交通事故で逮捕されるケースを紹介|逮捕後の流れとすべきことも解説
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交通事故で加害者が逮捕される可能性低く、特に物損事故や被害者のケガが軽症だった事故では在宅のまま捜査が進むことが多いでしょう。
一方で、被害者が死亡・重体になるような重大事故や、ひき逃げ・飲酒運転など悪質性の高い事故では、逮捕される可能性が高くなります。
また、逮捕される場合であっても必ずしも現行犯逮捕になるとは限りません。逮捕されずに家に帰れたとしても、後日逮捕されることがあるのです。
交通事故の場合、具体的にどのような場合に加害者が逮捕されるのか、逮捕された後はどうなるのか、見ていきましょう。
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交通事故で現行犯逮捕されるケースを紹介
交通事故を起こした場合には、以下のような事実が認められると、事故現場において現行犯逮捕となる可能性があります。
- 被害者が重傷を負った、死亡したなど大きな被害を受けている
- 加害者が飲酒や無免許などの悪質な運転により交通事故を起こした
- 加害者が逃亡・証拠隠滅の恐れがある
(1)被害者の身体に大きな被害が出ている
交通事故で人を轢いてしまい、被害者が重傷を負ったり、死亡したという人身事故の場合では、加害者の責任の重さや事故の重大性から、逮捕される可能性が高くなります。
ただし、被害者が死傷していない物損事故であっても、逮捕されないとは言い切れません。
以下で詳しく述べていますが、交通事故の態様が悪質な場合は、物損事故でも逮捕されやすくなるでしょう。
(2)悪質性がある|飲酒・無免許など
飲酒運転や無免許運転、スピード違反など、明らかな危険運転で交通事故を起こした場合、その悪質性から加害者には重い責任があると判断されます。
よって、人身事故だけでなく物損事故であっても逮捕される可能性が高くなります。
法律を守り安全運転をする意識が低いという理由から、逮捕して身柄を拘束した方が良いと判断されやすくなるでしょう。
(3)加害者が逃亡・証拠隠滅する可能性がある
加害者が逃亡や証拠隠滅をする可能性がある場合も、逮捕される傾向にあります。
交通事故後は、起訴・不起訴や有罪・無罪などを判断するために必要な証拠集めや取調べがおこなわれます。
しかし、その間に被害者が逃亡したり証拠隠滅をしたりすると、適正な捜査ができません。
そのため、逃亡や証拠隠滅ができないよう、逮捕して身柄を確保しておくのです。
警察に逃亡・証拠隠滅する可能性があると判断されやすいのは、次のような場合です。
- 証言が二転三転している
- 自分に都合の良い方向に話を進めようとする姿勢から、証拠隠滅の可能性が高いと判断される
- 事故直後の警察への態度が攻撃的
- 責任感や罪悪感の薄さから、逃亡・証拠隠滅の可能性が高いと判断される
交通事故を起こしても、自身は交通違反を行っておらず、問題がないと思っていると、警察や事故の相手方への態度が悪くなってしまう恐れがあります。
このような場合に警察への捜査に非協力的であったり、相手方に対して攻撃的な態度をとると、逮捕の要因になる恐れがあるため、自身が正しいと思っていても、丁寧な対応を行うことを心がけてください。
現行犯逮捕されなくても後日逮捕の可能性がある
交通事故で後日逮捕されるケース
交通事故で逮捕される場合、事故直後に現場で警察に逮捕される「現行犯逮捕」が多いです。
しかし、逮捕されずに帰宅できても、後日逮捕される可能性は捨てきれません。
後日逮捕される可能性があるのは、次のようなケースです。
- 事故直後に警察に連絡せず、被害者と解散した
- ひき逃げ・当て逃げをした
- 嫌疑の相当性と逮捕の必要性が後から確認された
一つずつ解説していきます。
事故直後に警察に連絡せず被害者と解散した
交通事故が起きても、それほど重大な事故でなければ警察に連絡せず、被害者とお互いに謝り合って解散してしまうことがあります。
この場合、あとから被害者が警察に連絡し、加害者逮捕に至ることがあります。
とくに、加害者が被害者に対して警察に連絡しないよう説き伏せていた場合は、「警察に通報されたと知ると逃亡や証拠隠滅をする可能性がある」として逮捕される可能性があるでしょう。
被害者が後から警察に連絡するケースとして考えられるのは、次のような場合です。
- 被害者が、警察への連絡の必要性を知った
- 事故を警察に連絡することは道路交通法で定められた義務
- 事故を警察に連絡しないと、損害賠償請求や保険金請求で必要な「交通事故証明書」が発行されない
- 被害者に、あとからケガが発覚した
- 人身事故の場合は、警察に連絡することで物損事故の場合よりも詳細な捜査がおこなわれる(実況見分捜査)
- 実況見分捜査の結果をまとめた書類は示談交渉時に重要な証拠となるため、実況見分捜査をしてもらうために警察に連絡するケースもある
- とくにむちうちは、事故から数日経って症状が出てくることも多い
交通事故が起きた際に警察へ連絡するといった通常行うべきことを行わないと、逮捕の可能性が増加してしまいます。
交通事故が起きた際に行うべき行為については『交通事故後は警察への報告義務がある|伝える内容や連絡後の流れも解説』の記事で確認可能です。
ひき逃げ・当て逃げをした
ひき逃げや当て逃げをした場合、後日加害者が特定されて逮捕されることがあります。
すでに解説した通り、ひき逃げや当て逃げでは加害者が一度逃げているので、再び逃亡する可能性があるとして逮捕されやすいです。
逮捕された後の刑事罰のことを考えれば、自ら出頭する方が望ましいでしょう。
嫌疑の相当性と逮捕の必要性が後から確認された
警察は、「嫌疑の相当性」と「逮捕の必要性」が認められる場合に交通事故加害者を逮捕します。
- 嫌疑の相当性
加害者であるという嫌疑が十分にあると判断されること - 逮捕の必要性
事故の悪質性や、逃亡・証拠隠滅の可能性などから、逮捕して身柄を確保する必要性があると判断されること
よって、たとえ事故直後に警察が現場に来ていても、嫌疑の相当性や逮捕の必要性が確認されなければ、逮捕されずにそのまま帰宅できるのです。
しかし、あとから軽微な事故ではない、事故態様が悪質であるといった判断され、逃亡・証拠隠滅の可能性が出たために逮捕状が発行されれば、後日逮捕される可能性があります。
後日逮捕のされ方(1)警察に呼び出される
後日逮捕のされ方としてまず挙げられるのは、警察に呼び出されるパターンです。
逮捕のために呼び出されるというよりは、聞き取り捜査のために警察署へ呼び出され、捜査の結果、そのまま逮捕されるという形になるでしょう。
しかし、警察から呼び出されたからといって、必ずしもそのまま逮捕されるわけではありません。実際には、取り調べのあと帰宅できるケースも多いです。
警察からの呼び出し後に逮捕されないための対処法は、以下の
通りです。
- 聞き取り捜査では感情的にならない
- 感情的になると、身柄を確保しておかないと逃亡すると判断される可能性がある
- 聞き取り捜査では一貫性のある証言をし、嘘をつかない
- 証言が二転三転したり嘘をついたりすると、証拠隠滅の可能性があるとして逮捕されやすくなる
- 警察からの呼び出しを無視しない
- 罪悪感の低さや不誠実さ、逃亡の可能性から身柄を確保しておくべきと判断され、逮捕されやすくなる
後日逮捕のされ方(2)警察が逮捕しに来る
ある日警察が家にやってきて、そのまま逮捕されることもあります。
時間帯としては、加害者が家にいる可能性の高い早朝が多いですが、早朝以外の時間もあり得ます。
逮捕の際に暴れたり逃亡を図ったりすると、のちに裁判になった場合に不利に働く可能性があるので、注意しましょう。
逮捕されなくても起訴され刑罰が下る可能性はある
たとえ交通事故後に逮捕されなくても、逮捕された場合と同じように起訴され、刑事罰が下る可能性はあります。
逮捕されなくても、いつも通りの生活と並行して警察・検察による取り調べ・捜査がおこなわれ、起訴・不起訴や有罪・無罪が決められるのです。
これを「在宅捜査」と言います。
よって、逮捕されなかったからといって、無罪になったわけではない点は押さえておきましょう。
交通事故で逮捕されたら?その後の流れと刑罰
交通事故による逮捕後の流れ|取調べ・起訴・裁判
交通事故で逮捕されると、起訴・不起訴を判断するために、以下の流れで取り調べや捜査がおこなわれます。
- 留置所で最長48時間生活しながら、警察の取り調べを受ける。
※留置所とは、都道府県警察内に設置されている施設。 - 検察に送致される。
- 検察にて取り調べを受け、24時間以内に起訴・不起訴が決められる。
- 24時間以内に起訴・不起訴を判断できない場合は、引き続き取調べ・捜査をするため、検察が裁判所に勾留請求をする。
- 勾留請求が認められれば、原則10日間、最長20日間、拘置所に留まり検察の取り調べを受ける。
※拘置所とは、法務省の施設機関。 - 検察が起訴・不起訴を決める。起訴されればその後裁判に入る。
- 裁判にて有罪か無罪かが決められる。
一般的な交通事故では送致後、24時間以内に起訴・不起訴が決められることが多く、悪質な事故でなければ勾留されることはあまりありません。
不起訴になれば身柄は解放されますし、起訴された場合でも、逃亡・証拠隠滅の恐れがないと判断されれば釈放されることがあります。
勾留された場合は逮捕以降、最長で23日間、身柄を拘束されることになります。
勾留の末に不起訴になると身柄が解放されますが、起訴されれば裁判まで身柄は拘束されたままです。
ただし、保釈金などを支払えば、裁判前に釈放されることもあります。
不起訴なら前科も刑事罰もなし|不起訴の目指し方
逮捕されても、不起訴処分になれば身柄は解放されますし、裁判が開かれることも前科が付くこともありません。
不起訴処分と判断されるのは、次のケースです。
- 犯罪の嫌疑なし
被疑者が犯罪を犯していないことが判明した - 犯罪の嫌疑不十分
被疑者が犯罪を犯した疑いはあるが、立証するための十分な証拠がない - 起訴猶予処分
被疑者が犯罪を犯したものの、あえて起訴しない
交通事故を起こして逮捕された場合は、一般に嫌疑なしや嫌疑不十分に該当する可能性は低いでしょう。
そのため、不起訴処分を獲得するには、起訴猶予処分を目指すことになります。
起訴猶予処分を目指すポイント
起訴猶予処分とは、起訴して裁判にかければ有罪になるであろう事案について、検察官がさまざまな事情を考慮して、起訴しないとする処分です。
考慮される事情としては被疑者の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の状況などがあります。
起訴猶予処分を獲得するために重要なのは、以下の2点です。
- 真摯に反省していることを検察官に理解してもらうこと
- 被害者への謝罪と賠償が済んでおり、示談が成立していること
交通事故の加害者が起訴猶予処分を獲得するには、事故後とるべき対応をきちんととっていたか、負うべき責任を果たしているか、被害者に対して適切に示談を行っているかなどが影響します。詳しくは『交通事故加害者がすべき対応は?裁判所の呼び出しと事故で負う責任も解説』の記事を確認してください。
起訴され有罪になった場合の刑事罰
交通事故で起訴され有罪になった場合、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪、道路交通法違反で罪に問われることが多いです。
それぞれの場合に科される刑事罰は、次の通りです。
- 過失運転致死傷罪
- 自動車を運転するにあたり必要な注意を怠り、人を死傷させた罪
- わき見運転、信号無視、前方不注意、ながら運転など
- 7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
- 危険運転致死傷罪
- 悪質で危険な運転により人を死傷させた罪
- 飲酒・薬物使用の状態での運転、スピード超過での運転、妨害目的の割り込み・幅寄せ・急停車など
- 被害者が死亡した場合は1年以上の有期懲役、負傷した場合は15年以下の懲役刑
- 道路交通法違反
- 酒酔い運転:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 酒気帯び運転:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(酒酔い運転と酒気帯び運転の違いや、刑罰の対象者に関してはこちら)
- 過労運転:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 無免許運転:2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 救護義務違反:10年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 警察への報告義務違反:5年以下の懲役または50万円以下の罰金
裁判で有罪判決が出ると、前科がつきます。執行猶予がついた場合や、略式起訴で罰金になった場合も同様です。
前科は警察、検察、本籍地の市区町村などのデータベースで保管されます。前科が一般の方に向けて公開されるわけではありませんが、情報自体は抹消されずにデータベースに残ります。
前科が付くと、特定の職業につくことができない、他の罪で有罪となった場合に刑罰が重くなる可能性があるといった不利益が生じてしまうでしょう。
交通事故で自分や家族が逮捕されたら
逮捕直後に外部と接触を図るなら弁護士を立てる
交通事故の加害者として逮捕された場合、基本的に家族や友人とは勾留請求するかどうかが決められるまで接触できません。
勾留請求の有無が決まるまでには警察と検察の取り調べを受けなければならず、最長72時間、つまり3日間かかります。
ただし、弁護士なら逮捕直後でも自由に交通事故加害者と面会できます。
よって、以下の場合は弁護士を立てることが必要です。
- 自分が逮捕されたので、早く今後の流れやアドバイスを詳しく聞きたい。
※逮捕された本人でも、警察や検察、裁判官に弁護士を呼んでほしいというと、無料で弁護士に来てもらえます。 - 家族が突然逮捕されたので、少しでも早く様子を確認したい。何か力になりたい。
早期釈放・起訴猶予処分を目指す
逮捕後は、早期の釈放・起訴猶予処分を目指していきます。
早く釈放されれば仕事などへの影響が少なく済みますし、起訴猶予処分になれば前科が付いたり刑事罰を受けたりすることもありません。
ただし、早期釈放や起訴猶予処分を目指すためには、以下の対策が必要です。
- 逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを認めてもらう
- 勾留が決まってしまった場合は取り消しを請求する
- 起訴決定よりも前に、被害者との示談を成立させる
- 危険運転ではなかったことや、事故の悪質性が低いことを証拠を示しながら主張する
上記の対策は、交通事故加害者本人やご家族では困難であることが多いので、弁護士を立てる方が良いでしょう。
起訴されてしまったら|保釈・減刑を目指す
起訴されてしまった場合には、保釈請求を行い、保釈金を収めることで釈放されます。
保釈により在宅事件となり、住居の制限などの制約が課されます。
裁判所の呼出しに応じなかったり、保釈の際に課せられた条件に違反した場合は、保釈金が没収されたうえで、再度身柄が拘束されてしまうので、注意しましょう。
また、起訴となってしまった場合には、少しでも刑の重さを軽くできるように動くこととなります。
罰金刑で終わることができれば、罰金を支払うことで、判決が出た後に身柄を拘束されることはありません。
減刑を実現するためには、弁護士による適切な弁護活動が欠かせないでしょう。
まとめ
交通事故で逮捕されるかどうかは、事故の態様と結果による影響が大きいです。態様が悪質な場合や結果が重大な場合には、交通事故で逮捕される可能性が高くなります。
交通事故で逮捕されてしまった場合は、不起訴処分になれば前科はつきません。専門家のアドバイスを受けるために、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了