交通事故の精神的苦痛で慰謝料はどこまで請求できる?相場と増額方法を弁護士が解説

交通事故で感じた精神的苦痛は、慰謝料によって金銭的に補償されます。
ただし、精神的苦痛であれば何でも慰謝料が認められるわけではありません。精神的苦痛の感じ方には個人差があるため、交通事故の慰謝料では主に「ケガによる精神的苦痛」「後遺障害による精神的苦痛」「死亡による精神的苦痛」の3つが補償の対象として定められています。
そのため、精神的苦痛が認められるのは、人身事故に限られます。ケガのない物損事故の場合には、事故で怖い思いをしたとしても、原則として精神的苦痛に対する慰謝料が認められないのが現実です。
この記事では、交通事故被害者が受けるさまざまな精神的苦痛を取り上げ、慰謝料として補償されるのか、相場はいくらなのかを分かりやすく解説します。
目次
交通事故の精神的苦痛と慰謝料の関係
慰謝料とは精神的苦痛に対する賠償金
慰謝料とは、交通事故によって被害者が受けた精神的苦痛を金銭で賠償するものです。
治療費や通院交通費のような実費・実害の補償とは別枠で、「事故に遭ったこと自体による痛み・恐怖・辛さ」に対して支払われます。

法律上、民法709条・710条によって、身体・生命・自由などを侵害された被害者は、財産以外の損害(=精神的損害)についても賠償を請求できると定められています。交通事故の慰謝料はこの条文を根拠にしています。
精神的苦痛はどのように金額化されるのか
精神的苦痛は本来数値化できないものですが、実務では公平性を保つため、入通院期間・後遺障害等級・死亡といった事実に基づいて、ある程度定型的に金額が算定されます。
交通事故の慰謝料は3種類
交通事故の慰謝料は、被害者が置かれた状況に応じて次の3種類に分かれます。
慰謝料の種類
- 入通院慰謝料:ケガや治療で生じる精神的苦痛
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことによる精神的苦痛
- 死亡慰謝料:死亡した被害者とその遺族の精神的苦痛

具体的に、どのような精神的苦痛が慰謝料の対象になるのか見ていきましょう。
入通院慰謝料|ケガや治療で生じる精神的苦痛
交通事故でケガを負ったり治療を受けたりした場合、治療費や通院交通費だけでなく、ケガや治療の過程で感じる痛み・恐怖・辛さなどの精神的苦痛は、「入通院慰謝料」によって補償されます。
入通院慰謝料の対象となる精神的苦痛
- ケガの痛み
- 交通事故で感じた恐怖のフラッシュバック(PTSD(心的外傷後ストレス障害)など)
- 治療や手術の際に感じる痛みや恐怖
- 入院や通院による身体的・時間的拘束で感じる不便さ
入通院慰謝料の金額は、基本的に治療期間をもとに算定されます。ケガや治療によって生じる精神的苦痛は、治療期間が長いほど(重症であるほど)大きいと考えられるからです。
後遺障害慰謝料|後遺障害が残ったことによる精神的苦痛
一定期間治療を継続したにもかかわらず、交通事故によるケガの症状が完治せずに後遺障害が残ったことによって生じる精神的苦痛は、「後遺障害慰謝料」によって補償されます。
後遺障害慰謝料の対象となる精神的苦痛
- 後遺障害によって感じる不便さ
- 後遺障害が残ったことに関するショック、悔しさ
- 後遺障害が残ったことによる将来への不安
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の審査を経て認定された「後遺障害等級」に応じて決まります。
後遺障害等級の数字が小さいほど症状は重く、慰謝料は高額になります。
死亡慰謝料|死亡した被害者とその遺族の精神的苦痛
交通事故により被害者が死亡した場合の精神的苦痛は、「死亡慰謝料」によって補償されます。被害者本人だけでなく、遺族の精神的苦痛も対象になるという点が死亡慰謝料の特徴です。
死亡慰謝料の対象になる精神的苦痛
- 交通事故で被害者が感じた痛み、苦しみ、恐怖
- 被害者が感じた無念さ、悔しさ、怒り、悲しみ
- 遺族が感じた喪失感、悲しみ、悔しさ、怒り
なお、遺族とは被害者の親(養父母含む)、妻または夫、子(養子含む)のことです。ただし、内縁の妻または夫、兄弟姉妹なども、死亡慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料の計算には3つの基準がある
慰謝料には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの計算基準があります。被害者にとって最も高水準で、法的根拠のある計算基準が弁護士基準です。
3つの算定基準
- 自賠責基準
自賠責保険が慰謝料を算定する際に用いる計算基準。金額としては法律で定められた最低限の補償水準。 - 任意保険基準
任意保険会社が慰謝料を算定する際に用いる計算基準。各社で異なり非公開だが、自賠責保険の金額と同程度であるか、多少多い程度であることが多い。 - 弁護士基準(裁判基準)
弁護士や裁判所が慰謝料を算定する際に用いる計算基準。高額かつ法的正当性の高い基準。
同じ交通事故・同じケガであっても、どの基準で算定するかによって慰謝料の金額は大きく変わります。これが「同じ事故でも受け取れる慰謝料額に差が出る」最大の理由です。
【種類別】交通事故慰謝料の相場
入通院慰謝料の相場
まず自賠責基準では、入通院慰謝料は下記の計算式によって算定していきます。
自賠責基準の入通院慰謝料
- 入通院慰謝料=日額4,300円×対象日数
2020年3月31日以前に発生した交通事故では、日額は4,200円になります。
また、対象日数は「治療期間」と「実際に治療した日数×2」のいずれか短い方を採用します。
ただし、自賠責保険には120万円という傷害分の保険金の上限があり、治療費等も含めた総額が120万円を超える場合には、上記の計算方法で算出された金額を受け取れないという点には注意が必要です。
弁護士基準では慰謝料早見表を用い、入通院期間に応じて入通院慰謝料を算定します。
ここでは、一例として、軽傷で通院のみした場合の、自賠責基準・弁護士基準の入通院慰謝料の相場をご紹介します。なお、実通院日数は治療期間の半分以上とします。
慰謝料相場の例(軽傷で通院のみ)
| 治療期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1か月 | 12.9万円 | 19万円 |
| 2か月 | 25.8万円 | 36万円 |
| 3か月 | 38.7万円 | 53万円 |
| 4か月 | 51.6万円 | 67万円 |
| 5か月 | 64.5万円 | 79万円 |
| 6か月 | 77.4万円 | 89万円 |
同じ治療期間でも、自賠責基準か弁護士基準かで金額が大きく変わることがわかります。
重症や入院した場合の慰謝料相場については、弁護士に問い合わせるか、以下の計算機の結果を参考にしてみてください。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料の金額の相場は、後遺障害等級ごとに定められています。
下記は具体的な自賠責基準での金額と弁護士基準での金額の比較早見表となります。
| 等級 | 自賠責基準* | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級 (要介護) | 1,650万円 (1,600万円) | 2,800万円 |
| 2級 (要介護) | 1,203万円 (1,163万円) | 2,370万円 |
| 1級 | 1,150万円 (1,100万円) | 2,800万円 |
| 2級 | 998万円 (958万円) | 2,370万円 |
| 3級 | 861万円 (829万円) | 1,990万円 |
| 4級 | 737万円 (712万円) | 1,670万円 |
| 5級 | 618万円 (599万円) | 1,400万円 |
| 6級 | 512万円 (498万円) | 1,180万円 |
| 7級 | 419万円 (409万円) | 1,000万円 |
| 8級 | 331万円 (324万円) | 830万円 |
| 9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
| 10級 | 190万円 (187万円) | 550万円 |
| 11級 | 136万円 (135万円) | 420万円 |
| 12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
| 13級 | 57万円 (57万円) | 180万円 |
| 14級 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
*()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故に適用される金額
後遺障害等級は、たとえばむちうちによるしびれや痛みであれば、12級または14級に認定される可能性があります。
その他、等級別に認定基準を確認したい場合は『【後遺障害等級表】認定される後遺症・症状の一覧と等級認定の仕組み』の記事で一覧表を紹介しているので参考にしてみてください。
死亡慰謝料の相場
自賠責基準の死亡慰謝料は「400万円(2020年3月31日以前に発生した交通事故なら350万円)+遺族の人数や被扶養者の有無に応じた金額」です。
遺族分の死亡慰謝料額は以下のとおりです。以下に本人分の400万円を加算してください。
| 遺族 | 死亡慰謝料 | 扶養あり |
|---|---|---|
| 1人 | 550万円 | 750万円 |
| 2人 | 650万円 | 850万円 |
| 3人以上 | 750万円 | 950万円 |
一方、弁護士基準では、被害者の立場によって死亡慰謝料の目安が定められています。自賠責基準とは違い、あらかじめ本人分と遺族分を合わせた金額が設定されています。
| 被害者 | 死亡慰謝料 |
|---|---|
| 一家の支柱 | 2800万円 |
| 母親・配偶者 | 2500万円 |
| 独身者・子供 | 2000万円~2500万円 |
上記の金額はあくまで目安であり、扶養家族の人数や個別事情によって増減することがあります。
また、「遺族が精神疾患を患った場合」「子どもを一度に複数人失った場合」などは、被害者遺族の精神的苦痛がことさらに大きいとして死亡慰謝料が増額されることがあります。
死亡慰謝料について詳しく知りたい方は、『死亡事故の慰謝料・賠償金の相場や平均は?示談の流れや保険金も解説』の記事もご覧ください。
物損やペットの被害で生じる精神的苦痛は原則として慰謝料の対象外
交通事故では、「愛車が壊れた」「ペットがケガをした」などの物損被害による精神的苦痛は、慰謝料の対象外とされています。
物が壊れたことによる精神的苦痛は、修理費用や買替費用などの財産的補償を受けることによって回復すると判断されるためです。
慰謝料の対象にならない精神的苦痛
- 大切にしていた愛車が壊れた・車両に大きな傷がついた
- ペットがケガをしたり亡くなったりした
- 交通事故のときに持っていた大切な物が損壊・破損した
- 交通事故によって高価な服や靴が汚れた
そのため、慰謝料請求できるのは人身事故の場合のみであり、物損事故の場合は通常請求できません。
ただし、特別な事情がある場合は、例外的に物損に対する精神的苦痛に対して慰謝料が支払われることもあります。
たとえばペットや墓石、芸術作品、家屋などの被害については慰謝料が認められたケースがあります。
子供のいない夫婦が子供のように思い愛情を注いでいた飼い犬が、交通事故によって後肢麻痺の障害を負い、日常的に排せつの介護をしなければならなくなったうえ、膀胱炎や褥創などの症状も生じている。
飼い犬の負傷の内容・程度、夫婦がおこなう介護の内容・程度から考えて、夫婦の受ける精神的苦痛は飼い犬が死亡した場合に近いと言える。
よって、飼い犬の負傷に関して、夫婦それぞれに20万円ずつの慰謝料が認められた。
(名古屋高等裁判所平成20年9月30日判決)
もっとも、物損被害による精神的苦痛の慰謝料を相手方に認めさせて示談成立させるのは非常に困難です。物損被害による精神的苦痛の慰謝料を請求するには原則として裁判を起こす必要があるでしょう。
詳しくは、『物損事故で慰謝料がもらえた事例|原則もらえない理由と獲得を目指す方法』の記事をご確認ください。
精神的苦痛による慰謝料が増額されるケース
慰謝料の基準額は目安であり、事案の具体的事情によっては増額が認められることがあります。
慰謝料増額の対象となりうる精神的苦痛
- 加害者側の態度による精神的苦痛
- 被害者家族の精神的苦痛
- 危篤状態・手術の繰り返しによる精神的苦痛
- 流産・中絶による精神的苦痛
- 婚約の破談による精神的苦痛
- 失職・転職による精神的苦痛
- 留年による精神的苦痛
- 内定取り消し・就職遅れによる精神的苦痛
- 死亡事故で無念が大きいことによる精神的苦痛
どの慰謝料が増額されうるのかや、実際の判例を紹介していきます。
(1)加害者側の態度や行為でストレスを受けた
加害者側の態度や行為で精神的苦痛を受けた場合は、入通院慰謝料が増額される可能性があります。
具体例としては以下のとおりです。
- 加害者が反省の色を見せない
- 加害者が挑発的な態度をとる
- 加害者が不誠実な態度をとる(嘘の証言をする、暴言を吐くなど)
- 加害者の故意・重過失が原因で事故を起こした(無免許運転、飲酒運転、著しいスピード違反など)
- 加害者が交通事故後にひき逃げ・証拠隠滅をした
実際の裁判例は以下のとおりです。
被害者(男・9歳)につき、加害者は朝まで量が分からないくらい飲酒し、事故後救護せずコンビニで強力な口臭消しを購入し、衝突まで全く被害者に気がついていなかったにもかかわらず捜査段階ではこれを隠す供述をし、父母が事故後心療内科に通院したことから、基準額の3割増しを相当とし、本人分2750万円、父母各250万円、合計3250万円を認めた。
(事故日平16.12.2 大阪地判平20.9.26 自保ジ1784・15)
ただし、実際に慰謝料が増額されるかは、加害者の態度の悪質性や被害者側に生じた具体的な影響などから判断されます。
詳しくは『交通事故加害者が謝罪に来ない・不誠実で許せない時の対処法│誠意がないなら慰謝料増額?』もご覧ください。
(2)被害者が重度の後遺障害を負い、家族も精神的苦痛を受けた
被害者に「死にも比肩する後遺障害」が残った場合、家族は介護をすることになったり、思い描いていた被害者との未来が得られなくなったりします。
こうした場合は、被害者の家族の精神的苦痛を考慮して慰謝料が支払われることがあります。
死にも比肩する後遺障害とは、高次脳機能障害、遷延性意識障害(いわゆる植物状態)などです。
実際の判例は以下のとおりです。
脳挫傷後の後遺障害(1級1号)の中学生(女・固定時15歳)につき、(略)本人分2800万円、子の将来の成長への楽しみを奪われ将来に不安を抱きながら介護する生活を余儀なくされた父母各500万円、後遺障害分合計3800万円を認めた。
(事故日平15.8.7 金沢地判平18.10.11 自保ジ1705・2)
(3)治療中のリスクや苦痛が大きかった
以下のような事情で治療中の肉体的・精神的苦痛がことさらに大きいと判断された場合、入通院慰謝料が増額される可能性があります。
- 生死をさまよう危険な状態だった
- 何度も手術を繰り返した
- 麻酔ができない状態で手術をした
実際の判例は以下のとおりです。
(略)手術を受けたものの、左下肢の軟部組織の著しい欠損により感染の危険が高く、長期間にわたる入院を要したほか、骨癒合にも長期間を要する中で骨髄炎を発症し、再度入院加療を要したことなどから、傷害分360万円を認めた。
(事故日平21.6.24 名古屋地判平25.8.5 自保ジ1910・131)
交通事故の手術による慰謝料増額について詳しくは、『交通事故で手術したら慰謝料はどの位?慰謝料相場や増額事由を解説』の記事が参考になります。
(4)事故や治療の関係で流産・中絶した
以下のようなケースで妊婦さんが流産・中絶した場合は、入通院慰謝料が増額される可能性があります。
- 事故による衝撃やストレスにより流産した
- 事故による衝撃やストレス、治療などにより中絶を余儀なくされた
- 必ずしも中絶の必要はなかったが、事故やその後の治療が胎児に影響する可能性を考え、中絶を選択した
妊娠後期であるほど精神的にも身体的にも負担が大きいと考えられることから、金額が大きくなります。
実際の判例は以下のとおりです。
会社員(女・年齢不明)につき、妊娠2週目に妊娠に気づかずレントゲン検査を受け人工妊娠中絶を余儀なくされたことの精神的打撃が大きかったとして、頸部・腰部挫傷で通院55日だが100万円をみとめた。
(事故日平4.1.9 大阪地判平6.1.19 交民27・1・62)
また、流産・中絶においては父親も精神的苦痛を受けると考えられますが、父親に対して慰謝料が認められるかどうかは、示談交渉や裁判によって決まります。
妊婦さんが交通事故にあってしまった場合は、『妊婦の交通事故慰謝料は?流産や胎児への影響は増額事由になる?』の記事もご参照ください。
(5)後遺障害が原因で婚約が破談になった
下記のような事情で婚約が破談になったケースでは、後遺障害慰謝料の増額が認められる可能性があります。
- 交通事故により被害者に高次脳機能障害や精神的障害が残り、婚約者と関係を継続できなくなった
- 交通事故により被害者に生殖機能障害が残った
ただし、交通事故が破談の原因であると証明し、慰謝料を増額させるのは難しいことが多いです。
婚約の破談による慰謝料の増額を認めてもらいたい場合は、弁護士を立てて交渉することをおすすめします。
(6)後遺障害が原因で失職・転職を余儀なくされた
下記のような事情で失職したり、転職を余儀なくされてしまったりした場合は、後遺障害慰謝料が増額される可能性があります。
- 外見が重要な職業に就いていた被害者の顔に、目立つ傷跡が残った
- 後遺障害により、被害者がもともと従事していた肉体労働ができなくなった
- 高次脳機能障害の影響で、以前のように仕事ができなくなり、失職した
交通事故によって失職した場合は、次の職業が見つかるまでの期間、もしくは次の職業が見つかるまでの期間として妥当な期間、休業損害が支払われる場合もあります。
休業損害の計算方法や請求できる金額については、『交通事故の休業損害はいくら?計算方法や慰謝料・休業補償との違いを弁護士解説』の記事をご覧ください。
(7)治療により留年した
被害者が学生の場合、交通事故によって長期間の治療を余儀なくされた結果、留年が必要となることがあります。こうしたケースでは以下のような精神的苦痛を補償するため、入通院慰謝料が増額される可能性があります。
- 友人より遅れをとってしまった
- 下の学年の学生たちに溶け込まなければならない
留年によって余計に必要になった教科書代や学費、下宿代、塾や家庭教師の費用なども、加害者側に請求できるでしょう。
実際の判例は以下のとおりです。
事故のため1年間留年した大学生につき、学費97万円余及び1年分のアパート賃借料55万円余を認めた。
(岡山地判平9.5.29 交民30・3・796)
(略)大学生(男・事故時33歳)につき、秋学期の欠席はやむを得ないとし、支払った大学授業料83万円余を認めた。
(東京地判平22.10.13 交民43・5・1287)
学生の交通事故について詳しく知りたい方は、『学生・大学生の交通事故慰謝料|計算方法と相場、学費・就職の損害も解説』の記事をお役立てください。
(8)治療で内定取り消し・就職遅れが発生した
交通事故による長期間の治療で内定が取り消されたり、就職が遅れてしまったりした場合も、入通院慰謝料の増額が認められる可能性があります。
また、内定の取消や就職の遅れについては、失職した場合と同様に、休業損害が支払われる可能性もあります。
実際の判例は以下のとおりです。
就職が内定していた修士課程後期在学生(男・事故時27歳)につき、事故により就職内定が取り消され症状固定まで就業できなかった場合に、就職予定日から症状固定まで2年6か月余の間、就職内定先からの回答による給与推定額を基礎に、955万円余を認めた。
(名古屋地判平14.9.20 交民35・5・1225)
(9)死亡した被害者の無念さがことさらに大きい
死亡事故の場合、被害者の無念がことさら大きいと判断されれば、死亡慰謝料が増額される可能性があります。
具体的には、以下のような状況で死亡慰謝料が増額された事例があります。
- 被害者が結婚の直前や直後だった
- 長年の夢をかなえたばかりだった
実際の判例は以下のとおりです。
単身者(男・31歳・会社員)につき、希望していた鉄道会社に就職後、車掌として真面目に勤務していたこと、父母思いの優しい息子であり、結婚を誓っていた交際相手もいたことなどから、2800万円を認めた。
(事故日平20. 1.20 東京高判平22.10.28 判タ1345・213)
PTSD・うつ病など精神的損害そのものが争点となるケースも
交通事故でPTSD・うつ病は発症しうる
重大な交通事故の被害者は、事故後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)、うつ病、不安障害などを発症することがあります。
事故の場面が繰り返しよみがえる、車に乗れない・運転できないといった症状が代表的です。
関連記事
・交通事故でPTSDを発症…後遺障害認定やトラウマ・フラッシュバックとの違いを解説
・交通事故によるうつ病の症状とは?うつ病の後遺障害認定はどうなる?
精神的障害を発症した場合に受け取れる可能性がある慰謝料
PTSDやうつ病などの精神的障害を発症したケースでは、主に「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」が問題になります。
事故後に通院治療をしていれば入通院慰謝料の対象になり、症状固定後も後遺症が残って後遺障害等級が認定されれば後遺障害慰謝料も請求できます。
PTSD・うつ病などの精神的損害を慰謝料増額や後遺障害認定につなげるには、客観的な裏付けが重要です。
具体的には、事故直後から精神科・心療内科を受診し、診断書・通院記録・検査結果等を残しておくことが大切になります。
精神的苦痛を慰謝料で補償してもらうための注意点
交通事故の慰謝料の請求をするとき、いくつかのポイントをおさえておかないと、納得のいく金額が得られない可能性が高いです。
ここからは、交通事故の慰謝料に関する注意点を2つ解説していきます。
慰謝料額は精神的苦痛以外の要素で減額されることもある
交通事故の慰謝料は精神的苦痛を金銭化して補償するものですが、それ以外の要素によって減額されてしまうこともあります。
特に注意すべきなのが「過失割合」と「素因減額」です。これらについて確認していきましょう。
被害者にも過失割合がついた
過失割合とは、交通事故が起こった責任(過失)が被害者と加害者にどのくらいあるかを示した割合のことです。
被害者にも過失割合がつくと、その割合の分だけ慰謝料が減額されます。
たとえば、過失割合が「加害者:被害者=8:2」の場合、被害者が受け取れる慰謝料は2割減るのです。
これを「過失相殺」と言います。
過失割合が10:0のもらい事故(例:停車中の追突事故)でない限り、被害者が受け取れる慰謝料は過失相殺によって減額されてしまうのです。
過失割合は、示談交渉の中で加害者側と話し合って決められます。加害者側は被害者の過失割合を多く見積もって提示してくることがあるので、鵜呑みにしないようにしましょう。
関連記事
・交通事故の過失割合とは?パターン別に何%か調べる方法と決め方の手順
・過失相殺とは?計算方法や交通事故の判例でわかりやすく解説
素因減額された
素因減額とは「被害者がもともと持っていた素因によって被害が拡大した」と考えられる場合に、慰謝料を減額することを指します。
素因減額には、「身体的素因減額」と「心因的素因減額」の2種類があります。
身体的素因減額の例
- もともと腰痛持ちであったところ、交通事故によって腰痛が悪化した
- 交通事故により捻挫したが、もともと同じ個所を何度も捻挫しており、癖になっていた
心因的素因減額の例
- 被害者が治療に消極的で、処方された薬を飲んでいなかったため治療が長引いた
- 被害者が痛みやしびれに人一倍敏感で、一般的な人なら治ったと判断する状態でも、症状を強く感じると主張する
ただし、上記に該当する場合に本当に素因減額すべきなのか、どの程度減額すべきなのかはケースによりけりです。
加害者側が素因減額を提示してきた場合は、過去の判例や専門知識も踏まえて交渉することが重要です。一度弁護士にご相談ください。
関連記事
・素因減額とは?減額される割合や拒否する方法を解説【判例つき】
保険会社の提示する慰謝料は低額なことが多い
交通事故の慰謝料を算定する際、もっとも法的正当性の高い金額がわかるのは「弁護士基準」にのっとって計算した場合です。
しかし、加害者側は自賠責基準や任意保険基準で算定した金額を提示してくることが多く、弁護士基準で計算した金額の半分~3分の1程度の提示額でしかないことも多々あります。

もしすでに加害者側の任意保険会社から慰謝料を提示されているなら、以下の計算機で被害者が本来受け取れる相場をご確認ください。
加害者側の任意保険会社から提示された金額より、計算機で計算された金額の方が高い場合は、増額の余地があるので弁護士に相談してみましょう。
※慰謝料計算機では、過失相殺、素因減額、損益相殺を行っていない状態の金額が計算されます。
精神的苦痛に見合った適正な慰謝料を得るには対策が必要
弁護士を立てることがベストな対策
慰謝料は交通事故の賠償金の中でも高額になりやすいため、示談交渉で特に揉めやすいポイントです。さらに「精神的苦痛」という目に見えないものを金銭化したものである点も、増額交渉を難しくする要因です。
加害者側の任意保険会社も慰謝料については特に力を入れて交渉してくる傾向にあるので、弁護士を立てて対応することが一番の対策となります。
弁護士を立てると、以下の点から被害者側の主張が通りやすくなるからです。
- 過去の判例や専門知識をもとに、実情に応じた厳密な慰謝料額を主張できる
- 慰謝料交渉のポイントを押さえている
- 弁護士が出てくると加害者側の任意保険会社は裁判になるのを避けるため、譲歩の姿勢を取る傾向にある
「被害者が自分で交渉していた際は微々たる金額しか増額できなかったのに、弁護士を立てたら大幅な増額が実現した」というケースも多く、アトム法律事務所では下記のような解決事例もあります。
保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も増額され、びっくりしました
事故から2年、相手の保険会社の対応が悪く納得のいかない事ばかりで。示談交渉の話ばかりで、私の怪我の心配等ありませんでした。示談金に納得がいかず、インターネットで弁護士事務所を探し多々、弁護士事務所に相談しましたが、アトム法律事務所の方だけがとても親切・丁寧に話を聞いて下さいました。弁護士事務所に相談に行くのは人生初めてで。ドキドキでしたが、親身になって私の話を聞いて下さり示談交渉までスムーズでした。保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も金額の変動があり、びっくりしました。今回、アトム法律事務所へ相談できて本当に良かったです。本当にありがとうございました。
右手人差指神経断裂で470万円の増額に成功した事例/アトム法律事務所公式HP
弁護士の介入を受けるメリットは『交通事故で弁護士介入が必要な6ケース』でも解説しています。弁護士への相談を迷っている方は、ぜひあわせてお読みください。
弁護士費用の負担は軽減できる
弁護士への相談・依頼を検討するとき、弁護士費用に不安を感じる方は多いです。
「弁護士費用特約を利用する」または「相談料・着手金無料の法律事務所を利用する」といった方法を利用すれば、弁護士費用の負担を大幅に減らせます。
それぞれの方法について、詳しく解説していきます。
弁護士費用特約を利用する
弁護士費用特約とは、被害者が加入している保険会社に弁護士費用を負担してもらえる制度です。
弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを、保険会社に負担してもらうことが通常可能です(保険会社の条件によって金額が異なるケースもあります。)。

最終的な慰謝料・損害賠償金の合計が数千万円にならない限り、弁護士費用が300万円を超えることはほぼありません。
つまり、弁護士費用特約によって弁護士費用の全額がカバーでき、被害者の自己負担が0円になる場合も多いのです(特約の上限や条件については各保険契約をご確認ください。)
弁護士費用特約のポイント
- 被害者が加入している保険にオプションとしてつけられる
- 自動車保険だけではなく、火災保険やクレジットカードについている場合もある
- 家族の保険についている弁護士費用特約でも、利用可能な場合がある
- 弁護士費用特約の利用により保険の等級が下がることはない
弁護士費用特約については、『交通事故の弁護士特約とは?使い方・使ってみた感想やデメリットはあるかを解説』の記事が参考になりますので、ぜひご確認ください。
相談料・着手金無料の法律事務所を利用する
弁護士費用は、相談料・着手金・成功報酬などから構成されています。
弁護士費用のうち、交通事故の被害者にとってネックになりやすいのは、慰謝料・賠償金獲得前に支払う相談料と着手金です。
しかし、相談料・着手金が無料(完全成功報酬制)の法律事務所に依頼をすれば、加害者側からお金を受け取るまで、弁護士費用の支払いが生じません。
すぐに大きなお金を用意できない方も、安心して利用できるのです。
弁護士費用の内訳や相場について、より詳しく知りたい場合は『交通事故の弁護士費用相場はいくら?』の記事をご確認ください。
まずは無料相談で増額の見込みを知ろう
交通事故で受けた精神的苦痛を慰謝料に反映できるか知りたい方は、まず無料相談で弁護士に確認してみましょう。
アトム法律事務所は、電話・LINEによる無料相談を実施しています。
自宅や職場からスキマ時間で相談できるので、お忙しい方や、相談に関する精神的な負担を少なくしたい方は、ぜひ利用をご検討ください。LINE相談なら、メッセージを送れば、あとは弁護士からの返信を待つだけです。
相談だけのご利用、セカンドオピニオンとしてのご利用も受け付けています。
なお、アトム法律事務所は、基本的に交通事故の被害者の方から相談料と着手金をいただいておりません。
もし弁護士に依頼される場合も、すぐに大きなお金を支払う必要はございませんので、安心してご利用いただけます。
相談予約は24時間365日受付しています。疑問やお困りごとのある方は、まずはお気軽にご連絡やお問い合わせください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

