程度であれば「少ない」とは見なされないでしょう。
しかし、通院期間が3ヵ月(90日)に対して通院15日では、通院日数が少ないと判断されるリスクがあります。

通院期間と通院日数は、きちんと治療を受けていたかの指標になります。適正な通院の仕方を守ることで、適正な慰謝料請求に近づくでしょう。

通院していない日も入通院日数に含まれることがある

実際には入通院していなくても、以下のような場合は入通院日数としてカウントされる可能性があります。

  • 骨折を治すために、医師の指示に従いギプス固定をして自宅療養していた
  • どうしても休めない仕事や育児のために、入通院を短縮した

ただし、上記のような事情があっても、本当に入通院日数としてカウントしてもらえるのかは示談交渉次第です。
相手方の任意保険会社は、上記のような事情を考慮せずに慰謝料を計算している可能性もあります。

相手方から慰謝料を提示された場合は鵜呑みにするのではなく、適切な入通院日数・期間から金額を算出しているか、しっかりと確認することが重要です。

関連記事『通院でもらえる慰謝料はどのくらい?慰謝料の計算方法と通院時のよくある疑問』では、適正な慰謝料を受けとるために知っておくべき通院のポイントを解説しています。

慰謝料は通院日数に比例して増えるわけではない

実は、慰謝料には3つの算定基準があり、それぞれで計算方法が違います。
よって、必ずしも通院日数に比例して入通院慰謝料が増えるとは限りません。

慰謝料の3つの算定基準

自賠責基準相手方の自賠責保険会社から支払われる金額の算定基準
最低限の金額がわかる
計算方法は法令で定められている
任意保険基準相手方の任意保険会社が使う算定基準
詳しい計算方法は各社で異なり非公開
自賠責基準と同水準か少し高額な程度
弁護士基準弁護士が使う算定基準
過去の判例に基づいた相場額がわかる
3基準の中でもっとも高額

では、それぞれで入通院慰謝料はどう計算されるのか、通院日数との関係性はどのようになっているのか、見ていきましょう。

自賠責基準なら2日に1回の通院で慰謝料はピークに

自賠責基準では、以下のように入通院慰謝料を計算します。

自賠責基準の計算式

  • 計算式:4300円 × 対象日数
  • 次のうちどちらか短い方を「対象日数」として採用
    • 治療期間
    • 実際に治療した日数×2
  • 治療期間とは、一番最初に病院を受診した日~治療終了までの期間をさす

自賠責基準では、慰謝料額は2日に1回のペースで通院していた場合にもっとも高くなります。

仮に、入院なし・通院期間3ヵ月で慰謝料をシミュレーションしてみましょう。

通院期間3ヵ月の入通院慰謝料(入院なし)

通院日数慰謝料
10日86,000円
20日172,000円
30日258,000円
45日387,000円
50日387,000円
60日387,000円

※2020年4月1日以降に発生した事故に適用

通院日数44日までは、通院日数に応じて入通院慰謝料の金額が多くなっていきます。
しかし、通院日数46日以降は金額が変わりません。

このことからもわかるように、自賠責基準で支払われる入通院慰謝料額は通院日数と比例しません。
2日に1回以上のペースで通院した時に慰謝料額はピークとなり、それ以上増えることはないのです。

自賠責保険の慰謝料について、相場や請求時期については関連記事『自賠責保険から慰謝料はいくらもらえる?計算方法や支払い限度額を解説』でも詳しく解説中です。

120万円を超えたら…過剰診療の落とし穴に注意

自賠責基準で支払われる金額には上限があります。

自賠責基準の支払限度額

損害支払内容
傷害(治療中)120万円
後遺障害(治療後)75万円~4,000万円*
死亡3,000万円

※後遺障害等級による

特に注意したいのは、傷害部分(治療中にかかる部分)の支払上限が120万円であることです。

傷害部分には治療費・慰謝料・休業損害など、治療のためにかかる費用の全てが含まれます。過剰診療となることで治療費や慰謝料の金額が膨らみ、あっという間に120万円に到達してしまうことが起こりえます。

120万円を超えた部分は示談交渉で相手方の任意保険会社に請求

被害者への損害賠償は、まず自賠責保険会社から支払われます。
そして、支払限度額を超えた場合に、超過分は相手方の任意保険から支払われるといった構造になります。

任意の自動車保険と自賠責保険の関係

しかし、任意保険からの支払額は示談交渉によって決められます。よって、傷害分の損害賠償額が120万円を超えた場合、どの程度超過分を支払ってもらえるかは交渉次第なのです。

相手方の任意保険会社は少しでも自社からの支払額をおさえようとしてきます。任意保険会社は営利企業であり、被害者に支払う損害賠償金は出費となるからです。

こうした事情から、相手方の任意保険会社との交渉は120万円を境に一気に難航する恐れがあります。交通事故の損害賠償で保険会社とトラブルになった場合は、一人で悩まず、お早めにご相談ください。

なお、相手方の任意保険会社とは、さまざまな面でトラブルが発生することが多いです。
事前に関連記事『保険会社の対応が悪い!対処法と取ってはいけない対処法を状況別に解説』で起こりうるトラブル・対処法を確認しておくと安心でしょう。

自賠責保険と任意保険の違い

自賠責保険会社任意保険会社
支払上限あり保険内容次第
営利/非営利非営利営利

弁護士基準の金額なら通院日数の影響を受けづらい

弁護士基準で入通院慰謝料を算定する場合は、通院日数ではなく入院期間・通院期間を用います。原則として、実際の通院日数によって金額が変動することはありません。

弁護士基準は過去の判例に基づいて設定されたものであり、本来の慰謝料相場といえるため、被害者は弁護士基準での入通院慰謝料獲得を目指すべきでしょう。

相手方の任意保険会社から提示される慰謝料は弁護士基準と比べて大幅に低額なことが多いので、鵜呑みにしないよう気を付けてください。

弁護士基準

交通事故の慰謝料額算定基準のひとつで、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称 赤い本)で確認できる。裁判所でも適用されることから裁判基準ともいわれており、保険会社の基準と比べて慰謝料額は高額になる。

弁護士基準における入通院慰謝料の算定方法

弁護士基準では、「入通院慰謝料算定表」を用いて入通院慰謝料を算定します。
表には軽傷用と重傷用があるので紹介します。

入通院慰謝料算定表(軽傷)

むちうちなど、他覚所見に異常が写らない軽傷の場合に用いる。
他覚所見とは、MRI画像やレントゲン写真などのこと。

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

入通院慰謝料算定表(重傷)

軽傷用を使う場合に該当しないケースで用いる。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

算定表の横軸は入院月、縦軸は通院月数を表しています。
「月」は30日単位になるので、暦の影響は考慮不要です。

算定表のとおり、入院期間・通院期間で慰謝料額が決まります。
重傷の場合の入通院慰謝料を例に挙げると、次の通りです。

  • 入院なし・通院2ヵ月:52万円
  • 入院1ヵ月・通院なし:53万円
  • 入院1ヵ月・通院1ヵ月:77万円

通院期間中の通院日数は原則考慮されませんので、入院なし・通院2ヵ月の間に30日通院しようが40日通院しようが、基本的には金額は変わりません。

弁護士基準で通院期間が短縮されるケース

すでに紹介した通り、弁護士基準では基本的に、入院期間・通院期間をもとに入通院慰謝料を算定します。

しかし、通院日数が月10日未満の場合は、実際の通院期間ではなく「通院日数の3.5倍」が慰謝料算定に用いられる恐れがあるので注意しましょう。
この場合、通院期間よりも「通院日数の3.5倍」の方が短くなるので慰謝料額は相当下がってしまいます。

なお、むちうち・挫創・打撲などの比較的軽傷で通院日数が月10日未満の場合は、「通院日数の3倍」が慰謝料算定に用いられる可能性があります。

「通院日数の3倍」が慰謝料算定に用いられた場合の計算例

入院なし・通院3ヵ月のむちうちの場合を例に考えてみましょう。
通常通り入院期間・通院期間を慰謝料算定に用いた場合、入通院慰謝料の相場は53万円です。

しかし、通院日数が3ヶ月通算で10日間しかなく、通院日数が少ないと判断されたら、実際には3ヶ月の通院期間があっても、10×3=30(日)が慰謝料算定に用いられ、入通院慰謝料は19万円となってしまいます。
これは、入院なし・通院1ヵ月の場合における金額と同じです。

本来は53万円だったのに、34万円の減額となるのです。

通院日数はそのままで慰謝料を増やす2つの方法

(1)通院日数が加算される可能性をチェック

通院日数が加算される可能性があるのは、以下の場合です。

  • 治療最終日にカルテに「治癒見込」「中止」「転医」「継続」のいずれかの記載がある場合、通院日数に7日加算(自賠責基準のみ)
  • ギプスで自宅療養をしている期間がある場合
  • 幼い子供の親が育児のために入院を切り上げた場合
  • やむを得ない被害者側の事情(仕事など)で入院を切り上げた場合

実際の通院日数は変えられなくても、慰謝料算定に用いる通院日数が加算されれば慰謝料額は多くなります。

また、精神的苦痛がことさらに大きいと判断される場合は、事情を考慮して慰謝料が増額される可能性があります。
詳しくは『交通事故の精神的苦痛で請求できる慰謝料は?苦痛の種類や計算方法がわかる』で多く紹介しているので、確認してみてください。

(2)弁護士に示談交渉を依頼

相手方の任意保険会社から提示された慰謝料額を被害者自身の交渉によって増額させることは難しいです。任意保険会社は、日々さまざまな被害者・弁護士と示談交渉を行っているプロだからです。

増額交渉が受け入れられたとしても増額幅は十分とは言えないでしょうし、交渉が長引いてしまうことが考えられます。

しかし、示談交渉を弁護士に任せれば、提示額よりも大幅に高額な、弁護士基準の金額獲得が見込めます。その理由は以下の通りです。

  • 弁護士は専門知識と資格を持っているので、相手方の任意保険会社も弁護士の主張をないがしろにはできないから
  • 弁護士が出てくると相手方の任意保険会社は裁判に持ち込まれることを懸念するから
弁護士による増額交渉

弁護士が示談交渉に入ることで、相手方の任意保険会社に対して、「もしかすると裁判になるのかも」と思わせることができます。

民事裁判となると解決までの期間が長期化しますし、人件費・弁護士費用もかさみます。また、裁判の結果、弁護士基準と同水準の慰謝料が認められる可能性が高いです。

こうしたことから、相手方の任意保険会社に「裁判となる前に被害者側の主張を受け入れておこう」と思わせることができるので、弁護士の存在は欠かせません。

弁護士を立てた場合に獲得が見込める金額は?

以下の慰謝料計算機なら、弁護士基準の慰謝料額を自動で計算可能です。本来ならどれくらいの慰謝料獲得が見込めるのか知りたい方は、慰謝料計算機を使ってみましょう。

なお、この計算機でわかるのはあくまでも獲得が見込める金額の目安です。
実際にはさまざまな事情を考慮して、より多くの金額獲得が見込める可能性もあるので、厳密な慰謝料額は弁護士に問い合わせることをおすすめします。

慰謝料の計算方法や計算の仕組みが気になる方は、関連記事『交通事故の慰謝料を正しく計算する方法』をお読みください。

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弁護士費用特約については、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ

  • 通院なしの場合には慰謝料を受け取れない
  • 通院が少ないと慰謝料が本来受け取れる金額より低くなる恐れがある
  • 整骨院・接骨院のみの治療は「通院なし」と判断される恐れがある

通院期間や通院日数は、慰謝料の金額に直結します。
慰謝料の金額に直結するということは、被害者が受けとる示談金全体に影響する恐れがあります。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。