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交通事故の慰謝料|1日4300円(4200円)は増額の可能性あり

更新日:

慰謝料4300円増額の可能性あり

新たに改正民法が施行されました。交通事故の損害賠償請求権に関するルールに変更があります。

人身事故の被害者になってしまった場合、加害者側の任意保険会社から慰謝料や損害賠償金の提示を受けます。
その中に「入通院慰謝料」が含まれているかと思いますが、もし日額4300円または4200円で計算されているのであれば、その金額は受け入れるべきではありません。

きちんと交渉すれば、日額4300円(4200円)よりも高額な慰謝料を得られる可能性が高いからです。

なぜ日額4300円の金額が提示されるのか、具体的にどれくらいの金額獲得を目指すべきなのか、十分な慰謝料額を得るにはどうしたら良いのか、この記事を通して確認してみてください。

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慰謝料が1日4300円(4200円)は少ない!

4300円(4200円)は入通院慰謝料の日額

4300円(4200円)とは、入通院慰謝料1日あたりの金額をさしています。

入通院慰謝料とは

被害者が入院や通院をすることで生じた精神的苦痛に対する補償。
入通院した日数や期間に応じて金額が決まる。

日額が4300円になるか4200円になるかは、事故が起きた日によって判断されます。これには、2020年4月1日から新しい民法が適用されたことが影響しています。

4300円(新基準)2020年4月以降に起きた事故に適用
4200円(旧基準)2020年3月以前に起きた事故に適用

ただし、4300円(旧基準4200円)で保険会社から金額の提示をされた場合は、注意が必要です。
この金額は、十分に増額の余地があるものだからです。

詳しくはこの次解説するので、確認していきましょう。

民法改正では、交通事故に関して入通院慰謝料の日額以外にも変更点が生じています。
詳細は『交通事故被害者が知っておくべき2020年4月1日以降の変更点5選』をご覧ください。

日額4300円(4200円)は最低限の金額に過ぎない

日額4300円(4200円)は、あくまでも入通院慰謝料における最低限の金額にすぎません。
入通院慰謝料には、日額4300円とする方法以外にも計算方法があるのです。

実は慰謝料には3つの算定基準があり、それぞれで計算方法が異なります。
日額4300円(4200円)は、その中でも最も低額な「自賠責基準」にのっとった金額なのです。

慰謝料計算の3基準

自賠責基準交通事故被害者に補償される、最低限の金額を算定する基準
任意保険基準加害者側の任意保険会社が用いる基準
自賠責基準と同程度か、少し高い程度の金額になる
弁護士基準弁護士や裁判所が用いる基準
過去の判例に基づいて設定されており、3基準の中でもっとも高額になる

治療費や通院に要した交通費などとは違い、慰謝料には実費という概念が存在しません。そのため、金額を算定するために基準が設けられているのですが、その基準は上記のように3つもあります。

そのことを知らずに「日額は4300円と決まっているのだ」と思い込んでいると、損してしまうので注意してください。

日額4300円(4200円)という自賠責基準で入通院慰謝料が計算されるケースには、ざっくりですが以下の3つが考えられます。

  1. 加害者が自賠責保険にしか加入しておらず、任意保険の加入がない
  2. 加害者が任意保険に加入しているが、任意保険の担当者が自賠責基準の金額で示談交渉しようとしている
    (加害者側の示談交渉窓口が任意保険)
  3. 加害者本人が無保険であり、自賠責基準の金額で示談交渉をしている
    (加害者自身が示談交渉の窓口)

交通事故の被害者が受け取るべき正当な金額は、弁護士基準にのっとったものです。
もし日額4300円(4200円)の入通院慰謝料を提示されたのであれば、そのまま受け入れるのではなく、弁護士基準の金額まで増額を交渉しましょう。

自賠責保険・任意保険とは?

自賠責保険とは、自動車を運転するすべての人に加入が義務付けられている強制保険です。
自賠責保険の役割は、保険加入者が事故を起こした際、最低限の被害者救済を行うことです。

そのため、自賠責基準における慰謝料額は最低限のものになっており、支払い金額にも上限があります。
また、自賠責保険はあくまで加入者が事故の加害者となった場合に、被害者に対して補償を行うものであり、加入者に対する補償は行いません。

一方、任意保険は車を運転する人が任意で加入する保険です。
自賠責保険から被害者に支払われる損害賠償金には上限があるので、その上限を超える部分を任意保険が補てんします。

任意の自動車保険と自賠責保険の関係


また、任意保険には人身傷害補償特約や搭乗者傷害特約などさまざまな特約があり、幅広い場面で利用できます。
加入者自身が事故の被害者となった場合や自損事故を起こしてしまった場合には、加入者に対する補償も行ってくれるのです。
詳しくは、以下の関連記事をご覧ください。

日額4300円だけではない!入通院慰謝料の計算方法

では、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準ではそれぞれどのようにして入通院慰謝料を算定していくのか、見ていきましょう。

自賠責基準は日額4300円で計算

すでに解説したように、日額4300円となるのは自賠責基準で計算した場合の入通院慰謝料額です。
具体的には、以下のように計算します。

  1. [入院日数 + (実通院日数 × 2)]× 4300円(※4200円)と
  2. [治療期間]× 4300円(※4200円)の少ない方を採用

※2020年4月以降に事故にあった方は、4300円の方で計算します。
※慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して決まります。

繰り返しになりますが、自賠責保険は被害者に対する最低限の救済を目的としているので、慰謝料額は最も低額になっています。
なお、日額や計算方法は法令によって決められているので、示談交渉によって自賠責基準の金額が変動することはありません。

任意保険基準の計算方法は非公開

任意保険基準の計算方法は各保険会社が独自に設定しており、社内マニュアルとされて一般公開されていません。

そこでここでは、平成10年まで各社共通で用いられていた「旧任意保険基準」による慰謝料算定表を紹介します。
現在「旧任意保険基準」は廃止されていますが、今でも参考にしている保険会社が多いようです。

旧任意保険支払基準による入通院慰謝料
旧任意保険支払基準による入通院慰謝料

任意保険基準は、示談交渉の際に相手方から提示される金額です。
最終的に示談交渉で決まった金額のうち、自賠責保険の支払い上限額までは自賠責保険が、それを超える部分は任意保険が支払います。

弁護士基準は表を参考に計算

弁護士基準では、軽傷用または重傷用の慰謝料算定表をもとに、入通院慰謝料を計算します。

軽傷用の表

むちうちなど、他覚所見(レントゲン写真やMRI画像)に異常が写らない軽傷の場合に用いる

軽症・むちうちの慰謝料算定表
軽症・むちうちの慰謝料算定表

重傷用の表

軽傷用の表を用いる場合に該当しないときに使う

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

表は入院・通院それぞれ1ヶ月単位で区切られているので、通院1ヶ月10日のように端数がある場合は、端数分の金額を別途計算しなければなりません。
また、事故の個別的な事情を反映し、上記の表よりも慰謝料額が多くなるケースもあります。

詳しくは、弁護士までお尋ねください。

なお、以下の慰謝料計算機では、弁護士基準における入通院慰謝料の他、後遺障害慰謝料・死亡慰謝料・逸失利益も確認できます。

慰謝料額を1日あたり4300円(4200円)より多くするには?

弁護士を立てて慰謝料請求すべき|理由も解説

相手方保険会社から日額4300円(4200円)の入通院慰謝料を提示されたとしても、弁護士を立てて増額交渉をすれば、弁護士基準と同水準の金額獲得が見込めます。

被害者自身で増額交渉をしても十分な増額がなされる可能性は低いですが、弁護士を立てれば以下の理由から、増額に成功する可能性が高まるのです。

  • 専門知識・資格を持つ弁護士の主張であれば、相手方保険会社もないがしろにはできないから
  • 被害者が弁護士を立てると、相手方保険会社は裁判に持ち込まれることを危惧し、示談段階で被害者側の主張を受け入れようとするから

相手方任意保険会社は、日々さまざまな被害者・弁護士と示談交渉をしているプロです。
そんな相手方任意保険会社にとって、知識が浅く、示談交渉経験も少ない被害者本人の主張を退けることは非常に簡単でしょう。

十分な金額の入通院慰謝料を獲得するためには、弁護士の介入が不可欠といえます。

相談・依頼は示談書にサインする前・時効が成立する前に!

弁護士への相談・依頼は、基本的にはいつでもできます。
たとえば以下のような状況にある場合での相談・依頼は可能というわけです。

  • 交通事故直後
  • 入院中や通院中など治療期間の段階
  • 後遺症について後遺障害等級認定申請を検討している
  • 後遺障害等級認定の申請結果が出た
  • 保険会社や加害者本人から示談案が送られてきた
  • サインしていない示談書が手元にある

ただし、示談書にサインをし、示談が締結されたあとの相談・依頼は基本的にできません。

示談は一度成立してしまうと、一部の例外(詐欺や脅迫を用いた示談など)を除き撤回・再交渉はできません。
そのため、示談成立後に弁護士に相談・依頼をしても、弁護士にできることはないのです。

また、示談金(損害賠償金)の請求権に時効がある点にも注意が必要です。
交通事故の示談金における消滅時効は、人身事故の場合加害者を知った時から起算して5年です。
時効が到来した後の慰謝料請求は原則できないので、弁護士への相談は余裕をもって行うことをおすすめします。

弁護士費用の不安を解消する3つの方法

弁護士に相談・依頼をすると、費用がかかります。
弁護士を立てた結果得られる示談金を弁護士費用が上回ってしまう、いわゆる「費用倒れ」を心配する方も多いですが、以下の3つの方法で、その不安は解決できます。

  • 弁護士費用特約を利用する
    弁護士費用特約は、被害者自身の任意保険などについているオプション。
    弁護士費用を保険会社に負担してもらえる。
  • 相談料・着手金無料の弁護士に相談・依頼する
    成功報酬のみを支払うことになるので、費用負担が大幅に軽減される。
  • 無料相談のみを利用する
    本格的な依頼はせず、無料の法律相談を利用するだけでも、アドバイスをもらったり、適正な慰謝料額を計算してもらったりできる。

費用倒れは、ほぼ自覚症状のない軽傷事故など、そもそも請求できる慰謝料・損害賠償金が少ない場合に発生する可能性があります。
費用倒れが起こりうるかどうかは、依頼前の相談にて弁護士に慰謝料・損害賠償金を算定してもらうことで判断可能なので、ひとまず無料相談を受けてみることをおすすめします。

なお、無料相談はアトム法律事務所でも行っており、電話やLINEから可能です。
相談後に契約を迫ることはないので、安心してご利用ください。

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注意点1|慰謝料などが120万円を超えると交渉が厳しくなる

相手方任意保険会社との示談交渉は、入通院慰謝料・治療関係費・休業損害・文書料などの総額が120万円を超えると厳しくなる可能性が高いです。
これには、自賠責保険の支払い上限額が関係しています。

自賠責保険からの支払い額は、傷害部分については総額120万円までと定められています。
相手方任意保険会社との示談交渉で決まった傷害部分の損害賠償金のうち、120万円までは相手方自賠責保険が、それを超える部分は相手方任意保険会社が支払うのです。

つまり、傷害分の金額が120万円を超えれば超えるほど、相手方任意保険会社は多くの賠償金を支払わなければなりません。
相手方任意保険会社にとって、被害者に支払う損害賠償金は支出・損失です。
こうした事情から、傷害分の金額が120万円を超えると相手方任意保険会社の姿勢がシビアになり、示談交渉が厳しいものとなるのです。

傷害分が120万円を超えることは珍しくない

傷害分の損害賠償金には入通院慰謝料・治療関係費・休業損害・文書料など多くの費目が含まれているので、120万円を超えることも珍しくありません。
治療が長引いたり大掛かりなものになったりすると、治療費だけで120万円を超えてしまうこともあります。

傷害分の金額が120万円を超える場合はとくに、弁護士を立てて示談交渉を行うべきでしょう。

なお、自賠責保険の支払額には、後遺障害分・死亡分についても上限があります。
詳しくは『自賠責保険から慰謝料はいくらもらえる?』でご確認ください。

注意点2|相手方任意保険はあくまでも加害者の味方

相手方の保険会社とはいえ、こちらは被害者なのだから多少は気遣ってくれるだろう、という考えは危険です。
相手方任意保険会社はあくまでも保険契約者である加害者を顧客としています。そのため、顧客に損が出ないよう示談交渉することが仕事です。

もし示談交渉の結果、損害賠償金が自賠責保険の支払い上限額を超えてしまったら、加害者は任意保険の「対人賠償責任保険」を利用することになります。
すると、保険の等級が下がり、次年度からの保険料が上がってしまいます。これは、加害者にとって損です。

保険加入者である加害者を顧客としている以上、相手方任意保険会社はできるだけこうした事態を避けなければなりません。

こうした事情もあって、相手方任意保険はすこしでも慰謝料・損害賠償金を少なくしようと交渉してきます。
仮に相手方任意保険会社が被害者に寄り添う姿勢を見せてくれたとしても、油断して相手の言うことを鵜呑みにすることは避けましょう。

シビアな交渉で生じる被害者の負担は大きい

相手方任意保険会社は、自社からの支払額を少なくするため、そして顧客である加害者に損が出ないようにするため、シビアな姿勢で示談交渉に臨んでくるでしょう。

実際、示談交渉において相手方任意保険会社の厳しい態度を目の当たりにし、以下のような負担を感じる被害者は多くいます。

  • 相手方任意保険会社から高圧的な言動をとられた
  • 被害者側の主張を聞いてもらえない
  • 分からないことや疑問に思うことを質問してもきちんと答えてもらえない
  • 強引に交渉を進められる

これでは十分な示談金獲得が見込めないうえ、示談交渉の過程でさらなる精神的苦痛を受けてしまいます。

受ける必要のない精神的苦痛を避けながら十分な慰謝料・損害賠償額を獲得するために、ぜひ弁護士への相談・依頼をご検討ください。

交通事故を弁護士に依頼するメリットは、慰謝料増額以外にも多数あります。
ぜひ以下の記事も参考にしてください。
交通事故を弁護士に依頼するメリット8つ|デメリット・費用・慰謝料増額も解説

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交通事故被害者が請求できる慰謝料3種類

慰謝料は入通院慰謝料以外にもある

交通事故被害者が請求できる慰謝料には、入通院慰謝料の他、後遺障害慰謝料・死亡慰謝料があります。

入通院慰謝料交通事故による入院・通院で生じる精神的損害に対して請求できる慰謝料。
後遺障害慰謝料交通事故によって受傷したケガのうち、後遺症が残ってしまったことに対して請求できる慰謝料。
後遺障害等級に該当していることが必要。
死亡慰謝料被害者が死亡してしまったことにより請求できる慰謝料。
本人に対するものと、遺族に対するものがあり、被害者の立場によって金額が変わる。

後遺障害慰謝料・死亡慰謝料にも、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準といった3つの算定方法があり、弁護士基準が最も高額です。
詳しくは、『交通事故の慰謝料は弁護士基準で計算!慰謝料相場と増額成功のカギ』をご確認ください。

なお、交通事故に遭った場合は、慰謝料以外にも相手方に請求できる費目がありますので、合わせて確認しておきましょう。

おもな示談金(賠償金)一覧

慰謝料精神的苦痛に対して支払われる賠償金
治療費治療・入院に要した費用(入院雑費含む)
休業損害休業したことにより減額した収入の補償
逸失利益交通事故にあわなければ得られていたであろう将来の利益
通院交通費通院に要した交通費(タクシーは必要な場合に限り認められる)
通信費示談交渉中に発生した通話代や郵便代など
診断書作成費用後遺障害診断書などの作成費用
付添看護料被害者に介護・介助などが必要と認められた際発生する損害
医師の指示があった場合や受傷の程度により認められる
あくまでおもな内容一覧になり、被害者個人により請求できる項目は異なります

後遺症が残ったら後遺障害等級認定を受ける必要あり

交通事故によるケガが治癒せず、後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を受けましょう。
後遺障害等級の認定を受けていないと、後遺障害慰謝料がもらえないからです。

後遺障害等級は、重症なものから順に1等級から14等級まであり、後遺障害慰謝料の金額は等級に応じて変わります。
つまり、単に等級の認定を受けるだけではなく、適切な等級に認定されることが重要であることを覚えておいてください。

なお、後遺症が残って治療を終えることを「症状固定」といいます。
症状固定の時期が早すぎると後遺障害等級が認定されない可能性があるので注意が必要です。
詳しくは、『交通事故の症状固定は半年が目安になる?』をご確認ください。

後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級認定を受けるためには、審査機関に後遺症の症状・程度を示す書類を提出する必要があります。
書類提出の流れには事前認定と被害者請求の2種類があるので、どちらかを選んでください。
より適切な認定結果を得られる可能性が高いのは、被害者請求です。

事前認定必要書類のほとんどを、加害者側の任意保険会社がそろえてくれる方法
被害者請求必要書類のすべてを、被害者が用意する方法
事前認定の流れ

一見、事前認定の方が手間がかからず良いように思えます。
しかし、すでに解説したように、相手方任意保険は加害者の味方です。

そのため、必要最低限の書類しか審査機関に提出してもらえなかったり、記載内容に改善の余地がある書類を提出されたりするリスクがあり、適切な認定結果を目指すために適した方法とは言えません。

被害者請求の流れ

一方、被害者請求は書類集めの手間はかかりますが、より具体的に後遺症の症状・程度を伝えるための追加書類を添付したり、提出書類の記載内容をブラッシュアップさせたりすることができます。
そのため、被害者請求の方がより適切な認定結果を得られる可能性が高まるのです。

なお、後遺障害等級認定の申請手続きも弁護士に頼めばサポートしてもらえます。
代わりに書類集めをしてもらえたり、提出する書類の種類・内容についてアドバイスをもらえたりするので、ぜひご相談ください。

関連記事

後遺障害申請は被害者請求と弁護士依頼が正解|必要書類も紹介

後遺障害等級の認定審査はどこがおこなう?

等級の認定審査をおこなうのは、自賠責保険会社でも任意保険会社でもありません。
「損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)」という第三者機関になります。

審査は原則として提出書類のみを見て行われるので、どのような種類・内容の書類を提出するかが認定結果を左右すると言っても過言ではありません。

慰謝料は事情に応じて増額できる

慰謝料が増額される3つのケースと事例

慰謝料は、次の2つの要素につき、増額されます。

  • 加害者に故意もしくは重過失または著しく不誠実な態度等がある場合
  • 事故時や治療中の苦しみがことさらに大きいと判断できる場合
  • 死にも比肩する後遺障害が残った場合

それぞれについて、事例も合わせて解説していきます。

(1)加害者に故意もしくは重過失または著しく不誠実な態度等がある場合

被害者に故意や重過失、著しく不誠実な態度がある場合は、慰謝料が増額される可能性があります。
重過失とは、以下のようなことを指します。

  • 無免許運転
  • ひき逃げ
  • 酒酔い運転
  • 著しいスピード違反
  • ことさらに信号無視をした
  • 薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転等をした

著しく不誠実な態度とは、事故後に適切な救護を行わなかった、証拠隠滅を図った、証言を二転三転させる、被害者を挑発するなどの行動を指します。

では、実際に慰謝料が増額された事例を見ていきましょう。

加害者が酒酔い状態で追突した事故

加害者に飛び出しを咎められたが,加害者が酒に酔っていたのでこれを無視して発進した保母(23歳)を,加害者が車間距離をおかずに追跡して追突した事案で,追突は車間距離不保持による過失が原因とし,危険な態様の追跡で被害者に多大な恐怖感を与えたとして,この点について特に25万円を認め(傷害分50万円,通院28日),同乗者(23歳・保母)にも15万円の慰謝料を認めた

損害賠償額算定基準2020(令和2年)版
(事故日平4.5.24 大阪地判平7.12.14 自保地1164・2)

加害者がうその供述をしたケース

大学勤務(男・年齢不詳)につき,加害者が赤信号無視で交差点に進入したが,捜査機関に青信号であったと故意に虚偽の供述をしたため,被害者が被疑者として取り調べられ,10ヵ月後にようやく加害者が起訴されたことにより,全身打撲,頸部挫傷のほか,胃炎,円形脱毛症を発症したことも考慮し,事故から約1年9ヵ月(実日数174日)通院した慰謝料として200万円を認めた

損害賠償額算定基準2020(令和2年)版
(事故日平9.1.26 名古屋地判平13.9.21 交民34・5・1303)

(2)事故時や治療中の苦しみがことさらに大きいと判断できる場合

ケガによる苦しみがことさらに大きいと判断される場合は、慰謝料が増額される可能性があります。
通常の慰謝料額では精神的苦痛をカバーしきれないと考えられるからです。
具体的には、交通事故により生死をさまよった場合、麻酔のできない状態で手術をした場合、長時間・複数回の手術を強いられた場合などが挙げられます。

実際の判例を見てみましょう。

事故によるケガに伴い、感染症の危険性などがあったケース

脛骨開放骨折による下肢機能障害(7級)及び下肢短縮(13級8号、併合6級)の会社員(男・固定時36歳)につき、(略)手術を受けたものの、左下肢の軟部組織の著しい欠損により感染の危険が高く、長期間にわたる入院を要したほか、骨癒合にも長期間を要する中で骨髄炎を発症し、再度入院加療を要したことなどから、傷害分360万円を認めた。

事故日平21.6.24 名古屋地裁平25.8.5 自保ジ1910・131

(3)死にも比肩する後遺障害が残った場合

高次脳機能障害や遷延性意識障害など、死にも比肩すると判断される後遺障害が残った場合は、慰謝料が増額されたり、家族に対する慰謝料が認められたりする可能性があります。
実際の判例は以下の通りです。

重度の後遺障害が残り、将来的な介護が必要となったケース

脳挫傷後の後遺障害(1級1号)の中学生(女・固定時15歳)につき、(略)本人分2800万円、子の将来の成長への楽しみを奪われ将来に不安を抱きながら介護する生活を余儀なくされた父母各500万円、後遺傷害分合計3800万円を認めた

事故日平15.8.7 金沢地判平18.10.11 自保ジ1705・2

慰謝料が減額されるケースもあるので要注意

交通事故の慰謝料は、事情を反映して減額されることもあります。
主に以下の3つの場合に減額される可能性があるので、解説していきます。

  1. 損益相殺・損害の補てん
  2. 素因減額
  3. 過失相殺

(1)損益相殺・損害の補てん

交通事故被害者(死亡事故である場合はその相続人)が、事故の損害賠償金と目的を同じくする金銭・利益を得ていた場合、その金額分が慰謝料・損害賠償金から控除されることがあります。

控除される対象としては、おもに以下のものがあります。

  • 法令に基づく給付等
    示談成立前に相手方自賠責保険から慰謝料・損害賠償金を受け取っていた場合、示談成立後に受け取れる金額からその分が差し引かれる
    示談成立前に慰謝料・損害賠償金をもらう方法は『交通事故の被害者請求とは?自賠責保険に自分で請求をする方法』で解説
  • 各種社会保険給付
    • 労災保険
      休業補償給付金や療養補償給付、障害一時金など(公務員の方は国家公務員災害補償や地方公務員災害補償から支給された療養給付など)
    • 医療保険
      健康保険から支給される傷病手当金や国民健康保険から支給される高額療養費還付金
    • 公的年金
      国民年金の障害基礎年金や遺族基礎年金、厚生年金の障害厚生年金や遺族厚生年金(公務員の方は遺族共済年金)

以上が、損害賠償金の減額対象となるおもな給付になります。
なお、私的保険である、生命保険金や労災の特別支給金は調整対象になりません。

(2)素因減額

「素因」とは、被害者にもともとある精神的傾向(心理的要因)・既往症や身体的な特徴(身体的素因)をいいます。
素因減額は、たとえば以下のようなケースで適用されます。

  • 被害者が治療に消極的で、医師の指示通りに通院しなかったために治療期間が長くなった
  • 交通事故によって被害者は捻挫をしたが、以前にも何度か同じ箇所を捻挫したことがあり、クセになっていた

ただし、たとえば既往症であれば、そのことが治療経過に影響を及ぼしたという医学的根拠がなければ減額されません。
相手方任意保険会社が不十分な医学的根拠をもって一方的に素因減額をおこなうケースもあるため、対抗できる根拠があれば弁護士に相談するといいでしょう。

(3)過失相殺

被害者にも過失割合が付くと、その割合分、慰謝料・損害賠償金が減額される「過失相殺」が適用されます。
過失割合とは、事故が起きた責任が被害者と加害者それぞれにどれくらいあるかを割合で示したものです。

被害者にまったく過失のない「もらい事故」である場合を除き、加害者だけでなく被害者にも過失が認められるケースは少なくありません。

ただし、加害者側は、過失相殺による大幅な減額を狙い、あえて被害者側の過失を多めに見積もっていることもあります。
過失割合について納得いかない点がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

過失割合の決め方や過失割合で相手方ともめた時の対処法については、以下の関連記事でご確認ください。

関連記事

示談交渉と慰謝料増額は弁護士に依頼

交通事故の被害者になってしまった場合、弁護士に相談したくても躊躇する方もいらっしゃると思います。

躊躇している方の心配事は、以下のどれかに該当しますか?
もし該当するのであれば、基本的に心配する必要はありません。

  1. 弁護士が怖い
  2. 弁護士費用が不安
  3. 相談時点で料金がいくらかかるのかが心配
  4. 弁護士に依頼したら裁判になるのではないか
  5. 事を荒立てたくない

これらが心配不要な理由は以下になります。

(1)弁護士が怖い⇒弁護士は被害者の味方です。

弁護士は任意保険のように、治療を一方的に打ち切ろうと考えたり、慰謝料を一方的に減額したりすることはしません。

(2)弁護士費用が不安⇒弁護士費用特約という保険商品があります。

ご自身の自動車保険や医療保険に付帯されていれば、弁護士費用の300万円および相談料10万円が補償されます。
なお、特約の付帯がなくても費用倒れになるケースは多くありません。

弁護士費用特約についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
交通事故の弁護士費用|弁護士費用の計算や弁護士費用特約の中身

(3)相談時点で料金がいくらかかるのかが心配⇒相談費用は無料です。

弊所アトム法律事務所においては、人身事故被害者に限り代金はいただいておりません。

(4)弁護士に依頼したら裁判になるのではないか⇒弁護士=裁判ではありません。

交通事故を弁護士に依頼した場合においては、弁護士が加害者側任意保険と被害者の間に入り、示談交渉をおこないます。
(示談金等でどうしても埒があかない場合であって、かつ被害者が希望した場合は裁判になるケースもあります)

(5)事を荒立てたくない⇒弁護士こそ穏便に示談をおこないます。

被害者がご自分で示談交渉にあたる場合、被害者の個人的感情が障壁になっているケースも少なくありません。
安心して弁護士に示談交渉を委ね、任意保険とのやり取りから解放されましょう。

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まとめ

  • 入通院慰謝料1日あたり4300円(4200円)は最低基準額
  • 4300円(4200円)の金額で示談を進めては危険
  • 慰謝料の金額は、誰がどの計算基準を用いたかによって変わる
  • 加害者側任意保険は加害者の味方と考えて良い
  • 慰謝料は、弁護士基準やその他要素を加味したうえで増額が可能である

代表弁護士岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点