追突された(おかまほられた)・追突してしまった時の対応や示談金・過失割合を解説

交通事故の中でも特に多いとされるのが「追突事故」です。前方の車に後ろから衝突する形が一般的で、追突事故は「おかまをほられた(おかまほる)」とも呼ばれています。
追突事故は比較的、軽微な損傷で済むことも多い一方で、事故後の対応を誤るとトラブルに発展する可能性もあるので十分な対応が必要です。
たとえば、「追突された側」であれば、ケガの申告や損害賠償の主張を適切に行うことが求められます。一方で、「追突してしまった側」にも、誠実な謝罪や保険会社とのやり取りなど、責任ある行動を行わねばなりません。
この記事では、追突事故が発生したときにすべき対応や、被害者が受け取る示談金、加害者が受ける罰則など幅広く解説します。トラブルを避け、スムーズに問題を解決するためにも、ぜひ最後までご覧ください。
目次

追突事故(おかまほる)とは?原因や防止のポイント
追突事故は、交通事故の中でも特に多い事故形態です。
まずはなぜ追突事故が起きるのか、追突事故を予防するにはどうすれば良いのかを解説し、次章からは追突事故が起きてしまった場合の対処法や示談金について解説します。
追突事故(おかまほる)とは?交通事故で最多
追突事故とは、前方を走行または停止している車両に、後方から接触する交通事故のことを指します。俗に「おかまをほられた(おかまほる)」と呼ばれていますが、一般的には「追突事故」と表現されます。
停止中や低速で走行している前方車両に、後方車両が衝突するケースが一般的です。
追突事故の例
- 前方車両が停止したことに気がつかず後方車両が追突した
- 信号待ちで後方車両がしっかりブレーキを踏めておらず追突した
- 路上駐車している車両に、後方から来た車両が追突した
また、追突事故はよく「もらい事故」という言葉で表現されることがあります。ただし、もらい事故は「被害者側の過失が0の事故」を指すのに対し、追突事故の場合、状況によっては被害者にも一定の過失が認定されることがあります。
つまり、「おかまをほられた=過失ゼロ」とは限らないという点には注意が必要です。
過失割合が争点になるケースも多いため、追突事故の被害にあった場合は早めに専門家へ相談することが大切です。
追突事故は交通事故で最多
追突事故は、日本で最も多く発生している車同士の交通事故です。
内閣府の統計によると、令和5年(2023年)の交通事故総件数30万7,930件のうち、追突事故は91,849件を占めています。
つまり、発生する交通事故の約3件に1件が追突事故という計算になります。
事故の種類 | 事故件数 | 割合 |
---|---|---|
追突 | 91,849件 | 29.8% |
出会い頭 | 78,028件 | 25.3% |
右折・左折時 | 40,246件 | 13.1% |
歩行者横断中 | 22,592件 | 7.3% |
正面衝突 | 11,127件 | 3.6% |
その他 | 64,088件 | 20.9% |
参考:令和6年版交通安全白書
しかし、死亡事故に限って見ると状況は大きく異なります。
令和5年の交通死亡事故2,618件のうち、追突事故による死亡は130件で全体の5%にとどまります。
これは2010年頃から普及し始めた自動緊急ブレーキシステム(AEB)をはじめとする安全技術の進歩によるものと考えられます。
追突事故のよくある原因
追突事故の主な原因は、前方不注意やブレーキの踏み遅れなど、加害者の注意力に関わるものがほとんどです。具体的には以下のような原因が代表的です。
- わき見運転
- 居眠り運転
- だろう運転
ひとつずつ解説していきます。
わき見運転
携帯電話の操作や車外の景色に気を取られるなど、前方をしっかりと見ていない状態での運転です。
わき見運転は、「前方不注意」として安全運転義務違反になります。
近年は、運転中のスマートフォン操作による追突事故が増加しており、2019年12月には「ながらスマホ」による事故が厳罰化されました。
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脇見運転による事故の罰則や過失割合。安全不確認・前方不注意との違いは?
居眠り運転
疲労や睡眠不足による居眠り運転は、緊急時のブレーキやハンドル操作ができない状態での運転となるため、大きな事故につながりやすいです。
特に、アルコール運転や薬物の影響下での居眠り運転の場合、危険性が高く評価され、危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪に問われることもあります。
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だろう運転
前の車や周囲の状況について、楽観的な予測のもとで運転することを「だろう運転」といいます。
たとえば「信号が黄色に変わったが、前方車両は通過するだろう」と考えて自分も一緒に進もうとしたところ、前方車両が停車して追突しまうケースがあります。
特に普段から走る慣れた道路では、集中力が下がり漫然運転になりやすく、危険な「だろう運転」をしてしまう傾向があります。
追突事故を防止するためのポイント
追突事故を防止するためには、以下の点が重要です。
- 車間距離を十分に確保する
- 「かもしれない運転」を心がける
- 「クリープ現象」による追突に注意する
- 運転するときの体調に注意する
それぞれについて解説します。
車間距離を十分に確保する
追突事故防止の最も基本的な対策は、適切な車間距離を保つことです。
具体的には、前方車両が目印(標識や電柱)を通過してから、後方車両が同じ地点に到達するまでに2秒程度かかる距離が適切といわれています。
これを車間距離に直すと、以下のようになります。
速度 | 車間距離 |
---|---|
40km/h | 22m程度 |
60km/h | 33m程度 |
80km/h | 67m程度 |
100km/h | 83m程度 |
雨で路面が濡れている場合や霧が濃い場合などは、さらに車間距離を空けて安全運転を心がけましょう。
「かもしれない運転」を心がける
「かもしれない運転」とは、常に危険な状況になる可能性を考えて運転することです。
かもしれない運転
- 前方車両が急ブレーキをかけるかもしれない
- 路面が濡れていて、予想よりもブレーキから停車まで時間がかかるかもしれない
追突事故の多くは、加害者の「不注意」により発生しています。
走り慣れた道や時間帯だったとしても、予想外の状況になることは大いにあり得るため、スマートフォンの操作やわき見運転をせず、最大限注意して運転しましょう。
クリープ現象による追突に注意する
クリープ現象とは、AT車がアクセルペダルを踏んでいなくてもゆっくりと進む現象のことです。
追突事故というと、かなりの速度で追突するイメージがあるかもしれませんが、渋滞や信号待ちでクリープ現象によって発生することも多いのです。
クリープ現象による追突事故を防止するためには、以下のような行動でクリープ現象が発生しないようにしましょう。
- 停止中はブレーキペダルをしっかり踏む
- シフトレバーをN(ニュートラル)に入れ、サイドブレーキを引く
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クリープ現象による事故!追突されたときの注意点や事故を防ぐ方法を解説
運転するときの体調に気をつける
疲労や眠気、薬の服用などは、運転能力に大きな影響を与えます。長距離運転や夜間運転の前には、十分な睡眠をとり、体調を整えましょう。
また、アルコールや眠気を誘発する薬の服用後は絶対に運転を避けてください。集中できない状態での運転は、追突事故のリスクを著しく高めます。
追突された(おかまほられた)・追突してしまった時の対応
追突事故が発生した場合、以下のような初期対応を行いましょう。
追突事故の対応の流れ
- 事故現場の安全確保・ケガ人の救護
- 警察・救急への通報と証拠保全
- 警察への捜査協力と保険会社への連絡
- 病院を受診
- 後遺障害認定
- 示談交渉
追突された(おかまほられた)被害者も、追突してしまった加害者も、基本的に行う対応は同じです。それぞれの流れにおけるポイントを解説します。
(1)事故現場の安全確保・ケガ人の救護
追突事故が発生したら、まずは以下の流れで現場の安全確保とケガ人の救護をおこないましょう。もちろん、ご自身がケガをしている場合は無理はしないでください。
- 車を路肩や安全地帯など安全な場所に停止させる
- 道路に落下物や障害物がないかを確認する(道路の安全確保)
- 必要性があれば発煙筒や三角板などで後続車に事故を知らせる
- 事故による負傷者の有無を確認する
ケガ人の救護では、まず身体を揺さぶらないよう軽く肩をたたいて意識を確認します。意識がない、頭部・頸部から出血している、首の後ろに痛みやしびれがある場合は動かさないようにしてください。
ケガ人を移動させる場合は首や頭に負担や衝撃がかからないよう注意して、安全な場所に移動させましょう。
注意!
追突事故後、適切な対処をせずそのまま立ち去ると救護義務違反に該当する可能性があります。
「用事があって急いでいる」「自分は悪くないので事故対応を任せたつもりだった」という考え方は基本的に認められないので、必ず事故現場にとどまり、事故後の対応をしてください。
ケガ人の救護方法や現場の安全確保の方法は、『交通事故にあったら初期対応の手順は?事故を起こしたらまずすること』でも詳細に解説しています。
(2)警察・救急・保険会社への通報と証拠保全
次に警察と救急に連絡し、事故の状況を報告します。
追突事故に限らず、交通事故を警察に報告することは道路交通法上の義務です。通報を怠ると3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があるので、必ず警察に連絡しましょう。
また、警察に連絡しないと事故の発生を証明する「交通事故証明書」が発行されません。のちのち加害者側から「事故など発生していない」と言われるリスクもあるので、警察への連絡は重要です。
こうした点から、追突事故が起きたら必ず警察に連絡を入れましょう。
追突事故の被害者が警察に伝えるべき内容は、以下のとおりです。
警察への通報内容
- 追突事故の発生日時と場所
- 事故による負傷者と負傷の程度
- 事故による死傷者の有無
- 物的損害
- 事故車両の積載物
- 事故発生から今までに取った対応
警察に連絡をしたら、警察が到着するまでに相手と連絡先や保険情報を交換し、スマートフォン等で事故現場の写真や動画を撮影して証拠を残しておきます。
その後は、自身の保険会社にも事故にあったことを報告しておく必要があります。
交通事故を警察に報告する義務については、『交通事故後は警察への報告義務がある|伝える内容や連絡後の流れ』でも詳しく解説しています。
加害者と情報交換|その場の示談はNG
追突事故後は、加害者と連絡先(相手の氏名、住所、電話番号など)、車のナンバー、加入する保険会社を交換しておきましょう。
運転免許証や車検証、自賠責保険証明書などで本人確認も必須です。
事故現場での示談はNG
口頭でも示談は成立してしまいます。
事故現場では、加害者側から「きちんと損害賠償するのでここで示談してしまおう」「警察は呼ばずに内々で解決しよう」と言われることがありますが、決して応じてはいけません。
その理由は以下のとおりです。
- 示談成立後は原則として追加の賠償請求はできないが、事故発生直後は損害額がどれくらいになるか正確に把握できない
- 示談で決めたはずの金額をきちんと支払ってもらえない可能性がある
「とりあえず話を合わせておく」ということも避けてください。
事故現場の証拠保全
証拠保全では、以下の写真・映像を取っておくことがポイントです。
- タイヤ痕やブレーキ痕、ガラスの破片などの痕跡
- 車両の損傷状況
- 現場周辺の状況(信号機の位置や交通標識の有無など)
- 視界や路面状況に影響するような雨や雪、日差しの状態
特に雨や雪、日差しなど警察が到着するまでに変化してしまう部分は、優先的に写真や映像に残してください。
また、目撃者がいれば、今後事故について警察の捜査があった際に協力してもらえるかどうかを打診しておきましょう。
自身の保険会社へ事故を報告
交通事故後は、ご自身の保険会社にも事故発生を報告しましょう。使える保険の案内を受けたり、ロードサービスを手配してもらったりできます。
また、追突事故を含む交通事故では、被害者側が加害者側から損害賠償請求を受けることがあります。この際、対人・対物賠償保険を使うことになることも考えられるので、事前に保険会社に事故を連絡しておいてください。
後に紹介する「弁護士費用特約」の利用可否についても確認しておくとスムーズです。
(3)警察への捜査協力
警察が到着したら、実況見分(人身事故の場合のみ)や聞き取り捜査に協力してください。ただし、ケガの状態などによっては治療や入院を優先し、実況見分が後日になることもあります。
実況見分では、事故当事者の立ち会いのもと、事故現場を見ながら事故発生時の状況の捜査が行われます。
実況見分の結果をまとめた「実況見分調書」は、事故時の状況を証明する資料として、のちの示談交渉でも重要な役割を果たします。
実況見分への協力は任意ですが、極力協力するようにしましょう。
実況見分の流れや注意点は、『実況見分の流れや注意点!聞かれる内容や過失割合への影響、現場検証との違い』の記事にてご確認ください。
追突事故で被害届は出すべき?
追突事故では、たとえ被害が小さくても、加害者側に誠意や反省の様子が見られても、被害届を出すことがおすすめです。
被害届を出さないとどうなる?
- 被害者がケガをしていても人身事故として処理されない
- 実況見分がおこなわれない
→示談交渉時に事故状況で揉めた場合、不利になる可能性がある
被害届を出さず人身事故として処理されなかった場合、事故状況を詳しく捜査する実況見分はおこなわれません。
実況見分の内容をまとめた「実況見分調書」は、事故時の状況を証明する公的な資料です。これがないと示談交渉で事故状況について揉めた場合、不利になってしまう可能性があります。
以下の関連記事も参考にして、被害届を出すかどうか検討してみてください。
被害届と人身事故の関連記事
(4)病院を受診
たとえケガがなくても、24時間以内に医療機関で診察を受けることをおすすめします。事故当時は興奮状態にあり痛みを感じないかもしれませんが、後から症状が出ることも多いためです。
特に追突事故でよくある「むちうち症状」は、交通事故のケガの中でも比較的軽微なため、病院へ行くことを怠ってしまいがちです。
しかし、受診が遅れるとケガと事故との関連性が曖昧になり、加害者側に治療費や慰謝料を十分請求できない可能性があります。自覚症状がなくても念のため診察を受けましょう。
病院で事故時に受けた衝撃などを伝え、検査を受けると、ケガが発覚することもあります。早めに病院へ行き、ケガがあれば診断書を出してもらってください。
念のための受診に不安な点がある方は、『交通事故で痛くないのに通院してもいい?』の記事も参考にしてみてください。
すでに物損事故として届けてしまっていたらどうする?
物損事故として警察に届け出たあとにケガが発覚した場合は、人身事故への変更手続きも必要です。
後から痛みを感じたら、すぐに病院を受診して医師に診断書を作成してもらい、警察で人身事故に切り替えましょう。
追突事故の治療費や検査費はどう支払う?
相手の保険会社が「任意一括対応」をしてくれる場合、治療費や検査費は加害者側の任意保険会社が病院に直接支払ってくれます。被害者が窓口で費用を立て替える必要はありません。

「任意一括対応」をしてもらえるかは事前に加害者側の任意保険会社に確認してみてください。
「任意一括対応」をしてもらえない場合や、事故直後で「任意一括対応」の手続きが追いついていない場合は、一時的に被害者が費用を立て替え示談交渉時に加害者側に請求します。
この際、健康保険を使うと負担を減らせます。
(5)後遺障害認定
治療の結果、後遺症が残った場合には、後遺障害認定を受けましょう。
追突事故の場合は、むちうちによる痛みや痺れが後遺症として残る可能性があります。神経症状として後遺障害12級または14級に認定されれば、100万円以上の後遺障害慰謝料を請求できます(弁護士基準の場合)。
さらに、「後遺障害よって労働能力が低下したことで減ってしまう生涯収入」を補償する「逸失利益」も請求可能です。
しっかりとした対策のもと、後遺障害認定を受けましょう。
むちうちで後遺症が残った場合には、『むちうちの後遺症で後遺障害認定は難しい?認定対策や完治しない時の賠償金は?』の記事がおすすめです。
(6)示談交渉
ケガが完治して治療が終わるか、後遺症が残り後遺障害認定の結果が出たら、加害者側との示談交渉が可能になります。
治療費や慰謝料、物損関連の賠償金などを請求しましょう。
ただし、加害者側は、交渉のプロである任意保険担当者が交渉人として出てくることが多く、示談交渉は難航しがちです。
交通事故では、被害者側も「示談代行サービス」を使えば自身の保険担当者に交渉を任せられます。
しかし、追突事故では被害者側の過失割合が0で、示談代行サービスを使えないことも多いです。
被害者自身で示談交渉をすると、交渉力や知識量の差から、被害者側に不利な内容で示談が成立してしまう可能性が高くなります。
事前に弁護士からアドバイスを受けたり、交渉時に弁護士を立てたりして対策しておきましょう。
追突事故で示談金はいくらもらえる?
示談金を構成する慰謝料や休業損害は、通院した期間や仕事を休んだ日数などにより決まります。
たとえば、むちうちで3ヶ月通院した場合の慰謝料は53万円ほどです。
ご自身が追突事故で請求できる金額を知りたい方は、無料で利用できる計算機をご利用ください。
示談金の関連記事
追突された(おかまほられた)・追突してしまった時の「NG行動」
追突事故が起きたときに、絶対にやってはいけない行動は以下の2つです。
- 警察を呼ばない
- その場で示談する
ひとつずつ解説していきます。
NG行動(1)警察を呼ばない
交通事故が発生したにもかかわらず、警察を呼ばない行為は「事故報告義務違反」として処罰の対象となる可能性があります。これは被害者も加害者も対象です。
また、事故の発生を警察に通報しない場合、被害者と加害者ともにデメリットがあります。
- 警察を呼ばない被害者のデメリット
- 交通事故証明書が作成されず、保険会社からの補償を受けられないおそれがある
- 実況見分調書が作成されず、適切な賠償金請求をするための証拠不足になるおそれがある
- 警察を呼ばない加害者のデメリット
- 後日になって相手がケガを申告し、「加害者は逃走した」と主張されるおそれがある
NG行動(2)その場で示談する
原則、示談が一度成立すると、後から無効にしたり内容を変更したりはできません。
そのため、ケガの有無や車両の損害が確定していない状況で示談してしまうと、適切な補償を受けられない可能性があります。
また、被害者と加害者ともに、事故直後は興奮状態にあるためケガの痛みを感じないかもしれませんが、後から痛みが出てくることもあります。
示談はお互いの損害が確定した後におこなうようにしましょう。
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交通事故で警察を呼ばず示談をしてはならない理由と正しい対処方法
追突された(おかまほられた)被害者が請求できる示談金の内訳
追突事故で被害者が請求できる示談金の費目には、以下のようなものがあります。
追突事故の示談金内訳
費目 | 説明 |
---|---|
入通院慰謝料 | ケガによる精神的苦痛への補償 |
治療費 | ケガの治療にかかった実費 |
休業損害 | ケガで働けなかったことによる減収分の補償 |
治療関係費 | 通院交通費、検査費、入院雑費など |
後遺障害慰謝料* | 後遺症を負った精神的苦痛への補償 |
逸失利益* | 後遺症により生じるであろう将来の減収分の補償 |
死亡慰謝料 | 事故で死亡した被害者と遺族の精神的苦痛への補償 |
*後遺障害認定がおりた場合のみ請求可能
示談交渉の際、加害者側の任意保険担当者は相場よりも低い金額を提示してくることが多いです。
特に慰謝料は保険会社独自の基準(任意保険基準)に沿って計算されており、過去の判例に基づく適正な金額(弁護士基準)の半分〜3分の1程度になっていることも珍しくありません。

算定基準 | 特徴 |
---|---|
自賠責基準 | 国が定めた最低限の基準 |
任意保険基準 | 任意保険会社ごとに定める基準 |
弁護士基準(裁判基準) | 過去の裁判結果に基づく基準 |
加害者側の提示額を鵜呑みにしないようにしましょう。
適正な示談金額を知るには、弁護士に問い合わせることがおすすめです。示談金額は事故の個別的な事情も反映させながら柔軟に算定するものなので、専門知識が必要です。
以下の計算機でも大まかな相場は確認できますが、厳密な金額ではないためあくまでも目安程度とし、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。
関連記事
追突事故の慰謝料はいくらが相場?示談金の計算方法と損しないポイント
追突事故の過失割合はどうなる?
過失割合とは、交通事故が発生した責任の大きさを数値で表したものです。
「9:1」や「7:3」、または「90:10」や「70:30」のように表します。
ここでは、追突事故における過失割合を解説します。
本記事は「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースとしています。
追突事故の過失割合は10:0が基本
追突事故の過失割合は「10:0」であることが多く、追突された前方車両(被害者)には一切過失がないことが基本です。
なぜ追突事故の過失割合は10:0?
- 前方車両が後方車両の追突を回避するのは難しいため
- 後方車両は前方車両の存在を確認しやすいため
- 道路交通法第26条で、事故回避のために後方車両は前方と一定の距離を保つことが求められているため
例えば、信号待ちで停車中の車に追突した場合や、渋滞中の車列に追突した場合は、ほとんどのケースで追突した後方車両(加害者)にのみ過失がつき「10:0」となります。
また、前方車両が以下のような理由で急ブレーキをかけた場合でも、過失割合は10:0となることが多いです。
- 飛び出してきた歩行者や自転車を避けるための急ブレーキ
- 道路の損傷や道路上の障害物を避けるための急ブレーキ
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- 追突事故の過失割合:追突事故の過失割合は被害者の過失なしが原則|急ブレーキで過失はつく?
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追突事故で被害者に過失がつくケース
追突事故は、基本的に10:0ですが、以下のようなケースでは前方車両である被害者にも、過失がつくことがあります。
- 前方車両が不要な急ブレーキをかけた
- 前方車両が追い越し妨害した
- 前方車両が駐停車禁止場所で駐停車していた
- 前方車両が誤った方法で駐停車していた
- 前方車両が夜間の灯火義務を怠っていた
なお、実際の過失割合は事故状況や道路環境、天候条件などによって変動します。
双方の主張が対立する場合は、目撃者の証言や、監視カメラ・ドライブレコーダーなどの映像証拠も重要な判断材料となります。
被害者に過失がつくと示談金が減額
追突事故で被害者側にも過失が認められた場合、被害者が受け取る示談金が過失割合に応じて減額されます。
この仕組みを「過失相殺」といい、被害者の過失割合が大きくなるほど、受け取れる金額は少なくなります。
過失相殺による減額は、以下の項目すべてに適用されます。
- 治療費や通院交通費などの実費
- 休業損害(仕事を休んだことによる収入減)
- 慰謝料
- 車両の修理費用
過失相殺の仕組みを、具体例で解説します。
総損害額が100万円のケース
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 8 | 2 |
損害額 | – | 100万円 |
相手に請求できる金額 | – | 80万円 (=100万円×80%) |
被害者の過失は2割なので、損害額100万円を過失相殺すると2割の20万円が差し引かれ、加害者に請求できる金額は80万円となります。差し引かれた20万円は、被害者が自己負担しなければいけません。
被害者の自己負担分は、被害者自身が加入している自動車保険を使って補てんすることが多いです。
また、加害者にも損害があり、かつ被害者に過失がついた場合は、被害者の過失分の範囲で加害者の損害を補償します。
過失相殺についてより詳しく知りたい方は『過失相殺とは?計算方法の具体例や判例でわかりやすく解説』をご確認ください。
追突してしまった追突事故の加害者が受ける処分
追突事故が発生すると、加害者側は被害者に損害賠償金を支払わなければなりません。これが、「民事処分」と呼ばれるものです。
それ以外にも、加害者には行政処分・刑事処分が下されます。これらの処分について見ていきましょう。
民事処分:治療費や慰謝料の支払い
まずは、追突事故の被害者に生じた損害を補償する必要があります。
前述したように、示談交渉で決めた示談金額を支払います。
加害者が任意保険に加入している場合は、保険金によって無制限に補償されることがほとんどです。すなわち被害者の損害に対して、加害者が自己負担でお金を払うことはありません。
しかし、加害者が任意保険に加入していない場合は、自賠責保険の限度額を超える被害者の損害に関して、加害者の自己負担となります。
行政処分:違反点数の加算や免停
追突事故で被害者がケガをすると、加害者には最低でも4点の違反点数が加算されます。
違反点数には道路交通法違反に対して加点される「基礎点数」と、人身事故を起こしたことに対して加点される「付加点数」があります。
違反点数がたまると、免許の停止処分や取り消し処分を受けることになります。
追突事故による違反点数加算の例は、以下のとおりです。
追突事故の違反点数例
- 前方不注意により信号待ちをしていた前方車に追突:基礎点数2点
- 被害者は全治1ヶ月のむちうちを負った:付加点数9点
上記の例だと違反点数は合計で11点です。11点だと免停歴がない場合でも60日の免許停止処分となります。
違反点数と免許停止・取り消し期間の関係について詳しくは、『追突事故の違反点数一覧|通知はいつ来る?罰金や処分の流れも解説』をお読みください。
刑事罰:罰金刑や懲役刑など
追突事故は被害者に大きな衝撃が加わることも多く、死傷することも珍しくありません。
追突事故で被害者が死傷した場合は、加害者が過失運転致死傷罪または危険運転致死傷罪に問われます。
過失運転致死傷罪とは?
まず過失運転致死傷罪は、運転者が通常払うべき注意を怠ったことによって交通事故を引き起こし、人を死傷させた場合に成立します。
例えば、わき見運転や速度超過などにより追突事故を起こし、被害者に傷害を負わせた場合が該当します。
過失運転致死傷罪の処罰は、「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」となります(自動車運転死傷処罰法5条)。
危険運転致死傷罪とは?
次に危険運転致死傷罪は、2条と3条にわかれています。
危険運転致死傷罪(2条)は、より悪質な運転行為によって人の死傷を引き起こした場合に成立する重大な犯罪です。追突事故では以下のような状況が該当します。
- 明らかな酩酊状態での運転で追突
- 著しいスピード違反で信号無視で追突
危険運転致死傷罪(3条)は、アルコールや薬物、病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態での運転が対象です。
危険運転致死傷罪の処罰は以下のとおりです(自動車運転死傷処罰法2条、3条)。
- 危険運転致死傷罪(2条)の場合
人を負傷させたときは15年以下の懲役、人を死亡させたときは1年以下の有期懲役 - 危険運転致死傷罪(3条)の場合
人を負傷させたときは12年以下の懲役、人を死亡させたときは15年以下の懲役
追突された(おかまほられた)被害者が損をしないために必要なこと
追突事故などの交通事故の示談交渉では、加害者側は少しでも示談金が少なくなるよう交渉してきます。
そうした中で適正な示談金額を獲得し、損しないためにはどうしたら良いのか見ていきましょう。
弁護士を立てての示談交渉が重要
先述の通り、加害者側の任意保険会社は、低額な示談金を提示してくることが多いです。低い示談金額を弁護士基準の金額にまで引き上げるには、弁護士に示談交渉を依頼することがポイントです。
なぜなら、被害者自身が「弁護士基準で算定した金額に増額してほしい」と交渉したところで、加害者側の任意保険会社が増額に応じることはほとんどないからです。
弁護士が介入して、加害者側が「裁判に発展するかもしれない」と警戒することではじめて、交渉に応じてくれるようになります。
加害者側の任意保険会社も営利団体なので、「裁判」と「弁護士基準への増額」を天秤にかけて、コストが少なく済む「弁護士基準への増額」を選択するのです。
弁護士費用の不安は特約で解消できる
「弁護士に依頼した方が示談金が高くなることはわかっているけれど、弁護士費用が心配で踏み出せない」という方も多いと思います。
しかし、弁護士費用特約を利用できる場合は、自己負担なしで弁護士依頼できることが多いのです。弁護士費用特約とは、弁護士依頼にかかる費用を保険会社が負担してくれる特約です。
弁護士費用特約の一般的な補償内容
補償項目 | 補償限度額 | 補償対象となる費用 |
---|---|---|
弁護士費用 | 300万円 | 着手金、報酬金、日当、実費など |
法律相談料 | 10万円 | 弁護士への法律相談料 |
死亡事故や、重度の後遺症が残る事故以外であれば、この弁護士費用特約の補償範囲に収まることがほとんどです。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了