交通事故の精神的苦痛で請求できる慰謝料は?苦痛の種類や計算方法がわかる
交通事故で感じた精神的苦痛は、慰謝料で補償されます。ただし、交通事故で慰謝料を受け取れるのは原則的に人身事故のみです。
さらに、精神的苦痛といっても、なんでも慰謝料が認められるわけではありません。精神的苦痛の感じ方には個人差があるので、交通事故では主に「ケガによる精神的苦痛」「後遺障害による精神的苦痛」「死亡による精神的苦痛」が慰謝料の対象として決められています。
もっとも、上記以外にも慰謝料が認められる可能性のある精神的苦痛の種類はあるので、弁護士に相談してみましょう。
この記事では、交通事故で被害者が受けるさまざまな精神的苦痛を取り上げ、慰謝料として補償されるのかを解説します。
慰謝料で補償される精神的苦痛|計算方法も解説
交通事故で請求できる賠償金のうち、被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われるのは慰謝料です。
精神的苦痛の種類ごとに3つの慰謝料があるので、それぞれについて計算方法も含めて解説していきます。
なお、交通事故の慰謝料は、以下のいずれかの算定基準に基づいて計算されます。
自賠責基準 | 交通事故の被害者に最低限補償される金額の基準。 |
任意保険基準 | 加害者側の任意保険会社が用いる基準。 自賠責基準に少し上乗せした程度の金額。 |
弁護士基準 (裁判基準) | 弁護士や裁判所が用いる基準。 過去の判例をもとにしており、法的に適正と言える。 3つの基準のなかでもっとも高額になる。 |
任意保険基準については、各保険会社が独自で定めており、公開されていません。
よって、この記事では自賠責基準と弁護士基準の計算方法を解説します。
ケガや治療で生じる精神的苦痛|入通院慰謝料
交通事故でケガを負ったり治療をしたりする中で感じる、痛い・怖い・辛いなどの精神的苦痛は、入通院慰謝料によって補償されます。
入通院慰謝料の対象となる精神的苦痛
- ケガの痛み
- 交通事故の際に感じた恐怖
- 治療や手術の際に感じる痛みや恐怖
- 入院や通院によって身体的・時間的拘束が生じることで感じる不便さ
入通院慰謝料の金額は、基本的に治療期間をもとに算定されます。
ケガや治療によって生じる精神的苦痛は、治療期間が長いほど(重症であるほど)大きいと考えられるからです。
それでは、入通院慰謝料の具体的な計算方法を見ていきましょう。
入通院慰謝料の計算方法
まず自賠責基準では、入通院慰謝料は計算式によって算定していきます。
自賠責基準の入通院慰謝料
- 入通院慰謝料=日額4,300円×対象日数
2020年3月31日以前に発生した交通事故では、日額は4,200円になります。
また、対象日数は「治療期間」と「実際に治療した日数×2」のいずれか短い方を採用します。
一方、弁護士基準では算定表を用いて入通院慰謝料を算定します。
表には軽傷用と重傷用があるので、ケガの種類に応じて使い分けましょう。
弁護士基準の入通院慰謝料
むちうちや捻挫、打撲などレントゲンやMRI画像に異常が写らないケガで用いてください。
軽傷に該当しないケガで用いてください。
通院月数や入院月数に端数がある場合は、別途日割り計算をする必要があります。詳しくは弁護士に問い合わせるか、以下の計算機の結果を参考にしてみてください。
後遺障害が残ったことによる精神的苦痛|後遺障害慰謝料
交通事故で後遺障害が残ったことによって生じる精神的苦痛は、「後遺障害慰謝料」によって補償されます。
後遺障害慰謝料の対象となる精神的苦痛
- 後遺障害によって感じる不便さ
- 後遺障害が残ったことに関するショック、悔しさ
- 後遺障害を残ったことによる将来への不安
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害に対して認定される「後遺障害等級」に応じて決まります。
後遺障害等級が高いほど症状が重く、日常生活への影響も多く、精神的苦痛が大きいと考えられるからです。
なお、後遺症が残っていても、「後遺障害等級」の認定を受けなければ原則として後遺障害慰謝料は請求できません。
後遺障害等級の認定を受ける方法や審査の仕組みは『交通事故の後遺障害|認定確率や仕組みは?認定されたらどうなる?』の記事をご参考ください。
後遺障害慰謝料の計算方法
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級ごとに以下のように定められています。
等級 | 自賠責基準* | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 (要介護) | 1,650万円 (1,600万円) | 2,800万円 |
2級 (要介護) | 1,203万円 (1,163万円) | 2,370万円 |
1級 | 1,150万円 (1,100万円) | 2,800万円 |
2級 | 998万円 (958万円) | 2,370万円 |
3級 | 861万円 (829万円) | 1,990万円 |
4級 | 737万円 (712万円) | 1,670万円 |
5級 | 618万円 (599万円) | 1,400万円 |
6級 | 512万円 (498万円) | 1,180万円 |
7級 | 419万円 (409万円) | 1,000万円 |
8級 | 331万円 (324万円) | 830万円 |
9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
10級 | 190万円 (187万円) | 550万円 |
11級 | 136万円 (135万円) | 420万円 |
12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
13級 | 57万円 (57万円) | 180万円 |
14級 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
*()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故に適用される金額
後遺障害等級は、たとえばむちうちによるしびれや痛みであれば12級または14級に認定される可能性があります。
その他、等級別に認定基準を確認したい場合は『【後遺障害等級表】認定される後遺症の内容が一覧でわかる』の記事で一覧表を紹介しているので参考にしてみてください。
死亡した被害者とその遺族の精神的苦痛|死亡慰謝料
交通事故により被害者が死亡した場合の精神的苦痛は、「死亡慰謝料」によって補償されます。被害者本人だけでなく、遺族の精神的苦痛も対象になるという点が死亡慰謝料の特徴です。
死亡慰謝料の対象になる精神的苦痛
- 交通事故で被害者が感じた痛み、苦しみ、恐怖
- 被害者が感じた無念さ、悔しさ、怒り、悲しみ
- 遺族が感じた喪失感、悲しみ、悔しさ、怒り
なお、遺族とは被害者の親(養父母含む)、妻または夫、子(養子含む)のことです。
ただし、内縁の妻または夫、兄弟姉妹なども、死亡慰謝料を請求できる可能性があります。
死亡慰謝料の計算方法
自賠責基準では、死亡慰謝料は「400万円(2020年3月31日以前に発生した交通事故なら350万円)+遺族の人数や扶養の有無に応じた金額」で計算します。
遺族分の死亡慰謝料額は以下のとおりです。以下に本人分の400万円を足してください。
遺族 | 死亡慰謝料 | 扶養あり |
---|---|---|
1人 | 550万円 | 750万円 |
2人 | 650万円 | 850万円 |
3人以上 | 750万円 | 950万円 |
一方、弁護士基準では、被害者の立場によって死亡慰謝料の目安が定められています。自賠責基準とは違い、あらかじめ本人分と遺族分を合わせた金額が設定されています。
被害者 | 死亡慰謝料 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 |
独身者・子供 | 2000万円~2500万円 |
なお、上記の金額は被害者に扶養家族が3人いる場合を想定したものです。
被害者に扶養家族が4人以上いる場合には、死亡慰謝料は増額される可能性があります。
また、以下の場合は被害者遺族の精神的苦痛がことさらに大きいとして死亡慰謝料が増額されることがあります。
- 遺族が精神疾患を患った場合
- 幼い子どもが交通事故を目撃した場合
- 子どもを一度に複数人失った場合
死亡慰謝料については、『死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点』の記事もご参考ください。
死亡慰謝料の請求から分配までのポイントを解説しています。
物損やペットの被害で生じる精神的苦痛は慰謝料の対象外
交通事故では、慰謝料の対象となるのは「人の死傷によって生じる精神的苦痛」です。いわゆる「物損被害」によって生じる精神的苦痛は、基本的に慰謝料の対象にはなりません。
慰謝料の対象にならない精神的苦痛
- 大切にしていた愛車が壊れた
- ペットがケガをしたり亡くなったりした
- 交通事故のときに持っていた大切な物が壊れた
- 交通事故によって高価な服や靴が汚れた
物が壊れた場合は、財産的な補償を受けることで精神的苦痛がなくなると判断されます。
ただし、例外的に物損に対する精神的苦痛に対して慰謝料が支払われたケースもあります。
詳しくは、『物損事故で慰謝料がもらえた事例|原則もらえない理由と獲得を目指す方法』の記事をご確認ください。
その他の精神的苦痛で慰謝料が増額されうるケース
以下の様な精神的苦痛は、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料のいずれかを増額する形で補償されることがあります。
慰謝料増額の対象となりうる精神的苦痛
- 加害者側の態度による精神的苦痛
- 被害者家族の精神的苦痛
- 危篤状態・手術の繰り返しによる精神的苦痛
- 流産・中絶による精神的苦痛
- 婚約の破談による精神的苦痛
- 失職・転職による精神的苦痛
- 留年による精神的苦痛
- 内定取り消し・就職遅れによる精神的苦痛
- 死亡事故で無念が大きいことによる精神的苦痛
どの慰謝料が増額されうるのかや、実際の判例を紹介していきます。
(1)加害者側の態度でストレスを受けた
加害者側の以下のような態度で精神的苦痛を受けた場合は、入通院慰謝料が増額される可能性があります。
- 加害者が反省の色を見せない
- 加害者が挑発的な態度をとる
- 加害者が嘘の証言をするなど不誠実な態度をとる
ただし、実際に慰謝料が増額されるかは、加害者の態度の悪質性や被害者側に生じた具体的な影響などから判断されます。
詳しくは『交通事故加害者に誠意がない時、慰謝料増額は可能?不誠実で許せない時の対処法』もご覧ください。
実際の判例は以下のとおりです。
被害者(男・9歳)につき、加害者は朝まで量が分からないくらい飲酒し、事故後救護せずコンビニで強力な口臭消しを購入し、衝突まで全く被害者に気がついていなかったにもかかわらず捜査段階ではこれを隠す供述をし、父母が事故後心療内科に通院したことから、基準額の3割増しを相当とし、本人分2750万円、父母各250万円、合計3250万円を認めた。
(事故日平16.12.2 大阪地判平20.9.26 自保ジ1784・15)
このほか、慰謝料が相場よりも増額された判例を調べたいという方は、関連記事『交通事故の判例一覧!慰謝料の高額事例は?判例タイムズは過失割合の参考本』も参考になります。
(2)被害者が重度の後遺障害を負った
被害者に「死にも比肩する後遺障害」が残った場合、家族は介護をすることになったり、思い描いていた被害者との未来が得られなくなったりします。
こうした場合は、被害者の家族に対しても慰謝料が支払われることがあります。
死にも比肩する後遺障害とは、高次脳機能障害、遷延性意識障害(いわゆる植物状態)などです。
高次脳機能障害については、『事故後の記憶障害・性格が変わる・言語障害…高次脳機能障害の症状とは?』の記事で詳しく述べているので、ご参照ください。
『交通事故の被害者家族が近親者慰謝料をもらえるケース』も参考になります。
実際の判例は以下のとおりです。
脳挫傷後の後遺障害(1級1号)の中学生(女・固定時15歳)につき、(略)本人分2800万円、子の将来の成長への楽しみを奪われ将来に不安を抱きながら介護する生活を余儀なくされた父母各500万円、後遺障害分合計3800万円を認めた。
(事故日平15.8.7 金沢地判平18.10.11 自保ジ1705・2)
(3)治療中のリスクや苦痛が大きかった
以下のような事情で治療中の精神的苦痛がことさらに大きいと判断された場合は、入通院慰謝料が増額される可能性があります。
- 生死をさまよう危険な状態だった
- 何度も手術を繰り返した
- 麻酔ができない状態で手術をした
実際の判例は以下のとおりです。
(略)手術を受けたものの、左下肢の軟部組織の著しい欠損により感染の危険が高く、長期間にわたる入院を要したほか、骨癒合にも長期間を要する中で骨髄炎を発症し、再度入院加療を要したことなどから、傷害分360万円を認めた。
(事故日平21.6.24 名古屋地判平25.8.5 自保ジ1910・131)
(4)事故や治療の関係で流産・中絶した
被害者が妊婦さんの場合、交通事故をきっかけに流産・中絶してしまうことがあります。
以下のようなケースでは、妊婦さんの入通院慰謝料が増額される可能性があります。
- 事故による衝撃やストレスにより流産した
- 事故による衝撃やストレス、治療などにより中絶を余儀なくされた
- 必ずしも中絶の必要はなかったが、事故やその後の治療が胎児に影響する可能性を考え、中絶を選択した
妊娠後期であるほど精神的にも身体的にも負担が大きいと考えられることから、金額が大きくなります。
また、流産・中絶においては父親も精神的苦痛を受けると考えられますが、父親に対して慰謝料が認められるかどうかは、示談交渉や裁判によって決まります。
妊婦さんが交通事故にあってしまった場合は、『交通事故の被害者が妊婦なら慰謝料はいくら?流産は増額の理由になる?』の記事もご参照ください。
実際の判例は以下のとおりです。
会社員(女・年齢不明)につき、妊娠2週目に妊娠に気づかずレントゲン検査を受け人工妊娠中絶を余儀なくされたことの精神的打撃が大きかったとして、頸部・腰部挫傷で通院55日だが100万円をみとめた。
(事故日平4.1.9 大阪地判平6.1.19 交民27・1・62)
(5)後遺障害が原因で婚約が破談になった
下記のような事情で婚約が破談になったケースでは、後遺障害慰謝料の増額が認められる可能性があります。
- 交通事故により被害者に高次脳機能障害や精神的障害が残り、婚約者と関係を継続できなくなった
- 交通事故により被害者に生殖機能障害が残った
ただし、交通事故が破談の原因であると証明し、慰謝料を増額させるのは難しいことが多いです。
婚約の破談による慰謝料の増額を認めてもらいたい場合は、弁護士を立てて交渉することをおすすめします。
(6)後遺障害が原因で失職・転職を余儀なくされた
下記のような事情で失職したり、転職を余儀なくされてしまったりした場合は、後遺障害慰謝料が増額される可能性があります。
- 外見が重要な職業に就いていた被害者の顔に、目立つ傷跡が残った
- 後遺障害により、被害者がもともと従事していた肉体労働ができなくなった
- 高次脳機能障害の影響で、以前のように仕事ができなくなり、失職した
交通事故によって失職した場合は、次の職業が見つかるまでの期間、もしくは次の職業が見つかるまでの期間として妥当な期間、休業損害が支払われる場合もあります。
休業損害の計算方法や請求できる金額については、『交通事故の休業損害|計算方法や休業日の数え方、いつもらえるかを解説』の記事をご覧ください。
(7)治療により留年した
被害者が学生の場合、交通事故によって長期間の治療を余儀なくされた結果、留年が必要となることがあります。こうしたケースでは以下のような精神的苦痛を補償するため、入通院慰謝料が増額される可能性があります。
- 友人におくれをとってしまった
- 下の学年の学生たちに溶け込まなければならない
留年によって余計に必要になった教科書代や学費、下宿代、塾や家庭教師の費用なども、加害者側に請求できるでしょう。
学生の交通事故について詳しく知りたい方は、『学生(大学生・中高生)の交通事故慰謝料は?計算方法や相場を解説』の記事をお役立てください。
実際の判例は以下のとおりです。
事故のため1年間留年した大学生につき、学費97万円余及び1年分のアパート賃借料55万円余を認めた。
(岡山地判平9.5.29 交民30・3・796)
(略)大学生(男・事故時33歳)につき、秋学期の欠席はやむを得ないとし、支払った大学授業料83万円余を認めた。
(東京地判平22.10.13 交民43・5・1287)
(8)治療で内定取り消し・就職遅れが発生した
交通事故による長期間の治療で内定が取り消されたり、就職が遅れてしまったりした場合も、入通院慰謝料の増額が認められる可能性があります。
また、内定の取消や就職の遅れについては、失職した場合と同様に、休業損害が支払われる可能性もあります。
実際の判例は以下のとおりです。
就職が内定していた修士課程後期在学生(男・事故時27歳)につき、事故により就職内定が取り消され症状固定まで就業できなかった場合に、就職予定日から症状固定まで2年6カ月余の間、就職内定先からの回答による給与推定額を基礎に、955万円余を認めた。
(名古屋地判平14.9.20 交民35・5・1225)
(9)死亡した被害者の無念さがことさらに大きい
死亡事故の場合、被害者の無念がことさら大きいと判断されれば、死亡慰謝料が増額される可能性があります。
具体的には、以下のような状況で死亡慰謝料が増額された事例があります。
- 被害者が結婚の直前や直後だった
- 長年の夢をかなえたばかりだった
実際の判例は以下のとおりです。
単身者(男・31歳・会社員)につき、希望していた鉄道会社に就職後、車掌として真面目に勤務していたこと、父母思いの優しい息子であり、結婚を誓っていた交際相手もいたことなどから、2800万円を認めた。
(事故日平20.1.20 東京高判平22.10.28 判タ1345・213)
精神的苦痛を慰謝料で補償してもらうための注意点
交通事故の慰謝料の請求をするとき、いくつかのポイントをおさえておかないと、納得のいく金額が得られない可能性が高いです。
ここからは、交通事故の慰謝料に関する注意点を2つ解説していきます。
慰謝料額は精神的苦痛以外の要素で減額されることもある
交通事故の慰謝料は精神的苦痛を金銭化して補償するものですが、それ以外の要素によって減額されてしまうこともあります。
特に注意すべきなのが「過失割合」と「素因減額」です。これらについて確認していきましょう。
被害者にも過失割合がついた
過失割合とは、交通事故が起こった責任(過失)が被害者と加害者にどのくらいあるかを示した割合のことです。
被害者にも過失割合がつくと、その割合の分だけ慰謝料が減額されます。
たとえば、過失割合が「加害者:被害者=8:2」の場合、被害者が受け取れる慰謝料は2割減るのです。
これを「過失相殺」と言います。
過失割合は、示談交渉の中で加害者側と話し合って決められます。加害者側は被害者の過失割合を多く見積もって提示してくることがあるので、鵜呑みにしないようにしましょう。
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素因減額された
素因減額とは「被害者がもともと持っていた素因によって被害が拡大した」と考えられる場合に、慰謝料を減額することを指します。
素因減額には、「身体的素因減額」と「心因的素因減額」の2種類があります。
身体的素因減額の例
- もともと腰痛持ちであったところ、交通事故によって腰痛が悪化した
- 交通事故により捻挫したが、もともと同じ個所を何度も捻挫しており、癖になっていた
心因的素因減額の例
- 被害者が治療に消極的で、処方された薬を飲んでいなかったため治療が長引いた
- 被害者が痛みやしびれに人一倍敏感で、一般的な人なら治ったと判断する状態でも、症状を強く感じると主張する
ただし、上記に該当する場合に本当に素因減額すべきなのか、どの程度減額すべきなのかはケースによりけりです。
加害者側が素因減額を提示してきた場合は、過去の判例や専門知識も踏まえて交渉することが重要です。一度弁護士にご相談ください。
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保険会社の提示する慰謝料は低額なことが多い
交通事故の慰謝料を算定する際、もっとも法的正当性の高い金額がわかるのは「弁護士基準」にのっとって計算した場合です。
しかし、加害者側は自賠責基準や任意保険基準で算定した金額を提示してくることが多く、弁護士基準で計算した金額の半分~3分の1程度でしかないことも多々あります。
もしすでに加害者側の任意保険会社から慰謝料を提示されているなら、以下の計算機で被害者が本来受け取れる相場をご確認ください。
加害者側の任意保険会社から提示された金額より、計算機で計算された金額の方が高い場合は、増額の余地があるので弁護士に相談してみましょう。
※慰謝料計算機では、過失相殺、素因減額、損益相殺を行っていない状態の金額が計算されます。
精神的苦痛に見合った慰謝料を得るには対策が必要
弁護士を立てることがベストな対策
慰謝料は交通事故の賠償金の中でも高額になりやすいため、示談交渉で特に揉めやすいポイントです。さらに「精神的苦痛」という目に見えないものを金銭化したものである点も、増額交渉を難しくする要因です。
加害者側の任意保険会社も慰謝料については特に力を入れて交渉してくる傾向にあるので、弁護士を立てて対応することが一番の対策となります。
弁護士を立てると、以下の点から被害者側の主張が通りやすくなるからです。
- 過去の判例や専門知識をもとに、実情に応じた厳密な慰謝料額を主張できる
- 慰謝料交渉のポイントを押さえている
- 弁護士が出てくると加害者側の任意保険会社は裁判になるのを避けるため、譲歩の姿勢を取る傾向にある
「被害者自身の交渉では微々たる金額しか増額できなかったのに、弁護士を立てたら大幅増額が実現した」というケースも多いです。
保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も増額され、びっくりしました
事故から2年、相手の保険会社の対応が悪く納得のいかない事ばかりで。示談交渉の話ばかりで、私の怪我の心配等ありませんでした。示談金に納得がいかず、インターネットで弁護士事務所を探し多々、弁護士事務所に相談しましたが、アトム法律事務所の方だけがとても親切・丁寧に話を聞いて下さいました。弁護士事務所に相談に行くのは人生初めてで。ドキドキでしたが、親身になって私の話を聞いて下さり示談交渉までスムーズでした。保険会社と私の話し合いでは限界、と言われた金額の約3倍も金額の変動があり、びっくりしました。今回、アトム法律事務所へ相談できて本当に良かったです。本当にありがとうございました。
右手人差指神経断裂で470万円の増額に成功した事例/アトム法律事務所公式HP
弁護士の介入を受けるメリットは『交通事故で弁護士介入が必要な6ケース』でも解説しています。弁護士への相談を迷っている方は、ぜひあわせてお読みください。
弁護士費用の負担は軽減できる
弁護士への相談・依頼を検討するとき、弁護士費用に不安を感じる方は多いです。
「弁護士費用特約を利用する」または「相談料・着手金無料の法律事務所を利用する」といった方法を利用すれば、弁護士費用の負担を大幅に減らせます。
それぞれの方法について、詳しく解説していきます。
弁護士費用特約を利用する
弁護士費用特約とは、被害者が加入している保険会社に弁護士費用を負担してもらえる制度です。
弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用の合計300万円まで、相談料の合計10万円までを、保険会社に負担してもらうことが可能です。
最終的な慰謝料・損害賠償金の合計が数千万円にならない限り、弁護士費用が300万円を超えることはほぼありません。
弁護士費用特約によって弁護士費用全額がカバーできることから、被害者の自己負担が0円となるのです。
弁護士費用特約のポイント
- 被害者が加入している保険にオプションとしてつけられる
- 自動車保険だけではなく、火災保険やクレジットカードについている場合もある
- 家族の保険についている弁護士費用特約でも、利用可能な場合がある
- 弁護士費用特約の利用により保険の等級が下がることはない
弁護士費用特約については、『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』で解説していますので、ぜひご確認ください。
相談料・着手金無料の法律事務所を利用する
弁護士費用は、相談料・着手金・成功報酬などから構成されています。
弁護士費用のうち、交通事故の被害者にとってネックになりやすいのは、慰謝料・賠償金獲得前に支払う相談料と着手金です。
しかし、相談料・着手金が無料の法律事務所に依頼すれば、加害者側からお金を受け取るまで、弁護士費用の支払いが生じません。
すぐに大きなお金を用意できない方も、安心して利用できるのです。
弁護士費用の内訳や相場について、より詳しく知りたい場合は『交通事故の弁護士費用相場はいくら?』の記事をご確認ください。
まずは無料相談で増額の見込みを知ろう
交通事故で受けた精神的苦痛を慰謝料に反映できるか知りたい方は、まず無料相談で弁護士に確認してみましょう。
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まずはお気軽にご連絡ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了