交通事故で警察を呼ばず示談をしてはならない理由と正しい対処方法

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警察呼ばずに示談はダメ!

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

交通事故に遭うと、相手から「警察を呼ばずに示談してほしい」と頼まれるケースが少なからず存在します。また「警察が示談交渉のサポートをしてくれる」と思っている方もおられるかもしれません。

しかし、警察は示談交渉に関与してくれませんし、事故現場で相手と示談するのもやめましょう。

今回は交通事故で警察を呼ばずに示談するリスクや正しい対処方法を弁護士が説明します。交通事故が心配な方、事故に遭われてお困りの方はぜひ参考にしてみてください。

警察は交通事故の示談をサポートしてくれない

民間人同士のトラブルに警察は介入しない

一般に、「交通事故に遭ったら、警察が相手との示談交渉を助けてくれる」と思われているケースがあります。「過失割合は警察が決めてくれる」と考えている方もいるかもしれません。

しかし、警察は交通事故の示談交渉をサポートしません。示談交渉は民間人同士のトラブルです。警察は犯罪者を取り締まるための組織であり、民間のトラブルには介入しません。民間のトラブルには介入しないことを「民事不介入」といいます。

過失割合や賠償金の決定に警察は関与しない

同様に、警察が過失割合を決定することもありません。交通事故証明書を見ても過失割合に関する記載は無いので誤解のないようにしましょう。

過失割合や賠償金の金額は、あくまで被害者と加害者が自分たちで話し合って取り決めるものです。自動車保険(任意保険)に入っていれば、保険会社が示談交渉を代行してくれる可能性がありますが、警察は関与しません。

警察は交通事故の示談をサポートをしないという基本事項を頭に入れておきましょう。

誰にも示談のサポートをしてもらえず不安で仕方がないという方は、弁護士に相談することを検討してみてください。
アトム法律事務所では交通事故の被害者の方を対象に無料の弁護士相談を行っています。
相談予約は24時間365日いつでも受け付けております。気軽にお問い合わせください。

事故に遭ったら警察を呼ぶ義務がある

交通事故に遭ったら、必ず警察を呼ぶ必要があります。

警察を呼ばないのは道路交通法違反

交通事故に遭うと、ときどき相手が「警察を呼ばずにこの場で示談しましょう」と言ってくるケースがあります。大したケガをしていなかったり、ちょっとした物損事故だったりすると、「示談してもいいか」と考えてしまう方もいるでしょう。

しかし交通事故後に警察を呼ばないのは「法律違反」です。

道路交通法では、「交通事故の当事者(車両の運転者や同乗者)は、事故後すぐに警察へ報告しなければならない」と定められています(道路交通法72条後段)。報告すべき事項は以下のとおりです。

  • 交通事故が発生した日時、場所
  • 死傷者の有無や負傷の程度
  • 物損の有無や損壊の程度
  • 車両への積載物
  • 事故後に講じた措置について

報告義務が課されるのは加害者だけではありません。車両の運転者や同乗者にも警察への報告義務が課されるので、被害者の立場であっても報告しなければならないのです。また、人身事故の場合だけではなく、物損事故であっても報告義務が課されます。

たとえ、軽い事故でも、加害者に頼まれて高額な示談金を提示されても、警察を呼ばずに済ませてはなりません。

報告義務を怠った時の罰則

警察を呼ばないと、道路交通法違反によって処罰されるリスクも発生します。罰則は「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金刑」となっています。

交通事故の加害者が警察を呼びたくない理由

交通事故の加害者は、なぜ警察を呼ばずにその場で示談したがるのでしょうか?

ここからは、その場で示談したがる「よくある動機」をご紹介します。

刑事事件にしたくない

1つは、刑事事件の被疑者になりたくない、前科をつけたくない事情です。
交通事故を起こすと「過失運転致傷罪」によって処罰される可能性があります。有罪判決を受けると一生消えない前科がつくので、さまざまな不利益が予想されるでしょう。

起訴までされなくても警察や検察で事情聴取を受け、被疑者として捜査を受けることになるので面倒です。

このような「刑事事件」に巻き込まれたくないので、加害者は事故を警察に報告せずにその場で示談しようとする傾向があります。

免許の点数を加算されたくない

人身事故を起こすと、加害者の「免許の点数」が加算されます。足される点数は被害者の受傷状況によって異なりますが、場合によっては免許停止、取消になる人もいるでしょう。飲酒運転しているケースではなおさら加算点数が多くなり、免許を再取得できない欠格期間も長くなってしまいます。

警察へ報告されると免許の点数が加算されて不利益を受けるので、その場で示談して納めようとする加害者が少なくありません。

仕事を失いたくない

3つ目によくあるのが、タクシー運転手や宅配、トラック運送などの職業ドライバーです。

職業ドライバーは、事故を起こすと「無事故手当」がつかないので給料が下がってしまいます。また、会社から注意を受ける可能性もありますし、事故が度重なると懲戒される危険も発生するでしょう。免許の点数が加算されて免許停止や取消になると、職を失ってしまうリスクも発生します。そういった事情から、一般の人以上に「警察を呼びたくない」と考える強い動機があるのです。

職業ドライバーから「生活がかかっているから示談してください」などと頼み込まれても、応じてはなりません。

急いでいる、面倒ごとに巻き込まれたくない

交通事故を起こしてしまったら、誰でもあせってしまうものです。警察での事情聴取、保険会社を巻き込んだ損害賠償の示談交渉など、考えると嫌になってしまう人もたくさんいるでしょう。また単純に急いでいて、その場で警察を待って対応するのが面倒、という人もいます。

その場で示談してしまえば、後々の面倒ごとを避けられると考えて、その場での即時の示談を提案してくる人が少なからず存在するのです。

以上のように、「警察を呼びたくない、その場で示談したい」理由はほぼ100%、加害者側の事情です。被害者にとって良いことはひとつもありません。

事故現場で加害者から「示談しましょう。警察は呼ばずに済ませましょう」などといわれても、応じないでください。

警察を呼ばない場合に発生するリスク

もしも加害者のいうとおりにして警察を呼ばなかったらどのような問題が発生するのでしょうか?
警察を呼ばないことで発生するリスクを説明します。

法律違反となり、刑事罰を受ける

交通事故当事者が警察へ報告するのは法律上の義務です。報告しなければ法律違反となり、処罰される可能性があります。

交通事故証明書が発行されず、保険金を請求しにくくなる

交通事故を警察へ報告しないと「交通事故証明書」が発行されません。交通事故証明書は事故が発生した事実を証明するための重要な書類です。保険金を請求するときにも提示を求められるケースが多々あります。

事故証明書がなくても保険金を受け取れる可能性は場合によってありますが、手続きがスムーズに進まず受け取り時期が遅くなり、余計な手間がかかるでしょう。無駄な労力と時間をかけないため、事故を警察に報告しておくべきといえます。

交通事故証明書の記載内容や入手方法について知りたい方は『交通事故証明書はなぜ必要?どうやって入手する?申請方法と記載内容』の記事で確認可能です。

実況見分が行われず、事故の状況を証明しにくくなる

人身事故が発生すると、警察は事故現場で「実況見分」を行います。実況見分とは、事故状況を詳しく確認し、記録に保存する手続きです。実況見分の結果は「実況見分調書」という書類に残されます。

実況見分調書は被害者にとって重要な書類となります。加害者と示談交渉するときに「過失割合」について意見が合わないとき、実況見分調書に書かれた内容によって事故状況を特定し、過失割合を適正に定められるケースが少なくないためです。

交通事故後に警察を呼ばないと実況見分調書が作成されないため、後に事故状況が問題となったときに自分の主張の正当性を証明できない可能性が高くなるでしょう。

意外と大ケガをしていた場合、必要な補償を受けられなくなる

事故現場では「ケガをしていない」「ただの物損事故だ」と思っても、意外と重いケガを負っているケースがあるものです。たとえばむちうちになった場合、その場では痛みを感じない方が少なくありません。

事故現場で適当に示談金をもらって警察を呼ばずに済ませてしまったら、後で重大な症状が出てきても補償を受けられない可能性が高くなります。治療費は自腹となり休業損害も受けられず、泣き寝入り、という事態になりかねません。

事故後に痛みが出てきた場合の対応については、こちらの関連記事『交通事故であとから痛みが出てきたらどうする?すべき手続きと慰謝料について解説』で詳しく解説しています。

口約束で示談金が支払われない

交通事故現場で加害者側から「今は手持ちがない。〇〇万円支払うので、口座番号を教えてほしい」などといわれて示談してしまい、その場でお金を受け取らなかったとしましょう。

そのような口約束では、示談金が払われる保障がまったくありません。そのままお金は払われず相手の連絡先もわからず泣き寝入りするしかなくなる可能性が高まります。

交通事故後、警察を呼ばないと上記のような大変なリスクが発生します。絶対にその場で示談してはなりません。相手が泣き落としにかかってきても高圧的な態度ですごんできても、かまわずすぐに110番通報しましょう。

その場で示談してはならない理由についてさらに詳しくは、こちらの関連記事『交通事故の示談はその場でしてはいけない|リスク回避についても解説』でも解説しています。

事故に遭ったときの正しい対処方法

交通事故に遭ったら、以下のように対応してください。

ケガ人を救護する

まずは事故によってケガ人が発生していないか確認しましょう。加害者だけではなく周囲の人が巻き込まれている可能性もあります。ケガ人がいたら危険のない場所へ運び、応急処置をしましょう。ケガ人の救護は交通事故を起こした人に課される重大な義務です。

ただし自分がケガをして動けないなら、無理に救護する必要はありません。加害者や周囲の人による救護を受け、救急車を呼んでもらいましょう。

事故現場を片付ける

交通事故を起こした当事者には、事故現場を片付けて二次被害を防ぐ義務もあります。

車を安全な場所へ寄せ、散らかったゴミや金属類などを片付けて三角表示板等を置き、後続車へ事故を知らせましょう。

必ず警察を呼ぶ

事故が起こったらすぐに警察を呼んで下さい。携帯で110番通報すると良いでしょう。

実況見分や事情聴取に対応する

警察がやってきたら、事情を聞かれます。氏名、住所、連絡先、加入している保険会社名など確認されるので、正しく答えましょう。相手がどのように答えているのかもみておくようお勧めします。

人身事故の場合、実況見分が行われます。その結果をもとに後に実況見分調書が作成されるので、事故の状況を正確に伝えて下さい。

事故の相手とも連絡先を交換しておくとよいでしょう。

まとめ

交通事故に遭ったら、必ずすぐに警察を呼びましょう。その場で示談してはなりません。

事故後、警察は示談交渉をサポートしてくれないので、自分たちで賠償問題を話し合う必要があります。トラブルになったら、弁護士によるアドバイスや示談交渉代行のサポートを受けると有利に解決できるものです。交通事故トラブルで困ったときには、1人で抱え込まずに弁護士までご相談ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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