クリープ現象による事故!追突されたときの注意点や事故を防ぐ方法を解説

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クリープ現象の事故

クリープ現象とはアクセルペダルを踏まなくても車が進む現象のことで、ほとんどのAT車に起こります。具体的には、シフトレバーをニュートラルやパーキングに入れずにブレーキペダルから足を離すと車が進行する現象です。クリープ現象による事故は信号待ちや渋滞中に起こりやすいとされています。

クリープ現象による追突事故はそこまで速度が出ていないので、損害の程度が比較的軽いものが多いです。しかし「軽く車が当たっただけ」と侮らず、警察に通報し、病院で診察を受けることが重要となります。適切な対応をしなかった場合、損害賠償請求でもめる可能性が高くなってしまうのです。

本記事では、クリープ現象による事故にあったあとの対応、クリープ現象の原理、クリープ現象による事故を防ぐ工夫を解説しています。クリープ現象による事故の被害にあった方、安全運転のためクリープ現象の理解を深めたい方は、ぜひご一読ください。

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クリープ現象による事故にあったら?解決までの注意点

クリープ現象による事故で怪我をした場合、まずは警察への通報などの初期対応をし、病院での治療を経て、加害者側との示談交渉で示談金の金額などを決めていくことになります。

交通事故の流れ

交通事故の被害者が解決までにすべき対応については、『交通事故被害者がすべき対応の流れ』の記事でまとめているため、ご参照ください。

クリープ現象による追突事故では、事故発生から加害者側との示談交渉までに注意すべきポイントが多くあります。ひとつずつ確認していきましょう。

(1)必ず警察に通報する

クリープ現象による追突事故の被害にあったら、まずは怪我人の救護と現場の安全確保を行います。その後、必ず警察に通報しましょう。

クリープ現象による追突事故の場合、「軽く車が当たっただけなので通報しなくてもよいだろう」と判断する方もいますが、警察への通報は道路交通法で定められた義務です。これを怠った場合、罰則として3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます。

なお、怪我をしている場合は物損事故ではなく人身事故として届け出るようにしましょう。
怪我をしているにも関わらず物損事故として届け出た場合、慰謝料を受け取れなかったり、事故状況を証明する記録が簡易なものしか作成されなかったりするリスクがあります。

また、自身が加入している保険会社にも連絡しておきましょう。
このとき、使える保険をあわせて確認することをおすすめします。状況によっては、「人身傷害補償保険」「弁護士費用特約」といった被害者自身の保険も利用する可能性があるためです。

当事者間で示談することは、のちのちのトラブルの原因にもなるため避けましょう。

(2)痛みがなくても病院で診察を受ける

事故直後の対応が終わったら、すぐに病院で診察を受けましょう。
痛みなどの自覚症状がない場合も、必ず医師の診察を受けることが重要です。

事故の直後は受傷していても興奮していて痛みを感じないケースも多いです。また、むちうちは事故から一定時間が経過したあとに自覚症状が生じる場合もあります。

また、事故の発生から受診まで時間が空いていると、事故と症状の因果関係を疑われ、慰謝料や治療費などの支払いを受けられない可能性もあります。

クリープ現象による追突事故は、事故による衝撃が比較的軽いため、とくに事故と症状の因果関係が問題となりやすいです。加害者側から疑われる要因を減らすために、すみやかな受診が大切になります。

「本当に痛くないのに通院しても大丈夫?」や「念のために検査を受けた場合の費用はどうなるの?」など心配な方には、『交通事故で痛くないのに通院してもいい?痛くなくても検査すると不正請求?』の記事がおすすめです。痛くないのに通院してもよい理由や通院しないリスクなどについて詳しく解説しています。

また、むちうちはレントゲンではわからないことも多いとされていますので、関連記事『【お悩み解決】むちうちはレントゲンでわかる?MRIを受けるべき理由あり』も参考にして、MRI検査の受診も検討してみてください。

(3)治療費の打ち切りを安易に受け入れない

事故によって怪我を負っていた場合は、医師から「完治」または「症状固定」と診断されるまで治療を続けます。症状固定とは、これ以上治療しても症状の改善が見込めない状態のことです。

もし、加害者側の任意保険会社から病院に直接治療費を支払ってもらう「任意一括対応」を受けていた場合、治療の途中で「そろそろ治療費の支払いを打ち切ります」と打診されることがあります。

このとき、治療費打ち切りを安易に承諾し、それに伴って治療をやめることは避けるようにしましょう。

治療費打ち切りにともなって治療をやめると、本来なら治るはずの症状が治らない可能性があるほか、慰謝料が低額になる、後遺症が残った場合に「後遺障害認定」を受けづらくなるなどのリスクがあります。

治療費打ち切りを打診されたときの対応

保険会社から治療費の打ち切りを打診されたら、まずは医師に完治または症状固定の時期を確認しましょう。そのうえで、治療の継続が必要ならば、保険会社と交渉していくことになります。

保険会社が治療費支払いの延長を受け入れないのであれば、交通事故に精通した弁護士に相談することがおすすめです。弁護士であれば、明確な根拠をもとに効果的な交渉を行えます。

治療費打ち切りについては、関連記事『交通事故の治療費打ち切りとは?延長交渉や治療の続け方を解説』でより掘り下げて説明しています。交渉したにも関わらず強引に治療費を打ち切られてしまったときの対応も紹介しているので、ぜひご一読ください。

(4)過失割合が10対0になったら示談交渉に注意

過失割合とは、「交通事故が起きた過失(責任)が加害者と被害者にそれぞれどれくらいあるかを表す割合」のことです。被害者側にも過失割合がついた場合、その割合分、受け取れる慰謝料などが減額されます。これを「過失相殺」と言います。

クリープ現象による追突事故では、過失割合は「加害者:被害者=10:0」になることが多いでしょう。被害者側に過失割合がつかなかったときは、示談交渉が難しくなる傾向があります。その理由は以下のとおりです。

  • 過失相殺による減額が行えない分、保険会社がよりシビアな態度で交渉に臨んでくるから
  • 被害者側の過失がないと、被害者が加入している保険の「示談代行サービス」が利用できず、被害者自身で交渉する必要があるから

多くの場合、加害者側の任意保険会社は相場よりも低い金額を提示してきます。慰謝料などの増額を受け入れてもらえないときは、弁護士を立てることを検討しましょう。法律の専門家である弁護士が交渉すれば、保険会社も被害者側の主張を無下にはできません。

「損害額が少ないので弁護士に頼むとかえって損をしないか不安」という方には、弁護士費用特約を使って保険会社に弁護士費用を負担してもらうことをおすすめします。弁護士費用特約の使い方やメリットについては、『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。

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(5)事故と症状の因果関係を否定される可能性もある

クリープ現象による追突事故特有の注意点として、事故の衝撃が比較的少ないため、加害者側から事故と症状の因果関係を否定されやすいことがあげられます。事故と症状の因果関係を否定されると、示談金を受け取ることができません。

事故と症状の因果関係を否定されないためには、以下のような対処が効果的です。

  • 警察に人身事故として届け出、「実況見分調書」などの詳細な刑事記録を作成してもらう
  • 事故による車の損傷を写真にとっておき、事故の衝撃を示す証拠とする
  • 事故後すみやかに病院で診察を受け、医師に診断書を作成してもらう
  • MRIやCT、レントゲンなどの他覚所見を得る
  • ジャクソンテストなどの神経学的所見を得る
  • 完治・症状固定まで定期的に病院で治療を続け、症状の一貫性・常時性を訴える
  • 整骨院で診察を受ける場合は医師から許可を得る など

また、各法律事務所が実施している無料法律相談を利用し、弁護士からアドバイスを受けてもよいでしょう。
交通事故に精通した弁護士であれば、事故の態様や症状・治療の状態から、事故と症状の因果関係を認めてもらうことが可能か検討し、適切な対策をとることができます。

そもそもクリープ現象とは?

そもそも、クリープ現象とはどのようなもので、なぜ起こるのでしょうか。
ここからは、クリープ現象が起こる仕組みや、クリープ現象でどれくらいのスピードが出るのかを解説していきます。

クリープ現象とは車がアクセルを踏まなくても進むこと

クリープ現象とは、車がアクセルペダルを踏んでいなくてもゆっくりと進んでしまう現象のことです。

クリープ現象は、AT車でシフトレバーをP(パーキング)やN(ニュートラル)に入れず、ブレーキペダルやサイドブレーキを外してしまったときに発生します。MT車、CVT車、DCT車、ハイブリッド車、電気自動車では基本的に発生しません。

なお、クリープ(creep)とは英語で「忍び寄る」という意味です。

クリープ現象はAT車の機構が原因で起こる

クリープ現象が起こる仕組みには、AT車の機構が関与しています。

AT車ではエンジンの動力をタイヤに伝える際に「トルクコンバータ」という装置を用います。トルクコンバータは動力の伝達にオイルを用いているため、エンジンがかかっていると、動力が緩やかにトルクコンバータを通じてタイヤに伝わってしまいます。そのため、クリープ現象が発生するのです。

一方、MT車ではエンジンの動力をタイヤに伝える際に「クラッチ」という装置を用います。クラッチはトルクコンバータと異なり、物理的に動力を遮断できるため、クリープ現象は発生しません。

クリープ現象では時速5km~10km程度の速度が出ることが多い

クリープ現象の速度は、車種によって異なりますが、平均すると時速5km~10km程度であるとされています。

ただし、エアコンをつけているなどアイドリング中のエンジン回転数が上がっている状態だと、上記よりも速度が上がることがあるので、注意が必要です。

クリープ現象を使えば微速で走行することができるので、以下のような場合に活用することも可能です。

  • 発進時にクリープ現象を利用し、燃費を抑える
  • 駐車時にクリープ現象を利用し、常にブレーキペダルに足を置くことで踏み間違いを防ぐ
  • 渋滞中に急発進しないよう、クリープ現象を使って走行する

ただし、上記のようにクリープ現象を活用するときは、事故を防ぐために、ブレーキペダルの上に足を置いてすぐに停止できるようにしておきましょう。

クリープ現象による事故を防ぐためには?

クリープ現象の仕組みがわかったところで、次にクリープ現象による事故を防ぐための対処法を紹介します。

(1)停止中はブレーキペダルをしっかり踏む

基本的なことではありますが、停止中はブレーキペダルから足を離さず、しっかり踏み込んでおくことは、クリープ現象による事故を防ぐために非常に大切です。

クリープ現象による追突事故は、渋滞や信号待ちのときに考え事をしていてブレーキから意識がそれたり、荷物をとろうとしてブレーキから足が外れたりしたときに発生することが多いです。

また、駐車場などでクリープ現象を使って車を進ませる場合も、歩行者が飛び出してきたり前の車がいきなり停止したりしても対応できるよう、常にブレーキペダルに足を置いておくことを忘れないようにしましょう。

(2)シフトレバーとサイドブレーキを活用する

ブレーキペダルだけで車を制御していると、渋滞が続いているときなどは集中力が途切れてしまい、事故につながりがちです。

そのような場合は、シフトレバーをN(ニュートラル)に入れ、サイドブレーキを引いて、クリープ現象が発生しない状態にすることで、不注意による事故を防ぐことができます。

ただし、シフトレバーとサイドブレーキを使用して停車していると、発進時にレバーを操作する必要があるため、誤ってR(リバース)に入れてしまうといった操作ミスに注意しなければなりません。

周囲の状況を見て、すぐに発進する可能性がある場合はブレーキペダルを用いるなど、臨機応変に使いわけるようにしましょう。

なお、シフトレバーをニュートラルに入れているだけの状態だと、坂道では車が動いてしまいます。サイドブレーキの利きが甘いことも考えられるので、あわせてブレーキペダルも踏んでおくことをおすすめします。

(3)車間距離を十分に空ける

クリープ現象による事故でよくあるものは、信号待ちや渋滞の際にブレーキペダルから足を離してしまい、前の車に衝突してしまったといったケースです。

誤ってブレーキペダルから足を離してしまったとき、前の車との車間距離が短いほど、対応が間に合わずに事故につながる可能性が高くなります。そのため、車間距離を十分に空けておくことが事故を防ぐためには有効です。

具体的にどの程度車間距離を空けておけばよいかは、停止場所の勾配や路面状態などによって異なるため、一概には言い切れません。教習所では「前の車両のナンバープレートが見える距離」「前の車両の後輪と路面の接点が見える距離」といったように指導されていることも多いですが、状況に応じて慎重に検討しましょう。

まとめ

クリープ現象による事故は損害が比較的軽微なものが多いため、警察に通報せず、当事者同士で解決を図ろうとする方も少なくありません。

しかし、交通事故が起こったら警察に通報するのは法律で定められた義務です。のちのちのトラブルを避けるためにも、事故が起こったらすぐに110番通報をするようにしましょう。

また、事故直後は自覚症状がなくても病院で診察を受けることが重要です。あとから痛みが出てきた場合、事故から日を置いて受診すると、加害者側に治療費や慰謝料などを支払ってもらえない可能性があります。

クリープ現象による事故は、「信号待ちや渋滞中にうっかりブレーキペダルから足を離してしまった」といった状況でよく発生しています。AT車を運転する方は、シフトレバーやサイドブレーキを併用する、車間距離を十分に空けるなどの工夫をし、安全運転を心がけましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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