死亡逸失利益を正当に受け取るために|高齢者・子ども・主婦のケースも解説

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交通事故で大切なご家族を失ってしまった方へ。
突然の不幸に直面し、ご家族の死と同時に経済的不安にも直面していませんか?

たとえば、保険会社から提示された賠償金が「こんなに少ないの?」と感じた場合、その違和感の原因の1つとして「死亡逸失利益」の算定が低く見積もられていることがあります。

死亡逸失利益とは、被害者が生きていれば将来得られたはずの収入を、賠償金として加害者に請求できる損害項目です。

本記事では死亡逸失利益とは何か、どうやって金額が算定されるのか、被害者の年齢・職業・立場(主婦・子ども・高齢者など)によってどう変化するのか、わかりやすく解説します。

また、保険会社の提示金額が適正なのかを判断する方法や、弁護士に相談することで損を回避し、適正な賠償を受け取るポイントについても詳しくご紹介します。

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死亡逸失利益とは?基本的な考え方と計算方法

死亡逸失利益とは、交通事故によって亡くなった方が、本来なら将来手にしていたはずの収入(職業収入や家事労働による利益)を、遺族が損害賠償として請求できるものです。

簡単にいえば、「被害者が生きていれば将来稼いでいたであろうお金」をいいます。

なお、ここから被害者自身の生活費分(自分で使うはずだった分)を差し引いた残額が、遺族に支払われる死亡逸失利益になります。

死亡逸失利益は以下の方法で算出されます。

死亡逸失利益の計算式

基礎収入 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 × 生活費控除率

死亡逸失利益の計算方法

用語が難しいと感じるかもしれませんが、できるだけ簡単にご説明します。

項目説明
基礎収入被害者の年収や見込収入(主婦なら労働価値、子どもなら将来の平均収入を想定)
ライプニッツ係数将来の収入をすぐに得られることから必要な調整のための係数(=中間利息控除)
生活費控除率被害者が生きていれば生じた生活費を控除するために必要(被害者の家族構成などにより判断)

たとえば、40歳で年収500万円、被扶養者が一人いるサラリーマンの死亡逸失利益は、基本的に以下のように算出されます。

500万円 × 18.3270(労働能力喪失期間27年) × 0.4(生活費控除率40%)=3665万4000円

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高齢者・子ども・主婦の死亡逸失利益

死亡逸失利益は、被害者がどういった立場だったかによって大きく変わります。以下は主なパターンです。

高齢者(年金受給者など)の場合

年金の内、老齢年金や障害年金の内の子や妻の加給分以外の部分などは、継続的な収入であるとして逸失利益が認められます。

また、高齢者の家事能力(たとえば、同居の配偶者を支えていた場合)も労働価値として評価対象です。

就労可能年数については、67歳までの年齢と、平均余命の2分の1のいずれか長期の方とされます。

ただし、年金に関しては生活費に費やされる割合が高いとして、生活費控除率が高めに設定されることが多いでしょう。

年金受給者に死亡逸失利益を認めた判例

交通事故により91歳で死亡した老齢基礎年金を受給していた被害者について、老齢基礎年金を基礎収入、生活費控除率を60%、平均余命を4.8年として、約58万円の死亡逸失利益を認めた。

※大阪地裁平成16年5月17日判決

主婦(専業・共働きを問わず)

裁判所や裁判基準では、専業主婦も経済的価値を持つと評価されており、厚生労働省公表の賃金センサス(女性全年齢平均賃金)を用いて基礎収入を設定します。

生活費控除率は30%程度が多く、適正に認定されれば高額になるケースもあります。

専業主婦に死亡逸失利益を認めた判例

交通事故で死亡した専業主婦に、家事労働について賃金センサスの女性労働者全年齢平均収入額の基礎収入があるとして、約3670万円の死亡逸失利益を認めた。

※福井地裁平成21年2月12日判決

子ども(未就労)が亡くなった場合

将来的に得たであろう収入を想定します。

学歴や家庭背景によって変動しますが、一般的には男女別の全年齢平均賃金(学歴平均含む)を基礎収入として用いることが多いでしょう。

未就労の子供に死亡逸失利益が認められた判例

交通事故で死亡した男子中学生に、男子全年齢の平均賃金を基礎収入とし、生活費控除率を5割、20歳から就労を開始したと仮定して、約3580万円の逸失利益を認めた。

※東京地裁平成6年3月18日判決

保険会社の提示額は低く見積もられる可能性がある

交通事故による死亡事故では、通常、加害者側の保険会社が賠償額を提示します。

しかし、多くの場合「任意保険基準」によって計算されており、これは相場額を算出する裁判基準(いわゆる「弁護士基準」)にいる金額よりもかなり低く設定されています。

慰謝料金額相場の3基準比較

以下は計算基準ごとの主な違いです。

計算基準特徴
自賠責基準最低限の補償(死亡の場合、慰謝料や逸失利益の合計額が最大で3000万円)
任意保険基準任意保険会社独自の計算基準。自賠責基準と同程度がやや高額な程度
裁判基準(弁護士基準)裁判所の過去の判例に基づいた、相場かつ最も高額となる基準

「保険会社の提示額=適正額」とは限らず、専門家による見直しが不可欠です。

どのくらいの逸失利益が見込めるのか、簡単に知りたい方は以下の計算機をお使いください。年齢や年収などを入力するだけで、慰謝料とあわせて逸失利益の目安もわかります。

弁護士に相談・依頼するメリット

交通事故の死亡逸失利益に納得がいかない場合、まずは弁護士への相談を検討することをおすすめします。

弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが生じます。

  • 適正な基礎収入・生活費控除率の立証
  • 将来収入見込みを正しく算出
  • 裁判基準に近い金額で示談しやすくなる
  • 加害者側との連絡を弁護士に任せることができる

適切な金額で示談できるという金銭的なメリットだけでなく、加害者側と連絡を行うことで生じる負担を減らすことも可能です。

まとめ|死亡逸失利益は「見過ごさないで」

死亡逸失利益は、ご遺族にとって大きな経済的支えとなるはずの損害賠償ですが、保険会社から提示されたままの金額で示談してしまうと、本来手にできたはずの補償を逃してしまうことがあります。

被害者の立場や状況に応じて適正な金額を導き出すためにも、弁護士に相談・依頼することを強くおすすめします。

交通事故直後の状況で、冷静な判断を下すのは困難です。
せめて「経済的な損失」だけでも回復するために、今できる一歩を踏み出してみてください。

アトム法律事務所では、死亡事故に関する損害賠償(死亡逸失利益含む)の無料相談を行っております。

正当な補償を諦めたくない方は、気軽にご相談ください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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