交通事故で入院した場合の慰謝料|手術で増額?治療期間ごとや骨折時の相場は?
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交通事故で入院した場合、被害者は「入院慰謝料(入通院慰謝料)」や入院費用を加害者側に請求できます。
入院慰謝料は、事故で入院したことによる精神的苦痛を金銭に置き換えたものです。そのため、辛い思いをした期間が長いほど高額になり、さらに入院時の辛さや苦痛の程度が反映されることがあります。
もっとも、最終的な入院慰謝料の受け取り額は示談交渉しだいで変わるため、示談交渉がうまくいかなければもらえる金額も低額になる恐れがあるでしょう。
交通事故被害者にとって大切なことは、第一にご自身の治療、次いで適正な損害金を請求して納得の解決を図ることです。
当記事では、交通事故で入院を強いられた被害者の方が金銭的に損しないよう、入院にまつわる費用について重点的に解説していきます。
目次
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交通事故で入院したら請求できる慰謝料と損害金
交通事故の被害者がいくら請求できるのかを考えるうえで大事なことが、慰謝料と損害金の関係です。
入院慰謝料とはなにか?
入院慰謝料は、入院によって負った精神的苦痛に対する金銭となります。
そもそも慰謝料は精神的苦痛をお金に換えたものなので、基本的に人身事故にあった際に請求可能です。
したがって、物損事故の場合には、修理などによってモノの財産的損害が回復されれば同時に精神的苦痛も回復されるということから、原則慰謝料は認められません。
のちほど「入院慰謝料の計算方法|3つの算定基準」で解説しますが、慰謝料は被害者の個人的な感情を基準に算出するわけではありません。
そして、弁護士が介入することにより慰謝料の額は基本的に高くなります。被害者が請求できる慰謝料の金額は、誰に慰謝料算定を任せるかによって変わってくるのです。
慰謝料の関連記事
事故による損害金の一覧表
交通事故の被害者が請求しうる代表的な損害金は次の通りです。
損害金の項目 | 内容 |
---|---|
入院慰謝料(入通院慰謝料) | 入院したことによって請求できる慰謝料 通院しても請求できるため総称して「入通院慰謝料」とも呼ばれる |
入院治療費(通院治療費) | 入院・通院で発生した治療費 |
入院交通費(通院交通費) | 入院・通院で発生した交通費 |
入院雑費 | 入院に要した日用品費や通信費などの雑費 将来の雑費も認められる場合がある |
付添看護費 | 入院中に付添人が必要なら請求できる費用 関連記事:交通事故の付添費|付き添いに認められる範囲と相場 |
休業損害 | 入院のために仕事ができなかったことによる減収分の損害 関連記事:交通事故の休業損害|計算方法を職業別に網羅 |
後遺障害慰謝料 | 後遺症が残り、後遺障害等級が認められた場合に請求できる慰謝料 関連記事:交通事故の後遺障害慰謝料の相場はいくら?等級認定から慰謝料支払いの流れ |
後遺障害逸失利益 | 労働能力の低下の程度などを考慮して算定される将来の利益 |
※表記載の慰謝料は、人身事故による「入院慰謝料(入通院慰謝料)」と「後遺障害慰謝料」のみ
※あくまでも例示であり、個人の状況によって請求できる項目は異なる
慰謝料はあくまで損害金の一部です。他にも入院中の治療費や入院雑費、仕事を休んだ期間の休業損害、経過次第では後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった費目も請求する可能性があります。
死亡事故であった場合には別途、死亡慰謝料も請求の対象です。
当記事では割愛しておりますが、死亡慰謝料についても知りたい方は、関連記事の『死亡事故の慰謝料相場は?被害者の死亡で遺族が請求すべき損害賠償金』を参考にしてください。
入院慰謝料はいくらもらえる?計算方法と相場
入院慰謝料の計算方法|3つの算定基準
入院慰謝料(入通院慰謝料)は、以下の3つの算定基準のいずれかを用いて計算されることになります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
入院慰謝料は自賠責基準で計算するとき最も低く、弁護士基準で計算すると最も高額になります。つまり、慰謝料はどの基準で計算するのかによって慰謝料額が変わってくるのです。
示談交渉の相手が現時点で加害者側の任意保険会社ならば、任意保険基準で交渉してくる可能性が高いです。任意保険基準は社外秘のため非公開ですが、実際の交渉額は自賠責基準程度のものであると推測して差し支えないでしょう。
加害者側の任意保険会社の利益と、被害者の利益が一致することはありません。いくら被害者がかわいそうな状況にあったとしても、加害者側の任意保険会社は守ってくれる存在でないことを念頭においておきましょう。
入院慰謝料の請求を弁護士に依頼した場合、被害者と加害者側の任意保険の間に弁護士が介入します。
弁護士介入後は、3つの算定基準で最も高額な「弁護士基準」の計算方法を用いて慰謝料額を計算して交渉するため、保険会社の提示額からの増額が期待できるのです。
入院慰謝料は、性別や年齢、被害者の立場によって金額が変わる物ではありません。被害者が、慰謝料の計算や請求を誰に依頼したかによって変わってくるものになります。つまり、同じ怪我であっても、被害者の取る行動しだいで慰謝料の金額は変わる恐れがあるのです。
参考事例をあげて3つの算定基準ごとに入院慰謝料を計算してみよう
入院慰謝料の金額は、3つの算定基準のどれを用いたかによってかわってきます。
参考事例をあげて順番に確認していきましょう。
参考事例
交通事故で受傷し、骨折と診断された。
治療期間は90日、うち入院期間が30日、通院期間は60日であった(実通院日数は20日間)。
はじめは最も低額になる自賠責基準、その次に任意保険基準、さいごに最も高額になる弁護士基準の順番で確認していきます。
自賠責基準で計算した場合
自賠責基準で入院慰謝料を計算する場合、日額4300円で計算します。
なお、この日額4300円は2020年4月以降に起こった事故に適用される金額です。
2020年3月以前に起こった事故については、旧基準である日額4200円が適用されますので注意してください。
自賠責基準に基づく慰謝料の計算式は以下の通りです。
- [入院日数 + (実通院日数 × 2)]× 4300円
- [治療期間]× 4300円
※慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して決まります。
2つの式で計算された金額のうち少ない方が慰謝料額となります。
参考事例を自賠責基準に基づく慰謝料の計算式にあてはめてみると以下の通りです。
[30日+ (20日 × 2)]× 4300円=30万1000円
[90日]× 4300円=38万7000円
2つの式で計算された金額のうち少ない方の、30万1000円が採用されます。
ここで、自賠責保険の限度額についても少し確認しておきましょう。自賠責保険には、傷害事故だと120万円までという上限があるのです。
交通事故保険金の出どころについて
交通事故被害者の立場からみて、慰謝料は加害者側の自賠責保険からまず支払いを受けます。自賠責保険は最低保障をおこなってくれるのみで、支払い担当者が示談交渉をするわけではありません。
自賠責保険で損害金が支払われたとしても、その金額が不十分なケースは多々あります。自賠責保険から支払われる損害金は、傷害事故の場合120万円が最高限度額であるため、はみ出た損害金は加害者側の任意保険に対して請求するべきです。
自賠責保険の上限額は、後遺障害分や死亡分の費目についても決められています。詳しくは、『交通事故慰謝料が120万を超えたらどうなる?自賠責保険の限度額や請求方法を解説』の記事をご覧ください。
任意保険基準で計算した場合
任意保険基準は損害保険会社により異なりますので、参考程度に「旧任意保険基準」を用いて算定してみましょう。なお、旧任意保険基準はすでに廃止されていますので、参考程度にご覧ください。
入院期間と通院期間の交差するマスを確認してください。
参考事例にそって通院期間が60日(2月)・入院期間が30日(1月)の交差するマスは50万4000円であることがわかります。
よって、旧任意保険基準で算定される慰謝料の相場は50万4000円です。
弁護士基準で計算した場合
弁護士基準による入院慰謝料も算定表にあてはめて計算していきます。弁護士基準を用いる際は、骨折などの重傷ケースと、むちうちなどの軽傷ケースで使用する算定表が異なる点に注意してください。
参考事例は骨折で設定しているため、重傷ケースの算定表を用いて慰謝料額を算出します。
通院期間2月・入院期間1月が交差するマスは、98万円となりますので、弁護士基準で算定される慰謝料は98万円が相場です。
入院慰謝料(入通院慰謝料)が日額4300円で提示されている方は、弁護士基準で計算した金額まで増額の余地が十分にあります。関連記事『交通事故の慰謝料|1日4300円(4200円)は増額の可能性あり』でも4300円がいかに低い金額なのか詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
入院慰謝料の相場|骨折の参考事例を比較
先ほど3つの算定基準で計算した骨折の参考事例における入院慰謝料(入通院慰謝料)の相場を比較できるように、以下の表にまとめました。
基準 | 慰謝料額 |
---|---|
自賠責基準 | 30万1000円 |
任意保険基準 | 50万4000円 |
弁護士基準 | 98万円 |
3つの算定基準のうち、最も高額になるのは弁護士基準であることがよくわかります。
骨折の治療に関する注意点
骨折は折れた箇所がすぐに癒合するわけではなく、安静にして固定する期間が数週間必要になります。また、すぐに治療が終わるわけではなくリハビリで身体の機能を回復させねばなりません。
そのため、相手の保険会社から治療期間に対して通院日数が少ないと言われて、治療費の打ち切りを宣告されたり、慰謝料を減らされてしまう可能性があります。
あるいは被害者自身の自己判断でリハビリを怠ることも、治療費の打ち切りにつながったり、仮に後遺症が残っても、治療の放棄が原因として、後遺症と事故の因果関係でもめる可能性もあるでしょう。
骨折の治療とリハビリに関しては、医師の指示を守り、医師が終了を判断するまで続けましょう。そして、相手の保険会社の提案してくる慰謝料の金額や減額の理由をうのみにしてはいけません。
弁護士であれば、スムーズに適切な金額の慰謝料を請求できます。加害者側の任意保険の担当者と示談交渉中の被害者の方は、是非一度アトム法律事務所の弁護士へご相談ください。
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慰謝料の目安は慰謝料計算機を使えばすぐわかる
なお、弁護士基準での入院慰謝料は「慰謝料計算機」を使えば簡単に目安がわかります。ただし、過失割合をはじめとする個別の事情を反映したものではありませんので、大まかなイメージをつかむためにお役立てください。
入院で請求できるその他の損害金
入院慰謝料は、入院で負った精神的苦痛に対する金銭補償です。しかし、入院にかかる費用は慰謝料だけではありません。
ここからは入院した場合に請求できるその他の損害金として、入院雑費、個室料、治療費について解説していきます。
入院雑費・将来かかる雑費
交通事故で入院した場合、入院慰謝料や治療費以外にも発生する費用があります。損害金の一部として加害者側に請求できる「雑費」についてみていきましょう。
雑費とよばれるものは、大きく分けて2つあります。
- 入院雑費
- 将来の雑費(介護費用)
それぞれの違いをみていきましょう。
入院雑費
入院雑費についても、慰謝料と同様に3つの算定基準ごとに金額は変わるものです。
入院雑費の相場は、自賠責基準だと日額1100円、最も高額な弁護士基準だと日額1500円とされています。あくまで目安のため、日額を超えることが明らかな場合は、必要の範囲内で実費と判断される場合もあるでしょう。
入院雑費には、入院中に使用したテレビカードやティッシュなどの日用品費のほか、被害者家族が見舞に来た際の交通費や新聞代なども対象になり、比較的幅広く認められています。
雑費は、逐一かかった費用を領収書などで証明する必要はありません。あまりに細かい費用を計上していると、賠償手続きが煩雑化するからです。
実際の事例で具体的に金額を確認してみましょう。
1日1500円×597日のほか,貸しおむつ代1日2000円×597日間を認めた
神戸地判平16.12.20 交民37・6・1683
1日1500円×760日間
東京地判平21.12.4 交民42・6・1576
1日1600円×295日間
仙台地判平21.7.21 自保ジ1833・91
1日1700円×33日間
千葉地判平10.12.25 交民31・6・1981
※なお、以上の事例は「損害賠償額算定基準」に記載されたもので、弁護士が用いる基準になります。この書籍は「赤い本」ともいわれており、弁護士も参考にしています。
将来かかる雑費
被害者に重篤な後遺症が残ってしまった場合、将来の雑費が必要になることがあります。将来の雑費が必要になるケースとは、将来の介護が必要になった場合のことです。雑費の例としては、紙おむつ代があげられます。
将来の雑費として支給される金額は以下の計算式で算出可能です。
年額×生存可能期間に対応したライプニッツ係数
ライプニッツ係数は「平均余命年数とライプニッツ係数表」を参考にします。ライプニッツ係数の一例は下表の通りです。
年齢 | 平均余命年数 | 係数 |
---|---|---|
20 | 61 | 27.840 |
30 | 51 | 25.951 |
40 | 41 | 23.412 |
50 | 32 | 20.389 |
60 | 23 | 16.444 |
※2020年4月以降に発生した事故に適用
将来の雑費の年額を算出後、被害者の年齢によって対応するライプニッツ係数をかけて出た金額が請求できる金額ということになります。
たとえば、被害者の年齢が30歳だった場合、生涯入院雑費が発生すると考えたときの計算式は以下のとおりです。
日額1500円×365日×25.951=1420万8172円
将来の介護費用が認められた事例を、以下にいくつかご紹介します。
四肢麻痺(別表第1の1級1号)の被害者(男・固定時48歳)につき,マスク,紙おむつ,滅菌ガーゼ,ゴム手袋などの物品の購入は必要かつ相当であるとして,症状固定時から入院中の3年間は日額1500円を認め,自宅介護を開始した3年経過後から平均余命30年間は,現実に支出した月額4万7869円を基礎として,762万円を認めた
大阪地判平28.8.29 交民49・6・1570
遷延性意識障害(別表第1の1級1号)の被害者(男・固定時35歳)につき,将来の雑費は生活費から支出すべきであるとの加害者側の主張を排斥し,逸失利益の算定において生活費控除が行われない場合でも,一般に,健常人の日常生活においても必要とされる費用には含まれないものは雑費と認められるとして,おむつ,胃ろう,注入栄養液,たん吸引,カテーテル,手袋,清掃用のしり拭き等,月額4万円,平均余命46年間,858万円余を認めた
神戸地判平29.3.30 自保ジ1999・1
遷延性意識障害,四肢麻痺等(1級3号)の被害者(男・固定時38歳)につき,おむつ・ティッシュ・気管切開チューブ等の将来雑費として,年額127万9134円の請求に対して,その中には健常人の生活費としても必要であるものを相当数含まれているとして,本件事故と因果関係のある将来雑費として約7割の年額90万円,合計1556万円余を認めた
千葉地佐倉支判平18.9.27 判時1967・108
ご自身の状況にあてはめて、まだ請求していない費目がある場合や、加害者側の任意保険会社から提示された示談案に費目が記載されていない場合は注意が必要です。
将来の介護費用については、くわしい解説記事『交通事故で介護費用が請求できる2ケース|計算方法と裁判例から金額もわかる』も参考にご覧ください。
個室料・特別室代
入院中にかかった個室料や特別室代などのいわゆる差額ベッド代は、医師の指示がある場合や特別な事情が認められる場合のみ請求可能です。
具体的には、個室や特別室を利用した方が治療がスムーズに進むような場合、被害者の意向とは無関係で個室や特別室を使うような場合が該当します。
- 重篤なため家族が付き添うスペースや、多くの医療機器を置く場所が必要なケース
- 感染症予防の目的で隔離する必要があるケース
- 入院した病院の大部屋が満床で個室しか空きがなかったケース
入院中に過ごす場所が大部屋だろうと個室だろうと、基本的に治療に差がでるものではないと考えられます。
被害者が個室を望んだからといって必ず個室料の請求が認められるとは限りません。
医師から認められていなかったり、特別な事情がないにも関わらず、被害者の勝手な意向で個室を利用した場合、個室と通常の部屋との差額は被害者負担となるので注意してください。
治療費(手術費・検査費等)
被害者は診療や手術などを受けたのであれば、自己負担額を加害者側に請求可能です。事故により手術や検査等を受けた場合も当然、治療費として認められます。
一般的に、交通事故による怪我などで発生した治療費は全額請求できますが、あくまでも必要な治療であることが前提となり、相当性がある場合に請求が認められるものです。
たとえば、整骨院などで受けた施術については、医師が必要であると認めた場合に限り請求が可能になります。
なお、治療費については、基本的に加害者側の任意保険会社が病院に直接支払ってくれることが大半です。そのため、被害者が一旦立て替えてから後日保険会社に請求するという手続きは基本的に不要になります。
しかし、なかには任意保険が治療費を先に支払ってくれない場合もあり、被害者は一旦ご自身で治療費を立て替えることになるでしょう。
交通事故による負傷は健康保険も使えます。
健康保険なら、70歳未満の被保険者は一般的に3割負担になるため、被害者が実際に負担した療養費の3割分を加害者に請求可能です。もし被害者が治療費を立て替える必要がある場合には、健康保険の利用も検討してください。
ただし、交通事故における健康保険の利用方法は通常の場合と異なるので、『交通事故で健康保険は使える!使えないケースやデメリットも解説』の記事をご覧ください。
加害者側との示談交渉でもめた場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。アトム法律事務所では、被害者からのご相談に限っては無料で受け付けております。
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手術を伴う入院なら慰謝料は増額する?
基本的に手術の有無は慰謝料額に影響しない
たとえ手術を伴う入院でも、慰謝料額に影響することは基本的にありません。入院慰謝料は、入院期間に応じて算定されるからです。
ただし、手術の内容によっては慰謝料が増額される可能性もあります。
なお、先述の通り、手術費に関しては慰謝料とは別で加害者側に請求可能です。
手術の内容によっては増額事由になりうる
手術の内容によって慰謝料が増額する可能性があるのは、以下のようなケースが考えられます。
- 麻酔なしでの手術を受けた
- 将来的に手術を何度も繰り返す必要がある
- 交通事故により中絶手術を受けることになった
など
手術による精神的苦痛が非常に大きいと考えられるようなケースでは、慰謝料の増額事由に該当するとして請求が認められる傾向にあります。
交通事故の入院で気になるQ&A
交通事故による入院で仕事を休業した場合は?
交通事故による怪我などで入院した場合、被害者は休業を強いられることになります。
被害者は、仕事を休んだことによる減収分を、加害者側に「休業損害」として請求可能です。
たとえば、会社員の場合では「休業損害証明書」を会社に提出し、総務などの担当者に記入してもらいます。休業損害証明書を会社に記入してもらったら、加害者側の任意保険会社に提出しましょう。
休業損害の金額についても、3つの算定基準が金額の分かれ目です。
これまでお話しした慰謝料や雑費などと同じく、自賠責基準で計算された休業損害額は最も低くなり、弁護士基準で計算された休業損害額は最も高くなります。
POINT
主婦も休業損害の請求が可能です。ただし、専業主婦か兼業主婦かで請求額が変わる可能性があります。詳しい解説は『専業・パート主婦(家事従事者)の休業損害|主婦手当の計算と請求方法』の記事をお読みください。
退院しても後遺症に悩まされる場合は?
退院してから治療を続けても後遺症が残った場合は、後遺障害認定を受けましょう。
後遺障害認定を受けることで、入院慰謝料や治療費とは別に「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」の請求が新たに可能になります。
ただし、退院後に後遺症が残ったという事実だけで後遺障害認定が受けられる訳ではありません。
後遺障害の申請手続きをして、審査機関に認められる必要があるのです。
後遺障害認定を受けるための手続きについて詳しくは、関連記事『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』をご確認ください。
やむを得ない事由で早期に退院した場合は?
入院慰謝料は入院期間に応じて算定されるので、早期に退院してしまうとその分もらえる慰謝料が少なくなってしまいます。
しかし、被害者の個人的な事情や病院側の都合など、やむを得ない事由で早期に退院しても、交渉次第では慰謝料が少なくならないようにすることも可能です。
やむを得ない事由に応じて、入院慰謝料は個別に判断される可能性があります。
- 被害者が幼児をもつ親であったため早期に退院した
- 仕事などの都合で早期に退院した
- 病院側の都合で早期の退院をすすめられた
もっとも、以上のようなケースで入院慰謝料を適切に請求していくには、やむを得ない事由を立証説明していく必要があります。やむを得ない事由をお持ちの場合は、弁護士に相談しておくのがいいでしょう。
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過失割合や慰謝料の増額交渉は弁護士に相談
過失割合の交渉も重要
交通事故の慰謝料は、過失割合によっても左右されます。
過失割合とは?
発生した交通事故について、どちらに非があって起こったのかという責任の割合のこと。過失割合が認められる場合、被害者は自身の過失割合分が差し引かれた賠償しか受けられないので注意が必要。
過失割合は、事故の態様によって基本の過失割合がある程度決められています。たとえば、信号待ちで停車中の車両に後方から追突した場合、追突された側に過失がなく、10:0の事故になるという話は聞いたことがあるでしょう。これがいわゆる基本の過失割合をさします。
しかし、追突された車両の駐停車の仕方が不適切だった場合や、不要な急ブレーキをかけて停車したといった事情があれば、過失割合は変わる可能性が高いです。こうした個々の状況を修正要素と呼びます。
基本の過失割合を適切にさだめ、事故状況に応じた修正を加えていく交渉過程は、交渉のプロである弁護士に任せることが得策です。
とくに、自動車とバイクの事故における基本の過失割合は、バイク側が小さくなる傾向にあります。そのため自動車側は、色々な事情を持ち出してバイク側の過失が大きくするような主張をしてくるでしょう。先々の展開も先読みできる弁護士に相談しておくと安心です。
弁護士の選び方や、弁護士依頼のメリットについては関連記事も参考にしてください。
妥協した慰謝料にしないために
入院や通院に対する慰謝料は、実際のところ請求してみないといくらになるかはわかりません。
また、その金額は請求する人間によっても大きく変わる可能性があります。
もちろん、この記事で触れていない項目が、請求の対象になることもあるでしょう。
弁護士基準は最も高額で適正ですが、弁護士基準を被害者が用いたうえで、加害者任意保険と示談交渉ができるかといえば、けっしてそうとも限りません。
なぜなら、被害者がご自身で弁護士基準の金額を提示しても、加害者側任意保険に一蹴されてしまうことがあるためです。「弁護士基準で算出された金額で請求するのであれば、弁護士をつけてください」などと言われることもあります。
交通事故の被害者にとって、事故で失ったものが返ってくることはありません。ご自身の健康な体や、就いていたお仕事・役職などだけでなく、死亡事故にいたっては、最愛の家族を失うことだってあるでしょう。
交通事故の慰謝料は、妥協して受け取るものではありません。適正な金額を受け取ることができてこそ、その後の人生が開けてくるのです。
事故で入院・手術したら弁護士に相談
交通事故の慰謝料については、アトム法律事務所にご相談ください。
以下に該当した場合は、フリーダイヤルか「LINEで無料相談」「メールで無料相談」をタップしてください。
- 交通事故で入院した
- 入院中に何度も手術を繰り返した
- 事故の相手方(加害者側の任意保険会社)から、入院慰謝料(入通院慰謝料)の金額を提示された
- 何としてでも高額な慰謝料を請求したい
- 示談交渉がストレスになっている
- 治療中は静かに療養したい
- 多くの手続きに混乱している、もしくは面倒に感じている
受付は、24時間365日対応しております。
フリーダイヤルにお電話頂いた場合は、専門のスタッフが相談支部などのご案内をさせていただきます。
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まとめ
- 交通事故で入院したら、その精神的苦痛に対する金銭を加害者側に請求できる
- 入院慰謝料(入通院慰謝料)の金額は、すべての被害者に平等であるわけではない
- すべての被害者に平等にあるのは「適正な慰謝料を請求できる権利」
- 交通事故で入院したら慰謝料以外にも請求できる示談金がある
- 交通事故の入院にまつわる示談金は、慰謝料だけでなく、その他費目についても弁護士基準で計算した金額が最も高額
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了