評価損(格落ち)の請求方法は?評価損は保険会社に拒否されやすい?

更新日:

評価損(格落ち)

交通事故で車両が壊れたり傷ついたりした場合、修理代に加えて「評価損」という損害も請求できることがあります。評価損とは、事故にあったことで下ってしまった価値の差額です。

示談交渉において相手方の任意保険会社は、評価損の請求を認めないこともしばしばあります。しかし、適切に評価損という損害を丁寧に主張していけば、妥当な賠償が支払われる可能性が高まるでしょう。

本記事では、そもそも評価損とは何なのか、どのように評価損が算定されるのか、評価損を請求する際のポイントなどについて解説していきます。

評価損(格落ち)とは?

事故車両の修理で価値が下がる損害のこと

評価損とは、交通事故によって損壊した自動車を十分に修理したとしても、事故前よりも売却時の価格が下がってしまう損害のことです。さらに具体的にいうと、事故にあう前の売却価格と事故にあった後の売却価格の差額が評価損ということになります。

一般的に、一度でも事故歴や修理歴がついてしまうと車の価値は下ってしまうと考えられていることから、評価損は認められるべき損害といえるでしょう。

事故によって修理することがなければ、以下のような理由で車両価格が下がることもありません。

  • 十分な修理がされて不具合がなくとも、事故車両は経年的に不具合が発生しやすくなるため
  • 十分な修理がされても「隠れた傷があるかもしれない」と思われやすいため
  • 事故車両はそもそも縁起が悪いため

評価損とは、このような損害を補償するものなのです。

評価損は、交通事故で損害賠償請求できる費目のうちの一つで、物的損害に分類されます。損害賠償請求は、被った損害を補てんするために事故の相手方に対して行うものです。

交通事故における損害賠償請求とはそもそもどういったものなのか、評価損以外に請求できる費目にはどのようなものがあるのかなどについては、『交通事故の損害賠償請求とは?賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事が参考になりますので、あわせてご覧ください。

評価損の算定方法は複数ある

評価損の算定方法は複数あるのですが、用いられることが多いのは以下の方法です。

  1. 実際に要した修理費の1~3割程度を目安にする方法
  2. 車種・初年度登録から経過した年数・走行距離・事故による損傷部位・事故当時の価格などから総合的に判断する方法
  3. 事故前の売却予定額と、事故後の売却見込額の差額から判断する方法
  4. 日本自動車査定協会に査定してもらった「事故減価額証明書」から判断する方法

このうち、上記1つ目の修理費を目安にする方法が示談交渉では一般的です。

また、訴訟に発展した場合、裁判官は上記2つ目の総合的に判断する方法を用いるといわれています。

もっとも、評価損には確立された算定方法がありません。そのため、評価損が示談時にもめやすい費目とされる理由の1つといえるでしょう。

評価損の請求方法

保険会社と示談交渉する

交通事故により評価損が発生したら、相手方の保険会社と示談交渉して損害賠償請求していくことになります。

示談交渉とは、裁判によらず当事者同士の話し合いでトラブルを解決しようとする方法のことです。

交通事故においては、事故で生じた損害の内容や金額、過失割合などについて話し合い、最終的にどちらがどのくらいの示談金を支払うのか決めていきます。

交通事故における示談の基本的な情報については『交通事故の示談とは?交渉の進め方と注意点!示談の完全ガイド』の記事が参考になりますので、あわせてご覧ください。

保険会社は評価損を認めない傾向にある

事故で評価損が生じたとして損害賠償請求しても、相手方の保険会社が認めてくれるとは限りません。むしろ、示談交渉の段階では、評価損を認めないという強固な姿勢を保つ保険会社もいるといわれています。

交通事故における示談交渉において保険会社は、評価損に限らず支払う損害賠償金をできるだけおさえようと交渉してくるのが通常です。

ただし、示談交渉の段階でも、弁護士が介入すれば、評価損や妥当な損害賠償金を保険会社が認めてくれる可能性が上がります。保険会社は、弁護士が介入してくることによる裁判への発展を危惧しているからです。

弁護士が示談交渉に介入すれば、相手方の保険会社をけん制し、評価損や妥当な損害賠償金を手にしやすくなります。評価損を請求したい場合は弁護士に一度相談してみましょう。

ただし、物損事故のみである場合、弁護士に依頼することで、回収できた損害賠償金より弁護士費用の方がかかってしまう「費用倒れ」が生じてしまいかねません。費用倒れになるラインはどのくらいなのかについては『交通事故で弁護士に頼むと費用倒れになる金額はいくら?弁護士の必要性診断』の記事をご確認ください。

評価損の請求には損害の立証が必要

交通事故で受けた被害に関して、相手方に損害賠償する場合、交通事故と損害の間に因果関係があったことを立証していく必要があります。交通事故がなければ損害を受けることがなかったという因果関係に加えて、その因果関係が社会的に通常起こるであろう範囲内である相当性を立証せねばなりません。

しかし、評価損は実際に車両を売るタイミングではじめて損害がわかるものです。そのため、示談交渉の段階で評価損をそもそも認めるのか、認めるならどのくらいの金額にするかといった点が争いになりやすくなっています。

もっとも、車両の市場価格がもともと高ければ、損害賠償として評価損は認められやすいともいわれています。たとえば、評価損が認められやすいケースとしては以下の通りです。

  • 新車登録から間もなかった(最長でも2~3年以内)
  • 走行距離が短かった(概ね300km以内)
  • 高級車であった

高級車かつ、新車登録から間もなく走行距離が少なかったことで評価損が認められた判例を紹介します。

評価損が認められた判例

日産・GTRプレミアムエディション(国産限定スポーツカー、初度登録後3ヵ月、走行距離945km、新車購入価格834万円余)につき、リアフェンダーを修理した後もトランク開口部とリアフェンダーの繋ぎ目のシーリング材の形状に差があるなど、事故前と同じ状態には戻らなかったとして、リアバンパーの損傷等の修理費の50%相当の70万7739円の評価損を認めた

東京地判平23.11.25 自保ジ1864・165

交通事故で車両が傷つくと、直すための修理費用がいくらかかったのかは明示しやすく、損害賠償の対象となり得ることも立証しやすいですが、評価損については、損害を丁寧に立証していく必要があります。

評価損の請求が認められないケース

ローン返済中の車両だった

ローン返済中の車両であった場合、評価損の請求は基本的にむずかしいでしょう。

ローン返済中の場合、車両の所有者はローンを組んだ金融機関やローン会社などになります。ローン返済中に評価損の被害を被るのは所有者なので、車両を購入したとしても使用者は評価損を請求できません。

ローン返済中における評価損の請求は、過去の判例からみると判断がわかれるところではあります。しかし、基本的に使用者は評価損の請求権がそもそもないと考えられるのが一般的です。

もっとも、所有者である金融機関やローン会社から評価損の損害賠償請求権を使用者に帰属させる合意がなされることもあり、この場合は使用者でも評価損を請求できるようになります。

リース契約の車両だった

リース契約の車両の場合、評価損の請求はできません。車両の所有者はリース会社だからです。

リース契約の場合、使用者は車両を賃借しているに過ぎないので、使用者にはそもそも評価損は発生しません。

まとめ

交通事故の示談交渉で、評価損を損害賠償請求するハードルは高いです。

ただし、評価損が生じている点を丁寧に立証できれば、請求が認められる可能性は上がるでしょう。弁護士がついていれば、個人で交渉するより可能性をさらに上げることができます。

示談交渉でお困りの場合は、弁護士に相談してみましょう。

もっとも、物損事故の場合は、弁護士に依頼することで費用倒れとなるリスクがあることも理解しておく必要があります。費用倒れになってしまっては、被害者の負担が増えるばかりです。

弁護士費用の支払いや、費用倒れが心配な場合、まずは「弁護士費用特約」が利用できるか確認してみてください。弁護士費用特約があれば費用倒れは基本的に心配する必要がありません。ぜひ、アトム法律事務所の弁護士相談をご利用ください。

交通事故の無料法律相談
相談料 無料
毎日50件以上のお問合せ!

また、交通事故で怪我をした場合、慰謝料増額の余地があります。慰謝料増額の余地がどのくらいあるのかについても、アトム法律事務所の弁護士に聞いてみてください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

突然生じる事故や事件に、
地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。